(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022046
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】免疫調節のための微生物叢の選択的変更
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20230207BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230207BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230207BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230207BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230207BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20230207BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230207BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230207BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230207BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230207BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230207BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P31/12
A61P31/18
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P37/08
A61P29/00
A61K35/741
A61K35/15
A61K35/17
A61P43/00 121
A61P31/04
A61K39/395 N
A61K39/00 A
C12N15/09 110
【審査請求】有
【請求項の数】53
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177822
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2021004241の分割
【原出願日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】1609811.3
(32)【優先日】2016-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517386055
【氏名又は名称】エスエヌアイピーアール・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SNIPR TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパー・クルーブ
(72)【発明者】
【氏名】モルテン・ソマー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・グレンダール
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン・バスケス-ウリベ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ファン・デル・ヘルム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者の微生物叢を変更することによって、患者の免疫細胞を調節する方法、対象の微生物叢を変更することによって、対象生物における処置または治療を調節する方法、ならびに細胞集団、システム、アレイ、細胞、RNA、キットおよびこれをもたらす他の手段を提供する。
【解決手段】患者において疾病または症状を処置または軽減する方法において用いるための誘導型ヌクレアーゼシステムであって、該方法が、該システムの誘導型ヌクレアーゼを用いて患者の微生物叢を変更することにより患者において免疫細胞を調節することを含み、該疾病または症状が、免疫細胞(例えば、T細胞)により媒介されるか、または、患者において免疫細胞活性または免疫細胞集団を変更することにより処置または予防される、誘導型ヌクレアーゼシステムを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において疾病または症状を処置または軽減する方法において用いるための誘導型ヌ
クレアーゼシステムであって、該方法が、該システムの誘導型ヌクレアーゼを用いて患者
の微生物叢を変更することにより患者において免疫細胞を調節することを含み、該疾病ま
たは症状が、免疫細胞(例えば、T細胞)により媒介されるか、または、患者において免
疫細胞活性または免疫細胞集団を変更することにより処置または予防される、誘導型ヌク
レアーゼシステム。
【請求項2】
該方法が、該微生物叢中の第1の種の細胞のゲノムを誘導型ヌクレアーゼを用いて選択
的に標的化して該変更をもたらすことを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該選択的標的化が、(i)前記第1の種と同じ門の種、または(ii)前記第1の種の
異なる株を標的とすることを回避する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
該方法が、微生物叢において第2の細胞を標的とせずに第1の細胞を選択的に死滅させ
、第2の細胞が、(i)第1の種の株に関連する株の細胞であるか、または(ii)第1
の種と異なり、かつ第1の種と系統学的に関連する種の細胞であり、第2の種または株が
、第1の細胞の種または株の16sリボソームRNAをコードするDNA配列と少なくと
も80%同一である16sリボソームRNAをコードするDNA配列を有し、微生物叢に
おける第2の細胞の増殖が、前記方法によって阻害されないか、または、前記第1の細胞
の増殖が、第2の細胞の少なくとも5倍の増殖阻害で阻害される、請求項1~3のいずれ
か一項に記載のシステム。
【請求項5】
(a)患者がヒト患者であり;
(b)微生物叢が腸内微生物叢であり;
(c)該方法が、誘導型ヌクレアーゼを用いて微生物叢において第1の種のゲノムを選択
的に標的化して該変更をもたらすことを含み;および
(d)該方法が、微生物叢において第2の細胞を標的とせずに第1の細胞を選択的に死滅
させ、第2の細胞が、(a)第1の種の株に関連する株の細胞であるか、または(b)第
1の種と異なり、かつ第1の種と系統学的に関連する種の細胞であり、第2の種または株
が、第1の細胞の種または株の16sリボソームRNAをコードするDNA配列と少なく
とも80%同一である16sリボソームRNAをコードするDNA配列を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
患者において疾病または症状を治療または予防するための患者の養子細胞療法の方法に
おける使用のための、免疫細胞のエクスビボ集団であって、該方法が、
(a)該集団の細胞を患者に投与することを含む養子免疫細胞療法を患者において実行す
ること、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが可
能である;および
(b)患者の腸内微生物叢において、第1の細菌種もしくは株、または、古細菌種もしく
は株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調
節する変更された腸内微生物叢を産生すること;
を含み、ここで、ステップ(b)は、患者の微生物叢に、前記免疫細胞集団と同時に、ま
たは連続して、抗細菌または抗古細菌誘導型ヌクレアーゼシステムを投与することにより
、第1の細胞の亜集団を標的化することによって実行され、それにより、第1の細胞が死
滅するか、該亜集団の増殖が低下し、それにより、患者の腸内微生物叢における前記亜集
団の割合を低減させる、免疫細胞のエクスビボ集団。
【請求項7】
第1の細胞が、細菌または古細菌の細胞であり、例えばファーミキューテス門(Fir
micutes)の細胞である、請求項2~6のいずれか一項に記載のシステムまたは集
団。
【請求項8】
該方法が、第1の種の細胞の1つ以上の標的ゲノムまたはエピソームのヌクレオチド配
列を改変(例えば、切断および/または変異)することを含む、請求項2~7のいずれか
一項に記載のシステムまたは集団。
【請求項9】
第1の細胞が宿主細胞の集団を含み、該方法が宿主細胞において標的配列を改変するこ
とを含み、標的配列の改変が、
a.微生物叢を、宿主改変(HM)crRNAをコードする操作された核酸配列の複数の
