(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021892
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230207BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20230207BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230207BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20230207BHJP
C08K 5/5425 20060101ALI20230207BHJP
H01B 3/28 20060101ALI20230207BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L71/12
C08K9/04
C08L9/06
C08K5/5425
H01B3/28
H01B5/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189427
(22)【出願日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】110128282
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】周 士凱
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
【テーマコード(参考)】
4J002
5G305
5G307
【Fターム(参考)】
4J002AC031
4J002AC081
4J002CH072
4J002DE076
4J002DE107
4J002DE146
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4J002EU198
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5G305AA06
5G305AB15
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5G305CD01
5G305CD05
5G305CD06
5G307GA03
5G307GB02
5G307GC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板を提供する。
【解決手段】高熱伝導性ゴム樹脂材料は、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及び無機フィラーを含み、前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、40~70重量%の液体ゴムと、10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、20~40重量%の架橋剤とを含む。とりわけ、前記液体ゴムの分子量は、800~6000g/molである。とりわけ、前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱伝導性ゴム樹脂組成物及び無機フィラーを含む高熱伝導性ゴム樹脂材料であって、
前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、
40~70重量%の液体ゴムと、
10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、
20~40重量%の架橋剤と
を含み、
前記液体ゴムの分子量は、800~6000g/molであり、
前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項2】
前記液体ゴムを構成するモノマーは、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーを含み、
前記スチレンモノマーの前記液体ゴム中の含有量は、前記液体ゴムの総重量を100重量%として10~50重量%である、請求項1に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項3】
前記ブタジエンモノマーの総重量に基づいて30~90重量%の前記ブタジエンモノマーは、ビニル基を含む側鎖を有する、請求項2に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項4】
前記無機フィラーは、熱伝導性フィラーを含み、
前記熱伝導性フィラーは、前記表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択される、請求項4に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラーの添加量は、高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して100~150重量部である、請求項4に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素及びケイ酸アルミニウムを含み、
前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、
酸化アルミニウムの添加量は、5~120重量部であり、
窒化ホウ素の添加量は、10~100重量部であり、
ケイ酸アルミニウムの添加量は、30~80重量部である、請求項4に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項8】
前記無機フィラーは、誘電体フィラーを含み、
前記誘電体フィラーは、二酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項9】
