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特開2023-21839高純度液化アルゴンの製造装置および高純度液化アルゴンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021839
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】高純度液化アルゴンの製造装置および高純度液化アルゴンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/08 20060101AFI20230207BHJP
   C01B 23/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
F25J3/08
C01B23/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126954
(22)【出願日】2021-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】502450631
【氏名又は名称】エア・ウォーター・プラントエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 保
(72)【発明者】
【氏名】谷口 賢晃
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和之
(72)【発明者】
【氏名】嶺山 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】西井 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】末長 純也
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA01
4D047AB01
4D047AB04
4D047BA03
4D047BB08
4D047CA04
(57)【要約】
【課題】酸素が除去されており、しかもアルゴンの沸点よりも沸点が低い低沸点成分の含有量も低減されている高純度液化アルゴンの製造装置および高純度液化アルゴンの製造方法を提供する。
【解決手段】原料液化アルゴンを一時的に貯留する容器と、前記容器に接続している凝縮器と、前記凝縮器で気化したアルゴンガスを常温まで昇温する熱交換器と、前記熱交換器を経たアルゴンガスを圧縮するアルゴンガス圧縮機と、前記アルゴンガス圧縮機で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスに含まれる酸素と反応するゲッター剤を備えた吸着塔と、前記吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを前記熱交換器へ供給する供給路と、前記熱交換器を経た精製アルゴンガスを前記凝縮器へ供給する供給路と、を有し、前記凝縮器には、該凝縮器で精製アルゴンガスを液化して得られた液化アルゴンを系外へ排出して回収する液化アルゴン回収路と、該凝縮器内から低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路とが接続されている高純度液化アルゴンの製造装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液化アルゴンを一時的に貯留する容器と、
前記容器に接続している凝縮器と、
前記凝縮器で気化したアルゴンガスを常温まで昇温する熱交換器と、
前記熱交換器を経たアルゴンガスを圧縮するアルゴンガス圧縮機と、
前記アルゴンガス圧縮機で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスに含まれる酸素と反応するゲッター剤を備えた吸着塔と、
前記吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを前記熱交換器へ供給する供給路と、
前記熱交換器を経た精製アルゴンガスを前記凝縮器へ供給する供給路と、を有し、
前記凝縮器には、
該凝縮器で精製アルゴンガスを液化して得られた液化アルゴンを系外へ排出して回収する液化アルゴン回収路と、
該凝縮器内から低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路と
が接続されていることを特徴とする高純度液化アルゴンの製造装置。
【請求項2】
前記低沸点成分排出路と前記凝縮器の接続位置は、
該凝縮器内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置であるか、および/または
