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特開2023-2170生体登録装置、生体認証装置、コンピュータプログラム及び生体認証方法
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  • 特開-生体登録装置、生体認証装置、コンピュータプログラム及び生体認証方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002170
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】生体登録装置、生体認証装置、コンピュータプログラム及び生体認証方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20221227BHJP
【FI】
G06T7/00 510A
G06T7/00 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103230
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】馬場 昭
(72)【発明者】
【氏名】中原 正隆
(72)【発明者】
【氏名】新田 修也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 優
(72)【発明者】
【氏名】西垣 正勝
(72)【発明者】
【氏名】大木 哲史
(72)【発明者】
【氏名】吉平 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 歩弥
(72)【発明者】
【氏名】塩見 祐哉
【テーマコード(参考)】
5B043
5L096
【Fターム(参考)】
5B043AA09
5B043BA01
5B043EA05
5B043FA07
5B043FA09
5L096BA08
5L096JA03
5L096JA09
5L096KA09
5L096KA13
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】1対多生体認証処理において、距離索引法によって処理の高速化を図ると共に認証精度の向上を図る。
【解決手段】複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成部と、テンプレート毎に基準データとの間の類似度を算出し、類似度の算出の結果からテンプレートと基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、前記主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成部と、
前記テンプレート毎に前記基準データとの間の類似度を算出し、前記類似度の算出の結果から前記テンプレートと前記基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録部と、
を備える生体登録装置。
【請求項2】
前記基準データ集合生成部は、前記テンプレートの画像サイズを所定サイズに縮小した縮小テンプレートに対して主成分分析を行う、
請求項1に記載の生体登録装置。
【請求項3】
一の登録ユーザの複数の生体データに対してそれぞれに前記基準データとの間の類似度を算出し、当該類似度の算出の結果から当該複数の生体データ毎に各基準データ間の類似度の順列を作成し、当該順列間の距離の総和が最小になる生体データから当該登録ユーザのテンプレートを取得するテンプレート取得部をさらに備える、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の生体登録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の生体登録装置に対応する生体認証装置であって、
前記生体登録装置が生成した距離索引法の基準データの集合に含まれる各基準データと、認証ユーザの生体データのサンプルとの間の類似度を算出する基準データ間類似度算出部と、
前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックスとに基づいて、前記インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する判定候補選択部と、
前記判定候補のテンプレートに対して前記サンプルに一致するか否かを判定する判定部と、
を備える生体認証装置。
【請求項5】
前記判定候補選択部は、前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックス内の各テンプレートの類似度とを比較する、
請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記判定候補選択部は、前記サンプルの類似度の算出の結果に基づいた前記サンプルと各基準データ間の類似度の順列と、前記インデックスにおける各テンプレートの各基準データ間の類似度の順列とを比較する、
請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項7】
一の認証ユーザの複数の生体データのそれぞれに対して一の生体データとそれ以外の他の生体データとの照合を行い、当該照合の結果の照合スコアが最大である生体データから当該認証ユーザのサンプルを取得するサンプル取得部をさらに備える、
請求項4から6のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項8】
生体登録装置のコンピュータに、
複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、前記主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成ステップと、