前記誘電体フィラーの添加量は、前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して50~100重量部である、請求項8に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項10】
アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有するシロキサンカップリング剤を更に含む、請求項1に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項11】
前記シロキサンカップリング剤の含有量は、前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して0.1~5重量部である、請求項10に記載の高熱伝導性ゴム樹脂材料。
【請求項12】
基材層と、前記基材層に設けられた金属層とを備える高熱伝導性金属基板であって、
前記基材層は、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及び無機フィラーを含む高熱伝導性ゴム樹脂材料で製造されており、
前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、
40~70重量%の液体ゴムと、
10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、
20~40重量%の架橋剤と
を含み、
前記液体ゴムの分子量は、800~6000g/molであり、
前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、高熱伝導性金属基板。
【請求項13】
熱伝導率は、1.2W/m・K以上である、請求項12に記載の高熱伝導性金属基板。
【請求項14】
剥離強度は、4.5~7lb/inである、請求項12に記載の高熱伝導性金属基板。
【請求項15】
比誘電率は、3.5~4.5であり、誘電正接は、0.0035以下である、請求項12に記載の高熱伝導性金属基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム樹脂材料及び金属基板に関し、特に、高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th generation wireless system,5G)の開発に伴い、5G無線通信規格を満たすために、高周波伝送が現在の開発の主流となっている。したがって、業界は、高周波伝送に適した高周波基板材料(例えば、6~77GHzの周波数範囲用)の開発に取り組んでおり、高周波基板を基地局のアンテナ、衛星レーダー、自動車レーダー、無線通信アンテナ、又はパワーアンプに応用できるようにしている。
【0003】
基板に高周波伝送の機能を与えるために、高周波基板は通常、低い比誘電率(dielectric constant,Dk)及び低い誘電正接(dielectric dissipation factor,Df)の特性を持っている。以下、高周波基板の比誘電率及び誘電正接を合わせて、高周波基板の誘電特性と称す。
【0004】
市販の高熱伝導性樹脂材料は、樹脂材料の熱伝導性を向上させるために、所定の比率で熱伝導性フィラーを含有している。樹脂100重量部に対して、熱伝導性フィラーの添加量は、45超~60重量部以下である。熱伝導性フィラーが過量となると、樹脂材料と熱伝導性フィラーとの界面相容性に悪影響を与え、金属基板の耐熱性に影響することにより、高周波基板材料での応用において不利となる。
【0005】
上述したように、従来の技術では、高周波伝送の分野に適用することができる、良好な熱伝導性・耐熱性、且つ優れた剥離強度を有する高熱伝導性樹脂材料及び高熱伝導性金属基板は、未だ提供されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の不足に対し、高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、高熱伝導性ゴム樹脂材料を提供することである。前記高熱伝導性ゴム樹脂材料は、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及び無機フィラーを含み、前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、40~70重量%の液体ゴムと、10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、20~40重量%の架橋剤とを含む。とりわけ、前記液体ゴムの分子量は、800~6000g/molである。とりわけ、前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムを構成するモノマーは、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーを含み、前記液体ゴムの総重量を100重量%として、前記スチレンモノマーの前記液体ゴム中の含有量は、10~50重量%である。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記ブタジエンモノマーの総重量に基づいて、30~90重量%の前記ブタジエンモノマーは、ビニル基を含む側鎖を有する。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記無機フィラーは、熱伝導性フィラーを含み、前記熱伝導性フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択される。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記熱伝導性フィラーの添加量は、100~150重量部である。