該凝縮器と前記液化アルゴン回収路の接続位置と同じ位置である請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記低沸点成分排出路は、前記熱交換器内を通った後、系外へ延在している請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記容器には、前記原料液化アルゴンを該容器へ供給する供給路が接続されており、
該供給路は分岐しており、
分岐路は前記熱交換器と前記アルゴンガス圧縮機とを結ぶ経路に接続されており、
前記分岐路には、前記原料液化アルゴンを気化する気化器と、アルゴンガス圧縮機吸入圧調整弁が配されている請求項1~3のいずれかに記載の製造装置。
【請求項5】
原料液化アルゴンを一時的に貯留する容器と、
前記容器に接続している凝縮器と、
前記凝縮器で気化したアルゴンガスを常温まで昇温する熱交換器と、
前記熱交換器を経たアルゴンガスを圧縮するアルゴンガス圧縮機と、
前記アルゴンガス圧縮機で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスに含まれる酸素と反応するゲッター剤を備えた吸着塔と、
前記吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを前記熱交換器へ供給する供給路と、
前記熱交換器を経た精製アルゴンガスを前記凝縮器へ供給する供給路と、を有する高純度液化アルゴン製造装置を用いて高純度液化アルゴンを製造する方法であって、
前記熱交換器を経た精製アルゴンガスは、前記凝縮器で凝縮液化し、得られた液化アルゴンを系外へ排出して回収し、且つ
該凝縮器内の低沸点成分を系外へ排出することを特徴とする高純度液化アルゴンの製造方法。
【請求項6】
前記低沸点成分は、
前記凝縮器内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置から系外へ排出するか、および/または
前記凝縮器で凝縮液化して得られた液化アルゴンと共に系外へ排出し、前記低沸点成分と前記液化アルゴンとを分離する請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記凝縮器内の低沸点成分を系外へ排出するに先立って、該低沸点成分を、前記熱交換器内を通す請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記容器へ供給する前の前記原料液化アルゴンの一部を気化して得られた原料アルゴンガスと、
前記熱交換器を経た前記アルゴンガスと、を混合する請求項5~7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度液化アルゴンの製造装置および高純度液化アルゴンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルゴンは、空気中に約0.93%含まれる気体であり、化学反応をほとんど起こさないため、不活性ガスとして製鋼や溶接、シリコン製造などに用いられている。アルゴンは、例えば、深冷空気分離装置において回収できる。回収されるアルゴンの純度は、通常、99.9%程度であり、不純物として酸素や窒素が含まれている。
【0003】
アルゴン中に含まれる酸素や窒素を除去する方法として、ゲッター剤と反応させる方法が知られている。ゲッター剤を用いてアルゴンに含まれる酸素や窒素を除去する技術として、特許文献1には、空気を圧縮,精製,冷却し、少なくとも1塔よりなる主精留塔に導入して酸素及び/又は窒素を製出するとともに、該主精留塔よりアルゴン原料ガスを導出し、理論段数100段以上のアルゴン精製塔に導入して精留を行い、塔頂より窒素を含むアルゴンをその量を調節して導出し、塔頂より数段乃至十数段下より高純度の精製アルゴンを製出し、塔底より液化酸素を導出する高純度アルゴンの製造方法が記載されている。この特許文献1には、アルゴンをより精製する方法として、前記アルゴン精製塔を導出した精製液アルゴン又はガスアルゴンを気化昇温後又は昇温後、更にゲッターとの反応温度に昇温し、ゲッターと反応させることにより精製を行い、含有する微量の窒素及び酸素を除去することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-133982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルゴン中に含まれる酸素や窒素は、上記特許文献1に開示されているように、ゲッター剤と反応させることにより除去できる。ゲッター剤は、通常再生され、再利用される。ゲッター剤の再生には、水素と窒素の混合ガスや、更にアルゴンを混合した混合ガスが用いられる。そのため製品アルゴンには、水素や窒素など、アルゴンの沸点よりも沸点が低い成分(以下、低沸点成分という)が混入し、製品アルゴンの品質不良を発生させることがあった。
【0006】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、酸素が除去されており、しかもアルゴンの沸点よりも沸点が低い低沸点成分の含有量も低減されている高純度液化アルゴンを製造できる装置および該高純度液化アルゴンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
