(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021761
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】円柱状部材の取出方法、円柱状部材の把持方法、把持装置及び解放用部材
(51)【国際特許分類】
B28D 7/04 20060101AFI20230207BHJP
B28D 1/14 20060101ALN20230207BHJP
B23B 51/04 20060101ALN20230207BHJP
E04G 23/08 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
B28D7/04
B28D1/14
B23B51/04 Z
E04G23/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126827
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】502263905
【氏名又は名称】ダイヤモンド機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】向井 啓通
(72)【発明者】
【氏名】垣中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 宏明
(72)【発明者】
【氏名】渡部 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 豪
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
2E176
3C037
3C069
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB36
2E176DD26
3C037AA05
3C037FF09
3C069AA04
3C069BA09
3C069CA10
3C069DA01
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】円柱状部材を、効率的に把持して取り出すための取出方法、把持方法、把持装置及び解放用部材を提供する。
【解決手段】把持装置20は、ケーシング25と保持リング40とを備える。ケーシング25は、円柱状の削孔コア11を収容する筒状の本体部25tと、先端側が縮径する内周面を有する外周リング30とを備える。保持リング40は、一部を切り欠いた円筒形状を有し、外周リング30の内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能であって、内周面に挿入される。そして、保持リング40が拡径した状態で、ケーシング25に削孔コア11を挿入し、削孔コア11が挿入された状態でケーシング25を上昇させることにより、保持リング40を内周面に対して相対的に降下させて縮径させて、削孔コア11を把持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状部材の取出方法であって、
前記円柱状部材を収容する筒状の本体部と、先端側が縮径する内周面を有する先端部とを備えたケーシングの前記先端部に、一部を切り欠いた円筒形状を有し、前記内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能な保持リングを挿入し、
前記保持リングが拡径した状態で、前記ケーシングに前記円柱状部材を挿入し、
前記円柱状部材が挿入された状態で、前記内周面によって前記保持リングを前記先端側に移動させて縮径させて、前記円柱状部材を把持して移動させ、
解放用部材の取出孔の周縁部に前記保持リングを当接させることにより、前記周縁部によって前記保持リングを基端側に移動させて拡径させて、前記保持リングから前記円柱状部材を解放させることを特徴とする円柱状部材の取出方法。
【請求項2】
前記解放用部材には、前記周縁部の外側に、複数のガイド部材が離間して立設され、
前記ガイド部材の前記取出孔側の面が、前記取出孔に近くなるにつれて前記取出孔の中心軸に接近する形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の円柱状部材の取出方法。
【請求項3】
円柱状部材を把持する把持方法であって、
前記円柱状部材を収容する筒状の本体部と、先端側が縮径する内周面を有する先端部とを備えたケーシングの前記先端部に、一部を切り欠いた円筒形状を有し、前記内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能な保持リングを挿入し、
