(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021728
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】共廻り防止用固定翼及びその取付け構造
(51)【国際特許分類】
E21B 15/00 20060101AFI20230207BHJP
E21B 7/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
E21B15/00
E21B7/00 A
E21B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126779
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】521340665
【氏名又は名称】行元 俊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】行元 俊隆
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129AB21
2D129BA19
2D129DC42
2D129EB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特殊設計を必要とせず、注入管スリーブ(メタル部)の上下のツバ部分と、共廻り防止用固定翼の筒内部の上下端との接触摩耗を抑制し、また、製造コスト、運転コストを抑えつつコンパクトに構成する。
【解決手段】回転式注入器63用の注入管60に摺動可能に取り付けられる共周り防止用固定翼100であって、回転式注入器63の注入管60には、上下ツバ部が周凸設された筒体からなる注入管スリーブ500が溶接固定され、前記共周り防止用固定翼100は、注入管スリーブ500に固設された上下ツバ部51,52,53の上下方向内側の各近接位置にて、注入管スリーブの筒体へ摺動可能に周設する上下の周設リング11,12と、上下の周設リング11,12に固定され、注入管の径方向に沿って左右側方へ板状に張り出す翼板21,22と、から構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打ち穴内へ地盤改良剤を注入する回転式注入器の注入管スリーブ(500)に摺動可能に取り付けられる共周り防止用固定翼(100)であって、
前記注入管スリーブ(500)には、2枚以上の円環状のツバ部(51,52,53)が周設され、
前記共周り防止用固定翼(100)は、
注入管スリーブの周側部の上部、下部をそれぞれ囲って離間配置される上下の周設リング(11,12)と、
上下の周設リング(11,12)それぞれの一端部に固定され、当該一端部から注入管の径方向に沿って左右いずれか側方へ板状に張り出す2枚の片翼板(21)と、
上下の周設リング(11,12)それぞれの他端部に固定されて上下の周設リング同士を上下につなぐ2枚の繋ぎ板(22)と、を少なくとも具備して組み構成され、
上下の周設リング(11,12)は互いに同じ厚さのリング体からなると共に、軸方向の上下空間(10)を間に有して前記片翼板及び繋ぎ板に一体連結され、
この上下空間(10)内に、前記注入管スリーブ(500)の上下ツバ部が嵌合し、
上下の周設リング(11,12)の下面ないし上面がそれぞれ注入管スリーブの各ツバ部の上面ないし下面に接した状態で、
2枚の片翼板及び繋ぎ板を各1枚ずつ共止めすることで、共周り防止用固定翼が注入管スリーブ(500)に周設されることを特徴とする、共周り防止用固定翼。
【請求項2】
前記共周り防止用固定翼(100)は、片翼板を一枚ずつ具備した第一片翼体100Aと、第二片翼体100Bとを組み構成してなるものであって、
第一片翼体100A及び第二片翼体100Bはそれぞれ、
注入管スリーブの各ツバ部の上面ないし下面に接すると共に、注入管スリーブの周側部の上部及び下部を囲って離間配置される上下の半割り形状の半周設リング(11A/B,12A/B)と、