[1] 原料液化アルゴンを一時的に貯留する容器と、前記容器に接続している凝縮器と、前記凝縮器で気化したアルゴンガスを常温まで昇温する熱交換器と、前記熱交換器を経たアルゴンガスを圧縮するアルゴンガス圧縮機と、前記アルゴンガス圧縮機で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスに含まれる酸素と反応するゲッター剤を備えた吸着塔と、前記吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを前記熱交換器へ供給する供給路と、前記熱交換器を経た精製アルゴンガスを前記凝縮器へ供給する供給路と、を有し、前記凝縮器には、該凝縮器で精製アルゴンガスを液化して得られた液化アルゴンを系外へ排出して回収する液化アルゴン回収路と、該凝縮器内から低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路とが接続されていることを特徴とする高純度液化アルゴンの製造装置。
[2] 前記低沸点成分排出路と前記凝縮器の接続位置は、該凝縮器内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置であるか、および/または該凝縮器と前記液化アルゴン回収路の接続位置と同じ位置である[1]に記載の製造装置。
[3] 前記低沸点成分排出路は、前記熱交換器内を通った後、系外へ延在している[1]または[2]に記載の製造装置。
[4] 前記容器には、前記原料液化アルゴンを該容器へ供給する供給路が接続されており、該供給路は分岐しており、分岐路は前記熱交換器と前記アルゴンガス圧縮機とを結ぶ経路に接続されており、前記分岐路には、前記原料液化アルゴンを気化する気化器と、アルゴンガス圧縮機吸入圧調整弁が配されている[1]~[3]のいずれかに記載の製造装置。
[5] 原料液化アルゴンを一時的に貯留する容器と、前記容器に接続している凝縮器と、前記凝縮器で気化したアルゴンガスを常温まで昇温する熱交換器と、前記熱交換器を経たアルゴンガスを圧縮するアルゴンガス圧縮機と、前記アルゴンガス圧縮機で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスに含まれる酸素と反応するゲッター剤を備えた吸着塔と、前記吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを前記熱交換器へ供給する供給路と、前記熱交換器を経た精製アルゴンガスを前記凝縮器へ供給する供給路と、を有する高純度液化アルゴン製造装置を用いて高純度液化アルゴンを製造する方法であって、前記熱交換器を経た精製アルゴンガスは、前記凝縮器で凝縮液化し、得られた液化アルゴンを系外へ排出して回収し、且つ該凝縮器内の低沸点成分を系外へ排出することを特徴とする高純度液化アルゴンの製造方法。
[6] 前記低沸点成分は、前記凝縮器内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置から系外へ排出するか、および/または前記凝縮器で凝縮液化して得られた液化アルゴンと共に系外へ排出し、前記低沸点成分と前記液化アルゴンとを分離する[5]に記載の製造方法。
[7] 前記凝縮器内の低沸点成分を系外へ排出するに先立って、該低沸点成分を、前記熱交換器内を通す[5]または[6]に記載の製造方法。
[8] 前記容器へ供給する前の前記原料液化アルゴンの一部を気化して得られた原料アルゴンガスと、前記熱交換器を経た前記アルゴンガスと、を混合する[5]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゲッター剤を備えた吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを凝縮して液化する凝縮器に、該凝縮器内の低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路を設けているため、酸素が除去されており、しかも低沸点成分の混入が少ない、高純度液化アルゴンを製造できる装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る空気分離装置の実施の形態1を示す概略図である。
図2図2は、本発明に係る空気分離装置の実施の形態2を示す概略図である。
図3図3は、本発明に係る空気分離装置の実施の形態3を示す概略図である。
図4図4は、本発明に係る空気分離装置の実施の形態4を示す概略図である。
