(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021641
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】インライン分散装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/72 20220101AFI20230207BHJP
B01F 25/64 20220101ALI20230207BHJP
B01F 35/10 20220101ALI20230207BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20230207BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20230207BHJP
B01F 23/60 20220101ALI20230207BHJP
【FI】
B01F7/08 D
B01F5/16
B01F15/00 D
B01F15/00 Z
B01F3/08 A
B01F3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126629
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】土井 尚俊
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB38
4G035AB43
4G037DA14
4G037DA30
4G078AA13
4G078AA20
4G078AB09
4G078AB20
4G078BA01
4G078CA07
4G078DA17
4G078EA10
4G078EA20
(57)【要約】
【課題】プロセス中における被処理物への剪断力のコントロール幅を大きくすることが可能なホモジナイザを備えたインライン分散装置を提供する。
【解決手段】インライン分散装置は、軸線が同軸に配設されたステータ7及びロータ8を有するホモジナイザと、ステータ7とロータ8を前記軸線の方向に相対的に移動させる移動機構とを備える。半径方向クリアランスCを介して相対向するステータ7のステータ歯部7bのステータ対向面9と、ロータ8のロータ歯部8bのロータ対向面10は、半径方向クリアランスCがステータ7とロータ8の前記軸線の方向の相対的移動に応じて変化する形状に形成され、前記移動機構により、半径方向クリアランスCが可変で調整可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングの内部に配置され、軸線が同軸に配設されたステータ及びロータを有し、該ロータの回転に伴うタービュランス効果により、被処理物の吸い込み・分散・押し出しを行うホモジナイザと、前記ケーシングの外部から内部に被処理物を供給するための供給部と、前記ケーシングの内部から外部に被処理物を排出するための排出部とを備え、前記供給部を介して前記ケーシングの内部に供給される被処理物を、前記ホモジナイザにより吸い込み、分散して、押し出し、前記排出部を介して前記ケーシングの外部に排出するインライン分散装置であって、
前記ホモジナイザの前記ステータと前記ロータを前記軸線の方向に相対的に移動させる移動機構が設けられ、
前記ステータは、ステータ基部と、該ステータ基部の周方向に沿って形成され、該ステータ基部から前記軸線方向の一方側に延びるステータ歯部を有し、前記ロータは、ロータ基部と、該ロータ基部の周方向に沿って形成され、該ロータ基部から前記軸線方向の他方側に延び、前記ステータ歯部と半径方向のクリアランスを介して組み合わされるロータ歯部を有し、
前記半径方向クリアランスを介して相対向する前記ステータ歯部と前記ロータ歯部の対向面は、前記半径方向クリアランスが前記ステータと前記ロータの前記軸線方向の相対的移動に応じて変化する形状に形成され、前記移動機構により、前記半径方向クリアランスが可変で調整可能であることを特徴とするインライン分散装置。
【請求項2】
前記ステータが、前記ケーシングの内周に対して前記軸線方向に摺動自在に配置されている請求項1に記載のインライン分散装置。
【請求項3】
前記供給部が、前記軸線に沿って前記ステータを貫通する供給路を有する請求項1又は2に記載のインライン分散装置。
【請求項4】
前記ステータ歯部と前記ロータ歯部のうち少なくとも一方の歯部の前記対向面は、前記軸線を含む断面において、前記歯部の先端側に向かって、該歯部の前記対向面と反対側の側面の側に漸次変位するように傾斜した傾斜面に形成されている請求項1~3の何れか1項に記載のインライン分散装置。
【請求項5】
前記ステータ歯部と前記ロータ歯部の双方の前記対向面が、前記傾斜面に形成されている請求項4に記載のインライン分散装置。
【請求項6】
前記軸線を含む断面において、前記傾斜面が直線状である請求項4又は5に記載のインライン分散装置。
