(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021665
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
G01C21/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126680
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 武志
(72)【発明者】
【氏名】上田 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 健
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB05
2F129DD13
2F129DD20
2F129DD40
2F129EE67
2F129EE78
2F129EE90
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF58
2F129FF60
2F129FF62
2F129FF75
2F129GG17
2F129GG18
2F129GG22
2F129HH02
2F129HH12
(57)【要約】
【課題】ひとつの移動体に搭乗、または付随して移動する人物の体験を、他の移動体に搭乗、または付随して移動する人物と共有させることができる情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置を提供する。
【解決手段】本開示の情報処理方法は、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツと、収録コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の位置を示す第1位置情報と、を取得するステップと、第1位置情報を収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、収録コンテンツと関連付けて記憶するステップと、収録位置情報に含まれる位置と第2移動体2_2の位置との距離に基づいて、収録コンテンツを配信コンテンツとして第2移動体2_2に送信するステップと、を含む。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1移動体が収録した収録コンテンツと、前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の位置を示す第1位置情報と、を取得するステップと、
前記第1位置情報を前記収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶するステップと、
前記収録位置情報に含まれる位置と第2移動体の位置との距離に基づいて、前記収録コンテンツを配信コンテンツとして前記第2移動体に送信するステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項2】
前記送信するステップにおいて、前記距離が予め設定されている第1閾値より小さい場合に、前記収録位置情報と関連付けられた前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記収録コンテンツは、前記収録位置情報に含まれる位置に対応する、前記収録コンテンツの収録開始からの経過時間を示す収録時間情報を含み、
前記送信するステップにおいて、前記収録時間情報に基づいて特定される、前記収録位置情報が示す位置に対応する時間からの前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の移動速度を示す第1速度情報を取得するステップと、
前記第1速度情報を前記収録コンテンツの速度情報を示す収録速度情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶するステップと、をさらに含み、
前記送信するステップにおいて、前記収録速度情報に含まれる速度と前記第2移動体の移動速度とに基づいて、前記収録コンテンツの再生速度を変更し、前記再生速度を変更した前記収録コンテンツを前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の移動方向を示す第1方向情報を取得するステップと、
前記第1方向情報を前記収録コンテンツの方向情報を示す収録方向情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶するステップと、をさらに含み、
前記送信するステップにおいて、前記収録方向情報に含まれる方向と前記第2移動体の移動方向との成す角度が、予め設定されている第2閾値より小さい場合に、前記収録方向情報と関連付けられた前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
収録コンテンツを収録する第1移動体と、
第2移動体と、
情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
前記収録コンテンツと、前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の位置と、を示す第1位置情報を取得し、
前記第1位置情報を前記収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶し、
前記収録位置情報に含まれる位置と前記第2移動体の位置との距離に基づいて、前記収録コンテンツを配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
情報処理システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記距離が予め設定されている第1閾値より小さい場合に、前記収録位置情報と関連付けられた前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記収録コンテンツは、前記収録位置情報に含まれる位置に対応する、前記収録コンテンツの収録開始からの経過時間を示す収録時間情報を含み、
前記情報処理装置は、前記収録時間情報に基づいて特定される、前記収録位置情報が示す位置に対応する時間からの前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項6または7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、
前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の移動速度を示す第1速度情報を取得し、
前記第1速度情報を前記収録コンテンツの速度情報を示す収録速度情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶し、
前記収録速度情報に含まれる速度と前記第2移動体の移動速度とに基づいて、前記収録コンテンツの再生速度を変更し、前記再生速度を変更した前記収録コンテンツを前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項6から8のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記情報処理装置は、
前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の移動方向を示す第1方向情報を取得し、
前記第1方向情報を前記収録コンテンツの方向情報を示す収録方向情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶し、
前記収録方向情報に含まれる方向と前記第2移動体の移動方向との成す角度が、予め設定されている第2閾値より小さい場合に、前記収録方向情報と関連付けられた前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項6から9のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項11】
プロセッサと、メモリと、を含み、
前記プロセッサは、前記メモリに記録されたプログラムを用いて、
第1移動体が収録した収録コンテンツと、前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の位置を示す第1位置情報と、を取得する手順と、
前記第1位置情報を前記収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶する手順と、
前記収録位置情報に含まれる位置と第2移動体の位置との距離に基づいて、前記収録コンテンツを配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する手順と、
を実行する、情報処理装置。
【請求項12】
前記送信する手順において、前記距離が予め設定されている第1閾値より小さい場合に、前記収録位置情報と関連付けられた前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記収録コンテンツは、前記収録位置情報に含まれる位置に対応する、前記収録コンテンツの収録開始からの経過時間を示す収録時間情報を含み、
前記送信する手順において、前記収録時間情報に基づいて特定される、前記収録位置情報が示す位置に対応する時間からの前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項11または12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の移動速度を示す第1速度情報を取得する手順と、