図5図5は、凝縮器11aを容器11の外に配置した形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に基づいて本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置および高純度液化アルゴンの製造方法について具体的に説明するが、本発明は下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合する範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。各図面において、便宜上、符号等を省略している場合は、明細書や他の図面を参照する。また、図面における種々の寸法は、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の高純度液化アルゴンの製造装置は、原料液化アルゴンを一時的に貯留する容器と、前記容器に接続している凝縮器と、前記凝縮器で気化したアルゴンガスを常温まで昇温する熱交換器と、前記熱交換器を経たアルゴンガスを圧縮するアルゴンガス圧縮機と、前記アルゴンガス圧縮機で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスに含まれる酸素と反応するゲッター剤を備えた吸着塔と、前記吸着塔で精製して得られた精製アルゴンガスを前記熱交換器へ供給する供給路と、前記熱交換器を経た精製アルゴンガスを前記凝縮器へ供給する供給路と、を有している。そして、前記凝縮器に対し、該凝縮器で精製アルゴンガスを液化して得られた液化アルゴンを系外へ排出して回収する液化アルゴン回収路と、該凝縮器内から低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路とが接続されている点に特徴がある。凝縮器に対して該凝縮器内から低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路を設けることにより、液化アルゴンに混入する低沸点成分量を低減できるため、液化アルゴンの純度を高めることができる。
【0012】
以下、本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1に示した製造装置は、保冷箱10、容器11、凝縮器11a、熱交換器12、アルゴンガス圧縮機13、吸着塔14、弁15、原料液化アルゴン気化器17、およびアルゴンガス圧縮機吸入圧調整弁18を有している。
【0013】
容器11には、原料として用いる液化アルゴンを供給する供給路L1が接続されている。供給路L1から供給される原料液化アルゴンは、例えば、空気分離装置で空気から酸素や窒素を製造する際に回収される液化アルゴンを用いることができる。供給路L1から容器11へ供給された原料液化アルゴンは、容器11で一時的に貯留される。
【0014】
容器11には、凝縮器11aが接続されており、図1では、容器11の内部に凝縮器11aが配されている。容器11へ供給された原料液化アルゴンは、供給路L6から供給される精製アルゴンガスとの間で熱交換し、気化したアルゴンガスは経路L2を通して熱交換器12へ供給される。
【0015】
経路L2を通して熱交換器12へ供給されたアルゴンガスは、供給路L5から熱交換器12へ供給される精製アルゴンガスとの間で熱交換され、常温(例えば、5~35℃)まで昇温される。熱交換器12で常温まで昇温されたアルゴンガスは、経路L3を通してアルゴンガス圧縮機13へ供給される。アルゴンガス圧縮機13では、アルゴンガスが、例えば、0.05~1.00MPaG程度に圧縮される。
【0016】
アルゴンガス圧縮機13で圧縮して得られた圧縮アルゴンガスは、経路L4を通して吸着塔14へ供給される。
【0017】
吸着塔14には、酸素と反応し、酸素を吸着するゲッター剤が備えられており、吸着塔14へ供給された圧縮アルゴンガスは、吸着塔14を通されることにより酸素が除去され、精製される。ゲッター剤としては、例えば、銅、銅合金、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金など市販されている公知のものを用いることができる。
【0018】
吸着塔14で精製して得られた精製アルゴンガスは、供給路L5を通して熱交換器12へ返送される。供給路L5から熱交換器12へ供給された精製アルゴンガスは、上述したように、経路L2から熱交換器12へ供給されるアルゴンガスとの間で熱交換され、冷却される。
【0019】
熱交換器12で冷却された精製アルゴンガスは、供給路L6を通して前記凝縮器11aへ供給される。凝縮器11aに供給された精製アルゴンガスは、上述したように、供給路L1から供給される原料液化アルゴンガスとの間で熱交換され、凝縮液化される。
【0020】
