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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021704
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A61B1/12 541
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126742
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】別所 久徳
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161JJ01
4C161PP15
(57)【要約】
【課題】簡単な構成にて発熱部の熱を適切に放熱することができる内視鏡を提供する。
【解決手段】作動時に発熱する撮像素子44と、撮像素子44と一体化され、撮像素子44が発熱する場合、撮像素子44から伝わる熱を放熱するシールドパイプ41及びモールド樹脂部48を備える内視鏡において、モールド樹脂部48は撮像素子44及びシールドパイプ41よりも大きい線膨張係数を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動時に発熱する発熱部と、前記発熱部から伝わる熱を放熱する放熱部材とを備える内視鏡において、
前記放熱部材は、前記発熱部を覆う第1放熱部材と、前記第1放熱部材が内嵌される筒形状の第2放熱部材とを含み、
前記第1放熱部材は、前記発熱部及び前記第2放熱部材よりも大きい線膨張係数を有することを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材の間には、シート形状の介在部材が配置され、
前記介在部材の線膨張係数は、前記発熱部及び前記放熱部材の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記第2放熱部材が内嵌される外側部材を備え、
前記外側部材は、前記第2放熱部材よりも線膨張係数が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記外側部材は外部に露出されている第1外側部材と、露出されていない第2外側部材とを含み、
前記第1外側部材は前記第2外側部材よりも熱伝導率が低いことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記第2外側部材は円筒形状であり、
前記第2外側部材が内嵌される円管形状の外装部材を備え、
前記外装部材の熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記外装部材の熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記第1放熱部材はエポキシからなり、
前記第2放熱部材はニッケルからなることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記第2放熱部材の圧縮率は20%以上であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記介在部材の圧縮率は20%以上であることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡における高画質化のニーズの高騰に伴い、撮像素子の高画素化が進んでいる。しかし、撮像素子の高画素化によって消費電力が大きくなり、撮像素子の発生する熱量も増加するので、撮像素子の熱の放熱方法について工夫が必要である。
【0003】
特許文献1には、撮像素子と配線板との間に、冷却デバイスを設け、撮像素子から発生する熱を効果的に放熱できる内視鏡が開示されている。
【0004】
特許文献2には、異なる2種類の樹脂を充填することによって、撮像素子と回路基板とを固化することにより、回路基板の放熱を効率よく行う内視鏡が開示されている。
【0005】
特許文献3には、先端部に取り付けられ、該先端部の熱を放熱するための複数のフィンを有する放熱部材を備える内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-217162号公報
【特許文献2】特開2011-200398号公報
