(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021800
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】二酸化炭素透過剤、二酸化炭素透過装置、及び二酸化炭素透過方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/02 20060101AFI20230207BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20230207BHJP
B01D 61/24 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/50 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20230207BHJP
B01D 71/74 20060101ALI20230207BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230207BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
B01D69/02
B01D61/00
B01D61/24
B01D71/10
B01D71/26
B01D71/36
B01D71/40
B01D71/48
B01D71/50
B01D71/54
B01D71/74
B01J20/26 A
B01J20/26 C
B01J20/34 H
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126892
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】521234434
【氏名又は名称】環境工学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】反町 健司
【テーマコード(参考)】
4D006
4G066
【Fターム(参考)】
4D006GA13
4D006GA41
4D006KA02
4D006KB30
4D006MA02
4D006MA31
4D006MC11
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC30
4D006MC35
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC53
4D006PA02
4D006PB12
4D006PB17
4D006PB19
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB68
4G066AC02B
4G066AC10B
4G066AC13B
4G066AC15B
4G066AC17B
4G066AC21B
4G066AC23B
4G066AC24B
4G066CA35
4G066DA01
4G066DA02
4G066DA03
4G066DA07
4G066GA01
(57)【要約】
【課題】 新たな、二酸化炭素透過剤を提供する。
【解決手段】 本発明の二酸化炭素透過剤は、高分子製の薄膜を含み、前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過する。前記高分子は、好ましくは、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子製の薄膜を含み、
前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過する、二酸化炭素透過剤。
【請求項2】
前記高分子が、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項3】
前記薄膜が、酸素及び窒素を透過しない、請求項1または2記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項4】
加熱された状態で、前記薄膜が前記二酸化炭素を透過する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項5】
前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体から、二酸化炭素を分離可能である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項6】
二酸化炭素供給部、及び、二酸化炭素透過部を含み、
前記二酸化炭素供給部は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過部に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素透過部が、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過し、
前記二酸化炭素透過部は、請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤を含む、
二酸化炭素透過装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素透過部は、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過する、
請求項6記載の二酸化炭素吸収装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素透過部は、2つの区画を含み、
前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜を介して接続しており、
一方の前記区画には、前記二酸化炭素供給部から前記二酸化炭素含有物質が供給され、
他方の前記区画には、前記薄膜に接するようにして液体が満たされている、
請求項6または7記載の二酸化炭素透過装置。
【請求項9】
前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体であり、
前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離可能である、
請求項8記載の二酸化炭素透過装置。
【請求項10】
二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素透過工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過工程に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素透過工程は、請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過する、
二酸化炭素透過方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素透過工程は、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過する、
請求項10記載の二酸化炭素吸収方法。
【請求項12】
前記二酸化炭素透過工程は、二酸化炭素透過部により、前記二酸化炭素を透過し、
前記二酸化炭素透過部は、前記二酸化炭素透過剤、及び2つの区画を含み、
前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜を介して接続しており、
一方の前記区画には、前記二酸化炭素供給部から前記二酸化炭素含有物質が供給され、
他方の前記区画には、前記薄膜に接するようにして液体が満たされている、
請求項10または11記載の二酸化炭素透過方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体であり、
前記二酸化炭素透過工程において、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離する、
請求項12記載の二酸化炭素透過方法。
【請求項14】
二酸化炭素吸収部を含み、
前記二酸化炭素吸収部は、請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤を含み、
前記二酸化炭素吸収部の内部は、前記二酸化炭素透過剤を介して密封されており、
前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記二酸化炭素吸収部の外部から前記内部に、二酸化炭素が吸収される、
二酸化炭素吸収装置。
【請求項15】
二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素吸収工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収工程に供給し、
前記二酸化炭素吸収工程は、二酸化炭素吸収部により、二酸化炭素を吸収し、
前記二酸化炭素吸収部は、請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤を含み、
前記二酸化炭素吸収部の内部は、前記二酸化炭素透過剤を介して密封されており、
前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記二酸化炭素吸収部の外部から前記内部に、二酸化炭素が吸収される、
二酸化炭素吸収方法。
【請求項16】
高分子を含み、
前記高分子が二酸化炭素を吸収する、二酸化炭素吸収剤。
【請求項17】
前記高分子が、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項16記載の二酸化炭素吸収剤。
【請求項18】
前記高分子が、加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出する、
請求項16または17記載の二酸化炭素吸収剤。
【請求項19】
前記加熱された状態が、50℃以上に加熱された状態である、請求項18記載の二酸化炭素吸収剤。
【請求項20】
二酸化炭素供給部、及び、二酸化炭素吸収部を含み、
前記二酸化炭素供給部は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収部に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素吸収部が、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収し、
前記二酸化炭素吸収部は、請求項16から19のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収剤を含む、
二酸化炭素吸収装置。
【請求項21】
前記二酸化炭素吸収部が、加熱可能であり、
前記二酸化炭素吸収部は、さらに、加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出する、
請求項20記載の二酸化炭素吸収装置。
【請求項22】
二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素吸収工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収工程に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素吸収工程は、請求項16から19のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収する、
二酸化炭素吸収方法。
【請求項23】
さらに、二酸化炭素放出工程を含み、
前記二酸化炭素放出工程は、前記二酸化炭素吸収剤が加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出する、
請求項22記載の二酸化炭素吸収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素透過剤、二酸化炭素透過装置、及び二酸化炭素透過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題への対策として、二酸化炭素を分離及び回収する技術の開発が進められている。二酸化炭素の分離回収手法として、特許文献1には、分子篩の原理に基づく膜透過法により、酸素と窒素から二酸化炭素を得る技術が開示されている。
【0003】
しかし、二酸化炭素を透過及び分離可能な、新たな手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、新たな、二酸化炭素透過剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の二酸化炭素透過剤は、高分子製の薄膜を含み、
前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過する。
【0007】
本発明の二酸化炭素透過装置は、二酸化炭素供給部、及び、二酸化炭素透過部を含み、
前記二酸化炭素供給部は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過部に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素透過部が、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過し、
前記二酸化炭素透過部は、前記本発明の二酸化炭素透過剤を含む。
【0008】
本発明の二酸化炭素透過方法は、二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素透過工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過工程に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素透過工程は、前記本発明の二酸化炭素透過剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、新たな、二酸化炭素透過剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態2の二酸化炭素透過装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態2の二酸化炭素透過装置の別の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態3の二酸化炭素透過方法における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態5の二酸化炭素吸収装置の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態5の二酸化炭素吸収装置の別の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態6の二酸化炭素吸収方法における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、参考例3における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図8】