凝縮器11aで凝縮液化して得られた液化アルゴンは、該凝縮器11aに接続されている液化アルゴン回収路L7を通して系外へ排出され、製品高純度液化アルゴンとして回収される。また、上記凝縮器11aには、該凝縮器11a内の低沸点成分を系外へ排出する低沸点成分排出路L11が接続されている。凝縮器11a内の低沸点成分を低沸点成分排出路L11から系外へ排出することにより、上記液化アルゴン回収路L7から回収される液化アルゴンに含まれる低沸点成分量を低減できるため、アルゴンの純度を高めることができる。即ち、ゲッター剤を備えた吸着塔14で圧縮アルゴンガスから酸素を除去してアルゴン純度を高めた場合、ゲッター剤を再生する際に水素や窒素が用いられるが、水素や窒素が圧縮アルゴンガスに混入することがあった。一方、本発明に係る高純度液化アルゴン製造装置によれば、凝縮器11a内から水素や窒素などの低沸点成分を系外へ排出しているため、アルゴンの純度を高めることができる。低沸点成分とは、アルゴンの沸点(-185.8℃)よりも低い沸点を有する物質であり、例えば、水素(沸点は-259.2℃)や窒素(沸点は-195.79℃)などが挙げられる。
【0021】
低沸点成分排出路L11の途中には、弁15が設けられていてもよい。これにより、系外へ排出する低沸点成分の排出量を調整できる。
【0022】
低沸点成分排出路L11の接続位置は、例えば、図1に示すように、凝縮器11a内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置とすることにより、低沸点成分のうち、凝縮せずにガス状態のもの(例えば、水素など)を系外へ排出することができる。低沸点成分排出路L11の接続位置は、例えば、熱交換器12で冷却された精製アルゴンガスを凝縮器11aへ供給する供給路L6と、凝縮器11aとの接続位置と対向することが好ましい。
【0023】
原料液化アルゴンを容器11へ供給する供給路L1は、途中で分岐していてもよい。供給路L1の分岐路L1aは、例えば、前記熱交換器12と前記アルゴンガス圧縮機13とを結ぶ経路L3に接続されていてもよい。分岐路L1aには、原料液化アルゴンを気化する気化器17が配されていてもよい。例えば、装置の起動時に、気化器17で気化させたアルゴンガスを分岐路L1aから系内へ供給することにより、系内に存在しているガスを速やかにアルゴンガスに置換できる。分岐路L1aには、アルゴンガス圧縮機吸入圧調整弁18が配されていてもよい。分岐路L1aを通してアルゴンガスをアルゴンガス圧縮機13へ供給することにより、アルゴンガス圧縮機13の吸い込み圧を安定させることができるため、系内の圧力の安定を図ることができる。
【0024】
原料液化アルゴンを容器11へ供給する供給路L1には、弁19を設けてもよい。これにより、容器11へ供給する原料液化アルゴン量を調整できる。
【0025】
(実施の形態2)
次に、本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置の実施の形態2について図2を用いて説明する。図2において、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。図2では、図1に示した実施の形態1に対して、凝縮器11aに接続されている低沸点成分排出路L11を、上記熱交換器12に接続し、熱交換器12内を通した後、系外へ延在している。これにより、保冷箱10内の寒冷損失を低減できる。
【0026】
(実施の形態3)
次に、本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置の実施の形態3について図3用いて説明する。図3において、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。図3では、図1に示した実施の形態1に対し、低沸点成分排出路L11と凝縮器11aの接続位置を、該凝縮器11aと前記液化アルゴン回収路L7との接続位置と同じ位置にしている。凝縮器11aと液化アルゴン回収路L7との接続位置の直上に低沸点成分排出路L11を接続することにより、低沸点成分のうち、凝縮して液状態のもの(例えば、微量窒素など)を系外へ排出できる。
【0027】
(実施の形態4)
次に、本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置の実施の形態4について図4を用いて説明する。図4において、他の図面と同じ箇所には、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。図4では、図3に示した実施の形態3に対して、凝縮器11aに接続されている低沸点成分排出路L11を、上記熱交換器12に接続し、熱交換器12内を通した後、系外へ延在している。これにより、保冷箱10内の寒冷損失を低減できる。
【0028】
低沸点成分排出路L11は、上記図1図2に示したように、凝縮器11a内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置に接続してもよいし、上記図3図4に示したように、凝縮器11aと液化アルゴン回収路L7との接続位置を同じ位置に接続してもよいが、低沸点成分排出路L11は、凝縮器11a内における液化アルゴンの液面位置よりも上方の位置と、凝縮器11aと液化アルゴン回収路L7との接続位置を同じ位置の両方に、それぞれ低沸点成分排出路L11を設けてもよい。これにより、低沸点成分のうち、凝縮せずにガス状態のもの(例えば、水素など)と、凝縮して液状態のもの(例えば、微量窒素など)の両方を系外へ排出することができるため、液化アルゴンの純度を一層高めることができる。