【特許文献3】特開2007-156079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の内視鏡では冷却デバイスが設けられ、特許文献2の内視鏡では異なる2種類の樹脂が用いられ、特許文献3の内視鏡では先端部に放熱部材が設けられており、特許文献1~3の何れの内視鏡においても、放熱の為に別部材が必要であり、複雑な構成を有している。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放熱の為に別部材を必要とせず、簡単な構成にて発熱部の熱を適切に放熱することができる内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る内視鏡は、作動時に発熱する発熱部と、前記発熱部から伝わる熱を放熱する放熱部材とを備える内視鏡において、前記放熱部材は、前記発熱部を覆う第1放熱部材と、前記第1放熱部材が内嵌される筒形状の第2放熱部材とを含み、前記第1放熱部材は、前記発熱部及び前記第2放熱部材よりも大きい線膨張係数を有することを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、前記発熱部よりも、前記発熱部を覆う前記第1放熱部材の線膨張係数が大きいうえに、前記第1放熱部材が内嵌される筒形状の前記第2放熱部材よりも、前記第1放熱部材の線膨張係数が大きいので、前記第1放熱部材の熱膨張量が前記発熱部及び前記第2放熱部材よりも大きい。よって、前記発熱部が発熱した場合、前記第1放熱部材が前記発熱部及び前記第2放熱部材と密接でき、前記発熱部の熱が、前記第1放熱部材を介して外側の前記第2放熱部材まで、素早く伝わる。
【0011】
本発明に係る内視鏡は、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材の間には、シート形状の介在部材が配置され、前記介在部材の線膨張係数は、前記発熱部及び前記放熱部材の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、前記介在部材の線膨張係数は、前記発熱部及び前記放熱部材の線膨張係数よりも大きいので、前記介在部材の熱膨張量が前記放熱部材よりも大きい。よって、前記発熱部が発熱した場合、前記介在部材を介して前記第1放熱部材と前記第2放熱部材とが密接でき、前記発熱部の熱が、前記第1放熱部材よりも外側の前記第2放熱部材まで、素早く伝わる。
【0013】
本発明に係る内視鏡は、前記第2放熱部材が内嵌される外側部材を備え、前記外側部材は、前記第2放熱部材よりも線膨張係数が大きいことを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、前記外側部材は、前記第2放熱部材よりも線膨張係数が大きいので、前記外側部材の熱膨張量が前記第2放熱部材よりも大きい。よって、よって、前記発熱部が発熱した場合、前記外側部材と前記第2放熱部材とが密接しなくなり、前記発熱部の熱が前記第2放熱部材を介して前記外側部材に伝わり難い。従って、患者の皮膚が前記外側部材に接して熱傷をおうことを未然に防止できる。
【0015】
本発明に係る内視鏡は、前記外側部材は外部に露出されている第1外側部材と、露出されていない第2外側部材とを含み、前記第1外側部材は前記第2外側部材よりも熱伝導率が低いことを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、外部に露出され、患者の皮膚に接触し得る前記第1外側部材が前記第2外側部材よりも熱伝導率が低いので、たとえ、前記発熱部の熱が前記第2放熱部材を介して前記第1外側部材に伝わった場合でも、患者の皮膚が前記第1外側部材に接して熱傷をおうことを未然に防止できる。
【0017】
本発明に係る内視鏡は、前記第2外側部材は円筒形状であり、前記第2外側部材が内嵌される円管形状の外装部材を備え、前記外装部材の熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、患者の皮膚に接触し得る前記外装部材の熱伝導率が0.1W/(m・K)以下であって低いので、たとえ、前記発熱部の熱が前記第2放熱部材を介して前記第2外側部材に伝わった場合でも、患者の皮膚が前記外装部材に接して熱傷をおうことを未然に防止できる。
【0019】
本発明に係る内視鏡は、前記外装部材の熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、患者の皮膚に接触し得る前記外装部材の熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であって低いので、患者の皮膚が前記外装部材に接して熱傷をおうことをより確実に防止できる。
【0021】
本発明に係る内視鏡は、前記第1放熱部材はエポキシからなり、前記第2放熱部材はニッケルからなることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、前記第1放熱部材はエポキシからなっており、前記第2放熱部材はニッケルからなっている。