前記第1速度情報を前記収録コンテンツの速度情報を示す収録速度情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶する手順と、をさらに含み、
前記送信する手順において、前記収録速度情報に含まれる速度と前記第2移動体の移動速度とに基づいて、前記収録コンテンツの再生速度を変更し、前記再生速度を変更した前記収録コンテンツを前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項11から13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の移動方向を示す第1方向情報を取得する手順と、
前記第1方向情報を前記収録コンテンツの方向情報を示す収録方向情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶する手順と、をさらに含み、
前記送信する手順において、前記収録方向情報に含まれる方向と前記第2移動体の移動方向との成す角度が、予め設定されている第2閾値より小さい場合に、前記収録方向情報と関連付けられた前記収録コンテンツを、前記配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する、
請求項11から14のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体におけるコンテンツの再生に関する情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動中または停止中にコンテンツを再生できる移動体がある。例えば特許文献1には、運転中に再生する音楽等のコンテンツを、目的地までに通過する地点や通過予定時刻等に合わせて提供するコンテンツ配信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の移動体に対し、それぞれが位置する地点に合わせたコンテンツを提供したいという要望がある。複数の移動体は、それぞれ異なる時間軸に沿って移動したり、それぞれ異なるルートで移動したりすることがある。このような場合、複数の移動体に搭乗、または付随して移動する人物が見るものは、それぞれ異なる。このため、複数の移動体に搭乗、または付随して移動する人物が、同じ体験を共有することが難しい、という課題がある。
【0005】
本開示は、ひとつの移動体に搭乗、または付随して移動する人物の体験を、他の移動体に搭乗、または付随して移動する人物と共有させることができる情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の情報処理方法は、第1移動体が収録した収録コンテンツと、前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の位置を示す第1位置情報と、を取得するステップと、前記第1位置情報を前記収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶するステップと、前記収録位置情報に含まれる位置と第2移動体の位置との距離に基づいて、前記収録コンテンツを配信コンテンツとして前記第2移動体に送信するステップと、を含む。
【0007】
本開示の情報処理システムは、収録コンテンツを収録する第1移動体と、第2移動体と、情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、前記収録コンテンツと、前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の位置と、を示す第1位置情報を取得し、前記第1位置情報を前記収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶し、前記収録位置情報に含まれる位置と前記第2移動体の位置との距離に基づいて、前記収録コンテンツを配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する。
【0008】
本開示の情報処理装置は、プロセッサと、メモリと、を含み、前記プロセッサは、前記メモリに記録されたプログラムを用いて、第1移動体が収録した収録コンテンツと、前記収録コンテンツを収録している間の前記第1移動体の位置を示す第1位置情報と、を取得する手順と、前記第1位置情報を前記収録コンテンツの位置情報を示す収録位置情報として、前記収録コンテンツと関連付けて記憶する手順と、前記収録位置情報に含まれる位置と第2移動体の位置との距離に基づいて、前記収録コンテンツを配信コンテンツとして前記第2移動体に送信する手順と、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ひとつの移動体に搭乗、または付随して移動する人物の体験を、他の移動体に搭乗、または付随して移動する人物と共有させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】第1移動体と第2移動体の移動の様子を説明するための図
【
図6】初期状態における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図7】時刻T1から時刻T2までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図8】時刻T2から時刻T3までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図9】時刻T3から時刻T4までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図10】時刻T4から時刻T5までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図11】時刻T5から時刻T6までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図12】時刻T6から時刻T7までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図13】時刻T7から時刻T8までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図14】時刻T8から時刻T9までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図15】時刻T9から時刻T10までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図16】時刻T10から時刻T11までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図17】時刻T11から時刻T12までの間における第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図18】時刻T12以降の第1移動体および第2移動体の位置を例示した図
【
図19A】第1移動体がコンテンツを収録する様子について説明するための図
【
図19B】第2移動体が、
図19Aで収録されたコンテンツを再生する様子について説明するための図
【
図20A】コンテンツ収録時における、第1移動体の搭乗者の視界を例示した図
【
図20B】コンテンツ再生時における、第2移動体の搭乗者の視界を例示した図
【
図21】情報処理システムの動作を説明するためのシーケンス図
【
図22】情報処理システムが行う動作の中で、情報処理装置が行う処理について説明するためのフローチャート
【
図23】配信コンテンツを決定する方法、および、配信コンテンツの再生速度を決定する方法について説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。なお、以下の説明および参照される図面は、当業者が本開示を理解するために提供されるものであって、本開示の請求の範囲を限定するためのものではない。
【0012】
[構成]
<情報処理システム100>
まず、
図1を参照して、本開示の実施の形態に係る情報処理システム100の構成について説明する。
図1に示すように、情報処理システム100は、情報処理装置1、および、複数の移動体2を備える。
【0013】
情報処理装置1は、複数の移動体2に対してコンテンツの配信を行う装置である。情報処理装置1は、例えばPC(Personal Computer)やワークステーション等のコンピュータである。
図1に示す例では、情報処理装置1は、複数の移動体2と、それぞれネットワークNWを介して通信可能に接続されている。ネットワークNWは、インターネットまたはイントラネット等の通信ネットワークである。なお、
図1に示す例では、情報処理装置1はネットワークNWを介して複数の移動体2と通信可能に接続されているが、ネットワークNWを介さない直接通信が可能であってもよい。
【0014】
移動体2は、移動しながら種々のコンテンツの再生を行うことができる装置である。このような移動体2の例として、コンテンツの再生装置を備えた電動車椅子が挙げられる。しかしこれに限られず、キャビンを有する移動車など、各種パーソナルモビリティ、または移動手段であっても良い。移動体2の移動は、移動体2が備える後述の制御部26によって制御される。
【0015】
本開示において、後述するコンテンツを収録する移動体2を「収録移動体」、コンテンツを再生する移動体2を「再生移動体」と称する場合がある。
【0016】
複数の移動体2が隊列走行を行う場合、複数の移動体2のうちのいずれか1つの移動体(以下、先頭の移動体と記載する)が移動すると、他の移動体は、当該先頭の移動体に追従して順番に移動する。隊列走行を行う場合の他の移動体の移動は、それぞれの移動体において制御部26によって制御される。
【0017】