図8は、参考例3における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図9】
図9は、参考例4における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図10】
図10は、参考例4における、二酸化炭素吸収剤の体積の減少量を示すグラフである。
【
図11】
図11は、参考例5における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例1における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例1における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例2における、ゴム手袋の体積を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例2における、ゴム風船の体積を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例3における、ゴム風船の体積を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例4における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施例4における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図19】
図19は、実施例5における、ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
【
図20】
図20は、実施例5における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図21】
図21は、実施例5における、ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
【
図22】
図4は、参考例1における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図23】
図23は、実施例5における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図24】
図24は、実施例5における、ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
【
図25】
図25は、実施例3における、ゴム風船の体積を示すグラフである。
【
図26】
図26は、実施例3における、ゴム風船の体積を示すグラフである。
【
図27】
図27は、実施例5における、ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
【
図28】
図28は、実施例3における、ゴム風船の体積を示すグラフである。
【
図29】
図29は、実施例4における、ポリエチレン製の袋の体積を示すグラフである。
【
図30】
図30は、実施例4における、ポリエチレン製の袋の体積を示すグラフである。
【
図31】
図31は、実施例6における、ポリウレタン製の袋の体積を示すグラフである。
【
図32】
図32は、実施例6における、ポリウレタン製の袋の体積を示すグラフである。
【
図33】
図33は、実施例6における、ポリエチレン製の袋の体積を示すグラフである。
【
図34】
図34は、実施例4における、ポリエチレン製の袋の体積を示すグラフである。
【
図35】
図35は、参考例1における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【
図36】
図36は、参考例2における、二酸化炭素濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の二酸化炭素透過剤は、例えば、前記高分子が、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、という形態であってもよい。
【0012】
本発明の二酸化炭素透過剤は、例えば、前記薄膜が、酸素及び窒素を透過しない、という形態であってもよい。
【0013】
本発明の二酸化炭素透過剤は、例えば、加熱された状態で、前記薄膜が前記二酸化炭素を透過する、という形態であってもよい。
【0014】
本発明の二酸化炭素透過剤は、例えば、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体から、二酸化炭素を分離可能である、という形態であってもよい。
【0015】
本発明の二酸化炭素透過装置において、例えば、前記二酸化炭素透過部は、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過する、という形態であってもよい。
【0016】
本発明の二酸化炭素透過装置において、例えば、前記二酸化炭素透過部は、2つの区画を含み、前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜を介して接続しており、一方の前記区画には、前記二酸化炭素供給部から前記二酸化炭素含有物質が供給され、他方の前記区画には、前記薄膜に接するようにして液体が満たされている、という形態であってもよい。また、前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体であり、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離可能である、という形態であってもよい。
【0017】
本発明の二酸化炭素透過方法において、例えば、前記二酸化炭素透過工程は、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過する、という形態であってもよい。
【0018】
本発明の二酸化炭素透過方法において、例えば、前記二酸化炭素透過工程は、二酸化炭素透過部により、前記二酸化炭素を透過し、前記二酸化炭素透過部は、前記二酸化炭素透過剤、及び2つの区画を含み、前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜を介して接続しており、一方の前記区画には、前記二酸化炭素供給部から前記二酸化炭素含有物質が供給され、他方の前記区画には、前記薄膜に接するようにして液体が満たされている、という形態であってもよい。また、前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体であり、前記二酸化炭素透過工程において、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離する、という形態であってもよい。
【0019】
本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態には限定されない。なお、以下の各図において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用できる。さらに、各実施形態の構成は、特に言及がない限り、組合せ可能である。本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0020】
[実施形態1]
(二酸化炭素透過剤)
本実施形態の二酸化炭素透過剤は、高分子製の薄膜を含み、前記薄膜が二酸化炭素(CO2)を選択的に透過する。この点以外は、特に制限されない。
【0021】
前記高分子としては、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルがあげられる。前記ゴムは、例えば、ラテックスがあげられる。なお、本明細書において、以下、単にポリエチレンと記載した場合、低密度ポリエチレンのことをいう。前記二酸化炭素透過剤は、1種類の前記高分子を含んでもよいし、複数種類の前記高分子を含んでもよい。
【0022】
本実施形態の二酸化炭素透過剤において、前記高分子の含有量は、特に制限されず、適宜設定できる。
【0023】
前記二酸化炭素透過剤は、例えば、前記高分子以外の成分を含んでもよい。前記高分子以外の成分は、特に制限されない。
【0024】
前記薄膜の厚さは、二酸化炭素を選択的に透過できればよく、特に制限されず、例えば、0.005~0.1 mmであり、具体的には、例えば、0.005 mm、0.03 mm、0.04 mm、0.08 mmがあげられる。なお、例えば、ゴム製の風船および手袋は、膨らませることにより、厚さが0.005~0.1 mmの範囲になる。
【0025】
前記二酸化炭素透過剤は、例えば、二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を透過する。前記二酸化炭素含有物質は、気体、すなわち二酸化炭素含有ガスでもよいし、液体、すなわち二酸化炭素含有溶液であってもよい。前記二酸化炭素含有ガスは、特に制限されず、例えば、燃焼排ガス、室内空気、及び大気等があげられる。前記二酸化炭素含有ガスにおける二酸化炭素の濃度は、特に制限されず、0を超えて100%以下である。前記二酸化炭素含有溶液は、特に制限されず、例えば、炭酸水、二酸化炭素水等があげられる。前記炭酸水は、二酸化炭素は主に炭酸イオンや重炭酸イオンとして存在する。一方、前記二酸化炭素水は、二酸化炭素はイオン化していない状態で存在する。また、例えば、水等の液体中に、前記二酸化炭素含有ガスを通したものでもよい。前記二酸化炭素含有溶液における二酸化炭素の濃度は、特に制限されず、0を超えて0.14 g/dl以下である。
【0026】
前記薄膜は、二酸化炭素を選択的に透過する。「二酸化炭素を選択的に透過する」とは、具体的には、例えば、二酸化炭素を透過し、二酸化炭素以外の物質を透過しない。前記「透過しない」とは、例えば、「殆ど透過しない」場合を含む。前記薄膜が透過しない物質としては、例えば、酸素、及び窒素があげられる。また、「二酸化炭素を選択的に透過する」とは、例えば、二酸化炭素以外の物質の透過速度が、二酸化炭素の透過速度と比較して遅い。前記二酸化炭素の透過速度と比較して遅い物質としては、例えば、水素、及びメタンがあげられる。なお、後述するように、水素、及びメタンは、例えば、前記薄膜の一方の面が気相に接し、他方の面が液相に接している場合、前記気相から前記液相へは、透過しない。また、例えば、前記薄膜の両方の面が液相に接している場合、一方の前記液相から他方の前記液相へは、透過しない。この場合、例えば、前記各液相には、前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素以外の物質(分離する対象となる物質;酸素、窒素、水素、メタン等)の溶解度が異なる液体を、それぞれ用いることができる。
【0027】
前記二酸化炭素透過剤は、例えば、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体から、二酸化炭素を分離可能である。この場合、例えば、後述するように、前記薄膜が、一方の区画に供給された前記混合気体から、他方の区画に満たされた液体(例えば、水、水溶液等)に、二酸化炭素を分離可能である。また、例えば、前記薄膜が、一方の区画に供給された前記液体から、他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離可能である。
【0028】
本実施形態において、「二酸化炭素を透過する」または「二酸化炭素を透過しない」及び「二酸化炭素を殆ど透過しない」とは、既知の手法により判定することができ、例えば、JIS K7126-1(2006年)に準じて測定される二酸化炭素透過度等を用いることができる。また、例えば、後述する実施例に示すように、前記薄膜を袋状にし、この袋に二酸化炭素を入れ、時間経過に伴う前記袋の体積の変化に基づき、二酸化炭素の透過の有無及び速度を調べることができる。なお、例えば、二酸化炭素の以外の物質の透過についても、同様に判定することができる。
【0029】
前記二酸化炭素透過剤と前記二酸化炭素含有物質との接触条件は、特に制限されず、例えば、前記二酸化炭素透過剤を含む容器に前記二酸化炭素含有物質を入れ、室温(例えば、24℃)で、30分、1時間、1.5時間、2時間、5時間、及び6時間静置することにより、接触させることができる。
【0030】
前記二酸化炭素透過剤は、加熱された状態で、前記薄膜が前記二酸化炭素を透過してもよい。前記加熱条件は、特に制限されず、例えば、5~80℃があげられ、具体的には、例えば、50℃である。この場合、前記二酸化炭素透過剤が加熱されてもよいし、前記二酸化炭素が加熱されてもよい。前記加熱により、例えば、前記透過する前記二酸化炭素の量を増やすことができる。
【0031】
本実施形態の二酸化炭素透過剤によれば、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、例えば、前記二酸化炭素含有物質から、二酸化炭素を分離することができる。また、例えば、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜の一方の面が気相に接し、他方の面が液相に接している状態で使用することにより、二酸化炭素を含む混合気体から、前記液相へ、二酸化炭素をより好適に分離することができる。
【0032】
(二酸化炭素吸収剤)
本実施形態の二酸化炭素吸収剤(第1の二酸化炭素吸収剤)は、二酸化炭素吸収部を含み、前記二酸化炭素吸収部は、前記本発明の二酸化炭素透過剤を含み、前記二酸化炭素吸収部の内部は密封されており、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記二酸化炭素吸収部の外部から前記内部に、二酸化炭素が吸収される。
【0033】
前記二酸化炭素吸収部の前記密封された内部には、例えば、外部と比較して、より二酸化炭素濃度が低い気体または液体が充填されている。これらにより、前記薄膜を介して、前記二酸化炭素吸収部の外部から内部へ、二酸化炭素が透過し、前記二酸化炭素吸収部の内部に二酸化炭素が吸収される。
【0034】
本実施形態の二酸化炭素吸収剤の形状は、特に制限されず、例えば、バブルラップ状、袋状、チューブ状等があげられる。
【0035】
前記二酸化炭素吸収部は、例えば、前記二酸化炭素の吸収および放出により、体積が増加および減少する。前記二酸化炭素吸収部は、例えば、前記薄膜が、伸縮性を有する材料により形成される。これにより、前記二酸化炭素の吸収および放出により、前記薄膜が伸縮し、前記二酸化炭素吸収部の体積が変化する。
【0036】
[実施形態2]
(二酸化炭素透過装置)
図1は、本実施形態の二酸化炭素透過装置1の一例を示す模式図である。
