(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021920
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】てん充材組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/14 20060101AFI20230207BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20230207BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230207BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230207BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230207BHJP
C08K 5/37 20060101ALI20230207BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20230207BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20230207BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C08L75/14
E01B37/00 C
C08F2/44 Z
C08F290/06
C08K3/01
C08K5/37
C08L33/04
C08L31/04 D
C09K3/10 E
C09K3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098898
(22)【出願日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021126620
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 英哲
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏之
【テーマコード(参考)】
2D057
4H017
4J002
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
2D057CA05
2D057CA08
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB03
4H017AC16
4H017AD02
4H017AE03
4J002BC022
4J002BF022
4J002BG022
4J002CK031
4J002CK041
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ056
4J002EK017
4J002EK027
4J002EK037
4J002EK047
4J002EK057
4J002EK067
4J002EK077
4J002EK087
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4J002EV068
4J002EV088
4J002FD096
4J002FD147
4J002GL00
4J011NA25
4J011NB06
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4J011PA09
4J011PA13
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4J127AA03
4J127BB221
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4J127DA45
4J127DA46
4J127DA62
4J127DA66
4J127FA15
4J127FA49
(57)【要約】
【課題】硬化収縮率が小さい組成物であり、かつ、電動工具等で容易に破壊できる易破壊性を有する硬化体(てん充層)を形成することができるてん充材組成物を提供すること。
【解決手段】ウレタンアクリレート樹脂(A)と、無機顔料(B)と、硬化剤(C)と、カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(d1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)から選択される少なくとも1種とを含有する、てん充材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレート樹脂(A)と、
無機顔料(B)と、
硬化剤(C)と、
カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(d1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)から選択される少なくとも1種と
を含有する、てん充材組成物。
【請求項2】
前記重合体(d1)および(d2)の合計含有量が、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)100質量部に対して10~55質量部である、請求項1に記載のてん充材組成物。
【請求項3】
硬化収縮率が4%以下である、請求項1または2に記載のてん充材組成物。
【請求項4】
さらにチオール化合物を含有する、請求項1または2に記載のてん充材組成物。
【請求項5】
軌道用である、請求項1または2に記載のてん充材組成物。
【請求項6】
軌道の補修用である、請求項1または2に記載のてん充材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はてん充材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造体の隙間や補修には、てん充材組成物が用いられている。
該構造体が、軌道、具体的にはスラブ式軌道である場合、てん充材組成物は、軌道スラブの高低調整、軌道スラブの列車通過時の上下方向のあおり防止、雨水の進入防止などを目的として、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体や、路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体を形成するために、特に、劣化したセメントアスファルトモルタル(CAモルタル)層を補修するために用いられる。
また、該構造体が枕木を有する軌道である場合、列車通過時の上下方向のあおり防止を目的として、レール下部の枕木下に生じる間隙を埋めるために、てん充材組成物が用いられる。
【0003】
このようなてん充材組成物としては、例えば、特許文献1~3に記載の組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-98527号公報