隊列走行を行う場合の先頭の移動体、または隊列走行を行わない場合の他の移動体は、あらかじめ決められた所定のルートを制御部26の制御に従って移動する自動運転を行う。または、隊列走行を行う場合の先頭の移動体、または隊列走行を行わない場合の他の移動体は、取得した目的地への最適ルートを算出し、センサにより取得した情報に基づいて自律的に走行する自律走行を行う。または、隊列走行を行う場合の先頭の移動体、または隊列走行を行わない場合の他の移動体は、搭乗者または遠隔操作者による手動運転を行われる。
【0018】
複数の移動体2の数は、2つでもよいし、3つ以上であってもよい。移動体2の数が2つである場合、1つは上述した先頭の移動体に対応し、もう1つは他の移動体に対応する。移動体2の数が3つ以上である場合、1つは先頭の移動体に対応し、残りの複数の移動体が他の移動体に対応することになる。
【0019】
<情報処理装置1>
次に、
図2を参照して、情報処理装置1の構成について説明する。情報処理装置1は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、を備える。
【0020】
通信部11は、複数の移動体2との通信を行う通信デバイスである。通信部11は、例えば複数の移動体2のいずれかが収録したコンテンツ、および、移動体2の位置などの情報を受信する。また、通信部11は、例えば移動体2に対してコンテンツを配信する。以下の説明において、移動体2が収録したコンテンツを収録コンテンツ、移動体2に配信されるコンテンツを配信コンテンツと記載することがある。
【0021】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)により構成されるプロセッサである。制御部12は、ROMに記憶されているプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って複数の移動体2に対するコンテンツの提供を行う。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム、およびプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。ROMは、不揮発メモリ等により構成され、制御の際に用いられる各種プログラムや各種データを記憶する。
【0022】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記録媒体によって構成されており、制御部12の制御に用いられる各種情報を記憶する。記憶部13に記憶される各種情報の詳細については、後述する。
【0023】
<移動体2>
次に、
図3を参照して、移動体2の構成について説明する。移動体2は、少なくとも、通信部21と、収録装置23と、再生装置24と、制御部26と、とを備える。さらに移動体2は、駆動装置22と、位置情報取得部25と、記憶部27と、速度情報取得部28と、方向情報取得部29と、を備える。
【0024】
通信部21は、情報処理装置1との通信を行う通信デバイスである。なお、通信部21は、他の移動体2とネットワークNWを介して、または介さずに通信可能であってもよい。通信部21は、情報処理装置1または他の移動体2と、有線又は無線で通信を行う。
【0025】
駆動装置22は、移動体2を移動させる装置である。駆動装置22は、例えば車輪または無限軌道等をモータまたはエンジン等の動力で駆動することで、移動体2を移動させる。駆動装置22の動作は、制御部26によって制御される。
【0026】
収録装置23は、画像、音声、およびコメント等のコンテンツを収録する装置である。収録装置23は、例えばカメラ、マイク、およびキーボードなどの入力装置である。収録装置23が画像を収録する場合、収録される画像は、静止画像および動画像のいずれでもよい。収録装置23の動作は、制御部26により制御される。収録装置23が収録したコンテンツのデータは、記憶部27に記憶されても良い。以下の説明において、コンテンツのデータを、単にコンテンツと記載することがある。なお、再生移動体においては、収録装置23は必須の構成ではない。
【0027】
再生装置24は、コンテンツを再生する装置である。再生装置24は、情報処理装置1から配信された配信コンテンツを再生することができる。他の移動体2によって収録された収録コンテンツは、情報処理装置1に記憶されており、情報処理装置1から通信部21を介して配信コンテンツが取得される。再生装置24は、例えばディスプレイ、スピーカ、およびイヤホンの少なくとも1つを備え、画像および音声の少なくとも一方を再生することができる。再生装置24の動作は、制御部26により制御される。または、再生装置24の動作は、情報処理装置1の制御部12によって制御されてもよい。なお、収録移動体においては、再生装置24は必須の構成ではない。
【0028】
位置情報取得部25は、移動体2の位置を示す情報を位置情報として取得する。例えば、移動体2が所定のルートを移動する自動運転を行う場合、所定のルートがどのようなルートであるかを示す情報は、記憶部27に記憶されていても良い。
【0029】
例えば位置情報は、所定のルート内にあらかじめ設定された特定の地点のうち、移動体2がどの地点にいるかを示す情報である。また、位置情報は、移動体2が2つの異なる地点の間にいる場合には、どの地点とどの地点との間にいるかを示す情報である。
【0030】
位置情報取得部25が位置情報を取得する方法については、既知の方法が採用されうる。例えば、第1の方法として、特定の地点に複数のビーコンを設置し、ビーコンから得られた電波に基づいて位置を特定する方法がある。第2の方法として、GPS(Global Positioning System)衛星から受信したGPS信号に基づいて位置を特定する方法がある。また、第3の方法として、あらかじめ所定のルート内に配置された記憶された物体の形状および位置を記憶しておき、カメラやLiDAR(Light Detection And Ranging)等のセンサによって認識した周囲の環境情報と記憶した物体の形状および位置と照合することで、移動体の位置を特定する方法がある。また、第4の方法として、既知の地点からの移動距離および移動方向をオドメトリ等によって算出することで、現在位置を特定する方法がある。
【0031】
速度情報取得部28は、移動体2の速度に関する速度情報を生成する。速度情報取得部28は、例えば位置情報取得部25によって取得した移動体2の位置と、移動体2の位置の時間的変化とに基づき、移動体2の速度情報を生成する。または、速度情報取得部28は、加速度計を用いて取得した移動体2の加速度を積分することで、移動体2の速度情報を生成しても良い。または、速度情報取得部28は、移動体2の車輪の回転数に基づき、移動体2の速度情報を生成しても良い。また、速度情報取得部28は、例えばレーザードップラー速度計を用いることで、移動体2の速度情報を生成しても良い。
【0032】
方向情報取得部29は、移動体2の移動方向に関する方向情報を生成する。方向情報取得部29は、例えば位置情報取得部25によって取得した移動体2の位置と、移動体2の位置の時間的変化に基づき、移動体2の方向情報を生成する。または、方向情報取得部29は、移動体2の各車輪の回転数差に基づき、移動体2の方向情報を生成しても良い。
【0033】
制御部26は、例えば、CPU、ROM、およびRAMにより構成されるプロセッサである。制御部26は、ROMに記憶されているプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って収録装置23および再生装置24の制御を行う。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム、およびプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。ROMは、不揮発メモリ等により構成され、制御の際に用いられる各種プログラムや各種データを記憶する。
【0034】
制御部26は、駆動装置22を制御し、移動体2を移動させる。制御部26による移動体2の移動は、前述した隊列走行と自律走行のいずれでも良い。また、移動体2は、制御部26の制御による自動運転と、搭乗者または遠隔操作者による手動運転のいずれにより移動しても良い。
【0035】
隊列走行の場合、移動体2は、前方の移動体の位置を認識することで、前方の移動体の走行経路に沿って、前方の移動体と一定の車間距離を保つようにして移動するよう、制御部26によって制御される。また、手動運転の場合、移動体2は、ジョイスティック、ハンドル、またはリモートコントローラなどの入力装置を用いて制御部26を介した移動を行っても良く、介助者による手押しなど、制御部26を介さない移動を行っても良い。
【0036】
また、制御部26は、収録装置23を制御し、コンテンツを収録する。コンテンツの収録は、例えば入力装置などにより、移動体2の搭乗者により入力された指示に基づいて行われる。しかしこの限りではなく、コンテンツの収録は、例えば情報処理装置1の指示に基づき行われても良い。
【0037】
また、制御部26は、再生装置24を制御し、情報処理装置1から配信された配信コンテンツを再生する。配信コンテンツの再生は、例えば移動体2の位置情報に応じて、制御部26または情報処理装置1の指示に基づいて自動的に行われる。しかしこの限りではなく、配信コンテンツの再生は、例えば移動体2の搭乗者により入力された指示に基づき行われても良い。
【0038】
記憶部27は、HDDまたはSSD等の大容量記録媒体によって構成されている。記憶部27には、移動体2が移動する所定のルートに関する情報、移動体2の移動範囲の地図情報、収録装置23が収録した収録コンテンツのデータ、および、当該収録コンテンツの関連データ等が記憶される。収録コンテンツの関連データには、移動体2が収録した位置を示す収録位置情報、移動体2が収録を行った際の移動速度を示す収録速度情報、移動体2が収録を行った際の移動方向を示す収録方向情報、および、後述する時間情報等が含まれる。なお、移動体2は、記憶部27を有さない場合、収録装置23が収録した収録コンテンツを情報処理装置1に直接送信してもよい。
