(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021742
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】海苔簀張設方法及び海苔張設装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20230207BHJP
【FI】
A23L17/60 103H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126797
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】521109361
【氏名又は名称】繁永 進
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】繁永 進
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LT72
4B019LT73
4B019LT75
4B019LT77
4B019LT79
4B019LT80
(57)【要約】
【課題】 海苔簀の簀枠への張設を自動化することで作業効率を向上させるとともに、簀枠に海苔簀を撓みなく均一に張設する海苔簀張設技術を提供する。
【解決手段】 係合機構90は、簀枠20における海苔簀係合用フック24に海苔簀10の端ヒゴ11を係合させるためのものであり、海苔簀10の端ヒゴ11と隣接する細ヒゴ12との間に挿入される開拡爪91と、簀枠20に対して所定の角度で傾斜した移動軸98を有し、開拡爪91により拡張された隙間に海苔簀係合用フック24の先端を挿入した状態で端ヒゴ11の端面を上側から押圧する押圧体92と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な一対の枠杆と前記一対の枠杆の間に一定の間隔で架設した複数の仕切り杆と、前記仕切り杆の間の枠杆に設けた海苔簀係合用フックと、により構成した簀枠に、両端縁に配置される端ヒゴと前記端ヒゴ間に配置され前記端ヒゴよりも細い多数の細ヒゴとを縦ヒゴとし、該縦ヒゴを一定幅の隙間を設けて紐体により横方向に連結して構成した海苔簀を、前記海苔簀係合用フックを介して係合張設する海苔簀張設方法において、
前記海苔簀係合用フックは、前記一対の枠杆の所定の位置に固着される基端部と、前記基端部から伸延した板体を断面視C字状に折曲したフック本体と、により構成し、
前記海苔簀張設方法が、
前記海苔簀の前記端ヒゴと隣接する細ヒゴとの間の隙間を開拡爪により拡張する開拡工程と、
前記開拡爪により拡張された隙間に前記海苔簀係合用フックにおける前記フック本体の先端を挿入した後に、前記端ヒゴを押圧体により押圧して前記フック本体の内部に向かう斜め下方に強制変位させ、前記フック本体に前記端ヒゴを係合させる係合工程と、
を含むことを特徴とする海苔簀張設方法。
【請求項2】
前記開拡工程の前及び前記係合工程の後において、前記簀枠を間欠的に搬送する簀枠搬送工程をさらに含む請求項1に記載の海苔簀張設方法。
【請求項3】
前記簀枠の所定の位置に向けて前記海苔簀を搬送する海苔簀搬送工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の海苔簀張設方法。
【請求項4】
複数の海苔簀を積層して格納するストッカから前記海苔簀を一枚ずつ搬出する海苔簀供給工程をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の海苔簀張設方法。
【請求項5】
海苔簀を、簀枠に張設する海苔簀張設装置であって、
前記海苔簀は、両端縁に配置される端ヒゴと前記端ヒゴ間に配置され前記端ヒゴよりも細い多数の細ヒゴとを縦ヒゴとし、該縦ヒゴを一定幅の隙間を設けて紐体により横方向に連結して構成され、
前記簀枠は、互いに平行な一対の枠杆と前記一対の枠杆の間に一定の長さ架設した複数の仕切り杆と、前記仕切り杆の間の枠杆に設けた海苔簀係合用フックとを備え、
前記海苔簀係合用フックは、水平配置された前記簀枠の前記一対の枠杆の所定の位置に固着される基端部と、前記基端部から伸延した板体を断面視C字状に折曲したフック本体と、により構成されており、
前記端ヒゴと隣接する細ヒゴとの間に挿入される開拡爪と、前記簀枠に対して所定の角度で傾斜した移動軸を有し、前記開拡爪により拡張された隙間に前記フック本体の先端を挿入した状態で前記端ヒゴの端面を押圧する押圧体と、を備え、前記海苔簀係合用フックに前記海苔簀を係合する係合機構と、
前記係合機構の動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする海苔簀張設装置。
【請求項6】
前記簀枠を搬送する簀枠搬送部を備え、
前記制御部は、前記簀枠搬送部の動作を制御して、前記簀枠を前記係合機構により海苔簀を張設する海苔簀張設位置に向けて間欠的に搬送する請求項5に記載の海苔簀張設装置。
【請求項7】
前記簀枠搬送部の上方に配置され、前記海苔簀を水平保持する保持手段と、前記保持手段を前記簀枠搬送部による前記簀枠の搬送方向に直交する方向に前記海苔簀を水平搬送する水平搬送手段と、前記保持手段を所定の位置で昇降させて前記海苔簀を垂直搬送する垂直搬送手段と、を備える海苔簀搬送部をさらに備え、
前記制御部は、前記海苔簀搬送部の動作を制御して、前記海苔簀を簀枠に向けて搬送する請求項5又は請求項6に記載の海苔簀張設装置。
【請求項8】
枠状の底板上に複数の前記海苔簀を積層して格納する複数のストッカと、前記複数のストッカを支持するとともに該複数のストッカを前記海苔簀の待機位置と前記海苔簀を前記海苔簀搬送部に受け渡す受け渡し位置との間で水平移動させる水平移動手段と、前記受け渡し位置の下部に配設され、前記底板の枠内を貫通して昇降する昇降テーブルと、前記受け渡し位置に配置したストッカ内の前記海苔簀の有無を検出するセンサと、を備える海苔簀供給部をさらに備え、
前記制御部は前記海苔簀供給部の動作を制御して、前記センサの入力に基づいて前記受け渡し位置に配置した前記ストッカが空であると判断したときに、前記水平移動手段により前記複数のストッカのうち前記受け渡し位置の空のストッカをストッカの待機位置に移動させるとともに、前記待機位置に待機させていた複数の海苔簀が積層されたストッカを前記受け渡し位置に配置する請求項5から請求項7のいずれかに記載の海苔簀張設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔生地を乾燥させて海苔を製造する海苔製造装置に用いる海苔簀を簀枠に張設する海苔簀張設方法及びこの海苔簀張設方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥海苔を製造する海苔製造装置は、海苔簀に海苔生地を抄製する抄き装置と、海苔簀に抄製した海苔生地を脱水する脱水装置と、海苔生地を乾燥させる乾燥装置と、海苔簀から乾燥板海苔を剥離する剥離装置から構成される。このような海苔製造装置では、海苔簀を張設した簀枠を、簀枠ごと抄製装置、脱水装置、乾燥装置に順次搬送することにより、海苔を連続して製造している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
