(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022043
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】分散ポリマーおよび乳化シリコーン樹脂ポリマーからなる水性接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20230207BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J183/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177345
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2019547366の分割
【原出願日】2018-03-02
(31)【優先権主張番号】17158993.0
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509221054
【氏名又は名称】ノラックス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】NOLAX AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リープル,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】オソット,クロード
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーベルガー,バルバラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温で強く接着し、可燃性ではなく、高耐熱性が要求される絶縁材料を製造するのに適した水性接着剤を提供する。
【解決手段】分散ポリマーおよび乳化シリコーン樹脂ポリマーを含む水性接着剤であって、反応性基を介して、より特定すると、縮合反応を介して、後架橋可能であることを特徴とする接着剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散ポリマーおよび乳化シリコーン樹脂ポリマーを含む水性接着剤であって、
反応性基を介して、より特定すると、縮合反応を介して、後架橋可能であることを特徴とする接着剤。
【請求項2】
一液型である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記分散ポリマーが、熱可塑性ポリマーである、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、極性基を有し、好ましくは、以下の群:アクリレートコポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、アクリレート-ウレタンコポリマー、ポリウレタンコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマーから選択されるコポリマーまたはコポリマーの組み合わせである、請求項3に記載の接着剤。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂ポリマーが、有機側基を有するポリシロキサンであり、前記側基が、好ましくは、以下の群:メチル、フェニル、ヒドロキシおよび/またはアルコキシ基から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の接着剤。
【請求項6】
固形分が、50%重量%超、好ましくは60%~80%である、先行する請求項のいずれかに記載の接着剤。
【請求項7】
pH6~9を有する、先行する請求項のいずれかに記載の接着剤。
【請求項8】
1000~50000mPa・sの粘度を有する、先行する請求項のいずれかに記載の接着剤。
【請求項9】
少なくとも2つの基板を用意するステップと、
接着剤を、第1の基板および/または第2の基板の少なくとも一部に塗布するステップと、
前記2つの基板を接合し、結合するステップと
を含む、少なくとも2つの異なる基板を、請求項1~8のいずれかに記載の接着剤を用いて結合する方法。
【請求項10】