【0039】
または、記憶部27には、他の移動体2によって収録され、情報処理装置1を介して配信された配信コンテンツのデータおよびその関連データが記憶されてもよい。なお、移動体2は、記憶部27を有さない場合、配信された配信コンテンツを、情報処理装置1を介してストリーミング再生すれば良い。
【0040】
記憶部27に記憶されるデータは、その移動体2が上述した収録移動体であるか、再生移動体であるか、によって異なる。記憶部27が記憶するデータの詳細については、後述する。
【0041】
図4Aおよび
図4Bは、移動体2の外観の一例を示す模式図である。
図4Aは移動体2の上面図であり、
図4Bは移動体2の側面図である。
図4Aおよび
図4Bに示す例では、移動体2は電動車椅子であり、座席201と、ディスプレイ202と、スピーカ203とを備える。これにより、座席201に座った搭乗者は、ディスプレイ202に表示された画像を見ることができるとともに、スピーカ203から再生される音声を聞くことができる。
【0042】
図4Aに示す例では、ディスプレイ202が、搭乗者の視界の約半分を覆うように構成されている。これにより、搭乗者は、ディスプレイ202越しの風景と、ディスプレイ202に表示された画像と、を同時に見ることができる。なお、ディスプレイ202を、透明または半透明の透過型ディスプレイとしてもよい。この場合、搭乗者は、ディスプレイ202に表示された画像と、ディスプレイ202を通した風景とが重畳された様子を見ることができる。ディスプレイ202を透過型ディスプレイとする場合、ディスプレイ202が搭乗者の視界の約半分ではなく、視界のほぼ全体を覆うようにしてもよい。また、ディスプレイ202は、移動体2に設けたカメラで撮影したリアルタイムの周囲の風景と、配信された配信コンテンツとを重畳して表示させても良い。この場合、搭乗者は、例えば移動方向の前方を視認しつつ配信コンテンツを楽しむことができ、安全性と没入感の高いコンテンツ体験を得ることができる。
【0043】
また、
図4Aおよび
図4Bに示す例では、移動体2は複数の車輪204を備える。少なくとも一部の車輪204が駆動装置22(
図3参照)により駆動されることにより、移動体2は移動することができる。
【0044】
[動作]
以下では、
図5から
図23を参照して、情報処理システム100の動作について説明する。なお、以下においては、移動体の走行方式として、先頭の移動体はあらかじめ決められた所定のルートを制御部26の制御に従って移動する自動運転を行い、後方に位置する他の移動体は先頭の移動体に追従するよう搭乗者により操作される手動運転を行うことが想定されている。前述したように移動体の走行方式としては隊列走行の他に、自律走行があるが、自律走行の場合においても情報処理システム100の動作については共通である。
【0045】
なお、以下では、情報処理システム100が備える複数の移動体2のうち、コンテンツの収録を行う収録移動体を先頭の移動体である第1移動体2_1、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツを再生する再生移動体を他の移動体である第2移動体2_2と記載する。なお、収録移動体は先頭の移動体に限られず、再生移動体は他の移動体に限られない。
【0046】
図5は、第1移動体2_1と第2移動体2_2との移動距離および時間の関係を示す図であり、
図6から
図18は、
図5における所定の時間軸での第1移動体2_1と第2移動体2_2の位置を示す模式図である。
図5に示す例では、第1移動体2_1および第2移動体2_2が、美術館または博物館等において、あらかじめ設定された順路に沿って来場客の案内を行う場合が想定されている。第1移動体2_1には、展示物1から展示物4の4つの展示物を順次鑑賞する順路が設定されている。当該順路は、所定のルートの一例である。当該順路には、それぞれの展示物を鑑賞するのにふさわしい地点がそれぞれ設定されており、以下の説明では、展示物1を鑑賞する地点を第1地点P1、展示物2を鑑賞する地点を第2地点P2、展示物3を鑑賞する地点を第3地点P3、展示物4を鑑賞する地点を第4地点P4と記載する。
図5の縦軸は移動距離を、横軸は時間を示している。
【0047】
図5に示す例では、まず、第1移動体2_1が所定のルートを移動し、第2移動体2_2は、第1移動体2_1と同じルートを、第1移動体2_1に追従して移動する。従って、第1移動体2_1と第2移動体2_2とは同じルートを移動する。
図5に示す例では、配信コンテンツを再生する第2移動体2_2は1つであるが、第2移動体2_2は複数であってもよい。なお、コンテンツを収録する第1移動体2_1は、この例において1台のみである。
【0048】
初期状態において、第1移動体2_1および第2移動体2_2はいずれも第1地点P1に位置する。
図6は、初期状態における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
図6には、展示物1から展示物4、第1地点P1から第4地点P4、および、第1地点P1から第4地点P4を結ぶルートの例が示されている。
図6において、第1地点P1から第4地点P4を結ぶルートは、破線の矢印で示されている。
図6では、第1移動体2_1および第2移動体2_2がいずれも第1地点P1に位置する様子が示されている。
【0049】
第1移動体2_1は、例えば第1地点P1に位置するとき、搭乗者の指示等に基づき、コンテンツの収録を開始する。第1移動体2_1により収録された収録コンテンツには、第1移動体2_1から見た展示物1の様子、および、第1移動体2_1に搭乗する人物のコメント等の画像および音声の少なくともいずれかが含まれる。第1移動体2_1によるコンテンツの収録は、搭乗者が収録を停止させる指示を行わない限り、第1移動体2_1が第4地点P4に到着した後、第4地点P4におけるコンテンツ収録が完了するまで継続する。すなわち、第1移動体2_1は、移動中、および一時停止中の両方において、コンテンツを収録し続ける。
【0050】
図5に示す例では、第1移動体2_1は、時刻T1において第2地点P2へ向かって移動を開始する。続いて、第2移動体2_2は、時刻T2において第2地点P2へ向かって移動を開始する。
図7は、時刻T1から時刻T2までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0051】
第1移動体2_1は、時刻T3において第2地点P2に到着し、一時停止して搭乗者に展示物2を鑑賞させる。第2移動体2_2は、時刻T3においては第1地点P1から第2地点P2へ移動している途中である。
図8は、時刻T2から時刻T3までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0052】
第1移動体2_1は、時刻T4において第3地点P3へ向かって移動を開始する。第2移動体2_2は、時刻T4においても第1地点P1から第2地点P2へ移動している途中である。
図9は、時刻T3から時刻T4までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0053】
第2移動体2_2は、時刻T5において第2地点P2に到着し、一時停止して搭乗者に展示物2を鑑賞させる。第1移動体2_1は、時刻T5においては第2地点P2から第3地点P3へ移動している途中である。
図10は、時刻T4から時刻T5までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0054】
第1移動体2_1は、時刻T6において第3地点P3に到着し、一時停止して搭乗者に展示物3を鑑賞させる。第2移動体2_2は、時刻T6においても第2地点P2で一時停止している。
図11は、時刻T5から時刻T6までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0055】
第2移動体2_2は、時刻T7において第3地点P3へ向かって移動を開始する。第1移動体2_1は、時刻T7においても第3地点P3で一時停止している。
図12は、時刻T6から時刻T7までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0056】
第1移動体2_1は、時刻T8において第4地点P4へ向かって移動を開始する。第2移動体2_2は、時刻T8においては第2地点P2から第3地点P3へ移動している途中である。
図13は、時刻T7から時刻T8までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0057】
第1移動体2_1は、時刻T9において第4地点P4に到着し、一時停止して搭乗者に展示物4を鑑賞させる。第2移動体2_2は、時刻T9においても第2地点P2から第3地点P3へ移動している途中である。
図14は、時刻T8から時刻T9までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0058】
第2移動体2_2は、時刻T10において第3地点P3に到着し、一時停止して搭乗者に展示物3を鑑賞させる。第1移動体2_1は、時刻T10においても第4地点P4で一時停止している。
図15は、時刻T9から時刻T10までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0059】
第2移動体2_2は、時刻T11において第4地点P4へ向かって移動を開始する。第1移動体2_1は、時刻T11においても第4地点P4で一時停止している。
図16は、時刻T10から時刻T11までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0060】
