(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002181
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】灯具用カバー、灯具および照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 3/06 20180101AFI20221227BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20221227BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20221227BHJP
F21Y 103/10 20160101ALN20221227BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221227BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20221227BHJP
F21Y 115/20 20160101ALN20221227BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20221227BHJP
【FI】
F21V3/06 110
F21S2/00 230
F21V3/00 340
F21Y103:10
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:20
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103246
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 豪
(72)【発明者】
【氏名】西岡 恒人
(57)【要約】
【課題】剪断応力が発生しにくく、特殊環境下または屋外環境における使用に適した照明装置用の灯具用カバー、灯具および照明装置を提供する。
【解決手段】光源を有する光源部を覆う灯具用カバーであって、透光性を有する第1樹脂層と、光源から見て第1樹脂層の外側となる外壁面側に積層された透光性を有する第2樹脂層とを備え、第2樹脂層は、第1樹脂層よりもヤング率が小さい材料とするものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する光源部を覆う灯具用カバーであって、
透光性を有する第1樹脂層と、
前記光源から見て前記第1樹脂層の外側となる外壁面側に積層された透光性を有する第2樹脂層と
を備え、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりもヤング率が小さい材料とする灯具用カバー。
【請求項2】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも耐候性が高い樹脂を材料とする請求項1に記載の灯具用カバー。
【請求項3】
前記第1樹脂層は、ポリカーボネート系樹脂またはアクリル系樹脂を材料とし、
前記第2樹脂層は、シクロオレフィンポリマー系樹脂を材料とする請求項1または請求項2に記載の灯具用カバー。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、最薄部が0.8mm以上の厚さを有し、前記第2樹脂層は、0超0.8mm以下の厚さを有する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の灯具用カバー。
【請求項5】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ押し出し成形または射出成形で形成される請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の灯具用カバー。
【請求項6】
前記第1樹脂層は、押し出し成形または射出成形で形成され、前記第2樹脂層は、被膜またはフィルムが貼布されて形成される請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の灯具用カバー。
【請求項7】
前記光源から見て前記第2樹脂層の外側となる外壁面側に積層された透光性を有する第3樹脂層を備え、
前記第3樹脂層は、前記第2樹脂層よりもヤング率が小さい材料とする請求項1に記載の灯具用カバー。
【請求項8】
前記第1樹脂層は、ポリカーボネート系樹脂を材料とし、
前記第2樹脂層は、アクリル系樹脂を材料とし、
前記第3樹脂層は、シクロオレフィンポリマー系樹脂を材料とする請求項7に記載の灯具用カバー。
【請求項9】
前記第3樹脂層は、0超0.8mm以下の厚さを有する請求項7または請求項8に記載の灯具用カバー。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の灯具用カバーと、
光源を有する光源部と
を有する灯具。
【請求項11】
請求項10に記載の灯具と、
前記灯具が装着される装着部を有する照明器具と
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、灯具用カバー、灯具および照明装置に関するものである。特に、光源を覆うカバーの信頼性向上に係るものである。
【背景技術】
【0002】
照明装置は、用いられる範囲が広い。このため、特殊環境または屋外環境においても照明装置が使用されることがある。特殊環境とは、たとえば、常時高湿の風に晒される沿岸部、ある種のガスが慢性的に立ち込める工場内、高湿度を保つような食品または生花の保存庫内等の環境である。このような環境において、さらに、人感センサ等の検出に基づいて頻繁に点灯と非点灯との切り替えが行われる照明設置がある。当然ながら、このような場所に求められる照明装置は、設置された環境に対する耐性があり、かつ、点灯と非点灯が頻繁に繰り返されても破損等が生じない、耐久性を有することが求められる。
【0003】
照明装置の光源を有する灯具において、光源を覆うカバーは、その機能から、外殻に透光性を有する材料が用いられる。近年、光源が白熱電球または蛍光ランプからLEDに変わることに伴い、安全性および軽量化の目的から、透光性を有する材料が、ガラスから樹脂へと変わってきている。そして、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂に、アクリル系樹脂またはアリレート系樹脂からなる材料が積層された構成の灯具用カバーを備えた装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このように、灯具用カバーにおいて、基材となる樹脂に、アクリル系、フッ素系およびシリコーン系の樹脂材料のうち、少なくとも1つの材料をコーティングまたは二色成形することで、耐水性、耐太陽光性および耐薬品性等を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1のようなコーティングまたは二色成形を施した灯具用カバーは、上記のように、耐水性、耐太陽光性、耐薬品性およびガスバリア性等が考慮されている。しかしながら、特許文献1のような灯具用カバーは、第1樹脂層となる樹脂と、第1樹脂層にコーティングまたは二色成形されて積層されている樹脂とで熱膨張率が異なる。第1樹脂層の樹脂と積層されている樹脂とにおける熱膨張率の違いから、線膨張差による剪断応力が灯具用カバーに発生し、灯具用カバーが剪断破壊に至る可能性があった。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、剪断応力が発生しにくく、特殊環境下または屋外環境における使用に適した照明装置用の灯具用カバー、灯具および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示に係る灯具用カバーは、光源を有する光源部を覆う灯具用カバーであって、透光性を有する第1樹脂層と、光源から見て第1樹脂層の外側となる外壁面側に積層された透光性を有する第2樹脂層とを備え、第2樹脂層は、第1樹脂層よりもヤング率が小さい材料とするものである。
【0008】
また、この開示に係る灯具は、上記の灯具用カバーと、光源を有する光源部とを有するものである。
【0009】
また、この開示に係る照明装置は、上記の灯具と、灯具が装着される装着部を有する照明器具とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この開示に係る灯具用カバー等によれば、光源部から見て第1樹脂層の外側に第2樹脂層を積層する。第2樹脂層の材料におけるヤング率は、第1樹脂層の材料におけるヤング率よりも小さい。このため、灯具における灯具用カバーは、光源部の発熱に起因する第1樹脂層と第2樹脂層との伸縮量の差異を小さくすることができ、伸縮量の差異が原因となって発生する剪断応力を減少させ、剪断破壊を防ぐことができる。したがって、信頼性の高い灯具用カバー等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る照明装置1の斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る照明装置1の照明器具2と灯具3とを分割した分割斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る照明装置1の長手方向に直交する照明装置1の垂直断面を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る灯具用カバー30の材料の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る灯具3の一方の端部における分解斜視図である。
【
図7】実施の形態2に係る照明装置1の長手方向に直交する灯具用カバー30の垂直断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に係る灯具用カバー、灯具および照明装置について、図面を参照して説明する。各図において同じまたは対応する構成要素には、同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0013】
ここで、以下に説明する実施の形態によって、内容が限定されるものではない。また、以下の図面では、各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表または裏といった向きあるいは位置が示されている場合がある。これらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向および向きを限定するものではない。
【0014】
実施の形態1.