【特許文献2】特開2018-59301号公報
【特許文献3】特開昭59-56474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1や2に記載などの従来のてん充材組成物は、硬化収縮が大きく、該組成物から形成されるてん充層(硬化層)は、雨水の進入防止などの前記目的を十分に達成することができなかった。
【0006】
また、てん充材組成物から形成されたてん充層が劣化した場合や、土地の隆起や地震などにより、てん充材組成物から形成されたてん充層が所定の目的を達成できなくなった場合には、該てん充層を、電動工具等を用いて破壊して除去し、新たにてん充層を形成する必要が生じることがある。このようなてん充層の破壊が必要な場合、前記特許文献3に記載などの従来のてん充材組成物から形成されたてん充層は、強靭で容易に破壊することができなかった。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、硬化収縮率が小さい組成物であり、かつ、電動工具等で容易に破壊できる易破壊性を有する硬化体(てん充層)を形成することができるてん充材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、特定の組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の態様例は、以下の通りである。
【0009】
[1] ウレタンアクリレート樹脂(A)と、
無機顔料(B)と、
硬化剤(C)と、
カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(d1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)から選択される少なくとも1種と
を含有する、てん充材組成物。
【0010】
[2] 前記重合体(d1)および(d2)の合計含有量が、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)100質量部に対して10~55質量部である、[1]に記載のてん充材組成物。
【0011】
[3] 硬化収縮率が4%以下である、[1]または[2]に記載のてん充材組成物。
【0012】
[4] さらにチオール化合物を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のてん充材組成物。
【0013】
[5] 軌道用である、[1]~[4]のいずれかに記載のてん充材組成物。
[6] 軌道の補修用である、[1]~[5]のいずれかに記載のてん充材組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硬化収縮率が小さい組成物であり、かつ、易破壊性を有する硬化体(てん充層)を形成することができるてん充材組成物を提供することができる。
また、本発明に係るてん充材組成物は、注入(てん充)性に優れるため、軌道、特に、スラブ式軌道の補修材料として、さらには、軌道スラブと路盤側構造物との間に流し込む材料として好適に使用することができ、容易にスラブ式軌道の補修を行うことができるだけでなく、既設のCAモルタルからなる充填層とも密着した状態で硬化し、かつ、硬化収縮も小さい。このため、軌道スラブと路盤側構造物との間の空隙に隙間なく硬化体(てん充層)を形成することができ、形成される硬化体は、水分等による凍害の影響を受けにくく、耐久性に優れる。
さらに、前記スラブ式軌道の補修は、電車が運行していない夜間等に短時間で行う必要があるため、速硬化性が求められるが、本発明に係るてん充材組成物は速硬化性に優れるため、この点でも好ましい。
また、本発明によれば、バネ定数が以下の範囲にある硬化体(てん充層)を形成することができる。このような硬化体は、軌道スラブと路盤側構造物との間の充填層や枕木下部の充填層として用いられた際に軌道を十分に支持でき、列車走行時に発生するあおり等を抑制でき、快適な乗り心地を提供できる軌道を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、スラブ式軌道の構造の一例を一部断面にして示した斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例におけるバネ定数を測定する際に用いた型枠を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪てん充材組成物≫
本発明に係るてん充材組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、ウレタンアクリレート樹脂(A)(以下「成分(A)」ともいう。他の成分についても同様。)と、無機顔料(B)と、硬化剤(C)と、カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(d1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)から選択される少なくとも1種(以下、重合体(d1)および(d2)から選択される少なくとも1種を「成分(D)」ともいう。)とを含有する。
【0017】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、貯蔵安定性に優れる等の点から、2成分型以上の組成物であることが好ましく、2成分型の組成物であることがより好ましい。この場合、通常、前記成分(A)および成分(D)は主剤成分に配合され、前記成分(C)は硬化剤成分に配合され、該主剤成分と硬化剤成分とを混合することによって、本組成物を調製することができる。
なお、本組成物が2成分型の組成物である場合、成分(B)は硬化剤成分中に配合してもよいが、均一な物性を有する硬化体を容易に得ることができる等の点から、主剤成分に配合することが好ましい。
【0018】
本組成物の硬化収縮率は、好ましくは4%以下、より好ましくは3.8%以下、さらに好ましくは3.6%以下、特に好ましくは3.0%以下であり、その下限は特に制限されず、低ければ低い方がよいが、例えば2.0%である。
硬化収縮率が前記範囲にあると、本組成物から形成される硬化体(てん充層)と他部材との間に空隙が生じ難く、所望の形状の硬化体(てん充層)を容易に形成できるため、該空隙からの水分等の侵入を抑制することができ、耐久性に優れる構造体を容易に得ることができる。
該硬化収縮率は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0019】
本組成物は、本発明の効果がより発揮される等の点から、軌道に好適に使用され、さらに軌道の補修用に好適に使用される。該軌道としては、スラブ式軌道が好ましい。
本組成物は、具体的には、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体形成用組成物、路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物であることが好ましく、路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物であることが特に好ましい。