【請求項7】
前記軸線を含む断面において、前記ステータ歯部と前記ロータ歯部は、それぞれ、前記軸線に平行な直線を対称軸とする線対称形状である請求項4~6の何れか1項に記載のインライン分散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、ファインケミカル、電池、食品等の製造工程において、粘性の液体や粉体等の混合、乳化、分散、脱泡等の処理に使用されるインライン分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、ファインケミカル、電池、食品等の製造工程において、粘性の液体や粉体等の混合、乳化、分散、脱泡等の処理に使用される分散装置には、配管の途中に設置されるタイプのものがある(以下、インライン分散装置と記す)。このインライン分散装置として、軸線が同軸に配設されたステータ及びロータを有し、該ロータの回転に伴うタービュランス効果により、被処理物の吸い込み・分散・押し出しを行うホモジナイザを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているように、この種のインライン分散装置では、前記ステータは、ステータ基部と、該ステータ基部の周方向に沿って形成され、該ステータ基部から前記軸線の方向の一方側に延びるステータ歯部を有する。また、前記ロータは、ロータ基部と、該ロータ基部の周方向に沿って形成され、該ロータ基部から前記軸線方向の他方側に延び、前記ステータ歯部と半径方向のクリアランスを介して組み合わされるロータ歯部を有する。
【0005】
被処理物は、ステータ歯部とロータ歯部によって剪断力が掛けられるが、その剪断力は、ステータ歯部とロータ歯部とのクリアランス(特に、半径方向クリアランス)と、ロータの回転速度とによってコントロールされる。
【0006】
しかしながら、ステータ歯部とロータ歯部とのクリアランスを変更する場合には、一旦インライン分散装置を停止して、分解・組立を行う必要がある。そのため、プロセス中には、剪断力は、ロータの回転速度のみでコントロールされることになり、コントロール幅が小さい。従って、プロセス中に剪断力の変更を行う場合に十分に対応できない事態が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、プロセス中における被処理物への剪断力のコントロール幅を大きくすることが可能なホモジナイザを備えたインライン分散装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明に係るインライン分散装置は、ケーシングと、該ケーシングの内部に配置され、軸線が同軸に配設されたステータ及びロータを有し、該ロータの回転に伴うタービュランス効果により、被処理物の吸い込み・分散・押し出しを行うホモジナイザと、前記ケーシングの外部から内部に被処理物を供給するための供給部と、前記ケーシングの内部から外部に被処理物を排出するための排出部とを備え、前記供給部を介して前記ケーシングの内部に供給される被処理物を、前記ホモジナイザにより吸い込み、分散して、押し出し、前記排出部を介して前記ケーシングの外部に排出するインライン分散装置であって、前記ホモジナイザの前記ステータと前記ロータを前記軸線の方向に相対的に移動させる移動機構が設けられ、前記ステータは、ステータ基部と、該ステータ基部の周方向に沿って形成され、該ステータ基部から前記軸線方向の一方側に延びるステータ歯部を有し、前記ロータは、ロータ基部と、該ロータ基部の周方向に沿って形成され、該ロータ基部から前記軸線方向の他方側に延び、前記ステータ歯部と半径方向のクリアランスを介して組み合わされるロータ歯部を有し、前記半径方向クリアランスを介して相対向する前記ステータ歯部と前記ロータ歯部の対向面は、前記半径方向クリアランスが前記ステータと前記ロータの前記軸線方向の相対的移動に応じて変化する形状に形成され、前記移動機構により、前記半径方向クリアランスが可変で調整可能であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ステータとロータを軸線の方向に相対的に移動させることにより、ステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスを可変で調整可能である。ステータとロータを軸線方向に相対的に移動させることは、プロセス中であっても可能である。従って、プロセス中であっても、ステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスが可変で調整可能である。このため、プロセス中であっても、被処理物への剪断力を可変で調整可能である。これにより、プロセス中の剪断力は、ステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスによってもコントロール可能になり、ロータの回転速度のみでコントロールされる従来の場合よりも、コントロール幅を大きくすることが可能である。すなわち、本発明に係るインライン分散装置によれば、プロセス中における被処理物への剪断力のコントロール幅を大きくすることが可能なホモジナイザを備えたインライン分散装置を提供することが可能である。