前記接着剤が、ローラー、ステンシル、ナイフまたは噴霧により塗布される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1つの基板が、金属、好ましくはアルミニウムであり、第2の基板が、以下の群:ガラス繊維、シリケート繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維および/または炭素繊維から選択される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
接着剤が、水に分散した少なくとも1つのポリマーを含み、反応性基を介して、より特定すると、縮合反応を介して後架橋可能である、水性接着剤中でのシリコーン樹脂ポリマーの使用。
【請求項13】
請求項1に記載の接着剤と結合している絶縁材料。
【請求項14】
少なくとも2つの結合した基板を含み、第1の基板が、金属、より詳細にはアルミニウムであり、第2の基板が、以下の群:ガラス繊維、シリケート繊維、ポリアミド繊維、ポ
リアクリロニトリル繊維および/または炭素繊維から選択される、請求項13に記載の絶縁材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
独立クレームのプリアンブルによれば、本発明は、水性接着剤、そのような接着剤を用いて結合する方法、この接着剤を用いて結合した絶縁材料、およびそのような接着剤のためのシリコーン樹脂ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
350℃超で長期の耐性を有する、エンジンルームまたは排気系の高耐熱性絶縁材料の積層(例えば、ガラス繊維マット/アルミ箔)では、市販の接着剤の選択肢はかなり限られている。シリコーン接着剤を使用するのが一般的であり、それは100%の系であるか、または溶媒ベースである。これらのシリコーン接着剤は、通常、二液型であり、それは最初に架橋され、塗布後に架橋チャネルで濃縮する。しかし、この種の系は、約180℃~210℃の使用温度でのみ使用することができる。
【0003】
最新型エンジンの今日の問題は、CO2およびNOxの課題のために、均一に、速やかに加熱しなければならないことである。横方向に取り付けたエンジンでは、ターボチャージャーは、通常、端壁側に位置している。特にエンジンを切った後、熱がここに蓄積する。これらの加熱/冷却の瞬間は、付属部品に最大の応力を引き起こす。エンジン損傷またはエンジン/車両火災を結果となる、ホース破れの事例があり得る。
【0004】
一液型は、US2009/0111931A1号に記載されており、高温で加硫処理されるシリコーンエラストマー組成物からなる。この接着剤の成分には、ポリオルガノシロキサンが含まれ、接着剤は、中程度の温度で長期安定性を有する。しかし、そのような組成物の欠点は、高粘度を有し、したがって、結合すべき織物に十分に浸透できないことである。したがって、一般的に、織物を前処理しなければならない。この結果、原料のコストが高くなり得る。
【0005】
JP3811220B2は、水性であり、分散ポリマーおよび乳化シリコーン樹脂ポリマーを含む耐湿性接着剤を記載している。しかし、ラテックスとしても知られているこの種の組成物は、耐熱性を示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。より詳細には、意図は、高温で強く接着し、可燃性ではなく、高耐熱性が要求される絶縁材料を製造するのに適した水性接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分散ポリマーおよび乳化シリコーン樹脂ポリマーを含む水性接着剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリマーは、水相に分散している。シリコーン樹脂エマルションは、好ましくは、メチルフェニル-シリコーン樹脂水性エマルション(Me/Ph-Si樹脂)、例えば、Wacker Chemie AG製の、例えば、Silres(登録商標)MPF 52 Eである。「水性(Water-based)」は、連続相が水であることを意味する。
【0009】
100%熱可塑性ポリマー、例えば、エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマーから
なるヒートシール可能な接着剤は、例えば、室温で強い接着を示し、様々な基板を結合するために適している。しかし、この種の接着剤を用いて製造されるアセンブリは、十分な耐熱性を欠き、十分に熱曝露すると、基板は、互いに引き離される。
【0010】