<照明装置1の構成>
図1は、実施の形態1に係る照明装置1の斜視図である。また、
図2は、実施の形態1に係る照明装置1の照明器具2と灯具3とを分割した分割斜視図である。そして、
図3は、実施の形態1に係る照明装置1の長手方向に直交する照明装置1の垂直断面を示す図である。
図1~
図3を参照して、実施の形態1に係る照明装置1の構成について説明する。
【0015】
ここで、以下の説明において、照明装置1の長手方向に沿った方向を、長手方向Xとする。また、長手方向Xに直交し、長手方向Xに対する短手方向を、短手方向Yとする。そして、長手方向Xおよび短手方向Yのいずれとも直交する方向を、上下方向Zとする。また、長手方向Xにおいて、長手端部側への向きを、端向きX1とする。そして、端向きX1と反対側への向きであり、長手中央側への向きを、中向きX2とする。さらに、上下方向Zにおいて、照明装置1が取り付けられる造営部9側(すなわち、天井または壁側)への向きを、上向きZ1とする。そして、上向きZ1と反対側への向きであり、照明装置1から光が照射される照射空間側への向きを、下向きZ2とする。ここで、上向きZ1は、灯具3が照明器具2に取り付けられる向きであり、下向きZ2は、灯具3が照明器具2から取り外される向きである。
【0016】
実施の形態1における照明装置1は、天井または壁等の造営部9側に取り付けられる照明器具2と照明器具2に装着される灯具3とを有する。実施の形態1では、いわゆるトラフタイプの照明器具2を、例として示す。
【0017】
<照明器具2>
照明器具2は、灯具3が取り付けられる被取付部となる。照明器具2は、器具本体20を有する。器具本体20は、実施の形態1では、金属製の板材を折り曲げて形成される。器具本体20は、器具底面部21、2つで一組となる器具側面部22および2つで一組となる器具端部23を有する。器具底面部21は、長尺かつ平板状に形成されており、2つで一組となる器具側面部22は、器具底面部21の短手方向Yの両端に配置されている。また、2つで一組となる器具端部23は、器具底面部21の長手方向Xの両端に配置されている。器具端部23には、ノックアウト24が形成され、後述する配線材85における電源線81等の各種電線を挿通する際に取り外される。照明器具2の構成等について、さらに説明する。
【0018】
装着部25は、装着された灯具3の一部を収容する収容部である。装着部25は、器具本体20の器具底面部21、一組の器具側面部22および一組の器具端部23により凹形状に形成される。このため、装着部25は、器具本体20の器具底面部21、一組の器具側面部22および一組の器具端部23で囲まれる空間を形成している。ここで、装着部25が収容する灯具3の一部は、照射側ではない非照射部となる。また、
図2および
図3(a)に示すように、装着部25の空間のうち、灯具3が収容された状態で、灯具3に占有されていない部分は、後述する配線材85等が灯具3に接続される際に経由し、配置される配線領域29となる。
【0019】
器具本体20の下端に位置する開口端部26は、器具本体20において開口している部分である。開口端部26は、照明器具2の装着部25に対して、灯具3の着脱を行う際の装着口となる。器具本体20の開口端部26において、長手方向Xの両端部には、連結部27が形成されている。連結部27には、灯具3が取り付けられる。実施の形態1では、連結部27は、器具端部23と一体に形成されており、開口端部26から長手方向Xにおける中向きX2に向かって、折り曲げて形成されている。連結部27に形成されたネジ孔28は、灯具3に取り付けられた、後述する連結ネジ48がねじ止めされる孔である。灯具3は、連結ネジ48によって照明器具2にねじ止めされて固定される。
【0020】
<灯具3>
図4は、実施の形態1に係る灯具3の斜視図である。ここでは、
図1から
図4を用いて灯具3について説明する。灯具3は、照明器具2に取り付けられることによって照明装置1を構成する。照明具および光源ユニットとなる灯具3は、長尺状に形成されており、照明器具2に装着されて使用される。実施の形態1では、灯具3は、照明器具2の長手方向Xにおける両端部において、後述する連結ネジ48によって照明器具2の連結部27に取り付けられる。実施の形態1の灯具3は、
図2および
図3(a)に示すように、主として、灯具用カバー30、端部カバー40、光源となる光源部60等を有する。
【0021】
<灯具用カバー30>
灯具3の外郭部となる灯具用カバー30は、少なくとも可視光を透過する透光性の材料が用いられるカバーである。灯具用カバー30は、筒形状であり、後述する取付部材50、光源部60、制御部80等を筒内部の空間に収容して保護する。灯具3は、灯具用カバー30の筒軸が長手方向Xに沿うように照明器具2に装着される。灯具用カバー30は、後述するように、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂材料を用いて形成する。また、灯具用カバー30において、装着部25から外部に露出している部分は外観意匠部分にもなる。
【0022】
実施の形態1の灯具3では、
図3(a)に示すように、灯具用カバー30のうち、装着部25から外部に露出している部分は、光源部60の照射側および取付部材50における台座51の表面を覆う外壁部となる外殻部になる。ここで、この部分の外周部37については、外面部に対する法線の向きが、発光素子61の光軸に沿う向きから光軸に直交する向きまでの範囲内となっている。たとえば、照明装置1から下方に向けて光が照射されるように、灯具3が照明器具2に装着された場合において、灯具用カバー30の装着部25から外部に露出している部分は、外面部が下方、斜め下方、あるいは側方(水平方向外側)に向いている。すなわち、灯具用カバー30の装着部25から外部に露出している部分は、外面部が、上方、あるいは斜め上方に向いていない。また、灯具用カバー30のうち、装着部25に収容され、外部に露出していない部分は、制御部80および台座51における取付面部52の制御部80が配置される側を覆う。そして、灯具用カバー30のうち、装着部25に収容され、外部に露出していない部分の表面は、器具本体20の器具底面部21および一組の器具側面部22と対向する。ここで、灯具用カバー30は、製品の仕様等に応じて、光拡散性、波長弁別特性等を有するものであってもよい。また、灯具用カバー30のうち、外部に露出していない部分については、反射性、遮光性等を有する材料を用いて形成してもよい。
【0023】
実施の形態1における筒形の灯具用カバー30は、
図1から
