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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021957
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022131989
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
(57)【要約】
【課題】背中側に膨出部が形成されることがなく、壁や椅子の背もたれに背中を付ける場合などにおいて邪魔になることのない冷却流体循環方式の冷却衣服の提供。
【解決手段】冷却ベスト1の内面にチューブ67が露出した状態で這わされている。冷却ベスト1の後身ごろ5の外面側には収容部55が取り付けられ、そこには平板状の保冷体Hが収容される。チューブ67は水Wで満たす。ポンプ69の作動により、チューブ67内の水Wはこの収容部55内では上側から水滴Dとなって流入し、平板状の保冷体Hの外面に当たって滑落しながら垂れ落ちる過程で冷やされ、下側の流出口からチューブ67内に戻っていく。平板状の保冷体Hを使用するので、装着する者の背中側に膨出部が形成されることがなく、壁や椅子の背もたれに背中を付ける場合などにおいて邪魔になる不都合を回避することができる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、
前記衣服本体の背面に設けられ上端部が開放されるポケットと、前記ポケット内に備えられ平板状の保冷体が立ち姿勢で出し入れ自在に収容される収容部と、前記衣服本体の内面側に露出して蛇行状に這わされ、一端側が前記収容部に上側で接続され他端側が前記収容部に下側で接続された可撓性チューブと、前記チューブに取り付けられたポンプと、手動操作を受けて前記ポンプを駆動させるポケット収容可能なコントローラを備え、前記ポンプの作動により、前記チューブの一端側から前記収容部に流入してきた冷却流体が前記保冷体に接触してその外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却された上で前記チューブの他端側に戻され、前記チューブを流通する冷却流体循環経路が構成されている冷却衣服において、
前記収容部は平袋状に構成され、その上端部には平板状の保冷体を出し入れできる開口が設けられており、前記開口を閉止できる閉止手段が備えられていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
請求項1に記載した冷却衣服において、
保冷体は凍結可能な液体が封入された平板状の容器によって構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項3】
請求項1または2に記載した冷却服において、
平板状の保冷体を出し入れできる開口とは別に凍結可能な液体入りのペットボトルを出し入れできるペットボトル用開口が収容部の前面に設けられ、ポケットの前面には前記ペットボトル用開口を外部に露出させる穴が形成されており、更に前記ペットボトル用開口を前記ポケットの外側から閉止できる閉止手段が備えられ、前記収容部はペットボトルを立ち姿勢で収納できるように構成されていることを特徴とする冷却衣服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境の作業現場等での使用に適した冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場等の高温環境下での作業において作業者の負担を軽減すべく、特許文献1に記載の冷却衣服が提案されている。
この冷却衣服の後身ごろの外面側には収容部が取り付けられており、収容部は冷却衣服の後身ごろに設けられたポケットの内部に収められている。収容部の一方の面には大きな円形の開口が形成されており、またポケットにも同じ形状・サイズの開口が形成されている。そして、開口の縁どうしが揃えられた状態で重ね合され、その重ね合された縁に口金が取り付けられることで、収容部は口金を介してポケットに結合している。口金の雌ネジ部に蓋体側の雄ネジ部が螺合すると収容部の開口が閉じられるようになっている。この開口を介して凍結させたペットボトルを収容部に収容する。