コピーと組み合わせること、および
b.宿主細胞においてHM-crRNAを発現させること
により実行され、ここで、操作された各核酸配列は、個々の宿主細胞においてCasヌク
レアーゼと作動可能であり、HM-CRlSPR/Casシステムを形成し、かつ、該操
作された配列は、
(i)HM-crRNAをコードする、スペーサーおよびリピート配列;
(ii)宿主細胞の標的配列にハイブリダイズしてCasヌクレアーゼを宿主細胞の標的
配列に誘導することができる配列を含む、HM-crRNA;
を含み、場合により、HM-システムは、tracrRNA配列またはtracrRNA
配列を発現するDNA配列を含み、
それにより、HM-crRNAは宿主細胞において宿主標的配列のCas改変を誘導し、
それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞集団の増殖が低下し、それにより、微生物
叢において前記第1の細胞の割合を低減させる、請求項2~8のいずれか一項に記載のシ
ステムまたは集団。
【請求項10】
調節された免疫細胞が、患者の内因性細胞および/または(例えば養子細胞療法を介し
て)投与された細胞を含む、請求項1~5および7~9のいずれか一項に記載のシステム
。
【請求項11】
ヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼである、請求項1~10のいずれか一項に
記載のシステムまたは集団。
【請求項12】
システムが、操作されたCRlSPR/Casシステム、TALENシステム、メガヌ
クレアーゼシステムまたはジンクフィンガーシステムである、請求項1~11のいずれか
一項に記載のシステムまたは集団。
【請求項13】
該方法が、患者において、(i)TH1、Th17および/またはTreg細胞集団を
アップレギュレートするか、または、(ii)TH1、Th17および/またはTreg
細胞集団をダウンレギュレートする、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステムま
たは集団。
【請求項14】
該方法が、患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
(a)患者において治療を実行すること;および
(b)誘導型ヌクレアーゼを用いて微生物叢の前記変更を実行することにより、患者にお
いて腸内細菌の微生物叢ディスバイオシスを引き起こし、それにより、前記ディスバイオ
シスが、患者において免疫細胞の前記調節をおこなうことにより、患者において治療を調
節すること、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
【請求項15】
該方法が、
(a)患者の免疫チェックポイントのアンタゴニズムまたはアゴニズムの治療を増強する
こと、場合により、治療は、イピリムマブ(すなわちYERVOY商標)、トレメリムマ
ブ、ニボルマブ(すなわちOPDIVO商標)ペンブロリズマブ(すなわちKEYTRU
DA商標)、ピディリズマブ、BMS-936559、デュルバルマブおよびアテゾリズ
マブから選択される抗体を用いた抗体療法である;または
(b)疾病または症状のワクチン療法を調節すること;または
(c)疾病または症状の細胞療法(例えば、養子免疫細胞療法)を調節すること、場合に
より、細胞ベースの治療またはその副作用(例えば、サイトカイン放出症候群)を弱める
ために調節すること;または
(d)患者においてがんの処置のためのCAR-TまたはTIL療法を調節すること;ま
たは
(e)Th2細胞サイトカイン放出によって媒介される患者における自己中毒を低減させ
ること、
を目的とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
【請求項16】
疾病または症状が、がん、自己免疫性の疾病または症状、炎症性の疾病または症状、ウ
イルス感染症(例えば、ヒト患者のHIV感染症)、アレルギー性の疾病または症状、ま
たは、ウイルス感染症により媒介されるか、または、引き起こされる疾病または症状であ
る、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
【請求項17】
第1の細胞集団の増殖が、少なくとも5倍低下する、請求項2~16のいずれか一項に
記載のシステムまたは集団。
【請求項18】
微生物叢が、患者の腸内微生物叢である、請求項2~5および7~10のいずれか一項
に記載のシステム。
【請求項19】
該方法を実行して微生物叢を変更し、それにより患者においてパネート細胞を刺激し、
それにより免疫細胞が調節され、疾病または症状が処置または低減されることを目的とす
る、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実行するための該請求項に記載のシステ
ムにおいて用いるための、誘導型ヌクレアーゼ;または、請求項1~19のいずれか一項
に記載の方法を用いて患者において疾病または症状を治療するために患者へ投与するため
の、HM-CRlSPR/Casシステム、gRNA、HM-アレイもしくはHM-cr
RNA;または、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実行するために前記請求
項のHM-CRlSPR/Casシステムにおいて用いるための、HM-アレイ、gRN
AもしくはHM-crRNA;または、該システム、HM-アレイ、gRNAまたはHM
-crRNAを含む、またはコードする、第1の細胞に感染することができるか、または
第1の細胞を形質転換することができる、ベクター、例えば、バクテリオファージ、接合
性プラスミドもしくはトランスポゾン;または、該システム、HM-アレイ、gRNAま
たはHM-crRNAを含む、またはコードする、医薬;ここで、場合により、gRNA
はシングルガイドRNAである。
【請求項21】
患者において疾病または症状を処置または軽減する方法であって、請求項1~19のい
ずれか一項に記載される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、患者の微生物叢を変更することにより患者の免疫細胞(患者の内因性細胞お
よび/または(例えば養子細胞療法を介して)投与された細胞)を調節する方法に関する
。本発明はまた、対象の微生物叢を変更することにより対象において処置または治療を調
節する方法に関する。本発明はまた、細胞集団、システム、キット、および、これをもた
らす他の手段に関する。一例では、誘導型核酸改変を用いたヒト腸内微生物叢中の特定の
種の有利な選択的標的化が、該変更をもたらすために実行される。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
免疫療法の1つのアプローチは、腫瘍を認識して攻撃する細胞表面抗原受容体(CAR
)を発現するように、患者自身の(またはドナーの)免疫細胞を操作することを包含する
。養子細胞移入(ACT)と呼ばれる、本アプローチは、今までのところ小規模な臨床試
験に限られていたが、これらの操作された免疫細胞を用いた処置は、進行がんの患者にお
いていくつかの顕著な反応をもたらしている。
【0003】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメインと融合した、抗体由来の
標的化ドメインから成り、T細胞により発現された場合に、CARの標的化ドメインによ
り決定される抗原特異性をT細胞に付与する。CARは、抗体ベースの標的化ドメインが
利用可能である限り、T細胞のエフェクター機能を、細胞表面上に発現される任意のタン
パク質および非タンパク質標的に方向転換させることができる可能性がある。それによっ
て、本戦略は、標的細胞による抗原プロセシングおよび提示の必要性を回避し、炭水化物
などの非古典的T細胞標的に適用可能である。このHLA拘束性の回避は、CAR T細
胞のアプローチが、養子T細胞療法の適用可能性を広げる一般的なツールとして使用でき
ることを意味する。例えば、Methods Mol Biol. 2012;907:645-66. doi: 10.1007/978-
1-61779-974-7_36, “Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy”, C
headle EJ et al.を参照されたい。
【0004】
最初のCAR-T構築物は、PNASにおいて、免疫療法のパイオニアであるZeli
g Eshharにより、1989年の論文に記載された。CARの構造には、今や、異
なる細胞タンパク質由来の異なるドメインのキメラである、膜貫通ポリペプチド鎖を含む
。例えば、CARは、細胞内部分に(多くの場合、リンカーおよび/またはヒンジ領域に
よって)連結された細胞外部分を有し、免疫細胞、通常はT細胞の膜に該受容体を埋め込
むCARの膜貫通部分を有する。細胞外部分は、一般にはがん細胞の表面上の腫瘍関連抗