乾燥海苔の製造に用いられる海苔簀は、平行配置された多数のヒゴを糸で織ったものであり、海苔簀は簀枠を構成する一対の丸棒に取り付けられた係止体を介して簀枠に張設される。海苔簀を簀枠に取り付けるための係止体は板材を屈曲させて形成されたものであり、丸棒に挿入する挿入部と海苔簀における端部のヒゴを係止する係止端とから成るものが知られている(例えば、特許文献2参照)。このような係止体を有する簀枠への海苔簀の取り付けは、手作業で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-157227号公報
【特許文献2】特開昭62-096074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の係止体は、手作業での海苔簀の取り付け作業量を軽減できるものではあるが、作業者が係止体を係止させる海苔簀のヒゴの位置を間違えると、海苔簀の張り具合にバラツキが生じる。また、手作業であるため海苔簀の取り付け作業の時間短縮には限界がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、海苔簀の簀枠への張設を自動化することで作業効率を向上させるとともに、簀枠に海苔簀を撓みなく均一に張設する海苔簀張設技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る海苔簀張設方法は、互いに平行な一対の枠杆と前記一対の枠杆の間に一定の間隔で架設した複数の仕切り杆と、前記仕切り杆の間の枠杆に設けた海苔簀係合用フックと、により構成した簀枠に、両端縁に配置される端ヒゴと前記端ヒゴ間に配置され前記端ヒゴよりも細い多数の細ヒゴとを縦ヒゴとし、該縦ヒゴを一定幅の隙間を設けて紐体により横方向に連結して構成した海苔簀を、前記海苔簀係合用フックを介して係合張設する海苔簀張設方法において、前記海苔簀係合用フックは、前記一対の枠杆の所定の位置に固着される基端部と、前記基端部から伸延した板体を断面視C字状に折曲したフック本体と、により構成し、前記海苔簀張設方法が、前記海苔簀の前記端ヒゴと隣接する細ヒゴとの間の隙間を開拡爪により拡張する開拡工程と、前記開拡爪により拡張された隙間に前記海苔簀係合用フックにおける前記フック本体の先端を挿入した後に、前記端ヒゴを押圧体により押圧して前記フック本体の内部に向かう斜め下方に強制変位させ、前記フック本体に前記端ヒゴを係合させる係合工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様に係る海苔簀張設方法は、前記開拡工程の前及び前記係合工程の後において、前記簀枠を間欠的に搬送する簀枠搬送工程をさらに含むものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る海苔簀張設方法は、前記簀枠の所定の位置に向けて前記海苔簀を搬送する海苔簀搬送工程をさらに含むものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る海苔簀張設方法は、複数の海苔簀を積層して格納するストッカから前記海苔簀を一枚ずつ搬出する海苔簀供給工程をさらに含むものである。
【0011】
また、本発明は他の観点によれば、海苔簀を、簀枠に張設する海苔簀張設装置であって、前記海苔簀は、両端縁に配置される端ヒゴと前記端ヒゴ間に配置され前記端ヒゴよりも細い多数の細ヒゴとを縦ヒゴとし、該縦ヒゴを一定幅の隙間を設けて紐体により横方向に連結して構成され、前記簀枠は、互いに平行な一対の枠杆と前記一対の枠杆の間に一定の長さ架設した複数の仕切り杆と、前記仕切り杆の間の枠杆に設けた海苔簀係合用フックとを備え、前記海苔簀係合用フックは、水平配置された前記簀枠の前記一対の枠杆の所定の位置に固着される基端部と、前記基端部から伸延した板体を断面視C字状に折曲したフック本体と、により構成されており、前記端ヒゴと隣接する細ヒゴとの間に挿入される開拡爪と、前記簀枠に対して所定の角度で傾斜した移動軸を有し、前記開拡爪により拡張された隙間に前記フック本体の先端を挿入した状態で前記端ヒゴの端面を押圧する押圧体と、を備え、前記海苔簀係合用フックに前記海苔簀を係合する係合機構と、前記係合機構の動作を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様に係る海苔簀張設装置は、前記簀枠を搬送する簀枠搬送部を備え、前記制御部は、前記簀枠搬送部の動作を制御して、前記簀枠を前記係合機構により海苔簀を張設する海苔簀張設位置に向けて間欠的に搬送するものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る海苔簀張設装置は、前記簀枠搬送部の上方に配置され、前記海苔簀を水平保持する保持手段と、前記保持手段を前記簀枠搬送部による前記簀枠の搬送方向に直交する方向に前記海苔簀を水平搬送する水平搬送手段と、前記保持手段を所定の位置で昇降させて前記海苔簀を垂直搬送する垂直搬送手段と、を備える海苔簀搬送部をさらに備え、前記制御部は、前記海苔簀搬送部の動作を制御して、前記海苔簀を簀枠に向けて搬送するものである。
【0014】
本発明の他の態様に係る海苔簀張設装置は、枠状の底板上に複数の前記海苔簀を積層して格納する複数のストッカと、前記複数のストッカを支持するとともに該複数のストッカを前記海苔簀の待機位置と前記海苔簀を前記海苔簀搬送部に受け渡す受け渡し位置との間で水平移動させる水平移動手段と、前記受け渡し位置の下部に配設され、前記底板の枠内を貫通して昇降する昇降テーブルと、前記受け渡し位置に配置したストッカ内の前記海苔簀の有無を検出するセンサと、を備える海苔簀供給部をさらに備え、前記制御部は前記海苔簀供給部の動作を制御して、前記センサの入力に基づいて前記受け渡し位置に配置した前記ストッカが空であると判断したときに、前記水平移動手段により前記複数のストッカのうち前記受け渡し位置の空のストッカをストッカの待機位置に移動させるとともに、前記待機位置に待機させていた複数の海苔簀が積層されたストッカを前記受け渡し位置に配置するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る海苔簀張設技術によれば、海苔簀の端ヒゴと隣接する細ヒゴとの間の隙間を開拡爪により拡張し、開拡爪により拡張された隙間に海苔簀係合用フックにおけるフック本体の先端を挿入し、端ヒゴを押圧体により押圧してフック本体の内部に向かう斜め下方に強制変位させてフック本体に端ヒゴを係止させることから、従来の手作業による作業よりも早く海苔簀を張設することが可能となり、作業効率が向上する。また、海苔簀を張設する際に、端ヒゴと隣接する細ヒゴとの間という同じ位置に海苔簀係合用フックを係合させることから、簀枠に対して複数の海苔簀を撓みなく均一に張設することができる。