前記保持リングが拡径した状態で、前記ケーシングに前記円柱状部材を挿入し、
前記円柱状部材が挿入された状態で、前記内周面によって前記保持リングを前記先端側に移動させて縮径させて、前記円柱状部材を把持することを特徴とする円柱状部材の把持方法。
【請求項4】
円柱状部材を把持する装置であって、
前記円柱状部材を収容する筒状の本体部と、先端側が縮径する内周面を有する先端部とを備えたケーシングと、
一部を切り欠いた円筒形状又は螺旋形状を有し、前記内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能な保持リングと、を備えることを特徴とする把持装置。
【請求項5】
前記保持リングの内周面には、離間した複数の凸部が形成され、
前記保持リングは、前記ケーシングの前記内周面の傾斜に対応して前記先端側が縮径した外形を有していることを特徴とする請求項4に記載の把持装置。
【請求項6】
前記保持リングには、水平方向に突出するフランジ部が先端側に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の把持装置。
【請求項7】
縮径された保持リングに把持された円柱状部材を前記保持リングから取り外すために用いる解放用部材であって、
前記円柱状部材が通過可能でかつ前記保持リングは通過できない取出孔が形成された板部材と、
前記取出孔の周縁部の外側に離間して立設された複数のガイド部材と、を有し、
前記ガイド部材の前記取出孔側の面が、前記取出孔に近くなるにつれて前記取出孔の中心軸に接近する形状を有していることを特徴とする解放用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアドリルを用いて穿孔された鉄筋コンクリート部材等、円柱状に形成された円柱状部材の取出方法、円柱状部材の把持方法、把持装置及び解放用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート等の構造物を穿孔するために、円筒形状のコアビットを備えた穿孔装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載された穿孔装置は、コアビットを、回転させながら直進させて、穿孔対象物に孔を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コアビット等を用いて穿孔した場合、形成した孔の中に、穿孔によって周囲から切り出された円柱状部材が形成される。従来は、この円柱状部材の取り除きに手間が掛かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する円柱状部材の取出方法は、円柱状部材の取出方法であって、前記円柱状部材を収容する筒状の本体部と、先端側が縮径する内周面を有する先端部とを備えたケーシングの前記先端部に、一部を切り欠いた円筒形状を有し、前記内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能な保持リングを挿入し、前記保持リングが拡径した状態で、前記ケーシングに前記円柱状部材を挿入し、前記円柱状部材が挿入された状態で、前記内周面によって前記保持リングを前記先端側に移動させて縮径させて、前記円柱状部材を把持して移動させ、解放用部材の取出孔の周縁部に前記保持リングを当接させることにより、前記周縁部によって前記保持リングを基端側に移動させて拡径させて、前記保持リングから前記円柱状部材を解放させる。
【0006】
また、上記課題を解決する円柱状部材の把持方法は、円柱状部材を把持する把持方法であって、前記円柱状部材を収容する筒状の本体部と、先端側が縮径する内周面を有する先端部とを備えたケーシングの前記先端部に、一部を切り欠いた円筒形状を有し、前記内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能な保持リングを挿入し、前記保持リングが拡径した状態で、前記ケーシングに前記円柱状部材を挿入し、前記円柱状部材が挿入された状態で、前記内周面によって前記保持リングを前記先端側に移動させて縮径させて、前記円柱状部材を把持する。
【0007】