原(TAA)である標的抗原を認識する抗体結合部位(通常、例えばマウスmAbに由来
する、scFvの形態である)を含む。このようにして抗原認識は、MHC拘束性の抗原
提示を必要とするTCRに頼る必要性をなくし、結合親和性が比較的低い可能性がある。
CARの細胞内部分は、典型的に、抗原が細胞外結合部位に結合した際の細胞内シグナル
伝達のための、CD3ゼータ(CD3ζ)ドメインを含む。後の世代のCARはまた、し
ばしば4-1BB(CD137)またはCD28細胞内ドメインである、T細胞媒介応答
を増強するさらなるドメインを含む。CAR結合部位のコグネイトの抗原リガンドに遭遇
すると、CARは細胞内シグナリング伝達を活性化し、CAR T細胞の活性化により腫
瘍細胞の死滅を促進することができる。
【0005】
大部分のCAR-Tはインビボで増殖するので、従来の意味での用量漸増(dose titra
tion)は困難であり、多くの場合、操作されたT細胞は「永遠に」活性であると考えられ
る-すなわち、ほとんどのこれまでのCD19 CAR-T臨床試験において、進行中の
B細胞無形成が見られた。このことは、CAR T細胞のアプローチに重大な問題を提起
する。いくつかの観察されたリスクが、Discov Med. 2014 Nov;18(100):265-71, “Chal
lenges to chimeric antigen receptor (CAR)-T cell therapy for cancer”, Magee MS
& Snook AEで議論されており、本文献は、CAR-T細胞処置後の最初の重大な有害事
象は、肺および肝臓へ転移性の結腸直腸がんの患者で生じたこと(Morgan et al., 2010)
を説明している。この患者は、上皮増殖因子受容体2(ERBB2、HER2)を標的と
する第三世代CARを発現するT細胞で処置された。該CARは、HER2陽性乳がんの
処置のためにFDAで承認された4D5抗体由来のscFv(トラスツズマブ)を含有し
ていた(Zhao et al., 2009)。この患者は、1010 CAR-T細胞の単回投与を受
けてから15分以内に呼吸促迫を発症し、その後5日間にわたって複数回の心停止が起こ
り、最終的に死に至った。処置4時間後の血清解析では、サイトカインIFNγ、GM-
CSF、TNFα、IL-6、およびIL-10の顕著な増加が明らかとなった。CAR
-T細胞は肺および腹部および縦隔リンパ節に見られたが、腫瘍転移には見られなかった
。研究者らは、毒性は、肺上皮におけるHER2の認識に起因し、炎症性サイトカインを
放出して肺毒性を生みだし、および、サイトカイン放出症候群(CRS)をもたらして多
臓器不全を引き起こすと考えた(Morgan et al.,2010)。保守的な用量漸増(dose-
escalation)戦略の後に異なる抗体(FRP5)由来の第二世代のHER2を
標的とするCARを利用する試験が、他の研究者によって様々なHER2+悪性腫瘍に対
して現在進行中である(clinicaltrials.govの識別番号NCT011
09095、NCT00889954、およびNCT00902044)。
【0006】
CAR T細胞のテーマの一種は、抗体共役型T細胞受容体(ACTR)療法であり、
腫瘍特異的IgGのFc領域に結合するCD16A(FCγRIIIA)を使用する(例
えば、WO2015/058018、US2015139943を参照)。目的は、患者
に投与されるIgGを用量設定することによって、インビボでのCAR T細胞活性のよ
り多くの制御を可能にすることである。しかしながら、CAR-T細胞のCD16結合部
位は、患者の内因性IgGにも自由に結合し得、このことは、該アプローチの魅力を低下
させる。該アプローチはまた、体内のIgGの本質的に長い半減期(ヒトIgGではおよ
そ20日間)を考慮する必要があり、CAR細胞活性の制御を制限する可能性がある。進
行中の研究はこのリスクを評価し得る。
【0007】
CAR-T細胞アプローチおよび他の細胞ベースのアプローチのような、免疫細胞ベー
スの治療を調節(ダウンレギュレートまたはアップレギュレート)する代替方法を提供す
ることが望ましいであろう。自己免疫性の、炎症性の、および感染性の疾病および症状な
どの、内因性免疫細胞により媒介される疾病および症状に対処する方法を提供することも
また、望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明の記載
本発明は、本明細書の特許請求の範囲に記載される、誘導型ヌクレアーゼ(guided nuc
lease)、宿主細胞改変型(HM)-CRISPR/Casシステム、gRNA、HM-
アレイ、HM-crRNA、HM-Cas、HM-TALEN、HM-メガヌクレアーゼ
、HM-ジンクフィンガー、および方法を提供する。
【0009】
医療行為は、しばしば、患者に抗生物質を投与することを包含する。これらの処置は、
典型的には、多くのグラム陽性菌種または多くのグラム陰性種を、区別することなく標的
とする抗生物質、すなわち、広域スペクトル抗生物質の投与を包含し得る。同様に、農業
(farming)や農耕(agriculture)における広域スペクトル抗生物質
の使用は、健康に有害であり、微生物耐性を発展させる可能性のある、これらの抗生物質
のヒトおよび動物の食物連鎖への侵入を含む、環境問題を提起する。むしろ、本発明は、
第1の微生物叢種または株の選択的標的化を包含する。本明細書の実施例に示されるよう
に、選択された種のゲノムを標的とし、一方で、同時に系統学的に関連する種および株を
温存する、誘導型ヌクレアーゼを用いて、特定の細菌種の選択的標的化が達成された。さ
らに、本発明は、以下でさらに論じるように、ヒトおよび動物における免疫機能を形成す
る際に微生物叢の細菌および古細菌が果たす役割を実証している。
【0010】
従って、本発明は、患者の微生物叢を変更することにより患者の免疫細胞(患者の内因
性細胞および/または(例えば養子細胞療法を介して)投与された細胞)を調節する方法
に関する。一例では、微生物叢(例えば、腸内微生物叢)中の種の有利な選択的標的化が
、該変更をもたらすために実行される。選択的標的化は、例えば、同じ門の種など、また
は同じ種の異なる株などの、関連する種または株の標的化を避けることができる。
【0011】
例えば、本発明は、微生物叢を変更することによって、患者および対象における、疾病
および症状の免疫細胞ベースまたは他の治療を調節すること、並びに、これをもたらすた
めのシステム、キット、および他の手段を提供する。
【0012】
例えば、本発明は、微生物叢を変更することによって、患者において疾病および症状を
処置または軽減することを提供し、ここで、該疾病および症状は、免疫細胞(例えば、T
細胞)により媒介されるか、または、患者の免疫細胞活性または免疫細胞集団を変更する
ことにより対処される疾病および症状である。実施形態は、がん、自己免疫性の疾病もし
くは症状、炎症性の疾病もしくは症状、ウイルス感染症(例えば、ヒト患者のHIV感染
症)、または、ウイルス感染症により媒介されるか、あるいは、引き起こされる疾病もし
くは症状である。
【0013】
本発明はまた、対象の微生物叢を変更することにより対象生物(例えば、植物、酵母、
ヒト、または動物患者)における処置または治療を調節する方法に関する。治療の例は、
例えば、患者における疾病または症状の処置または予防のための、養子細胞療法、抗体療
法(例えば、免疫チェックポイント阻害)、放射線療法、化学療法である。
【0014】
第1の構成において、本発明は、
患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
a.患者において治療を実行すること;および
b.患者において腸内細菌の微生物叢ディスバイオシスを引き起こし、それにより、該デ
ィスバイオシスが、患者において免疫細胞を調節することにより、患者において治療を調
節すること、
を含む方法を提供する。
【0015】
第1の構成の別の局面では、本発明は、
ヒトまたは動物患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
a.患者において治療を実行すること;および
b.患者において細菌の(例えば、腸内細菌の)微生物叢ディスバイオシスを引き起こし
、それにより、該ディスバイオシスが、患者において免疫細胞を調節することにより、患
者において治療を調節すること;
を含む方法を提供し、
ここで、治療は養子免疫細胞療法(例えば、養子T細胞療法、例えば、患者へのCAR-
T細胞の投与)を含む、
を含む方法を提供する。
【0016】
第1の構成の別の局面では、本発明は、
ヒトまたは動物患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
a.患者において治療を実行すること;および
b.患者において細菌の(例えば、腸内細菌の)微生物叢ディスバイオシスを引き起こし
、それにより、該ディスバイオシスが患者において治療を調節すること;
を含む方法を提供し、