【0029】
図1図4では、容器11の内部に凝縮器11aを配置した形態を示したが、本発明はこの形態に限定されず、容器11の外部に凝縮器11aを配置してもよい。例えば、図5に示すように、容器11の外部に凝縮器11aを配置し、容器11の底部と凝縮器11aの底部を経路L12で接続し、凝縮器11aの上部と容器11の上部を経路L13で接続する。供給路L1から容器11へ供給された原料液化アルゴンは、経路L12を通して凝縮器11aへ供給する。凝縮器11aへ供給された原料液化アルゴンは、上記熱交換器12から経路L6を通して供給される精製アルゴンガスとの間で熱交換され、気化したアルゴンガスは、経路L13を通して容器11へ供給される。一方、経路L6から凝縮器11aへ供給された精製アルゴンガスは、原料液化アルゴンとの間で熱交換され、凝縮液化され、得られた液化アルゴンは、該凝縮器11aに接続されている液化アルゴン回収路L7を通して系外へ排出され、製品高純度液化アルゴンとして回収される。凝縮器11aには、更に、低沸点成分排出路L11が接続されていてもよく、凝縮器11a内から低沸点成分を系外へ排出することにより、液化アルゴンの純度を一層高めることができる。低沸点成分排出路L11の途中には、弁15が設けられていてもよい。これにより、系外へ排出する低沸点成分の排出量を調整できる。
【0030】
図1図4では、吸着塔14の詳細を図示していないが、吸着塔14における吸着塔の数は1塔に限定されるものではなく、2塔以上の複数塔設けてもよい。複数塔設けることで切り替えができるため、連続操業が可能となる。図1図4では、容器11と熱交換器12を保冷箱10に収納した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、断熱材を用いて容器11と熱交換器12を簡易断熱し、寒冷損失を抑えてもよい。
【0031】
本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置によれば、低沸点成分量が0.1ppm以下の液化アルゴンを製造できる。高純度液化アルゴンは、例えば、製鉄所などにおいて工業ガスの原料として用いることができる。
【0032】
本発明に係る高純度液化アルゴンの製造装置は、既存の液化アルゴンの製造装置に対して簡単に後付けできる。即ち、既存の液化アルゴン製造装置で製造された液化アルゴンを原料とし、上述した製造方法を経ることにより、低沸点成分の含有量が少ない高純度液化アルゴンを製造できる。
【0033】
また、持続可能な開発目標(SDGs)では、資源利用効率の持続的な向上が挙げられており、本発明は、その活動の一部に貢献することができる。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0035】
図1に示した液化アルゴン製造装置を用い、低沸点成分を排出することによる効果を検証した。吸着塔14の出口における精製アルゴンガスの流量を1000Nm3/hとし、精製アルゴンガスの圧力を0.15MPaGとした。吸着塔14の出口における精製アルゴンガス中の水素濃度は、1000ppmまたは100ppmとした。凝縮器11a内の低沸点成分を低沸点成分排出路L11から10Nm3/hまたは20Nm3/hの流量で系外へ排出した。液化アルゴン回収路L7から回収される液化アルゴン中の水素濃度を測定し、下記表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から次のように考察できる。No.1、3に示すように、低沸点成分排出路L11から低沸点成分を10Nm3/h、即ち、精製アルゴンガス流量に対して1%排出した場合の水素除去率は、76~77%程度であった。No.2、4に示すように、低沸点成分排出路L11から低沸点成分を20Nm3/h、即ち、精製アルゴンガス流量に対して2%排出した場合の水素除去率は、86~87%程度であった。凝縮器11a内の低沸点成分を、低沸点成分排出路L11から系外へ排出することにより、製品として回収する液化アルゴンに含まれる低沸点成分量(代表的には、水素量)を低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0038】
10 保冷箱
11 容器
11a 凝縮器
12 熱交換器
13 アルゴンガス圧縮機
14 吸着塔
15 弁
17 原料液化アルゴン気化器
18 アルゴンガス圧縮機吸入圧調整弁
19 弁
L1 供給路
L2~L4 経路
L5、L6 供給路
L7 液化アルゴン回収路
L11 低沸点成分排出路
L12、L13 経路
図1
図2
図3
図4
図5