【0020】
なお、スラブ式軌道は、コンクリート等で構築した高架構造物や地下構造物、橋梁などを路盤(これらの構造物を「路盤側構造物」ともいう。)とし、この路盤側構造物上に、充填層を介してコンクリート製等の軌道スラブを固定し、この軌道スラブに軌道レールを締結してなる軌道のことをいう。スラブ式軌道の構造の具体例を
図1に示す。
図1に示すスラブ式軌道10では、路盤側構造物20の上面に、充填層22を介して軌道スラブ24が設けられ、さらに軌道スラブ24の上面には、一対の軌道レール30,30が配設され、軌道スラブ24は両端部に切欠き部26,26を備え、路盤側構造物20上に所定間隔おきに設けられた突起部28と、軌道スラブ24の切欠き部26とが位置合わせされている。
【0021】
前記スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体とは、
図1における軌道スラブ24と突起部28との間に形成される樹脂硬化体のことをいい、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体とは、前記充填層22(の少なくとも一部)のことをいう。
前記充填層22は、スラブ式軌道を作製した初期の段階では、セメントとアスファルト乳剤と細骨材とを混合することで得られるCAモルタルからなることが多いが、このCAモルタルからなる層は劣化するため、この劣化した層の補修のため、通常、劣化した層を削り取った後、補修用組成物により樹脂硬化体が形成される。つまり、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物の好適例としては、この補修用組成物が挙げられる。
【0022】
<ウレタンアクリレート樹脂(A)>
成分(A)としては、ラジカル反応性不飽和基を有するウレタンアクリレート樹脂が挙げられる。成分(A)の具体例としては、ポリイソシアネートと、ポリヒドロキシ化合物または多価アルコール類とを反応させた後、余剰のイソシアナト基と水酸基含有(メタ)アクリル化合物とを反応させて得られるラジカル反応性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。この反応の際には、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリル化合物とともに、水酸基含有アリルエーテル化合物等を用いてもよい。
また、成分(A)としては、ポリイソシアネートと、ポリヒドロキシ化合物または多価アルコール類と、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とを反応させた後、ポリヒドロキシ化合物または多価アルコール類由来の未反応のヒドロキシ基に、ポリイソシアネートを反応させて得られる樹脂も挙げられる。この反応の際にも、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリル化合物ともに、水酸基含有アリルエーテル化合物等を用いてもよい。
成分(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルのことを意味する。同様の表現(例:(メタ)アクリレート)は同様の意味を有する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂を、単に「アクリル樹脂」ともいう。つまり、ウレタンアクリレート樹脂は、ウレタンアクリレート樹脂および/またはウレタンメタクリレート樹脂のことである。
【0024】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、コスト等の点から、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
前記ポリイソシアネートの市販品としては、バーノック D-750(DIC(株)製)、クリスボン NK(DIC(株)製)、デスモジュール L(住化バイエルウレタン(株)製)、コロネート L(東ソー(株)製)、タケネート D102(武田薬品工業(株)製)、イソネート 143L(三菱化学(株)製)、デュラネートシリーズ(旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記ポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0025】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、グリセリン-エチレンオキシド付加物、グリセリン-プロピレンオキシド付加物、グリセリン-テトラヒドロフラン付加物、グリセリン-エチレンオキシド-プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン-エチレンオキシド-プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド-プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記ポリヒドロキシ化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0026】
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2-シクロヘキサングリコール、1,3-シクロヘキサングリコール、1,4-シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル-4,4-ジオール、2,6-デカリングリコール、2,7-デカリングリコールが挙げられる。
前記多価アルコール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ブレンマーシリーズ(日油(株)製)が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
前記水酸基含有アリルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2-ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
前記水酸基含有アリルエーテル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
成分(A)の含有量は、バネ定数が以下の範囲にある硬化体(てん充層)を容易に形成することができ、易破壊性に優れる硬化体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは10~30質量%、より好ましくは12~20質量%である。成分(A)の含有量が前記範囲よりも少ない場合、本組成物の粘度が上昇し、流動性の低下や、得られる硬化体の易破壊性が低下するおそれがある。また、成分(A)の含有量が前記範囲よりも多い場合、本組成物から得られる硬化体の硬化収縮が増加したり、易破壊性が低下するおそれがある。