図4に示すように、内部に収容される機器を覆い、内部に収容される機器に対する位置によって、一組の並行部31、第1接続部32および第2接続部33に分かれている。また、灯具用カバー30には、2つのリブ34が設けられている。一組の並行部31は、灯具用カバー30において、一組の面が同じ距離で並行する面を形成している。灯具用カバー30は、一組の並行部31において外側の面部分となる外面部および内側の面部分となる内面部が、それぞれ、ともに平面形状である。この外面部および内面部は、灯具用カバー30に収容される発光素子61の光軸に沿った平面となる。実施の形態1では、この平面は、灯具3が照明器具2に装着された状態で、上下方向Zに沿っている。さらに、この平面は、一組の外面部および一組の内面部が、灯具3が照明器具2に装着された状態で、それぞれ対向する器具側面部22に沿った平面でもある。そして、この平面は、灯具3が照明器具2に取り付けられる向きまたは照明器具2から取り外される向きに沿った平面にもなる。このため、灯具用カバー30の並行部31は、短手方向Yにおいて、器具側面部22より外側にはならず、器具側面部22の内側に位置する。並行部31のうち、灯具3が照明器具2に装着されたときに露出している部分は、灯具3の側方における照射部となる。
【0024】
第1接続部32は、一組の並行部31における照射側の端部同士を繋いでいる部分であり、発光素子61の光軸と交わり、灯具3の主たる照射部となる。第1接続部32は、発光素子61からの光を下方に向けて照射する。第1接続部32の外面部および内面部は、1つまたは複数の面で構成されている。
図3(a)に示すように、実施の形態1では、灯具用カバー30における第1接続部32の外面部および内面部が、1つの曲面で構成されている場合について説明する。ここで、第1接続部32の外面部および内面部が、複数の面で構成される場合は、複数の異なる曲率の複数の曲面、複数の異なる角度の複数の平面、これらの曲面と平面とを組み合わせて構成することができる。第2接続部33は、一組の並行部31における器具側の端部同士を繋いでいる部分であり、灯具3が照明器具2に装着された状態において、装着部25に収容される部分である。実施の形態1では、灯具用カバー30における第2接続部33の外面部および内面部は、1つの曲面で構成されている場合について説明する。ここで、第2接続部33の外面部および内面部が、複数の面で構成される場合は、複数の異なる曲率の複数の曲面、複数の異なる角度の複数の平面、これらの曲面と平面とを組み合わせて構成することができる。
【0025】
リブ34は、灯具用カバー30の外面部の法線方向に張り出すように設けられる。実施の形態1では、リブ34は、各並行部31において、外側に向かって張り出すように設けられている。そして、各リブ34は、並行部31と一体形成される。各リブ34は、灯具用カバー30の長手方向Xに延設されている。リブ34は、灯具3が照明器具2に装着された状態で、器具側面部22における開口端部26付近と対向するような位置に形成される。
【0026】
また、実施の形態1では、
図3(a)に示すように、灯具用カバー30について、配線材85との関係において、第1部分300と第2部分301とに分けることができる。灯具用カバー30の第1部分300は、灯具用カバー30において、配線材85の被覆が接触する可能性がある部分である。配線材85が灯具3から照射される光を妨げない領域に配置されることが好ましいという点から、第1部分300は、灯具用カバー30のうち、少なくとも発光素子61よりも上方に位置する部分となる。実施の形態1における配線材85の配線領域29は、装着部25内である。第1部分300は、実質的には、灯具用カバー30のうち、リブ34より上方に位置する部分となる。ここで、灯具用カバー30の外周部37のうち、第1部分300の外周部分で、器具本体20の内部に収容される部分を、第1外周部370とする。
【0027】
灯具用カバー30の第2部分301は、器具本体20から露出される部分となる。このため、少なくとも発光素子61よりも下方の部分となる。したがって、実施の形態1では、実質的にリブ34より下方の部分が、外部に露出して、特殊環境の影響を直接受ける灯具用カバー30の第2部分301となる。ここで、灯具用カバー30の外周部37のうち、第2部分301の外周部分を、第2外周部371とする。
【0028】
配線材85は、外部から灯具3に接続される、電源線81、接地線82および制御線83等の各種配線を有する。また、これらの配線を接続する端子、配線保持具およびソケット等も配線材85とする。
図3(a)では、灯具3と接続される電源線81、接地線82および制御線83を、配線材85として示している。配線材85は、それぞれ絶縁材料で被包された各配線を被覆で一纏めにしたり、結束バンドで束ねたりした状態で、装着部25内の配線領域29に配置されるようにしてもよい。また、各配線をバラバラに分離した状態で、装着部25内の配線領域29に配置されるようにしてもよい。
【0029】
<灯具用カバー30の詳細>
次に、
図3(b)に基づいて、灯具用カバー30の構造等の詳細についてさらに説明する。灯具用カバー30は、内部の空間に収容された光源となる光源部60を内部の空間に収容して保護する。少なくとも可視光を透過する透光性を有する灯具用カバー30は、第1樹脂層30Aに、複数の樹脂層が積層された構成である。実施の形態1の灯具用カバー30は、
図3(b)に示すように、内部の空間に収容された光源となる光源部60から見て、第1樹脂層30Aの外壁面側に、第2樹脂層30Bが積層された構成である。したがって、実施の形態1の灯具用カバー30では、最外層となる第2樹脂層30Bが、外部の環境に晒されることになる。たとえば、特殊環境の工場等では、軒下等の半屋外に近い環境または完全屋外環境に照明装置が設置されることも多い。このため、このような環境で用いられる灯具3においては、最外層である第2樹脂層30Bは、耐吸湿性、耐水性または耐光性等を含む耐候性が求められる。ここで、耐光性は、耐太陽光性を含む性質である。
【0030】
実施の形態1の第1樹脂層30Aは、内部の空間に収容される取付部材50、光源部60、制御部80等を覆って保護することができる程度の硬さを必要とする。このため、第1樹脂層30Aは、最薄部でも0.8mm以上の厚さ寸法T1を有する。
【0031】
第2樹脂層30Bは、相対的に、第1樹脂層30Aよりも耐候性に優れた樹脂を材料とする層である。また、第2樹脂層30Bは、第2樹脂層30Bよりも熱源である光源部60に近い位置に配置される第1樹脂層30Aの伸縮に追従し得るように、ヤング率E[104kg/cm2]が、第1樹脂層30A以下になるように形成されることが望ましい。第2樹脂層30Bは、透光性を維持しつつ、上述した性能を維持する必要がある。このため、第2樹脂層30Bの厚さ寸法T2は、0[mm]超、0.8[mm]以下であることが望ましい。
【0032】
図5は、実施の形態1に係る灯具用カバー30の材料の一例を示す図である。
図5では、耐水性および耐光性を実現する材料となる各樹脂におけるヤング率(縦弾性係数)と熱膨張による線膨張係数[K]とを示している。線膨張係数は、物体の初期寸法と温度1[K]あたりの熱膨張による変位量との比を表したものである。
【0033】