第2移動体2_2は、時刻T12において第4地点P4へ向かって移動を開始する。第1移動体2_1は、時刻T12においても第4地点P4で一時停止している。
図17は、時刻T11から時刻T12までの間における第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。また、
図18は、時刻T12以降の第1移動体2_1および第2移動体2_2の位置を例示した図である。
【0061】
第1移動体2_1は、第4地点P4に到着し、第4地点P4におけるコンテンツの収録が完了すると、収録を停止する。第1移動体2_1は、所定のルートを移動している間、収録した収録コンテンツを、情報処理装置1に対して随時送信してもよいし、ある程度までコンテンツの収録を進めた上で、ある程度の量の収録コンテンツをまとめて情報処理装置1に対して送信してもよい。
【0062】
以上説明したように、第1移動体2_1と第2移動体2_2とは、所定のルートに沿って、時間差をおいて順次移動する。なお、第2移動体2_2は、第1移動体2_1が移動した軌跡に追従して移動することが望ましいが、第2移動体2_2は、第1移動体2_1と全く同じ軌跡を辿らなくてもよい。
【0063】
第2移動体2_2は、情報処理装置1から、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツを配信コンテンツとして受信する。そして、第2移動体2_2は、第2移動体2_2の現在位置と第1移動体2_1が収録を行った位置とが同じになるように、配信コンテンツを再生する。具体例を挙げると、第2移動体2_2は、第1移動体2_1がある展示物を鑑賞できる地点で収録した収録コンテンツを配信コンテンツとして受信し、第2移動体2_2がその展示物を鑑賞できる地点に位置するタイミングで配信コンテンツを再生する。より具体的には、第2移動体2_2は、第1移動体2_1がある展示物を鑑賞できる地点に到着したタイミングで収録開始された収録コンテンツを配信コンテンツとして受信し、第2移動体がその展示物を鑑賞できる地点に到着したタイミングで当該配信コンテンツを再生開始する。
【0064】
なお、
図5における線分の傾きは各移動体2の移動速度に対応している。
図5に示す例では、第1移動体2_1が第1地点P1から第2地点P2まで移動する際の移動速度の方が、第2移動体2_2が第1地点P1から第2地点P2まで移動する際の移動速度よりも速い。従って、第2移動体2_2は、第1移動体2_1が第1地点P1から第2地点P2まで移動しながら一定の時間にわたって収録した収録コンテンツを配信コンテンツとして受信し、第2移動体2_2が第1地点P1から第2地点P2まで移動しながら等速で(つまり、第1移動体2_1と同じ一定の時間にわたって)配信コンテンツを再生した場合、第2移動体2_2が第2地点P2に到着する前に、配信コンテンツの再生が完了してしまう。このような事態を回避するためには、各移動体2の移動速度に応じて、配信コンテンツの再生速度を変更すればよい。配信コンテンツの再生速度を変更する方法については、後述の
図23において詳細に説明する。
【0065】
[コンテンツの例]
次に、収録される収録コンテンツ、および配信されて再生される配信コンテンツの例について説明する。
【0066】
図19Aは、コンテンツの収録の例が示されている。また、
図19Bには、配信コンテンツの再生の例が示されている。本例では、コンテンツの一例としてコメントを採用している。
【0067】
なお、本開示では、コンテンツには、瞬間的に収録され、時間の経過に伴う差分を含まないコンテンツと、時間の経過に伴う差分を含むコンテンツと、が含まれる。コメントは、瞬間的に収録され、時間の経過に伴う差分を含まないコンテンツの一例である。なお、時間の経過に伴う差分を含まないコンテンツの他の例として、風景を撮影した写真等の静止画が挙げられる。また、時間の経過に伴う差分を含むコンテンツの例としては、動画、音声等が挙げられる。
【0068】
まず、第1移動体2_1がコンテンツを収録する様子について説明する。
図19Aは、第1移動体2_1がコンテンツを収録する様子について説明するための図である。
図19Aでは、美術館または博物館等において、第1移動体2_1がある展示物を鑑賞できる地点に位置するときに、搭乗者が発するコメントをコンテンツとして収録する様子が示されている。
図19Aにおいて、画面300は、コメント入力欄301、および、ソフトウェアキーボード302を含む。
【0069】
図19Aに示す例では、画面300が表示される第1移動体2_1のディスプレイ202(
図4参照)は、透過型ディスプレイであることが想定されている。このため、画面300を通して、展示物が透けて見えるようになっている。
図19Aおよび
図19Bでは、画面300を通して見えている展示物を破線で示している。第1移動体2_1の搭乗者は、画面300を通して、または通さずに展示物を見ながら、コメント入力欄301に感想等のコメントを入力する。
【0070】
コメント入力欄301は、第1移動体2_1の搭乗者が展示物2を見て抱いた感想等のコメントを表示する欄である。ソフトウェアキーボード302は、コメント欄に表示される文字を入力するための入力手段である。コメント入力欄301およびソフトウェアキーボード302は、例えば搭乗者が画面300の一部をタッチすることにより表示される。コメント入力欄301は、例えば搭乗者がタッチした位置に表示され、ソフトウェアキーボード302は、例えば画面300内の所定の位置に表示される。
【0071】
次に、第2移動体2_2が配信コンテンツを再生する様子について説明する。
【0072】
図19Bは、
図19Aで収録された収録コンテンツが配信コンテンツとして配信され、第2移動体2_2が、配信コンテンツを再生する様子について説明するための図である。
図19Bでは、第2移動体2_2が、
図19Aで第1移動体2_1がコンテンツの収録を行った展示物を鑑賞できる地点に位置しているとき、
図19Aで収録された収録コンテンツが配信コンテンツとして配信された後、配信された配信コンテンツを再生する様子が示されている。
【0073】
図19Bでは、第2移動体2_2のディスプレイも第1移動体2_1と同様に、透過型ディスプレイである。このため、画面400を通して、展示物が透けて見えている。
【0074】
画面400内には、
図19Aで収録された収録コンテンツに対応する、第1移動体2_1の搭乗者のコメントを含むコメント欄401が配信コンテンツとして表示されている。画面400内におけるコメント欄401の表示位置は、
図19Aに示す画面300内のコメント入力欄301とほぼ同じ位置であることが望ましい。
図19Bにおいてコメント欄401に表示されているコメント「M1:きれい!」において、M1は、第1移動体2_1の識別番号(機体番号)である。このように、収録された収録コンテンツと収録コンテンツを収録した人または物の属性情報とが、紐づけて再生されることが望ましい。これにより、どの移動体2に搭乗した搭乗者がコメントを付けたかが第2移動体2_2の搭乗者に容易に分かる。
【0075】
このように、コンテンツ収録時の位置情報を収録コンテンツと関連付けておき、収録字の位置に合わせて配信コンテンツを再生することにより、複数の移動体2に搭乗する搭乗者達は、同じ体験を共有することができる。
【0076】
なお、本例のように、第1移動体2_1の収録した収録コンテンツが、瞬間的に記録されたもの、すなわち時間の経過に伴う差分を含まないものであったとしても、収録コンテンツに対応する配信コンテンツを再生する第2移動体2_2側では、収録時間の前後にわたって継続して再生されることが望ましい。このことで、例えば、第2移動体2_2の搭乗者が、コメント欄401が一瞬しか表示されないために内容を見ることができない、といった問題を抑制することができる。
【0077】
また、搭乗者がソフトウェアキーボード302に入力を行っている時間を、コンテンツの収録開始時間と見なしても良い。この場合、コンテンツは、搭乗者がコメントを入力する様子を示す動画として収録され、後述する他の例のように、収録開始からの時間の経過に伴う差分を含む配信コンテンツとして配信され、第2移動体2_2により再生される。このような配信コンテンツが再生されることで、例えば、第2移動体2_2の搭乗者には、第1移動体2_1の搭乗者の感想がまるでリアルタイムに入力されているように見えるため、第2移動体2_2の搭乗者に対して、第1移動体2_1の搭乗者と同じ体験を共有しているという印象をより強く与えることができる。
【0078】
図20Aおよび
図20Bは、コンテンツの収録および再生の別の例を示している。本例では、時間の経過に伴う差分を含むコンテンツの一例として、動画を挙げる。すなわち、動画や音声といった、収録開始からの経過時間を含むコンテンツを例示する。
【0079】
図20Aおよび
図20Bに示す例では、第1移動体2_1および第2移動体2_2が、広大な公園等の観光地において、滝、桜の木、紅葉、花壇等の観光スポットを含む、あらかじめ設定された観光ルートを移動する場合のコンテンツが示されている。
【0080】
多数の来場客が第2移動体2_2に搭乗し、広大な公園内を移動するような場合でも、第1移動体2_1および複数の第2移動体2_2が数珠つなぎになって移動することで、互いにはぐれてしまう事態を防止することができるなど、安全性が高く、かつ搭乗者にとって安心できる、グループでの移動を行うことができる。
【0081】
なお、第1移動体2_1および複数の第2移動体2_2が数珠つなぎになって移動する場合、搭乗者が見たい風景が前方を移動する移動体2の陰になってしまい、見にくくなることがある。第1移動体2_1が先頭を移動しながら風景を収録コンテンツとして収録し、第1移動体2_1に追従して移動する第2移動体2_2において収録された収録コンテンツに対応する配信コンテンツを再生することにより、搭乗者が見たい風景が前方を移動する移動体2の陰になってしまった場合でも、陰になった風景を見ることができる。