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素及びケイ酸アルミニウムを含み、高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、酸化アルミニウムの添加量は、5~120重量部であり、窒化ホウ素の添加量は、10~100重量部であり、ケイ酸アルミニウムの添加量は、30~80重量部である。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記無機フィラーは、誘電体フィラーを含み、前記誘電体フィラーは、二酸化ケイ素を含む。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記誘電体フィラーの添加量は、50~100重量部である。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、高熱伝導性ゴム樹脂材料は、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有するシロキサンカップリング剤を更に含む。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1~5重量部である。
【0018】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、高熱伝導性金属基板を提供することである。前記高熱伝導性金属基板は、基材層と、前記基材層に設けられた金属層とを備え、前記基材層は、高熱伝導性ゴム樹脂材料から製造されており、前記高熱伝導性ゴム樹脂材料は、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及び無機フィラーとを含み、前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、40~70重量%の液体ゴムと、10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、20~40重量%の架橋剤とを含む。とりわけ、前記液体ゴムの分子量は、800~6000g/molである。とりわけ、前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、前記高熱伝導性金属基板の熱伝導率は、1.2W/m・K以上である。
【0020】
本発明の一つの実施形態において、前記高熱伝導性金属基板の剥離強度は、4.5~7lb/inである。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、前記高熱伝導性金属基板の比誘電率は、3.5~4.5であり、前記高熱伝導性金属基板の誘電正接は、0.0035以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有利な効果として、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板は、「前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、40~70重量%の液体ゴムを含む」及び「前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する」といった技術的特徴により、高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板の誘電特性、剥離強度、耐熱性及び熱伝導率を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明を参照されたい。
【0024】
以下、所定の具体的な実施態様によって「高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の様々な具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、様々な観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示された内容によって本発明の保護範囲が制限されるべきではない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0025】
[高熱伝導性ゴム樹脂材料]
本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料は、表面処理を行った無機フィラーを含み、無機フィラーの表面にアクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。それによって、ゴム樹脂材料における無機フィラーの添加量は、従来の技術における無機フィラーの添加量の上限を超えることができる。故に、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料は、高周波基板材料としてより好適である。
【0026】
具体的に説明すると、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料は、高熱伝導性ゴム樹脂組成物、及び高熱伝導性ゴム樹脂組成物に均一に分散する無機フィラーを含む。以下にて、高熱伝導性ゴム樹脂材料及び無機フィラーの特性について詳しく説明する。
【0027】
[高熱伝導性ゴム樹脂組成物]
本発明の高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、40~70重量%(wt%)の液体ゴムと、10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、20~40重量%の架橋剤とを含む。
【0028】
上述のような特定の成分及び含有量により、本発明の高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、熱伝導性、誘電特性及び耐熱性が良好な高熱伝導性金属基板を製造可能なものとなり、さらに、高熱伝導性金属基板は、金属層と良好な結合力を有する。高熱伝導性金属基板の特性試験については後述する。