灯具用カバー30は、ポリカーボネート系樹脂(PC)、アクリル系樹脂(PMMA)等の非晶性樹脂材料を用いて形成することができる。ここで、灯具用カバー30として用いることができる代表的な材料のヤング率E[104kg/cm2]は、次の材料となる。
(1)アクリル系樹脂(PMMA):2.5~3.5
(2)ポリカーボネート系樹脂(PC):2.5
(3)シクロオレフィンポリマー系樹脂(COP):2.1~2.5
【0034】
ヤング率Eの観点では、第1樹脂層30Aの材料がアクリル系樹脂(PMMA)である場合には、第2樹脂層30Bの材料として、ポリカーボネート系樹脂(PC)またはシクロオレフィンポリマー系樹脂(COP)を組み合わせることができる。また、第1樹脂層30Aの材料がポリカーボネート系樹脂(PC)である場合には、第2樹脂層30Bの材料として、シクロオレフィンポリマー系樹脂(COP)を組み合わせることができる。耐候性に有効なポリカーボネート系樹脂(PC)の材料としては、パンライト(登録商標)がある。また、シクロオレフィンポリマー系樹脂(COP)の材料としては、ゼオノア(登録商標)がある。
【0035】
実施の形態1の灯具用カバー30は、たとえば、押し出し成形または射出成形によって、第1樹脂層30Aを筒形状に形成する。そして、第1樹脂層30Aに、樹脂を塗布等により被膜またはフィルムを貼布して、第2樹脂層30Bを形成する。また、異種材料を用いた2色成形等により、第2樹脂層30Bを形成してもよい。形成された灯具用カバー30は、製品の仕様等に応じて、必要な長さに切断される。
【0036】
第1樹脂層30Aは、熱源となる光源部60に近いことによって、灯具3の点灯および消灯に伴う温度変化の影響を比較的受けやすく伸縮量が大きくなる。一方、第2樹脂層30Bは、外気と接触していることによって灯具3の点灯および消灯に伴う温度変化の影響を比較的受けにくい。実施の形態1の灯具用カバー30は、熱源である光源部60から遠い方の第2樹脂層30Bのヤング率Eは、第2樹脂層30Bよりも光源部60に近い第1樹脂層30Aのヤング率Eよりも小さい。このため、灯具用カバー30は、第1樹脂層30Aと第2樹脂層30Bとの伸縮量の差異が原因となって発生する剪断応力を減少させて、剪断破壊を防ぐことができる。
【0037】
ここで、実施の形態1の灯具用カバー30では、筒状の第1樹脂層30Aにおける外壁面の全面に、第2樹脂層30Bを積層する。ただし、これに限定するものではない。たとえば、第1樹脂層30Aの第2外周部371となる部分に、第2樹脂層30Bを積層する等、第1樹脂層30Aの一部に積層してもよい。たとえば、外部に露出せず、特殊環境の影響を明らかに受けない箇所に、第2樹脂層30Bを積層しないことで、材料となる樹脂および作業工程等の無駄を省くことができる。また、第1外周部370に、可塑剤を遮断する可塑剤遮断部を設けてもよい。可塑剤遮断部は、配線材85に可塑剤が含まれる場合に、可塑剤が灯具用カバー30に移行することを抑制または防止する。可塑剤遮断部の形状は、メッシュ状および布帛状等であってもよい。可塑剤遮断部の材質には、アルミニウム、鉄、ステンレスまたは銅等の金属材料、ガラス材料またはセラミック材料等の材料を採用することができる。
【0038】
図6は、実施の形態1に係る灯具3の一方の端部における分解斜視図である。灯具用カバー30は、取付部材50に配置された発光素子61の発光面を覆うと共に、取付部材50の長手方向に沿った長手方向Xとなる第1方向における端部36に開口が形成されている。換言すれば、灯具用カバー30は、少なくとも一方の端部36が開口する長尺形状の中空体であると共に、発光素子61が実装された基板62を内部に収容する。カバー端部35は、灯具用カバー30の長手方向Xにおいて、灯具用カバー30の両端部分である。灯具用カバー30のカバー端部35には、端部36が設けられている。端部36は、カバー端部35において端部カバー40が嵌合される部分であり、端部蓋である端部カバー40に覆われる部分である。端部36は、灯具用カバー30の伸縮に伴い、端部カバー40と共に長手方向Xである第1方向に沿って移動自在な自由端である。厳密には、灯具用カバー30の端部36および端部カバー40は、「長手方向X」以外の方向にも伸縮するものであるが、実施の形態に係る灯具3においては、灯具用カバー30は「長手方向X」の伸縮を許容する構造(構成)を有するものとする。灯具用カバー30は、端部カバー40と嵌合できるように、端部36の外面部にはリブ34が形成されていない。前述したように、押し出し成形によって押し出した筒形部材を切断して灯具用カバー30を製造する場合には、長手方向Xに延設されたリブ34のうち、端部36に対応する部分は削除される。
図3および
図6に示すように、灯具用カバー30の外周部37は、一組の並行部31、第1接続部32および第2接続部33となる外殻部の外面側である。また、内周部38は、一組の並行部31、第1接続部32および第2接続部33となる外殻部の内面側である。
【0039】
<端部カバー40の概要>
端部カバー40は、灯具用カバー30の長手方向Xにおける両端部に取り付けられる。端部カバー40は、封止具43を挟んで嵌着(嵌合)することによって、灯具用カバー30を密閉構造とする。ここで、端部カバー40に取り付けられる取付部材50および灯具用カバー30は、照明装置1の使用環境温度、灯具3の点灯時と消灯時とにおける温度の変化に対し、特に、長手方向Xにおける伸縮量が異なる。端部カバー40は、灯具用カバー30の密閉を維持しながら、灯具用カバー30および取付部材50の長手方向Xにおける端部どうしが、相互に移動可能となるような構造となっている。
【0040】
端部カバー40は、外カバーとなる第1端部カバー41と内カバーとなる第2端部カバー42とを有する。第1端部カバー41は、第1カバー貫通孔411、第1カバー連結孔412、連結ガイド413、カバー下面部414、カバー下面貫通孔415、カバー電線保持部416、カバー端面部417、カバー端面貫通孔418および端部カバー外周部419を有する。ここで、カバー下面貫通孔415は、
図2に示すように、カバー蓋49によって覆われる。また、第2端部カバー42は、第2カバー主部420、端部カバー挿通部421、第2カバー係合片422、第2カバー係合爪423および端部カバー内周部425を有する。また、端部カバー挿通部421を形成する縁部に沿って、挿通壁421aが形成されている。ここで、実施の形態1の第1端部カバー41および第2端部カバー42は、樹脂材料を用いて形成されているものとして説明する。ただし、これに限定するものではない。樹脂材料以外の金属材料、セラミック材料等を用いて形成されてもよい。また、実施の形態1では、第1端部カバー41と第2端部カバー42とを別部材とし、嵌着(嵌合)して一体化するようにしているが、あらかじめ一体化された1つの部材として成形するようにしてもよい。
【0041】
<封止具43>