ここで、治療は、患者に免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-L1、抗PD-
1、抗CTLA4または抗TIM3阻害剤、例えば、抗体)を投与することを含む。
【0017】
第1の構成の別の局面では、本発明は、
ヒトまたは動物患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
a.患者において治療を実行すること;および
b.患者において細菌の(例えば、腸内細菌の)微生物叢ディスバイオシスを引き起こし
、それにより、該ディスバイオシスが患者において治療を調節すること;
を含む方法を提供し、
ここで、治療は、患者に抗体(例えば、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4もしく
は抗TIM3抗体;または、抗TNFaスーパーファミリーメンバー抗体、例えば、抗T
NFa、TNFR1もしくはBAFF抗体;または、抗IL6Rもしくは抗IL-4Ra
抗体;または、抗PCSK9抗体)を投与することを含む。
【0018】
第1の構成の別の局面では、本発明は、
対象において処置を調節する方法であって、
a.対象において処置を実行すること;および
b.対象において微生物叢ディスバイオシスを引き起こし、それにより、該ディスバイオ
シスが対象において処置を調節すること、
を含む方法を提供する。
【0019】
一例では、対象または患者はヒトである。一例では、対象または患者は非ヒトである。
一例では、対象は植物であり、場合により、処置は、植物生長促進処置、生長抑制処置、
農薬処置、窒素固定促進処置、除草処置または肥料処置である。一例では、対象は酵母で
あり、場合により、処置は、酵母の増殖促進処置または増殖抑制処置である。
【0020】
一例では、調節は、対象または患者の、処置または治療を、増大、アップレギュレート
、ダウンレギュレート、阻害、増強、または、強化する。一例では、処置または治療は、
対象または患者において有効であり、処置または治療は、対象、患者、または、調節を受
けていないコントロール対象もしくは患者において、有効でないか、有効性が低下または
増加している。コントロールは、対象または患者と同じ種であり、場合により、同じ年齢
および/または性別である。一例では、細菌または古細菌の宿主細胞は、本発明の方法を
用いて、対象または患者において死滅させるか、またはその増殖が阻害され、コントロー
ルは、同じ細菌または古細菌の種の細胞を含み、該細胞は本発明の方法により死滅しない
か、または、増殖が阻害されない。
【0021】
一例では、ステップ(a)および(b)は、同時に実行される。一例では、ステップ(
a)は、ステップ(b)の前に実行される。一例では、ステップ(b)は、ステップ(a
)の前に実行され、場合により、ステップ(b)は(a)の後に再度実施される。
【0022】
ある実施形態では、本発明は、
植物または酵母において処置を調節する方法であって、
a.植物または酵母において処置を実行すること;および
b.植物または酵母において細菌の微生物叢ディスバイオシスを引き起こし、それにより
、該ディスバイオシスが対象において処置を調節すること;
を含む方法を提供し、
ここで、該処置は、生長促進処置、生長抑制処置、農薬処置、窒素固定促進処置、除草処
置または肥料処置である。
【0023】
対象、患者、植物または酵母において、微生物のディスバイオシスを引き起こすことは
、一例では、対象、患者、植物または酵母の表面上に、例えば、葉の表面上(対象が植物
の場合)、または、皮膚、肺、眼または粘膜の表面上(対象または患者がヒトまたは動物
の場合)に、微生物のディスバイオシスを引き起こすことを含む。
【0024】
本発明は、細菌のディスバイオシスを引き起こすことに代えて、または、加えて、ステ
ップ(b)において、対象、患者、植物または酵母において、古細菌の微生物叢ディスバ
イオシスを引き起こすことを含む。
【0025】
例えば、疾病または症状は、自己免疫性の疾病または症状(例えば、SLE)であり、
治療は、それらのための処置、例えば、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバ
ーアンタゴニスト(例えば、BENLYSTA(商標)またはそのジェネリック薬などの
抗B細胞活性化因子(BAFF)抗体)の投与である。例えば、疾病または症状は、炎症
性の疾病または症状(例えば、関節リウマチ、IBD、クローン病、大腸炎、または乾癬
)であり、治療は、それらのための処置、例えば、サリルマブ、デュピルマブ、腫瘍壊死
因子リガンドスーパーファミリーメンバーアンタゴニスト(例えば、HUMIRA(商標
)、REMICADE(商標)、SYMPONI(商標)またはENBREL(商標)ま
たはそのジェネリック薬などの、抗TNFα抗体またはトラップ)の投与である。例えば
、疾病または症状は、ウイルス感染症であるか、または、ウイルス感染症(例えば、HI
V感染症)により媒介され、治療は、それらのための処置、例えば、レトロウイルス薬ま
たは抗HIVワクチンの投与である。例えば、疾病または症状はがん(例えば、メラノー
マ、NSCLC、乳がんまたは膵臓がん)であり、治療はそれらのための処置、例えば、
化学療法薬(例えば、抗CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、O
X40、CD28、BTLA、CD137、CD27、HVEM、KIR、TIM-3、
VISTA、ICOS、GITR、TIGITまたはSIRPa抗体などの、チェックポ
イント阻害剤またはアゴニスト抗体)の投与である。一例では、抗体は、CTLA4、P
D-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、OX40、CD28、BTLA、CD13
7、CD27、HVEM、KIR、TIM-3、VISTA、ICOS、GITR、TI
GITおよびSIRPaから選択される第1および第2の標的に特異的に結合する二重特
異性抗体であり、例えば、第1の標的がCTLA4であり、第2の標的がLAG3または
PD-1である。場合により、抗体は、ヒトγ1抗体であり、および/または、ADCC
またはCDCについて増強されてよい。例えば、治療はワクチン療法であり、例えば、が
んワクチン療法、または、マラリア、HIV感染症、結核感染症、コレラ、ネズミチフス
菌(Salmonella typhimurium)感染症、クロストリジウム・ディ
フィシル(C dificile)感染症、百日咳菌(Bordetella pert
ussis)感染症もしくは、クラミジア感染症などの、感染症または感染性の疾病の処
置または予防のためのワクチン療法である。
【0026】
第1の構成のある実施形態は、
患者において疾病または症状の細胞療法を調節する方法であって、
a.細胞集団を患者に投与することを含み、該細胞の投与は、患者の疾病または症状を治
療することができる、患者において細胞療法を実行すること;および
b.腸内細菌の微生物叢ディスバイオシスを患者において引き起こし、それにより、該デ
ィスバイオシスが患者において細胞療法を調節すること
を含む方法を提供する。
【0027】
一例では、細胞療法は、がんの処置のための、CAR-TまたはTIL療法などの、養
子免疫細胞療法である。
【0028】
第2の構成において、本発明は、
疾病または症状が患者において免疫細胞(例えば、T細胞)によって媒介されている患者
の疾患または状態のリスクを処置または軽減する方法であって、該方法は、該患者に腸内
細菌微生物叢ディスバイオシスを引き起こし、それにより、該ディスバイオシスが、患者
において免疫細胞(例えば、Th17細胞)を調節し、それにより患者における該疾病ま
たは症状のリスクを処置または軽減することを含む方法を、提供する。
【0029】
例えば、疾病または症状は、自己免疫性の疾病または症状(例えば、SLE)、炎症性
の疾病または症状(例えば、関節リウマチ、IBD、クローン病、大腸炎または乾癬)、
ウイルス感染症であるか、あるいは、ウイルス感染症(例えば、HIV感染症)により媒
介される。
【0030】
一例では、微生物叢ディスバイオシスは、微生物叢において1つ以上の標的細菌種を死
滅させることによって、あるいは、微生物叢において該古細菌の集団の増殖を阻害するこ
とによって、もたらされる。一例では、微生物叢ディスバイオシスは、微生物叢において
1つ以上の標的古細菌種を死滅させることによって、あるいは、微生物叢において該細菌
の集団の増殖を阻害することによって、もたらされる。
【0031】
第3の構成では、本発明は、
患者において疾病または症状の養子免疫細胞療法を調節する方法であって、
a.免疫細胞の集団を患者に投与することを含む、養子免疫細胞療法を患者において実行
すること、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが
可能である;および、
b.患者の微生物叢(例えば、腸内微生物叢)において、第1の細菌種もしくは株、また