【0082】
図20Aおよび
図20Bに示す例では、移動体2のディスプレイ202は、透過型ではないことが想定されている。
図20Aは、コンテンツ収録時における、第1移動体2_1の搭乗者の視界を例示した図である。
図20Aには、第1移動体2_1の搭乗者から見える風景の一例としての木500と、当該木500を撮影した画像600を表示したディスプレイ202と、が示されている。
【0083】
一方、
図20Bは、
図20Aで収録された収録コンテンツに対応する配信コンテンツを再生する時の、第2移動体2_2の搭乗者の視界を例示した図である。
図20Bにおいて、第2移動体2_2の搭乗者には、前方の移動体2により、木500が隠れて見えないことが想定されている。しかしながら、ディスプレイ202には、
図20Aで収録された収録コンテンツに対応する配信コンテンツを再生した場合の画像600が表示されているため、搭乗者は木500がどのように見えるかを体験することができる。これにより、第1移動体2_1の搭乗者と、第2移動体2_2の搭乗者とが、共通の体験を行うことができる。
【0084】
なお、
図20Aおよび
図20Bに示す例では、第1移動体2_1および第2移動体2_2が数珠つなぎになって移動する場合を想定していた。しかしこれに限られず、例えば第1移動体2_1および第2移動体2_2が互いに離れて同じルートを移動する場合でも、同様のコンテンツ収録および再生を行うことができる。
【0085】
また、第1移動体2_1が収録を行うタイミングと、第2移動体2_2が再生を行うタイミングとが、大きく異なっていてもよい。例えば、第1移動体2_1が春に桜が咲いている様子を収録コンテンツとして収録しておき、秋に移動体2が当該ルートを巡回する際に、紅葉した木々の間を移動しながら、桜が咲いている様子を示す収録コンテンツに対応する配信コンテンツを再生するようにしてもよい。このような場合でも、移動体2の搭乗者に、同じ体験を共有させることができる。
【0086】
また、収録開始からの時間の経過に伴う差分を含むコンテンツの他の例として、例えば搭乗者が展示物を見て発した音声がコンテンツとして収録されてもよい。この場合、第1移動体2_1に設けられたマイクが搭乗者の音声を録音する。さらに発展例として、例えば第1移動体2_1の搭乗者が、美術館または博物館の解説員であり、収録される収録コンテンツが展示物の解説等の音声である場合も挙げられる。このような場合、解説員が搭乗する第1移動体2_1が館内を移動し、展示物を鑑賞できる地点で解説員が行った解説が収録コンテンツとして収録される。そして、第1移動体2_1の移動した軌跡に沿って、来場客が搭乗する第2移動体2_2が移動し、展示物を鑑賞できる地点で解説員が行った解説を含む収録コンテンツに対応する配信コンテンツを再生する。これにより、多数の来場客が複数の第2移動体2_2に搭乗することで、同じ展示物を鑑賞できる地点にて同じ解説を視聴するという、共通の体験を行うことができる。
【0087】
また、収録および再生されるコンテンツは、上述した種々のコンテンツの例を複数組み合わせても良い。例えば、スポーツ観戦を行うスタジアムの見学ツアーというシチュエーションにおいて、移動体2は、再生装置24であるスピーカから案内音声を流しながら、再生装置24であるディスプレイにスポーツに関連する情報を出力する。このように、収録および再生されるコンテンツは、瞬間的に収録され、収録開始からの時間の経過に伴う差分を含まないコンテンツと、収録開始からの時間の経過に伴う差分を含むコンテンツとが、組み合わせられたものであっても良い。また、移動体2は、例えば上記と同じ、スタジアムの見学ツアーというシチュエーションにおいて、再生装置24であるスピーカから案内音声を流しながら、再生装置24であるディスプレイに、現在のスタジアムの様子と、同じスタジアムで以前収録された選手の練習風景とを、重畳して表示させても良い。
【0088】
[処理内容]
以下、上述したような移動体2の移動およびコンテンツの再生を実現するための情報処理システム100の処理内容の詳細について、
図21を参照して説明する。
【0089】
ステップS1において、第1移動体2_1は、所定のルートの移動を開始するとともに、コンテンツの収録を開始する。なお、
図21に示す例では、第1移動体2_1の移動とコンテンツ収録とがほぼ同時に開始される場合について説明するが、例えば移動の方がコンテンツ収録より先に開始されてもよいし、コンテンツ収録の方が移動よりも先に開始されてもよい。
【0090】
第1移動体2_1が収録する収録コンテンツには、上述したように、コメント(文字)、静止画、動画、または音声等のコンテンツが含まれる。収録コンテンツがコメントまたは静止画等のように、瞬間的に記録され、収録開始からの時間の経過に伴う差分を含まない場合には、収録開始からの経過時間を示す時間情報が追加される。収録コンテンツが収録開始からの時間の経過に伴う差分を含む動画であって、動画が複数フレームからなる場合には、時間情報の代わりに、あるフレームが収録開始から何枚目のフレームであるかを示すフレーム情報が含まれてもよい。
【0091】
また、第1移動体2_1は、コンテンツを収録している間の自らの位置情報を生成し、収録した収録コンテンツと関連付けて記憶する。より具体的には、第1移動体2_1は、コンテンツを収録している間、第1移動体2_1の位置を示す第1位置情報を生成し、収録した収録コンテンツに含まれる時間情報またはフレーム情報と互いに関連付けて、記憶部27に記憶する。第1位置情報および時間情報またはフレーム情報により、収録コンテンツのどの部位が、第1移動体2_1が所定のルート内のどの位置にいたときに収録されたかが、容易に特定できるようになる。
【0092】
また、第1移動体2_1は、第1移動体2_1の移動の際の移動速度を示す第1速度情報を生成し、収録コンテンツの時間情報に関連付けて記憶部27に記憶する。これにより、コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の速度が、容易に特定できるようになる。
【0093】
さらに、第1移動体2_1は、第1移動体2_1の移動の際の移動方向を示す第1方向情報を生成し、収録コンテンツの時間情報に関連付けて記憶部27に記憶する。これにより、コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の移動方向が、容易に特定できるようになる。
【0094】
ステップS2において、第1移動体2_1は、収録された収録コンテンツと、当該収録コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の位置を示す第1位置情報、当該収録コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の移動速度を示す第1速度情報、および当該収録コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の移動方向を示す第1方向情報を、情報処理装置1に対して送信する。
【0095】
なお、ステップS2において、第1移動体2_1は、その時点までに収録された収録コンテンツを随時送信してもよいし、ある程度までコンテンツの収録を進めた上で、ある程度の量の収録コンテンツをまとめて送信してもよい。収録コンテンツを随時送信する場合の例として、フレーム毎に生成される動画像等の収録コンテンツにおいて、フレーム毎に収録コンテンツを送信するような場合が挙げられる。また、ある程度の量の収録コンテンツをまとめて送信する場合の例として、所定のルート内の1つの地点における収録が完了した時点で、当該地点で収録された一連の収録コンテンツをまとめて送信するような場合が挙げられる。
【0096】
ステップS3において、情報処理装置1は、収録コンテンツと、第1位置情報、第1速度情報、および第1方向情報とを受信し、これらを互いに関連付けて記憶部13に記憶する。具体的には、情報処理装置1は、第1位置情報を、第1移動体2_1が収録を行った位置を示す収録位置情報とし、収録コンテンツと関連付けて記憶する。さらに、情報処理装置1は、第1速度情報を、第1移動体2_1が収録を行っている間の移動速度を示す収録速度情報とし、収録コンテンツと関連付けて記憶する。さらに、情報処理装置1は、第1方向情報を、第1移動体2_1が収録を行っている間の移動方向を示す収録方向情報とし、収録コンテンツと関連付けて記憶する。この処理を繰り返すことにより、記憶部13は、その時点までに収録された一連のコンテンツと、当該コンテンツに関連付けられた収録位置情報、収録速度情報、および収録方向情報とを蓄積する。
【0097】
一方、ステップS4において、第2移動体2_2は移動を開始する。第2移動体2_2が複数である場合、複数の移動体2_2は、例えば必要な車間距離を空けて、1台ずつ移動を開始すればよい。
図21では、第2移動体2_2が1台である場合の動作が示されている。
【0098】
ステップS5において、第2移動体2_2は、自らの位置を示す第2位置情報、自らの移動速度を示す第2速度情報、および、自らの移動方向を示す第2方向情報を生成し、情報処理装置1に対して送信する。
【0099】
ステップS6において、情報処理装置1は、第2移動体2_2の現在位置を示す第2位置情報、移動速度を示す第2速度情報、および、移動方向を示す第2方向情報を受信する。
【0100】
ステップS7において、情報処理装置1は、ステップS3で記憶部13に記憶した、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツ、収録位置情報、収録速度情報、および収録方向情報、ならびに、ステップS6で受信した第2位置情報、第2速度情報、および第2方向情報に基づいて、第2移動体2_2に対して配信コンテンツを送信する。なお、記憶部13に複数の収録コンテンツおよびその関連データが記憶されている場合、第2位置情報とほぼ一致する収録位置情報に関連付けられた収録コンテンツを、第2移動体2_2に配信する配信コンテンツとすれば良い。本ステップS7における、第2移動体2_2に対する配信コンテンツの再生制御の詳細は、後述する。