封止具43は、灯具用カバー30の長手方向Xにおける両端部と端部カバー40との間に挟まれた状態で、灯具用カバー30の長手方向Xにおける両端部に配置される弾性部材である。弾性部材である封止具43は、灯具用カバー30の端部36に取り付けられて端部36の開口を塞いでいる。封止具43は、樹脂材料を用いて製造されており、弾性変形するシール部材(ガスケット、パッキン等)である。そのため、封止具43は、灯具用カバー30の長手方向Xにおける両端部と端部カバー40との間に挟まれた状態で、灯具用カバー30の長手方向Xにおける両端部を密閉する。封止具43は、樹脂材料を用いて弾性変形するように形成されて、灯具用カバー30および端部カバー40に密着する。
【0042】
封止具43は、封止具主部430、内周部435、外周部437および接続部436を有する。封止具43は、封止具主部430、内周部435、外周部437および接続部436が一体に形成されている。封止具主部430は、内周部435の内側を塞ぐように形成される。封止具主部430は、後述する固定具54の固定部56と第2端部カバー42の第2カバー主部420とに挟まれる。封止具主部430は、板状に形成されており、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、端部カバー40と対向する面側に、電線挿通部431と封止具筒状部433とが形成されている。封止具主部430は、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、第2端部カバー42の第2カバー主部420と当接する。電線挿通部431は、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、端部カバー40と対向する面側から突出しており、電源線81、接地線82および制御線83を通過させる電線挿通孔432を形成している。封止具筒状部433は、電線挿通部431を挟んで2つ設けられているが、封止具筒状部433の形成数は、固定具54の固定部56の数以上であれば、1つでもよく、3つ以上でもよい。封止具筒状部433は、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、端部カバー40と対向する面側から突出している。封止具筒状部433は、封止具43と固定具54とが係合した状態において、固定具54の固定部56から突出するボス部57が挿入される。封止具筒状部433は、円筒状に形成されている。封止具筒状部433の先端には、固定ネジ75をネジ止めするネジ挿通孔434が形成されている。
【0043】
板状に形成された封止具主部430の周縁部には、内周部435が形成されている。内周部435は、弾性部材である封止具43が、第2端部カバー42および灯具用カバー30と係合した状態において、第2端部カバー42の端部カバー内周部425と灯具用カバー30の端部36の内周部38とに挟まれる部分である。
【0044】
封止具43の外周部437は、環状に形成されており内周部38と対向するように内周部38の外側に配置される。この外周部437は、封止具43が、第1端部カバー41および灯具用カバー30と係合した状態において、第1端部カバー41の外壁部410aと灯具用カバー30の外周部37とに挟まれる部分である。
【0045】
封止具43の接続部436は、封止具主部430の内周部38と外周部437との間に位置する。接続部436は、封止具43が、第1端部カバー41および灯具用カバー30と係合した状態において、第1端部カバー41の第1カバー主部410と灯具用カバー30のカバー端部35とに挟まれる部分である。
【0046】
連結部材44は連結具であり、灯具3の長手方向Xの両端部に備えられており、灯具3を照明器具2に取り付けるための取付金具である。連結部材44は、固定部46の長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)の面とボス部57の端面とが当接した状態で、2つの固定ネジ75を用いて固定具54に取り付けられて固定される。連結部材44は、端部カバー40に対して、ネジ等を用いた直接的な固定はされていない。連結部材44は、固定具54のボス部57に密着する封止具43を介して位置決めされて間接的に固定される。すなわち、連結部材44は、灯具3の長手方向Xである第1方向において、端部カバー40の外側に配置され、一部が端部カバー40を貫通している取付部材50に固定されると共に、他の一部が照明器具2に固定される。実施の形態1では、連結部材44は、金属製の板材を折り曲げて形成されているものとする。ただし、連結部材44は、金属製の板材の折り曲げから形成されるものに限定されるものではなく、たとえば、樹脂、セラミック等、他の材料を用いて形成されてもよく、また、押し出し成形、積層造形等、他の方法で形成されてもよい。連結部材44は、連結部45と、固定部46と、係合部47とを有する。
【0047】
連結部45は、固定部46において、下方側(Z2側)の端部から灯具3の端部側(X1側)に延設する板状の部材である。すなわち、連結部45は、固定部46の下縁部から突出する板状の部材である。連結部45は、端部カバー40と係合した状態において、端部カバー40側とは反対側に突出している。換言すれば、連結部45は、係合部47の突出方向とは反対側に突出している。連結部45は、灯具3が照明器具2に取り付けられている状態では、段差部450以外の上方の面が照明器具2の連結部27に当接する。
【0048】
連結部45には、面の高さが異なる段差部450が形成されており、段差部450には、連結ネジ48が挿入される連結ネジ挿通部451が形成されている。段差部450は、連結部45の短手方向Yの中央領域において一部下方(Z2側)に窪ませた部分である。連結部45の段差部450には、連結ネジ挿通部451を通過した連結ネジ48を固定する抜け止めワッシャ480が配置される。この抜け止めワッシャ480は、連結ネジ48から外れないように予め連結ネジ48に嵌着されている。段差部450の高さ(深さ、段差)寸法は、抜け止めワッシャ480の厚さ寸法と同じ寸法である。灯具3が照明器具2に取り付けられている状態では、抜け止めワッシャ480の上方(Z1側)の面が照明器具2の連結部27に当接し、抜け止めワッシャ480の下方(Z2側)の面は連結部材44の段差部450に当接する。段差部450の形状および面積は、抜け止めワッシャ480の形状および寸法を考慮して決定される。連結ネジ挿通部451は、段差部450の短手方向Yにおける略中央において、長手方向X(第1方向)における端部側(X1側)からスリット状に形成されている。連結ネジ挿通部451は、連結ネジ48の軸部481より大きい幅寸法で形成されており、連結ネジ48の軸部481が挿通する。連結ネジ挿通部451の形状はスリット状に限定されず、断面が楕円形を含む円形、多角形の貫通孔でもよい。
【0049】