図1に示すように、二酸化炭素透過装置1は、二酸化炭素供給部11、及び、二酸化炭素透過部12を含む。二酸化炭素透過装置1に含まれる各構成の大きさ、及び形成材料等は、特に制限されず、適宜設定することができる。本実施形態の二酸化炭素透過装置は、例えば、二酸化炭素分離装置ということもできる。
【0037】
二酸化炭素供給部11は、二酸化炭素含有物質を二酸化炭素透過部12に供給する。前記二酸化炭素含有物質は、実施形態1の前記二酸化炭素含有物質と同様である。
【0038】
二酸化炭素供給部11は、前記二酸化炭素含有物質を二酸化炭素透過部12に供給できればよく、特に制限されない。二酸化炭素供給部11は、例えば、二酸化炭素透過部12内に、前記二酸化炭素含有ガスを供給してもよいし、前記二酸化炭素含有溶液を供給してもよいし、二酸化炭素透過部12内の液体中に、前記二酸化炭素含有ガスを供給してもよい。具体的には、二酸化炭素供給部11は、例えば、パイプ、ホース等でもよいし、通気口でもよいし、バブルフォーマー等のバブル状ガス供給装置でもよい。
【0039】
二酸化炭素透過部12は、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過する。二酸化炭素透過部12は、二酸化炭素透過剤121を含む。二酸化炭素透過剤121は、実施形態1の前記二酸化炭素透過剤である。
【0040】
二酸化炭素透過部12は、
図1に示すように、第1室12A、及び第2室12Bを含み、第1室12Aと第2室12Bとが、二酸化炭素透過剤121を介して接続していてもよい。そして、二酸化炭素供給部11が、第1室12Aに二酸化炭素を供給し、二酸化炭素透過剤121が、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過することにより、第1室12Aから第2室12Bに二酸化炭素が送られる。
【0041】
本実施形態の二酸化炭素透過装置1において、第2室12Bには、気体(例えば、空気等)が含まれていてもよいし、液体相または液体層が含まれてもよいし、両方が含まれてもよい。前記液体層は、例えば、薄膜の表面を覆う構造であり、具体的には、例えば、膜の表面に前記液体を流してもよく、また、前記表面を覆う静置した薄い構造でもよい。前記液体相は、例えば、前記液体層と比較して、より厚みのある構造であり、具体的には、例えば、前記区画(第2室12B)に前記液体を満たす場合があげられる。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、水溶液等である。前記液体は、例えば、二酸化炭素の溶解度と比較して、前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素以外の物質(分離する対象となる物質;酸素、窒素、水素、メタン等)の溶解度がより低い液体とすることができる。第2室12Bに、液体が含まれている場合も、例えば、前記二酸化炭素の透過を妨げることなく、十分に透過することができる。
【0042】
このように、本実施形態の二酸化炭素透過装置1は、2つの区画(第1室12A及び第2室12B)を含み、前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤(二酸化炭素透過剤121)の前記薄膜を介して接続しており、一方の前記区画(第1室12A)には、前記二酸化炭素供給部(二酸化炭素供給部11)から前記二酸化炭素含有物質が供給され、他方の前記区画(第2室12B)には、前記薄膜に接するようにして前記液体が満たされている(前記液体相を形成している)、または、前記液体が層状である(前記液体層を形成している)、という態様であってもよい。
【0043】
第2室12Bに液体が含まれることにより、例えば、前記二酸化炭素含有物質が二酸化炭素及び水素を含む場合に、二酸化炭素を分離しやすくすることができる。具体的には、例えば、二酸化炭素供給部11が、第1室12Aに、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む前記二酸化炭素含有物質を供給すると、二酸化炭素透過剤121が、前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を透過する一方、前記液体の存在により、水素やメタンガスの透過が阻害される。これにより、第1室12Aから第2室12Bに、水素やメタンガスが分離除去された二酸化炭素を送ることができる。なお、後述する実施例5に示すように、セルロース製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素やメタンガスとの混合気体について、各気体を分離可能である。
【0044】
このように、本実施形態の二酸化炭素透過装置1は、前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体である場合に、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離可能である。
【0045】
本実施形態の二酸化炭素透過装置1は、例えば、さらに、二酸化炭素放出部を含み、前記二酸化炭素放出部により、二酸化炭素透過部12が透過した二酸化炭素を放出してもよい。前記二酸化炭素放出部は、例えば、パイプ、ホース等でもよいし、通気口でもよい。前記二酸化炭素放出部は、例えば、第2室12Bに設けられる。
【0046】
二酸化炭素透過部12は、例えば、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過してもよい。この場合、
図2に示すように、加熱部2により、二酸化炭素透過部12が加熱されてもよい。加熱部2は、二酸化炭素透過装置1に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。加熱部2は、二酸化炭素透過部12を加熱できればよく、特に制限されず、一般的な加熱装置を用いることができる。加熱部2は、例えば、温水の還流による加熱装置でもよい。なお、これには制限されず、例えば、二酸化炭素供給部11から供給される前記二酸化炭素含有物質が、加熱された状態であってもよい。前記加熱および前記二酸化炭素の放出の条件等は、実施形態1の記載を参照することができる。
【0047】
[実施形態3]
(二酸化炭素透過方法)
本実施形態の二酸化炭素透過方法は、二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素透過工程を含む。前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過工程に供給する。前記二酸化炭素透過工程は、前記二酸化炭素透過剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過する。本実施形態の二酸化炭素透過方法において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本実施形態の二酸化炭素透過方法は、例えば、二酸化炭素分離方法ということもできる。
【0048】
本実施形態の二酸化炭素透過方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、前記二酸化炭素透過方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態の二酸化炭素透過方法は、例えば、
図1の二酸化炭素透過装置1を用いて、次のように実施できる。なお、本実施形態の二酸化炭素透過方法は、
図1の二酸化炭素透過装置1の使用には限定されない。
図3のフローチャートは、各工程の処理の順番の一例であり、本発明はこの順番に限定されず、各工程は、二酸化炭素の透過反応を行うことができる範囲で、同時に行ってもよいし、前後させてもよい。
【0049】
二酸化炭素供給工程(S101)は、二酸化炭素供給部11により、二酸化炭素含有物質を二酸化炭素透過工程(S102)に供給する。前記二酸化炭素含有物質は、実施形態1の前記二酸化炭素含有物質と同様である。
【0050】
つぎに、二酸化炭素透過工程(S102)は、二酸化炭素透過部12の二酸化炭素透過剤121により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過し、終了する(END)。二酸化炭素透過工程(S102)において、例えば、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過してもよい。
【0051】
(二酸化炭素吸収方法)
本実施形態の二酸化炭素吸収方法(第1の二酸化炭素吸収方法)は、二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素吸収工程を含む。前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収工程に供給する。前記二酸化炭素吸収工程は、前記二酸化炭素吸収剤(第1の二酸化炭素吸収剤)により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記二酸化炭素吸収部において二酸化炭素を吸収する。本実施形態の二酸化炭素吸収方法において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。
【0052】
[実施形態4]
(二酸化炭素吸収剤)
近年、地球温暖化問題への対策として、二酸化炭素を分離及び回収する技術の開発が進められている。二酸化炭素の分離回収法として、特許文献2には、アミンを含むアミン溶液に二酸化炭素を吸収させる技術が開示されている。
特許文献2:特開2021-095357号公報
【0053】
しかし、二酸化炭素を分離及び回収可能な、新たな手法が求められている。
【0054】
前記目的を達成するために、本発明の二酸化炭素吸収剤(第2の二酸化炭素吸収剤)は、高分子を含み、
前記高分子が二酸化炭素を吸収する。
【0055】
本発明は、新たな、二酸化炭素吸収剤を提供することができる。
【0056】
本発明の二酸化炭素吸収剤は、例えば、前記高分子が、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、という形態であってもよい。
【0057】
本発明の二酸化炭素吸収剤は、例えば、前記高分子が、加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出する、という形態であってもよい。本発明の二酸化炭素吸収剤は、例えば、前記加熱された状態が、50℃以上に加熱された状態である、という形態であってもよい。
【0058】
本実施形態の二酸化炭素吸収剤は、高分子を含み、前記高分子が二酸化炭素(CO2)を吸収する。この点以外は、特に制限されない。
【0059】
前記高分子としては、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルがあげられる。前記ゴムは、例えば、ラテックスがあげられる。前記二酸化炭素吸収剤は、1種類の前記高分子を含んでもよいし、複数種類の前記高分子を含んでもよい。
【0060】
本実施形態の二酸化炭素吸収剤において、前記高分子の含有量は、特に制限されず、適宜設定できる。
【0061】
前記二酸化炭素吸収剤は、例えば、前記高分子以外の成分を含んでもよい。前記高分子以外の成分は、特に制限されない。
【0062】
前記二酸化炭素吸収剤の形状は、特に制限されず、例えば、容器の形状でもよいし、シート状、メッシュ状、バブルラップ状、ビーズ状等でもよい。前記二酸化炭素吸収剤の大きさは、二酸化炭素を吸収できればよく、特に制限されない。
【0063】
前記二酸化炭素吸収剤は、例えば、二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収する。前記二酸化炭素含有物質は、気体、すなわち二酸化炭素含有ガスでもよいし、液体、すなわち二酸化炭素含有溶液であってもよい。前記二酸化炭素含有ガスは、特に制限されず、例えば、燃焼排ガス、室内空気、及び大気等があげられる。前記二酸化炭素含有ガスにおける二酸化炭素の濃度は、特に制限されず、0を超えて100%以下である。前記二酸化炭素含有溶液は、特に制限されず、例えば、炭酸水、二酸化炭素水等があげられる。前記炭酸水は、二酸化炭素は主に炭酸イオンや重炭酸イオンとして存在する。一方、前記二酸化炭素水は、二酸化炭素はイオン化していない状態で存在する。また、例えば、水等の液体中に、前記二酸化炭素含有ガスを通したものでもよい。前記二酸化炭素含有溶液における二酸化炭素の濃度は、特に制限されず、0を超えて0.14 g/dl%以下である。
【0064】
前記二酸化炭素吸収剤と前記二酸化炭素含有物質との接触条件は、特に制限されず、例えば、前記二酸化炭素吸収剤を含む容器に前記二酸化炭素含有物質を入れ、室温(例えば、20℃)で5時間静置することにより、接触させることができる。
【0065】
前記二酸化炭素吸収剤と前記二酸化炭素含有物質との接触を行う温度は、例えば、室温でもよいし、前記二酸化炭素吸収剤を冷却してもよい。
【0066】
前記二酸化炭素吸収剤は、例えば、前記二酸化炭素の吸収により、体積が増加する。
【0067】
また、本実施形態の二酸化炭素吸収剤は、前記吸収した前記二酸化炭素を放出してもよい。
【0068】
具体的には、例えば、前記二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収剤を、より低濃度の二酸化炭素を含む気体または液体と接触させることにより、前記吸収した前記二酸化炭素を放出させることができる。
【0069】
前記放出は、例えば、前記高分子が、加熱された状態で行うことができる。前記加熱された状態における温度は、例えば、5~80℃があげられ、具体的には、例えば、20℃以上、50℃以上である。前記加熱された状態における温度は、例えば、前記二酸化炭素を吸収する際の温度と比較して、より高い温度でもよい。
【0070】
例えば、前記二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収剤を含む容器を、50℃で5時間静置することにより、前記吸収した二酸化炭素を放出させることができる。
【0071】
[実施形態5]
(二酸化炭素吸収装置)
本発明の二酸化炭素吸収装置は、二酸化炭素供給部、及び、二酸化炭素吸収部を含み、
前記二酸化炭素供給部は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収部に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素吸収部が、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収し、
前記二酸化炭素吸収部は、前記本発明の二酸化炭素吸収剤を含む。
【0072】
本発明の二酸化炭素吸収装置は、例えば、前記二酸化炭素吸収部が、加熱可能であり、前記二酸化炭素吸収部は、さらに、加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出する、という形態であってもよい。
