(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021618
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】シラミ忌避剤
(51)【国際特許分類】
A01N 47/16 20060101AFI20230207BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20230207BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A01N47/16 A
A01P17/00
A01M1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126598
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由明
(72)【発明者】
【氏名】下方 宏文
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CC21
2B121FA15
4H011AC06
4H011BB13
4H011BB22
4H011BC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】子供に対してより安全に使用することができ、シラミに対して優れた忌避効果を奏するシラミ忌避剤を提供する。
【解決手段】イカリジンを有効成分として含有するシラミ忌避剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イカリジンを有効成分として含有するシラミ忌避剤。
【請求項2】
精油を含有する請求項1に記載のシラミ忌避剤。
【請求項3】
炭素数2~6のアルコールを含有する請求項1又は2に記載のシラミ忌避剤。
【請求項4】
前記イカリジンの含有割合は、5.0w/v~18.0w/v%である請求項1~3のいずれか1項に記載のシラミ忌避剤。
【請求項5】
前記シラミは、コロモジラミ又はアタマジラミである請求項1~4のいずれか1項に記載のシラミ忌避剤。
【請求項6】
10時間以上忌避効果が持続する請求項1~5のいずれか1項に記載のシラミ忌避剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラミ忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コロモジラミやアタマジラミ等のシラミは衣類や人体への寄生や付着で生じる吸血による激しい痒みや、さらにその痒みによって引き起こされる引っ掻き傷から皮膚の炎症等の健康被害が知られており、それらの健康被害を防ぐために、また、被害の拡散を防ぐために、人体や衣類に塗布して使用する製剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2には、所定含有割合のディート(N,N-ジエチル-m-トルアミド)を有効成分として含有する衛生害虫忌避剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-237636号公報
【特許文献2】特開2014-201581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示される衛生害虫忌避剤の有効成分であるディート(N,N-ジエチル-m-トルアミド)は、シラミの流行が問題となっている12歳未満の子供に対しては使用回数等が制限されている。そのため、子供に対してより安全に使用することができるシラミ忌避剤を開発することは非常に重要である。
【0006】
また、シラミは蚊等の一般的な吸血害虫と異なり、自ら飛来等をすることができず、頭髪や衣類等の接触により人から人に寄生する。そのため、蚊等の一般的な吸血害虫に対する忌避剤がシラミに対してそのまま適応できるとは必ずしも言えなかった。
【0007】
本発明では、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、子供に対してより安全に使用することができ、シラミに対して優れた忌避効果を奏するシラミ忌避剤を提供することを目的とする。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)イカリジンを有効成分として含有するシラミ忌避剤。
(2)精油を含有する(1)に記載のシラミ忌避剤。
(3)炭素数2~6のアルコールを含有する(1)又は(2)に記載のシラミ忌避剤。
(4)前記イカリジンの含有割合は5.0w/v~18.0w/v%である、(1)~(3)のいずれか1に記載のシラミ忌避剤。
(5)前記シラミは、コロモジラミ又はアタマジラミである(1)~(4)のいずれか1に記載のシラミ忌避剤。
(6)10時間以上忌避効果が持続する(1)~(5)のいずれか1に記載のシラミ忌避剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシラミ忌避剤によれば、子供に対してより安全に使用することができ、シラミに対して優れた忌避効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のシラミ忌避剤について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定することを意図するものではない。なお、本明細書における範囲を示す表記「~」がある場合は、上限と下限を含有するものとする。
【0011】
本発明において使用されるイカリジンは、シラミの幼虫や成虫に対して忌避効果を示す有効成分である。イカリジンとは、具体的には、ピカリジンとも呼ばれる1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジンである。
【0012】
本発明において使用されるイカリジンの含有割合は、3.0w/v%~30.0w/v%であることが好ましく、4.0w/v%~20.0w/v%であることがより好ましく、5.0~18.0w/v%であることがもっとも好ましい。イカリジンの含有割合が、この範囲であれば、子供に対してより安全に使用することができ、コロモジラミやアタマジラミ等のシラミに対するより優れた忌避効果を奏するものとなる。なお、本発明において、w/v%の濃度表記は、100mL中あたりのグラム数(g)の割合である。
【0013】
本発明において、精油を用いることができる。精油は、香りづけのために用いられるが、有効成分であるイカリジンの忌避効果を持続させる忌避効力持続成分としても作用する。かかる精油は各種植物から水蒸気蒸留法などの留出手段にて得られる揮発性の油分である。精油として、チョウジから留出されたチョウジ油、ウイキョウから留出されたウイキョウ油及びレモングラスから留出されたレモングラス油からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本発明において、チョウジ油、ウイキョウ油、レモングラス油は、それぞれ単独で使用することができるし、適宜割合にて2種又は3種を混合して使用できる。
【0014】
本発明において使用される精油の含有割合は、0.05w/v%~20.0w/v%であることが好ましく、0.1w/v%~10.0w/v%であることがより好ましい。精油の含有割合が、かかる範囲にあれば、コロモジラミやアタマジラミ等のシラミに対するより優れた忌避効果を奏するものとなる。
【0015】
本発明において、炭素数2~6のアルコール、好ましくは炭素数2~4のアルコールを含有することもできる。炭素数2~6のアルコールは溶剤として作用する。かかるアルコールとしては、エタノール、1-プロパノール、2―プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が好ましい。