本明細書において、本組成物の固形分とは、本組成物中の溶剤以外の成分のことをいう。
【0030】
なお、本組成物(主剤成分)を調製する際には、成分(A)の原料として、ウレタンアクリレート樹脂自体を用いてもよく、得られるてん充材組成物の硬度、耐候性、耐水性等の物性向上および粘度調整等の点から、1種または2種以上のウレタンアクリレート樹脂と、1種または2種以上のラジカル重合性モノマーとを含有するウレタンアクリレート樹脂組成物を用いてもよい。
【0031】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、スチレンのα-,o-,m-またはp-アルキル誘導体、ニトロ誘導体、シアノ誘導体、アミド誘導体、エステル誘導体、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジ-i-プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニルなどのビニル化合物;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドが挙げられる。
【0032】
また、前記ラジカル重合性モノマーとして、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物も使用できる。具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの各種ポリオール類の(メタ)アクリル酸エステル;2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE-100)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE-200)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE-500)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:A-BPE-4)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:A-BPE-10)が挙げられる。
【0033】
前記ウレタンアクリレート樹脂組成物中のラジカル重合性モノマーの含有量は、粘度を低下させることができ、硬度、耐候性、耐水性に優れるてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、前記ウレタンアクリレート樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは40~70質量%、より好ましくは50~60質量%である。
【0034】
<無機顔料(B)>
成分(B)としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、珪砂、マイカ、カリ長石、ウォラストナイト、カオリン、クレー、ベントナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムが挙げられる。これらの中でも、貯蔵安定性や経済性に優れる本組成物が得られ、さらに、バネ定数が以下の範囲にある硬化体(てん充層)を容易に形成することができる等の点から、シリカまたは炭酸カルシウムが好ましい。
成分(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
成分(B)のJIS K 5101 顔料試験方法 第14部 ふるい残分に準拠して測定した平均粒径(重量累積粒度分布の50%径)は、硬化収縮率が小さいてん充材組成物を容易に得ることができ、かつ、バネ定数が以下の範囲にある硬化体(てん充層)を容易に形成することができる等の点から、好ましくは10~120μm、より好ましくは30~100μm、さらに好ましくは45~85μmである。
【0036】
成分(B)の含有量は、硬化収縮率が小さいてん充材組成物を容易に得ることができ、かつ、バネ定数が以下の範囲にある硬化体(てん充層)を容易に形成することができ、易破壊性に優れる硬化体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは30~80質量%、より好ましくは50~65質量%であり、成分(A)100質量部に対し、好ましくは200~500質量部、より好ましくは300~400質量部である。
【0037】
<硬化剤(C)>
成分(C)は、成分(A)を硬化させることができれば特に制限されないが、具体例としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
成分(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0038】
成分(C)としては、例えば、公知の有機過酸化物が挙げられる。該有機過酸化物としては、10時間半減期温度が、30~180℃である化合物が好ましい。
前記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートが挙げられる。
また、成分(C)としては、公知のアゾ化合物も挙げられる。
【0039】
成分(C)の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、3-イソプロピルヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイル-m-メチルベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドが挙げられる。
【0040】
成分(C)の含有量は、速硬化性に優れるてん充材組成物を容易に得ることができ、また、硬化が十分に進み、バネ定数が以下の範囲にあり、強度や靱性などに優れる硬化体(てん充層)を容易に形成することができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~6質量部である。
なお、前記成分(C)の含有量は、本組成物を調製する際に用いる成分(C)の使用量であり、成分(C)が反応や分解等する前の本組成物中の量であり、具体的には、本組成物を加熱しない(例:23℃以下)で調製する際の成分(A)に対する使用量である。
【0041】
<重合体(d1)および(d2)>
成分(D)は、カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(d1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)から選択される少なくとも1種であり、成分(D)を前記成分(A)~(C)とともに用いることで、本組成物が硬化する際の硬化収縮を抑制することができる。
成分(D)としては、硬化収縮がより小さいてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、前記重合体(d1)であることがより好ましい。
