IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

特開2023-21931金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ中で金属を溶解するための改善された容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021931
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ中で金属を溶解するための改善された容器
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/50 20210101AFI20230207BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20230207BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230207BHJP
   B29C 64/343 20170101ALI20230207BHJP
   B22F 12/57 20210101ALI20230207BHJP
【FI】
B22F12/50
B22F10/22
B33Y30/00
B29C64/343
B22F12/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112445
(22)【出願日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】17/391,265
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム.・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ.・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】チューホン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エー.・ヴァンクーウェンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】リン・シー.・フーバー
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL22
4F213WL32
4F213WL74
4K018AA13
4K018AA14
4K018BA07
4K018BA08
4K018BB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】三次元(3D)金属物体製造装置における、固体金属が溶融されるプリンタ内の容器の溶融金属レベルを測定するレーザレベルセンサの能力がドロスにより悪影響を受けることを抑制した、金属滴吐出装置を提供する。
【解決手段】溶融金属を保持する収容部を有する容器104’は、収容部の固体金属入口で形成された金属ドロスが、溶融金属レベルセンサ184が光を方向付ける先である収容部の部分に移行するのを防止する仕切り192を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属滴吐出装置であって、
溶融金属を保持するように構成された収容部であって、前記収容部が、第1の端部及び第2の端部を有する、収容部を画定している吐出器ヘッドと、
前記収容部の第1の部分を第2の部分から分離するための前記収容部内の仕切りであって、前記仕切りが、前記第1の端部から前記第2の端部までの距離よりも短い、前記収容部の前記第1の端部からの距離で延在している、仕切りと、を備える、金属滴吐出装置。
【請求項2】
前記収容部が、前記吐出器ヘッド内への設置及び前記吐出器ヘッドからの取り外しのために構成された容器内にある、金属滴吐出装置。
【請求項3】
固体金属を前記収容部の前記第1の部分に移動させるように構成された固体金属ガイドと、
光発生器であって、前記光発生器が、前記収容部の前記第2の部分内に光を方向付けるように構成されている、光発生器及び反射センサを有するレベルセンサと、を更に備え、
前記仕切りは、前記収容部の前記第1の部分が前記固体金属を受容する場所と、前記収容部の前記第2の部分が前記光発生器からの前記光を受容する場所との間に位置付けられている、金属滴吐出装置。
【請求項4】
前記仕切りが前記収容部の前記第1の端部から延在している前記距離は、前記収容部の前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記距離の半分未満である、請求項3に記載の金属滴吐出装置。
【請求項5】
前記仕切りが前記収容部の前記第1の端部から延在している前記距離は、前記収容部の前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記距離の約20パーセントである、請求項4に記載の金属滴吐出装置。
【請求項6】
前記仕切りが、前記収容部の前記第1の部分と前記収容部の前記第2の部分との間の第1の位置から、前記第1の位置と直径方向に反対側の第2の位置まで延在している、請求項5に記載の金属滴吐出装置。
【請求項7】
前記仕切りが、本質的に窒化ホウ素からなっている、請求項6に記載の金属滴吐出装置。
【請求項8】
前記仕切りが、前記容器と一体的に形成されている、請求項7に記載の金属滴吐出装置。
【請求項9】
