(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000220
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】キャップおよびそれを備えたインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100914
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】神山 勇
(72)【発明者】
【氏名】松岡 久弥
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 優
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056FA10
2C056HA44
2C056JA04
2C056JA09
2C056JA10
2C056JA13
2C056JA17
(57)【要約】
【課題】キャップ本体の撓みを抑制することができるキャップを提供する。
【解決手段】キャップ70は、キャップホルダー72と、キャップホルダー72に嵌め込まれ、ノズル面44を覆い且つノズル面44との間に密閉空間67を形成するキャップ本体82と、を備え、キャップホルダー72は、第1底壁73の周縁から上方に延び、かつ、平面視で枠状に形成された第1側壁75と、第1側壁75の内面75Pに形成されかつ上下方向に延びる突起79と、を有し、キャップ本体82は、第2底壁83の周縁から上方に延び、かつ、平面視で枠状に形成された第2側壁85と、第2側壁85の上端に設けられ、ノズル面44に接触可能なリップ部86と、第2側壁85の外面85Qに形成され、上下方向に延びかつ突起79と係合する凹溝89と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出する複数のノズルおよび複数の前記ノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、を備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インクヘッドに着脱可能に取り付けられるキャップであって、
前記キャップは、
上方に向けて開口するキャップホルダーと、
前記キャップホルダーに嵌め込まれ、上方に向けて開口し、弾性変形可能な材料から形成され、前記ノズル面を覆い且つ前記ノズル面との間に密閉空間を形成するキャップ本体と、を備え、
前記キャップホルダーは、
第1底壁と、
前記第1底壁の周縁から上方に延び、かつ、平面視で枠状に形成された第1側壁と、
前記第1底壁と前記第1側壁とによって区画されかつ前記キャップ本体を収容する収容空間と、
前記第1側壁の内面に形成されかつ上下方向に延びる突起と、を有し、
前記キャップ本体は、
第2底壁と、
前記第2底壁の周縁から上方に延び、かつ、平面視で枠状に形成された第2側壁と、
前記第2側壁の上端に設けられ、前記ノズル面に接触可能なリップ部と、
前記第2側壁の外面に形成され、上下方向に延びかつ前記突起と係合する凹溝と、を有する、キャップ。
【請求項2】
前記第1側壁は、平面視で略矩形の枠状に形成され、直線部分を有する第1長辺と、直線部分を有する第1短辺とを有し、
少なくとも前記第1長辺には、複数の前記突起が形成され、
前記第2側壁は、平面視で略矩形の枠状に形成され、直線部分を有する第2長辺と、直線部分を有する第2短辺とを有し、
少なくとも前記第2長辺には、複数の前記凹溝が形成されている、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記第1短辺には、複数の前記突起が形成され、
前記第2短辺には、複数の前記凹溝が形成されている、請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記凹溝は、平面視で半円形状に形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記凹溝は、平面視で多角形状に形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項6】
前記突起は、前記第1側壁の内面の上下方向の全体に亘って形成され、
前記凹溝は、前記第2側壁の外面の上下方向の全体に亘って形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のキャップと、
前記載置台と、
前記インクヘッドと、
前記キャップを少なくとも上下方向に移動させることによって、前記キャップを、前記キャップが前記ノズル面を覆うキャップ位置と、前記キャップが前記ノズル面から離隔した離隔位置との間で移動させる移動機構と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップおよびそれを備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルとノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドを備え、インクジェット方式により記録媒体に所定の印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。かかるインクジェットプリンタには、ノズルから適切にインクを吐出させるために、キャッピングユニットが設けられている。キャッピングユニットは、印刷が行われないときにノズル面を覆うキャップを有している。