【0029】
液体ゴムの分子量が800~6000g/molである場合に、高熱伝導性ゴム樹脂組成物の流動性が上昇し、高熱伝導性ゴム樹脂組成物の充填性が向上し得る。好ましくは、液体ゴムの分子量は、1000~5500g/molである。
【0030】
注目すべきことは、本発明では、液体ゴムの分子量を制御すると共に、液体ゴムのモノマー成分及び構造を制御することによって、液体ゴムの高熱伝導性ゴム樹脂組成物での含有比率を大幅に増加させることができる。具体的に説明すると、高熱伝導性ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、液体ゴムの高熱伝導性ゴム樹脂組成物中の含有量は、40重量%を超えることが可能であり、従来の技術における液体ゴムの含有量(25重量%)より高くすることができることは明らかである。一つの好ましい実施形態において、本発明に係る液体ゴムの高熱伝導性ゴム樹脂組成物中の含有量は、40~70重量%である。
【0031】
一つの実施形態において、液体ゴムは、液体ジエン系ゴムを含む。具体的に説明すると、液体ジエン系ゴムは、ポリブタジエン樹脂を含む。ポリブタジエン樹脂とは、ブタジエンモノマーを用いて合成されたポリマーであり、例えばブタジエンホモポリマー、又はブタジエンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0032】
一つの好ましい実施形態において、液体ジエン系ゴムは、ブタジエン及びスチレンで形成された共重合体である。即ち、液体ゴムを構成するモノマーは、スチレン及びブタジエンを含む。スチレンモノマー及びブタジエンモノマーは、ランダムに配列してランダム共重合体(random copolymer)を形成していても、あるいは、規則的に配列して交互共重合体(alternating copolymer)又はブロック共重合体(block copolymer)を形成していてもよい。
【0033】
液体ゴムの総重量を100重量%として、スチレンモノマーの液体ゴム中の含有量は、10~50重量%である。スチレンモノマーの液体ゴム中の含有量が10~50重量%であると、液晶と類似する配列構造を達成することが容易となり、それによって、液体ゴムの耐熱性及び相容性を向上させることができる。好ましくは、スチレンモノマーの液体ゴム中の含有量は、15~50重量%である。スチレンモノマーの含有量が50重量%を超えると、高熱伝導性ゴム樹脂材料の粘度が比較的に高くなるため、高熱伝導性金属基板の製造にとって不利になる。
【0034】
更に説明すると、ブタジエンそのものは2つの二重結合を有することから、重合する際に、重合方法の違いによって、様々な構造が得られる。即ち、ポリブタジエンは、cis-1,4-ポリブタジエン、trans-1,4-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエンの中の任意1つ又は複数の構造から構成されていてもよい。具体的に説明すると、ブタジエンが1,4-付加重合反応を行う場合に、cis-1,4-ポリブタジエン又はtrans-1,4-ポリブタジエンの構造が生成される。cis-1,4-ポリブタジエン又はtrans-1,4-ポリブタジエンの構造において、ポリブタジエンは、不飽和側鎖を有しない。ブタジエンが1,2-付加重合反応を行う場合に、1,2-ポリブタジエンの構造が生成される。1,2-ポリブタジエンの構造において、ポリブタジエンは、不飽和側鎖(ビニル基)を有する。
【0035】
一つの好ましい実施形態において、ブタジエンモノマーの総重量に基づいて、30~90重量%の前記ブタジエンモノマー(重合後)は、ビニル基を含む側鎖を有する。好ましくは、ブタジエンモノマーの総重量に基づいて、30~80重量%の前記ブタジエンモノマー(重合後)は、ビニル基を含む側鎖を有する。若しくは、30~80重量%の前記ブタジエンモノマー(重合後)は、ビニル基側鎖を有する。
【0036】
液体ゴムが少なくとも1つのビニル基を含む側鎖(又はビニル基)を有する場合に、架橋した高熱伝導性ゴム樹脂組成物の架橋密度及び耐熱性が向上する。又、本発明において、液体ゴムにおけるビニル基を含む不飽和側鎖(又はビニル基)の測定は、化学分析におけるヨウ素価で定量することができる。
【0037】
液体ゴムにおけるビニル基を含む不飽和側鎖(又はビニル基)の含有量が高いほど、液体ゴムのヨウ素価が高い。ビニル基を含む不飽和側鎖(又はビニル基)は、架橋した高熱伝導性ゴム樹脂組成物の物理特性を向上させることができる。本発明において、液体ゴムのヨウ素価は、30g/100g~60g/100gである。
【0038】
本発明において、ヨウ素価の測定方法は、まず0.3~1mgの液体ゴムを採取し、クロロホルムを添加して液体ゴムを完全に溶解させ、Wijs試液(Wijs solution)を添加して30分間暗所に放置する。次に、20mLのヨウ化カリウム(100g/L)及び100mLの水を添加した後に、0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液を用いて滴定を行い、溶液が薄黄色となった時に、数滴のデンプン溶液(10g/L)を加え、青色が消えるまで滴定を行う。
【0039】
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は、1000~20000g/molであり、好ましくは、2000~10000g/molであり、より好ましくは、2000~2200g/molである。ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量が20000g/molより少ない場合に、ポリフェニレンエーテル樹脂の溶媒に対する溶解性が高いため、高熱伝導性樹脂組成物の製造に有利である。
【0040】