前記テンプレート毎に前記基準データとの間の類似度を算出し、前記類似度の算出の結果から前記テンプレートと前記基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の生体登録装置に対応する生体認証装置のコンピュータに、
前記生体登録装置が生成した距離索引法の基準データの集合に含まれる各基準データと、認証ユーザの生体データのサンプルとの間の類似度を算出する基準データ間類似度算出ステップと、
前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックスの類似度とに基づいて、前記インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する判定候補選択ステップと、
前記判定候補のテンプレートに対して前記サンプルに一致するか否かを判定する判定ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
生体登録装置が、複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、前記主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成ステップと、
前記生体登録装置が、前記テンプレート毎に前記基準データとの間の類似度を算出し、前記類似度の算出の結果から前記テンプレートと前記基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録部と、
生体認証装置が、前記生体登録装置が生成した距離索引法の基準データの集合に含まれる各基準データと、認証ユーザの生体データのサンプルとの間の類似度を算出する基準データ間類似度算出ステップと、
前記生体認証装置が、前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックスの類似度とに基づいて、前記インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する判定候補選択ステップと、
前記生体認証装置が、前記判定候補のテンプレートに対して前記サンプルに一致するか否かを判定する判定ステップと、
を含む生体認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体登録装置、生体認証装置、コンピュータプログラム及び生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1対多生体認証処理を高速化する技術として、例えば非特許文献1に記載された技術が知られている。非特許文献1に記載された技術では、距離索引法によって、全登録ユーザのテンプレート(登録時の生体情報)から、サンプル(認証時の生体情報)を照合する相手(検索対象)になるテンプレートを絞り込む。
【0003】
具体的には、生体情報の登録段階において、全登録ユーザのテンプレート(x個)のうち一部(n個)をpivot(基準データ)として定義し、あらかじめすべてのテンプレートとpivotとの間の距離(又は類似度)を計算し、テンプレート毎に各pivotとの間の距離(又は類似度)を示すインデックスを記録する。そして、認証時には、サンプルとpivotとの間の距離(又は類似度)を計算し、サンプルと各pivotとの間の距離(又は類似度)と登録済みのインデックスとの相関から検索対象になるテンプレートを絞り込み、絞り込んだ結果のテンプレートのみに対してサンプルとの照合処理(1対1生体認証処理)を行う。これにより、テンプレートとサンプルとの照合処理を実行する回数を削減している。また順列インデックス法によって、照合処理の実行回数の更なる削減を図っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「大規模IDレス生体認証に向けた逐次索引融合判定の提案」、電子情報通信学会論文誌、Vol. J96-A No.12、pp.801-814、2013年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した非特許文献1に記載された技術では、複数の異なる登録ユーザのテンプレートをpivotに使用するが、サンプルの各pivotとの間の距離(又は類似度)が狭い範囲に集中してしまうために、認証精度が不十分になる可能性があった。この対処のためにpivot数を増大させると、サンプルとpivotとの間の距離(又は類似度)を計算する回数が増えることから、1対多生体認証処理の高速化の効果が減少してしまう。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、例えば掌紋認証や指紋認証や顔認証や虹彩認証等の生体認証に関する1対多生体認証処理において、距離索引法によって処理の高速化を図ると共に、認証精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、前記主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成部と、前記テンプレート毎に前記基準データとの間の類似度を算出し、前記類似度の算出の結果から前記テンプレートと前記基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録部と、を備える生体登録装置である。
(2)本発明の一態様は、前記基準データ集合生成部は、前記テンプレートの画像サイズを所定サイズに縮小した縮小テンプレートに対して主成分分析を行う、上記(1)の生体登録装置である。
(3)本発明の一態様は、一の登録ユーザの複数の生体データに対してそれぞれに前記基準データとの間の類似度を算出し、当該類似度の算出の結果から当該複数の生体データ毎に各基準データ間の類似度の順列を作成し、当該順列間の距離の総和が最小になる生体データから当該登録ユーザのテンプレートを取得するテンプレート取得部をさらに備える、上記(1)又は(2)のいずれかの生体登録装置である。
【0008】