【0003】
キャッピングユニットは、ノズル面をキャップで覆うことによって、キャップとノズル面との間に密閉空間を形成する。密閉空間が形成された状態で、キャップに接続された吸引装置(例えば吸引ポンプ)を駆動することによって、ノズルから粘性が高くなったインクが強制的に排出される。即ち、吸引装置は、ノズルからインクを強制的に排出させることができる(以下、吸引動作ともいう)。これにより、ノズルの目詰まりを抑制したり解消したりすることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、キャップを上昇させて、ノズル面をキャップで覆う構成を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に示す例では、キャップからノズル面に対して一定の力が加わっているため、キャップが適切にインクヘッドに取り付けられ、キャップとノズル面との間に密閉空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、キャップはノズル面と接触するリップ部を有し、弾性変形可能な材料から形成されたキャップ本体と、キャップ本体を保持するキャップホルダーとを備えている。リップ部がノズル面に押し当てられて弾性変形することによって、キャップとノズル面との間に密閉空間が形成される。ここで、長期間に亘ってキャップ本体にインクが接触すると、キャップ本体が変形して撓むことが発生し得る。キャップ本体が撓んでしまうと、リップ部がノズル面に接触したときに、リップ部とノズル面との間に隙間が生じてしまい密閉空間を適切に形成することができない虞がある。密閉空間を形成できないと、吸引装置を駆動しても、ノズルからインクを強制的に排出することができなくなる虞がある。また、密閉空間が形成されないことにより、ノズル面やノズルが乾燥してしまい、インク詰まりが発生する虞がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャップ本体の撓みを抑制することができるキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るキャップは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出する複数のノズルおよび複数の前記ノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、を備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インクヘッドに着脱可能に取り付けられるキャップである。前記キャップは、上方に向けて開口するキャップホルダーと、前記キャップホルダーに嵌め込まれ、上方に向けて開口し、弾性変形可能な材料から形成され、前記ノズル面を覆い且つ前記ノズル面との間に密閉空間を形成するキャップ本体と、を備えている。前記キャップホルダーは、第1底壁と、前記第1底壁の周縁から上方に延び、かつ、平面視で枠状に形成された第1側壁と、前記第1底壁と前記第1側壁とによって区画されかつ前記キャップ本体を収容する収容空間と、前記第1側壁の内面に形成されかつ上下方向に延びる突起と、を有する。前記キャップ本体は、第2底壁と、前記第2底壁の周縁から上方に延び、かつ、平面視で枠状に形成された第2側壁と、前記第2側壁の上端に設けられ、前記ノズル面に接触可能なリップ部と、前記第2側壁の外面に形成され、上下方向に延びかつ前記突起と係合する凹溝と、を有する。
【0009】
本発明のキャップによると、キャップ本体がキャップホルダーに嵌め込まれている状態において、キャップホルダーの突起とキャップ本体の凹溝とが係合している。ここで、突起は上下方向に延びているため、キャップ本体の第2側壁のうち突起に係合する凹溝および凹溝の周辺部分が、第1側壁に近づく方向に撓むこと(即ちキャップ本体の外側への撓み)が抑制される。これにより、第2側壁の上端に設けられたリップ部が撓むことも抑制され、リップ部を適切な状態に保持することができる。このように、キャップ本体の第2側壁がインクと接触して例えば膨潤するような場合があっても、突起が凹溝と係合しているため、第2側壁の撓みを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャップ本体の撓みを抑制することができるキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタを示す正面図である。
【
図2】一実施形態に係るキャリッジの下面の構成を模式的に示した図である。
【
図3】一実施形態に係るキャッピングユニットの周辺の構成を示す図であり、インクヘッドからキャップが取り外された状態を示す正面図である。
【
図4】一実施形態に係るキャッピングユニットの周辺の構成を示す図であり、インクヘッドにキャップが取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図7】一実施形態に係るキャップホルダーの斜視図である。
【