固定部46は、連結部45において、長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)の端部から上方に立設した部分である。固定部46は、板状の部材である。固定部46は、端部カバー40および封止具43を、取付部材50の固定具54と共に挟持する。固定部46には、固定ネジ75をネジ止めする固定ネジ挿通孔460が形成されている。固定ネジ挿通孔460は、ボス部57のネジ孔58にねじ込まれる固定ネジ75が挿通する貫通孔である。固定部46は、固定ネジ挿通孔460に挿入される固定ネジ75によってボス部57に取り付けられる。
【0050】
連結部材44には、電源線81、接地線82、制御線83等の電線を通過させる電線挿通孔470がスリット状に形成されている。電線挿通孔470は、上部スリット4710と、端部スリット4711とを有する。固定部46に形成されている電線挿通孔470を端部スリット4711と称する。端部スリット4711は、連結部材44の上下方向(Z軸方向)に形成されている。端部スリット4711は、係合部47に形成されている後述する上部スリット4710と繋がっている。
【0051】
固定部46には、係合片挿通孔461が形成されてもよい。係合片挿通孔461は、第2端部カバー42の第2カバー係合片422および第2カバー係合爪423の断面形状に対応して、固定部46に設けられる貫通孔である。係合片挿通孔461は、灯具用カバー30の伸長に伴い長手方向X(第1方向)に移動する第2端部カバー42の第2カバー係合片422および第2カバー係合爪423が、連結部材44の固定部46と干渉しないように形成されている。係合片挿通孔461は、灯具用カバー30の伸長の量、すなわち、第2カバー係合片422および第2カバー係合爪423の移動の量が小さい場合、あるいは、端部カバー40が一体形成されている場合等は不要であり、灯具3の必須の構成ではない。
【0052】
係合部47は、固定部46において、上方側(Z1側)の端部から長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)に延ばすように設けられた部分である。すなわち、係合部47は、固定部46の上縁部から突出する板状の部材である。係合部47は、端部カバー40と係った状態において、端部カバー40側に突出しており、灯具3において、灯具3の上方側(Z1側)に配置される。
【0053】
上述したように、連結部材44には、電源線81、接地線82、制御線83等の電線を通過させる電線挿通孔470がスリット状に形成されている。係合部47に形成されている電線挿通孔470を上部スリット4710と称する。上部スリット4710は、灯具3の長手方向Xに沿って形成されている。上部スリット4710は、固定部46に形成された端部スリット4711と繋がっている。上部スリット4710は、灯具用カバー30の端部36および端部カバー40を、長手方向X(第1方向)の移動が規制されない自由端とするために、連結部材44の係合部47に形成されたスリットである。上部スリット4710には、後述する挿入孔472から挿入されるカバー電線保持部416が、短手方向Yおよび上下方向Zに移動が規制された状態で係合する。なお、挿入孔472に配置されるカバー電線保持部416は、長手方向X(第1方向)には移動が規制されない。上部スリット4710に、カバー電線保持部416が係合した状態では、連結部材44の端部カバー40に対する位置が決まるので、固定ネジ75を用いて連結部材44をボス部57に固定する際に固定ネジ75の位置合わせがしやすくなる。電源線81、接地線82、制御線83の全てまたは一部を編組チューブ等で束線した状態では、一般的に硬くなり曲がり難くなる。しかし、連結部材44は、上部スリット4710と繋がるように形成された端部スリット4711を有することにより、電源線81等が束線されて曲がり難くなっても、配線がし易くなる。
【0054】
係合部47には、後述するカバー電線保持部416が挿入される挿入孔472が形成されている。挿入孔472は、上部スリット4710と連続して形成されている。挿入孔472は、固定部46に形成されている貫通孔であり、上部スリット4710の長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)と繋がって形成されている。挿入孔472は、カバー電線保持部416が挿入可能な形状および寸法で形成されている。挿入孔472から挿入されたカバー電線保持部416は、灯具用カバー30の伸長に応じて、上部スリット4710と係合した状態で、長手方向Xに沿って移動する。そのためカバー電線保持部416は、灯具用カバー30の伸縮、および灯具用カバー30の伸縮に伴う端部カバー40および封止具43の移動を妨げない。
【0055】
<取付部材50>
取付部材50は、
図3および
図6に示すように、光源部60および制御部80等を灯具用カバー30内の空間に固定させる部材である。また、取付部材50は、灯具用カバー30の両端部に取り付けられた端部カバー40および連結部材44に取付部材50を固定する部材である。取付部材50は、台座51と、固定具54と、を有する。取付部材50は、灯具用カバー30に収容される。そして、取付部材50は、
図6に示すように、固定ネジ75によって、端部カバー40および連結部材44に固定される。したがって、取付部材50は、灯具用カバー30には直接固定されていないが、灯具用カバー30の長手方向Xにおける両側のカバー端部35に嵌合(嵌着)している端部カバー40を介して灯具用カバー30と繋がっている。
【0056】
台座51は、取付部材50の主たる部分であり、光源部60および制御部80等が取り付けられる。実施の形態1では、台座51は、金属製の板材を折り曲げて形成されているものとする。ただし、台座51は、金属製の板材を折り曲げて形成されたものに限定するものではなく、たとえば、樹脂、セラミック等、金属以外の材料を用いて形成されたものでもよく、また、押し出し成形、積層造形等、他の方法で形成されたものでもよい。また、図示は省略するが、放熱効率(熱放射率)、あるいは、光の利用効率(反射率)等を向上させるために、台座51に表面処理を施し、あるいは、台座51に機能部材を敷設してもよい。台座51は、取付面部52と、側部53とを有する。台座51の取付面部52は、長尺の平板状に形成されており、照射側の面である表面には、光源部60が取り付けられる。また、器具側の面である裏面には、電源装置等の制御部80が取り付けられる。
【0057】
図6に示すように、台座51の取付面部52には、ネジ孔520が形成されている。ネジ孔520は、取付面部52の長手方向Xの両端部に形成されている。このネジ孔520には、取付部材50を端部カバー40および連結部材44に固定するための固定ネジ75が挿入される。取付面部52には、給電線84等を通過させる切り欠き部521が形成されている。切り欠き部521は、取付面部52の長手方向Xの両端部において、取付面部52の縁部に形成されている。ここで、灯具3の他方の端部における、取付面部52には、切り欠き部521が形成されている代わりに、貫通孔である装着孔(図示せず)が形成されている。