【0016】
また、本発明に係る海苔簀張設技術によれば、簀枠を間欠的に搬送する簀枠搬送を行うことにより、簀枠の複数の仕切り杆で仕切られた複数の枠のそれぞれに対応した海苔簀張設作業がタイミングよく実行でき、簀枠に連続して複数の海苔簀を張設することが可能となる。
【0017】
本発明に係る海苔簀張設技術によれば、海苔簀を簀枠の所定の位置に向けて搬送する構成としたことから、従来の手作業による場合のように、作業者の作業位置に海苔簀の束を持ち運ぶ必要がなく、作業負担が低減される。
【0018】
本発明に係る海苔簀張設技術によれば、複数の海苔簀を積層して格納するストッカから一枚ずつ海苔簀を搬出することから、従来の手作業による場合のように重ねられた複数の海苔簀を手で捌く必要がなくなり、作業負担が低減される。また、ストッカを複数設けることにより、1のストッカからの海苔簀の搬出中に他のストッカに海苔簀を積層する準備ができることから、簀枠への海苔簀張設の動作を中断させることなく、連続して海苔簀を供給することが可能となる。
【0019】
さらには、海苔簀の簀枠への供給、簀枠への海苔簀の係合張設、海苔簀を係合張設した簀枠の排出を自動化することにより、海苔製造装置の乾燥海苔の製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る海苔簀張設装置を適用する海苔製造装置の概要図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る海苔簀張設装置の構成を説明する平面概要図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る海苔簀張設装置の構成を説明する側面概要図である。
【
図6】海苔簀を簀枠の海苔簀係合用フックに係合させる係合機構における押圧体の概要図である。
【
図7】係合機構により海苔簀を簀枠の海苔簀係合用フックに係合させる過程を説明する概要図である。
【
図8】変形例に係る係合機構により海苔簀を簀枠の海苔簀係合用フックに係合させる過程を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
本発明の一実施形態に係る海苔簀張設装置6を適用した海苔製造装置1について、
図1を参照しながら説明する。
【0023】
海苔製造装置1は、乾燥板海苔を製造する装置であり、海苔簀に海苔生地を抄製する抄製装置2と、海苔簀に抄製した海苔生地を脱水する脱水装置3と、海苔生地を乾燥させる乾燥装置4と、乾燥後の板海苔を海苔簀から剥離する剥離装置5とにより海苔の処理装置を形成し、該処理装置の上流側に本発明の実施形態に係る海苔簀張設装置6を連設して構成されている。抄製装置2、脱水装置3、乾燥装置4及び剥離装置5は、
図1に仮想線で示す簀枠を搬送する搬送経路に設けられている。海苔簀張設装置6により簀枠に張設された海苔簀を抄製装置2、脱水装置3、乾燥装置4及び剥離装置5の順に搬送することにより、乾燥板海苔が製造される。
【0024】
図2を参照して、海苔簀10について説明する。
図2(a)は、海苔簀10の概要図であり、
図2(b)は海苔簀10の部分拡大図である。
【0025】
海苔簀10は、両端縁に配置される端ヒゴ11と端ヒゴ11間に配置された該端ヒゴ11よりも細い多数の細ヒゴ12を縦ヒゴとし、該縦ヒゴを一定幅の隙間を設けて紐体13により横方向に連結して構成したものである。例えば、ストロー状の細ヒゴ12を細ヒゴ12に直交する方向に平行に張られた紐体13である糸で編み、該糸で互いに平行につなぎ合わされた複数の細ヒゴ12の外側に幅広の端ヒゴ11を糸で組付けて、略正方形状に形成ものである。なお、端ヒゴ11及び細ヒゴ12の長さは、240mm~500mmである。また、細ヒゴ12は中実材であっても良い。
【0026】
図3を参照して、簀枠20について説明する。
図3(a)は簀枠20の部分斜視図であり、
図3(b)は枠杆21に設けた海苔簀係合用フック24の側面概要図である。
【0027】
簀枠20は、互いに平行な一対の枠杆21と、一対の枠杆21の間に一定の間隔で架設した7本の仕切り杆22と、仕切り杆22の間の枠杆21に設けた海苔簀係合用フック24とから構成される。
【0028】
一対の枠杆21のそれぞれは、金属製の長尺丸棒材であり、互いに所定の間隔、すなわち、略正方形の海苔簀の一辺の長さよりやや大きい長さ離間させて配置されている。7本の仕切り杆22のそれぞれは、海苔簀10のヒゴの長さより1.2~1.5倍の長さを有し、その両端部が枠杆21の所定の位置に溶着されている。一対の枠杆21に対して、海苔簀10のヒゴの長さよりやや長い一定の間隔で複数の仕切り杆22を架設することで、海苔簀10より大きい面積となる略正方形の海苔簀10の張設枠23が形成される。例えば、一対の枠杆21に7本の仕切り杆22を架設した場合は、簀枠20に張設枠23が6枠設けられる。なお、簀枠20の枠杆21の長さ及び仕切り杆22により設ける張設枠23の数は、海苔製造装置1における海苔の処理装置における簀枠の搬送経路の構成に応じて適宜変更される。
【0029】
一対の枠杆21の互いに対向する位置には、海苔簀係合用フック24が設けられる。海苔簀係合用フック24は、一枚の金属製の板から曲げ加工により形成されたものであり、一対の枠杆21の所定の位置に設けられる基端部25と、基端部25から伸延した板体を断面視C字状に屈曲したフック本体26とにより構成されている。板体を所定の位置で上方に所定の角度(例えば、20~40度)で屈曲させることにより、基端部25と屈曲端部27が対向するともに、フック本体26の先端と基端部25との間に枠杆21の直径よりも広い上部開口が形成され、フック本体26の先端が上方を向く。これにより、該先端を端ヒゴ11と細ヒゴ12との間の隙間に挿入可能となっている。なお、端ヒゴ11と細ヒゴ12との間の隙間への挿入のしやすさの観点から、フック本体26の先端形状は、先細で角丸め加工がされていることが好ましい。また、本実施形態では、基端部25を、溶着もしくはネジ締結等により枠杆21の所定の位置に固定することにより、海苔簀係合用フック24を、簀枠20の張設枠23のそれぞれにつき二対(計4個)設けている。海苔簀10は、両端の端ヒゴ11をそれぞれ2個の海苔簀係合用フック24に係合させることにより、簀枠20に張設される(
図3(a)参照)。
【0030】
本発明の一実施形態に係る海苔簀張設装置6について、