塗料で遭遇する種類の水性ベースのシリコーン樹脂は、例えば、接着性を示さないが、良好な耐熱性を有する。
【0011】
分散ポリマーと水性ベースのシリコーン樹脂ポリマー水性エマルションを組み合わせると、高温で十分に接着し、可燃性ではなく、貯蔵時に安定であり、多くの溶媒、オイル、および酸に抵抗性がある接着剤が得られることが驚くべきことにわかった。特に、アクリレートまたはアクリル酸とのコポリマーを含む分散ポリマーは、ガソリン、ディーゼル、エンジンオイル、ブレーキ液、ブレーキクリーナー、および塩グリット溶液(salt grit solutions)に関して良好な媒体抵抗を示す。
【0012】
水性接着剤は、溶媒を含み得る。しかし、溶媒含量は、6重量%を超えるべきではない。低い溶媒含量は、先ず、低い環境負荷に寄与し、職業衛生を改善する。
【0013】
接着剤は、種々の基板、例えば、金属または金属箔、特にアルミニウム、およびガラス繊維を結合するために適している。他の基板:シリケート繊維;ポリアミド繊維、例えば、ケブラーまたはアラミド;ポリアクリロニトリル繊維および/または炭素繊維も考えられる。これらの材料は、任意の組み合わせで互いに結合し得る。
【0014】
本発明の接着剤を用いて製造されるアセンブリは、その元の特性、例えば、柔軟性を、例えば、乾燥後でも維持する。接着剤は、材料のいかなる硬化も引き起こさない。
【0015】
接着剤は、一液型の形態をとり得る。構成成分を予備混合することができる。活性化、例えば、加熱により、接着機能を得ることができる。
【0016】
この種の接着剤は、取り扱いを円滑にし、接着剤を塗布する方法を簡素化する。さらに、二液型と比較して、材料コストの節約になる。二液型シリコーン接着剤によるガラスマットとアルミ箔と間の結合では、二液型が材料に十分浸透できないので、例えば、ガラスマットをプレコートする必要がある。
【0017】
本発明の一液型は、低粘度とすることができ、ガラスマットを十分に濡らし、プレコートは不要である。したがって、材料を節約することができる。
【0018】
分散ポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーである。
分散ポリマーは、バインダーとして機能し得る。
【0019】
熱可塑性ポリマーは、接着性に好影響を与えるという利点を有する。
熱可塑性ポリマーは、極性基を有し得る。極性基は、例えば、ヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基であってもよい。
【0020】
極性基は、結合すべき種々の基板、例えば、アルミニウムやガラスの接着を確実にする。
【0021】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、以下の群:アクリレートコポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、アクリレート-ウレタンコポリマー、ポリウレタンコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマーから選択されるコポリマーまたはコポリマーの組み合わせである。
【0022】
所望の特性は、熱可塑性物質の選択により制御することができる。
シリコーン樹脂ポリマーは、好ましくは有機側基を有するポリシロキサンである。側基は、好ましくは、以下の群:メチル、フェニル、ヒドロキシおよび/またはアルコキシから選択される。
【0023】
シリコーン樹脂は、高度に架橋したポリシロキサンからなり得る。側基は、メチルおよび/またはフェニル基であってもよい。側基としてフェニルを使用する利点は、接着剤に対して特に高耐熱性が実現し得ることである。さらに、フェニル基は、他の樹脂およびフィラーとの比較的高い適合性を有する。熱可塑性は、純粋なメチルシリコーン樹脂に比べて改善している。シロキサン主鎖上の他の側基は、例えば、ヒドロキシルまたはアルコキシ基であってもよく、この結果、高温でより良好な硬化を生じる。硬化の過程で、ポリマーセグメント同士の、また、ポリマーセグメントとフィラー、他の樹脂または基板との縮合反応が生じ得る。
【0024】
