(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021683
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】双眼拡大鏡、および双眼拡大鏡セット
(51)【国際特許分類】
G02B 23/18 20060101AFI20230207BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
G02B23/18
G02C7/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126715
(22)【出願日】2021-08-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】501046420
【氏名又は名称】HOYA Technosurgical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】小口 睦
(72)【発明者】
【氏名】石川 剛
【テーマコード(参考)】
2H039
【Fターム(参考)】
2H039AA05
2H039AB22
2H039AB46
2H039AB52
(57)【要約】
【課題】装用時のズレを抑え、使用性の向上を図った双眼拡大鏡等を提供する。
【解決手段】
フレーム1と、ノーズパッド2と、左右一対の拡大光学系ユニット3と、を備え、一対の拡大光学系ユニット3の各々は、装用者の側に配置された接眼レンズ30と、視認対象の側に配置された対物レンズ31と、接眼レンズ30と対物レンズ31との間に配置されて接眼レンズ30に視認対象からの光を導く光学素子32と、を有し、ノーズパッド2の中で、接眼レンズ30の光軸X1から下方に最も離れている場所をノーズパットの下端基準位置Pと定義したとき、フレーム1、ノーズパッド2、および一対の拡大光学系ユニット3の全体の重心位置Gと、下端基準位置Pとの間の光軸X1が延びる光軸方向の距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者の頭部に装着可能なフレームと、
前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、
前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、
を備え、
一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、
前記装用者の側に配置された接眼レンズと、
前記視認対象の側に配置された対物レンズと、
前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、
を有し、
前記ノーズパッドの中で、前記接眼レンズの光軸から下方に最も離れている場所を該ノーズパットの下端基準位置と定義したとき、
前記フレーム、前記ノーズパッド、および前記一対の拡大光学系ユニットの全体の重心位置と、前記下端基準位置との間の前記光軸の方向における距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値となっている双眼拡大鏡。
【請求項2】
前記光学素子の体積は、300〔mm3〕以上3700〔mm3〕以下である請求項1に記載の双眼拡大鏡。
【請求項3】
前記光学素子の前記光軸の方向における最厚部分の寸法は7.0〔mm〕以上16.5〔mm〕以下である請求項1または2に記載の双眼拡大鏡。
【請求項4】
前記光軸に直交するとともに前記装用者の上下方向に沿う前記光学素子の高さ方向において、前記光軸から前記光学素子の最上部までの距離が8.0〔mm〕以上18.5〔mm〕以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡
【請求項5】
前記拡大光学系ユニットは、
前記光学素子を収容するハウジングと、
前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置され、前記光学素子よりも密度が小さい材料からなるスペーサと、
を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡。
【請求項6】
前記光学素子は、前記対物レンズ側を向く第一面を有し、
前記スペーサは、少なくとも前記第一面と前記ハウジングとの間に配置されている請求項5に記載の双眼拡大鏡。
【請求項7】
前記スペーサは、前記光学素子を外側から覆うケース状をなしている請求項6に記載の双眼拡大鏡。
【請求項8】
前記スペーサは、前記光学素子および前記ハウジングに対して着脱可能に設けられている請求項5から7のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡。
【請求項9】
前記ハウジングの内面には、該内面から突出するとともに当接面を構成する支持突起が形成され、
前記スペーサおよび前記光学素子が前記ハウジングに収容された状態で、前記当接面には前記スペーサの外面が接触して支持される請求項5から8のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡。
【請求項10】
装用者の頭部に装着可能なフレームと、
前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、
前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、
を備え、