【0010】
また、ステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスを可変で調整することにより、被処理物がホモジナイザに入る際の抵抗を可変で調整でき、単位時間当たりの被処理物の流量(処理流量)を可変で調整できる。従って、プロセス中に、被処理物の処理流量を可変で調整可能である。
【0011】
また、洗浄工程において、ステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスを大きくし、ロータの回転で洗浄液を通過させてステータとロータを洗浄することによって、ステータとロータの洗浄性を高めることができる。これにより、ステータとロータの分解洗浄を不要とすることが可能である。
【0012】
また、ステータとロータの摩耗の具合に合わせて常にステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスを調整することが可能である。
【0013】
上記の構成において、前記ステータが、前記ケーシングの内周に対して前記軸線方向に摺動自在に配置されていてもよい。
【0014】
この構成であれば、ステータとロータを軸線方向に相対的に移動させる構造を容易に得ることができる。
【0015】
上記の構成において、前記供給部が、前記軸線に沿って前記ステータを貫通する供給路を有していてもよい。
【0016】
この構成であれば、ステータを貫通する供給路により、被処理物をスムーズにホモジナイザ内に供給することが可能である。
【0017】
上記の構成において、前記ステータ歯部と前記ロータ歯部のうち少なくとも一方の歯部の前記対向面は、前記軸線を含む断面において、前記歯部の先端側に向かって、該歯部の前記対向面と反対側の側面の側に漸次変位するように傾斜した傾斜面に形成されていてもよい。
【0018】
この構成であれば、ステータ歯部とロータ歯部の半径方向クリアランスがステータとロータの軸線方向の相対的移動に応じて変化する形状の対向面を、容易に得ることができる。
【0019】
上記の構成において、前記ステータ歯部と前記ロータ歯部の双方の前記対向面が、前記傾斜面に形成されていてもよい。
【0020】
上記の構成において、前記軸線を含む断面において、前記傾斜面が直線状であってもよい。
【0021】
上記の構成において、前記軸線を含む断面において、前記ステータ歯部と前記ロータ歯部は、それぞれ、前記軸線に平行な直線を対称軸とする線対称形状であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プロセス中における被処理物への剪断力のコントロール幅を大きくすることが可能なホモジナイザを備えたインライン分散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るインライン分散装置の概略部分断面(軸線を含む断面)平面図である。
【
図4】ステータのステータ歯部の周辺の軸線方向の一方側の概略斜視図である。
【
図5】ステータのステータ歯部の周辺の概略断面(軸線を含む断面)図である。
【
図6】ステータ歯部のステータ歯部を軸線方向の一方側から見た概略図である。
【
図7】ステータのステータ歯部の周辺を外周側から見た概略図である。
【
図8】ロータの軸線方向の他方側の概略斜視図である。
【
図9】ロータを軸線方向の他方側から見た概略図である。
【
図10】ロータの概略断面(軸線を含む断面)図である。
【
図12】インライン分散装置の変形例を示す
図2に対応する図である。
【
図13】ステータ歯部とロータ歯部の変形例を示す概略断面(軸線を含む断面)図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~11に基づいて、本発明の実施形態に係るインライン分散装置1について説明する。
図1,2に示すように、インライン分散装置1は、ケーシング2と、ホモジナイザ3と、供給部4と、排出部5と、移動機構6とを主要な構成要素として備える。
【0025】
ホモジナイザ3は、ケーシング2の内部に配置され、軸線が同一の軸線Aとなるように配設されたステータ7及びロータ8を有する。また、ホモジナイザ3は、ロータ8の回転に伴うタービュランス効果により、被処理物の吸い込み・分散・押し出しを行う。
【0026】
供給部4は、ケーシング2の外部から内部に被処理物を供給するための部位であり、排出部5は、ケーシング2の内部から外部に被処理物を排出するための部位である。移動機構6は、ホモジナイザ3のステータ7とロータ8を軸線Aの方向に相対的に移動させる。