上下の半周設リング(11A/B,12A/B)それぞれの一端部に固定され、当該一端部から注入管の径方向に沿って左右いずれか一側方へ板状に張り出す片翼板(21)と、
上下の半周設リング(11A/B,12A/B)それぞれの他端部に固定されて上下の半周設リング同士を上下につなぐ繋ぎ板(22)と、が少なくとも一体連結されてなり、
また、離間配置される半周設リング(11A/B,12A/B)の間には、所定高さの上下空間(10)が形成され、
第一片翼体100Aと、第二片翼体100Bとを注入管スリーブの一側面及び他側面から対向させて、
この上下空間(10)内に、前記注入管スリーブ(500)の上下ツバ部が嵌合し、
上下の周設リング(11,12)の下面ないし上面がそれぞれ注入管スリーブの各ツバ部の上面ないし下面に接した状態で、
第一片翼体100Aの片翼板と第二片翼体100Bの繋ぎ板を対向させて共止めし、
第二片翼体100Bの片翼板と第一片翼体100Aの繋ぎ板を対向させて共止めしてなることを特徴とする、実施例1に記載の共周り防止用固定翼。
【請求項3】
注入管スリーブ(500)に取り付けられた状態で前記上下空間(10)の一部が外部から視認されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の共周り防止用固定翼。
【請求項4】
それぞれ周方向に等分割された上下の周設リング11、12とその両端の翼板21,22とからなる分割パーツ100A,100Bによって分割構成され、
各分割パーツ100A,100Bを注入管スリーブの両側方から覆って周設リング11、12同士を環状に組合せ、
翼板21,22同士を当接させて、互いに共止め固定することで取り付けることを特徴とする、共周り防止用固定翼。
【請求項5】
前記共廻り防止用固定翼の周設リング11,12は、注入管スリーブ(の筒体)よりも高剛性の板材を切り出した、一定厚さのカット板材からなり、
上下の周設リング11,12が等間隔の上下空間を開けた互いに平行な位置関係で翼板の上部及び下部に固設されることを特徴とする、共周り防止用固定翼。
【請求項6】
回転式注入器の注入管に溶接固定される筒体からなると共にこの筒体の上端及び下端にそれぞれ上ツバ部及び下ツバ部が一体固定された注入管スリーブ500と、
注入管スリーブ500の筒体及び上ツバ部及び下ツバ部へ摺動可能に周設する、上部周設リング11及び下部周設リング12を一体的に有した共廻り防止用固定翼100と、から構成されてなり、
前記共廻り防止用固定翼において、
上部周設リング11及び下部周設リング12は、同一材質及び同一形状からなる円環状の板材から構成され、
上部周設リング11の上面及び下部周設リング12の下面は、それぞれ注入管スリーブの上ツバ部の下面及び下ツバ部の上面と過半部で面接触して注入管スリーブに取り付けられると共に、
この取付け状態で、
上部周設リング11の円環内面(11S)及び下部周設リング12の円環内面(12S)は、注入管スリーブの筒体とから離間してなることを特徴とする、共周り防止用固定翼の固定構造。
【請求項7】
回転式注入器の注入管600は、注入管スリーブ500の全高分の軸方向区間を開けて上下の固定円板61,62が離間固定されてなり、
前記注入管スリーブ500は、
円周方向に複数分割した分割体からなると共に、
固定円板61,62の軸方向区間内へ各区分割体を組み合せて注入管を囲い、
上下のツバ部51,52の上面及び下面が、上下の固定円板61,62の板周縁部に溶接固定されることを特徴とする前記共廻り防止用固定翼の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良剤注入器の回転式注入器の先部近傍に取り付けて使用する、地盤改良剤注入ヘッド用の共廻り防止用固定翼、及びその取付け構造である。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削・撹拌具として特許文献1,2,3が開示される。
【0003】
特許文献1は、掘削・撹拌軸1と、共回り防止翼50を支持するボス部3の一方に波状のカム溝90を、他方にカム溝90に摺接する突起101を設けたもので、共回り防止翼50の上下の移動範囲が制限されている。但し、突起101は周状に形成されたものではない。