一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、
前記装用者の側に配置された接眼レンズと、
前記視認対象の側に配置された対物レンズと、
前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、
前記光学素子との間に隙間が形成されるように配置され、前記光学素子を収容するハウジングと、
前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置されるスペーサと、
を有する双眼拡大鏡。
【請求項11】
請求項5から10のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡を複数個備え、
前記双眼拡大鏡の各々における前記スペーサおよび前記光学素子の体積は互いに異なり、
前記双眼拡大鏡の各々における前記ハウジングは互いに同一である双眼拡大鏡セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を拡大視するための双眼拡大鏡等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば脳外科手術や心臓血管手術等の微細な組織を処置する手術においては、医師は拡大鏡によって処置部を拡大して作業を行っている。
【0003】
このような拡大鏡の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1の拡大鏡は、フレームに左右の拡大光学系ユニットが設けられ、拡大光学系ユニットが左右の目によって覗かれるように構成された双眼拡大鏡となっている。この種の拡大鏡を使用することにより、医師は手術中に前方視の姿勢を保ったまま手元の視野を確保できるため、非常に作業性がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の双眼拡大鏡においては拡大光学系ユニットが重く、また、前方に飛び出しているため、医師がフレームを頭部に装着した際には鼻とノーズパッドとの接触部を中心として双眼拡大鏡全体が下方にずれてしまうような回転モーメントが生じてしまい、使い勝手の点で改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、装用時のズレを抑え、使用性の向上を図った双眼拡大鏡等を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係る双眼拡大鏡は、装用者の頭部に装着可能なフレームと、前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、を備え、一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、前記装用者の側に配置された接眼レンズと、前記視認対象の側に配置された対物レンズと、前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、を有し、前記ノーズパッドの中で、前記接眼レンズの光軸から下方に最も離れている場所を該ノーズパットの下端基準位置と定義したとき、前記フレーム、前記ノーズパッド、および前記一対の拡大光学系ユニットの全体の重心位置と、前記下端基準位置との間の前記光軸の方向における距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値となっている。
【0008】
上記双眼拡大鏡では、前記光学素子の体積は、300〔mm3〕以上3700〔mm3〕以下であってもよい。
【0009】
上記双眼拡大鏡では、前記光学素子の前記光軸の方向における最厚部分の寸法は7.0〔mm〕以上16.5〔mm〕以下であってもよい。
【0010】
上記双眼拡大鏡では、前記光軸に直交するとともに前記装用者の上下方向に沿う前記光学素子の高さ方向において、前記光軸から前記光学素子の最上部までの距離が8.0〔mm〕以上18.5〔mm〕以下であってもよい。
【0011】
上記双眼拡大鏡では、前記拡大光学系ユニットは、前記光学素子を収容するハウジングと、前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置され、前記光学素子よりも密度が小さい材料からなるスペーサと、を有していてもよい。
【0012】
上記双眼拡大鏡では、前記光学素子は、前記対物レンズ側を向く第一面を有し、前記スペーサは、少なくとも前記第一面と前記ハウジングとの間に配置されていてもよい。
【0013】
上記双眼拡大鏡では、前記スペーサは、前記光学素子を外側から覆うケース状をなしていてもよい。
【0014】
上記双眼拡大鏡では、前記スペーサは、前記光学素子および前記ハウジングに対して着脱可能に設けられていてもよい。
【0015】
上記双眼拡大鏡では、前記ハウジングの内面には、該内面から突出するとともに当接面を構成する支持突起が形成され、前記スペーサおよび前記光学素子が前記ハウジングに収容された状態で、前記当接面には前記スペーサの外面が接触して支持されてもよい。
【0016】
本発明の他の態様に係る双眼拡大鏡は、装用者の頭部に装着可能なフレームと、前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、を備え、一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、前記装用者の側に配置された接眼レンズと、前記視認対象の側に配置された対物レンズと、前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、前記光学素子との間に隙間が形成されるように配置され、前記光学素子を収容するハウジングと、前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置されるスペーサと、を有する。