また、冷却衣服の内面には、チューブが露出した状態で這わされている。ポンプの作動により、チューブ内の水は収容部内に上側から水滴となって流入し、ペットボトルの外面に当たって滑落しながら垂れ落ちる過程で冷やされ、下側の流出口からチューブ内に戻っていく。このようにチューブ内を循環する水によって冷却衣服を着る者の体が冷やされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許願第2021-185534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷却衣服では、収容部にペットボトルを収めているので、後身ごろが膨出することになる。従って、冷却衣服を装着する者の背中側に膨出部が形成されることになり、壁や椅子の背もたれに背中を付ける場合などにおいて邪魔になるという問題がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、背中側に膨出部が形成されることがなく、壁や椅子の背もたれに背中を付ける場合などにおいて邪魔になることのない冷却衣服の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、衣服本体と前記衣服本体の背面に設けられ上端部が開放されるポケットと、前記ポケット内に備えられ平板状の保冷体が立ち姿勢で出し入れ自在に収容される収容部と、前記衣服本体の内面側に露出して蛇行状に這わされ、一端側が前記収容部に上側で接続され他端側が前記収容部に下側で接続された可撓性チューブと、前記チューブに取り付けられたポンプと、手動操作を受けて前記ポンプを駆動させるポケット収容可能なコントローラを備え、前記ポンプの作動により、前記チューブの一端側から前記収容部に流入してきた冷却流体が前記保冷体に接触してその外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却された上で前記チューブの他端側に戻され、前記チューブを流通する冷却流体循環経路が構成されている冷却衣服において、
前記収容部は平袋状に構成され、その上端部には平板状の保冷体を出し入れできる開口が設けられており、前記開口を閉止できる閉止手段が備えられていることを特徴とする冷却衣服である。
【0006】
好ましくは、保冷体は凍結可能な液体が封入された平板状の容器によって構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
【0007】
好ましくは、平板状の保冷体を出し入れできる開口とは別に凍結可能な液体入りのペットボトルを出し入れできるペットボトル用開口が収容部の前面に設けられ、ポケットの前面には前記ペットボトル用開口を外部に露出させる穴が形成されており、更に前記ペットボトル用開口を前記ポケットの外側から閉止できる閉止手段が備えられ、前記収容部はペットボトルを立ち姿勢で収納できるように構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷却衣服によれば、装着する者の背中側に膨出部が形成されることがなく、壁や椅子の背もたれに背中を付ける場合などにおいて邪魔になる不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷却ベストを外側から見た斜視図である。
図2図1の冷却ベストを内側から見た斜視図である。
図3図1の冷却ベストの前身ごろを開いて平面状に展開した状態を外側から示した図である。
図4図3の冷却ベストを内側から示した図である。
図5図2に示す冷却ベストの背当て部分の概略的な分解斜視図である。
図6図5のコントローラとポンプの電気結合の説明図である。
図7図1の冷却ベストの収容部の構成を示す斜視図である。
図8図7で平板状の保冷体を入れた状態での冷却効果のメカニズムの説明図である。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る冷却ベストを外側から見た斜視図である。
図10図9の冷却ベストの収容部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施の形態に係る冷却衣服を図1から図8にしたがって説明する。