一つの好ましい実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、少なくとも1つの改質基を有してもよい。改質基は、水酸基、アミノ基、ビニル基、スチレン基、メタクリレート基及びエポキシ基からなる群から選択されてもよい。ポリフェニレンエーテル樹脂の改質基は、不飽和結合がもたらされ、架橋反応の進行が有利となり、それによって、高ガラス転移温度且つ耐熱性が良好な材料の形成が可能になる。本実施形態において、ポリフェニレンエーテルの分子構造における2つの末端はそれぞれ改質基を有すると共に、前記2つの改質基が同一である。
【0041】
一つの好ましい実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、単一の種類のポリフェニレンエーテルを含んでもよく、複数の種類のポリフェニレンエーテルを同時に含んでもよい。
【0042】
例えば、ポリフェニレンエーテルは、2つの末端にある改質基が水酸基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がメタクリレート基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がスチレン基であるポリフェニレンエーテル、又は2つの末端にある改質基がエポキシ基であるポリフェニレンエーテルであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0043】
一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルを含んでもよい。第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルのそれぞれの分子末端は少なくとも1つの改質基を有し、改質基は、水酸基、アミノ基、ビニル基、スチレン基、メタクリレート基及びエポキシ基などの基からなる群から選択されると共に、第1のポリフェニレンエーテルの改質基は、第2のポリフェニレンエーテルの改質基と異なっている。具体的に説明すると、第1のポリフェニレンエーテルと第2のポリフェニレンエーテルとの重量比は、0.5~1.5であり、好ましくは、0.75~1.25であり、より好ましくは、1である。
【0044】
例えば、第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルは独立に、2つの末端にある改質基が水酸基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がメタクリレート基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がスチレン基であるポリフェニレンエーテル、又は2つの末端にある改質基がエポキシ基であるポリフェニレンエーテルであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
本発明の架橋剤は、ポリフェニレンエーテル樹脂と液体ゴムとの間の架橋度を向上させることができる。本実施形態において、架橋剤は、アリル基(allyl group)を含んでもよい。例えば、架橋剤は、トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate,TAC)、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate,TAIC)、フタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリアリルトリメリテート(triallyl trimellitate)又はそれらの組み合わせであってもよい。好ましくは、架橋剤トリアリルイソシアヌレートであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
[無機フィラー]
無機フィラーは、熱伝導性フィラー及び誘電体フィラーを含んでもよい。熱伝導性フィラーは主に、ゴム樹脂材料の熱伝導性の向上剤として用いられる。誘電体フィラーは主に、ゴム樹脂材料の誘電特性の向上剤として用いられる。注意すべきことは、熱伝導性フィラーは、ゴム樹脂材料の誘電特性を向上させることもあり、上述した説明により概に説明した通り、本発明はこれに制限されるものではない。
【0047】
[熱伝導性フィラー]
熱伝導性フィラーの添加は、高熱伝導性ゴム樹脂材料の粘度を低減させると共に、高熱伝導性ゴム樹脂材料の熱伝導性を向上させることができる。例えば、熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるが、本発明はこれに制限されるものではない。一つの好ましい実施形態において、熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム及び窒化ホウ素のうちの少なくとも1つである。
【0048】
前記熱伝導性フィラーは、その表面に、表面処理を行うことにより得られたアクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。このような熱伝導性フィラーと液体ゴムとの反応により、高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、良好な相容性を有し、高熱伝導性金属基板の耐熱性に悪影響を与えることはない。
【0049】
注目すべきことは、熱伝導性フィラーは、単一の成分からなっていても、複数の成分で混合されてなっていてもよい。また、全ての熱伝導性フィラーが、表面処理されることによって得られたアクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを含んでいても、一部の熱伝導性フィラーが、表面処理されることによって得られたアクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば、熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム及び窒化ホウ素を含む場合、一つの実施形態では、酸化アルミニウムは、表面処理されることにより得られたアクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有するが、窒化ホウ素は、表面処理されていない。しかし、前述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0050】