【0027】
なお、本実施形態では、軸線Aの方向は、横方向(水平方向)に沿っているが、これに限定されること無く、例えば、軸線Aの方向は、上下方向に沿っていてもよい。また、以下の説明において、軸線A方向の一方側は、
図1、2での右側、軸線A方向の他方側は、
図1、2での左側となる。
【0028】
図1に示すように、インライン分散装置1の供給部4には、供給用配管P1が接続され、インライン分散装置1の排出部5には、排出用配管P2が接続されている。
【0029】
図2に白矢印で示すように、インライン分散装置1では、供給部4を介してケーシング2の内部に供給される被処理物を、ホモジナイザ3により吸い込み、分散して、押し出し、排出部5を介してケーシング2の外部に排出する。
【0030】
図4~7に示すように、ステータ7は、円柱状のステータ基部7aと、ステータ基部7aの周方向に沿って連続して形成され、ステータ基部7aから軸線A方向の一方側に延びるステータ歯部7bを2個有する。ステータ歯部7bは、外周側と内周側にステータ側面7cを有する。ステータ歯部7bには、半径方向に貫通するステータ貫通孔7dが周方向等間隔に形成されている。ステータ貫通孔7dは、貫通方向に沿って見た場合に、軸線A方向に対して傾斜した長穴形状である。2個のステータ歯部7bで、ステータ貫通孔7dの形状、寸法、個数、周方向位置は同じである。
【0031】
また、
図1,2に示すように、ステータ7のステータ基部7aは、軸線A方向の一方側の部位が、ケーシング2の内部に配置され、軸線A方向の他方側の部位は、ケーシング2の外部に配置されている。供給部4は、ステータ7のステータ基部7aに設けられており、軸線Aに沿ってステータ7を貫通する被処理物の供給路Rを有する。この供給路Rは、ステータ7のステータ基部7aに軸線Aに沿って形成された貫通孔の内部空間で構成されている。
【0032】
また、ステータ7のステータ基部7aは、ケーシング2の内周に対して軸線A方向に摺動自在に配置されている。詳述すると、
図2に示すように、ケーシング2における軸線A方向の他方側の周壁部2aにおける内周側には、シール部材S1が配設されており、ステータ基部7aの外周面が、シール部材S1に対して接触した状態で摺動するようになっている。
【0033】
図8~11に示すように、ロータ8は、円板状のロータ基部8aと、ロータ基部8aの周方向に沿って連続して形成され、ロータ基部8aから軸線A方向の他方側に延びるロータ歯部8bを1個有する。ロータ歯部8bは、外周側と内周側にロータ側面8cを有する。ロータ歯部8bには、半径方向に貫通するロータ貫通孔8dが周方向等間隔に形成されている。ロータ貫通孔8dは、貫通方向に沿って見た場合に、軸線A方向に沿って延びる長穴形状である。ロータ貫通孔8dの個数は、1つのステータ歯部7bのステータ貫通孔7dの個数と同じである。
【0034】
また、ロータ8のロータ歯部8bの内周側には、ロータ基部8aから軸線A方向の他方側に延びる複数の羽根部8eが形成されている。
図9に示すように、羽根部8eは、軸線A方向の他方側から見た場合に、外周側に向かって、ロータ基部8aの周方向の一方側に漸次変位する形状となっている。また、ロータ基部8aの中央には軸線A方向の他方側に延びるボス部8fが形成されている。羽根部8eの内周端は、ボス部8fに対して径方向に所定距離で離隔している。また、ロータ基部8aの中央には軸線A方向の一方側に延びる軸部8gが形成されている。
【0035】
図3に示すように、ロータ8のロータ歯部8bは、ステータ7のステータ歯部7bと半径方向のクリアランスCを介して組み合わされる。半径方向クリアランスCを介して相対向するステータ歯部7bのステータ側面7c(以下、ステータ対向面9と記す)とロータ歯部8bのロータ側面8c(以下、ロータ対向面10と記す)は、半径方向クリアランスCがステータ7とロータ8の軸線A方向の相対的移動に応じて変化する形状に形成されている。従って、移動機構6により、ステータ7とロータ8を軸線A方向に相対的に移動させることにより、ステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCを可変で調整可能である。
【0036】
なお、内周側のステータ歯部7bの内周側のステータ側面7cと、ロータ8の羽根部8eの外周側端面8hも、所定の半径方向のクリアランスを介して相対向する。
【0037】
ステータ歯部7bのステータ対向面9は、軸線Aを含む断面において、ステータ歯部7bの先端側に向かって、ステータ歯部7bにおけるステータ対向面9と反対側のステータ側面7cの側に漸次変位するように傾斜した傾斜面に形成されている。軸線Aを含む断面において、この傾斜面は直線状である。
【0038】
また、軸線Aを含む断面において、ステータ歯部7bは、軸線Aに平行な直線Lを対称軸とする線対称形状である。