は、古細菌種もしくは株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者におい
て免疫細胞療法を調節する変更された微生物叢を産生すること、
を含む方法を提供する。
【0032】
第3の構成の別の局面では、本発明は、
ヒトまたは動物患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
a.患者において治療を実行すること;および
b.患者の微生物叢(例えば、腸内微生物叢)において、第1の細菌種もしくは株、また
は、古細菌種もしくは株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者におい
て治療を調節する、変更された微生物叢を産生すること;
を含む方法を提供し、
ここで、治療は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-L1、抗PD-1、抗
CTLA4または抗TIM3阻害剤、例えば、抗体)を投与することを含む。
【0033】
第3の構成の別の局面では、本発明は、
ヒトまたは動物患者において疾病または症状の治療を調節する方法であって、
a.患者において治療を実行すること;および
b.患者の微生物叢(例えば、腸内微生物叢)において、第1の細菌種もしくは株、また
は、古細菌種もしくは株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者におい
て治療を調節する、変更された微生物叢を産生すること;
を含む方法を提供し、
ここで、治療は、抗体(例えば、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4もしくは抗T
IM3抗体;または、抗TNFaスーパーファミリーメンバー抗体、例えば、抗TNFa
、TNFR1もしくはBAFF抗体;または、抗IL6Rもしくは抗IL-4Ra抗体;
または、抗PCSK9抗体)を患者に投与することを含む。
【0034】
第3の構成の別の局面では、本発明は、
対象において処置を調節する方法であって、
a.対象において処置を実行すること;および
b.対象の微生物叢において、第1の細菌種もしくは株、または、古細菌種もしくは株の
細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより該ディスバイオシスが対象において処置
を調節すること、
を含む方法を提供する。
【0035】
一例では、対象または患者はヒトである。一例では、対象または患者は非ヒト動物であ
る。一例では、対象は植物であり、場合により、処置は、植物生長促進処置、生長抑制処
置、農薬処置、窒素固定促進処置、除草処置または肥料処置である。一例では、対象は酵
母であり、場合により、処置は、酵母の増殖促進処置、または増殖抑制処置である。
【0036】
一例では、調節は、対象または患者の、処置または治療を、増大、アップレギュレート
、ダウンレギュレート、阻害、増強、または、強化する。一例では、一例では、処置また
は治療は、対象または患者において有効であり、処置または治療は、調節を受けていない
対象、患者、または、コントロール対象もしくは患者において、有効でないか、有効性が
低下または増加している。コントロールは、対象または患者と同じ種であり、場合により
、同じ年齢および/または性別である。一例では、細菌または古細菌の宿主細胞は、本発
明の方法を用いて、対象または患者において死滅させるか、またはその増殖が阻害され、
コントロールは、同じ細菌または古細菌の種の細胞を含み、該細胞は本発明の方法により
死滅しないか、または、増殖が阻害されない。
【0037】
一例では、ステップ(a)および(b)は、同時に実行される。一例では、ステップ(
a)は、ステップ(b)の前に実行される。一例では、ステップ(b)は、ステップ(a
)の前に実行され、場合により、ステップ(b)は(a)の後に再度実施される。
【0038】
ある実施形態では、本発明は、
植物または酵母において処置を調節する方法であって、
a.植物または酵母において処置を実行すること;および
b.植物または酵母の微生物叢において、第1の細菌種もしくは株、または、古細菌種も
しくは株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、植物または酵母において処
置を調節すること;
を含む方法を提供し、
ここで、該処置は、生長促進処置、生長抑制処置、農薬処置、窒素固定促進処置、除草処
置または肥料処置である。
【0039】
対象、患者、植物または酵母において、細胞の亜集団の相対的割合を前記の通り変更す
ることは、一例では、対象、患者、植物または酵母の表面上に、例えば、葉の表面上(対
象が植物の場合)、または、皮膚、肺、眼または粘膜の表面上(対象または患者がヒトま
たは動物の場合)に、微生物のディスバイオシスを引き起こすことである。
【0040】
第1の細菌または古細菌の亜集団の割合は、増加または減少される。一例では、第1の
細菌種または株と、第2の細菌種または株との相対的比率が変更される(例えば、増加ま
たは減少される);あるいは、第1の古細菌種または株と、第2の古細菌種または株との
相対的比率が変更される(例えば、増加または減少される)。
【0041】
一例では、養子免疫細胞療法は、がんの処置のためのCAR-T療法である。一例では
、養子免疫細胞療法は、がんの処置のためのTIL療法である。
【0042】
第1または第3の構成の一例では、ステップ(a)の細胞は、CD4+T細胞、CD8
+T細胞、Th1細胞またはTh17細胞からなる群から選択される第1のタイプの細胞
であり、ステップ(b)は患者においてそのタイプの細胞をアップレギュレートする。こ
れは、細胞ベースの治療を増強するのに有用である。別の例では、ステップ(a)の細胞
は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Th1細胞またはTh17細胞からなる群から選
択される第1のタイプの細胞であり、ステップ(b)は患者においてそのタイプの細胞を
ダウンレギュレートする。これは、細胞ベースの治療またはその副作用(例えば、CRS
)を弱めるのに有用である。
【0043】
ある実施形態では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、微生物叢(例えば、腸
内微生物叢)細菌および/または古細菌を標的とするCRISPR/Casを用いた、細
菌または古細菌の微生物叢亜集団の選択的標的化を用いて、実行される。一例では、本方
法は、宿主細胞においてそれぞれの標的配列を切断して、標的配列を改変する、誘導型ヌ
クレアーゼ(例えば、RNA誘導型ヌクレアーゼ)を用い、それにより、宿主細胞が死滅す
るか、宿主細胞集団の増殖が低下し、それにより、微生物叢における該亜集団の割合を低
減させることを含む。誘導型ヌクレアーゼ切断を実行するための好適なシステムは、例え
ば、操作されたCRISPR/Casシステム、TALEN、メガヌクレアーゼおよびジ
ンクフィンガーシステムである。
【0044】
この目的のために、発明者らは、以下の特徴の1つ以上を伴った、腸内微生物叢におい
て天然に共生する細菌の混合共同体における、特定の細菌株の集団増殖阻害を初めて証明
したと信じている:
操作されたCRISPR/Casシステムを用いた集団増殖阻害が、
・野生型細胞を標的とすること;
・野生型内因性Casヌクレアーゼ活性を利用すること;
・必須および抗生物質耐性遺伝子を標的とすること;
・ここで、標的が野生型配列であること、
によること。
【0045】
発明者らは、以下の特徴を伴った、ヒト腸内微生物叢細菌の混合集団において、このこ
とを証明した:
・ヒト腸内微生物叢種の混合集団における、細菌増殖阻害を標的とすること;
・ここで、該集団が3つの異なる種を含むこと;
・これらの種の1つを選択的に死滅させ、他の種の細胞を温存すること;
・系統発生学的に近い他のヒト腸内細菌叢種の存在下での細胞増殖阻害を標的とし、該種
はこの阻害を免れる;
・ファーミキューテス門(Firmicutes)種および非ファーミキューテス門(F
irmicutes)種を含む、ヒト腸内微生物叢細菌の混合集団において、細胞増殖阻
害を標的とすること;
・ヒト腸内微生物叢細菌の混合集団において、特定のファーミキューテス門(Firmi
cutes)種の細胞増殖阻害を標的とし、一方で、異なるファーミキューテス門(Fi
rmicutes)種を温存すること;
・ヒト腸内微生物叢細菌の混合集団において、特定のグラム陽性細菌株の細胞増殖阻害を
標的とし、一方で、異なるグラム陽性細菌種を温存すること;
・あるヒト腸内微生物叢細菌種を標的とし、一方で、片利共生のヒト腸内細菌種を温存す
ること;
・ヒト腸内微生物叢細菌種を標的とし、一方で、プロバイオティックヒト腸内細菌種を温
存すること;
・表面上のヒト腸内微生物叢細菌の混合集団において細胞増殖阻害を標的とすること;
・特定の細菌種単独で、または、ヒト腸内微生物叢細菌の共同体において、複数の他の細