冷却衣服はベスト型の冷却ベスト1になっており、その衣服本体3は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維の生地で構成されている。
後身ごろ5と左右の前身ごろ7、9とは肩部11を介して連なっており、通気性のよいメッシュ状の生地で構成されている。
左前身ごろ7と後身ごろ5の間の脇下部分では、左前身ごろ7と後身ごろ5からそれぞれ延び出たベルト13、13が移動カン15を介して長さ調整可能に連結されている。右前身ごろ9と後身ごろ5の間の脇下部分も同様に連結されている。
【0011】
左前身ごろ7と右前身ごろ9の間では左前身ごろ7と右前身ごろ9からそれぞれベルト17、17が延び出ている。一方のベルト17の端部に雄バックル19bが接続され、他方のベルト17の端部に雌バックル19aが接続されており、雄バックル19bが雌バックル19aに差し込まれて係止することで着脱自在に連結されている。
一対のベルト17、17が上下二段に設けられており、それぞれ着脱自在に連結されている。
【0012】
左前身ごろ7の中間から下側にかけて、二枚の袋布が外面側から重ね合され、それぞれの縁が左前身ごろ7の縁に対して縫着されて取り付けられている。この二枚の袋布により別布仕様のパッチ状のポケット21が構成されている。このポケット21は横方向に延びたファスナ23で開閉するようになっている。また、ポケット21の外面側の袋布を利用した共布仕様のパッチ状のポケット25が、ポケット21の外面側に重ね合わせで設けられている。このポケット25は上側が開口しており、その開口はファスナ21よりも下側に位置している。
ポケット21の上側では、左前身ごろ7を横断するように、太めの帯シートの両端が左前身ごろ7に対して縫着されて、挿通型ガイド部27が設けられている。
右前身ごろ9側でも同様に構成されている。
【0013】
後身ごろ5には、二枚の袋布29a、29bが外面側から重ね合され、それぞれの縁が後身ごろ5の縁に対して縫着されて取り付けられている。袋布29aは後身ごろ5の背当て部を兼ねている。この二枚の袋布29a、29bにより別布仕様のパッチ状のポケット29が構成されている。
ポケット29は後身ごろ5の形状に対応して肩部11に近づく部分はU形になって左右に分岐しており、それぞれの上端部は袋布29b側が後身ごろ5に対して縫着されておらず、そこがポケット29の小開口29c、29cになっている。
このポケット29の主な開口は袋布29bを横方向に分断した部分であり、そこをファスナ33で開閉するようになっている。このファスナ33は分岐部分に近い上側に位置している。
【0014】
また、ポケット29の外面側には、二枚の袋布35a、35bが縫着されて別布仕様のパッチ状のポケット35が重ねて設けられている。このポケット35の開口は袋布35bを横方向に分断した部分であり、そこをファスナ37で開閉するようになっている。
ポケット35の横寸法はポケット29と同様であるが、上下寸法はポケット29よりも小さくなっており、ポケット29の下縁に揃えられている。
上記のように、後身ごろ5を構成するメッシュ状の生地に対して袋布29a等が縫着されて一体化されている。ポケット35を構成する袋布35aはネット状の生地で構成されているが、その他の袋布29a等は水が浸入し難い通常の生地で構成されている。
【0015】
後身ごろ5とポケット29の袋布29aにそれぞれ挿通穴39が開けられ、ハトメリング41が取り付けられて、穴縁が補強されると共に後身ごろ5と袋布29aが結合されている。この挿通穴39を介して、後身ごろ5の内面側とポケット29の内部が通じている。挿通穴39は後身ごろ5の左下の角隅部に位置している。
ポケット29の袋布29bとポケット35の袋布35aにそれぞれ挿通穴43が開けられ、ハトメリング45が取り付けられて、穴縁が補強されると共に袋布29bと袋布35aが結合されている。この挿通穴43を介して、ポケット29の内部とポケット35の内部が通じている。挿通穴43はポケット35の袋布35bにより隠れており、後身ごろ5の内面側からも見えないが、衣服本体3としては、後身ごろ5の右下の角隅部に位置している。
【0016】
