(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002169
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】コウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法
(51)【国際特許分類】
A01M 29/30 20110101AFI20221227BHJP
E04B 1/62 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A01M29/30
E04B1/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103229
(22)【出願日】2021-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年9月11日に有限会社サンアイのウェブサイト1(https://www.facebook.com/imase.sanai/)に掲載 令和2年9月11日に有限会社サンアイのウェブサイト2(https://timeline.line.me/)に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】514024321
【氏名又は名称】有限会社サンアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100187517
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】今瀬 芳尚
【テーマコード(参考)】
2B121
2E001
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BB27
2B121BB30
2B121FA12
2B121FA20
2E001DH16
2E001FA04
2E001NC02
2E001ND21
(57)【要約】
【課題】コウモリを建物中に残すことや閉じ込めることを防止できるコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法を提供することである。
【解決手段】コウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法200は、織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程S203と、織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と傾斜された複数の線で構成される線状突起とを形成する工程S204と、線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程S206とを含み、出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織金網と、
該織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成し、該織りはずれに有する横線又は縦線の何れかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と前記傾斜された複数の線で構成される線状突起とを備え、
コウモリ目のアクセス箇所に取り付けられ、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害することを特徴とするコウモリ目の追い出し用仕掛け具。
【請求項2】
前記線状突起は、前記複数の線が、正面視で、前記出口を覆い、底面視で、前記織金網から前面に突出していることを特徴とする請求項1記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具。
【請求項3】
前記線状突起は、前記複数の線に反りを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具。
【請求項4】
前記織金網は、ステンレス鋼線製であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具。
【請求項5】
織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程と、
前記織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と前記傾斜された複数の線で構成される線状突起とを形成する工程と、
前記線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程とを含み、
前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害することを特徴とするコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巣からの追い出しに用いられ、追い出し後の進入を阻止又は妨害するコウモリ目の追い出し用仕掛け具及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家屋の軒下でコウモリの被害を受けることがあった。コウモリが侵入してしまった場合の撃退法として、コウモリの巣に対して噴霧や塗布するコウモリ用のスプレー、忌避剤、噴霧剤があった。
【0003】