(4)本発明の一態様は、上記(1)から(3)のいずれかの生体登録装置に対応する生体認証装置であって、前記生体登録装置が生成した距離索引法の基準データの集合に含まれる各基準データと、認証ユーザの生体データのサンプルとの間の類似度を算出する基準データ間類似度算出部と、前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックスとに基づいて、前記インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する判定候補選択部と、前記判定候補のテンプレートに対して前記サンプルに一致するか否かを判定する判定部と、を備える生体認証装置である。
(5)本発明の一態様は、前記判定候補選択部は、前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックス内の各テンプレートの類似度とを比較する、上記(4)の生体認証装置である。
(6)本発明の一態様は、前記判定候補選択部は、前記サンプルの類似度の算出の結果に基づいた前記サンプルと各基準データ間の類似度の順列と、前記インデックスにおける各テンプレートの各基準データ間の類似度の順列とを比較する、上記(4)の生体認証装置である。
(7)本発明の一態様は、一の認証ユーザの複数の生体データのそれぞれに対して一の生体データとそれ以外の他の生体データとの照合を行い、当該照合の結果の照合スコアが最大である生体データから当該認証ユーザのサンプルを取得するサンプル取得部をさらに備える、上記(4)から(6)のいずれかの生体認証装置である。
【0009】
(8)本発明の一態様は、生体登録装置のコンピュータに、複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、前記主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成ステップと、前記テンプレート毎に前記基準データとの間の類似度を算出し、前記類似度の算出の結果から前記テンプレートと前記基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
(9)本発明の一態様は、上記(1)から(3)のいずれかの生体登録装置に対応する生体認証装置のコンピュータに、前記生体登録装置が生成した距離索引法の基準データの集合に含まれる各基準データと、認証ユーザの生体データのサンプルとの間の類似度を算出する基準データ間類似度算出ステップと、前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックスの類似度とに基づいて、前記インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する判定候補選択ステップと、前記判定候補のテンプレートに対して前記サンプルに一致するか否かを判定する判定ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0010】
(10)本発明の一態様は、生体登録装置が、複数の登録ユーザの生体データのテンプレートに対して主成分分析を行い、前記主成分分析の結果から距離索引法の基準データの集合を生成する基準データ集合生成ステップと、前記生体登録装置が、前記テンプレート毎に前記基準データとの間の類似度を算出し、前記類似度の算出の結果から前記テンプレートと前記基準データとの間の類似度のインデックスを記録するインデックス記録部と、生体認証装置が、前記生体登録装置が生成した距離索引法の基準データの集合に含まれる各基準データと、認証ユーザの生体データのサンプルとの間の類似度を算出する基準データ間類似度算出ステップと、前記生体認証装置が、前記サンプルの類似度の算出の結果と前記生体登録装置が記録したインデックスの類似度とに基づいて、前記インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する判定候補選択ステップと、前記生体認証装置が、前記判定候補のテンプレートに対して前記サンプルに一致するか否かを判定する判定ステップと、を含む生体認証方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1対多生体認証処理において、距離索引法によって処理の高速化を図ると共に認証精度の向上を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る掌紋認証システムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る掌紋登録装置の構成例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る掌紋認証方法の登録段階の手順の例を示すフロー図である。
図4】一実施形態に係る掌紋認証装置の構成例を示すブロック図である。
図5】一実施形態に係る掌紋認証方法の認証段階の手順の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態では、生体認証の一例として掌紋認証を挙げて説明する。
図1は、一実施形態に係る掌紋認証システムの構成例を示すブロック図である。図1において、掌紋認証システム1は、掌紋登録装置10と、掌紋認証装置30とを備える。掌紋認証システム1と、ユーザ端末2とは、通信ネットワークNWを介して通信を行う。通信ネットワークNWは、例えば、携帯電話ネットワークや無線LAN(Local Area Network)等の無線通信ネットワーク、インターネットなどである。
【0014】
ユーザ端末2は、例えば、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置であってもよく、又は、据置き型の通信端末装置(例えば、据置き型のパーソナルコンピュータ等)であってもよい。
【0015】