図8】一実施形態に係るキャップ本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るキャップおよびキャップを備えたインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ10を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示し、図面中の符号X(
図2参照)は副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する方向である。副走査方向Xは所定の方向の一例である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行う。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステル等の樹脂製のシートやフィルム、織布や不織布等の布帛、その他の媒体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10Aと、プラテン13と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、搬送機構20と、ヘッド移動機構30と、光照射装置38と、インクヘッド40(
図2参照)と、キャッピングユニット60と、制御装置100と、を備えている。
【0016】
プリンタ本体10Aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プラテン13には、記録媒体5が載置される。プラテン13に記録媒体5が載置された状態で、プラテン13上で記録媒体5への印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がったものである。プラテン13は、載置台の一例である。
【0017】
搬送機構20は、プラテン13に載置された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。搬送機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15の下方に配置され、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。グリットローラ22は、上部がプラテン13から上方に露出した状態で、プラテン13に設けられている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。なお、ピンチローラ21およびグリットローラ22のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。本実施形態では、
図1に示すように、ピンチローラ21およびグリットローラ22は、プラテン13の左端部および右端部にそれぞれ配置されている。
【0018】
ここでは、グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。これにより、記録媒体5は、副走査方向Xに搬送される。フィードモータ23は制御装置100に制御される。
【0019】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられている。
【0020】
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40(
図2参照)および光照射装置38を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左側のプーリ31aと、右側のプーリ31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33とを備えている。左側のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の近傍に設けられている。右側のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の近傍に設けられている。ベルト32は、例えば無端状であり、左側のプーリ31aと右側のプーリ31bとに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付け固定されている。
【0021】
右側のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右側のプーリ31bが回転し、ベルト32が左側のプーリ31aおよび右側のプーリ31bの間で走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40および光照射装置38は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。キャリッジモータ33は制御装置100に制御される。
【0022】
図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に搭載されている。インクヘッド40は、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド40は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド40は、複数のノズル41が副走査方向Xに並ぶ第1ノズル列42と、第1ノズル列42の側方に位置しかつ複数のノズル41が副走査方向Xに並ぶ第2ノズル列43と、複数のノズル41が形成されたノズル面44を備えている。ここでは、第2ノズル列43は、第1ノズル列42の右方に位置する。ノズル41から記録媒体5に向けてインク(例えば光硬化性インク)が吐出される。ノズル41内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。本実施形態では、プリンタ10は、4つのインクヘッド40を備えているが、数は特に限定されない。また、インクヘッド40は、それぞれ2つのノズル列を備えているが、1つのノズル列または3つ以上のノズル列を備えていてもよい。