前記光発生器が、レーザである、請求項8に記載の金属滴吐出装置。
【請求項10】
金属滴吐出装置の吐出器ヘッド内に溶融金属を保持するための容器であって、
前記容器内の収容部であって、前記収容部が、第1の端部及び第2の端部を有する、収容部を画定している壁と、
前記収容部の第1の部分を第2の部分から分離するための前記収容部内の仕切りであって、前記第1の端部から前記第2の端部までの距離よりも短い、前記収容部の前記第1の端部からの距離で延在している、仕切りと、を備える、容器。
【請求項11】
前記仕切りが、前記収容部の前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記距離の半分未満である距離だけ、前記第1の端部から延在している、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記仕切りが前記第1の端部から延在している前記距離は、前記収容部の前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記距離の約20パーセントである、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記仕切りが、前記収容部の前記第1の部分と前記収容部の前記第2の部分との間の第1の位置から、前記第1の位置と直径方向に反対側の第2の位置まで延在している、請求項12に記載の容器。
【請求項14】
前記仕切りが、前記容器と一体的に形成されている、請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記仕切りが、本質的に窒化ホウ素からなっている、請求項14に記載の容器。
【請求項16】
金属滴吐出装置の吐出器ヘッド内に設置するために取り外し可能な容器を予め装填するための金属インサートであって、
前記取り外し可能な容器の第1のハウジング内に受容されるように構成された細長い部分と、
前記取り外し可能な容器の前記第1のハウジング内に仕切りを受容するように構成された前記金属インサートの前記細長い部分内に形成されたスロットと、
前記取り外し可能な容器の第2のハウジング内に受容されるように構成された球根状部分と、を備える、金属インサート。
【請求項17】
前記スロットが、前記金属インサートの長さよりも短い長さを有する、請求項16に記載の金属インサート。
【請求項18】
前記スロットの前記長さが、前記金属インサートの前記長さの約20パーセントである、請求項17に記載の金属インサート。
【請求項19】
前記金属インサートが本質的にアルミニウムからなっている、請求項18に記載の金属インサート。
【請求項20】
前記金属インサートが本質的に銅からなっている、請求項18に記載の金属インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional、3D)物体プリンタに関し、より具体的には、そのようなプリンタ内で金属を溶解するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマなどの紫外線硬化材料を吐出する吐出器を使用する。プリンタは、典型的には、様々な形状及び構造を有する三次元被印刷物体を構築する可塑性材料の連続層を形成するように、1つ以上の押出し機を動作させる。三次元被印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は、紫外線硬化され、固まり、その層を三次元被印刷物体の下地層に接着する。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
最近、1つ以上の吐出器から、溶融金属の液滴を吐出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール又はペレットなどの固体金属源を有し、この固体金属源は、固体金属が溶融されるプリンタ内の容器の加熱された収容部に供給され、溶融金属が収容部を充填する。本明細書で使用される場合、「収容部」という用語は、溶融金属を保持するように構成された構造内の空洞を意味する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、収容部のノズルにおいて溶融金属のメニスカスが収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進される。吐出器のノズルの反対側にあるプラットフォームは、アクチュエータを動作させるコントローラによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内で移動されて、吐出された金属滴がプラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作して、吐出器又はプラットフォームの位置を垂直方向又はZ方向に変化させて、吐出器と、形成されている金属物体の最上層との間の距離を一定に維持する。このタイプの金属滴吐出プリンタは、磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)プリンタとしても知られている。
【0004】
プリンタ内の容器の収容部内の溶融金属は、プリンタ内の溶融金属の供給を使い尽くすことなく、金属滴吐出動作をサポートするのに十分なレベルに維持する必要がある。ある金属滴吐出プリンタでは、青色レーザが、収容部内の溶融金属の表面レベルに方向付けられ、反射センサが、収容部内の溶融金属の現在の高さを求めるために、表面レベルによるレーザの反射を監視する。センサ出力が、表面のレベルが収容部内の閾値位置まで落下したことを示す場合、ワイヤ供給アクチュエータは、より多くの固体金属を収容部に供給するように動作される。
