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特開2023-21940粘着テープ用基材の原料、粘着テープ用基材、粘着テープ用基材の製造方法、粘着テープ、および、滑剤のエマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021940
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】粘着テープ用基材の原料、粘着テープ用基材、粘着テープ用基材の製造方法、粘着テープ、および、滑剤のエマルジョン
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230207BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230207BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20230207BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230207BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230207BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230207BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D133/04
C09D7/63
C09J7/38
C09J7/20
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022118956
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】寺西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】森 文三
【テーマコード(参考)】
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB02
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA01
4J004EA06
4J004FA08
4J038CA021
4J038CG141
4J038JB14
4J038KA07
4J038MA13
4J038NA07
4J038PB04
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】耐ブロッキング性とバリア性との両立を図ることができる粘着テープ用基材の原料、粘着テープ用基材、粘着テープ用基材の製造方法、粘着テープ、および、滑剤のエマルジョンを提供する。
【解決手段】
表面S1と、粘着剤層3が配置される裏面S2とを有するベース層21と、粘着性を有さず、ベース層21の表面S1を覆うコート層22とを備える粘着テープ用基材2の原料であって、ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂のエマルジョンと、融点が110℃以上である滑剤のエマルジョンとを含む、粘着テープ用基材の原料を、コート層22の形成に用いる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、粘着剤層が配置される裏面とを有するベース層と、粘着性を有さず、前記ベース層の前記表面を覆うコート層とを備える粘着テープ用基材の原料であって、
ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂のエマルジョンと、
融点が110℃以上である滑剤のエマルジョンと
を含み、
前記コート層の形成に用いられる、粘着テープ用基材の原料。
【請求項2】
前記樹脂のガラス転移温度は、-30℃以上10℃以下である、請求項1に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項3】
前記樹脂は、アクリル樹脂である、請求項1に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項4】
前記滑剤の融点は、130℃以上160℃以下である、請求項1に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項5】
前記滑剤は、アルキレンビス脂肪酸アミドである、請求項1に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項6】
前記滑剤は、エチレンビスステアリン酸アミドである、請求項5に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項7】
前記樹脂のエマルジョンと前記滑剤のエマルジョンとを含有する混合液である、請求項1に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項8】
前記粘着テープ用基材は、マスキングテープ用基材である、請求項1に記載の粘着テープ用基材の原料。
【請求項9】
表面と、粘着剤層が配置される裏面とを有するベース層と、
粘着性を有さず、前記ベース層の前記表面を覆うコート層と
を備え、
前記コート層は、ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂と、融点が110℃以上である滑剤とを含有する、粘着テープ用基材。