更に、上記課題を解決する把持装置は、円柱状部材を把持する装置であって、前記円柱状部材を収容する筒状の本体部と、先端側が縮径する内周面を有する先端部とを備えたケーシングと、一部を切り欠いた円筒形状又は螺旋形状を有し、前記内周面の大きさに応じて拡径又は縮径可能な保持リングと、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決する解放用部材は、縮径された保持リングに把持された円柱状部材を前記保持リングから取り外すために用いる解放用部材であって、前記円柱状部材が通過可能でかつ前記保持リングは通過できない取出孔が形成された板部材と、前記取出孔の周縁部の外側に離間して立設された複数のガイド部材と、を有し、前記ガイド部材の前記取出孔側の面が、前記取出孔に近くなるにつれて前記取出孔の中心軸に接近する形状を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円柱状部材を、効率的に把持して取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態において取り出す円柱状の削孔コアと把持装置の説明図である。
【
図2】実施形態の把持装置の先端部の斜視図である。
【
図3】実施形態の把持装置の先端に設けた外周リングの一部破断正面図である。
【
図4】実施形態の把持装置の保持リングの正面図である。
【
図5】実施形態の把持装置の保持リングの上面図である。
【
図9】実施形態の把持装置を隙間に挿入する前の状態の正面断面図である。
【
図10】実施形態の把持装置を隙間に挿入した状態の正面断面図である。
【
図11】実施形態の把持装置で円柱状部材を把持して持ち上げた状態の正面断面図である。
【
図12】実施形態の把持装置で把持した円柱状部材を解放用部材まで移動した状態の正面断面図である。
【
図13】実施形態の解放用部材に保持リングが当接した状態の正面断面図である。
【
図14】実施形態の解放用部材に当接した保持リングが円柱状部材を解放した状態の正面断面図である。
【
図15】第1変更例における保持リングの斜視図である。
【
図16】第1変更例における保持リングの正面図である。
【
図17】第1変更例における保持リングの上面図である。
【
図18】第1変更例における保持リングで円柱状部材を把持する前の状態の正面断面図である。
【
図19】第1変更例における保持リングで円柱状部材を把持した状態の正面断面図である。
【
図20】第1変更例における保持リングで把持した円柱状部材を解放する状態の正面断面図である。
【
図21】第2変更例における解放用部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図14を用いて、円柱状部材の取出方法、把持方法、把持装置及び解放用部材を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、原子炉建屋(1次遮蔽壁)を構成する鉄筋コンクリート部材に円柱形状の孔を形成した際に切り出される円柱状部材としての削孔コアを取り出す方法として説明する。
【0012】
図1に示すように、コアビットを備えたコアドリル等を用いて鉄筋コンクリート部材10に円筒形状の孔を形成する。これにより、鉄筋コンクリート部材10の孔には、円柱状の鉄筋コンクリート製の削孔コア11が切り出されて収容されている。この場合、削孔コア11は、鉄筋コンクリート部材10との間に、筒状体のコアビットの肉厚に応じた大きさの隙間S1が生じている。本実施形態では、この削孔コア11の外形の直径D1は、例えば、180mm程度であり、削孔コア11の長さは、数m程度である。
【0013】
(把持装置20の説明)
削孔コア11を把持する把持装置20は、ケーシング25、外周リング30及びカムリング40を備えている。
【0014】
図2に示すように、ケーシング25の先端に設けられた先端部としての外周リング30の内部には、保持リングとしてのカムリング40が挿入される。
図1に示すように、ケーシング25は、基端側(先端の反対側)が閉塞した略円筒形状を有する。ケーシング25は、掛止部25aと、筒形状の本体部25tとを備える。ケーシング25は、削孔コア11を穿孔した際のコアビットからビット部分を取り外した部分を流用することができる。
【0015】
掛止部25aは、ケーシング25の基端側の閉塞面の中心において、基端側に突出して形成されている。掛止部25aは、例えば、ケーシング25を昇降するための装置に取り付ける部分である。本体部25tは、削孔コア11を収容可能な大きさで、鉄筋コンクリート部材10と削孔コア11との隙間S1に挿入可能な肉厚を有した円筒形状を有する。本体部25tの先端部(下端部)の内側には、めねじが形成されている。
【0016】
図3に示すように、外周リング30の上部は、円筒形状を有し、外周におねじが形成された接続部31となっている。この接続部31は、ケーシング25の本体部25tの先端部と螺合する。そして、この接続部31は、螺合によりケーシング25に固定された場合において、隙間S1に挿入可能な肉厚を有する。
【0017】