また、従来の忌避具として、特許文献1に軒下におけるコウモリの止り阻止構造が開示されている。これは、軒先の下方から見える上げ裏と外壁とから鋭角な隅角を形成する軒下において、上げ裏と外壁との間に、軒とは逆向きに傾斜する遮蔽部材を、隅角の長手方向に沿って固着し、上げ裏と遮蔽部材の表面と外壁とから形成するコーナー箇所で、外壁にさかさまにへばりついたコウモリが、前後両肢を突っ張り、背の下端部を上げ裏方向に突き出しても、背の下端部が上げ裏に触れない程度に、遮蔽部材によって上げ裏と外壁との間隔を離し、さらに、遮蔽部材が表面の平滑な板体からなり、その上下両端部を上げ裏及び外壁に固定する取付け部となすと共に、中間部を隅角を覆い隠す隠蔽部となし、外壁に固定する取付け部の垂下する長さを、コウモリの丈より長くしてあるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかしながら、従来のスプレー、忌避剤、噴霧剤では、例えば、巣が天井裏の場合、その壁の内面全部に施工しなければならず、煩雑である。また、スプレー、忌避剤、噴霧剤を噴霧等したことで、コウモリをより奥へ追いやってしまうことがあった。
【0006】
また、特許文献1に記載の上り防止構造は、コウモリが住み着いた後では施工できない。また、コウモリが飛び立つのを待ち、建物中にコウモリがいないことを確認してから取り付ける必要があり、作業性が悪い。また、これを怠ると、コウモリを建物内に残すことや閉じ込めてしまうことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、コウモリを建物中に残すことや閉じ込めることを防止できるコウモリ目の追い出し用仕掛け具、又はその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、織金網と、該織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成し、該織りはずれに有する横線又は縦線の何れかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と前記傾斜された複数の線で構成される線状突起とを備え、コウモリ目のアクセス箇所に取り付けられ、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する構成である。
【0009】
コウモリ目は、生物の分類で、哺乳綱コウモリ目(翼手類)に属する動物をいう。コウモリ(蝙蝠)は、脊椎動物亜門哺乳綱コウモリ目に属する動物の総称である。コウモリ目には、例えば、アブラコウモリ、オガサワラオオコウモリ、カグラコウモリ、ニホンウサギコウモリ、キクガシラコウモリ、オヒキコウモリが挙げられる。
【0010】
織りはずれは、縦線又は横線の一部が切れてなくなり抜けた状態又は編まれていない状態をいう。縦線は、長さ方向に走るすべての線をいい、横線は、横方向に走るすべての線をいう。退出は、今までいた場所から引き下がることをいう。進入は、アクセス箇所から内部に入ることをいう。
【0011】
また、前記線状突起は、前記複数の線が、正面視で、前記出口を覆い、底面視で、前記織金網から前面に突出している構成であってもよい。
【0012】
さらに、前記線状突起は、前記複数の線に反りを有する構成であってもよい。
【0013】
さらにまた、前記織金網は、ステンレス鋼線製である構成であってもよい。
【0014】
本発明の他の態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法は、織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程と、前記織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と前記傾斜された複数の線で構成される線状突起とを形成する工程と、前記線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程とを含み、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具によれば、上記構成としたので、コウモリを建物中に残すことや閉じ込めることを防止できるという効果を奏する。
【0016】
本発明の他の態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法によれば、上記工程を含むので、コウモリが飛び立つのを待つことや確認の必要がなく、迅速かつ容易に施工できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工場所の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の追い出し用仕掛け具を示す一部拡大正面図である。
【
図4】
図1の追い出し用仕掛け具を示す一部拡大底面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1~
図5を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態のコウモリ目の追い出し用仕掛け具100は、コウモリ目の巣からの追い出しに用いられ、追い出し後の進入を阻止又は妨害するものである。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
【0019】