【請求項10】
前記コート層は、前記樹脂のエマルジョンと前記滑剤のエマルジョンとを混合することにより得られる混合液を、前記ベース層の前記表面に塗布し、乾燥することにより形成される、請求項9に記載の粘着テープ用基材。
【請求項11】
請求項9または10に記載の粘着テープ用基材の製造方法であって、
前記樹脂のエマルジョンと前記滑剤のエマルジョンとを混合することにより得られる混合液を前記ベース層の前記表面に塗布する塗布工程と、
前記ベース層の前記表面に塗布された前記混合液を乾燥させる乾燥工程と
を含む、粘着テープ用基材の製造方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載の粘着テープ用基材と、
前記粘着テープ用基材の前記ベース層の前記裏面に配置される粘着剤層と
を備える、粘着テープ。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着テープ用基材の原料に含まれ、融点が110℃以上である滑剤を含有する、滑剤のエマルジョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ用基材の原料、粘着テープ用基材、粘着テープ用基材の製造方法、粘着テープ、および、滑剤のエマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース繊維と2種類以上の合成繊維からなる基材に、Tgが-60℃~-30℃の含浸樹脂を含浸させた樹脂含浸基材の少なくとも片面に、Tgが-20℃~0℃の樹脂を含有する樹脂層が設けられた粘着テープ用基材が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の粘着テープ用基材では、耐ブロッキング性とバリア性との両立を図ることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、耐ブロッキング性とバリア性との両立を図ることができる粘着テープ用基材の原料、粘着テープ用基材、粘着テープ用基材の製造方法、粘着テープ、および、滑剤のエマルジョンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、表面と、粘着剤層が配置される裏面とを有するベース層と、粘着性を有さず、前記ベース層の前記表面を覆うコート層とを備える粘着テープ用基材の原料であって、ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂のエマルジョンと、融点が110℃以上である滑剤のエマルジョンとを含み、前記コート層の形成に用いられる、粘着テープ用基材の原料を含む。
【0007】
本発明[2]は、前記樹脂のガラス転移温度が、-30℃以上10℃以下である、上記[1]の粘着テープ用基材の原料を含む。
【0008】
本発明[3]は、前記樹脂が、アクリル樹脂である、上記[1]または[2]の粘着テープ用基材の原料を含む。
【0009】
本発明[4]は、前記滑剤の融点が、130℃以上160℃以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つの粘着テープ用基材の原料を含む。
【0010】
本発明[5]は、前記滑剤が、アルキレンビス脂肪酸アミドである、上記[1]~[4]のいずれか1つの粘着テープ用基材の原料を含む。
【0011】
本発明[6]は、前記滑剤が、エチレンビスステアリン酸アミドである、上記[5]の粘着テープ用基材の原料を含む。
【0012】
本発明[7]は、前記樹脂のエマルジョンと前記滑剤のエマルジョンとを含有する混合液である、上記[1]~[6]のいずれか1つの粘着テープ用基材の原料を含む。
【0013】
本発明[8]は、前記粘着テープ用基材が、マスキングテープ用基材である、上記[1]~[7]のいずれか1つの粘着テープ用基材の原料を含む。
【0014】
本発明[9]は、表面と、粘着剤層が配置される裏面とを有するベース層と、粘着性を有さず、前記ベース層の前記表面を覆うコート層とを備え、前記コート層が、ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂と、融点が110℃以上である滑剤とを含有する、粘着テープ用基材を含む。
【0015】
本発明[10]は、前記コート層が、前記樹脂のエマルジョンと前記滑剤のエマルジョンとを混合することにより得られる混合液を、前記ベース層の前記表面に塗布し、乾燥することにより形成される、上記[9]の粘着テープ用基材を含む。
【0016】
本発明[11]は、粘着テープ用基材の製造方法であって、前記樹脂のエマルジョンと前記滑剤のエマルジョンとを混合することにより得られる混合液を前記ベース層の前記表面に塗布する塗布工程と、前記ベース層の前記表面に塗布された前記混合液を乾燥させる乾燥工程とを含む、上記[9]または[10]の粘着テープ用基材の製造方法を含む。
【0017】
本発明[12]は、上記[9]または[10]の粘着テープ用基材と、前記粘着テープ用基材の前記ベース層の前記裏面に配置される粘着剤層とを備える、粘着テープを含む。
【0018】
本発明[13]は、上記[1]~[8]のいずれか1つの粘着テープ用基材の原料に含まれ、融点が110℃以上である滑剤を含有する、滑剤のエマルジョンを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着テープ用基材の原料によれば、ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂のエマルジョンと、融点が110℃以上である滑剤のエマルジョンとを含む。