菌種と混合された場合に、少なくとも10倍の増殖阻害を達成すること;および
・特定のヒト腸内微生物叢細菌種の2つの異なる株の、少なくとも10倍の増殖阻害を達
成すること。
【0046】
本発明は、患者において疾病または症状を治療または予防するための患者の養子細胞療
法の方法における使用のための、免疫細胞のエクスビボ集団を提供し、該方法は、
a.該集団の細胞を患者に投与することを含む養子免疫細胞療法を患者において実行する
こと、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが可能
である;および
b.腸内細菌の微生物叢ディスバイオシスを患者において引き起こし、それにより、該デ
ィスバイオシスが、患者において免疫細胞療法を調節し、該疾病または症状が処置または
予防されること:
を含む。
【0047】
本発明は、患者において疾病または症状を治療または予防するための患者の養子細胞療
法の方法における使用のための、免疫細胞のエクスビボ集団を提供し、該方法は、
a.該集団の細胞を患者に投与することを含む養子免疫細胞療法を患者において実行する
こと、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが可能
である;および
b.患者の腸内微生物叢において、第1の細菌種もしくは株、または、古細菌種もしくは
株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節
する変更された腸内微生物叢を産生すること、
を提供する。
本発明はまたは、本発明の方法を実行するための、CRISPR/Casシステム、アレ
イ、cRNAおよびキットを提供する。
【0048】
本発明はまた、本方法を実施するためのシステム、キットおよび他の手段に関する。
【0049】
一例では、本明細書中の1つの構成上の任意の特徴は、本発明の異なる構成と組み合わ
されて、本明細書の1つ以上の特許請求の範囲においてこれらの組合せを含むことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【0051】
【
図2】
図2は、ST1-CRISPRアレイを示す。
【0052】
【
図3】
図3は、本研究で用いた株のTH寒天培地上のスポットアッセイを示す。全ての株を、37℃で20時間、TH寒天培地上で増殖させた。それぞれのコロニー数をカウントするために、一晩培養した培養液の段階希釈を、E.coli、L LactisおよびS.mutansについて2回、そしてS.thermophilusの両方の株について3回行った。
【0053】
【
図4】
図4は、異なる培養条件下での、S.thermophilus、S.mutans、L.lactisおよびE.coliの選択的増殖を示す。テトラサイクリンは、S.thermophilus LMD-9の選択的増殖には使用できない。しかしながら、3g/lのPEAは、E.coliの増殖を制限しながら、S.thermophilus LMD-9を選択的に増殖させることが証明された。
【0054】
【
図5】
図5は、2つのキシロース誘導カセットの構築を図示している。
【0055】
【
図6】
図6は、プラスミドpBAV1KT5-XylR-mCherry-Pldhaを有するStreptoccocus thermophilusLMD-9におけるキシロース誘導性カセットの特徴を実証した。キシロース量の増加に伴い、蛍光における明らかな応答を観察することができた。
【0056】
【
図7】
図7は、pBAV1KT5-XylR-mCherry-P
ldha+Xy
lAにおけるCRISPRアレイの設計を図示している。該アレイは、誘導性キシロースプロモーターの支配下にS.thermophilus遺伝子を標的とする2つのスペーサー配列を含有し、強力な構成的プロモーターP
3Aの支配下にtracrRNAを含有している。
【0057】
【
図8】
図8は、プラスミドpBAV1KT5-XylR-CRISPR-P
ldh
+XylAおよびpBAV1KT5-XylR-CRISPR-P
XylAによる、Streptoccocus thermophilusLMD-9の形質転換効率を示す。
【0058】
【
図9】
図9は、キシロース誘導性CRISPR装置の模式図を示している。キシロースの誘導により、CRISPRアレイが標的とするS.thermophiles LMD-9ゲノム上のpolIIIおよびtetAの両方が発現される。恒常的に発現されるtracrRNAと一緒に、Cas9と複合体が形成される。この複合体が、S.thermophilus LMD-9ゲノムにおけるtetAおよびpolIIにおいて、二重鎖切断を誘導し、細胞生存率の制限をもたらすであろう。
【0059】
【
図10】
図10は、プラスミドpBAV1KT5-XylR-CRISPR-PXylAまたはpBAV1KT5-XylR-CRISPR-Pldha+XylAを有するStreptoccocus thermophilus DSM 20617(T)の、非誘導および誘導における、増殖阻害を示す。写真は63時間のインキュベーション後に撮影した。コロニー数は左下の角に記載した(上の行:>1000、>1000、下の行:336、113)。
【0060】
【
図11】
図11は、S.thermophilus、L.lactisおよびE.coli由来の16S配列の最尤系統樹を示す。
【0061】
【
図12】
図12は、pBAV1KT5-XylR-CRISPR-PxylAまたはpBAV1KT5-XylR-CRISPR-PldhA+XylAプラスミドのいずれかを有するE.coli、L.lactisおよびS.thermophilusの共培養物におけるS.thermophilusの選択的増殖阻害を示す。pBAV1KT5 - XylR - CRISPR - PxylAまたはpBAV1KT5 - XylR - CRISPR - PldhA + XylAプラスミドを有するE.coli(中央の列)の間で増殖の違いは観察されない。しかしながら、S.thermophilus(2.5μl/1 PEAを添加したTH寒天プレート上で選択的に増殖させた)は、pBAV1KT5-XylR-CRISPR-PxylA(強い)またはpBAV1KT5-XylR-CRISPR-PldhA(弱い)プラスミドの間で、予想通り形質転換効率の低下を示す。従って、細胞の混合集団における標的とするS thermophilus亜集団の選択的増殖阻害を実証した。コロニー数は左下の角に記載した(上の行:>1000、>1000、68:下の行:>1000、>1000、32)。
【0062】
【
図13】
図13はl、spCas9およびリボソームRNAサブユニット16sを標的とする自己標的化sgRNAの発現を制御する調節因子を示す。
【0063】
【
図14】
図14は、外因性のCRISPR-CasシステムによるE.coli株の特異的標的化を示す。sgRNAは、E.coli TOP10などのK-12由来E.coli株のゲノムを標的とするが、試験した他の株は影響を受けなかった。
【0064】
【
図15】
図15は、CRISPR-Cas9システムの誘導なしの、TH寒天培地における、本研究で用いた個々の細菌種および混合培養液の段階希釈によるスポットアッセイを示す。
【0065】
【
図16】
図16は、異なる選択培地上の、1000倍希釈のスポットアッセイを示す。2.5g/lのPEAを有するTHは、B.subtilis単独のための選択的培地である。マルトースを添加したマッコンキーは、グラム陰性菌と腸内桿菌を選択的に単離し、それらをマルトース発酵に基づいて区別するように設計された、細菌用の選択的かつ差次的(differential)培養培地である。従って、TOP10ΔmalK変異体は、プレート上に白いコロニーを形成し、一方Nissleは、ピンクのコロニーを形成する;AはE coli ΔmalK、BはE coli Nissile、CはB subtilis、DはL lactis、Eは混合培養液である;マッコンキー-のBとEの画像はピンクに見える;マッコンキー+のBとEの画像はピンクに見える。
【0066】
【
図17】
図17は、異なる培地および選択プレート上の、本研究で用いられる細菌の選択的増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
詳細な説明
以下の実施例において、増殖阻害を、ヒト腸内微生物叢細菌種の混合集団において、調
べた。共同体において、選択的に標的化された種(グラム陽性ファーミキューテス門(F
irmicutes)集団)の、10倍を超える集団増殖阻害が達成され、非標的化共生
細菌が温存された。発明者らは、腸内微生物叢などの微生物叢を患者のin situで改変し
、それにより、微生物叢の変化に応答して患者において免疫細胞調節を可能にするための
、これの有用な適用を実現した。発明者らはまた、変化され得る微生物叢を含む、植物お
よび酵母などの対象において、処置を調節することに対する適用を実現した。発明者らは