【0004】
特許文献2は、回転軸に凸状部24、供回り防止翼の中央筒に凹部42が形成されている。但し、これらはベアリング61,62を設けるためのものであり、回転軸には上下のツバ部分が存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6313899号公報
【特許文献3】特開2019-35309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来品は、注入管スリーブ(メタル部)の上下のツバ部分と、共廻り防止用固定翼の筒内部の上下端とが接触摩耗するため耐久性に劣る。また、複雑な構造、大型の特殊構造にするとコストがかかるとともに容積や軸長が嵩み、特殊設計が必要となる。
【0007】
そこで本発明は、容積や軸長が嵩み、特殊設計を必要とせず、注入管スリーブ(メタル部)の上下のツバ部分と、共廻り防止用固定翼の筒内部の上下端との接触摩耗を抑制し、また、製造コスト、運転コストを抑えつつコンパクトに構成することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決すべく以下の手段を講じている。但し、下記各構成に続けて記載される数字又は数字とアルファベットからなる文字列は、実施例として示す各図での相当構成を示す参照用符号であり、これら参照用符号だけで概念又は形状、名称を限定するものではない。
【0010】
[1]本発明は、杭打ち用の下穴(HC)の掘削と共に地盤改良剤を注入する回転式注入器(63)用の注入管(60)に摺動可能に取り付けられる共周り防止用固定翼(100)であって、
回転式注入器(63)の注入管(60)には、上下ツバ部が周凸設された筒体からなる注入管スリーブ(500)が溶接固定され、
前記共周り防止用固定翼(100)は、
この注入管スリーブ(500)に固設された上下ツバ部(51,52,53)の上下方向内側の各近接位置にて、注入管スリーブの筒体へ摺動可能に周設する上下の周設リング(11,12)と、
上下の周設リング(11,12)に固定され、注入管の径方向に沿って左右側方へ板状に張り出す翼板(21,22)と、から構成され、
上下の周設リング(11,12)は軸方向の上下空間(10)を有して翼板に固定され、
注入管スリーブ(500)に取り付けられた状態でこの上下空間(10)が外部から視認されることを特徴とする。
【0011】
上記構成であれば、上下空間の上下縁すなわち上下の周設リングの上下方向内部から摩耗状況が確認できる。また、上下の周設リングの厚さの変化によって摩耗の進行を判断することができる。
【0012】
[2]
前記共周り防止用固定翼は、
それぞれ周方向に等分割された上下の周設リング11、12とその両端の翼板21,22とからなる分割パーツ100A,100Bによって分割構成され、
各分割パーツ100A,100Bを注入管スリーブの両側方から覆って周設リング11、12同士を環状に組合せ、
翼板21,22同士を当接させて、互いに共止め固定することで取り付けることを特徴とする。
【0013】
[3]
前記共廻り防止用固定翼の周設リング11,12は、注入管スリーブ(の筒体)よりも高剛性の板材を切り出した、一定厚さのカット板材からなり、
上下の周設リング11,12が等間隔の上下空間を開けた互いに平行な位置関係で翼板の上部及び下部に固設されることを特徴とする。
【0014】
[4]
共廻り防止用固定翼の固定構造は、
回転式注入器の注入管に溶接固定される筒体からなると共にこの筒体の上端及び下端にそれぞれ上ツバ部及び下ツバ部が一体固定された注入管スリーブ500と、
注入管スリーブ500の筒体及び上ツバ部及び下ツバ部へ摺動可能に周設する、上部周設リング11及び下部周設リング12を一体的に有した共廻り防止用固定翼100と、から構成されてなり、
前記共廻り防止用固定翼において、
上部周設リング11及び下部周設リング12は、同一材質及び同一形状からなる円環状の板材から構成され、