【0005】
MHDプリンタによって実行される印刷プロセス中、典型的には、アルミニウム、及びマグネシウムなどの合金である金属は、金属が容器の入口で溶融されるときに酸化物を形成する。これらの酸化物は、一般に、ドロスと称される。本明細書で使用される場合、「ドロス」という用語は、物体の形成に好適でないMHDプリンタの容器内の材料の組み合わせを意味する。これらの材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、これらの酸化物によって捕捉されたアルミニウム、及び固体金属の溶融中に形成された気泡が挙げられる。このドロスは、印刷プロセス中に容器内に蓄積し、生成されるドロスの量は、容器内で溶融した金属の量に対応する。ドロスは、容器内の溶融金属の上部に蓄積し、印刷中に問題を引き起こす。
【0006】
ドロスの生成から生じる1つの問題は、容器内の溶融金属レベルを測定するレーザレベルセンサの能力に対するドロスの悪影響である。ドロスは暗く、レーザの反射、及び反射センサでのその受容に影響を及ぼす、粗い表面を有する。レベルが正確に監視されない場合、容器は、印刷プロセス中に空になり、金属物体を台無しにし得る。全てのドロス関連レベル感知障害は、プリンタの早期シャットダウン、ドロスの除去、容器ノズルの交換、及びプリンタの再起動につながる。プリンタは、ドロスを除去するためにシャットダウンされなければならないため、その動作時間は制限される。この動作制限の時間は、生成される物体の数及びサイズが準最適であるため、吐出される金属の量も限定されることを意味する。追加として、溶融金属の温度は、より高い溶融金属温度がより多くのドロスを生成するため、金属滴吐出に最適な温度に達することができない。ドロスを、溶融金属レベルの感知に影響を及ぼさせず、かつプリンタの生成のための時間を延ばさせない方式を見つけることは、有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
3D金属物体プリンタ用の新しい容器は、容器内で生成されたドロスを、レーザレベルセンサによって溶融金属レベルの感知に干渉させない。新しい容器は、容器内の収容部をであって、収容部が、第1の端部及び第2の端部を有する、収容部を画定している壁と、収容部の第1の部分を第2の部分から分離するための収容部内の仕切りであって、第1の端部から第2の端部までの距離よりも短い、収容部の第1の端部からの距離で延在している、仕切りと、を含む。
【0008】
新しい3D金属物体プリンタは、容器内で生成されたドロスを、レーザレベルセンサによって溶融金属レベルの感知に干渉させない、新しい容器を含む。新しい3D金属物体プリンタは、溶融金属を保持するように構成された収容部であって、収容部が、第1の端部及び第2の端部を有する、収容部を画定している吐出器ヘッドと、収容部の第1の部分を第2の部分から分離するための収容部内の仕切りであって、第1の端部から第2の端部までの距離よりも短い、収容部の第1の端部からの距離で延在している、仕切りと、を含む。
【0009】
新しい容器を充填するための新しい金属インサートは、新しい容器内の仕切りを収納する。新しい金属インサートは、取り外し可能な容器の第1のハウジング内に受容されるように構成された細長い部分と、取り外し可能な容器の第1のハウジング内に仕切りを受容するように構成された金属インサートの細長い部分内に形成されたスロットと、取り外し可能な容器の第2のハウジング内に受容されるように構成された球根状部分と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
容器内で生成されたドロスを、レーザレベルセンサによって溶融金属レベルの感知に干渉させない、3D金属物体プリンタ用の容器の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と併せて以下の説明で説明される。
図1】容器内で生成されたドロスを、レーザレベルセンサによって溶融金属レベルの感知に干渉させない容器を有する、新しい3D金属物体プリンタを示す。
図2A】容器内で生成されたドロスを、図1のプリンタ内のレーザレベルセンサによって溶融金属レベルの感知に干渉させない仕切りを有する容器の上部ハウジングの上面図である。
図2B】容器内で生成されたドロスを、レーザレベルセンサによって溶融金属レベルの感知に干渉させない仕切りを有する容器の上部ハウジングの側面図である。
図3A】仕切りを有する新たに設置された容器の上面図である。
図3B図1のプリンタを用いて実行される印刷プロセス中の図3Aの容器の上面図であり、容器内のドロスの蓄積が、溶融用に固体金属が投入される仕切り側でのみ発生することを示している。
図4A】プリンタ起動時に容器を充填するために使用される金属インサートを備える二部分容器の分解側面図である。
図4B】容器の上部ハウジング内の金属インサートの設置を示している。
図4C】金属インサートを含有する組み立てられた容器を示している。
図5】プリンタの容器内のドロスの影響を受け得る、プリンタの収容部内の溶融金属の表面レベルの位置を判定するためのレーザシステムを使用する3D金属プリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0012】