【0016】
本発明において使用される炭素数2~6のアルコールの含有割合は、1.0w/v%~90.0w/v%であることが好ましく、5.0w/v%~85.0w/v%であることがより好ましい。
【0017】
本発明のシラミ忌避剤には、界面活性剤、抗菌剤、香料、揮散調整剤、酸化防止剤、防腐剤、水等を配合することができる。
【0018】
界面活性剤を例示すると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミドなどの非イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン(POE)スチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼン硫酸塩などのアニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0019】
抗菌剤を例示すると、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルト-フェニルフェノール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。
【0020】
香料について例示すると、オレンジ、グレープフルーツ、ベリー、イチゴ、ピーチ、ライチ、バナナ、メロン、ブドウ、マスカット、アップル、パイナップル系などのフルーツ系香料等が挙げられる。
【0021】
揮散調整剤を例示すると、グリセリン脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類、ヤシ油等の植物油、流動パラフィン等が挙げられ、ミリスチン酸イソプロピルを配合することが好ましい。揮散調整剤の含有割合は1.0w/v%~10.0w/v%であることが好ましく、2.0w/v%~5.0w/v%であることがより好ましい。
【0022】
酸化防止剤を例示すると、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(α-トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ジブチルヒドロキシアニソール)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
防腐剤を例示すると、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ノルマルプロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラヒドロキシ安息香酸ノルマルブチル、パラヒドロキシ安息香酸イソブチル等のパラベン等が挙げられる。
【0024】
水を例示すると、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0025】
上記の成分以外に、IR3535、p-メンタン-3,8-ジオール、pH調整剤、緩衝剤、色素等を配合することができる。
【0026】
本発明のシラミ忌避剤は、上記の各種成分を公知の方法により、添加、混合等することで製造することができる。
【0027】
本発明のシラミ忌避剤は、各種容器に充填し、ロールオンタイプ製品、クリーム製品、ミスト製品、ローション製品、スプレー製品、エアゾール製品、スティック製品、不織布等に含浸させたシート状製品等の各種形態とすることができ、これらの中では、ローション製品、スプレー製品、エアゾール製品とすることが好ましい。
【0028】
本発明のシラミ忌避剤は、例えば、ローション製品とする場合、ローション容器に充填することにより製造することができる。スプレー製品とする場合、トリガー式やプッシュボタン式のスプレー容器に充填することにより製造することができる。エアゾール製品とする場合、エアゾール容器にエアゾール原液を充填し、噴射剤としては、特に限定されないが、ジメチルエーテル、液化石油ガス(LPG)、ハイドロフルオロオレフィン等の液化ガス、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等の圧縮ガス等が挙げられ、これらを加圧充填し、トリガー式やプッシュボタン式のアクチュエーターを取り付けることで製造することができる。
【0029】
本発明のシラミ忌避剤は、衣類等の布帛や頭髪に処理することでシラミを忌避することができる。かかる処理量は特に限定されないが、0.1mg/cm2~1000mg/cm2であることが好ましく、1mg/cm2~100mg/cm2であることがより好ましい。シラミ忌避剤のかかる処理によって、忌避効果が1~15時間程度忌避効果が持続し、10時間以上忌避効果が持続することが好ましい。
【0030】
本発明のシラミ忌避剤の対象は、シラミであり、コロモジラミ、アタマジラミ、ケジラミ等が挙げられる。中でもコロモジラミ又はアタマジラミが好適である。かかるシラミは幼虫と成虫を含み、雄雌を含む。
【0031】
次に、本発明のシラミ忌避剤について、具体的な実施例に基づき、詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない
【0032】
<実施例1>
25℃において、容量が200mLのグリフィンビーカーに、イカリジンを15.0g、チョウジ油1.0g、残余としてエタノールを加え、均一になるまで撹拌して、100mLの組成物を得た。
【0033】
<実施例2>
25℃において、容量が200mLのグリフィンビーカーに、イカリジンを15.0g、チョウジ油1.0g、ウイキョウ油1.0g、レモングラス油0.2g、ミリスチン酸イソプロピル3.0g、残余としてエタノールを加え、均一になるまで撹拌して、100mLの組成物を得た。
【0034】
<実施例3>
25℃において、容量が200mLのグリフィンビーカーに、イカリジンを15.0g、チョウジ油1.0g、ウイキョウ油1.0g、レモングラス油0.2g、ミリスチン酸イソプロピル3.0g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(別名、PEG-40水添ヒマシ油)、エタノール40.0gを入れ、残余として精製水を加え、均一になるまで撹拌して、100mLの組成物を得た。
【0035】
<比較例1>
25℃において、容量が200mLのグリフィンビーカーに、ディートを15.0g、チョウジ油1.0g、残余としてエタノールを加え、均一になるまで撹拌して、100mLの組成物を得た。
【0036】
実施例1~3、比較例1で得られた組成物を用いて、シラミの成虫に対する忌避効果の試験を行った。
【0037】
[シラミ成虫忌避試験]
濾紙を敷いた直径9cmの開放円盤状のシャーレ内に、実施例1~3、比較例1で得られた組成物を10mg/cm2となるように含侵し乾燥させた羅紗布をシャーレの外側に位置するように設置し、中心を挟んだ反対側に20匹のコロモジラミ(雄雌各10匹)を供した。そして、所定時間後にその羅紗布上にコロモジラミが存在していない状態を忌避できているとして、その匹数を数え、忌避率を(式1)によって算出した。
忌避率(%)=(羅紗布上に存在していない匹数/20)×100・・・(式1)
なお、各実施例及び比較例で得られた組成物を羅紗布に含侵させずに同様の試験を行ったコントロール試験における忌避の割合を補正係数として、各実施例及び比較例における上記忌避率に乗じ、補正忌避率を算出した。
【0038】
これらの結果を、表1に示す。
【0039】
【0040】
表1に示すように、有効成分がイカリジンである実施例1~3は、有効成分がディートである比較例1に比べて、12時間経過後において、シラミの成虫に対してより優れた忌避効果を示すことが分かった。