【0017】
本発明の一態様に係る双眼拡大鏡セットは、上記の双眼拡大鏡を複数個備え、前記双眼拡大鏡の各々における前記スペーサおよび前記光学素子の体積は互いに異なり、前記双眼拡大鏡の各々における前記ハウジングは互いに同一である。
【発明の効果】
【0018】
上記の双眼拡大鏡等によれば、装用時のズレを抑え、使用性の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る双眼拡大鏡の全体上面図である。
【
図2】上記双眼拡大鏡の断面図であって、
図1のA-A断面を示す。
【
図3】上記双眼拡大鏡における拡大光学系ユニットの断面図であって、
図1のB-B断面を示す。
【
図4】上記拡大光学系ユニットを分解して示す斜視図である。
【
図5】上記拡大光学系ユニットの上部ケースを内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(全体構成)
図1および
図2に示すように本実施形態の双眼拡大鏡100は、装用者の頭部に装着可能なフレーム1と、フレーム1に支持されたノーズパッド2および拡大光学系ユニット3と、を備えている。
以下、装用者の顔面を基準として顔面から前方に離れる方向を単に前方とし、前方と逆方向を後方とし、装用者の左右を単に左右とし、装用者の上下を単に上下とする。また以下の説明では、双眼拡大鏡100は装用者に装用された状態を基準として方向を説明する。
【0021】
(フレーム)
フレーム1は、装用時に装用者の額の前方に位置するとともに左右に延びる前部10と、この前部10における左右両端から後方に延びるとともに装用者の側頭部を挟み込む一対の側部11と、前部10の左右の中心から下方に延びるとともに逆T字状をなす接続部12とを有している。
【0022】
(ノーズパッド)
ノーズパッド2は接続部12の後方、すなわち接続部12よりも装用者の顔面に近い側に配置され、フレーム1の前部10に支持されている。ノーズパッド2は装用者の鼻への接触部20を有している。接触部20は、装用者の頭部にフレーム1が装着された際に、装用者の鼻に対向し、接触する部分である。ノーズパッド2は装用時のフレームのズレを防止する機能を有する。
【0023】
(拡大光学系ユニット)
拡大光学系ユニット3は、フレーム1の接続部12の前方に配置されて接続部12によって支持されている。拡大光学系ユニット3は、装用者の左右の眼に対応した位置に一つずつ配置されるとともに、装用者が前方を向いた状態のまま下方の視認対象を拡大して視認可能とする装置である。拡大光学系ユニット3の下端はノーズパッド2の下端よりも下方に配置されている。
【0024】
図3に示すように、各々の拡大光学系ユニット3は、装用者の側に配置されてレンズ面が装用者の眼に対向する接眼レンズ30と、接眼レンズ30よりも前方に配置されてレンズ面が視認対象に対向する対物レンズ31と、接眼レンズ30および対物レンズ31の間に配置された光学素子32と、光学素子32を収容するとともに接眼レンズ30および対物レンズ31を支持するハウジング33と、ハウジング33内に設けられたスペーサ34と、を有している。
【0025】
接眼レンズ30は、光軸X1が前後方向に延びた状態で配置されている。接眼レンズ30は正のパワーを有する。接眼レンズ30は接眼レンズ鏡筒38に収容されている。以下、光軸X1の延びる方向を第一光軸方向とする。
対物レンズ31は、光軸X2を上下方向に対して前後方向傾斜するようにして、前方に向かうにしたがって斜め下方に向かうように配置されている。対物レンズ31は正のパワーを有する。対物レンズ31は後述する光学素子32を挟んで接眼レンズ30とは反対側に配置され、レンズ面が視認対象に対向する。すなわち対物レンズ31における視認対象側のレンズ面は、前方かつ下方を向いている。対物レンズ31は対物レンズ鏡筒39に収容されている。
【0026】
光学素子32は光路を偏向するとともに像を正立させるプリズムであって、本実施形態ではダハプリズムとなっている。光学素子32は、接眼レンズ30のレンズ面に対向する接眼レンズ側面40と、対物レンズ31のレンズ面に対向する対物レンズ側面(第一面)41と、接眼レンズ側面40と対物レンズ側面41との間に配置されたダハ面42とを有している。接眼レンズ側面40は接眼レンズ30の光軸X1に直交する面に沿って広がり、対物レンズ側面41は対物レンズ31の光軸X2に直交する面に沿って広がっている。
【0027】
また光学素子32の体積は、300〔mm3〕以上、3700〔mm3〕以下となっている。さらに光学素子32における第一光軸方向の最大幅寸法W(最厚部分の寸法)は7.0〔mm〕以上、16.5〔mm〕以下となっている。さらには、接眼レンズ30の光軸X1に直交するとともに上下方向に沿う光学素子32の高さ方向に、光軸X1から光学素子32の最上部までの距離L1は8.0〔mm〕以上、18.5〔mm〕以下である。
【0028】
図4に示すように、ハウジング33は上下に二分割の構造を有している。すなわちハウジング33は上部ケース50と下部ケース51とを有している。上部ケース50の内面の形状は、光学素子32および後述するスペーサ34の上部外面の形状に対応している。また
図5に示すように上部ケース50の内面には、該内面から突出する支持突起53が形成されている。支持突起53は、後述するスペーサ34の外面に接触可能な当接面53aを有している。支持突起53は、上部ケース50の内面において前後左右の端の四箇所に配置されている。