上部周設リング11の上面及び下部周設リング12の下面は、それぞれ注入管スリーブの上ツバ部の下面及び下ツバ部の上面と過半部で面接触して注入管スリーブに取り付けられると共に、
この取付け状態で、
上部周設リング11の円環内面(11S)及び下部周設リング12の円環内面(12S)は、注入管スリーブの筒体とから離間してなることを特徴とする。
【0015】
[5]
前記共廻り防止用固定翼の固定構造において、
回転式注入器の注入管600は、注入管スリーブ500の全高分の軸方向区間を開けて上下の固定円板61,62が離間固定されてなり、
前記注入管スリーブ500は、
円周方向に複数分割した分割体からなると共に、
固定円板61,62の軸方向区間内へ各区分割体を組み合せて注入管を囲い、
上下のツバ部51,52の上面及び下面が、上下の固定円板61,62の板周縁部に溶接固定されることを特徴とする。
【0016】
共周り防止用固定翼は、
上下の周設リング(11,12)は軸方向の上下空間(10)を間に有して互いに平行な離間状態で翼板に固定され、
前記注入管スリーブ(500)の上下ツバ部に嵌合して注入管スリーブ(500)に周設されるものであり、
注入管スリーブ(500)に取り付けられた状態でこの上下空間(10)が外部から視認されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
断面視上下方向に3~5段の連続凹凸嵌合部を有した嵌め込み状態となるため、上下部が摩耗しにくく、耐久性が向上する。上下の中央リングは板材からカットして成形できるため、製造コスト抑制と鋼材変更が可能となった。また、従来品に取り付け可能なコンパクトな軸長で構成可能となった。
【0018】
注入管スリーブ(メタル部)の中央部にリング状の”中央ツバ部”を形成し、共廻り防止用固定翼の中央筒部の対応位置に、中央ツバ部をはめ込む“開口(窓)又は内溝”を形成することで、摩耗状況を容易に確認することができ、交換時期の判断やメンテナンスの必要性、材質の変更等の判断に寄与するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1の共廻り防止用固定翼の取付け構造の構成を示す斜視分解図。
【
図2】実施例1の共廻り防止用固定翼の正面図、平面図、及びA-A断面図。
【
図3】実施例1の共廻り防止用固定翼取付け構造の注入管スリーブ(メタル)の正面図、平面図、及びB-B断面図。
【
図4】実施例1の共廻り防止用固定翼を取り付けた状態の地盤改良注入ヘッドの正面図。
【
図5】
図4のC-C断面(軸断面)視におけるD-D部拡大図、及びそのE-E部部分拡大図。
【
図6】実施例2の共廻り防止用固定翼の取付け構造の構成を示す斜視分解図。
【
図7】実施例2の取付け構造の側面軸断面視における部分拡大図。
【
図8】実施例3の共廻り防止用固定翼の取付け構造の構成を示す斜視分解図。
【
図9】実施例3の取付け構造の側面軸断面視における部分拡大図。
【
図10】実施例4の共廻り防止用固定翼の取付け構造の構成を示す斜視分解図。
【
図11】実施例1の共廻り防止用固定翼の地中内使用状態例を示す正面模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態例について、実施例1~4として示す図面とともに説明する。なお図面に示す実施例は構成例を示すものであって実施例の構造乃至形状に限定する趣旨ではない。本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜形状の変更、周知構成への置換、部品点数の変更、一部構成要素の抽出又は省略、各実施例の構成要素同士の組合せが可能である。
【0021】
(本発明の構成について)
本発明は、
図2に示すような共廻り防止用固定翼(100)、及び、
図5、
図7、
図9に示すような共周り防止用固定翼の取付け構造を含む。
【0022】
共周り防止用固定翼の取付け構造は、
図1、
図6、
図8、
図10に示すように、回転式注入器の注入管(60)と、注入管スリーブ(500)と、共廻り防止用固定翼(100)とから構成される。