【0020】
そのため、本発明の粘着テープ用基材の原料を用いて粘着テープ用基材のコート層を形成した場合、得られた粘着テープ用基材において、耐ブロッキング性の低下を抑制しつつ、バリア性の向上を図ることができる。
【0021】
その結果、耐ブロッキング性とバリア性との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1Aは、本発明の一実施形態としてのマスキングテープ用基材を備えたマスキングテープの断面図である。図1Bは、図1Aに示すマスキングテープのロールを説明する説明図である。
図2図2Aおよび図2Bは、マスキングテープ用基材の製造方法を説明する説明図であって、図2Aは、塗布工程を示し、図2Bは、乾燥工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.マスキングテープ
まず、粘着テープの一例としてのマスキングテープ1について説明する。
【0024】
図1Aに示すように、マスキングテープ1は、シート形状を有する。マスキングテープ1は、粘着テープ用基材の一例としてのマスキングテープ用基材2と、粘着剤層3と、必要により、離型層4とを備える。
【0025】
(1)マスキングテープ用基材
マスキングテープ用基材2は、シート形状を有する。マスキングテープ用基材2は、マスキングテープ1の厚み方向と直交する方向に延びる。マスキングテープ用基材2については、後で詳細に説明する。
【0026】
(2)粘着剤層
粘着剤層3は、マスキングテープ1の厚み方向において、マスキングテープ用基材2の一方側(裏側)に配置される。粘着剤層3は、マスキングテープ用基材2の裏面S2上にに配置される。言い換えると、粘着剤層3は、マスキングテープ用基材2の裏面S2と接触する。粘着剤層3は、マスキングテープ1の一方側の表層である。粘着剤層3は、マスキングテープ用基材2に沿って延びる。
【0027】
粘着剤層3の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
【0028】
(3)離型層
離型層4は、マスキングテープ1の厚み方向において、マスキングテープ用基材2の他方側(表側)に配置される。離型層4は、マスキングテープ用基材2の厚み方向において、マスキングテープ用基材2に対して、粘着剤層3の反対側に配置される。離型層4は、マスキングテープ1の他方側の表層である。離型層4は、マスキングテープ用基材2に沿って延びる。
【0029】
なお、図1Bに示すように、マスキングテープ1のロールRにおいて、外側のマスキングテープ1Aの粘着剤層3は、内側のマスキングテープ1Bの離型層4と接触する。内側のマスキングテープ1Bは、ロールRの径方向において、外側のマスキングテープ1Aの内側に配置される。外側のマスキングテープ1Aの粘着剤層3が内側のマスキングテープ1Bの離型層4と接触することにより、外側のマスキングテープ1AがロールRから繰り出されるときに、外側のマスキングテープ1Aは、内側のマスキングテープ1Bから容易に剥離する。
【0030】
離型層4の材料としては、例えば、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、ワックス系離型剤などが挙げられる。離型層4の材料は、溶剤系、水系のいずれであってもよい。
【0031】
2.マスキングテープ用基材の詳細
次に、マスキングテープ用基材2の詳細について説明する。
【0032】
マスキングテープ用基材2は、上記したように、マスキングテープ1の基材として使用される。図1Aに示すように、マスキングテープ用基材2は、ベース層21と、コート層22とを備える。
【0033】
(1)ベース層
ベース層21は、シート形状を有する。ベース層21は、マスキングテープ1の厚み方向と直交する方向に延びる。ベース層21は、マスキングテープ1の厚み方向において、表面S1と、裏面S2とを有する。表面S1には、コート層22が、配置される。裏面S2には、粘着剤層3が、配置される。
【0034】
ベース層21の材料としては、例えば、和紙、クレープ紙などの紙、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの合成繊維から作られる不織布などが挙げられる。
【0035】
ベース層21には、必要により、樹脂が含浸されてもよい。
【0036】
ベース層21に含浸される樹脂(含浸樹脂)としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの合成樹脂、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムなどのジエン系合成ゴム、例えば、ブチルゴムなどの非ジエン系合成ゴムなどが挙げられる。ベース層21に含浸される樹脂は、単独で使用されてもよく、2種以上併用されてもよい。好ましくは、ベース層21に含浸される樹脂は、合成樹脂およびジエン系合成ゴムの併用、より好ましくは、アクリル樹脂とスチレン・ブタジエンゴムの併用である。
【0037】
含浸樹脂のガラス転移温度は、例えば、0℃以下、好ましくは、-30℃以下である。
【0038】
(2)コート層
コート層22は、ベース層21の表面S1上に配置される。コート層22は、ベース層21の表面S1と接触する。コート層22は、マスキングテープ1の厚み方向において、ベース層21に対して、粘着剤層3の反対側に配置される。マスキングテープ1が離型層4を備える場合、コート層22は、厚み方向において、ベース層21と離型層4との間に配置される。コート層22は、ベース層21の表面S1を覆う。