【0029】
ここで上部ケース50の内面における前後左右の端の四箇所それぞれでは、支持突起53は前後に間隔を空けて対をなして(二つずつ)設けられている。上記四箇所のそれぞれにおいて支持突起53を前後に間隔を空けて対をなして設けることにより、各支持突起53のサイズを小さく抑え、例えばハウジング33が樹脂成型される場合には外観不良(シンクマーク)の発生を抑制するようにしている。
【0030】
図4に戻って、ハウジング33の下部ケース51の内面の形状は、光学素子32および後述するスペーサ34の下部外面の形状に対応している。下部ケース51には、斜め下前方への第一開口51a、および後方への第二開口51bが形成されている(
図3参照)。第一開口51aには対物レンズ鏡筒39が螺合し、第二開口51bには接眼レンズ鏡筒38が螺合するようになっている。上部ケース50と下部ケース51とは、分離可能に嵌合して固定され、かつ、後述するスペーサ34を内側に支持するようになっている。
【0031】
スペーサ34は、上下に二分割の構造を有しているとともに光学素子32を収容するケース状をなしている。具体的にはスペーサ34は、上部ケース50と光学素子32との間に配置される上部スペーサ片60と、下部ケース51と光学素子32との間に配置される下部スペーサ片61とを有している。上部スペーサ片60と下部スペーサ片61とは分離可能に嵌合して固定され、かつ、光学素子32の相対移動を規制しつつ光学素子32を内側に収容可能になっている。スペーサ34は光学素子32およびハウジング33に対して着脱可能となっている。スペーサ34を設けることで光学素子32はハウジング33に対して非接触状態で配置されている。換言すると光学素子32とハウジング33との間には隙間が形成され、この隙間にスペーサ34が配置されている。スペーサ34の外形は光学素子32の外形に対応した形状をなしており、スペーサ34は光学素子32の外形寸法を拡大するように設けられている。またスペーサ34は光学素子32よりも密度の低い材料、例えば樹脂によって形成されている。上記の隙間が設けられると、双眼拡大鏡100は軽量になる。さらに外側からの衝撃が光学素子32に伝わりにくく、光学素子32がずれたり破損したりするのを防ぐことが可能である。また上記の隙間が設けられることにより、光学素子32の面のうち、光を反射する面に部材が接触することを防ぎ、その光を反射する面から光が漏れることを防ぐことができる。したがって上記の隙間が設けられることにより、光学素子32において墨塗する場所を減らすことができる。
【0032】
光学素子32の光軸X1に垂直な方向において、光学素子32と、ハウジング33の内面との間の距離(隙間)は0.5〔mm〕以上、12.0〔mm〕以下となっている。この距離(隙間)は1.0〔mm〕以上であることが好ましく、1.3〔mm〕以上であることがより好ましい。またこの距離(隙間)は11.0〔mm〕以下であることが好ましい。
【0033】
上部スペーサ片60の内面の形状は光学素子32の上部外面(ダハ面42を含む面)の形状に対応している。すなわち上部スペーサ片60は、ダハ面42に対向するダハ面対向面70を有している。さらに上部スペーサ片60の外面の形状は、上部ケース50の内面の形状に対応している。
【0034】
下部スペーサ片61の内面の形状は光学素子32の下部外面の形状に対応している。すなわち下部スペーサ片61は、接眼レンズ側面40に対向する後方対向面71と、対物レンズ側面41に対向する前方対向面72とを有している。また下部スペーサ片61の外面の形状は、下部ケース51の内面の形状に対応している。下部スペーサ片61の後方対向面71には後方開口71aが形成され、下部スペーサ片61の前方対向面72には前方開口72aが形成されている。後方開口71aは、光学素子32の接眼レンズ側面40を接眼レンズ30のレンズ面に向けて露出させる開口であって、ハウジング33の第二開口51bの位置に対応するように形成されている。前方開口72aは、光学素子32の対物レンズ側面41を対物レンズ31に向けて露出させる開口であって、ハウジング33の第一開口51aの位置に対応するように形成されている。
【0035】
そして上部スペーサ片60の外面は、上部ケース50の支持突起53における当接面53aに接触して支持され、スペーサ34に収容された光学素子32をハウジング33内に収容した際には、ハウジング33に対してスペーサ34の相対移動が規制されるとともに、上部スペーサ片60の外面とハウジング33の内面との間には隙間が形成される。
【0036】
(光路)
視認対象からの光は、対物レンズ31を介して光学素子32に入射して対物レンズ側面41を透過し、接眼レンズ側面40で反射された後にダハ面42で反射される。ダハ面42による反射光は、対物レンズ側面41で反射されて接眼レンズ側面40を透過し、接眼レンズ30を介して装用者の眼に届くようになっている。この結果、装用者は正面を向いた状態で手元(下方)の対象物を拡大して視認することが可能となっている。
【0037】
(重心位置)
ここで