【0023】
本発明に係る内視鏡は、前記第2放熱部材の圧縮率は20%以上であることを特徴とする。
【0024】
本発明にあっては、前記発熱部の発熱が生じていない場合に対して、発熱が生じた場合における前記第2放熱部材の圧縮率は20%以上である。
【0025】
本発明に係る内視鏡は、前記介在部材の圧縮率は20%以上であることを特徴とする。
【0026】
本発明にあっては、前記発熱部の発熱が生じていない場合に対して、発熱が生じた場合における前記介在部材の圧縮率は20%以上である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、より簡単な構成にて発熱部の熱を適切に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る内視鏡の外観図である。
図2】本実施の形態に係る内視鏡の挿入部の断面図である。
図3図2に示された撮像アセンブリを拡大して示す拡大断面図である。
図4】本実施の形態に係る内視鏡における、撮像素子の温度と、介在部材の圧縮率との関係を示すグラフである。
図5】カバーチューブの熱伝導率と、カバーチューブの内外間の温度差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態に係る内視鏡を図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る内視鏡の外観図である。
内視鏡1は、上部消化管又は下部消化管向けの軟性鏡である。内視鏡1は、操作部11、コネクタ部12、及び挿入部2を備えている。挿入部2と操作部11との間には折れ止め部13が設けられている。
【0030】
操作部11は、筒形状であり、一端部には操作ノブ111が設けられ、他端部にはチャンネル入口113が設けられている。また、チャンネル入口113には鉗子栓112が設けられている。
【0031】
コネクタ部12は、ユニバーサルコード121を介して操作部11に接続されている。コネクタ部12は電源装置及び表示装置等(図示せず)に接続されている。ユニバーサルコード121、操作部11、折れ止め部13及び挿入部2の内部を通して、コネクタ部12から挿入部2に亘る、図示しない電力線及び信号線が配線されている。
【0032】
折れ止め部13は、操作部11の他端部に連通しており、挿入部2側に向けて縮径する円筒形状をなしている。
挿入部2は、細長い管状をなしており、先端側から順に、先端部201、湾曲部202、及び軟性部203を有する。先端部201は最も短く、硬質である。湾曲部202は可撓性を有する。軟性部203は最も長く、柔軟である。
【0033】
図2は、本実施の形態に係る内視鏡1の挿入部2の断面図である。図2は、挿入部2の先端部201を示している。先端部201には、先端部の軸長方向に沿って、撮像アセンブリ4が設けられており、撮像アセンブリ4は外側部材3によって取り囲まれている。
【0034】
図3は、図2に示された撮像アセンブリ4を拡大して示す拡大断面図である。
撮像アセンブリ4は、撮像素子44(発熱部)と、撮像素子44を収容する、断面視矩形の筒形状のシールドパイプ41(第2放熱部材)と、シールドパイプ41内に形成され、撮像素子44及びシールドパイプ41を一体化させるモールド樹脂部48(第1放熱部材)とを備えている。撮像素子44が発する熱は、シールドパイプ41又はモールド樹脂部48によって吸収されて放熱される。即ち、シールドパイプ41及びモールド樹脂部48は放熱部材である。
【0035】
シールドパイプ41は、例えばニッケル製である。シールドパイプ41の一端には、対物レンズユニット42が設けられており、シールドパイプ41の他端からケーブル47がシールドパイプ41内に挿入されている。
【0036】
撮像素子44は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device )イメージセンサである。撮像素子44は板状をなす。撮像素子44は、シールドパイプ41に内嵌されており、側面がシールドパイプ41の内面と当接している。
【0037】
シールドパイプ41内において、撮像素子44の受光面側にはカバーレンズ46が設けられている。カバーレンズ46は、カバーガラス、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を有している。即ち、カバーレンズ46は、撮像素子44の受光面を覆っている。
【0038】