【0073】
図4は、本実施形態の二酸化炭素吸収装置3の一例を示す模式図である。
図4(A)および(B)に示すように、二酸化炭素吸収装置3は、二酸化炭素供給部31、及び、二酸化炭素吸収部32を含む。二酸化炭素吸収装置3に含まれる各構成の大きさ、及び形成材料等は、特に制限されず、適宜設定することができる。
【0074】
二酸化炭素供給部31は、二酸化炭素含有物質を二酸化炭素吸収部32に供給する。前記二酸化炭素含有物質は、実施形態4の前記二酸化炭素含有物質と同様である。
【0075】
二酸化炭素供給部31は、前記二酸化炭素含有物質を二酸化炭素吸収部32に供給できればよく、特に制限されない。二酸化炭素供給部31は、例えば、二酸化炭素吸収部32内に、前記二酸化炭素含有ガスを供給してもよいし、前記二酸化炭素含有溶液を供給してもよいし、二酸化炭素吸収部32内の液体中に、前記二酸化炭素含有ガスを供給してもよい。具体的には、二酸化炭素供給部31は、例えば、パイプ、ホース等でもよいし、通気口でもよいし、バブルフォーマー等のバブル状ガス供給装置でもよい。
【0076】
二酸化炭素吸収部32は、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素吸収部32は、二酸化炭素吸収剤321を含む。二酸化炭素吸収剤321は、実施形態4の前記二酸化炭素吸収剤である。
【0077】
二酸化炭素吸収部32は、例えば、
図4(A)に示すように、容器の形状の二酸化炭素吸収剤321そのものでもよいし、
図4(B)に示すように、シート状等の形状の二酸化炭素吸収剤321を含む容器でもよい。
【0078】
本実施形態の二酸化炭素吸収装置3は、
図4(A)および(B)に示すように、さらに、二酸化炭素放出部33を含む。二酸化炭素放出部33は、二酸化炭素放出部33により、例えば、二酸化炭素吸収部32が吸収した二酸化炭素を放出することができる。具体的には、二酸化炭素放出部33は、例えば、パイプ、ホース等でもよいし、通気口でもよい。二酸化炭素放出部33は、例えば、二酸化炭素供給部31と共通の構造でもよい。
【0079】
二酸化炭素吸収部32は、例えば、加熱可能でもよい。この場合、
図5(A)および(B)に示すように、加熱部4により、二酸化炭素吸収部32が加熱される。加熱部4は、二酸化炭素吸収装置3に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。加熱部4は、二酸化炭素吸収部32を加熱できればよく、特に制限されず、一般的な加熱装置を用いることができる。加熱部4は、例えば、温水の還流による加熱装置でもよい。前記加熱および前記二酸化炭素の放出の条件等は、実施形態4の記載を参照することができる。そして、二酸化炭素吸収部32は、加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出することができる。
【0080】
[実施形態6]
(二酸化炭素吸収方法)
本発明の二酸化炭素吸収方法(第2の二酸化炭素吸収方法)は、二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素吸収工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収工程に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素吸収工程は、前記本発明の二酸化炭素吸収剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収する。
【0081】
本発明の二酸化炭素吸収方法は、例えば、さらに、二酸化炭素放出工程を含み、前記二酸化炭素放出工程は、前記二酸化炭素吸収剤が加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出する、という形態であってもよい。
【0082】
本実施形態の二酸化炭素吸収方法は、二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素吸収工程を含む。前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収工程に供給する。前記二酸化炭素吸収工程は、前記二酸化炭素吸収剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収する。本実施形態の二酸化炭素吸収方法において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。
【0083】
本実施形態の二酸化炭素吸収方法について、
図6(A)を用いて説明する。
図6(A)は、前記二酸化炭素吸収方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態の二酸化炭素吸収方法は、例えば、
図4の二酸化炭素吸収装置3を用いて、次のように実施できる。なお、本実施形態の二酸化炭素吸収方法は、
図4の二酸化炭素吸収装置3の使用には限定されない。
図6(A)のフローチャートは、各工程の処理の順番の一例であり、本発明はこの順番に限定されず、各工程は、二酸化炭素の吸収反応を行うことができる範囲で、同時に行ってもよいし、前後させてもよい。
【0084】
二酸化炭素供給工程(S201)は、二酸化炭素供給部31により、二酸化炭素含有物質を二酸化炭素吸収工程(S202)に供給する。前記二酸化炭素含有物質は、実施形態4の前記二酸化炭素含有物質と同様である。
【0085】
つぎに、二酸化炭素吸収工程(S202)は、二酸化炭素吸収部32の二酸化炭素吸収剤321により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を吸収し、終了する(END)。
【0086】
本実施形態の二酸化炭素吸収方法は、
図6(B)に示すように、さらに、二酸化炭素放出工程(S203)を含んでもよい。
【0087】
二酸化炭素放出工程(S203)は、二酸化炭素放出部33により、二酸化炭素吸収剤321が加熱された状態で、前記吸収した前記二酸化炭素を放出し、終了する(END)。二酸化炭素放出工程(S203)において、例えば、加熱部2により、二酸化炭素吸収部12が加熱されてもよい。
【0088】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0089】
[実施例1]
高分子が、二酸化炭素を透過させることを確認した。
【0090】
約150mlの100%の二酸化炭素を、ポリエチレン(低密度ポリエチレン)製の袋(厚さ0.03 mm、および0.08 mm、市販のもの)に入れた。450 mlの広口ガラス瓶に、前記袋を挿入し、蓋をして密封した。これを、室温(24℃)で30分、1時間、1.5時間、2時間、及び5時間静置した。前記静置後、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分における気体について、二酸化炭素検出器(XP-3140、COSMO社製)(低濃度用)、及び(CX-6000、RIKEN KEIKI社製)(高濃度用)を用いて、二酸化炭素濃度を測定した。
【0091】
この結果を、
図12に示す。
図12は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図12において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、30分、1時間、1.5時間、2時間、及び5時間を示す。白抜きのグラフは、前記袋の厚さ0.08mmの結果を示し、黒のグラフは、前記袋の厚さ0.03mmの結果を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0092】
図12に示すように、前記袋の厚さが0.03mmの場合、二酸化炭素濃度は30分後に6.8%に達し、5時間後には11.3%にまで達した。また、前記袋の厚さがより厚い0.08mmの場合、二酸化炭素濃度は30分後では低く0.75%であったが、静置時間の増加に伴い上昇し、5時間後では11.3%であった。
【0093】
この結果から、二酸化炭素が前記ポリエチレン製の袋を透過すること、及び前記通過は前記ポリエチレン製の袋の厚さに関係することが分かった。
【0094】
つぎに、実験条件を50℃とした以外は同様にして、静置時間30分、前記ポリエチレン製の袋の厚さ0.08mmの条件で、実験を行った。
【0095】
この結果を、
図13に示す。
図13は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図13において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、24℃、及び50℃を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計5サンプルの測定値の平均値とした。
【0096】
図13に示すように、温度が50℃の場合、二酸化炭素濃度は30分後に6.5%に達し、温度が24℃の場合の結果と比較して、大きく上昇した。なお、温度が50℃の場合の前記結果は、24℃の条件で、0.03mmの前記ポリエチレン製の袋を使用した場合の結果と同程度であった。
【0097】
この結果から、二酸化炭素の前記ポリエチレン製の袋の透過は、温度依存性であることが分かった。
【0098】
以上のように、高分子が、二酸化炭素を透過させることを確認できた。
【0099】
[実施例2]
ゴムが、二酸化炭素を透過させることを確認した。
【0100】
150mlの100%の二酸化炭素を、ゴム(Latex)製の手袋(市販のもの)に圧をかけて注入した。前記手袋を密封し、室温で2時間、及び6時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記手袋の体積を測定した。前記体積の測定は、容器に水を満たし、前記手袋を前記水に沈めることにより排除された水量を測定し、前記手袋の体積とした。そして、前記密封直後の体積を1として、前記静置後の前記手袋の体積の割合を相対値として算出した。
【0101】
この結果を、
図14に示す。
図14は、前記手袋の体積を示すグラフである。
図14において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記密封直後、2時間、及び6時間後を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0102】
図14に示すように、時間の経過とともに二酸化炭素で膨張した前記手袋の体積が減少した。なお、前記密封直後の前記手袋の体積は、600~700mlであった。この結果から、時間経過とともに、二酸化炭素が前記ゴム(Latex)の手袋を透過することが分かった。
【0103】
つぎに、ゴム製の風船(市販のもの)を用いた以外は同様にして、実験を行った。
【0104】
この結果を、
図15に示す。
図15は、前記風船の体積を示すグラフである。
図15において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記密封直後、1時間、2時間、及び5時間後を示す。なお、前記体積の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。
【0105】
図15に示すように、時間の経過とともに二酸化炭素で膨張した前記風船の体積が減少した。この結果から、時間経過とともに、二酸化炭素が前記ゴムの風船を透過することが分かった。
【0106】
以上のように、ゴムが、二酸化炭素を透過させることを確認できた。
【0107】
[実施例3]
ゴムが、二酸化炭素を選択的に透過させることを確認した。また、ゴム製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認した。
【0108】
ゴム製の風船(市販のもの)を、ヒトの呼気により、中程度まで膨張させた。前記風船を密封し、80%の二酸化炭素を充満させた容積4lのガラス瓶内に入れ、5時間静置した。その後、さらに、前記風船を前記ガラス瓶から取り出し、室内に4時間静置した。前記膨張直後、前記二酸化炭素下での静置後、及び前記室内での静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記風船の体積を算出した。
【0109】
この結果を、
図16に示す。
図16は、前記風船の体積を示すグラフである。
図16において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記膨張直後、前記二酸化炭素下での静置後、及び前記室内での静置後を示す。なお、前記体積の値は、合計5サンプルの測定値の平均値とした。
【0110】
図16に示すように、中程度まで膨張させた前記風船を、高濃度の前記二酸化炭素下で静置することにより、5時間静置後、前記風船が膨張し、約1.8倍の体積になった。その後、前記室内での4時間静置後、前記風船の体積は減少し、前記膨張直後の体積と同程度になった。なお、前記室内での静置後、さらに前記風船を室内に放置しても、さらなる体積の減少は起こらなかった。この結果から、前記ゴム製の風船が二酸化炭素を選択的に透過させ、二酸化炭素以外の物質(例えば、酸素や窒素)を通過させないことが示された。
【0111】
つぎに、前記ゴム製の風船を用いて、液体への二酸化炭素の透過を確認した。
【0112】
200~450mlの100%の二酸化炭素を、実施例2と同様にして、ゴム製の風船に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記風船を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記風船との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で4時間、8時間、及び21時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記風船の体積を算出した。
【0113】
この結果を、
図25に示す。
図25は、前記風船の体積を示すグラフである。
図25において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、4時間、8時間、及び21時間を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0114】
図25に示すように、4時間の前記静置後には60%の二酸化炭素が放出され、8時間後には75%の二酸化炭素が放出された。そして、21時間後には、ほぼ完全に前記風船内の二酸化炭素が放出された。このように、前記ゴム製の風船を用いて、液体への二酸化炭素の透過を確認できた。
【0115】
つぎに、前記ゴム製の風船を用いて、前記風船が水素を透過すること、及び、水素の透過速度が二酸化炭素の透過速度よりも遅いことを確認した。
【0116】