特に、ヒドロキシルおよびアルコキシ基は、縮合反応により共に反応し、そのため、シリコーン樹脂の後架橋、したがって、硬化を生じる。縮合反応は、スズ系触媒、例えば、二ラウリン酸ジブチルすずの添加により加速することができる。後架橋は、好ましくは熱供給で、より好ましくは100~300℃、特に好ましくは120~250℃、極めて好ましくは150~230℃温度範囲で起こる。製剤中に存在する有機ポリマーとの架橋も起こり得、その結果、樹脂のヒドロキシルまたはアルコキシ基とポリマーのヒドロキシルまたはアルコキシ基との間で縮合反応が生じる。他の可能性は、架橋が、シリコーン樹脂に存在するSi-H基とビニル基の間で起こることである。この場合、製剤を、さらに白金触媒と混合することができる。
【0025】
100~300℃、特に好ましくは120~250℃、極めて好ましくは150~230℃の上記の温度範囲では、さらに、分散ポリマー中の官能基同士の架橋も生じ得る。分散ポリマーが、遊離のヒドロキシル基および/または遊離のアルコキシ基を有し、これらの基が縮合反応に加わる場合は、特にそうである。しかし、分散ポリマーの他の官能基による他の反応も考えられる。
【0026】
シリコーン樹脂ポリマー上の遊離官能基の架橋反応も可能である。さらに、一方のシリコーン樹脂ポリマー上と他方の分散ポリマー上の遊離官能基の間の架橋反応も可能である。
【0027】
そのような後架橋、特にシリコーン樹脂の後架橋の結果、接着剤、また、この接着剤を用いて結合した材料により得られる耐熱性は、特に高い。
【0028】
接着剤は、さらなる構成成分を含み得る。例えば、組成物は、高温性能、粘度調整、およびコーティングの改良のために、さらなる顔料および/またはフィラーと混合することができる。
【0029】
接着剤は、増粘剤、好ましくは、有機増粘剤に比べて耐熱性にいかなる劣化もない、無機、より好ましくは微細シリカも含み得る。
【0030】
さらなる可能な添加剤は、中和剤、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、および殺生物剤を含む。
【0031】
接着剤は、触媒を含み得る。触媒は、個々の構成要素の架橋を加速することができる。より迅速な架橋は、凝集、すなわち、内部強度のより迅速な発生を伴う。その結果、結合
した基板のアセンブリは、早い段階でさらに加工することができる。
【0032】
接着剤の固形分は、好ましくは、50重量%超、より好ましくは60%~80%である。
【0033】
水性系の場合の高い固形分の利点は、より急速な乾燥が可能であり、および/または乾燥に必要なエネルギーがより少ないことである。固形分は、熱可塑性ポリマー、シリコーン樹脂ポリマー、フィラーおよび/または不溶性の添加剤の結果であってもよい。しかし、固形分は、80%を超えるべきではない。フィラーおよび/または不溶性の添加剤の割合が高すぎると、接着剤のフィルムの破断点伸びに有害な結果を生じる。
【0034】
接着剤は、好ましくはpH6~9を有する。
pHは、製剤および構成要素の適合性に役立つ。さらに、接着剤のpHは、接着剤が結合すべき材料を攻撃しないように選択すべきである。例えば、高すぎるpHは、結合すべきアルミ箔を攻撃し得る。
【0035】
接着剤は、1000~50000mPa・sの粘度、好ましくは5000~30000mPa・sの粘度、および非常に好ましくは5000~15000mPa・sの粘度を有し得る。
【0036】
ブルックフィールド(Brookfield)DVI+を使用するブルックフィールド(Brookfield)法により、粘度の数値を決定した。1000~50000mPa・sの粘度測定は、23℃、スピンドル4、20rpmで実施した。
【0037】
本発明の別の態様は、上記の接着剤を用いて少なくとも2つの異なる基板を結合するための方法に関する。方法は、以下の
- 少なくとも2つの基板を用意するステップ、
- 第1の基板および/または第2の基板の少なくとも一部に接着剤を塗布するステップ、
- 2つの基板を接合および結合するステップ
を含む。
【0038】
接着剤は、ドットの形態と連続式の両方で塗布することができる。コーティング重量は、好ましくは少なくとも70g/m2である。したがって、接着剤は、室温~150℃、好ましくは30℃~100℃、およびより好ましくは50℃~80℃の規定の温度で乾燥することができる。乾燥後、接着剤は、活性化され得る。この場合、活性化は、接着性が、例えば、構成要素の架橋により得られることを意味する。活性化は、160℃~300℃、好ましくは180℃~260℃、より好ましくは210℃~240℃の温度、1~60分、好ましくは10分~30分、より好ましくは20分の活性化時間で起こり得る。活性化の温度および時間は、組成物および接着剤が使用される層の厚さに依存する。
【0039】