成分(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0042】
前記重合体(d1)は、前記成分(A)以外の重合体であり、前記重合体(d1)としては、例えば、ポリカルボン酸ビニルの変性体;カルボン酸ビニルとカルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体との共重合体;が挙げられる。
成分(d1)としては、硬化収縮の抑制の点から、カルボン酸ビニル由来の構造単位が100%であり、かつ、未変性であるポリカルボン酸ビニル以外の重合体であることが好ましい。
また、前記重合体(d1)は、易破壊性に優れる硬化体(てん充層)を容易に形成することができる等の点から、23℃において固体であることが好ましく、さらに、極性モノマーに完全に溶解しない(例:23℃において極性モノマー[例:2-ヒドロキシエチルメタクリレート]100質量部に重合体(d1)を70質量部溶解させた場合に、完全に溶解しない)重合体であることが好ましい。このような前記重合体(d1)は、前記成分(A)や、ウレタンアクリレート樹脂組成物中に含まれるラジカル重合性モノマーと混合した際に、これらの成分に溶解する部位と、溶解せず固体状態のままの部位の両方が存在すると考えられる。後者の固体状態のままの部位は、本組成物を硬化させた際に、微小なボイド(空隙)やクレイズ(小クラック)を発生させるため、本組成物の易破壊性が向上すると考えられる。
【0043】
前記ポリカルボン酸ビニルの変性体としては、例えば、ポリカルボン酸ビニルの一部をケン化した部分ケン化物、ポリカルボン酸ビニルまたは該部分ケン化物を酸変性した酸変性物、ポリカルボン酸ビニルまたは該部分ケン化物にアセトアセチル基などの疎水性基を付与した疎水性基変性物が挙げられる。
【0044】
前記カルボン酸ビニルとしては、例えば、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、桂皮酸ビニルが挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。
カルボン酸ビニルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
前記カルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
前記カルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記カルボン酸ビニルとカルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体との共重合体としては、該共重合体を酸変性した酸変性物であってもよく、該共重合体に疎水性基を付与した疎水性基変性物であってもよい。
【0046】
前記重合体(d2)は、前記成分(A)および重合体(d1)以外の重合体であり、前記重合体(d2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、およびその変性物が挙げられる。前記変性物としては、該(共)重合体を酸変性した酸変性物であってもよく、該共重合体に疎水性基を付与した疎水性基変性物であってもよい。
前記重合体(d2)としては、可塑剤のような作用を有し、応力緩和に寄与できる等の点から、重量平均分子量が1万~10万程度の(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体であることが好ましい。
【0047】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0048】
重合体(d1)および(d2)の合計含有量は、硬化収縮率がより小さいてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは10~55質量部、より好ましくは20~50質量部、特に好ましくは30~45質量部である。
【0049】
なお、本組成物(主剤成分)を調製する際には、成分(D)の原料として、重合体(d1)および/または重合体(d2)自体を用いてもよく、得られるてん充材組成物の硬度、耐候性、耐水性等の物性向上および粘度調整等の点から、重合体(d1)および重合体(d2)から選ばれる少なくとも1種と、1種または2種以上のラジカル重合性モノマーとを含有する重合体組成物を用いてもよい。
前記重合体組成物中のラジカル重合性モノマーの含有量は、粘度を低下させることができ、硬度、耐候性、耐水性に優れるてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、前記重合体組成物100質量%に対して、好ましくは50質量%未満、より好ましくは35~45質量%である。
前記ラジカル重合性モノマーとしては特に制限されないが、具体的には、成分(A)の欄で例示したラジカル重合性モノマーと同様のモノマーが挙げられる。
【0050】
また、本組成物(主剤成分)を調製する際には、成分(D)の原料として、重合体(d1)および重合体(d2)から選ばれる少なくとも1種と、1種または2種以上の溶剤とを含む重合体混合物を用いてもよいが、このような重合体混合物を用いる場合、硬化収縮率がより小さいてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、有機溶剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、該重合体混合物100質量%に対する溶剤の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、溶剤を含有しないことがより好ましい。
【0051】
成分(D)としては、公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、サクノールSA09A(デンカ(株)製、酢酸ビニル系樹脂)、デンカASR M-4(デンカ(株)製、酸変性酢酸ビニル系樹脂)、モディパーSV30B(日油(株)製、スチレン・酢酸ビニルブロックコポリマー)、HVポリマー D-100(デンカ(株)製、疎水基変性ポリビニルアルコール(ケン化度86.5~89モル%の変性ポリ酢酸ビニル))、ダイカラック8506(大同化成工業(株)製、アクリル共重合体を含む重合体組成物)、BYK-350(ビックケミー・ジャパン(株)製、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)、BYK-356(ビックケミー・ジャパン(株)製、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)、BYK-361N(ビックケミー・ジャパン(株)製、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)が挙げられる。
これらの市販品は、重合体(d1)および重合体(d2)から選ばれる少なくとも1種の重合体自体、前記重合体組成物、または、溶剤量が前記範囲にある重合体混合物であり、公知の消泡剤とは異なる。