100%の水素を、同様にして、ゴム製の風船に注入した。前記風船を密封し、室温で5時間、及び10時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記風船の体積を測定した。
【0117】
この結果を、
図26に示す。
図26は、前記風船の体積を示すグラフである。
図26において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記5時間、及び10時間を示す。なお、前記体積の値は、1サンプルの測定値を示す。
【0118】
図26に示すように、5時間静置後において、前記密封直後と比較して、前記風船の体積は有意に減少し、前記体積の相対値は、0.71であった。また、10時間静置後において、さらに減少し、前記体積の相対値は、0.44であった。このことから、前記ゴム製の風船は、水素を透過することがわかった。なお、前述のように、二酸化炭素を用いた場合、4時間静置後において、前記体積の相対値は、0.42であった。このことから、二酸化炭素の透過速度は、水素の透過速度と比較してより早いことがわかった。以上から、二酸化炭素が前記風船を選択的に透過可能であることが示された。
【0119】
つぎに、前記ゴム製の風船を用いて、前記風船がメタンを透過すること、及び、メタンの透過速度が二酸化炭素の透過速度よりも遅いことを確認した。
【0120】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、ゴム製の風船に注入した。前記風船を密封し、室温で5時間、10時間、及び15時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記風船の体積を測定した。
【0121】
この結果を、
図28に示す。
図28は、前記風船の体積を示すグラフである。
図28において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記5時間、10時間、及び15時間を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0122】
この結果、5時間静置後において、前記密封直後と比較して、前記風船の体積はやや減少し、前記体積の相対値は、0.91であった。また、10時間静置後において、さらにやや減少し、前記体積の相対値は、0.79であった。また、15時間静置後において、さらにやや減少し、前記体積の相対値は、0.66であった。このことから、前記ゴム製の風船は、メタンを透過することがわかった。なお、前述のように、二酸化炭素を用いた場合、4時間静置後において、前記体積の相対値は、0.42であった。このことから、二酸化炭素の透過速度は、メタンの透過速度と比較してより早いことがわかった。以上から、二酸化炭素が前記風船を選択的に透過可能であることが示された。
【0123】
つぎに、前記ゴム製の風船を用いて、気相から液相へ水素が透過しないことを確認した。
【0124】
100%の水素を、同様にして、ゴム製の風船に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記風船を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記風船との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記風船の体積を算出した。
【0125】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記ゴム製の風船において、気相から液相へ水素が透過しないことが確認できた。
【0126】
つぎに、前記ゴム製の風船を用いて、気相から液相へメタンが透過しないことを確認した。
【0127】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、ゴム製の風船に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記風船を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記風船との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記風船の体積を算出した。
【0128】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記ゴム製の風船において、気相から液相へメタンが透過しないことが確認できた。
【0129】
以上のように、ゴムが、二酸化炭素を選択的に透過させることを確認できた。また、ゴム製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認できた。
【0130】
[実施例4]
ポリエチレンが、液体中の二酸化炭素を透過させることを確認した。また、ポリエチレン製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認した。
【0131】
まず、二酸化炭素が前記ポリエチレン製の袋を透過することについて、前記ポリエチレン製の袋の体積を測定することにより、確認した。
【0132】
ポリエチレン製の袋(厚さ0.04mm、市販のもの)を、ヒトの呼気により、中程度まで膨張させた。前記袋を密封し、80%の二酸化炭素を充満させた容積4lのガラス瓶内に入れ、5時間静置した。その後、さらに、前記袋を前記ガラス瓶から取り出し、室内に4、及び9時間静置した。前記膨張直後、前記二酸化炭素下での静置後、及び前記室内での静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記袋の体積を算出した。
【0133】
この結果を、
図34に示す。
図34は、前記袋の体積を示すグラフである。
図34において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記膨張直後、前記二酸化炭素下での静置後、及び前記室内での4、及び9時間の静置後を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0134】
図34に示すように、中程度まで膨張させた前記袋を、高濃度の前記二酸化炭素下で静置することにより、5時間静置後、前記袋が膨張し、約1.5倍の体積になった。その後、前記室内での4時間静置後、前記袋の体積は減少し、前記室内での2時間静置後には、前記膨張直後の体積の約1.2倍になった。また、前記室内での9時間静置後には、前記膨張直後の体積と同程度になった。この結果から、前記ポリウレタン製の袋が二酸化炭素を選択的に透過させ、二酸化炭素以外の物質(例えば、酸素や窒素)を通過させないことが示された。
【0135】
つぎに、ポリエチレンが、液体中の二酸化炭素を透過させることを確認した。
【0136】
150mlの二酸化炭素水(市販のもの)を、ポリエチレン製の袋(厚さ0.04mm、市販のもの。以下、ポリエチレン製の袋をポリ袋ともいう)に入れた。450mlの広口ガラス瓶に、前記袋を挿入し、蓋をして密封した。これを、室温で10分、30分、1時間、2時間、及び3時間静置した。前記静置後、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分における気体について、二酸化炭素濃度を測定した。
【0137】
この結果を、
図17に示す。
図17は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図17において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、10分、30分、1時間、2時間、及び3時間を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0138】
図17に示すように、ほぼ時間経過とともに、二酸化炭素濃度が上昇した。なお、前記袋からの水(液体)の放出は見られなかった。このことから、液体である前記二酸化炭素水中からも、二酸化炭素が前記袋を透過して、前記ガラス瓶内の空間に放出されたことが分かる。
【0139】
つぎに、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分を気体とすることに代えて、液体とした以外は同様にして、実験を行った。150mlの前記二酸化炭素水を、前記ポリエチレン製の袋(厚さ0.04mm)に入れた。450mlの広口ガラス瓶に、前記袋を挿入し、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間に容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で14時間静置した。前記静置後、前記袋内の前記強炭酸水(内液)、及び、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分における液体(外液)について、二酸化炭素濃度を算出した。前記二酸化炭素濃度の算出は、1.8 mlの前記各液体を試験管に入れ、前記試験管に0.2mlの濃度1NのNaOH水溶液と2mlの濃度0.1mol/lのCaCl2水溶液と含む混合液を添加し、前記添加により形成された沈殿を秤量することにより、間接的に算出した。
【0140】
この結果を、
図18に示す。
図18は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図18において、縦軸は、前記沈殿の重さ(g/tube)を示し、横軸は、左から、外液、及び内液を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計5サンプルの測定値の平均値とした。
【0141】
図18に示すように、前記袋内の前記二酸化炭素水(内液)のみでなく、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分における液体(外液)においても、高い二酸化炭素濃度が検出された。この結果から、二酸化炭素が、前記袋を介在して、液体間で移動したことが示された。
【0142】
つぎに、前記ポリエチレン製の袋を用いて、前記袋が水素を透過することを確認した。
【0143】
100%の水素を、同様にして、前記ポリエチレン製の袋に注入した。前記袋を密封し、室温で5時間、及び10時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記袋の体積を測定した。
【0144】
この結果を、
図29に示す。
図29は、前記袋の体積を示すグラフである。
図29において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記5時間、及び10時間を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0145】
図29に示すように、5時間静置後において、前記密封直後と比較して、前記袋の体積は有意に減少し、前記体積の相対値は、0.7であった。また、10時間静置後において、さらに減少し、前記体積の相対値は、0.36であった。このことから、前記ポリエチレン製の袋は、水素を透過することがわかった。なお、前述のように、前記ポリエチレン製の袋の外側から二酸化炭素を吸収させた場合、5時間静置後において、前記体積の相対値は、1.5倍になり、透過速度が速いことが確認できた。このことから、二酸化炭素の透過速度は、水素の透過速度と比較してより早いと考えられる。以上から、二酸化炭素が前記膜を選択的に透過可能であることが示された。
【0146】
つぎに、前記ポリエチレン製の袋を用いて、前記袋がメタンをわずかに透過することを確認した。
【0147】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、前記ポリエチレン製の袋に注入した。前記袋を密封し、室温で5時間、10時間、及び15時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記袋の体積を測定した。
【0148】
この結果を、
図30に示す。
図30は、前記袋の体積を示すグラフである。
図30において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記5時間、10時間、及び15時間を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0149】
この結果、5時間静置後において、前記密封直後と比較して、前記袋の体積は変化せず、前記体積の相対値は、1.0であった。また、10時間静置後においても、前記体積の相対値は、0.99であった。また、15時間静置後において、やや減少し、前記体積の相対値は、0.83であった。このことから、前記ポリエチレン製の袋は、メタンをわずかに透過することがわかった。なお、前述のように、前記ポリエチレン製の袋の外側から二酸化炭素を吸収させた場合、5時間静置後において、前記体積の相対値は、1.5倍になり、透過速度が速いことが確認できた。このことから、二酸化炭素の透過速度は、メタンの透過速度と比較してより早いと考えられる。以上から、二酸化炭素が前記膜を選択的に透過可能であることが示された。
【0150】
つぎに、前記ポリエチレン製の袋を用いて、気相から液相へ水素が透過しないことを確認した。
【0151】
100%の水素を、同様にして、前記ポリエチレン製の袋に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記袋を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。また、同様にして水を入れた後、蓋をせずに、前記袋が水中に沈んだ状態にした。これらを、それぞれ、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記袋の体積を算出した。
【0152】
この結果、前記蓋をした場合、及び前記蓋をしなかった場合のいずれも、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記ポリエチレン製の袋において、気相から液相へ水素が透過しないことが確認できた。
【0153】
つぎに、前記ポリエチレン製の袋を用いて、気相から液相へメタンが透過しないことを確認した。
【0154】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、前記ポリエチレン製の袋に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記袋を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記袋の体積を算出した。
【0155】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記ポリエチレン製の袋において、気相から液相へメタンが透過しないことが確認できた。
【0156】