図2に戻って、接眼レンズ30の光軸X1が延びる第一光軸方向が水平方向に一致している状態において、ノーズパッド2の下端を下端基準位置Pとする。すなわち下端基準位置Pは、ノーズパッド2の中で光軸X1から第一光軸方向に直交する高さ方向の下方に最も離れている場所となる。このとき、フレーム1、ノーズパッド2、および一対の拡大光学系ユニット3の全体の重心位置Gと下端基準位置Pとの間の第一光軸方向の距離L2が0〔mm〕より大きく、14.4〔mm〕よりも小さい値となっている。この距離L2は0〔mm〕より大きく、14.2〔mm〕以下の値であるとさらによい。換言すると、下端基準位置Pと重心位置Gとの間の第一光軸方向の距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値(より好ましくは14.2〔mm〕以下の値)となるように、光学素子32およびスペーサの体積および重量が決定されている。ここで、接眼レンズ30の光軸X1に直交するとともに上下方向に沿う双眼拡大鏡100の高さ方向に、下端基準位置Pから重心位置Gまでの距離L3は、10.0〔mm〕以上13.0〔mm〕以下の値となっている。
【0038】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の双眼拡大鏡100によれば、、下端基準位置Pと重心位置Gとの第一光軸方向の距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値となっているため、鼻とノーズパッド2との接触部20を中心として双眼拡大鏡100全体を下方にずらしてしまう方向に生じる回転モーメントを小さく抑えることができる。したがって装用者が双眼拡大鏡100を装用して作業を行った際の双眼拡大鏡100のずれを抑制でき、使用性を向上できる。
【0039】
特に本実施形態では、光学素子32の体積は300〔mm3〕以上、3700〔mm3〕以下であり、光学素子32の幅寸法Wは7.0〔mm〕以上、16.5〔mm〕以下となっている。さらには光軸X1から光学素子32の最上部までの距離L1は8.0〔mm〕以上、18.5〔mm〕以下である。よって、光学素子32が小型化されて重量を抑えるとともに重心位置Gを装用者の側に近接させることができ、上記回転モーメントを小さく抑えることが可能となる。
【0040】
ここで仮にスペーサ34を設けない場合、同一のハウジング33に光学素子を固定するためには光学素子の体積を本実施形態の光学素子32よりも大きくし、ハウジング33の内面に光学素子を近接させなければならない。ここで本実施形態のスペーサ34は光学素子32よりも密度の小さい材料からなるため、仮にスペーサ34を設けない場合の光学素子は、本実施形態の光学素子32よりも重量が大きくなってしまい、かつ体積が大きくなってしまい重心位置Gが装用者から離れる側に移動してしまう。すなわち本実施系形態ではスペーサ34を設けたことで、スペーサ34および光学素子32を合わせた重量を抑え、かつ重心位置Gを装用者に近づけ、上記回転モーメントを小さく抑えることが可能となる。
【0041】
またスペーサ34がケース状をなし、スペーサ34の外形が光学素子32の外形に対応した形状をなしている。このため光学素子32の大きさ(体積)を変更しても、スペーサ34の外形寸法を変更するのみによって同一のハウジングに様々なサイズの光学素子32を収容して固定できる。よってハウジング33の共通化が可能となり、コストダウンにつながる。
【0042】
この場合、複数個の双眼拡大鏡100の各々におけるスペーサ34および光学素子32の体積を互いに異なるようにし、かつこれらの双眼拡大鏡100の各々におけるハウジング33を互いに同一として共通化した双眼拡大鏡セットを準備することもできる。
【0043】
さらにハウジング33の内面に支持突起53を設けてスペーサ34を支持するため、接着材等を用いずにスペーサ34のハウジング33内での相対移動を抑制できる。またスペーサ34が光学素子32およびハウジング33に対して着脱可能に設けられているため、光学素子32の交換が容易である。
【0044】
ここで本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、スペーサ34はケース状をなしていなくともよく、少なくとも光学素子32の対物レンズ側面41とハウジング33との間に配置されるような形状をなしていればよい。すなわちスペーサ34は例えば板状をなしていてもよい。この場合には少なくともハウジング33に対して光学素子32を装用者の側に寄せることができ、上記回転モーメントを小さく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の双眼拡大鏡等によれば、装用時のズレを抑え、使用性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 フレーム
2 ノーズパッド
3 拡大光学系ユニット
20 接触部
30 接眼レンズ
31 対物レンズ
32 光学素子
33 ハウジング
34 スペーサ
53 支持突起
53a 当接面
100 双眼拡大鏡
X1 光軸
X2 光軸
【手続補正書】
【提出日】2021-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装用者の頭部に装着可能なフレームと、
前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、
前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、
を備え、
一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、
前記装用者の側に配置された接眼レンズと、
前記視認対象の側に配置された対物レンズと、
前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、
を有し、
前記ノーズパッドの中で、前記接眼レンズの光軸から下方に最も離れている場所を該ノーズパットの下端基準位置と定義したとき、