結合および/または乾燥後の貯蔵は、同様に考えられる。接着剤組成物は、潜在的反応性を有する。少なくとも2つの基板を結合して作製したアセンブリは、その後の活性化後までその極限特性を示さない。この場合、活性化していないアセンブリは、室温で所定の期間貯蔵可能である。
【0040】
方法の利点は、様々な基板を簡単に安い費用で丈夫に組み立てられることである。方法のステップは、簡素化することができる。
【0041】
接着剤は、ローラー、ステンシル、ナイフまたは噴霧により塗布することができる。
塗布様式の違いは、接着剤を様々な基板に、および使用目的により塗布できるという利点を有する。
【0042】
第1の基板は、金属、好ましくはアルミニウムであってもよい。第2の基板は、好ましくは、以下の群:ガラス繊維、シリケート繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維および/または炭素繊維から選択される。
【0043】
様々な基板を結合することは、多種多様な材料へのアクセスを開く。
本発明の別の態様は、水性接着剤中のシリコーン樹脂ポリマーの使用に関する。接着剤は、水に分散したポリマーを含み、反応性基により、より詳細には、縮合反応により後架橋可能である。
【0044】
接着剤でのシリコーン樹脂ポリマーの使用は、接着剤が高温に耐え、幅広い用途がそのような接着剤に対して利用可能であるという利点を有する。
【0045】
本発明の別の態様は、上記の接着剤を用いて結合する絶縁材料に関する。
絶縁材料は、少なくとも2つの結合した基板を含み得る。その場合の第1の基板は、好ましくは、金属、より詳細にはアルミニウムであり、第2の基板は、以下の群:ガラス繊維、シリケート繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維および/または炭素繊維から選択することができる。
【0046】
絶縁材料は、例えば、アルミ箔およびガラス繊維マットから構成され得る。絶縁材料を製造するために、アルミ箔を水性接着剤でコーティングする。次いで、ガラス繊維マットを置くことができる。従来の100%シリコーン樹脂と比べて、接着剤の粘度がより低いため、接着剤は、ガラス布に非常によく浸透することができる。
【0047】
絶縁材料は、高耐熱性および柔軟性を有する。さらに、絶縁材料の特徴は、可燃性でないことである。
【0048】
上記の接着剤を使用する絶縁材料は、自動車業界における部品、特にエンジンおよび排気領域にとって非常に適している。
【0049】
そのような絶縁材料を有する部品は、安全運転に十分に寄与し得る。一方で、材料の性質は、部品の寿命をこれまで使用してきたものより長くし、他方、材料の有利な特性の効力により、エンジン損傷または火災の拡大は、大幅に制限することができる。
【実施例0050】
接着剤の調製のために種々の原料組成物を評価した。
表1に化学特性を有する出発原料を列挙する。
【0051】
【0052】
表2は、重量%の数値と共に出発物質の様々な組成物の実験マトリックスを示す。
【0053】
【0054】
基板
試験片を製造するために使用した基板は、以下の通りであった。
【0055】
- 420g/m2の重量を有するisoGLASフィラメント織物(Frenzelit);
- T剥離用の30μmの厚さ、および媒体抵抗用の20μmの厚さを有するアルミ箔。
【0056】
比較のため、20μmアルミ箔を有するIsoglasガラス繊維織物および100%シリコーン接着剤からなるアセンブリの検体を使用した。以下の結果の表では、このアセンブリをベンチマーク(BM)とする。
【0057】
試験片の製造
約10cm×12cmのサイズの2片をサイズ通りに切断した。アルミ箔を、約13cm×20cmのサイズの2片に切断した。
【0058】
結合:
試験下の配合物を、巻線コーティングバー、一般にRDS44を圧力を加えずに使用してアルミ箔のマット側上にコーティングした。コーティング重量は、約70g/m2であった。ガラス繊維織物の一片を、まだ濡れているうちに直接フィルムに縦方向(裏面を下向きにして)で置いた。上端約2cmに接着剤が確実にないようにすべきであり、これにより、後で検体を引張試験機に固定しやすくなる。ガラス布を手で均一に押した。次いで、試験片を50℃のオーブン内で約20分間乾燥した。
【0059】
230℃での活性化:
乾燥直後に、試験片を230℃のマッフル炉内で1~20分間活性化した。試験片は、常にアルミニウム側を下にしてオーブンに入れた。可能な場合は、接着ストリップマーキング(adhesive strip marking)を活性化前に除去すべきである。接着剤系の架橋を引き起こすために活性化が必要である。