、さらに、自己免疫性の疾病、炎症性の疾病およびウイルス感染症(例えば、ヒトのHI
V感染症)などの、患者において免疫細胞ベースの治療を調節するため、または患者にお
いて免疫細胞媒介性の疾病または症状を治療または予防するための、実用化を実現した。
発明者らは、ヒトまたは動物の対象または患者において該調節をもたらすための、腸、皮
膚、膣、鼻、眼、肺、消化管、直腸、陰嚢、耳、皮膚または毛髪のディスバイオシスを引
き起こすことの実用化を実現した。
【0068】
本明細書で用いられる場合、「ディスバイオシス」は、微生物叢(例えば、腸内微生物
叢)の、細菌および/または古細菌のバランスの変化を指す。該変化は、該方法を実行す
る前の(例えば、実行する直前、または、実行する前の1日未満の)バランスとの相対的
なものである。該変化は、(i)微生物叢(例えば、腸内微生物叢)(例えば、B fr
agalisまたはthetaiotamicron)における、第1の種(細菌または
古細菌の種)または株の割合の増加;(ii)第1の種と第2の種(例えば、B fra
galis対C dificile、または、S thermophilus対E co
liもしくはL lactis)、同じ種の第1の株と第2の株、または、互いに異なる
第1の門と第2の門(例えば、バクテロイデス門(Bacteriodetes)対ファ
ーミキューテス門(Firmicutes))の相対的割合の増加;(iii)処置方法
の前には、微生物叢に含まれなかった種または株の添加;(iv)微生物叢における、第
1の種(細菌または古細菌の種)または株(例えば、 C dificileまたはS
thermophilus)の割合の減少;(v)第1の種と第2の種(例えば、B f
ragalis対C dificile、または、S thermophilus対E
coli もしくはL lactis)、同じ種の第1の株と第2の株、または、互いに
異なる第1の門と第2の門(例えば、バクテロイデス門(Bacteriodetes)
対ファーミキューテス門(Firmicutes))の相対的割合の減少;および(vi
)処置方法の前には、微生物叢に含まれなかった種または株の除去のうちの1つ以上であ
り得る。
【0069】
免疫システムが微生物叢の組成に及ぼす影響は、病気にかかりやすいように微生物群を
変えるいくつかの免疫不全によって示唆されている。例えば、Garrett et al.は、自然
免疫系と適応免疫系の両方の細胞における炎症性の応答を支配する転写因子T-bet(Tbx2
1によってコードされる)を欠くマウスを研究した(Cell. 2007 Oct 5;131(1):33-45, “
Communicable ulcerative colitis induced by T-bet deficiency in the innate immun
e system”, Garrett WS et al.)。適応免疫を欠くRag2-/-マウスにTbx21-
/-マウスを交配させると、Tbx21-/-/Rag2-/-子孫は微生物叢依存的に
潰瘍性大腸炎を発症した。驚くべきことに、この大腸炎の表現型は、Tbx21-/-/
Rag2-/-微生物叢の養子移入により、野生型マウスに伝達可能であった。このこと
は、変化した微生物叢が、疾病を誘導するのに十分であることを実証した。免疫由来のデ
ィスバイオシスの別の例は、インフラマソーム成分NLRP6の上皮細胞発現が欠損して
いるマウスにおいて見られる。これらのマウスは、腸炎症性細胞の動員および化学的に誘
発される大腸炎への感受性の増加に関連するバクテロイデス門(Bacteroidet
es)のメンバーの存在量の増加を伴う変化した微生物叢を発生させる。
【0070】
個々の共生種が、異なるエフェクター機能を有する粘膜固有層Tリンパ球サブセットの
構成に影響を及ぼすことは明らかにされている。腸粘膜におけるホメオスタシスは、イン
ターフェロンγを生産するTh1細胞、IL-17a、IL-17fおよびIL-22を
産生するTh17細胞、Th2およびTh17細胞に似たサイトカインエフェクター特徴
を有する多様な天然のリンパ系細胞、並びに抗炎症性Foxp3+調節性T細胞(Tre
g)を含む、潜在的に炎症促進性である細胞間の、チェックおよびバランスのシステムに
よって維持されている。
【0071】
本発明の特定の適用は、患者におけるTh17細胞集団の形成において見出される。こ
れらの細胞は、自己免疫性の、および、炎症性の疾患に関係づけられている。これらの細
胞は、Harrington LE, Hatton RD, Mangan PR, et al., “Interleukin 17-producing C
D41 effector T cells develop via a lineage distinct from the T helper type 1 and
2 lineages”, Nat Immunol. 2005;6(11): 1123-1132、および、Park H, Li Z, Yang X
O, et al., “A distinct lineage of CD4 T cells regulates tissue inflammation by
producing interleukin 17”, Nat Immunol. 2005; 6(11):1133-1141に記載された。自
己免疫性の疾患の場合、Th17細胞の過剰活性化は、多発性硬化症、関節リウマチおよ
び乾癬の場合のように、不適切な量の炎症を引き起こし得る。Th17細胞はまた、粘膜
免疫の維持に必要であることが示されている。Th17細胞は、Treg細胞と比較した
遺伝子発現の増加に起因する遅発型喘息反応の発症に寄与し得る。
【0072】
HIVでは、Th17細胞集団の喪失が慢性感染の一因となり得る。腸内のTh17細
胞集団の枯渇は、腸管バリアを破壊し、微生物移行により腸から出る細菌の移動レベルを
増加させ、慢性HIV感染症およびAIDSへの進行に寄与する。微生物移行は、細菌の
、腸管内腔の外からの、粘膜固有層内へ、リンパ節へ、およびさらに非リンパ組織への移
動をもたらす。それは、HIVの後期段階に全身で見られる一定の免疫活性化を引き起こ
し得る。腸内のTh17細胞集団の増加は、効果的な処置であり、かつ、おそらく予防的
でもあることが示されている。腸内の、全てのCD4+T細胞はHIVによって重度に枯
渇されるが、特に腸内のTH17細胞の喪失は慢性の病原性HIVおよびSIV感染症の
徴候に関連している。微生物移行は、HIVの文脈において、慢性炎症および免疫活性化
に寄与する主要な因子である。SIVの非病原性の場合には、微生物移行は観察されない
。Th17細胞は、腸におけるHIV感染症の間に、腸内上皮バリアを維持することによ
って、重度HIV感染症を予防する。それらの、高レベルのCCR5発現(HIVの共受
容体)のために、それらは優先的に感染して、枯渇する。従って、微生物移行は、Th1
7細胞の枯渇を通して生じる。さらに、腸内のTh17細胞の喪失は、炎症性Th17細
胞とそれらの抗炎症性対応物であるTreg細胞との間のバランスの喪失につながる。T
reg細胞は、その免疫抑制特性のため、HIVに対する抗ウイルス応答を減少させ、病
因に寄与していると考えられている。Th17活性と比較してより高いTreg活性があ
り、ウイルスに対する免疫応答はあまり積極的および効果的ではない。Th17細胞の活
性を高めること(revitalizing)は、炎症の減少を含む、慢性感染症の徴候
を減少させることが示されており、高活性抗レトロウイルス処置(HAART)に対する
応答が改善される。これは、重要な発見であり、微生物移行は一般的に、HAARTへの
不応答をもたらす。患者は継続して徴候を示し、予想されるウイルス量の低減は示さない
。SIV-アカゲザルモデルにおいて、、Th17分化および増殖を促進することが示さ
れたサイトカインであるIL-21を投与すると、Th17細胞集団を増加させることに
よって微生物移行が減少することが見出された。
【0073】
本方法の一例では、IL-21、IL-15および/またはIL-2は、細胞集団と共
に、患者に、順次または同時に投与される。このことは、患者において免疫細胞集団をさ
らに調製するのに、有用である。
【0074】
Yang et al.は、マウスにおけるTh17細胞の存在は、微生物叢を有するマウスにお
ける定着を必要とすることを発見した。セグメント細菌(SFB)は、動物モデルにおい
て、Th17細胞を誘導し、Th17依存性の自己免疫性の疾病を促進するのに十分であ
った(Nature, 2014 Jun 5;510(7503):152-6. doi: 10.1038/nature13279. Epub 2014 Ap
r 13, “Focused specificity of intestinal Th17 cells towards commensal bacterial
antigens”, Yang Y et al.)。SFBは、回腸末端の腸上皮細胞を覆う粘液層に浸透で
きるようであり、それらは上皮細胞と密接に相互作用し、相互作用の部位で宿主細胞アク