図4から
図6を参照して説明する。
【0031】
海苔簀張設装置6は、海苔簀10を積層して格納するストッカ31を有する海苔簀供給部30と、簀枠20を搬送する簀枠搬送部50と、海苔簀供給部30のストッカ31から簀枠搬送部50に海苔簀10を一枚ずつ搬送する海苔簀搬送部60と、制御部100を備える。
【0032】
制御部100は、ROM,RAM等の記憶装置と、CPU等の演算装置、タッチパネル機能により各種指令を入力可能に構成された表示装置を備え、海苔簀張設装置6の海苔簀供給部30、簀枠搬送部50及び海苔簀搬送部60の各部の動作を制御する。制御部100には、各部に設けられた各種センサ類及びモータ等の駆動源が接続されている。各種センサ類は、各部において駆動源の動作により移動する海苔簀10及び簀枠20の位置や状態を監視する。
【0033】
海苔簀供給部30は、複数枚の海苔簀10を上下方向(Z方向)に積層して収容する2個のストッカ31と、各ストッカ31を海苔簀10が海苔簀搬送部60に受け渡される受け渡し位置32と、海苔簀10をストッカ31に積層して待機させる待機位置33との間で水平移動させる水平移動手段と、受け渡し位置32のストッカ31内の海苔簀ストックを昇降させる昇降テーブル38と、該ストッカ31内の海苔簀10の有無を検出する上部センサ41と、を備える。
【0034】
ストッカ31は、複数の海苔簀10を支持する枠状の底板36と、底板36に立設された複数のガイド部材37を備える。底板36は、昇降テーブル38を貫通可能とする孔部が形成されるように所定の長さの金属板を矩形に組んで形成したものである。なお、底板36の形状は、昇降テーブル38が貫通可能であり、かつ、略正方形の海苔簀10を撓みなく支持し得る形状であればよい。
【0035】
ストッカ31における複数のガイド部材37は、底板36と同じ材質の金属板から成り、板の側端が海苔簀10を向くように底板36に立設されている。また、複数のガイド部材37は、底板36にその下端を螺着又は溶着することにより、略正方形の海苔簀10の一辺に対して2本が所定の間隔で設けられる。このようにして設けられた各ガイド部材37は、ストッカ31に積層される海苔簀10のX方向及びY方向の位置ズレを規制するように略正方形の海苔簀10の各辺にそれぞれ当接する。すなわち、積層された海苔簀10の四辺は8本のガイド部材37によりガイドされる。これにより、複数の海苔簀10が上下方向(Z方向)に整列される。ガイド部材37の上側先端は、内側から外側に向けて先細となるテーパ状とし、ストッカ31の上部開口を海苔簀10の大きさよりも広くしている。これにより、作業者が海苔簀10をストッカ31に入れて積層する作業を行うときに、海苔簀10を投入する間口が広くなり、作業性が向上する。なお、ガイド部材37の高さは、海苔簀10の厚みの30~60倍の高さである。また、ガイド部材37の材質は、金属に限定されるものではなく、樹脂製であってもよい。さらに、ガイド部材37の形状は、板状に限定されるものではなく、丸棒状、L字状であってもよい。
【0036】
海苔簀供給部30は水平移動手段として、ストッカ31を水平方向に往復移動可能に支持する一対のガイドレール39と、ストッカ31に接続されストッカ31をガイドレール39に沿って移動させるスライド用シリンダ42を備える。一対のガイドレール39は、2個のストッカ31を並列に支持している。なお、2個のストッカ31は互いに連結されており、一対のガイドレール39上で一体的に移動する。一対のガイドレール39のそれぞれにはスライダ(図示せず)が摺動可能に係合し、スライダの上面にはストッカ31の底板36下面が固定されている。スライド用シリンダ42の動作による駆動力を受けたスライダがガイドレール39上を摺動することにより、2個のストッカ31がガイドレール39に案内されて水平方向に往復動する。スライド用シリンダ42は、モータとボールねじを有し、モータの回転運動を直線運動に変換してシリンダロッドを伸縮させる電動アクチュエータである。なお、水平移動手段には、圧縮空気により動作するエアシリンダ等を採用してもよい。
【0037】
一対のガイドレール39上の該レールの延伸方向(X方向)における中央部は、海苔簀10を海苔簀搬送部60に受け渡す受け渡し位置32となっている。また、一対のガイドレール39上の受け渡し位置32を挟んだ両隣りの位置は、それぞれ2個のストッカ31の内の1のストッカ31の待機位置33となっている。制御部100の制御により、一対のガイドレール39によって2個のストッカ31をX方向に並進移動させることにより、各ストッカ31は、それぞれ待機位置33と受け渡し位置32との間で移動し、一方のストッカ31が受け渡し位置32にあるときには、他方のストッカ31が待機位置33で待機する。
【0038】
昇降テーブル38は、昇降テーブル38を上昇及び下降させる昇降アクチュエータ(図示せず)に接続されている。昇降テーブル38及び昇降アクチュエータは、ストッカ31を支持する一対のガイドレール39の下方であって、受け渡し位置32の下方に配設されている。昇降テーブル38は、その上面がストッカ31に積層された海苔簀10の最下面に当接することで海苔簀10を支持するとともに、昇降アクチュエータの駆動によりストッカ31の底板36の枠内を貫通して昇降する。昇降アクチュエータとしては、スライド用シリンダ42と同様に、電動アクチュエータを採用することができる。
【0039】
海苔簀10の受け渡し位置32には、ストッカ31内の海苔簀10の有無を検出する上部センサ41が設けられている。この上部センサ41は、受け渡し位置32の上側の位置であって、ストッカ31内の最上層の海苔簀10を検出し得るように設けられ、制御部100に接続されている。上部センサ41としては、例えば、可視光や紫外光等の光を発射する投光部と、投光部から発射された光が検出物体によってさえぎられたり反射したりする変化を検出する受光部を備えた光電センサを採用することができる。
【0040】
ストッカ31の水平移動手段、及び、昇降テーブル38の昇降アクチュエータの動作は、上部センサ41からの海苔簀10の検出信号を利用して制御部100により制御される。すなわち、制御部100の制御により、上部センサ41が海苔簀10を検出しているときには、昇降テーブル38の上昇を停止させ、海苔簀10が搬出されたことにより上部センサ41が海苔簀10を検出しなくなったときには、昇降テーブル38を海苔簀10の一枚分の厚みだけ上昇させて、上部センサ41に海苔簀10を検出させる。昇降テーブル38を海苔簀10の搬出における最上位置まで上昇させた後に、ストッカ31に積層されていた最後の1枚の海苔簀10が搬出され、上部センサ41が海苔簀10を検出しなくなったときには、昇降テーブル38をストッカ31の底板36の下方まで下降させる。しかる後、スライド用シリンダ42を駆動させ、海苔簀10を積層させた状態で待機位置33に待機させておいたストッカ31を受け渡し位置32にスライド移動させる。