【0058】
台座51の側部53は、取付面部52の短手方向Yの両端部分から照射側に折り曲げられた立設部分である。側部53は、取付面部52の長手方向Xに沿って取付面部52の縁部から立設していることで、台座51の剛性を向上させる。実施の形態1では、側部53は、制御部80等が配置される器具側だけに立設させている。しかし、側部53は、光源部60が配置される照射側だけに立設させてもよく、あるいは、照射側および器具側の両方に立設させてもよい。また、実施の形態1では、側部53は、取付面部52の短手方向Yの両端部分に立設させているが、たとえば、取付面部52の短手方向Yにおける中央部分等、両端部分以外の位置に立設させてもよい。
【0059】
固定具54は、台座51の長手方向Xの両端部分に配置されており、灯具用カバー30の両端部に取り付けられた端部カバー40および連結部材44に取付部材50を固定する部材である。固定具54は、端部カバー40を貫通すると共に連結部材44が固定される。ここで、実施の形態1では、固定具54は台座51と別部材で構成されているが、固定具54の構成は、当該構成に限定するものではない。たとえば、台座51の両端部分を折り曲げる等して、台座51と固定具54とを一体に形成し、台座51が固定具54と同じ機能をもつ部分を有するようにしてもよい。固定具54は、取付ネジ(図示は省略)等の固定部材を用いて台座51に取り付けてもよい。
【0060】
固定具54は、取付部55と、固定部56とを有しており、板金を折り曲げて製造している。なお、固定具54は、金具であるが、金具に限定するものではなく、たとえば、樹脂、セラミック等、他の材料を用いて形成されてもよく、また、押し出し成形、積層造形等、他の方法で形成されたものでもよい。
【0061】
固定具54の取付部55は、固定具54を台座51に取り付ける部分であり、固定ネジ75を用いて台座51の両端部分に固定される。取付部55は、たとえば、カシメ、溶着(溶接)または嵌着(係着)等の方法で台座51と構造的に一体化されてもよい。
【0062】
固定具54の固定部56は、連結部材44の固定部46と共に端部カバー40と封止具43とを挟持する。すなわち、灯具用カバー30と、封止具43と、端部カバー40と、連結部材44とが組み合わされた状態において、固定部56と連結部材44の固定部46との間には、封止具43が配置されている。固定部56には、ボス部57が設けられている。
【0063】
ボス部57は、たとえば、カシメ、溶着(溶接)または嵌着(係着)等の方法によって固定部56に取り付けられている。ボス部57には、固定ネジ75がねじ込まれるネジ孔58が形成されている。ネジ孔58の内周側には、ネジ溝が形成されている。そして、連結部材44の外側から、連結部材44の固定ネジ挿通孔460、第2端部カバー42の端部カバー挿通部421、第1端部カバー41の第1カバー貫通孔411および封止具43のネジ挿通孔434に固定ネジ75が挿通される。そして固定ネジ75が、ボス部57のネジ孔58にねじ込まれて、連結部材44は取付部材50の固定具54に固定される。すなわち、連結部材44が固定されるのは、固定具54のボス部57である。
【0064】
<光源部60>
光源となる光源部60は、
図3に示すように、発光素子61、基板62等を有する。発光素子61は、電力供給により発光する。実施の形態1では、発光素子61として、発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下、LEDと称す)素子を用いており、基板62の実装面に、長手方向Xに沿って、列状、千鳥状等に実装される。そして、実施の形態1の発光素子61は、波長が440[nm]~480[nm]の青色光を出射するLEDチップ上に、青色光を黄色光に波長変換する蛍光体を配してパッケージ化された面実装部品である疑似白色LED素子である。ここで、発光素子61が出射する光は、光束値が最大であり、発光面に垂直な光軸に対して、対称に照射角αだけ広がる。実施の形態1では、発光素子61の照射角αは、120度であるものとする。発光素子61は、固体レーザ(Solid State Laser)、半導体レーザ(Semiconductor Laser)、有機EL(Electro Luminescence)、無機EL等を用いてもよい。基板62は、ガラス-エポキシ基板(FR-4)、ガラス-コンポジット基板(CEM-3)、紙エポキシ基板(FR-3)、紙フェノール基板(XPC)、金属ベース基板等が用いられる。
【0065】
制御部80は、光源部60等の発光制御を行うと共に電源装置となり、外部から供給される電力から発光素子61を点灯させる電力に変換して、発光素子61に供給する。実施の形態1では、制御部80は、前述したように、台座51の取付面部52の裏面に、ネジ(図示は省略)等の固定部材を用いて取り付けられた状態で、発光素子61等と共に筒状の灯具用カバー30に収容されている。ただし、制御部80は、灯具3ではなく、照明器具2に取り付けられてもよい。この場合、電線は、制御部80から発光素子61に供給される電力の供給経路として機能する給電線となる。実施の形態1における電源線81、接地線82および制御線83等の電線は、一端は制御部80に接続される。そして、他端は、照明器具2に取り付けられている端子台(図示は省略)に接続される。
【0066】
以上のように、実施の形態1では、灯具用カバー30において、光源部60から見て第1樹脂層30Aの外壁面側に第2樹脂層30Bを積層する。第2樹脂層30Bの材料におけるヤング率Eは、第1樹脂層30Aの材料におけるヤング率Eよりも小さい。このため、灯具用カバー30は、第1樹脂層30Aと第2樹脂層30Bとの伸縮量の差異を小さくすることで、伸縮量の差異が原因となって発生する剪断応力を減少させ、剪断破壊を防ぐことができる。また、第1樹脂層30Aの厚さを0.8[mm]以上とすることで、機器の保護に有効な硬さを得ることができる。一方で、第2樹脂層30Bの厚さを0[mm]超、0.8[mm]以下とすることで、透光性を維持しつつ、耐候性を確保することができる。
【0067】
さらに、実施の形態1の灯具用カバー30において、第2樹脂層30Bを第1樹脂層30Aの一部に積層することで、材料となる樹脂および作業工程等の無駄を省くことができる。
【0068】
そして、実施の形態1の灯具用カバー30は、第1樹脂層30Aおよび第2樹脂層30Bをそれぞれ押し出し成形または射出成形で形成することで、同じ方法で製造することができる。また、実施の形態1の灯具用カバー30は、第1樹脂層30Aを押し出し成形または射出成形で形成し、第2樹脂層30Bは、被膜またはフィルムを貼布して形成することで、灯具用カバー30の製造を容易に行うことができる。