撮像素子44は、前記受光面に結ばれる光学像を電気信号に変換して前記表示装置に出力する。シールドパイプ41内において、撮像素子44の前記受光面の反対側の面には、電気信号の入出力用の複数の電極441が突設されている。また、電極441に隣接して実装基板43が設けられている。即ち、撮像素子44は電極441を介して実装基板43に接続している。
【0039】
また、シールドパイプ41内において、実装基板43上にドライバIC(図示せず)等が実装されており、実装基板43とケーブル47とが電線を介して接続されている。ドライバICは撮像素子44を駆動する。
【0040】
そして、ドライバICは、ケーブル47の一端部に電気的に接続されている。ケーブル47は、前述の電力線及び信号線がシースに覆われた構成であり、柔軟性を有する。ケーブル47は、前述の電源装置から撮像素子44への給電、及び撮像素子44から前記表示装置への信号の出力等に用いられる。ケーブル47は前記フレキシブルプリント基板に接続されている。
【0041】
更に、シールドパイプ41の内においては、撮像素子44からケーブル47の一端部に亘って、モールド樹脂が充填され、モールド樹脂部48が形成されている。より詳しくは、モールド樹脂部48は、撮像素子44の電極441側及び実装基板43を覆うように形成されている。図2及び図3において、モールド樹脂部48はハッチングで示されている。
【0042】
モールド樹脂部48は、例えば熱伝導性フィラーが配合された高熱伝導性樹脂であり、絶縁性が高い。また、モールド樹脂部48の熱伝導率は例えば2.4W/(m・K)である。モールド樹脂部48によって、ドライバIC、フレキシブルプリント基板、及びケーブル47におけるフレキシブルプリント基板との接続部がモールドされ、電気的断線の発生が防止されている。また、モールド樹脂部48は、撮像素子44、ドライバIC及びフレキシブルプリント基板から発せられる熱を吸収してシールドパイプ41に伝える。
【0043】
即ち、モールド樹脂部48は、略直方体形状であり、シールドパイプ41に内嵌されている。モールド樹脂部48は、例えば、エポキシ製であり、シールドパイプ41よりも大きい線膨張係数を有している。モールド樹脂部48の線膨張係数は55.5×10-6/℃であって、シールドパイプ41(15.5×10-6/℃)よりも大きい。
【0044】
また、モールド樹脂部48は、撮像素子44及びシールドパイプ41よりも大きい線膨張係数を有している。撮像素子44の線膨張係数は、撮像素子44の主構成がSi単結晶であることから、3.43×10-6/℃程度である。これに対して、モールド樹脂部48は、上述の如く、樹脂からなり、線膨張係数は55.5×10-6/℃である。そして、シールドパイプ41は、上述の如く、ニッケルからなり、線膨張係数は15.5×10-6/℃である。
【0045】
撮像素子44及びモールド樹脂部48と、シールドパイプ41との間には、気密性及び絶縁性等のためにシート形状の介在部材45が配置されている。即ち、介在部材45は、シート形状であり、撮像素子44及びモールド樹脂部48を取り囲んでいる。介在部材45は、例えば、シリコン系ゴムからなり、介在部材45の主面に接着剤を塗布しても良い。
【0046】
介在部材45の線膨張係数は2.5~4.0×10-4/℃であり、撮像素子44(3.43×10-6/℃)、モールド樹脂部48(55.5×10-6/℃)及びシールドパイプ41(15.5×10-6/℃)の線膨張係数よりも大きい。
このように、介在部材45の線膨張係数がモールド樹脂部48及びシールドパイプ41の線膨張係数よりも大きいので、撮像素子44の発熱による熱膨張が生じた場合、モールド樹脂部48及びシールドパイプ41が介在部材45を介して密接できる。
【0047】
また、介在部材45は、70~80℃の高温環境において、シールドパイプ41及びモールド樹脂部48による圧縮率が20%以上である。ここで、圧縮率は、以下の式1によって求められる。
{(T1-T2)/T1}×100 (式1)
T1は、介在部材45がシールドパイプ41及びモールド樹脂部48の間に介在する前の厚みであり、T2は、介在部材45がシールドパイプ41及びモールド樹脂部48の間に介在する際、前記高温環境での厚みである。
【0048】
図4は、本実施の形態に係る内視鏡1における、撮像素子44の温度と、介在部材45の圧縮率との関係を示すグラフである。図4では、横軸が介在部材45の圧縮率(%)を示しており、縦軸が撮像素子44の温度を示している。
【0049】
図4から分かるように、介在部材45の圧縮率が高くなる程、撮像素子44の温度が低下していることが解かる。換言すれば、介在部材45の圧縮率が高くなる程、撮像素子44の熱が多量に放熱されていると言える。かつ、介在部材45の圧縮率が20%(図4の矢印参照)を超えた場合は、撮像素子44の温度の低下量が殆ど変わらない。