ユーザ端末2は、掌紋データPを保持する。掌紋データPは、ユーザの手のひらが被写体として撮像された撮像画像の画像データである。したがって、掌紋データPは、ユーザの掌紋の画像を含む画像データである。掌紋データPは、ユーザ端末2が備えるカメラで撮像された撮像画像であってもよく、又は、ユーザ端末2とは別個のカメラで撮像された撮像画像であってもよい。ユーザ端末2は、登録段階において、登録用の掌紋データP(P_a)を掌紋認証システム1へ送信する。ユーザ端末2は、認証段階において、認証用の掌紋データP(P_b)を掌紋認証システム1へ送信する。掌紋データPは生体データに対応する。
【0016】
掌紋認証システム1の掌紋登録装置10は、登録段階において、全登録ユーザの登録用の掌紋データP(P_a)からそれぞれに登録されたテンプレートである全登録ユーザのテンプレートから、距離索引法のインデックスを作成し記録する。掌紋認証システム1の掌紋認証装置30は、認証段階において、一の認証ユーザの認証用の掌紋データP(P_b)に基づいたサンプルに対して、掌紋登録装置10が記録したインデックスを使用して全登録ユーザのテンプレートからサンプルを照合する相手(検索対象)になるテンプレートを絞り込む。
【0017】
本実施形態では、距離索引法のpivot(基準データ)として、全登録ユーザのテンプレートに対する主成分分析の結果(主成分分析画像)を使用する。具体的には、第1主成分から第n主成分までのn個の主成分分析画像をそれぞれにpivotに使用して、n個のpivotを得る。主成分分析画像は、次元毎に各次元の特徴の分散が最大となる画像である。このため、主成分分析画像と異なる複数人の掌紋画像との間の類似度の分布が広範囲に散らばりやすくなるので、テンプレートをpivotに使用する場合に比して、掌紋画像を識別する精度を向上させることができる。また、低次の主成分分析画像のみを用いて掌紋画像の高精度の識別を行うことができるので、テンプレートをpivotに使用する場合に比して、pivot数を低減することができるので、サンプルとpivotとの間の類似度を計算する回数を削減することができる。さらに、低次の主成分分析画像は低解像度の画像になるので、高解像度のテンプレートをpivotに使用する場合に比して、pivotとサンプルとの間の類似度を算出する計算量を削減することができる。このように本実施形態では、距離索引法のpivot(基準データ)として全登録ユーザのテンプレートに対する主成分分析の結果(主成分分析画像)を使用することにより、1対多掌紋認証処理において、距離索引法によって処理の高速化を図ると共に、認証精度の向上を図る。
【0018】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[掌紋登録装置]
図2は、本実施形態に係る掌紋登録装置の構成例を示すブロック図である。図2において、掌紋登録装置10は、テンプレート取得部11と、テンプレート登録データベース(テンプレート登録DB)12と、pivot集合生成部(基準データ集合生成部)13と、インデックス記録部14とを備える。
【0020】
掌紋登録装置10の各機能は、掌紋登録装置10がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、掌紋登録装置10として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、掌紋登録装置10は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、掌紋登録装置10の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、掌紋登録装置10は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は掌紋登録装置10の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。また、掌紋登録装置10として、例えばWWWシステム等を利用してウェブサイトを開設するように構成してもよい。
【0021】
テンプレート取得部11は、ユーザ端末2から送信された登録ユーザの登録用の掌紋データP_aから登録ユーザのテンプレートを取得する。テンプレート取得部11は、取得した登録ユーザのテンプレートをテンプレート登録DB12に登録する。テンプレートは、掌紋データP_aの掌紋画像領域のうち、全ての領域の画像であってもよく、又は一部の領域の画像であってもよい。
【0022】
テンプレート登録DB12は、各登録ユーザのテンプレートを格納する。
【0023】
pivot集合生成部13は、テンプレート登録DB12に登録されている全登録ユーザのテンプレートに対して主成分分析を行い、当該主成分分析の結果(主成分分析画像)から距離索引法のpivotの集合(pivot集合)を生成する。具体的には、pivot集合生成部13は、第1主成分から第n主成分までのn個の主成分分析画像がそれぞれにpivotである、n個のpivot(主成分分析画像)から構成されるpivot集合を生成する。掌紋登録装置10は、pivot集合を記録する。
【0024】
インデックス記録部14は、テンプレート登録DB12に登録されている全登録ユーザのテンプレートに対して、テンプレート毎に、テンプレートとpivot集合内の各pivotとの間の類似度を算出する。インデックス記録部14は、当該類似度の算出の結果から、テンプレート毎に各pivotとの間の類似度を示すインデックスを記録する。
【0025】
本実施形態では、テンプレートとpivotとの間の類似度の算出方法として、画像間の類似度の算出方法の一例であるNCC(Normalized Cross Correlation、正規化相互相関)を使用する。したがって、インデックス記録部14は、テンプレート登録DB12に登録されている全登録ユーザのテンプレートに対して、テンプレート毎に、テンプレートとpivot集合内の各pivotとの間のNCC値を算出する。インデックス記録部14は、当該NCC値の算出の結果から、テンプレート毎に各pivotとの間のNCC値を示すインデックスを記録する。
【0026】