【0041】
簀枠搬送部50は、簀枠20を搬送するものであり、簀枠20を支持してその長尺方向に水平移動させる搬送レーン51を2レーン備える。各搬送レーン51には、簀枠20を水平搬送するための水平移動手段が設けられている。水平移動手段としては、搬送方向と直交する方向(Y方向)を回転軸とし、所定の間隔で設けられモータにより駆動する複数の駆動ローラと複数の従動ローラを備え、簀枠20の下面にローラを当接させて搬送するローラコンベア、あるいは、搬送方向と直交する方向(Y方向)を回転軸ととする駆動軸と従動軸のそれぞれに接続された2つのスプロケットに巻回した無端状のチェーンを備え、チェーンに取り付けた爪などのアタッチメントと簀枠20を接触させることにより搬送するチェーンコンベア、もしくは、搬送方向(X方向)に沿った長尺の駆動レールとガイドレールを備え、固定子と可動子との間に働く磁力によって可動子に推力を発生させるリニアモータ駆動方式の搬送コンベア等が例示できる。
【0042】
また、簀枠搬送部50における各搬送レーン51の動作は、制御部100により制御される。簀枠搬送部50の各搬送レーン51には、簀枠20の位置を検出するための位置センサ52を設けている。なお、
図4においては、搬送レーン51の一方にのみ位置センサ52を図示し、他方については図示を省略している。位置センサ52は、制御部100に接続され、簀枠20の仕切り杆22を検出した信号を制御部100に入力する。位置センサ52としては、海苔簀供給部30における上部センサ41と同様に、例えば、光電センサを採用することができる。制御部100は、位置センサ52からの入力に基づいて簀枠20に設けられた複数の張設枠23のうちのいずれの張設枠23が海苔簀10の張設対象枠となるかを判断し、搬送レーン51の駆動源を動作させて簀枠20を位置決めする。すなわち、搬送レーン51では、1つの簀枠20を複数の仕切り杆22の配置間隔で間欠的に水平搬送して、海苔簀10を張設する位置に簀枠20における複数の張設枠23を一枠ずつ順次送る動作が実行される。
【0043】
海苔簀搬送部60は、簀枠搬送部50の上方であって、簀枠搬送部50における簀枠20の搬送方向と直交する方向(Y方向)に延設されたリニアレール61を備える。リニアレール61は、海苔簀供給部30から簀枠搬送部50に亘って設けられた支持枠62により、所定の高さ位置に支持されている。リニアレール61には、複数のリニアブロック63が摺動可能に取り付けられている。リニアブロック63を介して後述する海苔簀10を水平保持する水平保持手段をリニアレール61に吊設することにより、海苔簀10を簀枠20の搬送方向に直交する方向(Y方向)に搬送可能としている。
【0044】
リニアレール61には、海苔簀供給部30におけるストッカ31から海苔簀10を一枚ずつ搬出する搬出部70が移動可能に吊設されている。また、搬出部70と簀枠搬送部50との間であって、リニアレール61の下方の支持枠62には、ストッカ31から搬出された海苔簀10を検査する検査部80が設けられている。
【0045】
搬出部70は、リニアレール61に摺動可能に取り付けられたリニアブロック63aに対して、1つの動作ユニットとして設けられている。リニアブロック63aには昇降シリンダ66aが設けられており、昇降シリンダ66aの下端に連結された支持板64aに搬出部70のユニットケースが固定されている。このため、昇降シリンダ66aの動作により搬出部70は上下方向(Z方向)に移動可能となっている。また、リニアブロック63aは水平移動用シリンダ67の動作により、搬出部70全体をリニアレール61に沿った水平方向(Y方向)に移動可能としている。
【0046】
搬出部70は、受け渡し位置32に配置されたストッカ31から、最上層の海苔簀10を持ち上げる海苔簀吊持部71を備える。海苔簀吊持部71は、海苔簀10の下面側を支える下側支持部72と、海苔簀10に対して上側から掴む上側クランプ部73とを備える。
【0047】
下側支持部72は、リニアレール61の延伸方向と直交する方向(X方向)において、互いに離接可能に垂直に設けられた二対のアーム76を有する(
図5参照)。対をなすアーム76の対向する下端側の面には水平方向に4本のピン77が突出して設けられている(
図4参照)。さらに、リニアレール61の延伸方向に沿う方向(Y方向)においては、二対のアーム76間の距離は略正方形の海苔簀10の一辺の長さよりも短く、少なくとも一辺の長さの半分より長い距離だけ離間して配置されている。各アーム76の基端部は、圧縮空気により作動するエアシリンダ78に接続され(
図5参照)、二対のアーム76はエアシリンダ78のロッドの伸縮により同期して海苔簀10に対して離接可能に構成されている。
【0048】
上側クランプ部73は、
図5に示すように側面視略L字状であり、基端部はヒゴの長さ方向(X方向)を回転軸方向とする軸74を介して搬出部70のユニットケースに回動可能に支持されている。上側クランプ部73は、エアシリンダ79の動作により回動することにより、先端が海苔簀10の上面に当接するように構成されている。なお、上側クランプ部73は、例えば、エアシリンダの動作により開閉する一対の爪部により海苔簀10の端ヒゴ11を掴む挟持具により構成してもよく、また、真空ポンプを用いて真空で吸着させる吸着具、あるいは、圧縮空気を保持対象に噴射して発生した負圧を利用した所謂ベルヌーイチャック等の非接触保持具を採用してもよい。なお、搬出部70の各部の動作は、制御部100により制御される。
【0049】
搬出部70において、ストッカ31から最上層の海苔簀10を搬出するときには、下側支持部72の二対のアーム76が、各アーム76に支持されたピン77の先端が海苔簀10の端部に接触しない距離だけ離間した状態で、搬出部70が所定の高さ位置まで下降される。しかる後、エアシリンダ78の動作により二対のアーム76をX方向において所定の距離だけ接近させることにより、複数のピン77をストッカ31に積層された海苔簀ストックの最上層の海苔簀10の下面に挿入する。これにより一枚の海苔簀10の下面が複数のピン77により支持される。なお、ストッカ31において、海苔簀10はX方向がヒゴの長さ方向と同方向となるように整列して積層されている。したがって、下側支持部72における海苔簀10に対するピン77の挿入方向は、海苔簀10のヒゴの長さ方向と同方向である。海苔簀10の下側にピン77を挿入した後、エアシリンダ79の動作により上側クランプ部73を回動させ、上側クランプ部73の先端を海苔簀10の上面に当接させる。海苔簀10を複数のピン77により下側から支えつつ上側クランプ部73によって上から押さえることより、一枚の海苔簀10が上下方向から挟持される。この状態で昇降シリンダ66を動作させて搬出部70を上昇させることにより、海苔簀10が吊り上げられストッカ31から搬出される。しかる後、海苔簀吊持部71が海苔簀10を吊持した状態で、水平移動用シリンダ67の動作により搬出部70をリニアレール61に沿って移動させることにより、海苔簀10を検査部80に向けて搬送する。