【0069】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る照明装置1の長手方向に直交する灯具用カバー30の垂直断面を示す図である。実施の形態2は、実施の形態1に示す灯具用カバー30の構成が異なる。実施の形態2において、実施の形態1と同様の部分については同じ符号を付す。
【0070】
実施の形態2の灯具用カバー30aは、少なくとも可視光を透過する透光性を有しており、基材である第1樹脂層30Aに、第1樹脂層30Aとは異なる複数の樹脂層が積層された構成である。灯具用カバー30aは、内部空間に収容された光源部60から近い位置に第1樹脂層30Aが配置される。また、第1樹脂層30Aを間にして光源部60から遠い位置に第2樹脂層30Bが配置され、第1樹脂層30Aおよび第2樹脂層30Bを間にして、光源部60からさらに遠い位置に第3樹脂層30Cが積層される。ここで、第2樹脂層30Bは、第1樹脂層30Aの外壁面側に積層されている。また、第3樹脂層30Cは、第2樹脂層30Bの外壁面側に積層されている。したがって、実施の形態2の灯具用カバー30aにおいては、第3樹脂層30Cが灯具用カバー30aにおける最外層となる。このため、第3樹脂層30Cが特殊環境に直接晒されることになる。照明装置1は、工場等の特殊環境、軒下等の半屋外に近い環境または完全屋外環境に設置されることを想定したものである。このため、最外層である第3樹脂層30Cは、低吸湿性、耐水性または耐光性等を含む耐候性を有する。ここで、耐光性は、耐太陽光性を含む性質である。
【0071】
第1樹脂層30Aは、内部の空間に収容される取付部材50、光源部60、制御部80等を覆って保護することができる程度の硬さを必要とする。このため、第1樹脂層30Aの厚さ寸法T1は、最薄部においても0.8[mm]以上であることが望ましい。
【0072】
第2樹脂層30Bは、第2樹脂層30Bよりも熱源である光源部60に近い位置に配置される第1樹脂層30Aの伸縮に追従し得るように、ヤング率E[104kg/cm2]が第1樹脂層30A以下になるように形成されることが望ましい。第2樹脂層30Bは、透光性を維持しつつ、上述した性能を維持する必要がある。このため、第2樹脂層30Bの厚さ寸法T2は、0[mm]超、0.8[mm]以下であることが望ましい。
【0073】
第3樹脂層30Cは、前述したように、相対的に、第1樹脂層30Aおよび第2樹脂層30Bよりも優れた耐候性を有する材料を用いる必要がある。そして、第3樹脂層30Cは、第3樹脂層30Cよりも熱源である光源部60に近い位置に配置される第2樹脂層30Bの伸縮に追従し得るように、ヤング率E[104kg/cm2]が第2樹脂層30B以下になるように形成されることが望ましい。そして、第3樹脂層30Cは、透光性を維持しつつ上述した性能を維持する必要がある。このため、第3樹脂層30Cの厚さ寸法T3は、0[mm]、超0.8[mm]以下であることが望ましい。
【0074】
以上のように、実施の形態2では、灯具用カバー30aにおいて、光源部60から見て第1樹脂層30Aの外壁面側に第2樹脂層30Bを積層する。また、光源部60から見て第2樹脂層30Bの外壁面側に第3樹脂層30Cを積層する。そして、第2樹脂層30Bの材料におけるヤング率Eは、第1樹脂層30Aの材料におけるヤング率Eよりも小さい。また、第3樹脂層30Cの材料におけるヤング率Eは、第2樹脂層30Bの材料におけるヤング率Eよりも小さい。このため、第1樹脂層30A、第2樹脂層30Bおよび第3樹脂層30Cの伸縮量の差異を小さくして、伸縮量の差異が原因となって発生する剪断応力を減少させ、剪断破壊を防ぐことができる。また、第1樹脂層30Aの厚さを0.8[mm]以上とすることで、機器の保護に有効な硬さを得ることができる。一方で、第2樹脂層30Bおよび第3樹脂層30Cの厚さ寸法を0[mm]超、0.8[mm]以下とすることで、透光性を維持しつつ、耐候性を確保することができる。
【0075】
前述した照明装置1は、いわゆるトラフタイプの照明器具2を例示して説明したが、これに限定されるものではない。照明装置1は、灯具3が装着される照明器具2として、いわゆる笠付タイプ、片側反射笠付タイプまたはV形タイプ等、他の形状のものを採用することができる。
【0076】
また、前述した照明装置1を構成する照明器具2および灯具3は、いずれも長尺状のものを例示したが、これに限定されるものではない。灯具3あるいは灯具3が装着される照明器具2は短尺状のものでもよい。たとえば、灯具3は灯具用カバー30の筒軸方向の長さ寸法が、径方向の長さ寸法より小さい形状であってもよい。
【0077】
また、前述した照明装置1は、照明器具2および灯具3を有するものとして説明したが、これに限定するものではない。照明器具2の代わりに、レースウェイを被取付部として、灯具3にレースウェイを取り付け、照明装置1としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 照明装置、2 照明器具、3 灯具、9 造営部、20 器具本体、21 器具底面部、22 器具側面部、23 器具端部、24 ノックアウト、25 装着部、26 開口端部、27 連結部、28 ネジ孔、29 配線領域、30,30a 灯具用カバー、30A 第1樹脂層、30B 第2樹脂層、30C 第3樹脂層、31 並行部、32 第1接続部、33 第2接続部、34 リブ、35 カバー端部、36 端部、37 外周部、38 内周部、40 端部カバー、41 第1端部カバー、42 第2端部カバー、43 封止具、44 連結部材、45 連結部、46 固定部、47 係合部、48 連結ネジ、49 カバー蓋、50 取付部材、51 台座、52 取付面部、53 側部、54 固定具、55 取付部、56 固定部、57 ボス部、58 ネジ孔、60 光源部、61 発光素子、62 基板、75 固定ネジ、80 制御部、81 電源線、82 接地線、83 制御線、84 給電線、85 配線材、300 第1部分、301 第2部分、370 第1外周部、371 第2外周部、410 第1カバー主部、410a 外壁部、411 第1カバー貫通孔、412 第1カバー連結孔、413 連結ガイド、414 カバー下面部、415 カバー下面貫通孔、416 カバー電線保持部、417 カバー端面部、418 カバー端面貫通孔、419 端部カバー外周部、420 第2カバー主部、421 端部カバー挿通部、421a 挿通壁、422 第2カバー係合片、423 第2カバー係合爪、425 端部カバー内周部、430 封止具主部、431 電線挿通部、432 電線挿通孔、433 封止具筒状部、434 ネジ挿通孔、435 内周部、436 接続部、437 外周部、450 段差部、451 連結ネジ挿通部、460 固定ネジ挿通孔、461 係合片挿通孔、470 電線挿通孔、472 挿入孔、480 抜け止めワッシャ、481 軸部、520 ネジ孔、521 切り欠き部、4710 上部スリット、4711 端部スリット。