【0050】
以上の如く、介在部材45の線膨張係数がモールド樹脂部48及びシールドパイプ41の線膨張係数よりも大きく、介在部材45の圧縮率が20%以上であるので、撮像素子44から発せられる熱が迅速に介在部材45を介してシールドパイプ41に伝わり、効果的に放熱される。
【0051】
なお、介在部材45は、シリコン系ゴムに限定されるものではなく、ポリイミド系、ポリエステル系、シリコン系シート、ウレタン系、アクリル系、ホットメルト系等からなるものであっても良い。
【0052】
対物レンズユニット42は、複数の撮像用レンズ421,421,…と、レンズ保持筒422とを有している。
レンズ保持筒422は、角筒形状を成しており、断面視円形の内周面を有している。レンズ保持筒422は、軸長方向において、シールドパイプ41寄りの半分の肉厚が、残り半分の肉厚よりも厚い。また、レンズ保持筒422は、シールドパイプ41側の一端部の外周面に、周方向に沿って段差が形成され、外径が縮小する縮径部が設けられている。該縮径部の外径は、シールドパイプ41の前記一端部の内径よりも少し小さく、シールドパイプ41の前記一端部がレンズ保持筒422の前記一端部に外嵌されている。
【0053】
複数の撮像用レンズ421,421,…はレンズ保持筒422内に嵌め込まれている。複数の撮像用レンズ421,421,…は、レンズ保持筒422の軸心上に配置されている。
【0054】
図2に示すように、撮像アセンブリ4は、外側部材3に内嵌されている。
外側部材3は、先端円筒部31(第1外側部材)及び円筒本体32(第2外側部材)を含む。先端円筒部31は有底円筒状をなしており、円筒本体32は円筒状をなしている。レンズ保持筒422の先端は、先端円筒部31の底に形成された貫通孔を介して外部に露出されている。
【0055】
先端円筒部31の一端部が円筒本体32の一端部と同一軸心上にて嵌合している。詳しくは、円筒本体32は、前記一端部の内周面に、周方向に沿って段差が形成され、内径が拡張する拡径部が設けられている。該拡径部の内径は、先端円筒部31の前記一端部の外径よりも少し小さく、先端円筒部31の前記一端部が円筒本体32の前記一端部に内嵌されている。
【0056】
先端円筒部31は、例えば、m-PPE(ノリル,ユピエース)、PPSU(レーデル)、POM、PPE、PC、PP、ABS、PMMAなどの樹脂製である。先端円筒部31は、前記一端部が後述するカバーチューブ26(外装部材)に内嵌されており、先端側の他端部が外部に露出されている。
【0057】
また、先端円筒部31の底には、該底を内外に貫通する複数の貫通孔が形成されており、上述の如く、一の貫通孔を介して撮像アセンブリ4の一端部が外部に露出されている。また、他の貫通孔を介してチャンネルチューブ(図示せず)の一端が開口している。前記チャンネルチューブは挿入部2の全長に亘り、他端は操作部11のチャンネル入口113に接続されている。
【0058】
円筒本体32は、例えば、SUS、Cu、真鍮、Al、Ti、Feなどの金属製である。円筒本体32は、カバーチューブ26に内嵌されており、外部に露出されていない。
【0059】
先端円筒部31は、円筒本体32よりも熱伝導率が低い。例えば、先端円筒部31の熱伝導率は0.5W/(m・K)以下であり、円筒本体32の熱伝導率は20W/(m・K)以上である。
【0060】
更に、本実施の形態に係る内視鏡1では、先端円筒部31及び円筒本体32の線膨張係数が、シールドパイプ41よりも大きくなるように構成されている。
即ち、先端円筒部31は樹脂からなり、金属系材料からなるシールドパイプ41よりも線膨張係数が大きい。また、円筒本体32は、以上で列挙された材料から、シールドパイプ41よりも線膨張係数が大きい材料が選択されている。
【0061】
よって、撮像素子44から熱が発生し、シールドパイプ41と、外側部材3(先端円筒部31及び円筒本体32)とが熱膨張した場合、外側部材3の熱膨張が、シールドパイプ41よりも大きくなり、シールドパイプ41と外側部材3との間の密接を防ぐことができる。よって、撮像素子44からの熱がシールドパイプ41を介して外側部材3に伝わることを抑制できる。
【0062】
更に、以上の如く、本実施の形態に係る内視鏡1では、外部に露出されている先端円筒部31の熱伝導率が、露出されていない円筒本体32の熱伝導率よりも低い。よって、たとえ、撮像素子44からの熱がシールドパイプ41を介して外側部材3に伝わった場合でも、先端円筒部31を介して、患者の肌に、高熱が伝わることを抑制できる。
【0063】
図2に示すように、外側部材3の外周面は、カバーチューブ26によって、覆われている。即ち、カバーチューブ26は、外側部材3に外嵌されている。上述の如く、先端円筒部31は、前記一端部の外周面がカバーチューブ26に取り囲まれており、円筒本体32は全外周面がカバーチューブ26に取り囲まれている。