一つの好ましい実施形態において、熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素及びケイ酸アルミニウムを同時に含む。高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、酸化アルミニウムの添加量は、50~120重量部であり、窒化ホウ素の添加量は、10~100重量部であり、ケイ酸アルミニウムの添加量は、30~80重量部である。
【0051】
具体的に、熱伝導性フィラーに表面処理を行う方法では、特定の官能基を有するシラン(例えば、ビニル基を有するシラン又はアクリル基を有するシラン)に浸漬させることによって、熱伝導性フィラーに、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つの官能基を付与する。
【0052】
熱伝導性フィラーの添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、高熱伝導性ゴム樹脂組成物の総重量100重量部に対して、熱伝導性フィラーの添加量は、100~150重量部であり、110~140重量部であることは好ましく、120~130重量部であることはより好ましい。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0053】
熱伝導性フィラーの外観は、粒子状であっても、シート状であってもよく、好ましくは、シート状である。熱伝導性フィラーの平均粒子径が0.3~30μmであり、かつ、熱伝導性フィラーの粒子径の分布範囲が0.3~30μmであることによって、熱伝導性フィラーが高熱伝導性ゴム樹脂組成物に均一に分散されるため有利である。
【0054】
[誘電体フィラー]
誘電体フィラーの添加によって、高熱伝導性ゴム樹脂材料の粘度を低減させると共に、高熱伝導性ゴム樹脂材料の比誘電率を低減させることができる。例えば、誘電体フィラーは、二酸化ケイ素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、二酸化セリウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるが、本発明はこれに制限されるものではない。一つの好ましい実施形態において、誘電体フィラーは、二酸化ケイ素を含む。二酸化ケイ素は、溶融シリカ又は結晶シリカであってもよく、溶融シリカであることは好ましい。
【0055】
一つの好ましい実施形態において、誘電体フィラーは、その表面に、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。このような誘電体フィラーと液体ゴムとの反応により、高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、良好な相容性を有し、高熱伝導性金属基板の耐熱性に悪影響を与えることはない。
【0056】
具体的に、誘電体フィラーの表面処理方法は、熱伝導性フィラーの表面処理方法と類似するので、ここではその説明を省略する。
【0057】
誘電体フィラーの外観は、球状である。誘電体フィラーの平均粒子径が、0.3~30μmであると共に、誘電体フィラーの粒子径の分布範囲が、0.3~30μmであることによって、誘電体フィラーを高熱伝導性ゴム樹脂組成物に均一に分散するため有利である。
【0058】
一つの好ましい実施形態において、誘電体フィラーの純度は、99.95%以上であり、即ち、誘電体フィラーにおける金属不純物の含有量は、500ppm以下である。更に説明すると、誘電体フィラーにおいて、カルシウム金属の含有量は200ppm以下であり、アルミニウム金属の含有量は、200ppm以下であり、鉄金属の含有量は、100ppm以下である。誘電体フィラーの純度が99.95%以上である場合には、高熱伝導性金属基板の誘電正接を0.002以下(10GHz)に維持することができる。好ましくは、高熱伝導性金属基板の誘電正接は、0.0018以下である。
【0059】
誘電体フィラーの添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、高熱伝導性ゴム樹脂組成物の総重量100重量部に対して、誘電体フィラーの添加量は、5~150重量部であり、5~120重量部であることは好ましく、5~90重量部であることはより好ましい。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0060】
[シロキサンカップリング剤]
高熱伝導性ゴム樹脂材料は、シロキサンカップリング剤を更に含んでもよい。シロキサンカップリング剤の添加は、繊維布、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及びフィラー(熱伝導性フィラー及び誘電体フィラーを含む)の間の反応性及び相容性を向上させ、高熱伝導性金属基板の剥離強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0061】
一つの好ましい実施形態において、シロキサンカップリング剤は、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する。シロキサンカップリング剤の分子量は、100~500g/molであり、110~250g/molであることは好ましく、120~200g/molであることはより好ましい。
【0062】
高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1~5重量部であり、好ましくは、0.5~3重量部である。