前記フレーム、前記ノーズパッド、および前記一対の拡大光学系ユニットの全体の重心位置と、前記下端基準位置との間の前記光軸の方向における距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値となっており、
前記拡大光学系ユニットは、
前記光学素子を収容するハウジングと、
前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置されるスペーサと、
を有し、
前記光学素子は、前記対物レンズ側を向く第一面を有し、
前記スペーサは、少なくとも前記第一面と前記ハウジングとの間に配置され、
前記スペーサは、前記光学素子を外側から覆うケース状をなしている双眼拡大鏡。
【請求項2】
装用者の頭部に装着可能なフレームと、
前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、
前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、
を備え、
一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、
前記装用者の側に配置された接眼レンズと、
前記視認対象の側に配置された対物レンズと、
前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、
を有し、
前記ノーズパッドの中で、前記接眼レンズの光軸から下方に最も離れている場所を該ノーズパットの下端基準位置と定義したとき、
前記フレーム、前記ノーズパッド、および前記一対の拡大光学系ユニットの全体の重心位置と、前記下端基準位置との間の前記光軸の方向における距離が0〔mm〕より大きく14.4〔mm〕よりも小さい値となっており、
前記拡大光学系ユニットは、
前記光学素子を収容するハウジングと、
前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置されるスペーサと、
を有し、
前記光学素子は、前記対物レンズ側を向く第一面を有し、
前記スペーサは、少なくとも前記第一面と前記ハウジングとの間に配置され、
前記スペーサは、前記光学素子および前記ハウジングに対して着脱可能に設けられている双眼拡大鏡。
【請求項3】
前記光学素子の体積は、300〔mm3〕以上3700〔mm3〕以下である請求項1又は2に記載の双眼拡大鏡。
【請求項4】
前記光学素子の前記光軸の方向における最厚部分の寸法は7.0〔mm〕以上16.5〔mm〕以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡。
【請求項5】
前記光軸に直交するとともに前記装用者の上下方向に沿う前記光学素子の高さ方向において、前記光軸から前記光学素子の最上部までの距離が8.0〔mm〕以上18.5〔mm〕以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡。
【請求項6】
前記ハウジングの内面には、該内面から突出するとともに当接面を構成する支持突起が形成され、
前記スペーサおよび前記光学素子が前記ハウジングに収容された状態で、前記当接面には前記スペーサの外面が接触して支持される請求項1から5のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡。
【請求項7】
装用者の頭部に装着可能なフレームと、
前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、
前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、
を備え、
一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、
前記装用者の側に配置された接眼レンズと、
前記視認対象の側に配置された対物レンズと、
前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、
前記光学素子との間に隙間が形成されるように配置され、前記光学素子を収容するハウジングと、
前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置されるスペーサと、
を有し、
前記スペーサは、前記光学素子を外側から覆うケース状をなしている双眼拡大鏡。
【請求項8】
装用者の頭部に装着可能なフレームと、
前記フレームに支持されて前記装用者の鼻への接触部を構成するノーズパッドと、
前記フレームに支持されて前記装用者の左右の眼に対応した位置にそれぞれ配置されるとともに、前記装用者が前方を向いた状態で下方の視認対象を拡大して視認可能とする一対の拡大光学系ユニットと、
を備え、
一対の前記拡大光学系ユニットの各々は、
前記装用者の側に配置された接眼レンズと、
前記視認対象の側に配置された対物レンズと、
前記接眼レンズと前記対物レンズとの間に配置されて前記接眼レンズに前記視認対象からの光を導く光学素子と、
前記光学素子との間に隙間が形成されるように配置され、前記光学素子を収容するハウジングと、
前記光学素子と前記ハウジングとの間に配置されるスペーサと、
を有し、
前記スペーサは、前記光学素子および前記ハウジングに対して着脱可能に設けられている双眼拡大鏡。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の双眼拡大鏡を複数個備え、
前記双眼拡大鏡の各々における前記スペーサおよび前記光学素子の体積は互いに異なり、
前記双眼拡大鏡の各々における前記ハウジングは互いに同一である双眼拡大鏡セット。