【0064】
カバーチューブ26は、断熱性の優れた材料からなる。詳しくは、カバーチューブ26は、先端円筒部31よりも熱伝導率が低い材料からなる。例えば、カバーチューブ26は、フッ素系ゴムからなる。
【0065】
上述の如く、カバーチューブ26は円筒本体32の全外周面を覆っている。よって、円筒本体32の熱伝導率が先端円筒部31熱伝導率よりも高いものの、撮像素子44からの熱がシールドパイプ41を介して外側部材3に伝わった場合でも、患者の肌に、高熱が伝わることを抑制できる。
【0066】
以上では、カバーチューブ26の熱伝導率が0.2~0.25W/(m・K)である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
図5は、カバーチューブ26の熱伝導率と、カバーチューブ26の内外間の温度差との関係を示すグラフである。図5では、横軸がカバーチューブ26の熱伝導率を示しており、縦軸がカバーチューブ26の内外間の温度差を示している。即ち、図5は、カバーチューブ26の材料の熱伝導率に応じて、カバーチューブ26の内側と外側との間にどの位の温度差が発生するかを示している。ただし、図5は、カバーチューブ26の厚みが0.5mmであり、内視鏡1の外径が10.75mmであって、撮像素子44の消費電力が0.23mWであることを前提とした場合の演算結果である。
【0067】
図5から解かるように、カバーチューブ26の熱伝導率が低い程、カバーチューブ26の内外間の温度差も大きくなっており、熱傷発生のリスクが低くなる。特に、カバーチューブ26の熱伝導率が0.1W/(m・K)以下である場合(図5の矢印参照)、カバーチューブ26の内外間の温度差が急減している。よって、カバーチューブ26の材料として、熱伝導率が0.1W/(m・K)以下のものを用いることによって、熱傷発生のリスクを効果的に下げることができる。
【0068】
また、一般に、人体が70℃以上にて熱傷をおうこと、そして、撮像素子44の保証上限温度が75℃であることに鑑みると、カバーチューブ26の内外間の温度差は6℃以上であることが望ましい。してみれば、カバーチューブ26の材料として、熱伝導率が0.05W/(m・K)以下のものを用いることによって、熱傷発生のリスクをより確実に下げることができる。
【0069】
本実施の形態においては、シールドパイプ41がニッケル製である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。シールドパイプ41は、例えば、Al、SUS、Cu、真鍮、Ti、Feなどから構成されても良い。
【0070】
また、 本実施の形態においては、モールド樹脂部48がエポキシ製である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。モールド樹脂部48は、例えば、シリコン系、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、ホットメルト系などから構成されても良い。
【0071】
<変形例>
以上においては、シールドパイプ41及びモールド樹脂部48の間に介在部材45が介在している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、介在部材45を省略しても良い。
【0072】
斯かる変形例においては、70~80℃の高温環境におけるシールドパイプ41の圧縮率が20%以上になるように構成すれば良い。シールドパイプ41の圧縮率は、上述の式1によって求められる。
この際、T1は、常温におけるシールドパイプ41の厚みであり、T2は、前記高温環境でのシールドパイプ41の厚みである。
【0073】
また、上述の如く、モールド樹脂部48の線膨張係数がシールドパイプ41の線膨張係数よりも大きいので、撮像素子44の発熱による熱膨張が生じた場合、モールド樹脂部48及びシールドパイプ41が密接できる。
【0074】
以上のように、モールド樹脂部48の線膨張係数がシールドパイプ41の線膨張係数よりも大きく、シールドパイプ41の圧縮率が20%以上であるので、撮像素子44から発せられる熱が迅速にシールドパイプ41に伝わり、効果的に放熱される。
【符号の説明】
【0075】
1 内視鏡
3 外側部材
4 撮像アセンブリ
26 カバーチューブ(外装部材)
31 先端円筒部(第1外側部材)
32 円筒本体(第2外側部材)
41 シールドパイプ(第2放熱部材)
44 撮像素子(発熱部)
45 介在部材
48 モールド樹脂部(第1放熱部材)
図1
図2
図3
図4
図5