【0052】
<その他の成分>
本組成物は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、前記成分(A)~(D)以外のその他の成分を含んでもよい。該その他の成分としては、ラジカル重合性モノマー、チオール化合物、触媒(硬化促進剤)、消泡剤、分散剤、水分吸着剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、可塑剤、溶剤等が挙げられる。
その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本組成物が2成分型の組成物である場合、これらその他の成分は硬化剤成分に配合してもよいが、主剤成分に配合することが好ましい。
【0053】
[ラジカル重合性モノマー]
前記ラジカル重合性モノマーとしては特に制限されないが、具体的には、成分(A)の欄で例示したラジカル重合性モノマーと同様のモノマーが挙げられる。
【0054】
[チオール化合物]
前記チオール化合物としては特に制限されないが、例えば、デカンチオール、ドデカンチオール、オクタンチオール、ヘキサデカンチオール等の単官能チオール化合物、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等の2官能チオール化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等の3官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の4官能チオール化合物、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の6官能チオール化合物が挙げられる。
前記チオール化合物としては、得られるてん充材組成物の保存安定性等の点から、2官能以上のチオール化合物が好ましく、より好まくは2~4官能チオール化合物である。
【0055】
前記チオール化合物としては、公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
前記チオール化合物の市販品としては、例えば、ドデカンチオール(単官能チオール化合物)、カレンズMT BD(昭和電工(株)製、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン)、カレンズMT NR(昭和電工(株)製、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)、カレンズMT PE1(昭和電工(株)製、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート))、EGMP-4(SC有機化学(株)製、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート))、TMMP(SC有機化学(株)製、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート))、TEMPIC(SC有機化学(株)製、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート)、PEMP(SC有機化学(株)製、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))、DPMP(SC有機化学(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート))が挙げられる。
【0056】
本組成物がチオール化合物を含む場合、該チオール化合物の含有量は、本組成物の硬化性を損なわない範囲で適宜調整することができ、チオール化合物の種類に応じて異なるが、硬化収縮率がより小さいてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは6~12質量部である。
【0057】
[触媒]
本組成物は、前記成分(A)と(C)との反応を促進する触媒(硬化促進剤)を含有してもよい。
このような触媒としては、アミン系触媒、スズカルボン酸塩、スズ以外の金属カルボン酸塩および1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)塩等が挙げられる。
【0058】
前記アミン系触媒としては、3級アミンが挙げられ、その具体例としては、芳香族3級アミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミンが挙げられる。これらの中でも、芳香族3級アミンが好ましい。
【0059】
前記芳香族3級アミンとしては、例えば、N-メチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、N-ブチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、N-メチル-N-β-ヒドロキシエチル-p-トルイジン、N-ブチル-N-β-ヒドロキシエチル-p-トルイジン、N-メチル-N-β-ヒドロキシプロピルアニリン、N-メチル-N-β-ヒドロキシプロピル-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N,N-ジイソプロピロール-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジンが挙げられる。これらの中でも特に、低温硬化性に優れるてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが好ましい。
【0060】
前記スズカルボン酸塩としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、スズオクチレート等が挙げられる。
前記スズ以外の金属カルボン酸塩としては、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。
前記DBU塩としては、DBU-ステアリン酸塩、DBU-オレイン酸塩、DBU-ギ酸塩等が挙げられる。
【0061】
本組成物が触媒を含む場合、該触媒の含有量は、注入(てん充)性、硬化性、特に低温硬化性に優れるてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは1~3質量部である。
【0062】
[溶剤]
本組成物が溶剤(水を含む)を含む場合、該溶剤の含有量は、硬化収縮率がより小さいてん充材組成物を容易に得ることができる等の点から、溶剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、本組成物100質量%中の溶剤の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。