【0039】
コート層22は、粘着性を有さない。詳しくは、コート層22は、樹脂(コート樹脂)と、滑剤とを含有する。
【0040】
(2-1)コート樹脂
コート樹脂は、コート層22にバリア性を付与する。
【0041】
「バリア性」とは、粘着剤層3の粘着剤がマスキングテープ用基材2を通過してマスキングテープ用基材2の表面に染み出すことを抑制する性能をいう。「バリア性」は、後述する実施例に記載の方法によって評価される。
【0042】
コート樹脂は、コート層22中に、例えば、70.0質量%以上、好ましくは、85.0質量%以上、含有される。コート樹脂の含有割合が上記下限値以上であると、バリア性の向上を図ることができる。
【0043】
コート樹脂は、コート層22中に、例えば、99.9質量%以下、好ましくは、99.5質量%以下、含有される。コート樹脂の含有割合が上記上限値以下であると、滑剤の含有割合を確保でき、耐ブロッキング性の向上を図ることができる。
【0044】
コート樹脂のガラス転移温度は、20℃以下、好ましくは、10℃以下である。コート樹脂のガラス転移温度が上記上限値以下であると、マスキングテープ用基材2のバリア性の向上を図ることができる。
【0045】
コート樹脂のガラス転移温度は、-50℃以上、好ましくは、-30℃以上、より好ましくは、-10℃以上、より好ましくは、0℃以上である。コート樹脂のガラス転移温度が上記下限値以上であると、マスキングテープ用基材2の耐ブロッキング性が過度に低下することを抑制できる。
【0046】
コート層22中のコート樹脂のガラス転移温度は、コート層22そのものを、JIS K7121に準じて、示差走査熱量測定することにより、測定される。なお、コート樹脂は、コート層22の母体樹脂であり、コート層22中に最も多量に含有される成分である。そのため、コート層22そのもののガラス転移温度を、コート樹脂のガラス転移温度とみなすことができる。
【0047】
詳しくは、まず、示差走査熱量測定において、予想されるガラス転移温度よりも50℃低い温度から、10℃/minで昇温し、コート層22のDSC曲線を得る。次に、得られたDSC曲線の微分曲線を描く。得られた微分曲線のピークトップ温度が、コート樹脂のガラス転移温度である。
【0048】
なお、微分曲線のピークの形状がブロードであり、ピークトップと認められる部分が無い場合、ピークトップ温度の代わりに、ピーク中央の温度を、コート樹脂のガラス転移温度とする。
【0049】
また、微分曲線のピークが2つ以上存在する場合、最も面積の大きいピークのピークトップ温度、または、最も面積の大きいピークのピーク中央の温度を、コート樹脂のガラス転移温度とする。微分曲線のピークが2つ以上存在する場合として、例えば、コート層22が複数種類のコート樹脂を含有する場合が考えられる。
【0050】
コート樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの合成樹脂、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴムなどのジエン系合成ゴムなどが挙げられる。好ましくは、コート樹脂は、アクリル樹脂である。コート樹脂がアクリル樹脂であると、耐ブロッキング性の向上を図ることができる。
【0051】
コート樹脂がアクリル樹脂である場合、コート樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を含有する。
【0052】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル、例えば、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0053】
コート樹脂がアクリル樹脂である場合、コート樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上、例えば、95質量%以下、好ましくは、80質量%以下含有する。
【0054】
コート樹脂がアクリル樹脂である場合、コート樹脂は、必要により、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位を含有してもよい。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの、(メタ)アクリル酸単量体以外のエチレン性不飽和カルボン酸単量体、例えば、マレイン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、イタコン酸アルキルエステルなどの、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体以外のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、例えば、スチレンなどの芳香族ビニル単量体、例えば、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体などが挙げられる。
【0056】
コート樹脂がジエン系合成ゴムである場合、コート樹脂は、例えば、1,3-ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン単量体に由来する構造単位を含有する。
【0057】
コート樹脂がジエン系合成ゴムである場合、コート樹脂は、脂肪族共役ジエン単量体に由来する構造単位を、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下含有する。
【0058】