次に図3を参照して本実施形態に係る掌紋認証方法の登録段階の手順を説明する。図3は、本実施形態に係る掌紋認証方法の登録段階の手順の例を示すフロー図である。
【0027】
(ステップS101) 掌紋登録装置10は、テンプレート登録DB12に登録されている全登録ユーザのテンプレートに対して主成分分析を行い、当該主成分分析の結果(主成分分析画像)から距離索引法のpivotの集合(pivot集合)を生成する。当該pivot集合は、n個のpivot(主成分分析画像)「p1,p2,・・・,pn」から構成される。
【0028】
(ステップS102) 掌紋登録装置10は、テンプレート登録DB12に登録されている全登録ユーザのテンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」に対して、テンプレート毎に、テンプレートとpivot集合内の各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度を算出する(図3中の照合処理)。掌紋登録装置10は、当該類似度の算出の結果から、テンプレート毎に各pivotとの間の類似度を示すインデックスを記録する(図3中のインデックス生成処理)。これにより、図3に示されるように、インデックス記録部14には、全登録ユーザのテンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」に対して、テンプレート毎に各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度を示すインデックスが記録される。
【0029】
次に本実施形態に係る掌紋登録装置10におけるいくつかの変形例を以下に示す。
【0030】
(変形例1-1)
pivot集合生成部13は、テンプレートの画像サイズを所定サイズに縮小した縮小テンプレートに対して主成分分析を行ってもよい。例えば、160画素×160画素のテンプレートを8画素×8画素に縮小した縮小テンプレートに対して主成分分析が行われる。
【0031】
(変形例1-2)
テンプレート取得部11は、既にpivot集合が作成された後における新規登録ユーザのテンプレート登録時や既存登録ユーザのテンプレートの更新時において、一の登録ユーザの複数の掌紋データ(例えば、一の登録ユーザの掌紋が撮影された動画データに含まれる複数の掌紋画像など)に対してそれぞれにpivot集合内の各pivotとの間の類似度を算出し、当該類似度の算出の結果から当該複数の掌紋データ毎に掌紋データと各pivotとの間の類似度の順列を作成し、一掌紋データの順列とそれ以外の他の掌紋データの順列との間の各距離の総和が最小になる順列に対応する掌紋データから当該登録ユーザのテンプレートを取得してもよい。
【0032】
[掌紋認証装置]
図4は、本実施形態に係る掌紋認証装置の構成例を示すブロック図である。図4において、掌紋認証装置30は、サンプル取得部31と、pivot間類似度算出部(基準データ間類似度算出部)32と、判定候補選択部33と、判定部34とを備える。
【0033】
掌紋認証装置30の各機能は、掌紋認証装置30がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、掌紋認証装置30として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、掌紋認証装置30は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、掌紋認証装置30の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、掌紋認証装置30は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は掌紋認証装置30の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。また、掌紋認証装置30として、例えばWWWシステム等を利用してウェブサイトを開設するように構成してもよい。
【0034】
サンプル取得部31は、ユーザ端末2から送信された認証ユーザの認証用の掌紋データP_bから認証ユーザのサンプルを取得する。サンプルは、掌紋データP_bの掌紋画像領域のうち、全ての領域の画像であってもよく、又は一部の領域の画像であってもよい。例えば、サンプルは、掌紋データP_bの掌紋画像領域のうち、テンプレートが取得される領域と同様の領域から取得される。
【0035】
pivot間類似度算出部32は、掌紋登録装置10が生成したpivot集合内の各pivotと、認証ユーザのサンプルとの間の類似度を算出する。サンプルとpivotとの間の類似度の算出方法は、テンプレートとpivotとの間の類似度の算出方法と同じであって、本実施形態ではNCCを使用する。したがって、pivot間類似度算出部32は、掌紋登録装置10が生成したpivot集合内の各pivotと、認証ユーザのサンプルとの間のNCC値を算出する。
【0036】
判定候補選択部33は、認証ユーザのサンプルの類似度の算出の結果と、掌紋登録装置10が記録したインデックスとに基づいて、インデックスに含まれるテンプレートの中から判定候補のテンプレートを選択する。
【0037】
判定部34は、判定候補のテンプレートと認証ユーザのサンプルとの照合処理(1対1掌紋認証処理)を行い、当該照合処理の結果に基づいて、判定候補のテンプレートが認証ユーザのサンプルに一致する(認証成功)か否(認証失敗)かを判定する。この判定結果(認証成功又は認証失敗)は掌紋認証装置30から出力される。
【0038】
次に図5を参照して本実施形態に係る掌紋認証方法の認証段階の手順を説明する。図5は、本実施形態に係る掌紋認証方法の認証段階の手順の例を示すフロー図である。
【0039】
(ステップS201) 掌紋認証装置30は、ユーザ端末2から送信された認証ユーザの認証用の掌紋データP_bから認証ユーザのサンプル(認証用サンプル)a1を取得する。
【0040】