【0063】
[難燃剤]
高熱伝導性ゴム樹脂材料は、難燃剤を更に含んでもよい。難燃剤の添加により、高周波基板の難燃性を向上させることができる。例えば、難燃剤は、リン系難燃剤又は臭素系難燃剤であってもよい。好ましくは、難燃剤はハロゲンフリー難燃剤であり、即ち、臭素を含まないものである。
【0064】
臭素系難燃剤として、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(ethylene bistetrabromophthalimide)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(tetradecabromodiphenoxy benzene)、デカブロモジフェノキシオキシド(decabromo diphenoxy oxide)又はそれらの組み合わせが挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0065】
リン系難燃剤として、リン酸エステル系(sulphosuccinic acid ester)、ホスファゼン系(phosphazene)、ポリリン酸アンモニウム系、ポリリン酸メラミン系(melamine polyphosphate)又はシアヌル酸メラミン(melamine cyanurate)であってもよい。リン酸エステル系難燃剤としては、リン酸トリフェニル(triphenyl phosphate,TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(tetraphenyl resorcinol bis(diphenylphosphate),RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol A bis(diphenyl phosphate),BPAPP)、ビスフェノールAビス(ジメチル)ホスファート(BBC)、レゾルシノール二リン酸(例えば、大八化学工業社製、CR-733S)、レゾルシノールビス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)(例えば、大八化学工業社製、PX-200)が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0066】
難燃剤の添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、難燃剤の添加量は、0.1~5重量部である。
【実施例0067】
[特性の測定]
本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料が高周波基板材料として用いられることを証明するために、本発明において、40~70重量%の液体ゴムと、10~30重量%のポリフェニレンエーテル樹脂と、20~40重量%の架橋剤とを混合することにより、高熱伝導性ゴム樹脂組成物を製造し、高熱伝導性ゴム樹脂組成物に熱伝導性フィラー及び誘電体フィラーを配合し、それによって、実施例1~6及び比較例1~3の高熱伝導性ゴム樹脂材料を製造した。実施例1~6及び比較例1~3の高熱伝導性ゴム樹脂材料の成分比率は、表1に示す通りである。
【0068】
表1に示すように、液体ゴムは、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエンと他のモノマー(非スチレン)との共重合体、又はブタジエンホモポリマーであってもよい。具体的に説明すると、ブタジエン-スチレン共重合体は、品番Ricon(登録商標)100、Ricon(登録商標)181及びRicon(登録商標)257の液体ゴムであってもよい。ブタジエンと他のモノマー(非スチレン)との共重合体は、ポリウレタンを含むブタジエン共重合体、例えば、品番TE2000の液体ゴムであってもよい。ブタジエンホモポリマーは、品番Ricon(登録商標)150、Activ(登録商標)50、Activ(登録商標)1000、B-1000、B-2000及びB-3000の液体ゴムであってもよい。表1に記載されたブタジエンホモポリマーA、ブタジエンホモポリマーB及びブタジエンホモポリマーCはそれぞれ、B-2000、Activ(登録商標)1000及びRicon(登録商標)150である。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0069】
表1に示すように、ポリフェニレンエーテル樹脂は、2つの末端にある改質基がメタクリレート基であるポリフェニレンエーテルである。架橋剤はトリアリルイソシアヌレート(TAIC)である。
【0070】
表1に示すように、熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム又は窒化ホウ素であり、とりわけ、酸化アルミニウムは、表面改質処理により得られたアクリル基を有し、窒化ホウ素は表面改質処理がされていない。さらに、窒化ホウ素A、窒化ホウ素B及び窒化ホウ素Cは夫々、様々な粒子径を有する凝集窒化ホウ素である。具体的に説明すると、窒化ホウ素AのD50粒子径は20μmであり、窒化ホウ素BのD50粒子径は25μmであり、窒化ホウ素CのD50粒子径は28μmである。誘電体フィラーは、二酸化ケイ素であり、二酸化ケイ素に表面処理を行うことができる。
【0071】
表1に示すように、シロキサンカップリング剤は、末端にアクリル基を有するシロキサン、末端にビニル基を有するシロキサン、又は末端にアミノ基を有するシロキサンであってもよい。更に説明すると、末端にアクリル基を有するシロキサン及び末端にビニル基を有するシロキサンにより、繊維布、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及びフィラーの間の反応性及び相容性が向上し得る。
【0072】