【0023】
インクヘッド40のノズル41は、例えば、インクとして光硬化性インクを吐出する。光硬化性インクとしては、例えば、紫外線硬化インク(UVインク)が挙げられる。紫外線硬化インクは、紫外線が照射されると硬化する性質を有する。
【0024】
図1に示すように、光照射装置38は、キャリッジ17の右側および左側にそれぞれ配置されている。光照射装置38は、記録媒体5に吐出された光硬化性インク(例えば紫外線硬化インク)に光(例えば紫外線)を照射する装置である。
【0025】
次に、本実施形態に係るキャッピングユニット60について説明する。キャッピングユニット60は、後述するキャップ70をインクヘッド40に取り付けることによってインクヘッド40のノズル41の乾燥を抑制する。また、キャッピングユニット60は、ノズル41の目詰まりを抑制するために、後述する吸引ポンプ68によってノズル41内のインクを強制的にキャップ70内に排出させる。
【0026】
図1に示すように、キャッピングユニット60は、プリンタ本体10A内に設けられている。キャッピングユニット60は、プラテン13より右方に配置されている。
図3に示すように、キャッピングユニット60は、インクヘッド40に着脱可能な4個のキャップ70と、キャップ移動機構63と、吸引ポンプ68とを備えている。キャップ70およびキャップ移動機構63は、ガイドレール15(
図1参照)の右端部に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、キャリッジ17およびインクヘッド40および光照射装置38が待機する位置である。ただし、ホームポジションHPの位置は特に限定されず、ガイドレール15の左端部であってもよい。
【0027】
図3に示すように、キャップ移動機構63は、キャップ70を支持している。キャップ移動機構63は、キャップ70をインクヘッド40に対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構63は、キャップ70を上下方向に移動させるものである。キャップ移動機構63の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ63Aを備えている。駆動モータ63Aを駆動させることによって、キャップ移動機構63は、キャップ70を上下方向に移動させる。キャップ移動機構63は、キャップ70を上方に移動させることによって、キャップ70を、キャップ位置CP(
図4参照)に移動させる。ここで、キャップ位置CPとは、キャップ70がインクヘッド40のノズル面44を覆う位置である。これにより、キャップ70は、インクヘッド40にそれぞれ装着される。キャップ70がインクヘッド40にそれぞれ取り付けられたときに、キャップ70とノズル面44との間に密閉空間67(
図4参照)が形成される。キャップ移動機構63は、印刷を開始するときに、キャップ70を下方に移動させることによって、キャップ70をキャップ位置CP(
図4参照)から離隔位置DP(
図3参照)に移動させる。ここで、離隔位置DPとは、キャップ70がノズル面44から離隔した位置である。これにより、キャップ70は、それぞれ、インクヘッド40から取り外される。
【0028】
吸引ポンプ68は、インクヘッド40にキャップ70が装着されている状態において、密閉空間67内の流体(例えばインク)を吸引してノズル41(
図2参照)からインクを吐出させる吸引動作を行う。吸引ポンプ68を駆動することにより、密閉空間67内は、大気圧より低い圧力(即ち負圧)となる。この結果、インクヘッド40のノズル41からインクが強制的に排出される。吸引ポンプ68の吸引口は、可撓性を有するチューブ65を介して4個のキャップ70に接続されている。吸引ポンプ68の排出口は、廃液タンク69に接続されている。吸引ポンプ68に吸引された密閉空間67内の流体は、廃液タンク69に貯留される。吸引ポンプ68は、制御装置100(
図1参照)に制御される。吸引ポンプ68は、吸引装置の一例である。
【0029】
図3に示すように、キャップ70は、主走査方向Yに並ぶ。
図5に示すように、キャップ70は、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。キャップ70は、インクヘッド40のノズル面44(
図2参照)を覆うようにインクヘッド40にそれぞれ着脱可能に形成されている。なお、「ノズル面44を覆う」とは、ノズル面44の全体が覆われる場合に限られず、少なくとも第1ノズル列42および第2ノズル列43の全体が覆われる場合を含む。
【0030】
図5に示すように、キャップ70は、上方に向けて開口するキャップホルダー72と、キャップホルダー72に嵌め込まれたキャップ本体82と、キャップ本体82に収容されたインク吸収体90とを備えている。
【0031】