【0060】
90℃の熱曝露前後の接着剤(T剥離)
90℃の加熱室でT剥離試験を行った。加熱室用の試料マウントは、下側と上側のつかみ具間に3cmの間隔を有した。試料の測定長は70mm、つかみ具の相対速度は50mm/min、最大力は100Nであった。固定する前に、試験片を90℃で15分間、次いで、固定した後に90℃で2分間コンディショニングした。その後、試験片を1時間かけて400℃で熱曝露した。
【0061】
表3は、表2の個々の製剤の試験結果を概説する。
【0062】
【0063】
純粋なシリコーン樹脂水性エマルション(製剤3および5)は、不十分な薄膜化および接着性を示す。
【0064】
EAA接着剤(製剤1および2)は、2つの試験片材料を結合させるが、高温での貯蔵後に接着力を失う。
【0065】
製剤1およびシリコーン樹脂水性エマルションをベースとする本発明の接着剤(製剤7)は、熱曝露(1h、400℃)後の試験片で、個々の物質(製剤1、3、5)より高い接着値を示す。
【0066】
スチレン-アクリレートコポリマーおよびシリコーン樹脂エマルション(製剤10)からなる本発明の接着剤を用いた場合も、アセンブリは、熱曝露後も結び付いている一方、個々の物質(製剤6、8、9)は保持しない。
【0067】
製剤13によるシリコーン樹脂を有する本発明の水性ポリウレタン分散系は、同様に、個々の構成成分(製剤11および12)および特にベンチマークに比べて、改善した接着値を示す。
【0068】
製剤8および9、また、11および12は、熱曝露前に良好な接着値を示すが、熱曝露に耐えられない。
【0069】
赤外線ヒーターに対する耐熱性
耐熱性を評価するために、試験片を25×25cmのサイズに切断した。試験片の中央に約2.5×2.5cmのサイズで耐熱性ワニス(排気ワニス(exhaust varnish))をスプレーした。試験片をラックの上に置いた。ラックおよび耐熱性ワニスを用いた試験片の一片から20mmの距離に赤外線源を置いた。使用した赤外線ヒーターはKrelus IRヒーターであった。試験片を、459℃の温度で2時間照射した。
【0070】
表4は、赤外線ヒーターを使用する耐熱性試験の結果を概説する。
【0071】
【0072】
表3のシリコーン樹脂水性エマルション(製剤3および6)を有する試験片は、すでに加熱下でいかなる接着強度も示さなかったので、対応する試験片の耐熱性を評価することは不可能であった。製剤8および9を有する試験片、また、ポリウレタン分散系(製剤11および12、表3)を含む成型物品も耐熱性ではない。
【0073】
EAA接着剤(製剤1)を有する試験片は、ちょうど5分後に剥離し、したがって、耐熱性をほとんどしか、またはまったく有さない。
【0074】
本発明の接着剤(製剤7、10および13)を有する試験片は、459℃で2時間後でも自己剥離を示さなかった。この場合、剥離または自己剥離は、試験片の個々の基板が、互いに離れることを意味する。
【0075】
本発明の接着剤14を有する試験片は、溶媒をさらに含む。この種の試験片は、同様に自己剥離を示さない。乾燥および活性化した状態では、製剤14は、実質的に溶媒を含まない。しかし、ppm範囲の微量の溶媒の存在は否定できない。
【0076】
熱オーブンに対する耐熱性
各試験片を、400℃の高温用オーブン内でラックに自由に立てかけて1時間貯蔵した。
【0077】
表5は、熱オーブン中での熱曝露の結果を示す。
【0078】
【0079】
本発明の接着剤(製剤7、10、13、14)を有する試験片は、熱オーブン中でもいかなる剥離も示さない。
【0080】
燃焼試験
燃焼試験は、Wazau(Berlin)製のBBWキルンを用いて行った。
【0081】
試験片を560mm×160mmのサイズに切断し、支持体に貼付した。ブンゼンバーナーを点火し、試験の開始前に少なくとも2分間燃焼させた。次いで、バーナーを試験片に対し30°の角度、2cmの距離で保った。水平方向に5秒間(点火試験)および水平方向に15秒間(燃焼性試験)、試験片を炎に曝した。
【0082】
個々の製剤を有する試験片の燃焼試験の結果を表6に示す。
【0083】
【0084】
純粋なバインダー(製剤1)を有する試験片は、難燃性ではない。反対に、本発明の接着剤(製剤7、10および13)を有する試験片は難燃性である。
【0085】
乾燥および活性化前に溶媒を含んでいた接着剤についても良好な結果が得られた(5.75%wet/wet、製剤14)。