以上のように、ポリエチレンが、液体中の二酸化炭素を透過させることを確認できた。また、ポリエチレン製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認できた。
【0157】
[実施例5]
セルロース製の膜を用いて、二酸化炭素を選択的に透過させることを確認した。また、セルロース製の膜が、水素及びメタンを透過させること、及び、セルロース製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認した。
【0158】
60mlの100%の二酸化炭素を、両端を閉めたヴィスキングチューブ(visking tube、セルロース透析膜)(三光純薬社製)に満たした。前記ヴィスキングチューブを密封し、室温で10分、20分、及び30分間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記ヴィスキングチューブの体積を算出した。
【0159】
この結果を、
図19に示す。
図19は、前記ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
図19において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記密封直後(0)、30分、及び60分を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0160】
図19に示すように、30分間の前記静置後、体積が約25%まで減少し、60分間の前記静置後には、数%まで減少した。このことから、前記ヴィスキングチューブによる二酸化炭素の放出は極めて速いことが示された。
【0161】
つぎに、前記ヴィスキングチューブから放出される二酸化炭素の濃度を測定した。60 mlの100%の二酸化炭素を、両端を閉めた前記ヴィスキングチューブに満たした。前記ヴィスキングチューブを密封し、容量450 mlのガラス瓶に入れ、室温で10分、及び20分間静置した。前記静置後、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間の部分における気体について、二酸化炭素濃度を測定した。
【0162】
この結果を、
図20に示す。
図20は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図20において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、密封直後(0)、10分、及び20分を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0163】
図20に示すように、10分間の静置後、前記ガラス瓶内の二酸化炭素濃度は高くなり、20分間後にはさらに上昇した。
【0164】
つぎに、前記ヴィスキングチューブが外側から内側の方向においても二酸化炭素を透過させることを確認した。30 mlの空気を前記ヴィスキングチューブに入れ密封し、容積4Lのガラス瓶に前記ヴィスキングチューブを入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間の部分に、80%の二酸化炭素を満たした。これを、室温で、1時間静置した(1h吸収)。その後、1時間、及び2時間、室内で静置した(1h放出、及び2h放出)。前記静置後、前記ヴィスキングチューブの体積を測定した。
【0165】
この結果を、
図21に示す。
図21は、前記密封したヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
図21において、縦軸は、前記密封直後に対する前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、1時間静置後(1h吸収)、並びに1時間、及び2時間の室内静置後(1h放出、及び2h放出)を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0166】
図21に示すように、前記ヴィスキングチューブの体積は、1時間の前記静置後(1h吸収)において、前記密封直後に対し、約2.3倍になった。なお、前記ヴィスキングチューブを室内に静置したところ、体積は急激に減少し、1時間後(1h放出)には元の体積に戻った。また、さらに放置しても(2h放出)、体積のさらなる減少は見られなかつた。このことから、前記ヴィスキングチューブが、二酸化炭素を選択的に通過(吸収及び放出)させることが示された。
【0167】
つぎに、液体間の二酸化炭素が前記ヴィスキングチューブを透過することを確認した。60mlの前記二酸化炭素水を、前記ヴィスキングチューブに入れた。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記ヴィスキングチューブを挿入し、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間に容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で5時間静置した。前記静置後、前記ヴィスキングチューブ内の前記強炭酸水(内液)、及び、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間の部分における液体(外液)について、二酸化炭素濃度を算出した。前記二酸化炭素濃度の算出は、1.8 mlの前記各液体を試験管に入れ、前記試験管に0.2 mlの濃度1NのNaOH水溶液と2 mlの濃度0.1mol/lのCaCl2水溶液と含む混合液を添加し、前記添加により形成された沈殿を秤量することにより、間接的に算出した。
【0168】
この結果を、
図23に示す。
図23は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図23において、縦軸は、前記沈殿の重さ(g/tube)を示し、横軸は、左から、外液(Outside)、及び内液(Inside)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0169】
図23に示すように、前記ヴィスキングチューブ内の前記強炭酸水(内液)のみでなく、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間の部分における液体(外液)においても、高い二酸化炭素濃度が検出された。この結果から、二酸化炭素が、前記ヴィスキングチューブを介在して、液体間で移動したことが示された。
【0170】
つぎに、前記ヴィスキングチューブを用いて、水素の透過速度が二酸化炭素の透過速度よりも遅いことを確認した。
【0171】
34~50mlの100%の水素を、前記ヴィスキングチューブに入れて密封した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記ヴィスキングチューブを挿入し、蓋をしてさらに密封した。これを、室温で4、8、及び12時間静置した。また、同様にして、室温で5、及び10時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記ヴィスキングチューブの体積を算出した。
【0172】
この結果を、
図24(A)及び(B)に示す。
図24及び(B)は、前記ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
図24(A)において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、4、8、及び12時間を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
図24(B)において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、5、及び10時間を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0173】
図24(A)に示すように、4時間の前記静置後、体積が約60%まで減少した。また、8時間及び12時間の前記静置後には、それぞれ、40%及び32%まで減少した。
図24(B)の結果も同様であった。前述のように、二酸化炭素を用いて同様の実験を行った場合、30分間の前記静置後、体積が約25%まで減少した。このことから、前記ヴィスキングチューブによる水素の放出は、二酸化炭素の放出と比較して、遅いことが示された。
【0174】
ここで、水素は、分子の大きさが小さいことから、分子篩の観点からは、膜透過をしやすいといえる。これにも関わらず、前記結果から、二酸化炭素の透過速度は、水素の透過速度と比較してより早いことがわかった。以上から、二酸化炭素が前記膜を選択的に透過可能であることが示された。
【0175】
つぎに、前記ヴィスキングチューブを用いて、メタンの透過速度が二酸化炭素の透過速度よりも遅いことを確認した。
【0176】
34~50mlの100%のメタン(アズワン社製)を、前記ヴィスキングチューブに入れて密封した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記ヴィスキングチューブを挿入し、蓋をしてさらに密封した。これを、室温で5、10、及び15時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記ヴィスキングチューブの体積を算出した。
【0177】
この結果を、
図27に示す。
図27は、前記ヴィスキングチューブの体積を示すグラフである。
図27において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、5、10、及び15時間を示す。なお、前記体積の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0178】
図27に示すように、5時間の前記静置後、体積は殆ど減少せず、前記体積の相対値は、0.97であった。また、10時間及び15時間の前記静置後にも、それぞれ、0.86及び0.77であった。前述のように、二酸化炭素を用いて同様の実験を行った場合、30分間の前記静置後、体積が約25%まで減少した。このことから、前記ヴィスキングチューブによるメタンの放出は、二酸化炭素の放出と比較して、遅いことが示された。
【0179】
ここで、メタンも、分子の大きさが二酸化炭素と比較して小さいことから、分子篩の観点からは、膜透過をしやすいといえる。これにも関わらず、前記結果から、二酸化炭素の透過速度は、メタンの透過速度と比較してより早いことがわかった。以上から、二酸化炭素が前記膜を選択的に透過可能であることが示された。
【0180】
つぎに、前記ヴィスキングチューブを用いて、気相から液相へ水素が透過しないことを確認した。
【0181】
100%の水素を、同様にして、前記ヴィスキングチューブに入れて密封した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記ヴィスキングチューブを入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記ヴィスキングチューブの体積を算出した。
【0182】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記セルロース製の袋において、気相から液相へ水素が透過しないことが確認できた。
【0183】
つぎに、前記ヴィスキングチューブを用いて、気相から液相へメタンが透過しないことを確認した。
【0184】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、前記ヴィスキングチューブに入れて密封した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記ヴィスキングチューブを入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記ヴィスキングチューブとの間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記ヴィスキングチューブの体積を算出した。
【0185】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記セルロース製の袋において、気相から液相へメタンが透過しないことが確認できた。
【0186】
以上のように、セルロース製の膜を用いて、二酸化炭素を選択的に透過させることを確認できた。また、セルロース製の膜が、水素及びメタンを透過させること、及び、セルロース製の膜と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認できた。
【0187】
[実施例6]
ポリウレタンが、二酸化炭素を選択的に透過させることを確認した。また、ポリウレタン製の袋と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認した。
【0188】
ポリウレタン製の袋(厚さ0.02mm、市販のもの)を、ヒトの呼気により、中程度まで膨張させた。前記袋を密封し、80%の二酸化炭素を充満させた容積4lのガラス瓶内に入れ、2時間静置した。その後、さらに、前記袋を前記ガラス瓶から取り出し、室内に1、2、及び4時間静置した。前記膨張直後、前記二酸化炭素下での静置後、及び前記室内での静置後に、それぞれ、実施例2と同様にして、前記袋の体積を算出した。
【0189】
この結果を、
図31に示す。
図31は、前記袋の体積を示すグラフである。
図31において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記膨張直後、前記二酸化炭素下での静置後、及び前記室内での1、2、及び4時間の静置後を示す。なお、前記体積の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。
【0190】
図31に示すように、中程度まで膨張させた前記袋を、高濃度の前記二酸化炭素下で静置することにより、2時間静置後、前記袋が膨張し、約2.3倍の体積になった。その後、前記室内での1時間静置後、前記袋の体積は減少し、前記室内での2時間静置後には、前記膨張直後の体積と同程度(1.05)になった。また、前記室内での4時間静置後も、前記膨張直後の体積と同程度であった。この結果から、前記ポリウレタン製の袋が二酸化炭素を選択的に透過させ、二酸化炭素以外の物質(例えば、酸素や窒素)を通過させないことが示された。
【0191】
つぎに、前記ポリウレタン製の袋を用いて、前記袋が水素を透過すること、及び、水素の透過速度が二酸化炭素の透過速度よりも遅いことを確認した。
【0192】
100%の水素を、同様にして、前記ポリウレタン製の袋に注入した。前記袋を密封し、室温で5時間、及び10時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記袋の体積を測定した。
【0193】
この結果を、
図32に示す。
図32は、前記袋の体積を示すグラフである。