【0101】
ステップS8において、第2移動体2_2は、ステップS7での情報処理装置1による再生制御に基づいて、配信コンテンツの再生を開始する。
【0102】
ステップS9において、第1移動体2_1は、コンテンツの収録および移動を終了する。その後、ステップS10において、第2移動体2_2は、配信コンテンツの再生および移動を終了する。
【0103】
以上、情報処理システム100の動作について説明した。このような動作により、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツを、第1移動体2_1と同じルートを移動する第2移動体2_2において、同じ位置で配信コンテンツとして再生させることができる。これにより、第1移動体2_1に搭乗する人物が見た風景、景色、または場面と同じ風景、景色、または場面を、第2移動体2_2に搭乗する人物にも同じように体験させることができるとともに、複数の第2移動体2_2に登場する人物の間で、同じ体験を共有させることができる。
【0104】
[情報処理装置1の処理]
次に、
図22を参照して、
図21に示す情報処理システム100の動作の中で、情報処理装置1が行う処理について詳細に説明する。
【0105】
ステップS11において、情報処理装置1は、第1移動体2_1から、収録コンテンツ、第1位置情報、第1速度情報、および第1方向情報を受信する。なお、収録コンテンツとは、上述したように、第1移動体2_1が収録したコンテンツである。
【0106】
ステップS12において、情報処理装置1は、ステップS11で受信した第1位置情報、第1速度情報、および第1方向情報を、それぞれ、第1移動体2_1が収録を行った位置を示す収録位置情報、第1移動体2_1が収録を行っている間の移動速度を示す収録速度情報、および第1移動体2_1が収録を行っている間の移動方向を示す収録方向情報とし、収録コンテンツと関連付ける。
【0107】
ステップS13において、情報処理装置1は、ステップS12で関連付けた収録コンテンツと、収録位置情報、収録速度情報、および収録方向情報と、を記憶部27に記憶させる。
【0108】
ステップS14において、情報処理装置1は、第2移動体2_2から、第2位置情報、第2速度情報、および第2方向情報を受信する。
【0109】
ステップS15において、情報処理装置1は、第2位置情報、第2速度情報、および第2方向情報に基づいて、記憶部27に記憶された収録コンテンツの中から、第2移動体2_2に配信すべきコンテンツ(配信コンテンツ)を決定する。配信コンテンツとは、上述したように、情報処理装置1に記憶された収録コンテンツであって、第2移動体2_2に配信して再生させるコンテンツである。
【0110】
情報処理装置1が、収録コンテンツの中から、第2移動体2_2に配信する配信コンテンツをどのように決定するか、については、後に
図23を参照しながら、詳細を説明する。
【0111】
ステップS16において、情報処理装置1は、第2位置情報、第2速度情報、および第2方向情報、並びにステップS15で決定した配信コンテンツに基づいて、配信コンテンツの再生速度を指定する再生速度情報を生成する。配信コンテンツの再生速度を決定する方法については、後に
図23を参照しながら、詳細を説明する。
【0112】
ステップS17において、情報処理装置1は、ステップS15で決定した配信コンテンツと、ステップS16で決定した再生速度情報とを、第2移動体2_2へ送信する。これにより、第2移動体2_2は、コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の位置と同じ位置に来たときに、その位置で収録された収録コンテンツと同じ場面の配信コンテンツを再生することができる。また、第2移動体2_2は、自らの移動速度に合わせた再生速度で、配信コンテンツを再生することができる。
【0113】
[配信コンテンツおよび再生速度の決定方法]
次に、
図23を参照して、情報処理装置1における、配信コンテンツを決定する方法(
図22のステップS15に対応)、および、配信コンテンツの再生速度を決定する方法(
図22のステップS16に対応)の詳細について説明する。
【0114】
ステップS21において、情報処理装置1は、記憶部13に蓄積されている収録位置情報の中から、第2移動体2_2の現在位置との距離が第1閾値α1未満となる第1移動体2_1の収録時の位置を示す収録位置情報を抽出する。第1閾値α1の大きさは、例えば情報処理システム100の管理者等によって、適宜設定される。第2移動体2_2の現在位置を示す第2位置情報は、
図22のステップS14において情報処理装置1に受信されている。
【0115】
例えば、第2位置情報が示す第2移動体2_2の現在位置が
図5に示す第2地点P2である場合、情報処理装置1は、記憶部13に記憶されている収録位置情報の中から、第1移動体2_1の位置が第2地点P2である収録位置情報を抽出する。
【0116】
また、第2位置情報が示す第2移動体2_2の現在位置が、
図5に示す第1地点P1と第2地点P2との間である場合、情報処理装置1は、記憶部13に記憶されている収録位置情報の中から、第1移動体2_1の位置が第1地点P1と第2地点との間である収録位置情報を抽出する。
【0117】
これにより、第2移動体2_2の現在位置と合致する第1移動体2_1の位置を示す収録位置情報を抽出することができる。
【0118】
次に、ステップS22において、情報処理装置1は、ステップS21で抽出した収録位置情報の中から、第2移動体2_2の現在の移動方向とのなす角が所定の第2閾値α2未満である移動方向を示す収録移動方向に関連付けられた収録位置情報を抽出する。第2移動体2_2の現在の移動方向を示す第2方向情報は、
図22のステップS14において情報処理装置1に受信されている。
【0119】
第1移動体2_1と第2移動体2_2が所定のルートを移動する途中において、同じ位置を、それぞれ全く別の方向を向いた状態で通過することがありうる。このような場合、第1移動体2_1から見える風景と第2移動体2_2から見える風景とは全く異なるため、同じ位置だからといって第1移動体2_1が収録した収録コンテンツを第2移動体2_2に配信コンテンツとして配信したのでは、第1移動体2_1に搭乗した人物と第2移動体2_2に搭乗した人物とに同じ体験を共有させることができない。ステップS22において、第1移動体2_1の移動方向と第2移動体2_2の移動方向とのなす角が第2閾値α2未満の収録位置情報を抽出することにより、たまたま第2移動体2_2の現在位置と同じ位置であっただけで、移動方向が全く異なる収録位置情報を排除することができる。
【0120】
次に、ステップS23において、情報処理装置1は、記憶部13から、ステップS22で抽出した収録位置情報に関連付けられた収録コンテンツを抽出する。例えば、ステップS22で抽出した収録位置情報が示す第1移動体2_1の位置が
図5に示す第2地点P2である場合、第1移動体2_1が第2地点P2において収録した一連の収録コンテンツが抽出される。また、ステップS22で抽出した収録位置情報が示す第1移動体2_1の位置が第1地点P1と第2地点P2との間である場合、第1移動体2_1が第1地点P1から第2地点P2へ移動する間に収録した一連の収録コンテンツが抽出される。
【0121】
次に、ステップS24において、情報処理装置1は、ステップS22で抽出した収録位置情報に関連付けられた収録速度情報が示す第1移動体2_1の速度と、第2移動体2_2の速度とに基づいて、収録コンテンツを第2移動体2_2に送信して配信コンテンツとして再生させるときの再生速度を決定する。
【0122】
具体例を挙げて説明する。第1移動体2_1が収録コンテンツを収録しながら、
図5に示す第1地点P1から第2地点P2へ、速度V1の定速で移動したとする。そして、第2移動体2_2は、現在、第1地点P1から第2地点P2へ、速度V2の定速で移動しているとする。この場合、第2移動体2_2が第1地点P1から第2地点P2へと移動するのに要する時間は、第1移動体2_1が第1地点P1から第2地点P2へと移動するのに要した時間のV1/V2倍となる。
【0123】
第1移動体2_1が第1地点P1から第2地点P2へ移動している間に収録された一連の収録コンテンツが、第2移動体2_2において配信コンテンツとして再生される場合、第2移動体2_2が第1地点P1から第2地点P2へ移動する間に再生が完了することが望ましい。この場合、第2移動体2_2における配信コンテンツの再生速度をV2/V1に設定することで、当該配信コンテンツの再生は、第2移動体2_2が第1地点P1から第2地点P2へ移動している間に完了させることができる。
【0124】
第1移動体2_1の移動速度V1より第2移動体2_2の移動速度V2の方が小さい場合、第1地点P1から第2地点P2への移動に要する時間は、第1移動体2_1よりも第2移動体2_2の方が長くなる。このような場合、情報処理装置1は、配信コンテンツの再生速度を等倍よりも遅くなるように決定する。一方、第1移動体2_1の移動速度V1より第2移動体2_2の移動速度V2の方が大きい場合、第1地点P1から第2地点P2への移動に要する時間は、第1移動体2_1よりも第2移動体2_2の方が短くなる。このような場合、情報処理装置1は、配信コンテンツの再生速度を等倍よりも早くなるように決定する。
【0125】
上述した例では第1移動体2_1と第2移動体2_2が定速で移動する場合について説明したが、定速の移動ではない場合には、例えば地点間の移動速度の平均値を用いて、配信コンテンツの再生速度を好適に調整することができる。