更に、外周リング30の下部は、径外方向に突出して接続部31に接続する略円筒形状の収容部35となっている。収容部35には、カムリング40が配置される。収容部35の上部の外周面は、ケーシング25が螺合した場合に本体部25tの外周面とほぼ面一となる。収容部35の下部の外形は、縮径した形状を有する。収容部35の内周面36は、下方に向かうにつれて徐々に縮径する傾斜した円筒形状を有する。すなわち、収容部35の下端部における内周面36の内径d31は、収容部35の上部における内周面36の内径d32よりも小さくなっている。そして、この収容部35も、隙間S1に挿入可能な肉厚を有する。
【0018】
(カムリング40の構成)
図4及び
図5は、カムリング40の正面図及び上面図である。
図4に示すように、カムリング40は、上端部41のみが同じ外径の円筒形状を有する。カムリング40は、上端部41から下方に続く本体部42を有する。この本体部42は、下方に従って傾斜した円筒形状を有している。この本体部42は、外周リング30の内周面36の傾斜に対応する傾斜を有する。
【0019】
図5に示すように、カムリング40は、一部が切り欠いた開口部40aが形成された円筒形状であって、水平断面が円弧形状を有している。カムリング40の内周面には、離間した複数の凸部45が形成されている。本実施形態では、中心角30度の円弧毎に11個の凸部45が設けられている。また、本実施形態では、対向する凸部45が存在する領域の内径d41は約180mm、対向する凸部がない領域での内径d42は約185mmである。
【0020】
また、カムリング40は、外周リング30の内周面36の内径に応じて縮径及び拡径する可撓性を備える。そして、外周リング30内で縮径した際に外周リング30からは脱落しない程度の硬さを有する。
【0021】
(解放用部材50)
次に、
図6~
図8を用いて、上述した構成の把持装置20によって把持した削孔コア11を、把持装置20から取り外す際に用いる解放用部材50について説明する。
【0022】
図6に示すように、解放用部材50は、板部材としての基板51と、基板51上に立設された複数(8個)の板形状のガイド部材55とを備える。
図7に示すように、基板51は、略正方形状の薄板である。基板51の中心には、円形状の貫通孔52が形成されている。この貫通孔52は、取出孔として機能し、削孔コア11が通過しカムリング40が通過しない大きさ(ここでは約180mm)の内径d51を有する。
【0023】
貫通孔52の外周縁部には、当接領域53が設けられている。この当接領域53は、削孔コア11を取り外すときに把持装置20の外周リング30及びカムリング40が当接する領域である。この当接領域53は、外周リング30及びカムリング40の大きさに応じて設けられており、本実施形態では、貫通孔52から10mm外側の領域である。従って、当接領域53の外径d52は約200mmである。
【0024】
複数のガイド部材55は、当接領域53の外縁に接するように、放射線状に立設されている。ガイド部材55は、本実施形態では45度ずつ離間した位置に設けられている。
図8に示すように、各ガイド部材55は、長方形状の薄板形状において、貫通孔52側の上部を斜めに切り欠いた同じ形状を有する。各ガイド部材55の中心側の面は、高さh1(=約30mm)の立上り部55aと、その上方に接続する傾斜部55sを有する。傾斜部55sは、基板51(貫通孔52)に近くなるにつれて、貫通孔52の中心軸C1に近接する斜面を有し、この斜面は高さh2(=約70mm)と長さL2(=約40mm)で構成される傾斜角度を有する。
【0025】
(削孔コア11の取出方法)
次に、
図1、
図9~
図14を用いて、削孔コア11の取出方法について説明する。
まず、
図1に示すように、把持装置20を、ウインチ等の昇降装置W1で吊り下げて、削孔コア11の上方に配置する。
【0026】
この場合、
図9に示すように、ケーシング25の先端(下端)に取り付けられた外周リング30に挿入されているカムリング40は、その重さで、外周リング30の収容部35の下端部に位置して、縮径された状態になる。そして、この状態で、ケーシング25を降下する。
【0027】
縮径したカムリング40は、ケーシング25が降下すると、カムリング40が削孔コア11に当接する。更に、ケーシング25を降下させると、カムリング40は、削孔コア11に当接した状態で、外周リング30の上方に移動する。この場合、外周リング30の内周面36の傾斜に沿って、カムリング40は拡径する。
【0028】
そして、
図10に示すように、カムリング40の内径が拡がると、カムリング40を削孔コア11が貫通し、隙間S1に入り込む。この状態で、ケーシング25を降下させた場合、外周リング30及これに挿入されたカムリング40は、隙間S1を降下する。
【0029】