図32において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記5時間、及び10時間を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0194】
図32に示すように、5時間静置後において、前記密封直後と比較して、前記袋の体積は有意に減少し、前記体積の相対値は、0.47であった。また、10時間静置後において、さらに減少し、前記体積の相対値は、0.26であった。このことから、前記ポリウレタン製の袋は、水素を透過することがわかった。なお、前述のように、高濃度の前記二酸化炭素により約2.3倍に膨張した前記袋を、室内で2時間静置することにより、高濃度の前記二酸化炭素による膨張前の体積と同程度(1.05)になった。すなわち、前記体積の相対値が、1.05÷2.3=0.46になった。このことから、二酸化炭素の透過速度は、水素の透過速度と比較してより早いことがわかった。以上から、二酸化炭素が前記袋を選択的に透過可能であることが示された。
【0195】
つぎに、前記ポリウレタン製の袋を用いて、前記袋がメタンを透過すること、及び、メタンの透過速度が二酸化炭素の透過速度よりも遅いことを確認した。
【0196】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、前記ポリウレタン製の袋に注入した。前記袋を密封し、室温で5時間、10時間、及び15時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後、前記袋の体積を測定した。
【0197】
この結果を、
図33に示す。
図33は、前記袋の体積を示すグラフである。
図33において、縦軸は、前記体積の相対値を示し、横軸は、左から、前記5時間、10時間、及び15時間を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0198】
この結果、5時間静置後において、前記密封直後と比較して、前記袋の体積は減少し、前記体積の相対値は、0.76であった。また、10時間静置後において、さらに減少し、前記体積の相対値は、0.6であった。また、15時間静置後において、さらに減少し、前記体積の相対値は、0.39であった。このことから、前記ポリエチレン製の袋は、メタンを透過することがわかった。なお、前述のように、高濃度の前記二酸化炭素により約2.3倍に膨張した前記袋を、室内で2時間静置することにより、高濃度の前記二酸化炭素による膨張前の体積と同程度(1.05)になった。すなわち、前記体積の相対値が、1.05÷2.3=0.46になった。このことから、二酸化炭素の透過速度は、メタンの透過速度と比較してより早いことがわかった。以上から、二酸化炭素が前記袋を選択的に透過可能であることが示された。
【0199】
つぎに、前記ポリウレタン製の袋を用いて、気相から液相へ水素が透過しないことを確認した。
【0200】
100%の水素を、同様にして、前記ポリウレタン製の袋に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記袋を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記袋の体積を算出した。
【0201】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記ポリウレタン製の袋において、気相から液相へ水素が透過しないことが確認できた。
【0202】
つぎに、前記ポリウレタン製の袋を用いて、気相から液相へメタンが透過しないことを確認した。
【0203】
100%のメタン(アズワン社製)を、同様にして、前記ポリウレタン製の袋に注入した。容積450mlの広口ガラス瓶に、前記袋を入れた後、前記ガラス瓶の壁面と前記袋との間の部分に、容量一杯まで水を入れ、蓋をして密封した。これを、室温で24時間静置した。前記密封直後、及び前記静置後に、それぞれ、同様にして、前記袋の体積を算出した。
【0204】
この結果、24時間の前記静置後においても、前記密封直後の体積と比較した前記体積の相対値は1であり、標準偏差は約0であった。このことから、前記ポリウレタン製の袋において、気相から液相へメタンが透過しないことが確認できた。
【0205】
以上のように、ポリウレタンが、二酸化炭素を選択的に透過させることを確認できた。また、ポリウレタン製の袋と水とを用いることで、二酸化炭素と水素及びメタンとの混合気体について、各気体を分離可能であることを確認できた。
[実施例7]
バブル構造を有する二酸化炭素透過剤を用いて、バブル構造内に二酸化炭素を透過することにより二酸化炭素透過剤の体積が変化することを確認した。
【0206】
二酸化炭素吸収剤として、発泡梱包材(バブルラップ)(ポリエチレン製、サイズ:10x60cm、市販のもの)を用いた。前記発泡梱包材は、バブル構造を覆うカバーが設けられた二重構造のもの(Babble Wrap II)と、前記バブル構造を覆うカバーがないもの(Babble Wrap I)の2種類を用いた。前記発泡梱包材を、それぞれ、水道水で洗浄した後、巻いた状態で、容量300mlのフタ付き広口ガラス瓶(市販のもの)に入れた。そして、前記ガラス瓶に、容量一杯まで強炭酸水(市販のもの)を入れて密封し、室温で5時間静置した。その後、前記発泡梱包材を入れた状態で、前記ガラス瓶に容量一杯まで水道水を入れた後、すぐに除去することにより、合計3回洗浄した。さらに、前記3回の洗浄後、前記容器を密封し、50℃に加熱した恒温装置内に5時間静置した後、室温下に静置し、前記容器内の温度が室温になった時点で、二酸化炭素濃度を測定した。
【0207】
また、前記強炭酸水に代えて、100%の二酸化炭素を前記ガラス瓶に十分に送入することにより充満させた以外は同様にして、実験を行った。
【0208】
これらの結果を、
図9に示す。
図9は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図9において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸において、左側が、前記カバーがない発泡梱包材(Babble Wrap I)、右側が、前記二重構造の発泡梱包材(Babble Wrap II)を示す。白抜きのグラフは、強炭酸水の結果を示し、黒のグラフは、100%の二酸化炭素の結果を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0209】
図9に示すように、強炭酸水を用いた場合、及び100%の二酸化炭素を用いた場合のいずれも、2種類の前記発泡梱包材において、大幅な二酸化炭素の放出が見られた。
【0210】
つぎに、前記実験にともなう二酸化炭素吸収剤の体積の変化を測定した。まず、前記実験と同様にして、前記二酸化炭素吸収剤として、前記発泡梱包材(Babble Wrap II)を用い、室温、5時間の条件で、強炭酸水による処理を行った後、3回の洗浄を行った。前記洗浄後、前記発泡梱包材を入れた前記ガラス瓶に、容量一杯まで水を入れた。前記水の全量をメスシリンダーに移すことにより、前記水の体積を測定した。また、前記発泡梱包材を入れていない前記ガラス瓶に、容量一杯まで水を入れ、同様にして前記水の体積を測定した。そして、前記発泡梱包材を入れていない前記ガラス瓶の前記水の体積から、二酸化炭素の吸収後の前記発泡梱包材を入れた前記ガラス瓶の前記水の体積を減算することにより、二酸化炭素の吸収後の前記発泡梱包材の体積を算出した。つぎに、前記実験と同様にして、二酸化炭素の吸収後の前記発泡梱包材を入れた前記ガラス瓶について、50℃、5時間の条件で加熱後、放熱させた。前記放熱後、同様にして、前記ガラス瓶と前記発泡梱包材とを3回水道水で洗浄した。前記洗浄後、前記発泡梱包材を入れた前記ガラス瓶に、容量一杯まで水を入れ、同様にして、前記水の体積を測定した。そして、前記発泡梱包材を入れていない前記ガラス瓶の前記水の体積から、二酸化炭素の放出後の前記発泡梱包材を入れた前記ガラス瓶の前記水の体積を減算することにより、二酸化炭素の放出後の前記発泡梱包材の体積を算出した。
【0211】
そして、前記二酸化炭素の吸収後の前記発泡梱包材の体積から、前記二酸化炭素の放出後の前記発泡梱包材の体積を減算することにより、二酸化炭素の放出にともなう前記二酸化炭素吸収剤の体積の減少量を算出した。
【0212】
これらの結果を、
図10に示す。
図10は、二酸化炭素の放出にともなう前記二酸化炭素吸収剤の体積の減少量を示すグラフである。
図10において、縦軸は、二酸化炭素吸収剤の体積の減少量(ml)を示す。なお、前記体積の減少量の値は、合計8サンプルの測定値の平均値とした。
【0213】
図10に示すように、二酸化炭素の放出にともない、前記二酸化炭素吸収剤である前記発泡梱包材の体積が、65ml減少していた。このことから、前記バブル構造への二酸化炭素の吸収にともない、前記二酸化炭素吸収剤の体積が増加し、前記バブル構造からの二酸化炭素の放出にともない、前記増加した二酸化炭素吸収剤の体積が減少すると考えられる。
【0214】
以上のように、バブル構造を有する二酸化炭素透過剤を用いて、バブル構造内に二酸化炭素を透過することにより二酸化炭素透過剤の体積が変化することを確認できた。
【0215】
[参考例1]
樹脂製容器に二酸化炭素(CO2)が吸収されること、および、二酸化炭素を吸収した前記樹脂製容器から二酸化炭素が放出されることを確認した。
【0216】
500mlの強炭酸水を入れたポリエチレンテレフタラート製の容器(PETボトル)(製品名:強炭酸水、木村飲料株式会社製)を用意した。前記強炭酸水を入れた容器は、市販のものを購入した後、1日以上静置したものを使用した。
【0217】
前記容器から前記強炭酸水を除去し、直後に、前記容器内の二酸化炭素濃度を測定した。前記二酸化炭素濃度の測定は、前記容器の蓋に気体の排出口を設け、二酸化炭素検出器(XP-3140、COSMO社製)(低濃度用)、及び(CX-6000、RIKEN KEIKI社製)(高濃度用)を用いて、前記排出口における気体中の二酸化炭素濃度を測定した。この結果、前記強炭酸水除去直後における前記容器内の二酸化炭素濃度は、20.8%と高い数値であった(合計6サンプルの測定値の平均値)。なお、二酸化炭素濃度は、1%=10,000ppmで換算することができる。
【0218】
つぎに、前記容器に容量一杯まで水道水を入れた後、すぐに除去することにより、前記容器を洗浄した。これを1回の洗浄とし、合計3回の洗浄を行った(1st Wash~3rd Wash)。各洗浄の直後に、同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。
【0219】
さらに、前記3回の洗浄後、前記容器を密封し、50℃に加熱した恒温装置内に5時間静置した後、室温下に静置し、前記容器内の温度が室温になった時点で、同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。
【0220】
これらの結果を、
図22に示す。
図22は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図22において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、1回目~3回目の前記洗浄後(1st Wash~3rd Wash)、および前記加熱後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計6サンプルの測定値の平均値とした。
【0221】
図22に示すように、1回目の前記洗浄後において、4027ppmの二酸化炭素が残存していた。前記残存していた二酸化炭素は、2回目および3回目の前記洗浄により、大幅に減少した。また、前記加熱後において、6800ppmの二酸化炭素が測定された。このことから、前記加熱により、前記容器に吸収されていた二酸化炭素が放出されることが確認できた。
【0222】
つぎに、前記加熱条件を変更し、実験を行った。前記3回の洗浄後、50℃または20℃の恒温装置内に、1時間、2時間、6時間、および24時間静置した後、それぞれ、室温下に静置し、前記容器内の温度が室温になった時点で、同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。
【0223】
この結果を、
図35に示す。
図35は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図35において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、1時間、2時間、6時間、および24時間静置後の結果を示す。白抜きのグラフは、50℃の結果を示し、黒のグラフは、20℃の結果を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。
【0224】
図35に示すように、50℃および20℃の処理により、いずれも、時間経過にともない、前記容器内の二酸化炭素濃度が増加していた。このことから、20℃の処理によっても、前記容器に吸収されていた二酸化炭素が放出されることが確認できた。また、50℃の処理により、20℃の処理と比較して、より多くの二酸化炭素の放出が見られた。このことから、前記加熱により、より多くの前記容器に吸収されていた二酸化炭素が放出されることが確認できた。
【0225】
以上のように、樹脂製容器に二酸化炭素が吸収されること、および、二酸化炭素を吸収した前記樹脂製容器から二酸化炭素が放出されることを確認できた。
【0226】
[参考例2]
材質の異なる樹脂製容器を用いて、二酸化炭素を吸収した前記樹脂製容器から二酸化炭素が放出されることを確認した。
【0227】
250mlまたは500mlの容量の、それぞれ異なる樹脂製の容器を用意した。前記樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びポリカーボネート(PC)(いずれも、アズワン社製)、並びにポリエチレンテレフタラート(PET)(市販の非炭酸飲料のペットボトルを再利用したもの)とした。
【0228】
前記各容器に、容量一杯まで強炭酸水(市販のもの)を入れて密封し、室温で5時間静置した。その後、参考例1と同様にして、合計3回の洗浄を行った。さらに、参考例1と同様にして、50℃、5時間の条件で加熱後、放熱させ、二酸化炭素濃度を測定した。
【0229】
また、前記各容器内に、100%の二酸化炭素を十分に送入することにより充満させた後、密封し、室温で5時間静置した。その後、参考例1と同様にして、合計3回の洗浄を行った。さらに、参考例1と同様にして、50℃、5時間の条件で加熱後、放熱させ、二酸化炭素濃度を測定した。
【0230】
これらの結果を、
図36に示す。
図36は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図36において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)を示す。白抜きのグラフは、100%の二酸化炭素の結果を示し、黒のグラフは、強炭酸水の結果を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。