【0023】
また本発明は、また、
図4右に示すような、共廻り防止用固定翼(100)の製造方法、
図4左に示すような、注入管スリーブ(500)の製造方法を含む。
【0024】
(共廻り防止翼(100)(共廻り防止用固定翼)について)
地盤改良剤を杭打ち用の下穴(HC)に抽出する地盤改良ヘッド(オーガヘッド)には、地盤改良ヘッドの先端に取り付ける回転式注入器と回転式注入器の注入管の周部に回転摺動可能に付属させる、共廻り防止用固定翼(共廻り防止翼)とが必要となる。この共廻り防止用固定翼はオーガヘッドの回転径よりも長い径で側方へ張出形成され、張出形成された共廻り防止用固定翼の翼端部が下穴の穴側面に係止することで、地盤改良ヘッドとその基部との共廻りを防止する役割を果たす。また、地盤改良ヘッドの芯出しを行いつつ、地盤改良ヘッド(オーガヘッド)の回転による地盤改良材の穴内攪拌を促す役割を果たす。
【0025】
この共廻り防止用固定翼は、地盤改良ヘッドの使用によって金属部分同士が摺動して摩耗し損傷してしまう。注入管自体が摩耗しないようにするため、予め交換可能な部品として、注入管スリーブ500を注入管に溶接して取り付け、この注入管スリーブ500を介して、交換可能な共周り防止翼を嵌合して取り付ける構成としている。
【0026】
〔基本構造と使用状態〕
本発明の共廻り防止用固定翼の固定構造は、リング状ツバ部分を有した注入管スリーブ(メタル部)と、注入管スリーブ(メタル部)周りに自由回転可能に嵌め込まれる共廻り防止用固定翼とから構成される。このうち、注入管スリーブ(500)は、軸先端の地盤改良注入器の軸部に溶接固定され、軸先端のヘッドと一体的に回転駆動する。
【0027】
また、共廻り防止用固定翼の固定構造のうち、本発明の共廻り防止用固定翼は注入管スリーブ(メタル部)に対して相対自由回転可能に嵌め込まれる。使用状態では、
図11に示すように翼先端が地盤内に形成する下穴内に係止固定され、共廻り防止用固定翼が下穴内に回転せずに係止した状態を保ったまま、注入管スリーブ(500)、回転式注入器の注入管、回転式注入器、及び掘削ヘッド64が、一体的に下穴内で回転する(
図11)。下穴を掘削しながら地盤改良剤を注入する場合は、
図11に示すように、内径HIの下穴(HC)が掘削ヘッド64及び掘削翼66によって形成されると共に、これら掘削ヘッド64及び掘削翼66よりも径方向外方に張り出した共廻り防止用固定翼(100)が、下穴(HC)の穴側面から張り出し長21ELだけ地中に張り出して、張り出し長21EL幅の係止溝HDが形成される。
【0028】
前記共周り防止用固定翼(100)は、片翼板を一枚ずつ具備した第一片翼体100Aと、第二片翼体100Bとを組み構成してなるものであって、
第一片翼体100A及び第二片翼体100Bはそれぞれ、
注入管スリーブの各ツバ部の上面ないし下面に接すると共に、注入管スリーブの周側部の上部及び下部を囲って離間配置される上下の半割り形状の半周設リング(11A/B,12A/B)と、
上下の半周設リング(11A/B,12A/B)それぞれの一端部に固定され、当該一端部から注入管の径方向に沿って左右いずれか一側方へ板状に張り出す片翼板(21)と、
上下の半周設リング(11A/B,12A/B)それぞれの他端部に固定されて上下の半周設リング同士を上下につなぐ繋ぎ板(22)と、が少なくとも一体連結されてなり、
また、離間配置される半周設リング(11A/B,12A/B)の間には、所定高さの上下空間(10)が形成され、
第一片翼体100Aと、第二片翼体100Bとを注入管スリーブの一側面及び他側面から対向させて、
この上下空間(10)内に、前記注入管スリーブ(500)の上下ツバ部が嵌合し、
上下の周設リング(11,12)の下面ないし上面がそれぞれ注入管スリーブの各ツバ部の上面ないし下面に接した状態で、
第一片翼体100Aの片翼板と第二片翼体100Bの繋ぎ板を対向させて共止めし、
第二片翼体100Bの片翼板と第一片翼体100Aの繋ぎ板を対向させて共止めしてなることを特徴とする、実施例1に記載の共周り防止用固定翼。
【0029】