ポケット29の袋布29bとポケット35の袋布35aにはそれぞれ別の挿通穴47が開けられ、ハトメリング49が取り付けられて、穴縁が補強されると共に袋布29bと袋布35aが結合されている。この挿通穴47を介しても、ポケット29の内部とポケット35の内部が通じている。挿通穴47もポケット35の袋布35bにより隠れており、後身ごろ5の内面側からも見えないが、衣服本体3としては、後身ごろ5の左下の角隅部に位置している。挿通穴47と挿通穴43は、ポケット35内では斜め対角線上で対向しており、挿通穴47が上側に位置している。
また、この挿通穴47の下側の近傍には、伸縮自在なポンプホルダ51が設けられている。短く切断したゴムテープの長さ方向両端部が袋布35aの外面側に対して縫着されて一体化したもので構成されている。このポンプホルダ51も、ポケット35の袋布35bにより隠れている。
【0017】
後身ごろ5と左右の前身ごろ7、9の内面側には、伸縮自在な挿通型ガイド部53、53、……が複数設けられている。挿通型ガイド部53は、短く切断した細目のゴムテープの長さ方向両端部が内面側に対して縫着されて一体化したものである。
【0018】
ポケット29の内部には、防水性の合成樹脂シートで構成された平袋状の収容部55が収められている。収容部55の上端部には平板状の保冷体Hを出し入れできる開口55cが設けられている。収容部55の上端部の内面にはファスナ56が設けられており、このファスナ56は内面の一方側に設けられた突条と、他方側の内面に設けられた突条が嵌合する溝とによって構成されている。また、収容部55の上端部前面にはゴム紐58の一端が連結され、他端には押え具60が連結されている。押え具60には互いに間隔を開けて対向する一対の押え片60a、60bが設けられ、押え片60a、60bは互いに近接離間する方向へ弾性変形することができるようになっている。押え片60aと押え片60bとが対向する領域は下方と左右両側が開口する溝60cが形成されている。
これらファスナ56、押え片60a、60bによって閉止手段が構成されている。
【0019】
衣服本体3側は上記のように構成されており、冷却流体循環経路65が組み込まれている。冷却流体循環経路65は収容部55とチューブ67で構成されており、チューブ67はプラスチック製で可撓性になっている。収容部55の上側と下側をそれぞれ接続部としてチューブ67が収容部55と接続されており、収容部55の開口55cが閉じられると冷却流体の閉鎖流路になる。
チューブ67は、両端側を除いて衣服本体3のメッシュ状の生地で構成された内面側に露出している。その露出部分は挿通型ガイド部53、53、……に順次挿通されて、内面側に沿って蛇行状に這い回された状態になっており、内面側が全面にわたって網羅されている。この蛇行部分67aが衣服本体3を着用したときに、着用者の上着と接触する。
【0020】
チューブ67の両端側は、挿通穴39を通されてポケット29の内部に入り込んでいる。
チューブ67の一端部はそのまま、ポケット29の内部に収められた収容部55の上側の接続部55aに接続されて収容部55の内部と連通している。他端側は、挿通穴43に通されてポケット35の内部にU字状に引き出されている。このポケット35の内部では、ポンプホルダ51にポンプ69が保持されており、このポンプ69が引き出された部分に取付けられている。チューブ67の他端部はポケット29の内部にあり、収容部55の下側の接続部55bに接続されて収容部55の内部と連通している。
【0021】
ポンプ69の作動により、図6の矢印に示すように冷却流体が流動するので、収容部55の上側の接続部から収容部55の内部に冷却流体が流入し、下側の接続部55bからチューブ67に流出し、チューブ67の蛇行部分67aを流通した後に、再び、収容部55の上側の接続部55aから収容部55の内部に流入する。冷却流体循環経路65はこのような流れで冷却流体が循環する。
【0022】
ポンプ69のコード69aは、挿通穴47を通されて、ポケット29の内部に入り込み、左側の小開口29cから外に引き出されている。左前身ごろ7には、挿通型ガイド部27の上側に上下に二つの挿通型ガイド部53、53が取付けられており、引き出されたコード69aはこの挿通型ガイド部53、53、挿通型ガイド部27の間を通り抜けて、ポケット25の内部に収容されたコントローラ71に脱着自在に接続されている。
【0023】