図7に示すように、キャップホルダー72は、第1底壁73と、第1側壁75と、収容空間77と、複数の突起79と、インク流路81とを有している。第1底壁73は、平面視で略矩形状に形成されている。第1側壁75は、第1底壁73の周縁から上方に延びる。第1側壁75は、平面視で略矩形の枠状に形成されている。第1側壁75は、直線部分を有する一対の第1長辺75Aと、直線部分を有する一対の第1短辺75Bとを有する。第1長辺75Aは、第1短辺75Bに接続されている。第1長辺75Aは、副走査方向Xに延びる。第1短辺75Bは、主走査方向Yに延びる。収容空間77は、第1底壁73と第1側壁75とによって区画されている。収容空間77は、キャップ本体82(
図8参照)を収容する。突起79は、第1側壁75の内面75Pに形成されている。突起79は、第1長辺75Aおよび第1短辺75Bの直線部分に形成されており、曲線部分には形成されていない。本実施形態では、第1長辺75Aには、それぞれ、8個の突起79が形成されている。第1短辺75Bには、それぞれ、3個の突起79が形成されている。突起79は、上下方向に延びる。突起79は、第1底壁73に接続している。突起79は、内面75Pから離れる方向に延びる。例えば、左側の第1長辺75Aに設けられた突起79は、右側の第1長辺75Aに向けて(即ち右方に向けて)延びる。突起79は、平面視で半円形状に形成されている。第1底壁73の上面73Aには、内部にインク流路81が形成されたボス部80が設けられている。ボス部80は、上面73Aから上方に延びる。インク流路81は、第1底壁73を貫通し、吸引ポンプ68に連通するチューブ65(
図3参照)に接続されている。キャップホルダー72は、キャップ本体82よりも剛性の高い材料から形成されている。キャップホルダー72は、例えば、樹脂材料(例えばポリアセタール樹脂やポリエチレン樹脂等)から形成されている。
【0032】
キャップ本体82は、インクヘッド40に着脱可能に形成されている。キャップ本体82は、ノズル面44を覆いかつノズル面44との間に密閉空間67(
図4参照)を形成する。キャップ本体82は、上方に向けて開口する。キャップ本体82は、弾性変形可能な材料から形成されている。キャップ本体82は、例えば、ゴムから形成されている。
図8に示すように、キャップ本体82は、第2底壁83と、第2側壁85と、リップ部86と、収容空間87と、複数の凹溝89と、を有している。第2底壁83は、平面視で略矩形状に形成されている。第2底壁83は、キャップホルダー72の第1底壁73より小さい。第2側壁85は、第2底壁83の周縁から上方に延びる。第2側壁85は、平面視で略矩形の枠状に形成されている。第2側壁85は、直線部分を有する一対の第2長辺85Aと、直線部分を有する一対の第2短辺85Bとを有する。第2長辺85Aは、第2短辺85Bに接続されている。第2長辺85Aは、副走査方向Xに延びる。第2短辺85Bは、主走査方向Yに延びる。
図9に示すように、第2側壁85は、キャップホルダー72の第1側壁75に支持される。リップ部86は、第2側壁85の上端に設けられている。リップ部86は、第2側壁85から上方に向けて延びる。リップ部86は、キャップホルダー72の上端72Tより上方に位置する。リップ部86は、平面視で略矩形の枠状に形成されている。リップ部86は、インクヘッド40のノズル面44に接触可能に形成されている。リップ部86は、キャップ70がインクヘッド40に取り付けられたとき、ノズル面44に接触する。即ち、キャップ70がキャップ位置CP(
図3参照)に位置するとき、リップ部86は、ノズル面44に押し当てられて弾性変形した状態でノズル面44と接触している。リップ部86がノズル面44と接触したとき、ノズル面44とキャップ本体82との間に密閉空間67が形成される。リップ部86の幅L1(
図9参照)は、第2側壁85の幅L2(
図9参照)より小さい。収容空間87は、第2底壁83と第2側壁85とによって区画されている。収容空間87は、インク吸収体90(
図6参照)を収容する。
図10に示すように、凹溝89は、キャップホルダー72の突起79と係合する。凹溝89には、突起79がはめ合わされる。
図8に示すように、凹溝89は、第2側壁85の外面85Qに形成されている。凹溝89は、第2長辺85Aおよび第2短辺85Bの直線部分に形成されており、曲線部分には形成されていない。本実施形態では、第2長辺85Aには、それぞれ、8個の凹溝89が形成されている。第2短辺85Bには、それぞれ、3個の凹溝89が形成されている。凹溝89は、上下方向に延びる。凹溝89は、第2側壁85の外面85Qから凹む。例えば、左側の第2長辺85Aに設けられた凹溝89は、右側の第2長辺85Aに向けて(即ち右方に向けて)凹む。凹溝89は、平面視で半円形状に形成されている。第2底壁83の上面83Aには、キャップホルダー72のボス部80(
図7参照)が挿入される排出孔88が形成されている。排出孔88はボス部80に設けられたインク流路81を介して吸引ポンプ68と連通する。排出孔88は、密閉空間67内の流体を排出する。
【0033】
図5に示すように、インク吸収体90は、平面視で略矩形状に形成されている。インク吸収体90は、キャップ本体82に収容されている。インク吸収体90は、キャップ本体82に着脱可能に取り付けられている。
図9に示すように、インク吸収体90は、リップ部86の上端86Tより下方に位置する。インク吸収体90は、インクヘッド40のノズル41から吐出されたインクを吸収する。インク吸収体90は、多孔質である。インク吸収体90は、例えば、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(PVAスポンジ)である。