コート樹脂がジエン系合成ゴムである場合、コート樹脂は、必要により、脂肪族共役ジエン単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位を含有してもよい。
【0059】
脂肪族共役ジエン単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、上記した芳香族ビニル単量体、例えば、上記したシアン化ビニル単量体、例えば、上記したエチレン性不飽和カルボン酸単量体((メタ)アクリル酸を含む。)、例えば、上記したエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体((メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含む。)などが挙げられる。
【0060】
(2-2)滑剤
滑剤は、コート層22に耐ブロッキング性を付与する。
【0061】
「耐ブロッキング性」とは、マスキングテープ用基材2をロール状に巻いた場合に、ロールの径方向において互いに接触するマスキングテープ用基材2同士の付着を抑制する性能をいう。「耐ブロッキング性」は、後述する実施例に記載の方法によって評価される。
【0062】
滑剤は、コート樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1.0質量部以上、より好ましくは、2.0質量部以上、含有される。滑剤の含有割合が上記下限値以上であると、耐ブロッキング性の向上を図ることができる。
【0063】
滑剤は、コート樹脂100質量部に対して、例えば、10.0質量部以下、好ましくは、5.0質量部以下、含有される。滑剤の含有割合が上記上限値以下であると、コート樹脂の含有割合を確保でき、バリア性の向上を図ることができる。
【0064】
滑剤の融点は、110℃以上、好ましくは、130℃以上である。滑剤の融点が上記下限値以上であると、耐ブロッキング性を向上させることができる。また、滑剤の融点が上記下限値以上であると、マスキングテープ用基材2のインキ受理性の向上を図ることができる。
【0065】
なお、「インキ受理性」とは、マスキングテープ用基材2の表面にインキを塗布した場合に、マスキングテープ用基材2の表面がインキを受け付ける性能をいう。「インキ受理性」は、後述する実施例に記載の方法によって評価される。
【0066】
滑剤の融点の上限値は、限定されない。滑剤の融点は、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下である。
【0067】
コート層22中の滑剤の融点は、抽出溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた還流抽出によってコート層22から滑剤を抽出し、抽出された滑剤を、JIS K7121に準じて、示差走査熱量測定することにより、測定される。滑剤の融点は、示差走査熱量測定によって描かれたDSC曲線の融解ピーク温度である。
【0068】
詳しくは、まず、抽出された滑剤を、示差走査熱量測定において、200℃まで昇温した後、10℃/分で0℃まで降温して、サンプルを得る。次に、得られたサンプルを、0℃から、10℃/分で昇温し、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線の融解ピーク温度が、滑剤の融点である。
【0069】
なお、融解ピークが2つ以上存在する場合、最も面積の大きい融解ピークの融解ピーク温度が、滑剤の融点である。
【0070】
滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス脂肪酸アミド、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸塩、例えば、ポリエチレンワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。好ましくは、滑剤は、アルキレンビス脂肪酸アミド、より好ましくは、エチレンビスステアリン酸アミドである。滑剤がエチレンビスステアリン酸アミドであると、耐ブロッキング性およびインキ受理性の向上を、より図ることができる。
【0071】
3.マスキングテープ用基材の原料
次に、マスキングテープ用基材2の原料について、説明する。
【0072】
マスキングテープ用基材2の原料は、マスキングテープ用基材2のコート層22の形成に用いられる。マスキングテープ用基材2の原料は、コート樹脂のエマルジョンと、滑剤のエマルジョンとを含む。マスキングテープ用基材2の原料は、コート樹脂のエマルジョンと滑剤のエマルジョンとが独立した2液型であってもよく、コート樹脂のエマルジョンと滑剤のエマルジョンとを含有する混合液である1液型であってもよい。
【0073】
なお、マスキングテープ用基材2の原料は、必要により、造膜助剤、分散剤、防腐剤、老化防止剤、印刷適性向上剤、界面活性剤、アルコール系レベリング剤、pH調整剤、増粘剤などの添加剤を含んでもよい。
【0074】
また、マスキングテープ用基材2の原料は、コート樹脂のエマルジョンと滑剤のエマルジョンとのみからなってもよい。
【0075】
(1)コート樹脂のエマルジョン
コート樹脂のエマルジョンは、コート樹脂を含有する。
【0076】
コート樹脂のエマルジョンは、例えば、上記した単量体を乳化重合することによって製造される。
【0077】
単量体を乳化重合するには、国際公開WO2012/133002に記載の共重合体ラテックスの重合方法を採用できる。詳しくは、単量体を乳化重合するには、例えば、上記した単量体の全量を、乳化剤を用いて水中に乳化し(一括添加法)、得られた乳化物に、重合開始剤と、必要により、連鎖移動剤と、還元剤とを添加する。