図11に示すように、ケーシング25を、所定の深さの隙間S1に挿入後、ケーシング25を持ち上げる。この場合、カムリング40と外周リング30との摩擦力に対して、カムリング40と削孔コア11との摩擦力が大きいため、外周リング30だけが上昇する。この場合、カムリング40は、外周リング30の内周面36の傾斜に応じて縮径し、削孔コア11を把持する。
そして、この把持状態でケーシング25を上昇させて、削孔コア11を、鉄筋コンクリート部材10の孔から取り出す。
【0030】
更に、回収場所に設置した解放用部材50の直上まで、削孔コア11を搬送する。ここで、解放用部材50は、貫通孔52の下方に、削孔コア11を収納する収納空間を設けた支持部材SA1の上に配置されている。
【0031】
そして、
図12に示すように、削孔コア11を、解放用部材50の貫通孔52に対応するように、把持装置20の位置を調整する。二点鎖線で示すように、削孔コア11は、その中心軸が貫通孔52の中心軸C1よりずれた場合には、ガイド部材55の傾斜部55sにガイドされて位置を調整する。
【0032】
図13に示すように、削孔コア11が貫通孔52を貫通した後、カムリング40の先端が、解放用部材50の当接領域53に当接する。この場合、カムリング40は、外周リング30の内周面36の傾斜に沿って拡径する。
図14に示すように、拡径により、カムリング40の把持力が低下した場合、削孔コア11は、その重量により脱落する。これにより、削孔コア11が収納空間に回収される。
【0033】
(作用)
ケーシング25の先端に設けた外周リング30の内周面36は、下になるに従って縮径した形状を有する。ケーシング25への削孔コア11の挿入時には、カムリング40が押し込まれて拡径して、削孔コア11とケーシング25とが移動自由になる。削孔コア11の引き上げ時には、カムリング40が引き出されて縮拡して、削孔コア11を把持する。
【0034】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、カムリング40を拡径した状態でケーシング25に削孔コア11を挿入した後、ケーシング25を上昇させることにより、カムリング40を、外周リング30に対して相対的に降下させて縮径させる。これにより、カムリング40は削孔コア11を押圧して把持するので、ケーシング25の昇降により効率的に削孔コア11を把持することができる。例えば、遠隔操作を行なう場合にも、ケーシング25を削孔コア11に挿入して引き上げることにより把持できる。
【0035】
(2)本実施形態では、ケーシング25の本体部25t、外周リング30及び拡径したカムリング40は、隙間S1に挿入可能な厚みを有する。このため、孔内の削孔コア11を、隙間S1に挿入した把持装置20を用いて取り出すことができる。
【0036】
(3)本実施形態のカムリング40は、開口部40aが形成された断面円弧形状を有し、内側に離間した複数の凸部45を有する。これにより、カムリング40は、表面に不陸がある鉄筋コンクリート製の削孔コア11を押圧して把持することができる。
【0037】
(4)本実施形態では、カムリング40は、外周リング30の内周面36の傾斜に応じた傾斜の外形を有する。これにより、カムリング40の縮径又は拡径を円滑に行なうことができる。
【0038】
(5)本実施形態では、解放用部材50は、削孔コア11が通過しカムリング40が通過しない内径d51の貫通孔52を備える。これにより、貫通孔52の周縁部に位置する当接領域53にカムリング40を当接させて拡径させて、削孔コア11を解放することができる。例えば、遠隔操作を行なう場合にも、カムリング40を解放用部材50に当接させることにより、削孔コア11を取り外すことができる。
【0039】
(6)本実施形態では、解放用部材50は、基板51上に、傾斜部55sを有するガイド部材55が放射線状に立設されている。これにより、削孔コア11の中心軸が貫通孔52の中心軸C1に一致するようにガイドすることができる。
【0040】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態のカムリング40は、開口部40aが形成され、円筒形状の上端部41と下方に従って傾斜した円筒形状の本体部42とを有する。カムリング40は、上端部41と傾斜した本体部42とを有する形状に限られず、外周リング30に挿入されて内周面36の傾斜によって縮径及び拡径できる形状であればよい。例えば、カムリングを螺旋形状で構成してもよいし、下端部にフランジ部を有した形状で構成してもよい。
【0041】
具体的には、
図15~
図17に示すカムリング60は、一部が切り欠いた開口部60aを有した水平断面が円弧形状を有する。カムリング60は、略円筒形状の本体部62と、本体部62の下端部に設けられたフランジ部63とを有する。本体部62は、外周リング30の内周面36の傾斜に応じて、上に従って拡径する外形を有する。フランジ部63は、水平に突出し、外周リング30の下端部の内径d31よりも大きい大きさを有する。更に、このカムリング60の内周面には、カムリング40と同様に、離間した複数の凸部65が設けられている。