一般家屋において、縦胴縁に横張りサイディングという和風住宅の建て方の場合、外壁1の種類や屋上部の取り回し方によっては、外壁1と防水シートの空間に、コウモリ目が侵入することがある。
【0020】
また、
図1に示すように、和風住宅の軒3下に垂木4が見えるタイプは、面戸板までの奥行きがあるので、コウモリ目が休息のため飛来することがある。例えば、アブラコウモリの場合、家屋の縦胴縁や、
図2に示すように、垂木4の周囲に10mm以上の隙間Gがあると、この隙間Gに隠れ始め、さらには住み着いてしまうことがある。
【0021】
図2では、隙間Gは、化粧板2と垂木4との間に有する。化粧板2は、面戸板の前面の垂木間に配置され、野地板5と軒桁6とに取り付けられている。隙間Gを含むコウモリ目のアクセス箇所Nに、追い出し用仕掛け具100は使用される。本実施形態の場合、アクセス箇所Nは、隙間Gを挟む野地板5と軒桁6、隙間Gを挟む化粧板2と垂木4である。
【0022】
追い出し用仕掛け具100は、織金網10と、出口20と、線状突起30と、取付部50とを備えている。また、追い出し用仕掛け具100は、アクセス箇所Nを覆う大きさを有する。
【0023】
織金網10は、JIS G 3555に準拠する織金物と、JIS G 3556に準拠する工業用織金網が挙げられる。織金網10には、なまし鉄線製織金網、亜鉛めっき鉄線製織金網及びステンレス鋼線製金網が含まれる。
【0024】
織金網10は、好ましくは、ステンレス鋼線材及び10.5%以上のクロムを含む耐熱鋼線材を用いて製造したステンレス鋼線製が好ましい。ステンレス鋼線は、JIS G 4309に準拠する。
【0025】
織金網10は、縦線12と横線13を有する。線径は、0.020mm以上14.0mm以下で、好ましくは、0.16mmを超え0.50mm以下であり、より好ましくは、0.4mmである。線径は、網金網10の線の直径をいう。
【0026】
織金網10は、コウモリ目の物理的な進入を防ぐため、対象のコウモリ目より十分細かい網目15を有することが好ましい。網目15は、縦線12と横線13で囲われた部分をいう。
【0027】
網目15は、例えば、対象のコウモリ目がアブラコウモリの場合、10mm以下の目開きが好ましく、より好ましくは16メッシュが挙げられる。目開きは、二本の隣接する縦線12又は横線間の距離をいい、メッシュは、25.4mm間の目数をいう。
【0028】
織金網10の製造方法は、平織金網が挙げられる。即ち、織金網10は、縦線12と横線13とが一定の間隔を保ち、一本ずつ相互に交わらせて製造される。アクセス箇所Nは、施工現場に応じて異なるため、織金網10は、施工現場に応じた大きさに切断されて使用される。
【0029】
織金網10には、一部に切れ込みを入れて織りはずれ11が形成されている。織りはずれ11は、所定の面積を有する。その面積は、幅Xが織金網10の目開き以上織金網10の全幅未満で、長さYが対象のコウモリ目の頭胴長より短く形成されている。幅Xは、切れてなくなり抜けた状態又は編まれていない状態の横線13の距離をいう。長さYは、切れてなくなり抜けた状態又は編まれていない状態の縦線12の距離をいう。
【0030】
図2に、複数の横線13の一部が切れてなくなり抜けた状態の織りはずれ11の例を示す。織りはずれ11では、幅Xの両端で、織金網10の一方側若しくは一の横線から長さY内に存在する複数の横線が切断されて取り除かれ、複数の線31を有する。
【0031】
出口20は、織金網10に意図的に形成されたコウモリ目の退出のための開口である。出口20は、網目15の面積より広い開口面積を有する。出口20の開口面積は、幅Xと長さYとの積で表される。また、出口20は、
図3に示すように斜め下方である、開口方向Dへ開口している。
【0032】
突起部材30は、出口20と複数の線31とで構成されている。複数の線31は、傾斜されており、線状突起30の傾斜方向は、開口方向Dと平行である。また、線状突起30は、巣にいるコウモリ目にとっての出口誘導路ともなり得る。
【0033】
複数の線31は、正面視で、出口20を覆っている。また、複数の線31は、側面視で、織金網10の表面から所定の角度θを有して斜め下方に傾斜している。角度θは、後述する突起部材30の開口高さとの関係で決まる。例えば、20度以上45度以下の範囲内でよい。さらに、複数の線31は、底面視で、
図4に示すように、織金網10の表面から前面に突出している。
【0034】
線31は、出口20に意図的に形成されたコウモリ目の進入を阻止又は妨害するための邪魔部材である。線31は、軟質のステンレス鋼線が好ましい。複数の線31の引張強さは、680~930N/mm2、610~860N/mm2、580~830N/mm2が好ましい。ただし、試験方法は、JIS Z 2241による。
【0035】
線31の長さは、対象のコウモリ目の頭胴長より短く設定されている。例えば、対象のコウモリ目がアブラコウモリの場合、30mm以内とすることが好ましい。なお、複数の線31が配列される突起部材30の幅Xは、施工現場に応じて対応可能となるように種々のバージョンのものがある。
【0036】
また、線状突起30は、線31に反り40を有していることが好ましい。反り40は、線31の根元32から先端33までの仮想直線から線31への垂直線の最長距離又はその最長距離の部位をいう。反り40には、腰反り、中反り、先反り、内反り、筍反りが挙げられる。また、複数の線31は、各々の先端33が一方向に揃っていてもよいが、
図2~
図4に示すように、各々、先端33が、無作為に種々の方向に向いているとよい。
【0037】