次に、南亞株式会社が販売する、品番1078であるガラス繊維布を、実施例1~6及び比較例1~3の高熱伝導性ゴム樹脂材料に含浸、乾燥及び成形工程を行った後に、プリプレグ(prepreg)を得た。プリプレグにその後の加工処理を行い、且つプリプレグに金属層に設置した後に、実施例1~6及び比較例1~3の高熱伝導性金属基板を製造することができる。実施例1~6及び比較例1~3の高熱伝導性金属基板の特性は、表1に示す通りである。
【0073】
表1における、高熱伝導性金属基板を評価する方法は、以下の通りである。
(1)比誘電率(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、10GHzの周波数での比誘電率を測定する。
(2)誘電正接(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、10GHzの周波数での誘電正接を測定する。
(3)剥離強度:試験方法IPC-TM-650-2.4.8に基づいて、銅箔基板の剥離強度を測定する。
(4)耐熱性:圧力鍋において温度120℃、圧力2atmで銅箔基板を120分加熱して、288℃に加熱されたはんだ付け炉に浸し、ポップコーン・層間剥離するまでにかかる時間を記録する。
(5)熱伝導率:測定方法ASTM D5470に基づいて、銅箔基板の熱伝導率を測定する。
【0074】
【0075】
表1の結果によると、液体ゴム、ポリフェニレンエーテル樹脂及び架橋剤の含有量を制御することにより、本発明の実施例1~6に係る高熱伝導性金属基板は、良好な誘電特性、剥離強度、耐熱性及び熱伝導率を有する。又、高熱伝導性ゴム樹脂組成物に含まれた液体ゴムの含有量が高くても(25重量%を超える)、本発明の高熱伝導性金属基板は依然として、良好な剥離強度を有する。
【0076】
具体的に説明すると、本発明の高熱伝導性金属基板の比誘電率(10GHz)は、4.0以下であり、好ましくは、3.0~3.9であり、より好ましくは、3.5~3.8である。本発明の高熱伝導性金属基板の誘電正接は、0.0035以下であり、好ましくは、0.0032以下であり、より好ましくは、0.0030以下である。本発明の高熱伝導性金属基板の剥離強度は、4.5~7lb/inであり、好ましくは、5~7lb/inである。本発明の高熱伝導性金属基板の熱伝導率は、0.8~2W/m・Kであり、好ましくは、1~2W/m・Kであり、より好ましくは、1.2~2W/m・Kである。
【0077】
比較例1の結果によると、スチレンモノマーを添加しない場合に、高熱伝導性ゴム樹脂組成物の反応性が低くなり、高熱伝導性金属基板の剥離強度に悪影響を与える。比較例1において、液体ゴム(Ricon 150)は、ブタジエンホモポリマーのみを含み、スチレンモノマーを含まないため、高熱伝導性金属基板の剥離強度が比較的に低くなる。
【0078】
比較例2の結果によると、高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、窒化ホウ素の添加量を15~100重量部を制御すると、高熱伝導性金属基板の熱伝導率を向上させることができる。比較例2において、窒化ホウ素の添加量は10重量部(15重量部より少ない)であるため、高熱伝導性金属基板の熱伝導率を効果的に向上させることができない。
【0079】
比較例3の結果によると、シロキサンカップリング剤の末端基は、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つである場合に、繊維布、高熱伝導性ゴム樹脂及びフィラーの間の反応性及び相容性が向上し、高熱伝導性金属基板の剥離強度及び耐熱性が向上し得る。比較例3では、シロキサンカップリング剤の末端基はアミノ基であるため、高熱伝導性金属基板の剥離強度及び耐熱性が効果的に向上しない。
【0080】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板は、「前記高熱伝導性ゴム樹脂組成物は、40~70重量%の液体ゴムを含む」及び「前記無機フィラーは、表面処理を行うことにより得られた、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する」といった技術的特徴により、高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板の誘電特性、剥離強度、耐熱性及び熱伝導率を改善することができる。
【0081】
更に説明すると、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板は、「前記液体ゴムを構成するモノマーは、スチレンモノマー及びブタジエンモノマーを含む」といった技術的特徴により、高熱伝導性金属基板の剥離強度を向上させることができる。
【0082】
更に説明すると、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板は、「前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化ホウ素及びケイ酸アルミニウムを含む」、「高熱伝導性ゴム樹脂組成物100重量部に対して、酸化アルミニウムの添加量は、50~120重量部であり、窒化ホウ素の添加量は、10~100重量部であり、ケイ酸アルミニウムの添加量は、30~80重量部である」といった技術的特徴により、高熱伝導性金属基板の熱伝導率を向上させることができる。
【0083】
更に説明すると、本発明に係る高熱伝導性ゴム樹脂材料及び高熱伝導性金属基板は、「前記シロキサンカップリング剤は、アクリル基及びビニル基のうちの少なくとも1つを有する」といった技術的特徴により、高熱伝導性金属基板の剥離強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0084】
以上に開示された内容は、単に本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術的変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。