【0042】
図18に示すように、このカムリング60を、上記実施形態のカムリング40の代わりに、外周リング30に挿入して用いる。カムリング60は外周リング30の上方に移動して拡径した場合、カムリング60のフランジ部63が外周リング30の先端に掛止する。
そして、
図19に示すように、ケーシング25を上昇させると、外周リング30により、カムリング60が縮径されて削孔コア11を把持する。
【0043】
また、
図20に示すように、解放時には、削孔コア11を、解放用部材50の貫通孔52に挿入する。そして、カムリング60の先端(下端)のフランジ部63を解放用部材50の当接領域53に当接させる。この場合、カムリング60は、外周リング30の上昇により拡径し、削孔コア11を解放する。カムリング60のフランジ部63により、当接領域53への当接が容易である。
また、カムリング60のフランジ部63は、本体部62の下端部の全周に形成した。フランジ部は、全周に形成しなくてもよく、例えば、複数の離間した突出部をカムリングの下端部に設けてもよい。
【0044】
・上記実施形態の解放用部材50は、傾斜部55sを有する同じ形状の8個のガイド部材55を配置した。解放用部材50の形状は、これに限定されない。例えば、ガイド部材は、貫通孔の周囲に放射線状に立設して水平2軸方向に位置調整可能な個数であればよく、3個以上であればよい。
【0045】
更に、ガイド部材の形状は、傾斜部55sを有した形状に限られない。例えば、ガイド部材55において、立上り部55aの貫通孔側の下端部の角を切り欠いた形状でもよいし、立上り部55aをなくし傾斜部55sを有した三角形状でもよい。
【0046】
また、
図21に示すように、解放用部材50における傾斜部55sと立上り部55aとの接続部の角を無くして、中心軸C1側の面を全体的に曲面75sにした複数のガイド部材75を備える解放用部材70としてもよい。
【0047】
また、解放用部材は、把持装置20に把持された円柱状部材を通過させて、カムリングを通過させない形状であれば、どのような形状であってもよい。例えば、解放用部材の貫通孔の形状を変更して、カムリングが当接する当接領域を複数の突出部で構成してもよい。
【0048】
図21に示す解放用部材70のように、円形の孔に対して複数の切欠き部72cを有する貫通孔72が基板71に形成され、複数の突出部73aで当接領域73を形成してもよい。また、貫通孔の内周から中心軸方向に突出する複数の突出部を設けてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、把持装置20は、昇降装置W1に上昇させて移動させた。把持装置20を昇降させる装置は、どのようなものであってもよいし、上下方向に可動するコアドリルの駆動装置を昇降装置として用いてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、把持装置20のケーシング25を、鉄筋コンクリート部材10と削孔コア11との隙間S1に挿入して、鉄筋コンクリート部材10を取り出した。把持装置20が取り出す円柱状部材は、隙間に挿入して取り出す場合に限られない。例えば、把持装置20によって、円柱状部材のみが立設されている状態で、円柱状部材を把持してもよい。更に、水平方向から穿孔して形成された円柱状部材を、水平方向にケーシングを移動させて取り出してもよい。更に、把持する対象の円柱状部材は、カムリング40が縮径した生じる押圧力によって、形状が変化せずに把持できる部材であればよく、例えば、中空が形成された円柱状部材であってもよいし、鉄筋コンクリート以外の材料で構成された部材であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
C1…中心軸、D1…直径、d31,d32,d41,d42,d51…内径、d52…外径、h1,h2…高さ、L2…長さ、S1…隙間、W1…昇降装置、SA1…支持部材、10…鉄筋コンクリート部材、11…削孔コア、20…把持装置、25…ケーシング、25a…掛止部、25t…本体部、30…外周リング、31…接続部、35…収容部、36…内周面、40,60…カムリング、40a,60a…開口部、41…上端部、42,62…本体部、45,65…凸部、50,70…解放用部材、51,71…基板、52,72…貫通孔、53,73…当接領域、55,75…ガイド部材、55a…立上り部、55s…傾斜部、63…フランジ部、72c…切欠き部、73a…突出部、75s…曲面。