このコントローラ71は、図6に示す外形をしており、外面にON/OFFスイッチ71aを備えており、このスイッチ71aの押下によりポンプ69に電源供給されてポンプ69が作動し、再度の押下により電源供給が停止するようになっている。電源供給中は、ランプ71bが点灯する。また、外部からの充電・外部への給電用にUSBコネクタ71cが設けられている。コントローラ71は左前身ごろ7のポケット25に収容されているので、冷却ベスト1を着用中でも操作が容易になっている。
コントローラ71にはバッテリとマイコンが収容されて、スイッチ71aやポンプ69のモータと繋がっており、ソフトウエアとの協働により、モータへの給電を制御する運転モード実行機能が実現され、ポンプ69が作動する。
【0024】
運転モード実行機能では、複数の運転モードから所望のものが選択可能になっており、スイッチ71aが押されると、タイマーにより計測されて3時間運転モードが実施される。その際に、スイッチ71aが一回押されると、連続運転モードが選択される。スイッチ71aが二回押されると、1分間運転→1分間停止→1分間運転→1分間停止→……の間欠運転モード(1)が選択される。スイッチ71aが三回押されると、20秒間運転→1分30秒間停止→20秒間運転→1分30秒間停止……の間欠運転モード(2)が選択される。すなわち、運転モード実行機能では、ポンプ69を間欠運転させる間欠運転機能が含まれている。
運転中にスイッチ71aが長押しされると、運転が終了する。
【0025】
図7に示すように、収容部55の開口55cから平板状の保冷体Hを出し入れするようになっている。保冷体Hは凍結可能な液体が封入された平板状の容器Haによって構成されている。
図8に示すように収容部55の内部は、平板状の保冷体Hを立ち姿勢で収容できる。なお、立ち姿勢とは、厳密に直立している場合に限定されず、収容部55の内面にもたれて倒れているような場合が含まれる。収容部55の横方向のサイズにより保冷体Hが立ち姿勢で収容される。
保冷体Hを収容部55に収容してからファスナ56を閉じる。すなわち、ファスナ56の突条と溝とを合わせて突条を溝に嵌合する。更に、押え具60の溝60cに収容部55の上端部の右端部または左端部に合わせて押え具60をスライドさせて一対の押え片60a、60bを広がる方向へ弾性変形させながら、溝60cに収容部55の上端部を入れる。これにより一対の押え片60a、60bによってファスナ56が閉じる方向へ押えられる状態となる。従って、開口55cが不用意に開いてしまうのを防止することができる。
なお、保冷体Hのサイズは幅寸法が150mm~250mm、高さ寸法が200mm~300mm、厚さ寸法が10mm~30mmの市販のものを使用するが、これらの寸法のものには限定されない。
【0026】
冷却ベスト1の収容部55には平板状の保冷体Hを収容するので、装着する者の背中側に膨出部が形成されることがなく、壁や椅子の背もたれに背中を付ける場合などにおいて邪魔になる不都合を回避することができる。
ポンプ69の作動により上記のように冷却流体循環経路65が形成されると、収容部55内に流入してきた水Wは水滴Dとなって平板状の保冷体Hの外面に当たって滑落しながら垂れ落ちていく。その落下過程で熱が奪われて冷やされ、下側の水溜まりに合流する。下の冷やされた水溜まりはポンプ69の吸込み作用によりチューブ67側に戻される。
水Wは冷却流体循環経路65に空気が混入されない程度、すなわち収容部55に入れた水Wが下側の接続部55bよりも高い水位にあればよく、必要最小限にすることで軽量化が図れている。また、軽量化により、冷却ベスト1の耐久性の向上を図ることができる。
【0027】
また、上記したようにポンプ69を間欠運転することも可能であり、間欠運転中の停止のタイミングでは水滴Dは収容部55内に流入しないので、間欠運転をすることによっても、保冷体Hの凍結された液体が解ける速度が遅くなる。
【0028】
一方、保冷体Hにより冷やされたばかりの水Wはかなり冷たくなっており、チューブ67は衣服本体3から露出していることから、その水Wが流通しているチューブ67に触れると、比較的強く冷たさを感じる。しかしながら、冷やされたばかりの水Wが常時流通していると、感覚が鈍くなって冷たさが弱くなってきたように感じられる。
そのような場合には、水Wがある程度まで温められると、冷やされ、再び水Wがある程度まで温められると、再び冷やされるようにサイクル的に変動していると、再び冷やされる際に心地よい冷たさを感じることができるようになる。