【0063】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、前記成分(A)~(D)、さらに必要により前記その他の成分を混合することにより調製することができる。
また、本組成物は、成分(A)および前記ウレタンアクリレート樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種と;無機顔料(B)と;硬化剤(C)と;成分(D)、前記重合体組成物、および、前記重合体混合物から選ばれる少なくとも1種と;さらに必要により前記その他の成分と;を混合することにより調製することができる。
【0064】
前記混合する方法としては特に制限されないが、前記主剤成分の調製時や、主剤成分と硬化剤成分との混合時に、空気が取り込まれると、得られる硬化体(てん充層)内に気泡が残り、ひび割れやへたりの原因となる傾向にあるため、主剤成分の調製時に脱泡工程を行ったり、主剤成分と硬化剤成分との混合時に低回転で撹拌を行うことにより、本組成物中への空気の取り込み量を減らすことが好ましい。
【0065】
<硬化体>
本組成物は、通常、本組成物を硬化させた硬化体(てん充層)として使用される。
該硬化体(てん充層)の形状や厚みは、該硬化体(てん充層)を設けたい場所に応じて適宜選択すればよい。
【0066】
前記硬化体(てん充層)を軌道スラブと路盤側構造物との間の充填層として用いる際に、軌道を十分に支持でき、列車走行時に発生するあおり等を抑制でき、快適な乗り心地を提供できる軌道を得ることができる等の点から、前記硬化体(てん充層)のバネ定数は、好ましくは15~80MN/m、より好ましくは18~40MN/mである。
また、前記硬化体(てん充層)をスラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の充填層や枕木下部の充填層として用いる場合は、軌道を十分に支持でき、列車走行時に発生するあおり等を抑制でき、快適な乗り心地を提供できる軌道を得ることができる等の点から、前記硬化体(てん充層)のバネ定数は、より好ましくは8~24MN/mである。
該バネ定数は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0067】
前記硬化体(てん充層)の、下記実施例に記載の方法で測定した最大圧縮応力(MPa)/変位量(mm)の値は、好ましくは2~5、より好ましくは3.60~4.60である。
最大圧縮応力/変位量の値が前記範囲にある硬化体(てん充層)は、電動工具等で破壊する際、電動工具等が硬化体から反発を受け難く、削れた硬化体が電動工具等にまとわりつき難いため、電動工具等で容易に破壊できる易破壊性を有する硬化体(てん充層)であるといえる。
【0068】
前記硬化体(てん充層)は、例えば、本組成物を、該硬化体(てん充層)を形成したい場所に配置し、次いで、該本組成物を硬化させることで形成することができる。
【0069】
樹脂硬化体を形成したい場所に本組成物を配置する方法としては、特に制限されないが、例えば、必要により本組成物が所定の場所から流れ出ないよう、型枠または不織布等の袋体を設置した後、本組成物を流し込む(てん充)する方法が挙げられる。
例えば、軌道に適用される硬化体を形成する際の具体例としては、必要により本組成物が所定の場所から流れ出ないよう型枠や不織布等の袋体等を設置した後、
図1における軌道スラブ24と突起部28との間に本組成物をてん充する方法、路盤側構造物20と軌道スラブ24との間に本組成物をてん充する方法、枕木下部に本組成物をてん充する方法等が挙げられる。路盤側構造物20と軌道スラブ24との間に本組成物をてん充する際や、枕木下部に本組成物をてん充する際には、必要により、軌道スラブ24や枕木を所定位置に持ち上げておいてから、本組成物をてん充してもよい。
【0070】
また、前記硬化体(てん充層)の形成方法は、軌道におけるCAモルタルからなる充填層などの層の劣化部分(劣化層)を削り取った後、削り取った箇所に本組成物をてん充し、硬化体を形成する方法、つまり、劣化層の補修方法であってもよい。
劣化層部分に本組成物を充填する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、予め劣化層を削り取った後、削り取った箇所を取り囲むように型枠等を配設し、該型枠等の内側に本組成物を流し込んで充填する額縁補修方法が挙げられる。
また、前記型枠を用いる方法の他に、補修箇所に予め不織布等の袋体を設置し、該袋体内に本組成物を充填し硬化させる方法、補修箇所に発泡成形体等の埋め込み型枠を設置し、その内側補修部に本組成物を充填し硬化させる方法、補修箇所の側面開口部に外側から粘着シートを貼着し、その内側補修部に本組成物を充填し硬化させる方法等も用いることができる。
【0071】
本組成物を硬化させる際には、硬化時間を短くする等の点から、加熱してもよいが、通常、加熱することなく常温下で20分~1時間放置すればよい。
本組成物は、常温下での硬化性にも優れているため、常温下で短時間で硬化させることができる。このため、本組成物は、軌道用として、スラブ式軌道用として、特にスラブ式軌道の補修用として好適に用いられる。
【実施例0072】
次に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0073】
用いた原材料は以下の通りである。
【0074】
<ウレタンアクリレート樹脂(A)>
ウレタンアクリレート樹脂(A)としては、ウレタンアクリレート樹脂を含む以下のウレタンアクリレート樹脂組成物を用いた。
・「ウレタンアクリレート樹脂組成物」:ウレタンアクリレート樹脂 46質量%、2-エチルヘキシルアクリレート 25質量%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 12質量%、メタクリル酸n-ブチル 12質量%、ラウリルメタクリレート 5質量%を含有する樹脂組成物
【0075】
<無機顔料(B)>
・「無機顔料」:G-100(三共製粉(株)製、砂状炭酸カルシウム、平均粒径:65μm)
【0076】
<硬化剤(C)>
・「硬化剤」:パーカドックスL-40ES(化薬ヌーリオン(株)製、過酸化ベンゾイル含有、有効成分量:40質量%)
【0077】
<カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(d1)>
・「重合体(d1-1)」:サクノールSA09A(デンカ(株)製、酢酸ビニル系樹脂)
・「重合体(d1-2)」:デンカASR M-4(デンカ(株)製、酸変性酢酸ビニル系樹脂)
・「重合体(d1-3)」:モディパーSV30B(日油(株)製、スチレン・酢酸ビニルブロックコポリマー)
・「重合体(d1-4)」:HVポリマー D-100(デンカ(株)製、疎水基変性ポリビニルアルコール(ケン化度86.5~89モル%の変性ポリ酢酸ビニル))
【0078】
<(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)>
(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(d2)としては、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体を含む以下の重合体組成物(d2-1)を用いた。