【0078】
乳化剤としては、公知の界面活性剤を使用できる。乳化剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、高級アルコールの硫酸エステル塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩、デヒドロアビエチン酸塩などのアニオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステルなどのノニオン性界面活性剤が挙げられる。乳化剤は、1種類のみ、または、2種以上併せて使用できる。
【0079】
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどの油溶性重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、1種類のみ、または、2種以上併せて使用できる。
【0080】
連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤としては、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム化合物、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール化合物、例えば、アリルアルコールなどのアリル化合物、例えば、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物、例えば、α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル、例えば、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。連鎖移動剤は、1種類のみ、または、2種以上併せて使用できる。
【0081】
還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、例えば、亜硫酸水素塩、例えば、ピロ亜硫酸塩、例えば、亜二チオン酸塩、例えば、二チオン酸塩、例えば、チオ硫酸塩、例えば、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、例えば、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、例えば、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩、例えば、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。還元剤は、1種類のみ、または、2種以上併せて使用できる。
【0082】
なお、乳化重合において、必要により、炭化水素、電解質を添加することもできる。
【0083】
乳化重合の方法は、一括添加法に限られない。乳化重合の方法としては、例えば、単量体を分割して添加する分割添加法、例えば、単量体を連続して添加する連続添加法、例えば、パワーフィード法などが挙げられる。
【0084】
好ましくは、コート樹脂のエマルジョンを製造するには、単量体の一部を、乳化剤を用いて水中に乳化するとともに、連鎖移動剤および還元剤を配合し、得られた乳化物に重合開始剤を添加して乳化重合を開始する。その後、単量体の残りを添加する。単量体の残りは、好ましくは、連続添加法で添加される。これにより、反応系内の単量体の濃度を一定に調節できる。
【0085】
また、好ましくは、乳化重合の後、得られたエマルジョンを加熱減圧蒸留などの方法で蒸留して、未反応の単量体および低沸点化合物を除去する。
【0086】
以上により、コート樹脂のエマルジョンを得る。
【0087】
得られたコート樹脂のエマルジョンには、必要により、酸素補足剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤などの添加剤を添加できる。
【0088】
コート樹脂のガラス転移温度は、20℃以下、好ましくは、10℃以下である。コート樹脂のガラス転移温度が上記上限値以下であると、マスキングテープ用基材2のバリア性の向上を図ることができる。
【0089】
コート樹脂のガラス転移温度は、-50℃以上、好ましくは、-30℃以上、より好ましくは、-10℃以上、より好ましくは、0℃以上である。コート樹脂のガラス転移温度が上記下限値以上であると、マスキングテープ用基材2の耐ブロッキング性が過度に低下することを抑制できる。
【0090】
マスキングテープ用基材2の原料が1液型である場合、まず、マスキングテープ用基材2の原料をガラス板上に流延し、70℃で4時間乾燥して、フィルムを作製する。得られたフィルムのガラス転移温度を、JIS K7121に準じて、示差走査熱量測定することにより、コート樹脂のガラス転移温度が測定される。
【0091】
詳しくは、まず、示差走査熱量測定において、予想されるガラス転移温度よりも50℃低い温度から、10℃/minで昇温し、樹脂成分のDSC曲線を得る。次に、得られたDSC曲線の微分曲線を描く。得られた微分曲線のピークトップ温度が、コート樹脂のガラス転移温度である。
【0092】
なお、微分曲線のピークの形状がブロードであり、ピークトップと認められる部分が無い場合、ピークトップ温度の代わりに、ピーク中央の温度を、コート樹脂のガラス転移温度とする。
【0093】