共廻り防止用固定翼は注入管スリーブ(500)に取り付けられた状態で前記上下空間(10)の一部が外部から視認されることを特徴とする。
【0030】
共廻り防止用固定翼は、それぞれ周方向に等分割された上下の周設リング11、12とその両端の翼板21,22とからなる分割パーツ100A,100Bによって分割構成され、
各分割パーツ100A,100Bを注入管スリーブの両側方から覆って周設リング11、12同士を環状に組合せ、
翼板21,22同士を当接させて、互いに共止め固定することで取り付けられる。
【0031】
前記共廻り防止用固定翼の周設リング11,12は、注入管スリーブ(の筒体)よりも高剛性の板材を切り出した、一定厚さのカット板材からなり、
上下の周設リング11,12が等間隔の上下空間を開けた互いに平行な位置関係で翼板の上部及び下部に固設される。
【0032】
回転式注入器の注入管に溶接固定される筒体からなると共にこの筒体の上端及び下端にそれぞれ上ツバ部及び下ツバ部が一体固定された注入管スリーブ500と、
注入管スリーブ500の筒体及び上ツバ部及び下ツバ部へ摺動可能に周設する、上部周設リング11及び下部周設リング12を一体的に有した共廻り防止用固定翼100と、から構成されてなり、
前記共廻り防止用固定翼において、
上部周設リング11及び下部周設リング12は、同一材質及び同一形状からなる円環状の板材から構成され、
上部周設リング11の上面及び下部周設リング12の下面は、それぞれ注入管スリーブの上ツバ部の下面及び下ツバ部の上面と過半部で面接触して注入管スリーブに取り付けられると共に、
この取付け状態で、
上部周設リング11の円環内面(11S)及び下部周設リング12の円環内面(12S)は、注入管スリーブの筒体とから離間してなる。
【0033】
回転式注入器の注入管600は、注入管スリーブ500の全高分の軸方向区間を開けて上下の固定円板61,62が離間固定されてなり、
前記注入管スリーブ500は、
円周方向に複数分割した分割体からなると共に、
固定円板61,62の軸方向区間内へ各区分割体を組み合せて注入管を囲い、
上下のツバ部51,52の上面及び下面が、上下の固定円板61,62の板周縁部に溶接固定される。
【0034】
以下、各実施例の構成とともに説明する。
(実施例1)
図1~5に、実施例1の共廻り防止用固定翼、及び共廻り防止用固定翼の固定構造を示す。
【0035】
実施例1の共廻り防止用固定翼の固定構造において、注入管スリーブ(メタル部)は、上端の上ツバ部と下端の下ツバ部との間に同厚さの”中央ツバ部”を1つ形成し、3つのツバ部構成とした。
【0036】
共廻り防止用固定翼の中央筒を、上リングと下リングで2構成し、上下リング間に開口部を形成した。上リングの上部に上ツバ部、下リングの下部に下ツバ部が当接して嵌め込まれると共に、上下リング間の開口部に中央つば部が嵌め込まれる。
【0037】
従来品は、注入管スリーブ(メタル部)の上下のツバ部分と、共廻り防止用固定翼の筒内部の上下端とが接触摩耗するため耐久性に劣る。また、複雑な構造、大型の特殊構造にするとコストがかかるとともに・共廻り防止用固定翼の中央筒を、上リングと下リングで2構成し、上下リング間に開口部を形成した。上リングの上部に上ツバ部、下リングの下部に下ツバ部が当接して嵌め込まれると共に、上下リング間の開口部に中央つば部が嵌め込まれる。
【0038】
これに対して本発明では、それぞれ周方向に等分割された上下の周設リング11、12とその両端の翼板21,22とからなる分割パーツ100A,100Bによって分割構成され、各分割パーツ100A,100Bを注入管スリーブの両側方から覆って周設リング11、12同士を環状に組合せ、翼板21,22同士を当接させて、互いに共止め固定することで取り付けることを特徴とする(
図1、
図2)。
【0039】
前記共廻り防止用固定翼の周設リング11,12は、一定厚さのカット板材からなり、上下の周設リング11,12が等間隔の上下空間を開けた互いに平行な位置関係で翼板の上部及び下部に固設される。
【0040】