突起部材30の開口高さは、出口20の開口平面から線31の先端33への垂直線の距離、又は反り40を有する場合は出口20の開口平面から反り40への垂直線の距離をいい、コウモリ目が退出可能な距離となっていることが好ましい。
【0038】
例えば、対象のコウモリ目がアブラコウモリの場合、その身体は小さく、運動能力も高いため、突起部材30の開口高さは、8mm以上15mm以下の範囲内であることが好ましい。15mmを超えると物理的に進入が可能となり、8mm未満であると退場が不可能となることや、退場するアブラコウモリの渋滞が発生するためである。
【0039】
取付部50は、コウモリ目のアクセス箇所Nに取り付けるための織金網10の部位である。取付部50は、織りはずれ11の周囲に有する。取付部50は、化粧板2と、垂木4と、野地板5と、軒桁6とに取り付けられている。取付部50の取付方法は、例えば、シリコンコーキング、シーリング、ビス又はタッカーによる取付方法が挙げられる。
【0040】
次に、追い出し用仕掛け具100の施工方法200について、
図6を参照しつつ説明する。
図6は、施工方法200を示すフローチャートである。施工方法200は、ステップS201からステップS207の工程を有する。
【0041】
まず、ステップS201において、施工を開始する。施工にあたり、施工現場において、コウモリ目のアクセス箇所Nを確認することが好ましい。但し、コウモリ目の退出を待ったり、確認する必要はない。
【0042】
次に、ステップS202において、織金網10を準備する。アクセス箇所Nは、施工現場に応じて異なるため、ステップS202において、織金網10を、施工現場に応じた大きさに切断してもよい。また、ステップ206において、織金網10を切断してもよいし、その両ステップで切断してもよい。
【0043】
ステップS203において、織金網10に切れ込みを入れて織りはずれ11を形成する。具体的には、幅Xの両端で、複数の横線を織金網10の一方側から長さ方向に長さY分を切断し、切断された複数の横線を取り除く(
図2参照)。
【0044】
ステップS204において、線状突起30を形成する。例えば、織りはずれ11に指を当て、線31の根元32を軸にして先端33を起こすように傾斜させる。これにより、出口20と傾斜された複数の線31とで構成される線状突起30が形成される。
【0045】
ステップS205において、線31に反り40を形成する。例えば、線31の先端33に力を加えて反り40を形成する方法や、線31を指でつまんで種々の方向に向ける方法が挙げられる。ここでは、複数の線31が無作為に種々の方向に向いているように反り40を形成することが好ましい。
【0046】
ステップS206において、取付部50を、アクセス箇所Nに取り付ける。具体的には、取付部50に、シリコンコーキング若しくはシーリングを塗布し、又はビス又はタッカーを用いる。これにより、追い出し用仕掛け具100がアクセス箇所Nに取り付けられる。
【0047】
ステップS207において、追い出し用仕掛け具100の施工が終了する。施行後に、コウモリ目の退出を確認する必要はない。コウモリ目が、内部にいた場合、施工後に出口20から飛び立つようになる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のコウモリ目の追い出し用仕掛け具100によれば、上記構成としたので、コウモリ目を建物中に残すことや閉じ込めることを防止できる。このため、コウモリ目が住み着いた場合でも、その場所に使用し、追い出しを実現することができる。
【0049】
即ち、アクセス箇所Nは織金網10で覆われているので、コウモリ目は、出口20以外からの退出と進入を阻止することができる。一方、追い出し用仕掛け具100は出口20を有するので、コウモリ目は、出口20から退出が可能である。出口20は、斜め下方である開口方向Dへ開口している場合には、コウモリ目は、開口方向Dに退出できる。
【0050】
一般に、コウモリ目は、夕方になると餌をとるため飛び立つようになる。コウモリ目には帰巣本能があると言われており、飛び立ったコウモリ目がアクセス箇所Nに戻ってこようとする。
【0051】
しかし、追い出し用仕掛け具100は、線状突起30を備えているので、コウモリ目が、アクセス箇所Nへ接近することを阻止又は妨害することができる。線状突起30は、複数の線31で構成されているので、複数の線31の先端33が接近したコウモリ目に接触可能であり、接近や進入の邪魔部材として進入を阻止又は妨害することができる。
【0052】
また、複数の線31が、正面視で、出口20を覆い、底面視で、織金網10から前面に突出している場合には、線状突起30によって出口20からの進入や再進入を防止することができる。勿論、線状突起30への接近や停まって休むということも防止することができる。
【0053】
線31に反り40を有する場合には、各線31の長さが異なり、コウモリ目の接近距離や位置に広く対応することができる。また、先端33が種々の方向を向いている場合には、コウモリ目の進入方向に広く対応することができる。
【0054】
また、線31が軟質のステンレス鋼線の場合には、風や雨等の自然現象が生じても、線状突起30の形状を保持でき、容易に変形や揺れ動くことを防止できる。一方で、線31が軟質の場合には、施工者は、容易に、かつ、簡単に、線31の変形や反り40を形成することができる。このため、施工性が良い。
【0055】
さらに、線31が軟質の場合には、コウモリ目は、退出の際に線31を内部から押し動かすことが可能で、コウモリ目の退出の邪魔になることを防止できる。他方で、侵入の際に先端33や反り40が侵入の邪魔になり、コウモリ目が先端33や反り40を変形させることは不可能で、進入を防止できる。追い出しと侵入防止と忌避の点で効果的である。