図5は、光ビーム及び反射センサを使用して、プリンタ内の容器の収容部内の溶融金属の表面レベルを判定する、従来既知の3D金属物体プリンタ100の実施形態を図示する。図5のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴が、単一ノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出されて、ノズルからの液滴が、プラットフォーム112上に物体の層のためのスワスを形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、又はマクロサイズの比率のペレットなどの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。金属ワイヤ120などのバルク金属源116は、吐出器ヘッド140内の上部ハウジング122を通って延在しているワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、吐出器ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通ってノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、取り外し可能な容器内の収容部からの溶融金属滴の圧出のために構成された取り外し可能な容器内のオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「吐出器ヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、光源及び反射センサを含む。一実施形態では、光源はレーザであり、いくつかの実施形態では、青色レーザである。溶融金属レベルからのレーザの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を生成する。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の上方レベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、アルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を、ガス供給管132を通して吐出器ヘッドに提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りの吐出器ヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。
【0013】
吐出器ヘッド140は、プラットフォーム112に対する吐出器ヘッドの垂直移動に対応するように、Z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、吐出器ヘッドをZ軸に沿って移動させるように、吐出器ヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームを吐出器ヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるように、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、吐出器ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の最上面との間の適切な距離を維持するように、コントローラ148によって動作される。
【0014】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、吐出器ヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の垂直距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直配向で動作するものとして図5に表されているが、他の代替の配向を採用することができる。また、図5に示される実施形態は、X-Y平面内を移動するプラットフォームを有し、吐出器ヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、アクチュエータ144は、吐出器ヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されている場合も、X-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動するように構成されている場合もある。
【0015】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、吐出器ヘッド140の1つ(円形)又はそれ以上(直線形状)の壁によって形成されたチャンバ168内に位置付けられている。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、ヒータ、コイル、及び3D金属物体プリンタの取り外し可能な容器が位置する1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、このチャンバ内に位置する。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続され、また熱交換器180に流体的に接続される。