【0126】
なお、第2移動体2_2における再生速度を変更する方法については、既知の技術を採用することができる。例えば配信コンテンツがフレーム毎に生成された動画像である場合、決定した再生速度に応じてフレームレートを調整することにより、第2移動体2_2における再生速度を好適に変更することができる。
【0127】
例えば配信コンテンツが動画像または音声である場合、再生速度を速くしすぎると、何が表示されているか分からない、または何を言っているのか分からない事態が生じうる。このような事態を回避するため、再生速度の上限をあらかじめ設けていてもよい。
【0128】
以上説明したようにして情報処理装置1が配信すると決定した配信コンテンツ、および再生速度情報は、この後、
図22のステップS17において、第2移動体2_2に送信される。
【0129】
[効果]
本開示の情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置によれば、例えば、博物館や美術館のような施設などにおいて、ひとつの移動体が展示物を鑑賞した際の体験(収録コンテンツ)を、他の移動体が同じ展示物の前に来たときに他の移動体に配信コンテンツとして配信し、再生させることができる。したがって、他の移動体に搭乗または付随して移動する人物が、ひとつの移動体が展示物を鑑賞した際の体験を共有することができる。
【0130】
また、本開示の情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置によれば、複数の人物に同じ体験を共有させるために、複数の移動体における配信コンテンツの再生を好適に制御することができる。このことで、例えば、ひとつの移動体とは異なる位置に存在する他の移動体において、ひとつの移動体と同じコンテンツが同じタイミング、同じ再生速度で再生されると、他の移動体に搭乗または付随して移動する人物がある展示物の前まで来ていない状態でコンテンツの再生が開始されてしまったり、他の移動体の移動途中でコンテンツの再生が終わってしまったりすることで、他の移動体に搭乗する人物がひとつの移動体に搭乗または付随して移動する人物と同じ体験を共有できない、といった事態を抑制することができる。
【0131】
[変形例]
上述した実施の形態では、移動体2の例として、再生装置を備えた電動車椅子を挙げた。しかしながら、本開示の移動体は、自ら移動する機能を有していなくともよく、例えば人が搬送することで移動可能な装置であってもよい。具体的には、本開示の移動体は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末装置であってもよい。また、複数の移動体の全てが同種の装置であってもよいし、複数種類の装置が混在していてもよい。すなわち、コンテンツを収録する移動体が電動車椅子であって、電動車椅子が収録した収録コンテンツを、電動車椅子と同じルートを移動する携帯端末装置が配信コンテンツとして再生してもよい。また、同じ空間を移動する移動体2のグループに複数種類の装置が混在していてもよい。例えば、電動車椅子によって収録した収録コンテンツは、後続する電動車椅子と、付近を移動する人物が携帯するタブレット端末に、それぞれ配信コンテンツとして配信され、再生されてもよい。
【0132】
上述した実施の形態では、
図3に示すように、移動体2は収録装置23と再生装置24とを両方備えているが、移動体2は、収録装置23と再生装置24のいずれか一方を備えていてもよい。この場合、収録装置23のみを備え、コンテンツの収録のみを行う収録移動体である移動体2が先に移動し、再生装置24のみを備え、コンテンツの再生のみを行う再生移動体である移動体2が後に移動する。
【0133】
上述した実施の形態では、移動体2の位置を示す位置情報を、位置情報取得部25が取得して情報処理装置1が受信する例について説明した。しかしながら、移動体2の位置を示す位置情報を、情報処理装置1が直接取得してもよい。例えば、情報処理装置1は、特定の地点に設置されたカメラが移動体2を撮影したとき、カメラの設置場所および画角に基づき、当該移動体2が当該地点にいることを示す位置情報を算出してもよい。また、このような位置情報の算出を、例えばカメラを管理する監視システムによって行い、情報処理装置1が当該監視システムから移動体2の位置を示す位置情報を受信してもよい。このように、移動体2の位置を示す位置情報は、情報処理装置1により取得または受信されればよい。
【0134】
上述した実施の形態では、移動体2の移動速度を示す速度情報を、速度情報取得部28が取得し、情報処理装置1が受信する例について説明した。しかしながら、移動体2の移動速度を示す速度情報を、情報処理装置1が直接取得してもよい。例えば、情報処理装置1は、移動体2の位置と、移動体2の位置の時間的変化に基づき、移動体2の速度情報を生成することで取得する。このように、移動体2の移動速度を示す速度情報は、情報処理装置1により取得または受信されればよい。
【0135】
上述した実施の形態では、移動体2の移動方向を示す方向情報を、方向情報取得部29が取得し、情報処理装置1が受信する例について説明した。しかしながら、移動体2の移動方向を示す方向情報を、情報処理装置1が直接取得してもよい。例えば、情報処理装置1は、移動体2の位置と、移動体2の位置の時間的変化に基づき、移動体2の方向情報を生成することで取得する。このように、移動体2の移動方向を示す方向情報は、情報処理装置1により取得または受信されればよい。
【0136】
上述した実施の形態では、複数の移動体2は、先頭の移動体と、当該先頭の移動体に追従して移動する他の移動体と、を含む例について説明した。他の移動体は、先頭の移動体と全く同じルートを移動してもよいし、あらかじめ設定された、許容される範囲内で当該ルートから多少外れて移動してもよい。この場合、他の移動体は、小さい障害物等を回避する自律行動等が許容されるため、安全性が向上する。また、このように他の移動体が、先頭の移動体の移動したルートから多少外れたルートを移動する場合、
図23のステップS21で説明した第1閾値α1を調節することにより、他の移動体において好適に配信コンテンツを再生することができる。
【0137】
また、例えば他の移動体が、所定のルートの途中から入ってきた場合には、以下のような対応により、他の移動体において配信コンテンツの途中からの再生を行わせることができる。上述した実施形態において、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツには、収録開始からの経過時間を示す時間情報が含まれる(
図21のステップS1)。コンテンツは、コンテンツを収録している間の第1移動体2_1の位置を示す収録位置情報と関連付けられているため、当該時間情報により、収録コンテンツのどの部位が、第1移動体2_1が所定のルート内のどの位置にいたときに収録されたかが、容易に特定できる。
【0138】
このため、第2移動体2_2が所定のルートの途中から入ってきた場合、第2位置情報が示す、第2移動体2_2の現在位置と同じ位置に第1移動体2_1がいたとき、収録コンテンツのどの部位が収録されていたかが容易に特定できる。これにより、第2移動体2_2が所定のルートの途中から入ってきた場合には、第2移動体2_2において、第1移動体2_1が収録した収録コンテンツの途中からの再生を行わせることができる。
【0139】
上述した実施の形態では、移動体2の移動開始から移動終了まで、コンテンツの収録または再生を継続する例について説明した。しかしながら、移動体2が、コンテンツを収録または再生せずに移動するタイミングがあってもよい。例えば本開示には、
図5に示す例において、移動体2が第2地点P2に停止している間はコンテンツの収録または再生を行うが、移動体が第2地点P2から第3地点P3へ向かって移動している間はコンテンツの収録または再生を行わない、といった態様も含まれる。
【0140】
上述した実施の形態では、情報処理装置1が、移動体2の制御を行っていた。しかしながら、例えば上述した実施形態の情報処理装置1の機能を、複数の移動体2のいずれか、または全ての移動体2が有していてもよい。この場合、情報処理装置1の機能を有する移動体2は、コンテンツの収録を行った移動体2から収録コンテンツ及びその関連データを取得して関連付けて記憶し、自らの位置情報等に基づいて当該収録コンテンツを自ら再生する。または、情報処理装置1の機能を有する移動体2は、他の移動体2から取得した位置情報等に基づいて、他の移動体2に対して当該収録コンテンツを配信する。この場合、情報処理システム100は、情報処理装置1を備える必要がなくなり、情報処理システム100の運用コストを低減できる。
【0141】
上述した実施の形態では、配信された配信コンテンツの再生制御は、配信コンテンツを受信した移動体2自身が行っていた。しかしながら、例えば移動体2における配信コンテンツの再生制御の一部または全部を、情報処理装置1が行ってもよい。具体的には、情報処理装置1は、移動体2から受信した位置情報を用いて、どの収録コンテンツを配信コンテンツとして再生させるか、または収録コンテンツの開始から何秒経過した箇所を再生させるか、どの程度の再生速度で再生させるか、等を決定し、決定した内容に基づいて、移動体2が有する再生装置24を遠隔操作すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示は、複数の移動体においてコンテンツの収録および再生を行うシステムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0143】
100 情報処理システム
1 情報処理装置
2 移動体
2_1 第1移動体
2_2 第2移動体
11 通信部
12 制御部
13 記憶部
21 通信部
22 駆動装置
23 収録装置
24 再生装置
25 位置情報取得部
26 制御部
27 記憶部