従って、最適な間欠運転モードを選択すれば、心地よい冷たさを適度に長時間にわたって与える効果もある。上記の間欠運転モード(2)は、停止期間が1分30秒間と比較的長く、冷たさが僅かに残っている状態まで行き尽くした時点で、再び瞬間的に強く冷たさを感じることができるようになっている。
【0029】
冷却ベスト1は、軽量構造になっているので安価に提供でき、且つ嵩張り難くなっている。従って、着用したときに着用者の動きの邪魔にはならない。
また、チューブ67の蛇行部分67aは後身ごろ5だけでなく、前身ごろ7、9にも設けられているので、着用したときに、背中だけでなく、胸元まで冷却できる。衣服本体3は柔軟に構成されており、冷却ベスト1は着用者の体の形状に沿って変形し、チューブ67も挿通型ガイド部53を引張りながらある程度移動できるので、蛇行部分67aは背中や胸元に接触して冷却効果を無駄なく利用できる。
この冷却ベスト1の衣服本体3を構成する生地やチューブ67は特別なものではなく、安価に入手できるものであり、それらを縫着したりして冷却ベスト1にする際にも手間の係る作業や専用の装置・器具などを必要としていないので、コスト的にも有利なものとなっている。
【0030】
図9図10は、第2の実施の形態に係る冷却ベスト101を示す。
この冷却ベスト101は冷却ベスト1と殆どが同様な構成になっているが、水等の内容物を凍結させたペットボトルPを使用することができるようになっており、特徴的な違いについてのみ説明する。
収容部155の一方の面には大きな円形の穴155aが形成されている。ポケット129の袋布129bにも同じサイズの穴が形成されており、穴縁どうしが揃えられた状態で重ね合され、その重ね合された穴縁に口金157が取り付けられている。従って、収容部155は口金157を介してポケット129に結合している。口金157には紐159を介して蓋体161が繋がっており、口金157の雌ネジ部に蓋体161側の雄ネジ部が螺合すると収容部155の開口が閉じられる。蓋体161には液体が漏れないようパッキン163が嵌め込まれている。
口金157と紐159と蓋体161はプラスチックで一体成形されており、紐159は細いため可撓性になっているが、口金157と蓋体161はある程度剛性になっている。
冷却ベスト101では、穴155aから収容部155に対しペットボトルPを出し入れすることが可能で、ペットボトルPと平板状の保冷体Hをいずれかを選択することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
また、チューブ67の這わせ方や這わせ密度は、衣服本体の身ごろのサイズ等に応じて最適なものを採用すればよい。
収容部の上端開口を閉鎖する閉鎖手段は上記したファスナ、押え具に限定されず、収容部の開口から水が漏れないように開口を閉止できるものであれば、他の構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…冷却ベスト(第1の実施の形態)
3…衣服本体 5…後身ごろ 7…左前身ごろ
9…右前身ごろ 11…肩部 13…ベルト
15…移動カン 17…ベルト 19a…雌バックル
19b…雄バックル 21…ポケット 23…ファスナ
25…ポケット 27…挿通型ガイド部 29…ポケット
29a、29b…袋布 29c…小開口 33…ファスナ
35…ポケット 35a、35b…袋布 37…ファスナ
39…挿通穴 41…ハトメリング 43…挿通穴
45…ハトメリング 47…挿通穴 49…ハトメリング
51…ポンプホルダ 53…挿通型ガイド部 55…収容部
55a…上側の接続部 55b…下側の接続部 55c…開口
56…ファスナ 58…ゴム紐 60…押え具
60a…押え片 60b…押え片 60c…溝
65…冷却流体循環経路 67…チューブ 67a…蛇行部分
69…ポンプ 69a…コード 71…コントローラ
71a…スイッチ 71b…ランプ 71c…USBコネクタ
101…冷却ベスト(第2の実施の形態)
129…ポケット 129b…袋布 155…収容部
155a…穴 157…口金 159…紐
161…蓋体 163…パッキン
H…保冷体 Ha…容器 P…ペットボトル W…水 D…水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10