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0016】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成される物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶され、コントローラは、サーバなどを介して、デジタルデータモデルが記憶されている遠隔データベースにアクセスし得るか、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体が、コントローラ148に選択的に連結されてアクセス可能になり得る。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、既知の方法でコントローラ148が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の生成には、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、又は他の多角形メッシュ若しくは他の中間表現に変換されるときなどの中間モデルの作製が含まれ得、次いで、この中間モデルが処理されて、プリンタによってデバイスを製造するためのgコードなどのマシン命令が生成され得る。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108から溶融金属滴の吐出、プラットフォーム112の位置決め、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の最上層との間の距離の維持を制御する。
【0017】
コントローラ148は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラと関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明した動作、並びに以下に説明される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100の構成要素を動作させる信号を処理及び生成するために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148のプロセッサ(複数可)に送信される。
【0018】
同様の構成要素には同様の参照番号を使用して、新しい3D金属物体プリンタ100’が図1に示されている。3D金属物体プリンタ100’は、容器104’の収容部内に仕切り192を含む新規の取り外し可能な容器104’を含む。この仕切り192は、固体金属が溶融のために中に供給される容器収容部の部分を、レーザレベルセンサ184がそのレーザを方向付ける先である、溶融金属表面を含む容器の部分から分離する。仕切り192は、容器収容部の長さを延長しないので、溶融金属表面は、仕切りの両側で同じである。しかしながら、仕切り192は、仕切りの投入側の固体金属入口で生じるドロスが、レーザレベルセンサ184によって測定される仕切りの側面上の溶融金属表面に到達するのを防止するのに十分長い。したがって、溶融金属表面レベルの測定の精度は、ドロスの生成によって影響されず、プリンタ100’は、図5のプリンタ100よりも長く動作し続け、プリンタ100’のスループットは、吐出された溶融金属の量においてプリンタ100よりも大きい。したがって、プリンタ100’は、プリンタ100よりも大きい物体及びより多くの物体を生成することができる。本明細書で使用される場合、「仕切り」という用語は、容器収容部の上部分を2つの側面に分離し、それによって、ドロスが仕切りの片側から仕切りの他方の側まで移行することを防止する、任意の構造を意味する。
【0019】
図4A図4B、及び図4Cを参照して以下で説明するように、取り外し可能な容器104’の一実施形態は、プリンタ100’内への設置のために、取り外し可能な容器を形成するために一緒に接合され得る2つの別個のハウジングを有する。図2Aの上面図に示されるように、仕切り192は、上部ハウジング204の収容部198を横切って、上部ハウジングの内周の第1の側面から内周の直径方向に反対側に延在しており、レーザレベルセンサ184がそのレーザを向く場合の収容部198の部分194から収容部198の固体金属投入部分196を分離するように位置付けられている。図2Bの側面図に示されるように、仕切り192は、上部ハウジング204の長さよりも短い長さを有する。一実施形態では、仕切り192は、上部ハウジング204の長さの約20%である長さを有するが、仕切りは、より大きい又はより短い長さを有することができる。ただし、その長さは、固体金属入口から収容部の感知側194へのドロス移行を防止するのに十分であり、溶融金属が仕切り192の下端の周りを流れるのを防止するほどではない。
【0020】
図3A及び図3Bは、固体金属入口で生成されたドロス上の仕切り192の効果を示している。図3Aでは、取り外し可能な容器104’が設置され、固体金属が容器内で溶融されて、収容部を充填する。プリンタの動作中のこの時点で、ドロスは生成されていない。プリンタ100’が、溶融金属滴を吐出し、容器104’に保持された溶融金属を補充することによって動作し続けると、ドロス300は、固体金属入口領域196内で生成される。しかしながら、仕切り192は、ドロス300を固体金属入口又はその近くに保ち、それをレベル感知側194に移行させない。したがって、レーザレベルセンサ184は、適切な量の固体金属が容器104’に供給され、かつプリンタ100’の動作状態が保存されるように、溶融金属レベルを正確に感知し続けることができる。
【0021】