【0034】
本実施形態のキャップによると、キャップ本体82がキャップホルダー72に嵌め込まれている状態において、キャップホルダー72の突起79とキャップ本体82の凹溝89とが係合している。ここで、突起79は上下方向に延びているため、キャップ本体82の第2側壁85のうち突起79に係合する凹溝89および凹溝89の周辺部分が、第1側壁75に近づく方向に撓むこと(即ちキャップ本体82の外側への撓み)が抑制される。これにより、第2側壁85の上端に設けられたリップ部86が撓むことも抑制され、リップ部86を適切な状態に保持することができる。このように、キャップ本体82の第2側壁85がインクと接触して例えば膨潤するような場合があっても、突起79が凹溝89と係合しているため、第2側壁85の撓みを効果的に抑制することができる。
【0035】
本実施形態のプリンタ10によると、第1側壁75は、平面視で略矩形の枠状に形成され、直線部分を有する第1長辺75Aと、直線部分を有する第1短辺75Bとを有し、少なくとも第1長辺75Aには、複数の突起79が形成され、第2側壁85は、平面視で略矩形の枠状に形成され、直線部分を有する第2長辺85Aと、直線部分を有する第2短辺85Bとを有し、少なくとも第2長辺85Aには、複数の凹溝89が形成されている。略矩形の枠状に形成された第2側壁85では、第2長辺85Aにおいて撓みが生じ易いが、突起79と係合する凹溝89を第2長辺85Aに複数設けることによって、第2長辺85Aにおける撓みを効果的に抑制することができる。
【0036】
本実施形態のプリンタ10によると、第1短辺75Bには、複数の突起79が形成され、第2短辺85Bには、複数の凹溝89形成されている。かかる構成によると、第2側壁85の第2短辺85Bにおける撓みを効果的に抑制することができる。
【0037】
本実施形態のプリンタ10によると、凹溝89は、平面視で半円形状に形成されている。これにより、インクによる影響などで膨潤して凹溝89が突起79に対して密着するような場合、荷重を分散することができる。
【0038】
本実施形態のプリンタ10は、凹溝89は、平面視で多角形状に形成されていてもよい。これにより、インクによる影響などで膨潤して凹溝89が突起79に対して密着するような場合、荷重を分散することができる。
【0039】
本実施形態のプリンタ10によると、突起79は、第1側壁75の内面75Pの上下方向の全体に亘って形成され、凹溝89は、第2側壁85の外面85Qの上下方向の全体に亘って形成されている。これにより、キャップ本体82の外側への撓みをよりよく抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0041】
上述した実施形態では、突起79および凹溝89は平面視で半円形状に形成されていたが、これに限定されない。突起79および凹溝89は、例えば、矩形状(例えば正方形状や長方形状)であってもよいし、三角形状や台形状等であってもよい。なお、矩形状、三角形状や台形状等の形状とした場合には、各頂点(各辺の交わる部分)にはフィレットがかかっていることが好ましい。
【0042】
上述した実施形態では、突起79は第2側壁85の上下方向の全体に亘って形成されているが、上下方向の一部に形成されていてもよいし、上下方向に複数に分割されて形成されてもよい。その場合、凹溝89は第2側壁85の突起79に合わせて第1側壁75の上下方向の一部に形成されていてもよいし、第1側壁75の上下方向の全体に亘って形成されていてもよい。つまり、凹溝89は、突起79が嵌め合わされる位置に突起79の上下方向の長さ以上で第2側壁85に形成されていればよい。キャップ本体82は、弾性変形可能な材料で形成されているため、凹溝89が上下方向の全体に亘って形成されていなくても突起79に合わせて形成されていれば、キャップ本体82を弾性変形させながらキャップホルダー72に挿入することで、キャップ本体82をキャップホルダー72に装着することができる。
【0043】
上述した実施形態では、プリンタ10は、記録媒体5が載置されるプラテン13を備え、記録媒体5はグリットローラ22によって副走査方向Xに搬送されるように構成されていたがこれに限定されない。例えば、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。即ち、プリンタ10は、記録媒体5を主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能なテーブルを備えていてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、キャップ移動機構63はキャップ70を上方および下方に移動させるように構成されていたが、これに限定されない。例えば、プリンタ10は、キャップ70の上下方向の位置が固定された状態でキャリッジ17またはインクヘッド40を上方および下方に移動させる移動機構を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
40 インクヘッド
41 ノズル
44 ノズル面
67 密閉空間
70 キャップ
72 キャップホルダー
73 第1底壁
75 第1側壁
79 突起
82 キャップ本体
83 第2底壁
85 第2側壁
89 凹溝