・「重合体組成物(d2-1)」:ダイカラック8506(大同化成工業(株)製、アクリル共重合体 60質量%、トリプロピレングリコールジアクリレート 40質量%)
【0079】
<その他の成分>
・「チオール化合物」:カレンズMT PE1(昭和電工(株)製、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート))
・「アミン系触媒」:N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン
・「金属系触媒」:リゴラック コバルトO(昭和電工(株)製、8%オクチル酸コバルト)
【0080】
[実施例1]
容器に、ウレタンアクリレート樹脂組成物100質量部、アミン系触媒1質量部、金属系触媒0.2質量部、重合体(d1-1)10質量部、および、無機顔料160質量部を加えて撹拌混合した後、さらに硬化剤2質量部を加えて十分に撹拌混合し、てん充材組成物を調製した。
【0081】
[実施例2~23および比較例1~6]
下記表1または2に示す原材料を表1または2に示す量(数値、質量部)で用いた以外は実施例1と同様にして、てん充材組成物を調製した。
【0082】
<バネ定数>
まず、
図2に示す型枠の各部品(
図2の白い部品)をパーツクリーナーを用いて清掃し、組み立てた後に内面となる部分を、信越化学工業(株)製のKF-96-SP(シリコーン離型剤)で離型処理した。離型処理した各部品を、
図2に示す形状(100mm×100mm×25mm(厚み))になるように、ボルトを用い、固定金具で締め上げ固定した。この際に、ボルトが緩んでいないよう、隙間ができないよう、固定金具を締め込み過ぎないようにして、型枠を形成した。
【0083】
次に、調製したてん充材組成物を、形成した型枠に流し込んだ。この際に、てん充材組成物の流し込み量が型枠の大きさとぴったりになるよう、てん充材組成物を流し込んだ。
てん充材組成物を型枠に流し込んでから、室温で3日間程度放置し、てん充材組成物の表面を指触することにより硬化を確認した後、型枠を外すことで、成形体を3個作製した。型枠を外す際には、得られる成形体に、割れや欠けが生じないように注意深く型枠を外した。作製した成形体の大きさをノギスを用いて測定し、100mmであるはずの長さ部分が100±1mmであり、かつ、厚みが25±0.5mmであった場合、該成形体を用いてバネ定数測定の試験を行った。
【0084】
作製した成形体それぞれを、圧縮試験機(サーボパルサーEHF-EG10-2-L、(株)島津製作所製)に、成形体の長さ方向が圧縮方向となるように配置し、荷重4.4kNで予圧を2回かけてから30秒後、変位速度:1mm/minの条件で成形体に荷重4.4kNまで載荷する際の、荷重0.98kNと3.92kNとにおける成形体のたわみを、レーザー変位計(HL-G103-AC、パナソニック(株)製、標線間距離:100mm)を用いて測定し、下記式からバネ定数を算出した。結果を表1または2に示す。
バネ定数(MN/m)=(F2(kN)-F1(kN))/(X2(mm)-X1(mm))
[F2は荷重3.92kNであり、X2は、該荷重3.92kNの時の成形体のたわみ(mm)であり、F1は荷重0.98kNであり、X1は、該荷重0.98kNの時の成形体のたわみ(mm)である。]
【0085】
<硬化収縮率>
JIS K 5600-2-4:2014「塗料一般試験法-塗料の性状・安定性-密度」において規定される手順に基づいて、金属製ピクノメータ(容量:100ml)を用いて、調製したてん充材組成物の密度d1を算出した。
次いで、23℃の雰囲気温度とした恒温室内で、調製したてん充材組成物を、幅100mm×長さ100mm×高さ25mmの型枠に流し込んで3日間放置し硬化養生させることで硬化物を作製した。硬化後、JIS K 7112:1999「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」において規定される水中置換法により、作製した硬化物の密度d2を算出した。
そして、密度d1およびd2を用いて、下式により、てん充材組成物の硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率(%)={(d2-d1)/d2}×100
【0086】
<易破壊性>
調製したてん充材組成物から、JIS K 7139:2009「プラスチック-試験片」において規定されているタイプA3の多目的試験片を作製し、さらに、10×10×4mmの大きさに切り取ることで試験体を作製した。作製した試験体の大きさをノギスを用いて測定し、10mmであるはずの長さ部分が10±0.2mmであり、10mmであるはずの幅部分が10±0.2mmであり、かつ、厚みが4±0.2mmの範囲内であったものを、試験体として使用した。
JIS K 7181:2011「プラスチック-圧縮特性の求め方」において規定される手順に基づいて、作製した試験体を、圧縮試験機(オートグラフAGS-X 10kN、(株)島津製作所製)に、試験体の長さ方向が圧縮方向となるように配置し、変位速度:1mm/minの条件で試験体が破断するまで圧縮し、その時の変位量および最大荷重を測定した。試験体の変位量については、試験体に荷重がかかり始めた位置を初期値とし、最大荷重がかかった位置までとした。
易破壊性は、最大圧縮応力(MPa)を変位量(mm)で除した数値(最大圧縮応力/変位)が2~5である場合を易破壊性材料(評価:○)とし、最大圧縮応力/変位が3.60~4.60である場合をより好ましい易破壊性材料(評価:◎)と評価した。なお、最大圧縮応力については、下式により算出した。
最大圧縮応力(MPa)=最大圧縮力(N)/試験片の断面積(mm2)
【0087】
なお、電動工具等を用いても破壊しにくかった従来の2種類のポリウレタン系のてん充材の易破壊性を前記と同様に評価した。
あるポリウレタン系てん充材1の最大圧縮応力/変位の値は1.60であり、また別のポリウレタン系てん充材2の最大圧縮応力/変位の値は、11.3であった。
ポリウレタン系てん充材1から形成された硬化体は、ポリウレタン材料特有の弾性が高く、電動工具で破壊する際、電動工具が硬化体から反発を受けたり、削れた硬化体が電動工具にまとわりつくため、電動工具等による破壊が困難であった。
また、ポリウレタン系てん充材2から形成された硬化体は、ポリウレタン系てん充材1よりも圧縮応力が非常に大きく、非常に靭性が高い硬化体であった。このため、電動工具で破壊する際、ポリウレタン系てん充材1より電動工具が硬化体から反発を受けたり、削れた硬化体が電動工具にまとわりつくため、より電動工具等による破壊が困難であった。
一方、実施例で得られたてん充材組成物から形成された硬化体、特に前記評価が◎であるてん充材組成物から形成された硬化体は、電動工具で破壊する際、電動工具が硬化体から反発を受け難く、削れた硬化体が電動工具にまとわりつき難いため、電動工具等による破壊が容易であった。
【0088】
【0089】