【0039】
本実施形態では、ロータ歯部8bのロータ側面8cの双方が、ロータ対向面10となっている。ロータ歯部8bのロータ対向面10の一方は、軸線Aを含む断面において、ロータ歯部8bの先端側に向かって、ロータ歯部8bにおけるロータ対向面10と反対側のロータ側面8c(他方のロータ対向面10)の側に漸次変位するように傾斜した傾斜面に形成されている。軸線Aを含む断面において、この傾斜面は直線状である。
【0040】
また、軸線Aを含む断面において、ロータ歯部8bは、軸線Aに平行な直線Lを対称軸とする線対称形状である。
【0041】
なお、軸線Aを含む断面において、ロータ対向面10の傾斜面と、ステータ対向面9の傾斜面は、平行である。換言すれば、軸線Aを含む断面において、ロータ対向面10の傾斜面の軸線Aに対する傾斜角度と、ステータ対向面9の傾斜面の軸線Aに対する傾斜角度は同一である。このため、ロータ対向面10とステータ対向面9の半径方向クリアランスCは、軸線Aの方向で均一である。このことは、ステータ7とロータ8を軸線Aの方向に相対的に移動させても変わらない。
【0042】
本実施形態では、ロータ8は軸線A方向の位置を固定されており、移動機構6は、ロータ8に対してステータ7を軸線A方向に移動させるものである。
図1に示すように、移動機構6は、送りねじ機構6aと移動用モータ6bを有する。ステータ7のステータ基部7aの外周面の軸線A方向の他方側にはフランジ部7eが設けられており、フランジ部7eの周方向の一部には外周側に延びる取付部7fが設けられており、この取付部7fに送りねじ機構6aのナット部が取り付けられている。送りねじ機構6aのねじ軸の回転軸は、軸線Aと平行である。移動用モータ6bの回転駆動力が、送りねじ機構6aにより、ステータ7を軸線A方向に沿って移動させる駆動力に変換される。ステータ7の軸線A方向に沿った移動は、例えば0.1mm単位で行われる。
【0043】
なお、供給部4に接続された供給用配管P1は屈曲自在であり、移動機構6によるステータ7の移動に伴い、供給用配管P1の屈曲の度合いが変化し、これにより、移動機構6によるステータ7の移動が許容される。
【0044】
ロータ8の軸部8gが回転駆動軸11の端部に挿入された状態で、ロータ8が回転駆動軸11に対して固定されている。ロータ8は回転駆動軸11と一体に回転する。回転駆動軸11には、その軸線A方向の一方側に配置された回転駆動用モータ12から回転駆動力が入力される。
【0045】
なお、回転駆動軸11は、ロータ8と同軸に配設されている。また、回転駆動軸11は、ケーシング2の内部に配置され、軸受11aを介してケーシング2に回転自在に支持されている。ロータ8が配置されているケーシング2の内部空間は、回転駆動軸11の大部分が配置されているケーシング2の内部空間からシール部S2により区画されている。
【0046】
また、ケーシング2は回転駆動用モータ12に固定されており、回転駆動用モータ12は不図示の支持台に固定されている。また、移動用モータ6bも、回転駆動用モータ12が固定されている支持台に固定されている。
【0047】
インライン分散装置1の運転中は、ホモジナイザ3のロータ8の回転に伴うタービュランス効果によって、供給用配管P1から供給部4を介して供給された被処理物がホモジナイザ3の内部に吸い込まれ、さらに遠心力により、ステータ歯部7bのステータ貫通孔7dとロータ歯部8bのロータ貫通孔8dから押し出され、この時のステータ歯部7b、ロータ歯部8bによる剪断作用で被処理物の分散が行われる。その後、分散が行われた被処理物は、排出部5を介して排出用配管P2に排出される。
【0048】
以上のように構成されたインライン分散装置1では、以下の効果を享受できる。
【0049】
ステータ7とロータ8を軸線Aの方向に相対的に移動させることにより、ステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCを可変で調整可能である。ステータ7とロータ8を軸線Aの方向に相対的に移動させることは、プロセス中であっても可能である。従って、プロセス中であっても、ステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCが可変で調整可能である。このため、プロセス中であっても、被処理物への剪断力を可変で調整可能である。これにより、プロセス中の剪断力は、ステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCによってもコントロール可能になり、ロータ8の回転速度のみでコントロールされる従来の場合よりも、コントロール幅を大きくすることが可能である。すなわち、本実施形態に係るインライン分散装置1によれば、プロセス中における被処理物への剪断力のコントロール幅を大きくすることが可能なホモジナイザを備えたインライン分散装置を提供することが可能である。
【0050】