また、微分曲線のピークが2つ以上存在する場合、最も面積の大きいピークのピークトップ温度、または、最も面積の大きいピークのピーク中央の温度を、コート樹脂のガラス転移温度とする。微分曲線のピークが2つ以上存在する場合として、例えば、マスキングテープ用基材2の原料が複数種類のコート樹脂を含有する場合が考えられる。
【0094】
(2)滑剤のエマルジョン
滑剤のエマルジョンは、滑剤を含有する。
【0095】
滑剤のエマルジョンは、例えば、上記した滑剤を、水中に分散することによって製造される。
【0096】
滑剤を分散する方法としては、特開2019-93383号公報に記載の乳化分散液の製造方法を採用できる。詳しくは、滑剤を分散する方法としては、例えば、界面活性剤を用いて、湿式分散法により、滑剤の粉末を水に分散する。
【0097】
界面活性剤としては、上記した乳化剤が挙げられる。
【0098】
界面活性剤は、滑剤の粉末100質量部に対して、例えば、6質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、8質量部以上、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、13質量部以下、より好ましくは、11質量部以下、配合される。
【0099】
水は、滑剤の粉末100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、120質量部以上、より好ましくは、130質量部以上、例えば、500質量部以下、好ましくは、350質量部以下、より好ましくは、250質量部以下、配合される。
【0100】
得られた滑剤のエマルジョンには、好ましくは、消泡剤、防腐剤が添加される。
【0101】
消泡剤としては、例えば、ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイル、シリカなどが挙げられる。消泡剤は、1種類のみ、または、2種以上併せて使用できる。
【0102】
消泡剤は、滑剤の粉末100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、例えば、0.5質量部以下、含有される。
【0103】
防腐剤としては、例えば、ブチルパラベン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、p-クロロ-m-キシレノール、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。防腐剤は、1種類のみ、または、2種以上併せて使用できる。
【0104】
防腐剤は、滑剤の粉末100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、例えば、0.3質量部以下、含有される。
【0105】
得られた滑剤のエマルジョンには、必要により、酸素補足剤、キレート剤、分散剤、老化防止剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加できる。
【0106】
滑剤の融点は、110℃以上、好ましくは、130℃以上である。滑剤の融点が上記下限値以上であると、耐ブロッキング性を向上させることができる。また、滑剤の融点が上記下限値以上であると、マスキングテープ用基材2のインキ受理性の向上を図ることができる。
【0107】
滑剤の融点の上限値は、限定されない。滑剤の融点は、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下である。
【0108】
マスキングテープ用基材2の原料が1液型である場合、マスキングテープ用基材2の原料中のコート層22中の滑剤の融点は、抽出溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた還流抽出によってマスキングテープ用基材2の原料から滑剤を抽出し、抽出された滑剤を、JIS K7121に準じて、示差走査熱量測定することにより、測定される。滑剤の融点は、示差走査熱量測定によって描かれたDSC曲線の融解ピーク温度である。
【0109】
詳しくは、まず、抽出された滑剤を、示差走査熱量測定において、200℃まで昇温した後、10℃/分で0℃まで降温して、サンプルを得る。次に、得られたサンプルを、0℃から、10℃/分で昇温し、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線の融解ピーク温度が、滑剤の融点である。
【0110】
なお、融解ピークが2つ以上存在する場合、最も面積の大きい融解ピークの融解ピーク温度が、滑剤の融点である。
【0111】
4.マスキングテープ用基材の製造方法
次に、マスキングテープ用基材2の製造方法について、説明する。
【0112】
図2Aおよび図2Bに示すように、マスキングテープ用基材2の製造方法は、塗布工程と、乾燥工程とを含む。
【0113】
(1)塗布工程
図2Aに示すように、塗布工程では、コート樹脂のエマルジョンと滑剤のエマルジョンとを混合することにより得られる混合液Cを、ベース層21の表面S1に塗布する。
【0114】
塗布工程で用いられる塗工機は、限定されない。塗工機としては、例えば、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター、ブレードコーターなどが挙げられる。
【0115】
混合液の塗布量は、固形分換算で、例えば、1.0g/m2以上、好ましくは、3.0g/m2以上、例えば、5.0g/m2以下、好ましくは、4.0g/m2以下である。
【0116】
(2)乾燥工程
乾燥工程では、ベース層21の表面S1に塗布された混合液Cを乾燥させる。