【0231】
図36に示すように、強炭酸水を用いた場合、全ての樹脂において、二酸化炭素の放出が見られた。高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びポリカーボネート(PC)は、いずれも、ポリエチレンテレフタラート(PET)と比較して、より多くの二酸化炭素の放出が見られた。特に、ポリカーボネート(PC)は、大幅に二酸化炭素濃度が増加していた。
【0232】
また、
図36に示すように、100%の二酸化炭素を用いた場合も、全ての樹脂において、二酸化炭素の放出が見られた。高密度ポリエチレン(HDPE)は、ポリエチレンテレフタラート(PET)と同程度の二酸化炭素の放出が見られた。低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びポリカーボネート(PC)は、いずれも、ポリエチレンテレフタラート(PET)と比較して、より多くの二酸化炭素の放出が見られた。特に、ポリカーボネート(PC)は、大幅に二酸化炭素濃度が増加していた。
【0233】
以上のように、材質の異なる樹脂製容器を用いて、二酸化炭素を吸収した前記樹脂製容器から二酸化炭素が放出されることを確認できた。
【0234】
[参考例3]
異なる形態の二酸化炭素吸収剤を用いて、二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素が放出されることを確認した。
【0235】
二酸化炭素吸収剤として、容量10mlのポリプロピレン製のスピッツ管(栄研社製)を用いた。8本の前記スピッツ管を、容量300mlのフタ付き広口ガラス瓶(市販のもの)に入れた。そして、前記ガラス瓶に、容量一杯まで強炭酸水(市販のもの)を入れて密封し、室温で5時間静置した。その後、参考例1と同様にして、合計3回の洗浄を行った。さらに、参考例1と同様にして、50℃、5時間の条件で加熱後、放熱させ、二酸化炭素濃度を測定した。
【0236】
また、前記強炭酸水に代えて、他社製の強炭酸水を用いた以外は同様にして、実験を行った。また、室温での静置に代えて、4℃で静置した以外は同様にして、実験を行った。また、前記強炭酸水に代えて、100%の二酸化炭素を前記ガラス瓶に十分に送入することにより充満させた以外は同様にして、実験を行った。
【0237】
これらの結果を、
図7に示す。
図7は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図7において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、100%の二酸化炭素(CO
2)、強炭酸水(S.B.Water 20℃)、4℃の強炭酸水(S.B.Water 4℃)、及び、他社製の強炭酸水(Gerolsteiner)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3~4サンプルの測定値の平均値とした。
【0238】
図7に示すように、強炭酸水(S.B.Water 20℃)、4℃の強炭酸水(S.B.Water 4℃)、及び、他社製の強炭酸水(Gerolsteiner)を用いた場合、いずれも、同程度の二酸化炭素の放出が見られた。また、100%の二酸化炭素(CO
2)を用いた場合も、前記強炭酸水を用いた場合と比較して少ないものの、二酸化炭素の放出が見られた。
【0239】
つぎに、二酸化炭素吸収剤として、ゴム板(スジ入り、サイズ:3x100x100mm、HIKARI Co., Ltd.社製)を用いた(Rubber II)。前記ゴム板を、容量300mlのフタ付き広口ガラス瓶(市販のもの)に入れた。そして、前記ガラス瓶に、容量一杯まで強炭酸水(市販のもの)を入れて密封し、室温(24℃)で5時間静置した。その後、参考例1と同様にして、合計3回の洗浄を行った。さらに、参考例1と同様にして、50℃、5時間の条件で加熱後、放熱させ、二酸化炭素濃度を測定した。
【0240】
また、二酸化炭素吸収剤として、前記ゴム板に代えて、スジ構造のないゴム板(サイズ:1x100x100mm、HIKARI Co., Ltd.社製)(Rubber I)、アクリル棒(長径6 mm、長さ170 mm)、並びにポリエチレン製のメッシュ(サイズ:92-#18、アズワン社製)、及びナイロン製のメッシュ(サイズ:63 μ,PA-2、アズワン社製)をそれぞれ用いた以外は同様にして、実験を行った。
【0241】
また、前記二酸化炭素吸収剤のそれぞれについて、前記強炭酸水に代えて、100%の二酸化炭素を前記ガラス瓶に十分に送入することにより充満させた以外は同様にして、実験を行った。
【0242】
これらの結果を、
図8に示す。
図8は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図8において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、ゴム板(スジ入り)(Rubber I)、ゴム板(スジなし)(Rubber II)、アクリル棒(Acryl rods)、ポリエチレン製のメッシュ(Polyethylen mesh)、及びナイロン製のメッシュ(Nylon mesh)を示す。白抜きのグラフは、100%の二酸化炭素の結果を示し、黒のグラフは、強炭酸水の結果を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3~4サンプルの測定値の平均値とした。
【0243】
図8に示すように、強炭酸水を用いた場合、及び100%の二酸化炭素を用いた場合のいずれも、全ての二酸化炭素吸収剤において、二酸化炭素の放出が見られた。特に、二酸化炭素吸収剤がゴム板(スジ入り)であり、100%の二酸化炭素を用いた場合、大幅に二酸化炭素濃度が増加していた。
【0244】
以上のように、異なる形態の二酸化炭素吸収剤を用いて、二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素が放出されることを確認できた。
【0245】
[参考例4]
二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収剤から放出された気体が二酸化炭素であることを確認した。
【0246】
300mlの容量の樹脂(ポリエチレンテレフタラート(PET))製の容器(市販の非炭酸飲料のペットボトルを再利用したもの)を用意した。
【0247】
参考例2と同様にして、前記容器に強炭酸水を入れ、二酸化炭素を吸収させた後、加熱(5時間、または30分間)及び放熱させ、前記容器内の二酸化炭素濃度を測定した。この結果、二酸化炭素の濃度は、5時間の前記加熱において27%(高濃度CO2)、30分間の前記加熱において2.8%(低濃度CO2)であった。
【0248】
その後、それぞれの前記容器内に、10mlの濃度0.1NのNaOH水溶液と10mlの濃度0.1mol/lのCaCl2水溶液と含む混合液を入れ、手で30秒間激しく振盪した。なお、0.1NのNaOH水溶液と0.1mol/lのCaCl2水溶液とを含む混合液は、二酸化炭素と反応し、吸収することが知られている。前記振盪後すぐに、前記容器内の二酸化炭素濃度を測定した。
【0249】
この結果を、
図11に示す。
図11は、前記二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図11において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸において、左側が、高濃度二酸化炭素(高濃度CO
2)、右側が、低濃度二酸化炭素(低濃度CO
2)を示す。白抜きのグラフは、前記混合液との反応前を示し、黒のグラフは、前記混合液との反応後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計6サンプルの測定値の平均値とした。
【0250】
図11に示すように、高濃度二酸化炭素、及び低濃度二酸化炭素のいずれにおいても、前記混合液との反応前と比較して、前記混合液との反応後の二酸化炭素濃度が大幅に減少していた。このことから、前記二酸化炭素吸収剤から放出された気体が、二酸化炭素として反応可能であることを化学的に確認できた。
【0251】
以上のように、二酸化炭素を吸収した前記二酸化炭素吸収剤から放出された気体が二酸化炭素であることを確認できた。
【0252】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0253】
以上のように、本発明によれば、新たな、二酸化炭素透過剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0254】
1 二酸化炭素透過装置
11 二酸化炭素供給部
12 二酸化炭素透過部
121 二酸化炭素透過剤
2 加熱部
3 二酸化炭素吸収装置
31 二酸化炭素供給部
32 二酸化炭素吸収部
321 二酸化炭素吸収剤
33 二酸化炭素放出部
4 加熱部
【手続補正書】
【提出日】2023-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子製の薄膜を含み、
前記薄膜が、酸素及び窒素を透過せず、かつ、二酸化炭素を選択的に透過する、二酸化炭素透過剤。
【請求項2】
前記高分子が、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ゴム、ポリウレタン、及びアクリルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項3】
加熱された状態で、前記薄膜が前記二酸化炭素を透過する、
請求項1または2記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項4】
前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体から、二酸化炭素を分離可能である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤。
【請求項5】
二酸化炭素供給部、及び、二酸化炭素透過部を含み、
前記二酸化炭素供給部は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過部に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素透過部が、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過し、
前記二酸化炭素透過部は、請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤を含む、
二酸化炭素透過装置。
【請求項6】
前記二酸化炭素透過部は、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過する、
請求項5記載の二酸化炭素吸収装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素透過部は、2つの区画を含み、
前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜を介して接続しており、
一方の前記区画には、前記二酸化炭素供給部から前記二酸化炭素含有物質が供給され、
他方の前記区画には、前記薄膜に接するようにして液体が満たされている、
請求項5または6記載の二酸化炭素透過装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体であり、
前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離可能である、
請求項7記載の二酸化炭素透過装置。
【請求項9】
二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素透過工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素透過工程に供給し、
前記二酸化炭素含有物質は、気体及び液体の少なくとも一方であり、
前記二酸化炭素透過工程は、請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤により、前記供給された前記二酸化炭素含有物質に含まれる二酸化炭素を選択的に透過する、
二酸化炭素透過方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素透過工程は、加熱された状態で、前記二酸化炭素を透過する、
請求項9記載の二酸化炭素吸収方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素透過工程は、二酸化炭素透過部により、前記二酸化炭素を透過し、
前記二酸化炭素透過部は、前記二酸化炭素透過剤、及び2つの区画を含み、
前記2つの区画は、前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜を介して接続しており、
一方の前記区画には、前記二酸化炭素供給部から前記二酸化炭素含有物質が供給され、
他方の前記区画には、前記薄膜に接するようにして液体が満たされている、
請求項9または10記載の二酸化炭素透過方法。
【請求項12】
前記二酸化炭素含有物質が、二酸化炭素と水素及びメタンの少なくとも一方とを含む混合気体であり、
前記二酸化炭素透過工程において、前記薄膜が、二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記一方の区画に供給された前記混合気体から、前記他方の区画に満たされた前記液体に、二酸化炭素を分離する、
請求項11記載の二酸化炭素透過方法。
【請求項13】
二酸化炭素吸収部を含み、
前記二酸化炭素吸収部は、請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤を含み、
前記二酸化炭素吸収部の内部は、前記二酸化炭素透過剤を介して密封されており、
前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記二酸化炭素吸収部の外部から前記内部に、二酸化炭素が吸収される、
二酸化炭素吸収装置。
【請求項14】
二酸化炭素供給工程、及び、二酸化炭素吸収工程を含み、
前記二酸化炭素供給工程は、二酸化炭素含有物質を前記二酸化炭素吸収工程に供給し、
前記二酸化炭素吸収工程は、二酸化炭素吸収部により、二酸化炭素を吸収し、
前記二酸化炭素吸収部は、請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素透過剤を含み、
前記二酸化炭素吸収部の内部は、前記二酸化炭素透過剤を介して密封されており、
前記二酸化炭素透過剤の前記薄膜が二酸化炭素を選択的に透過することにより、前記二酸化炭素吸収部の外部から前記内部に、二酸化炭素が吸収される、
二酸化炭素吸収方法。