図4Aは、プリンタ100’の取り外し可能な容器104’の側面図である。取り外し可能な容器104’のこの実施形態は、上部ハウジング204及び下部ハウジング208を含む2部品からなる構造である。本文書で使用されるとき、「ハウジング」という用語は、その内部に収容部の一部分を有し、かつ取り外し可能な容器を形成するために別の構造に固定されるように構成された構造を意味する。下部ハウジング208は、ノズル108(図1に示される)を含む。上部ハウジング204は、下部ハウジング208よりも長く、下部ハウジング208の外周に等しい外周を有するカラー228を含む。下部ハウジング208内のノズルの反対側にある下部ハウジング208の開口部は、開口部から延在しており、カラー228の内周の円周よりも小さい円周を有するフランジを有する。カラー228は、下部ハウジング208に固定された上部ハウジング204の端部から、下部ハウジングのフランジが下部ハウジングから延在している距離に対応する距離だけ陥凹している内側ステップを有する。したがって、下部ハウジングのフランジは、カラー228の内周内に嵌合するように上部ハウジング204の内側ステップに接触するまで、カラー228内を摺動する。上部ハウジング204及び下部ハウジング208が組み立てられると、それらは、金属インサート212に対応する形状を有する収容部を形成する。金属インサート212は、細長く丸みを帯びたステム216と、ノズル108内に嵌合する尖端部で終端する球根状部分220とを有する固体金属片(アルミニウムや銅など)である。本文書で使用されるとき、「細長い」という用語は、その幅よりも長い構造を意味し、「丸みを帯びた」という用語は、少なくとも部分的に円筒形状を有する構造を意味する。本文書で使用されるとき、「球根状」という用語は、その長手方向軸の少なくとも一部分に沿って円錐形状を有する構造を意味する。丸みを帯びたステム216は、金属インサート212が上部ハウジング204内に設置されたときに、仕切り192を収納するために、その中に形成されたスロット214を有する。一実施形態では、金属インサート212内のスロット214は、金属インサートの長さの半分未満であり、いくつかの実施形態では、スロットの長さは、金属インサートの長さの20パーセント未満である。上部ハウジング204はまた、誘導フランジ224と共に形成される。このフランジは、吐出器ヘッド140内の溝内に嵌合して、取り外し可能な容器104’をプリンタ100’内で正しく配向させ、容器が吐出器ヘッド140内に設置された後に容器をその正しい配向に保持する。
【0022】
仕切り192と共に上部ハウジング204は、窒化ホウ素で形成され、下部ハウジング208は、グラファイトで形成されている。いくつかの実施形態では、仕切り192及び上部ハウジングは一体的に形成されている一方で、他の実施形態では、仕切りは、収容部内に配置され、収容部を形成する壁(複数可)に取り付けられる。これらの材料の両方は高温セラミックである。一実施形態では、上部及び下部ハウジングは、8時間以上の期間にわたって約800℃~約850℃の範囲の温度まで加熱される。取り外し可能な容器104’内の収容部は、金属インサート上の酸化物の形成を減衰させるのに役立つ好適な抗酸化性難燃剤材料でコーティングされ得る。本文書で使用されるとき、「抗酸化性難燃剤」という用語は、取り外し可能な容器の収容部に配置される金属のタイプにおける金属酸化物の形成を低減させる任意の材料を意味する。上部ハウジングを形成する窒化ホウ素は導電性ではないため、ノズル108及びオリフィス110を通して収容部から溶融金属滴を吐出するために使用される電場の生成を妨げない。組み立てられた取り外し可能な容器の全体的な寸法は、55mmであり、上部ハウジングの長さは、40mmであり、下部ハウジングの長さは、15mmである。カラー228における上部ハウジングの外周は、約16mmの直径を有する約50mmであり、下部ハウジングの最も広い部分における周囲は、約16mmの直径を有する約50mmである。
【0023】
プリンタ100の吐出器ヘッド140に設置する前に、金属インサート212は、取り外し可能な容器104に装填される。これは、インサート212のステム216を上部ハウジング204(図2B)の収容部の部分に押し込むか、又は球根状部分220の尖端部を下部ハウジングに押し込むことによって行われる。時には「スーパーグルー」としてより一般的に知られているシアノアクリレート接着剤のいくつかのスポットが、下部ハウジング208の内側ステップ又はカラー228の内周のいずれかに適用され、次いで、下部ハウジング208の内側ステップがカラー228の内周内で摺動されて、図2Cに示されるように、下部ハウジング及び上部ハウジングが一緒に固定される。この接着剤は、プリンタの動作中にヒータ160から加えられる熱によって除去されるため、プリンタのメンテナンスのために2つのハウジングを分離することができる。不活性ガス源128は、上部ハウジングに連結されて、取り外し可能な容器内の収容部に挿入ガス(insert gas)を供給して、取り外し可能な容器内の溶融金属の酸化を減衰させる。熱電対(図示せず)が開口部232(図2A)内に配置されて、取り外し可能な容器内の熱を示す信号を提供するため、コントローラは、ヒータ160の動作を調整し得る。
【0024】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われてもよく、これらも、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5