【0056】
さらにまた、線状突起30は、複数の線31の引張強さが、680~930N/mm2、610~860N/mm2、580~830N/mm2の場合には、適度な粘り気があり、忌避性が良く、施工がしやすい。
【0057】
また、線31の線径が、0.16mmを超え0.50mm以下であり、例えば、0.4mmである場合、線31は、細く、かつ、腰がある。このため、施工性に優れるとともに、線状突起30に備える鋭利な先端33で忌避効果が高い。
【0058】
出口20が斜め下方に開口し、線状突起30が開口方向に沿って傾斜している場合には、線状突起30に沿ってコウモリ目が出口20から退出することができる。また、斜め下方から接近するというコウモリ目は特性に対応でき、接近や進入を防止することができる。
【0059】
織金網10がステンレス鋼線製である場合には、錆びの発生を防止することができる。経年劣化にも強く、長期間の使用にも耐えることができる。即ち、長期的にコウモリ目の忌避具としての効果を長期間にわたって発揮することができる。
【0060】
本実施形態の施工方法200によれば、コウモリ目が飛び立って建物中にいないことを確認することなく、容易にかつ迅速に施工することができる。換言すれば、コウモリ目が住み着いているときにも、容易にかつ迅速に施工することができる。従って、例えば、夕方まで施工を待ったり、コウモリ目が飛び立ったことや建物内部に残っていないことを確認する必要がない。このため、夜間まで待つということがなく、迅速に施工できる。
【0061】
また、施工方法200によれば、隙間Gを有しない施工現場に対応可能である。例えば、隙間Gを有しない垂木間にも施工可能である。和風住宅の軒3下に垂木4が見えないタイプにも施工可能である。なお、垂木間に施工する場合、例えば、出口20の開口幅Xや複数の線31が配列される線状突起30の幅は、10mm以上200mm以下の範囲内に形成可能である。
【0062】
(本発明の変形例)
なお、本発明のコウモリ目の追い出し用仕掛け具及びその施工方法に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、織金網、出口、線状突起、反り、取付部の形状、構造に係る構成又は各工程について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲に応じ適宜変更可能である。
【0063】
例えば、本発明に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、上記実施形態の如く、平織金網の織金網に何ら限定されない。織金網の製造方法は、平織金網に何ら限定されず、例えば、あや織金網であってもよいし、畳織金網であってもよい。
【0064】
また、
図2には、正方目の織金網が図示されているが、何らこれに限定されない。織金網はコウモリ目のアクセス箇所に取り付け可能であればよく、形状は限定されず、アクセス箇所に応じて対応可能である。
図2には、織金網に耳を有するが、耳は、有しなくてもよい。耳は、横線の外側のループ状の折返しの部分である。
【0065】
また、織金網に有する織りはずれは、織金網に切れ込みを入れて横線の一部が切れてなくなり抜けた状態の織りはずれに何ら限定されず、例えば、横線が編まれていない状態のものであってもよいし、縦線と横線が編まれていない状態のものであってもよい。また、織りはずれは、織金網に切れ込みを入れて縦線の一部が切れてなくなり抜けた状態又は編まれていない状態のものであってもよい。即ち、織りはずれは、織金網に切れ込みを入れて形成されているものであればよい。切れ込み位置は、
図2に示す一側部でなくてもよく、他側部でもよいし、中央部でもよい。切れ込みの位置が側部でない場合は、線の一部を切断して傾斜させればよい。
【0066】
さらに、本発明に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、上記実施形態に如く、複数の線が、
図3に示すように、斜め下方に傾斜されているものに何ら限定されない。例えば、線の傾斜方向は、長さ方向であってもよいし、幅方向であってもよいし、斜め上方に傾斜されていてもよい。
【0067】
さらにまた、本発明に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、上記実施形態の如く、線に反りを有するものに何ら限定されず、例えば、反りを有せず傾斜させたものであってもよい。
【0068】
また、コウモリ目のアクセス箇所は、上記実施形態の如く、化粧板と垂木との隙間を含むところに何ら限定されず、他の隙間を有する場所であってもよいし、隙間を有しないコウモリ目のアクセス箇所であってもよい。
【0069】
本発明に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法は、上記実施形態の如く、反りを形成する工程を有するものに何ら限定されず、例えば、反りを形成せずにコウモリ目のアクセス箇所に取り付けてもよい。
【0070】
また、本発明に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法は、上記実施形態の如く、和風住宅の軒下に垂木が見えるタイプに施工する場合に何ら限定されず、軒下に垂木がみえないタイプであっても施工可能である。
【0071】
(まとめ)