【0050】
検査部80は、中央テーブル82と、海苔簀10の搬送方向(Y方向)において中央テーブル82を挟んで対向配置され、少なくとも一方が中央テーブル82に対して離接可能に構成された一対の端テーブル83とを有する検査台81を備える。なお、
図5においては、中央テーブル82の図示を省略している。端テーブル83は、海苔簀10の端から10~20%程度の長さの端ヒゴ11を含む端部を支持するものであり、該端テーブル83の上面に置かれた端ヒゴ11をさらにその上から押圧して挟む端ヒゴクランプ部84を含む。端ヒゴクランプ部84は、
図5に示すように側面視略L字状であり、エアシリンダ85の動作により海苔簀10のヒゴの長さ方向(X方向)が回転軸方向となる軸88を中心に回動し、先端が海苔簀10の端ヒゴ11の上面に当接するように構成されている。
【0051】
検査台81の上方には、海苔簀10を撮影するCCDカメラ86が設けられている。CCDカメラ86は、海苔簀搬送部60におけるリニアレール61を支持する支持枠62に配置されている。CCDカメラ86は制御部100に接続され、CCDカメラ86の撮影画像は、制御部100に入力される。
【0052】
ストッカ31から搬出され、リニアレール61に沿って搬送された一枚の海苔簀10が検査部80に移送されて検査台81に載置されると、端テーブル83における端ヒゴクランプ部84が略90度回動し、端ヒゴ11を端テーブル83の上面と端ヒゴクランプ部84とにより挟む。これにより海苔簀10が検査台81に固定される。この状態で、水平移動用シリンダ87を動作させて端テーブル83の一方(
図5において紙面右側の端テーブル83)を水平移動させて中央テーブル82に対して離間させることにより、海苔簀10が撓みのない状態で検査台81に支持されることになる。撓みのない状態の海苔簀10は、CCDカメラ86により撮影される。制御部100は、CCDカメラ86から入力された撮影画像から、海苔簀10の細ヒゴ12の部分的な欠けや糸切れなどの欠陥の有無を判断する。
【0053】
検査部80における検査により欠陥がないことが確認された海苔簀10は、端ヒゴクランプ部84による挟持が解除された後、水平保持手段により検査台81から掴み上げれられる。また、撮影画像から海苔簀10に欠陥ありと制御部100が判断した場合には、制御部100は、海苔簀張設装置6の各部の動作を一時停止させ、表示装置に警告を表示して、作業者に欠陥のある海苔簀10を装置から取り除く作業を行うように促す。なお、このような警告は、表示装置への表示によるものに限定されない。例えば、表示装置とは別の警告ランプを点灯させてもよく、ブザー音等の音により作業者の注意を喚起するようなものであってもよい。
【0054】
海苔簀搬送部60は、海苔簀10を水平保持する保持手段を備える。本実施形態では、後述する係合機構90における開拡爪91を保持手段としても利用している。すなわち、係合機構90は、リニアレール61に取り付けられたリニアブロック63b、63cの下部に垂直移動可能に設けられた支持板64b、64cに接続されており、係合機構90における開拡爪91は、爪部材93により海苔簀10の端ヒゴ11及び細ヒゴ12に係り合うことで海苔簀10を保持することが可能に構成されている。
【0055】
リニアブロック63b、63cは、水平移動用シリンダ68の動作により、所定の間隔を保った状態で、同期してリニアレール61に沿ってY方向に水平移動可能に構成されている。各リニアブロック63b、63cには、垂直移動手段としての昇降シリンダ66b、66cがそれぞれ設けられており、支持板64b、64cに支持された構成を一体として上下動させる。この昇降シリンダ66b、66cは、電動アクチュエータである。また、一方のリニアブロック63cの支持板64cには、さらにリニアレール61に沿って保持手段等の構成を微小移動させるシフトシリンダ69が設けられている(
図5参照)。一方のリニアブロック63c側の支持板64cとそれに支持される構成との間にシフトシリンダ69を介装したことで、リニアブロック63b、63cの支持板64b、64cのそれぞれに支持された構成間の距離を変更することが可能となる。
【0056】
係合機構90は、簀枠20における海苔簀係合用フック24に海苔簀10の端ヒゴ11を係合させるためのものであり、各リニアブロック63b、63cの支持板64b、64cに設けられている。係合機構90は、海苔簀10の端ヒゴ11と隣接する細ヒゴ12との間に挿入される開拡爪91と、簀枠20に対して所定の角度で傾斜した移動軸98を有し、開拡爪91により拡張された隙間に海苔簀係合用フック24のガイド部27の先端を挿入した状態で端ヒゴ11の端面を上側から押圧する押圧体92と、を備える(
図7参照)。
【0057】
開拡爪91は、各リニアブロック63b、63cのそれぞれに対し、海苔簀10の搬送方向に直交する方向(X方向)において2個設けられており、簀枠20の枠杆21における海苔簀係合用フック24にそれぞれ対応するように配置されている。開拡爪91は、先端が先細に加工されたエッジ部96が設けられた爪部材93を有する。エッジ部96は、
図6に破線で示すようにX方向において枠杆21における海苔簀係合用フック24の幅方向よりもやや広い間隔だけ離間させて設けられている。爪部材93は、対をなして同期開閉する部材であり、リンク部材94を介して接続されたエアシリンダ(図示せず)の動作により開閉するように構成されている(
図5参照)。エッジ部96を海苔簀10の端ヒゴ11と細ヒゴ12との間に挿入した状態で爪部材93が開かれると、端ヒゴ11と細ヒゴ12の間を押し広げる力によりエッジ部96の外側部と端ヒゴ11と細ヒゴ12の端が密着する。このとき、シフトシリンダ69を動作させてリニアブロック63bとリニアブロック63cとの間の距離を拡げ、海苔簀10に適当な引張力を与えることにより、エッジ部96により海苔簀10が水平に吊り持たれる状態となる。すなわち、係合機構90が海苔簀10を水平保持する保持手段として機能することになる。
【0058】
なお、海苔簀10を水平保持する保持手段として、別途一対のつかみ具を備えてもよい。つかみ具は、アームの先端に設けられた一対の挟持爪と、一対の挟持爪を開閉するエアシリンダとを備えたものを採用することができる。各アームの基端部を支持板64b、64cに接続することで、リニアレール61に沿って係合機構90と一体的に水平移動する。
【0059】
押圧体92は、先端が海苔簀10の端ヒゴ11の上面に当接するものであり、その基端部は、連結部材97を介して押圧用シリンダ99に接続されている。押圧体92は、海苔簀10の1つの端ヒゴ11につきその延伸方向(X方向)において、開拡爪91を挟んだ所定の間隔で4個設けられる(