【0117】
乾燥条件は、限定されない。例えば、加熱等しない自然乾燥でもよく、加熱による乾燥、乾燥空気を用いた乾燥であってもよい。
【0118】
図2Bに示すように、混合液が乾燥することにより、コート層22が得られる。
【0119】
5.効果
上記した粘着テープ用基材の原料によれば、ガラス転移温度が-50℃以上20℃以下である樹脂のエマルジョンと、融点が110℃以上である滑剤のエマルジョンとを含む。
【0120】
そのため、上記した粘着テープ用基材の原料を用いてマスキングテープ用基材2のコート層22を形成した場合、得られたマスキングテープ用基材2において、耐ブロッキング性の低下を抑制しつつ、バリア性の向上を図ることができる。
【0121】
その結果、耐ブロッキング性とバリア性との両立を図ることができる。
【実施例0122】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例によって限定されない。また、以下の記載において用いられる物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する、物性値、パラメータなどの上限値(「以下」として定義されている数値)または下限値(「以上」として定義されている数値)に代替することができる。
【0123】
1.マスキングテープ用基材の製造方法
実施例1~8
下記表1に示すコート樹脂のエマルジョンと滑剤のエマルジョンとを、固形分換算で下記表1の割合になるように混合し、混合液を調製した。
【0124】
得られた混合液を、ベース層(和紙にアクリル樹脂とスチレン・ブタジエンゴムとの混合物を含浸した含浸紙)の表面に、ワイヤーバーを用いて塗布した。塗布量は、3.0~4.0g/m2であった。
【0125】
その後、ベース層に塗布された混合液を乾燥させて、マスキングテープ用基材を作製した。
【0126】
比較例1~4
下記表2に示すコート樹脂のエマルジョンと滑剤のエマルジョンとを、固形分換算で下記表2の割合になるように混合した以外は、上記した各実施例と同様にして、マスキングテープ用基材を作製した。
【0127】
2.マスキングテープ用基材の性能評価
(1)耐ブロッキング性の評価
各実施例および各比較例のマスキングテープ用基材の表面に、両面テープ(製品名:ナイスタック、ニチバン社製)を貼り付けた。
【0128】
次に、そのマスキングテープ用基材を、表面温度30℃のカレンダーロールと、表面温度70℃のカレンダーロールとの間に、2m/分の速度で通して、1MPaの圧力で加圧した。
【0129】
次に、そのマスキングテープ用基材を、温度25℃、相対湿度50%の恒温槽内に24時間、静置して、調湿した。
【0130】
その後、引張試験機(製品名:Techno Graph TGE-5KN、ミネベア社製)を用いて、引張角度180°、引張速度100mm/分の条件で、マスキングテープ用基材に対する両面テープの剥離強度を測定した。結果を表1および表2に示す。剥離強度の値が低い、すなわち、両面テープがマスキングテープ用基材から剥離しやすいほど、耐ブロッキング性が優れている。
【0131】
(2)バリア性の評価
各実施例および各比較例のマスキングテープ用基材から、3つずつサンプルを切り出した。各サンプルの裏面に、水に染料(Sumifix Supra BLUE BRF 150% gran、住友化学工業社製)を溶解させた試験液(染料の濃度:1.0質量%)をワイヤーバーを用いて塗布した。
【0132】
次に、各サンプルの裏面から表面への試験液の透過状態を目視で観察した。表面への試験液の透過が全く無い状態を、バリア性が最も優れた5.0と評価し、上限の基準とした。また、表面全てに試験液が透過している状態を、バリア性が最も劣る1.0と評価し、下限の基準とした。
【0133】
次に、全ての実施例および比較例の全てのサンプルについて、それぞれ、上限の基準および下限の基準と比較し、試験液の透過状態を、0.1単位で数値化した。
【0134】
次に、各実施例および各比較例ごとに、3つのサンプルの平均値を計算した。得られた平均値を、バリア性として、表1および表2に示す。バリア性の値が高いほど、バリア性が優れている。
【0135】
(3)インキ受理性の評価
各実施例および各比較例のマスキングテープ用基材のサンプルを用意した。各サンプルの表面に、ダイン数40mN/mの濡れ性チェックペン(商品名:Tension Checker、パシフィック化学社製)でインキを塗布した。
【0136】
次に、塗布されたインキの状態を目視で観察した。塗布されたインキ全てが、はじかれることなくサンプルの表面に留まっている状態(サンプルの表面が、塗布されたインキ全てを受け付けている状態)を、最もインキ受理性が優れている5.0と評価し、上限の基準とした。また、塗布されたインキ全てが、サンプルの表面にはじかれている状態(サンプルの表面が、塗布されたインキを全く受け付けない状態)を、最もインキ受理性が劣っている1.0と評価し、下限の基準とした。
【0137】
次に、全ての実施例および比較例の全てのサンプルについて、それぞれ、上限の基準および下限の基準と比較し、塗布されたインキの状態を、0.1単位で数値化した。
【0138】
得られた数値を、インキ受理性として、表1および表2に示す。インキ受理性の値が高いほど、インキ受理性が優れている。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【符号の説明】
【0141】
1 マスキングテープ
2 マスキングテープ用基材
3 粘着剤層
21 ベース層
22 コート層
S1 表面
S2 裏面
図1
図2