(ステップS202) 掌紋認証装置30は、掌紋登録装置10が生成したpivot集合内の各pivot「p1,p2,・・・,pn」と、認証用サンプルa1との間の類似度を算出する(図5中の認証用pivot照合スコア集合算出処理)。これにより、認証用サンプルa1と各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度の集合(認証用pivot照合スコア集合)が生成される。
【0041】
(ステップS203) 掌紋認証装置30は、認証用pivot照合スコア集合と、掌紋登録装置10が記録したインデックスとに基づいて、インデックスに含まれるテンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」の中から判定候補のテンプレートを選択する。具体的には、掌紋認証装置30は、認証用pivot照合スコア集合内の類似度と、掌紋登録装置10が記録したインデックス内の各テンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」の類似度とを比較する。ここでは、テンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」毎に、「認証用pivot照合スコア集合」と「テンプレートと各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度の集合」との間の類似度を計算する(図5中の類似度計算処理)。次いで、掌紋認証装置30は、当該インデックスに含まれるテンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」の中から、当該計算結果の類似度が高い上位の所定数(m個)のテンプレートを、判定候補のテンプレートとして選択する(図5中の候補選択処理)。
【0042】
(ステップS204) 掌紋認証装置30は、m個の判定候補のテンプレートに対して、判定候補のテンプレート毎に、判定候補のテンプレートと認証用サンプルa1との照合処理(1対1掌紋認証処理)を行う(図5中の照合処理)。次いで、掌紋認証装置30は、当該照合処理の結果に基づいて、判定候補のテンプレートが認証用サンプルa1に一致する(認証成功)か否(認証失敗)かを判定する(図5中の判定処理)。例えば、掌紋認証装置30は、当該照合処理の結果の照合スコアが所定の閾値を超えた場合に認証成功であると判定し、そうではない場合に認証失敗であると判定する。
【0043】
次に本実施形態に係る掌紋認証装置30におけるいくつかの変形例を以下に示す。
【0044】
(変形例2-1)
判定候補選択部33は、認証用pivot照合スコア集合における認証用サンプルa1と各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度についての順列と、インデックスにおける各テンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」の各pivot「p1,p2,・・・,pn」間の類似度についての順列とを比較してもよい。具体的には、判定候補選択部33は、「認証用サンプルa1と各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度についての順列」と「テンプレートと各pivot「p1,p2,・・・,pn」との間の類似度についての順列」との間の距離をテンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」毎に計算し、当該インデックスに含まれるテンプレート「t1,t2,t3,・・・,tx」の中から、当該計算結果の距離が短い上位の所定数(m個)のテンプレートを、判定候補のテンプレートとして選択する。本変形例2-1によれば、順列は、どちらが大きいか小さいかという情報のみで順番が決まるので、認証ユーザ本人の変動に対するロバスト性が改善されて認証精度が向上する効果が得られる。
【0045】
(変形例2-2)
サンプル取得部31は、一の認証ユーザの複数の掌紋データ(例えば、一の認証ユーザの掌紋が撮影された動画データに含まれる複数の掌紋画像など)のそれぞれに対して一の掌紋データとそれ以外の他の掌紋データとの照合を行い、当該照合の結果の照合スコアが最大である掌紋データから当該認証ユーザのサンプルを取得してもよい。
【0046】
上述した実施形態によれば、1対多掌紋認証処理において、距離索引法のpivot(基準データ)として全登録ユーザのテンプレートに対する主成分分析の結果(主成分分析画像)を使用することにより、距離索引法によって処理の高速化を図ると共に、認証精度の向上を図ることができる。
【0047】
なお、掌紋登録装置10と掌紋認証装置30とは、別個の装置として構成されてもよく、又は同じ装置として構成されてもよい。
【0048】
本実施形態に係る掌紋認証システム1は、例えばオンラインでの決済サービスにおける本人認証処理などに適用可能である。
【0049】
なお、これにより、例えば掌紋認証システムを利用した本人認証サービスにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0051】
上述した実施形態では、生体認証の一例として掌紋認証を挙げたが、例えば指紋認証や顔認証や虹彩認証等の生体認証にも適用可能である。
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0052】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…掌紋認証システム、10…掌紋登録装置、11…テンプレート取得部、12…テンプレート登録データベース(テンプレート登録DB、13…pivot集合生成部(基準データ集合生成部)、14…インデックス記録部、30…掌紋認証装置、31…サンプル取得部、32…pivot間類似度算出部(基準データ間類似度算出部)、33…判定候補選択部、34…判定部、2…ユーザ端末、NW…通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5