図6参照)。押圧体92及び押圧用シリンダ99を、垂直方向から所定の角度(例えば、10~45度程度)だけ傾斜させて設けることで、押圧体92は押圧用シリンダ99の伸縮により簀枠20に対して所定の角度(例えば、45~80度程度)傾斜した移動軸98に沿って移動する。
【0060】
このような構成の係合機構90により、海苔簀10を簀枠20に設けた海苔簀係合用フック24に係合させる動作について
図7を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する動作は、制御部100の制御下において、各部に配置されたシリンダ等の駆動源を動作させることにより実行される。
【0061】
簀枠搬送部50において、簀枠20の所定の張設枠23を、海苔簀搬送部60と簀枠搬送部50とが交差する海苔簀張設位置に位置決めするとともに、海苔簀搬送部60の水平移動用シリンダ68を動作させ、海苔簀10を位置決めされた張設枠23の上方に移動させる。
【0062】
昇降シリンダ66b、66cの動作により開拡爪91を海苔簀10に向けて下降させ、爪部材93のエッジ部96を端ヒゴ11の細ヒゴ12との隙間に挿入し(
図7(a)参照)、爪部材93を開くことにより海苔簀10の端ヒゴ11と細ヒゴ12との間の隙間をさらに開拡する(
図7(b)参照)。こうして開拡された端ヒゴ11と細ヒゴ12との間には、海苔簀係合用フック24のガイド部27の上方を向く先端が入り込む。このとき、押圧体92を移動軸98に沿って移動させることにより、端ヒゴ11の上端面が押圧体92により押され、端ヒゴ11がフック本体26の内部に向かう斜め下方に強制変位される。これにより、端ヒゴ11がガイド部27の下方に湾曲した形状に沿ってフック本体26に案内される(
図7(c)参照)。これにより端ヒゴ11はフック本体26と係止され、海苔簀10が海苔簀係合用フック24に張設される(
図7(d)参照)。
【0063】
リニアブロック63b側の係合機構90とリニアブロック63c側の係合機構90とは、同期して動作するが、昇降シリンダ66b及び昇降シリンダ66cの下降のタイミングや、爪部材93を開くタイミングは同時でなくてよい。すなわち、リニアブロック63b側の係合機構90の動作に対して、僅かに遅れて、リニアブロック63c側の係合機構90を動作させる。さらに、リニアブロック63c側の係合機構90を動作させるときに、シフトシリンダ69を動作させてリニアブロック63cの位置をリニアブロック63bの位置に対してやや離間させる制御を行う。このような動作制御により、海苔簀10の一方の端ヒゴ11を海苔簀係合用フック24に係合させた後に、海苔簀10に僅かな引張力が与えられる。海苔簀10の張設において、このような係合機構90及びシフトシリンダ69の時間差制御を行うと、海苔簀係合用フック24のガイド部27の先端のフック本体26との間の距離Lの差(
図7(d)参照)が、簀枠20に張設した後に海苔簀10の撓みとなることがない。したがって、海苔簀10を、乾燥海苔の製造に適した一定の引張力が与えられた均一な状態で簀枠20の各張設枠23に確実に張設することが可能となる。
【0064】
係合機構90により、簀枠20における1つの張設枠23に海苔簀10が張設されると、簀枠搬送部50の動作により、簀枠20が張設枠23の1枠分だけX方向に送られ、新たな張設枠23が海苔簀張設位置に位置決めされる。海苔簀供給部30から一枚ずつ取り出された海苔簀10は、検査部80を経て海苔簀搬送部60により簀枠20の上方に順次搬送され、係合機構90の動作により、簀枠20の張設枠23に一枚ずつ張設される。
【0065】
1つの簀枠20に設けられた全ての張設枠23に海苔簀10が張設されると、簀枠20は、簀枠搬送部50の動作により海苔簀張設装置6から排出され、海苔簀10に海苔生地を抄製する抄製装置2へと送られる。本実施形態では、簀枠20の搬送レーン51が2レーンあることから、一方の搬送レーン51上の簀枠20に対して海苔簀10を張設しているときに、他方の搬送レーン51上に、海苔簀10が張設されていない空の簀枠20を待機させておく(
図4参照)。すなわち、2つの搬送レーンにおいて、一方の搬送レーン51からの簀枠20の排出と、他の搬送レーン51における簀枠20の搬入・位置決め動作を同時に行うことにより、海苔簀搬送部60により一枚ずつ連続的に搬送される海苔簀10に対して、簀枠20を連続的に供給することができる。なお、搬送レーン51の長さや数は海苔製造装置1を設置する建物の大きさや形状に応じて変更することが可能である。
【0066】
係合機構190の変形例について説明する。
図8は、変形例に係る係合機構190における海苔簀10の海苔簀係合用フック24への係合動作を説明する概要図である。なお、係合機構90と同様の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
この変形例に係る係合機構190は、係合機構90における一対の爪部材93が開閉する開拡爪91と異なり、一片の爪部材193を有する開拡爪191を備える。爪部材193は、海苔簀10のヒゴの延伸方向(X方向)を軸とする回転軸195を中心に揺動するように構成されている。
【0068】
このような構成の開拡爪191を有する係合機構190により海苔簀10を海苔簀係合用フック24に係合させる場合には、海苔簀張設位置に位置決めされた簀枠20の張設枠23の上方に搬送された海苔簀10に向けて、該開拡爪191を下降させ、爪部材193のエッジ部196を端ヒゴ11の細ヒゴ12との隙間に挿入する。しかる後、エッジ部196が端ヒゴ11の細ヒゴ12との隙間に挿入された状態で、開拡爪191を回動させる。このときの回転軸195の回転方向は、リニアブロック63b側に設けた開拡爪191においては時計回りであり、リニアブロック63c側に設けた開拡爪191においては、反時計回りである。回転角度は、例えば5~15度程度である。なお、
図8においては、説明の便宜上、リニアブロック63c側に設けた開拡爪191を拡大して図示している。回転軸195の回転に伴う開拡爪191の揺動により、エッジ部196が端ヒゴ11を海苔簀10の外側方向に向けて押すことになり、端ヒゴ11の細ヒゴ12との隙間が開拡される。こうして開拡された端ヒゴ11と細ヒゴ12との間には、海苔簀係合用フック24のフック本体26の上方を向く先端が入り込む。このとき、押圧体92を移動軸98に沿って移動させることにより、端ヒゴ11の上端が押圧体92により押され、端ヒゴ11がフック本体26の内部に向かう斜め下方に強制変位される。これにより、端ヒゴ11がフック本体26の屈曲した形状に沿ってフック本体26の屈曲端部27に案内され、海苔簀10が海苔簀係合用フック24に張設される。
【0069】