また、ステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCを可変で調整することにより、被処理物がホモジナイザ3に入る際の抵抗を可変で調整でき、単位時間当たりの被処理物の流量(処理流量)を可変で調整できる。従って、プロセス中に、被処理物の処理流量を可変で調整可能である。
【0051】
また、洗浄工程において、ステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCを大きくし、ロータ8の回転で洗浄液を通過させてステータ7とロータ8を洗浄することによって、ステータ7とロータ8の洗浄性を高めることができる。これにより、ステータ7とロータ8の分解洗浄を不要とすることが可能である。
【0052】
また、ステータ7とロータ8の摩耗の具合に合わせて常にステータ歯部7bとロータ歯部8bの半径方向クリアランスCを調整することが可能である。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、供給部4は、ステータ7に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、環状のステータ7の全体が、ケーシング2の内部に配置され、供給部4がケーシング2の端壁部2bに設けられていてもよい。この場合、ケーシング2の端壁部2bに摺動自在に挿通された棒状部材6cの一端がステータ7のステータ基部7aに固定され、他端が環状の連結部6dに固定される。連結部6dの周方向の一部には、外周側に延びる取付部6eが設けられ、取付部6eに送りねじ機構6aのナット部(不図示)が固定されている。
【0054】
また、上記実施形態では、軸線Aを含む断面において、ステータ歯部7bのステータ対向面9とロータ歯部8bのロータ対向面10の双方が、軸線Aに対して傾斜した傾斜面に形成されていたが、ステータ歯部7bのステータ対向面9とロータ歯部8bのロータ対向面10は、半径方向クリアランスCがステータ7とロータ8の軸線Aの方向の相対的移動に応じて変化する形状に形成されていればよい。例えば、
図13(A)に示すように、一方(図示例ではロータ対向面10)が、軸線Aを含む断面において、軸線Aに平行になるように形成されていてもよい。また、
図13(B)に示すように、ステータ歯部7bのステータ対向面9とロータ歯部8bのロータ対向面10の双方が、軸線Aを含む断面で軸線Aに平行な直線となる面9a,10aに、軸線Aを含む断面でコ字状となる環状溝9b,10bを形成することにより、設けられたものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、移動機構6に、送りねじ機構6aを利用していたが、ステータ7とロータ8を軸線Aの方向に相対的に移動させる機構を利用すればよく、例えばシリンダ機構等を利用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、特定の情報に基づき、移動機構6が、ロータ8に対してステータ7を軸線A方向に移動させていなかったが、特定の情報に基づき、移動機構6が、ロータ8に対してステータ7を軸線A方向に移動させてもよい。例えば、ロータ8のトルク値に基づき、移動機構6が、ロータ8に対してステータ7を軸線A方向に移動させ、半径方向クリアランスCを可変で調整するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、ステータ7のステータ貫通孔7dは、貫通方向に沿って見た場合に、軸線A方向に対して傾斜した長穴形状であったが、貫通方向に沿って見た場合に、軸線A方向に沿って延びる長穴形状であってもよい。また、上記実施形態では、ロータ8のロータ貫通孔8dは、貫通方向に沿って見た場合に、軸線A方向に沿って延びる長穴形状であったが、貫通方向に沿って見た場合に、軸線A方向に対して傾斜した長穴形状であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ステータ歯部7bは、ステータ基部7aの周方向に沿って連続して形成されていたが、ステータ歯部7bが、ステータ基部7aの周方向に沿って断続的に形成されてもよい。また、上記実施形態では、ロータ歯部8bも、ロータ基部8aの周方向に沿って連続して形成されていたが、ロータ歯部8bも、ロータ基部8aの周方向に沿って断続的に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 インライン分散装置
2 ケーシング
3 ホモジナイザ
4 供給部
5 排出部
6 移動機構
7 ステータ
7a ステータ基部
7b ステータ歯部
7c ステータ側面
8 ロータ
8a ロータ基部
8b ロータ歯部
8c ロータ側面
9 ステータ対向面
10 ロータ対向面
A 軸線
C 半径方向のクリアランス
L 軸線に平行な直線
R 供給路