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、織金網と、該織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成し、該織りはずれに有する横線又は縦線の何れかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と前記傾斜された複数の線で構成される線状突起とを備え、コウモリ目のアクセス箇所に取り付けられ、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する構成である。
【0072】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具によれば、上記構成を備えるので、コウモリを建物中に残すことや閉じ込めることを防止できる。
【0073】
また、本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、前記線状突起は、前記複数の線が、正面視で、前記出口を覆い、底面視で、前記織金網から前面に突出している構成であってもよい。この場合には、コウモリ目の進入を防止することができる。
【0074】
さらに、本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、前記線状突起は、前記複数の線に反りを有する構成であってもよい。この場合には、反りがあることでコウモリ目の接近距離や位置に広く対応することができる。
【0075】
さらにまた、本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具は、前記織金網は、ステンレス鋼線製である構成であってもよい。この場合には、錆びの発生を防止することができる。
【0076】
本発明の他の態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法は、織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程と、前記織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と前記傾斜された複数の線で構成される線状突起とを形成する工程と、前記線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程とを含み、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する方法である。
【0077】
本発明の他の態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法によれば、上記工程を有するので、容易にかつ迅速に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
巣からの追い出しの実現と追い出し後の進入を阻止又は妨害するコウモリ目の追い出し用仕掛け具及びその施工方法であるが、軒下、屋根裏、換気口、雨戸又は屋根の隙間を含むコウモリ目のアクセス箇所に施工して使用することができ、その他、忌避具、飛来防止ネット、防虫ネットなど特定の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
10 織金網
11 織りはずれ
12 縦線
13 横線
15 網目
20 出口
30 線状突起
31 線
40 反り
50 取付部
100 コウモリ目の追い出し用仕掛け具
200 施工方法
S203 織りはずれを形成する工程
S204 線状突起を形成する工程
S205 反りを形成する工程
S206 アクセス箇所に取り付ける工程
N アクセス箇所
【手続補正書】
【提出日】2021-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程と、
前記織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と傾斜された前記複数の線で構成される線状突起とを形成する工程と、
前記線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程とを含み、
前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害することを特徴とするコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法。
【請求項2】
前記線状突起は、前記複数の線が、正面視で、前記出口を覆い、底面視で、前記織金網から前面に突出していることを特徴とする請求項1記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法。
【請求項3】
前記織金網は、ステンレス鋼線製であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法。
【請求項4】
前記複数の線は、軟質のステンレス鋼線であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法。
【請求項5】