この変形例に係る開拡爪191では、開拡爪91に比べ、部品点数を減らすことができるため、端ヒゴ11の細ヒゴ12との隙間を開拡する際の動作を簡略化することができる。
【0070】
以上のような構成を備えた本実施形態の海苔簀張設装置6は、以下の構成を特徴とする。すなわち、端ヒゴ11と隣接する細ヒゴ12との間に挿入される開拡爪91、191と、簀枠20に対して所定の角度で傾斜した移動軸98、198を有し、開拡爪91,191により拡張された隙間に海苔簀係合用フック24のフック本体26の先端を挿入した状態で端ヒゴ11の端面を押圧する押圧体92、192と、を備え、海苔簀係合用フック24に海苔簀10を係合する係合機構90、190と、係合機構90、190の動作を制御する制御部100と、を備えたことを特徴とする。
【0071】
また、本実施形態に係る海苔簀張設装置6は、制御部100の制御下において、次のような特徴を備えた海苔簀張設方法を実行する。すなわち、海苔簀10の端ヒゴ11と隣接する細ヒゴ12との間の隙間を開拡爪91、191により拡張し(開拡工程)、開拡爪91、191により拡張された隙間に海苔簀係合用フック24におけるフック本体26の先端を挿入した後に、端ヒゴ11を押圧体92、192により押圧してフック本体26の内部に向かう斜め下方に強制変位させ、フック本体26に端ヒゴ11を係合させる(係合工程)。
【0072】
本実施形態においては、上記構成により、簀枠20への海苔簀10の張設作業が自動化され、作業者の手作業による場合と比較して速く簀枠20に海苔簀10を張設することが可能となる。すなわち、作業効率が向上する。また、機械的に予め決められた動作を繰り返させることから、作業者の手作用による張設作業のように、海苔簀係合用フック24を係合させるヒゴ間の位置が違うなどの人による海苔簀10の張り方のバラツキがない。したがって、簀枠20設された海苔簀10の状態が均一になる。さらに、均一な引張力がかかり撓みのない海苔簀10を用いて乾燥海苔を製造できることから、海苔の不良品の発生も低減される。
【0073】
さらに、海苔簀張設装置6は、簀枠20を係合機構90、190により海苔簀10を張設する海苔簀張設位置に向けて間欠的に搬送する。つまり、海苔簀張設装置6は、制御部100の制御下において、開拡爪91、191と押圧体92、192の作用により簀枠に海苔簀を張設する動作の前後で、簀枠20を間欠的に搬送する(簀枠搬送工程)、海苔簀張設方法を実行する。
【0074】
すなわち、簀枠20を、簀枠20における仕切り杆22の配設間隔で簀枠20を順次送りと搬送の一時停止を繰り返し実行することで、係合機構90、190による海苔簀張設動作の前後において、簀枠20に設けた複数の張設枠23に、連続して確実に海苔簀10を張設することができる。
【0075】
さらに、海苔簀張設装置6は、簀枠搬送部50の上方に配置され、海苔簀10を水平保持する保持手段(支持板64、搬出部70、開拡爪91、191)と、保持手段を簀枠搬送部50による簀枠20の搬送方向に直交する方向に海苔簀10を水平搬送する水平搬送手段(リニアレール61、リニアブロック63、水平移動用シリンダ67,68)と、保持手段を所定の位置で昇降させて海苔簀10を垂直搬送する垂直搬送手段(昇降シリンダ66)と、を備える海苔簀搬送部60を備えている。つまり、海苔簀張設装置6は、制御部100の制御下において、簀枠20の所定の位置に向けて海苔簀10を搬送する(海苔簀搬送工程)、海苔簀張設方法を実行する。なお、簀枠20の所定の位置は、一対の枠杆21と複数の仕切り杆22で画定された複数の枠(張設枠23)のうちの1つであって、開拡爪91、191と押圧体92、192の作用により簀枠20における海苔簀係合用フック24に海苔簀10の端ヒゴ11を係合させる海苔簀張設位置に位置決めされた簀枠20における1つの枠の位置である。
【0076】
このように、簀枠20と海苔簀10を相対的に移動させることにより、複数の張設枠23が設けられた簀枠20の各張設枠23に対して、連続して海苔簀10を張設することが可能となる。
【0077】
また、海苔簀張設装置6は、枠状の底板36上に複数の海苔簀10を積層して格納する複数のストッカ31と、複数のストッカ31を支持するとともに該複数のストッカ31を海苔簀10の待機位置33と海苔簀10を海苔簀搬送部60に受け渡す受け渡し位置32との間で水平移動させる水平移動手段(ガイドレール39、スライド用シリンダ42)と、受け渡し位置32の下部に配設され、底板の枠内を貫通して昇降する昇降テーブル38と、受け渡し位置32に配置したストッカ31内の海苔簀10の有無を検出するセンサ(上部センサ41)と、を備える海苔簀供給部30を備えている。さらに、制御部100は海苔簀供給部30の動作を制御して、センサの入力に基づいてストッカ31が空であると判断したときに、水平移動手段により複数のストッカ31のうち空のストッカ31をストッカ31の待機位置に移動させるとともに、複数の海苔簀10が積層されたストッカ31を受け渡し位置32に配置する制御を実行している。
【0078】
また、海苔簀張設装置6は、複数の海苔簀10を積層して格納するストッカ31から海苔簀を一枚ずつ搬出する(海苔簀供給工程)海苔簀張設方法を実行する。これにより、大量の海苔簀10を連続して簀枠20に張設することが可能となる。
【0079】
また、他の観点から見れば、海苔簀張設装置6は、海苔簀係合用フック24を介して係合張設した海苔簀係合簀枠を作製する装置でもあり、海苔簀係合簀枠は、海苔簀10の端ヒゴ11と隣接する細ヒゴ12との間の隙間を開拡爪91、191により拡張する開拡工程と、開拡爪91、191により拡張された隙間に海苔簀係合用フック24におけるフック本体26の先端を挿入した後に、端ヒゴ11を押圧体92、192により押圧してフック本体26の内部に向かう斜め下方に強制変位させ、フック本体26に端ヒゴ11を係合させる係合工程とを経て作製される。
【0080】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る海苔簀張設装置及び海苔簀張設方法は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 海苔製造装置
2 抄製装置
3 脱水装置
4 乾燥装置
5 剥離装置
6 海苔簀張設装置
10 海苔簀
11 端ヒゴ
12 細ヒゴ
20 簀枠
21 枠杆
22 仕切り杆
24 海苔簀係合用フック
26 フック本体
30 海苔簀供給部
31 ストッカ
32 受け渡し位置
33 待機位置
50 簀枠搬送部
51 搬送レーン
60 海苔簀搬送部
61 リニアレール
70 搬出部
71 海苔簀吊持部
72 下側支持部
73 上側クランプ部
80 検査部
81 検査台
82 中央テーブル
83 端テーブル
84 端ヒゴクランプ部
90 係合機構
91 開拡爪
92 押圧体
100 制御部
191 開拡爪