また上部周設リング11及び下部周設リング12は、注入管スリーブ(の筒体)よりも高剛性の板材から切り出し成形された、同一材質及び同一形状からなる円環状のカット板材から構成される。
【0041】
また注入管スリーブの筒体は、短円管を等分割した分割筒体501、501と各分割筒体501の外周の上端、下端、及び上端と下端の間の中央部にそれぞれ、上ツバ部の分割体510、下ツバ部の分割体520、中央ツバ部の分割体530が溶接固着された、分割パーツ500A,500Bによって分割構成される。
前記上ツバ部の分割体510、下ツバ部の分割体520、中央ツバ部の分割体530は、注入管スリーブ(の筒体)よりも剛性の低い低剛性板材から切り出し成形された、一定厚さのカット板材からなる(
図4)。また短円管の分割筒体501は、円管材5001から切り出し成形される。
【0042】
(実施例2)
図6~7に、実施例1の共廻り防止用固定翼、及び共廻り防止用固定翼の固定構造を示す。
【0043】
・注入管スリーブは、上下端を除く中央寄りに、同形状の”中央ツバ部”を2つ形成し、2つのツバ部構成とした。
【0044】
・共廻り防止用固定翼の中央筒を、上リングと中央リングと下リングで3構成し、上リング-中央リング間に上開口部を形成すると共に、中央リング-下リング間に下開口部を形成した。
【0045】
・上開口部に上部の中央ツバ部が嵌め込まれると共に、下開口部に下部の中央ツバ部が嵌め込まれる。
【0046】
図8~9に示す実施例3の共廻り防止用固定翼及びその固定構造は、実施例1と比べ、以下の相違を有する。その他の構成及び使用方法、製造方法、組み立て方法は実施例1と同様である。
【0047】
(実施例3)
・注入管スリーブは、上下端の”ツバ部”のスパン(軸長)を従来よりも短くした、2つのツバ部構成からなる。
【0048】
・共廻り防止用固定翼の中央は、短管と、短管に内面溶接した上リングと中央リングと下リングで3構成し、上リング-中央リング間に上部の内溝を形成すると共に、中央リング-下リング間に下部の内溝を形成した。
【0049】
・上部の内溝に上部の中央ツバ部が嵌め込まれると共に、下部の内溝に下部の中央ツバ部が嵌め込まれる。
【0050】
(実施例4)
図10に示す実施例4の共廻り防止用固定翼及びその固定構造は、実施例1と比べ、以下の相違を有する。その他の構成及び使用方法、製造方法、組み立て方法は実施例1と同様である。
【0051】
・注入管スリーブは、上下ツバ部間の中央部にリング状の”中央ツバ部”を1つ形成し、3つのツバ部構成とした。
【0052】
・共廻り防止用固定翼の中央は、短管と、短管に内面溶接した上リングと下リングで2構成し、
上リングの下半部に半嵌合部を形成し、下リングの上半部に半嵌合部を形成すると共に、上下リング間に内溝を形成した。
【0053】
・上下の半嵌合部にそれぞれ上ツバ部、下ツバ部が嵌め込まれると共に、中央の内溝に中央ツバ部が嵌め込まれる。
【0054】
(他の実施例)
・注入管スリーブは、上下ツバ部間の中央部に段差の小さい”中央ツバ部”を1つ形成し、3つのツバ部構成としてもよい。
【0055】
・共廻り防止用固定翼の中央は、上リング、下リングと、上下リング間に挟んだ、内溝付の短管とで3構成し、上下リング間に短管部を段差形成すると共に短管部の高さ方向中央に浅い内溝部を段差形成してもよい。
【0056】
上ツバ部の下面に上リングを当接させ、下ツバ部の上面に下リングを当接させ、共廻り防止用固定翼の短管とメタルの短管が嵌め込まれると共に、中央の内溝に中央ツバ部が嵌め込まれるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 共廻り防止用固定翼
100A、100B 共廻り防止用固定翼パーツ
100H 中央開口
10 リング間開口
11、12 周設リング
21、22 翼板
23 共止め孔
31,32,33 固定具
500 注入管スリーブ(メタル)
500H 中央開口
50 受け筒
51,52 上下ツバ部
53 中央ツバ部
500 注入管スリー30D6
61、62 挟設フランジ
61E,62E フランジ縁
640 回転翼
64、65 掘削刃
63 注入口(注入弁)
66 上部翼