前記複数の線に反りを形成する工程を含むことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、巣からの追い出しに用いられ、追い出し後の進入を阻止又は妨害するコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法は、織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程と、前記織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と傾斜された前記複数の線で構成される線状突起とを形成する工程と、前記線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程とを含み、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する構成である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
さらに、前記織金網は、ステンレス鋼線製である構成であってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
さらにまた、前記複数の線は、軟質のステンレス鋼線である構成であってもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
前記複数の線に反りを形成する工程を含む構成であってもよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法によれば、上記工程を含むので、コウモリが飛び立つのを待つことや確認の必要がなく、迅速かつ容易に施工できるという効果を奏する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
【
図1】
一実施形態のコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工場所の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の追い出し用仕掛け具を示す一部拡大正面図である。
【
図4】
図1の追い出し用仕掛け具を示す一部拡大底面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法を示すフローチャートである。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
即ち、アクセス箇所Nは織金網10で覆われているので、コウモリ目の出口20以外からの退出と進入を阻止することができる。一方、追い出し用仕掛け具100は出口20を有するので、コウモリ目は、出口20から退出が可能である。出口20は、斜め下方である開口方向Dへ開口している場合には、コウモリ目は、開口方向Dに退出できる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
出口20が斜め下方に開口し、線状突起30が開口方向に沿って傾斜している場合には、線状突起30に沿ってコウモリ目が出口20から退出することができる。また、斜め下方から接近するというコウモリ目の特性に対応でき、接近や進入を防止することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
(本発明の変形例)
なお、コウモリ目の追い出し用仕掛け具及び本発明の施工方法に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、織金網、出口、線状突起、反り、取付部の形状、構造に係る構成又は各工程について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲に応じ適宜変更可能である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
例えば、コウモリ目の追い出し用仕掛け具は、上記実施形態の如く、平織金網の織金網に何ら限定されない。織金網の製造方法は、平織金網に何ら限定されず、例えば、あや織金網であってもよいし、畳織金網であってもよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
さらに
、コウモリ目の追い出し用仕掛け具は、上記実施形態に如く、複数の線が、
図3に示すように、斜め下方に傾斜されているものに何ら限定されない。例えば、線の傾斜方向は、長さ方向であってもよいし、幅方向であってもよいし、斜め上方に傾斜されていてもよい。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
さらにまた、コウモリ目の追い出し用仕掛け具は、上記実施形態の如く、線に反りを有するものに何ら限定されず、例えば、反りを有せず傾斜させたものであってもよい。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法は、織金網に切れ込みを入れて織りはずれを形成する工程と、前記織りはずれに有する複数の横線又は縦線のいずれかの複数の線を傾斜させ、前記織金網の網目の面積より広い開口面積を有する出口と傾斜された前記複数の線で構成される線状突起とを形成する工程と、前記線状突起が形成された織金網を、コウモリ目のアクセス箇所に取り付ける工程とを含み、前記出口からコウモリ目の退出を可能とし、コウモリ目の進入を阻止又は妨害する方法である。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
本発明の一態様に係るコウモリ目の追い出し用仕掛け具の施工方法によれば、上記工程を有するので、容易にかつ迅速に施工することができる。