チン重合を誘導し、おそらく、粘膜固有層内のTh17極性化環境をもたらすシグナル伝
達事象を誘導する。
【0075】
一例では、第1の細菌は、セグメント細菌の16s rDNAに、少なくとも80、8
5、90、95、96、97、98、または、99%同一である、16s rDNA配列
を含む種または株の細菌である。ある実施形態では、本方法は第1の細菌の割合を増加さ
せ、ここで、患者におけるTh17細胞はアップレギュレートされ、例えば、疾病は、が
んまたはウイルス感染症(例えば、HIV)である。ある実施形態では、本方法は、第1
の細菌の割合を減少させ、患者におけるTh17細胞はダウンレギュレートされ、例えば
、疾病または症状は自己免疫性または炎症性の疾病または症状であるか、あるいは、AC
Tを受けているがん患者においてCRSのリスクを減少させるためである。
【0076】
一例では、本方法は、アレルギー性の疾病または症状、例えば喘息を、処置または予防
する。一例では、本方法は、IgE媒介性の疾病または症状、例えば喘息を、処置または
予防する。
【0077】
一例では、本方法は、Th2細胞のサイトカイン放出によって媒介される、患者の自己
中毒(autotoxicity)を低減させる。
【0078】
Lopez et al.は、ファーミキューテス門(Firmicutes)/バクテロイデス門
(Bacteroidetes)の比率の低減により特徴づけられる、腸のディスバイオ
シスが、全身性エリテマトーデス(SLE)患者において報告されることを発見した。彼
らの研究において、インビトロ培養物により、SLE患者便サンプル(SLE-M)から
単離された微生物叢が、健常なコントロール微生物叢よりも、リンパ球活性化およびナイ
ーブCD4+リンパ球からのTh17分化を、より大きく促進することを明らかにした。
Treg誘導細菌によるSLE-Mの濃縮は、2つのClostridia菌株の混合物
がTh17/Th1バランスを有意に低減させたが、Bifidobacterium
bifidumの補充はCD4+リンパ球過剰活性化を妨げたことを示した。患者サンプ
ルのエスビボ解析は、Th17およびFoxp3*IL-17+集団が増幅したこを示し
、Treg-Th17分化転換が可能であることが示唆された。さらに、糞便微生物叢の
分析は、健常なコントロールにおけるIL-17+集団とファーミキューテス門(Fir
micutes)との間に負の相関を明らかにしたが、SLEでは、この門は患者におい
てわずかに低減されたTh1サイトカインであるIFNγの血清レベルと直接相関した(
Sci Rep. 2016 Apr 5;6:24072. doi: 10.1038/srep24072, “Th17 responses and natura
l IgM antibodies are related to gut microbiota composition in systemic lupus ery
thematosus patients”, Lopez P et al.)。
【0079】
他の細菌が、Tregの分化を指示することによって、またはIL-10発現を誘導す
ることによって、適応免疫システムの抗炎症性分枝(anti-inflammator
y branch)を増強することが示されている。例えば、最初はマウス糞便から単離
され、主にClostridium属のクラスターIVおよびXIVaに属する、46の
マウスクロストリジウム(Clostridial)株の複雑なカクテルによるノトバイ
オートマウスの定着は、粘膜固有層および全身のTregの増幅をもたらす。
【0080】
Bacteroides fragilisポリサッカライドA(PSA)は、全身の
T細胞応答の発達に影響を与える。PSAを生産するB.fragilisによる無菌マ
ウスでの定着は、PSAを欠くB.fragilisを定着させたマウスと比較して、よ
り多くの循環CD4+T細胞を生じる。PSAを生産するB.fragilisはまた、
血液循環中のより高頻度のTh1細胞を誘発する。これらの知見は共に、共生細菌が、粘
膜組織をはるかに越える、全体的な免疫への影響を有することを示している。
【0081】
F.prausnitziiは酪酸を生産し、その経口投与はマウスのTNBS誘導大
腸炎の重症度を低減させるめ、IBD患者において見られるこの細菌の減少は興味深い。
一例では、第1の種は、酪酸生産細菌種(例えば、F.prausnitzii)であり
、微生物叢において、第1の種の割合は低減され、該方法は、患者においてエフェクター
T細胞、および/または、ヘルパーT細胞をダウンレギュレートし、それにより、前記疾
病または症状(例えば、自己免疫性または炎症性の疾病または症状、またはCRS)を治
療または予防する。
【0082】
古細菌は、伝統的に5つの門に分かれており、すなわち、Crenarchaeota
、Euryarchaeota、Korarchaeota、Nanoarchaeot
aおよびThaumarchaeotaである。豊富な全ゲノムデータの増加に基づいて
(主に、環境分離菌由来)、古細菌の系統発生は最近見直されている。Korarcha
eota、Crenarchaeota、Thaumarchaeotaおよび新たに提
案されたAigarchaeotaの4つのグループが、1つの上門(いわゆる、TAC
K上門)に含まれ、EuryarchaeotaおよびNanoarchaeotaは除
外されている。本発明の方法の第1の種は、本段落で述べた古細菌のいずれかであり得る
。
【0083】
T細胞は胸腺で成熟し、TCR受容体(T細胞受容体)を発現し、その表面にCD8糖
タンパク質を発現することができ、CD8+T細胞(細胞傷害性)と呼ばれるか、または
CD4糖タンパク質を発現することができ、そのためCD4細胞(ヘルパーT細胞)と呼
ばれるかのいずれかである。CD4+細胞は、異なるサブセット、TH(Tヘルパー)1
、TH2、TH、Th17、Th22、Treg(制御性T細胞s)およびTfh(濾胞
性ヘルパーT細胞s)に分化し、これらは異なるサイトカインプロファイルにより特徴づ
けられる。これらの異なるCD4+サブセットは、T細胞の免疫およびエフェクター応答
機能において、重要な役割を果たす。全てのCD4+THサブセットは、特定のサイトカ
インにより、ナイーブCD4+T細胞から分化し、TH1は、IL-12およびIFN-
γ(炎症誘発性のサイトカインであり、TLR(Toll様受容体)の増加、サイトカイ
ン分泌の誘導、またはマクロファージの活性化などの、複数の役割を有する)により分化
し、Th2はIL-4により分化し、TregはIL-2およびTGF-βにより分化す
る。THサブセットはそれぞれ、特定のサイトカインを放出する、炎症誘発性または抗炎
症性の機能、生存または保護機能のいずれかを有し得る、特定のサイトカインを放出する
。例えば、TH1はIFN-γおよびTNFを放出し、Th2はIL-4(B型リンパ球
の重要な生存因子)、IL-5およびIL-13を放出し、TH9はIL-9を生産し、
TregはIL-10(免疫抑制機能を有するサイトカインであり、Tregの抑制機能
に必要なFOX3転写因子の発現を他の細胞上で維持する)およびTGF-βを分泌し、
Th17はIL-17(細菌および真菌に対する宿主防御において重要な役割を果たすサ
イトカイン)を生産する。
【0084】
本発明のある実施形態は、CAR-Tおよび他の養子免疫療法(養子TIL療法など)
を調節するための適用を見出した。いくつかの報告が、CAR-Tおよび他の免疫細胞ベ
ースの治療を評価する際の重要な考慮事項である、CD4+サブセットによって放出され
る異なるタイプのサイトカインの異なる役割を実証している。TH1およびTH2CD4
+T細胞サブセットサイトカインは、第2世代のCD28含有CAR-Tによって生成さ
れる異なるタイプの細胞傷害性を促進することが示された。高レベルのTH1サイトカイ
ンでは短期毒性が観察され、第2世代のCD19特異的CAR-Tを受けた動物では高用
量のTH2型サイトカインが慢性自己細胞傷害性を生じた。誘導性IL-12を送達する
ように操作したCAR-T細胞は、腫瘍間質を調節してがんを破壊した。操作されたCAR
-T細胞によるIL-12放出は、マクロファージを動員することによって、抗がん活性
を上昇させた。CAR-Tにより放出されたIL-12はまた、抑制細胞の再プログラミ
ングを誘導し、その阻害機能を逆転させ、臨床試験におけるその評価を示唆した。CAR
-T療法の存続は、注入産物中のCD4+細胞の数およびセントラルメモリー細胞の数に
依存することが示された。CD8+エフェクター細胞からではなく、セントラルメモリー
T細胞から単離されたCD8+クローンが、非ヒト霊長類モデルにおいて、養子T細胞移
入の間インビボで長期間存続し、このことは、効果的な養子免疫療法のための、特定のT
細胞サブセットの機能の重要性を示した。CD8+サブセットとCD4+サブセットとの
組み合わせが、T細胞養子移入を顕著に増強したこともまた、示されている。CD4+細
胞は、CD8+記憶機能の発達を支持することが示され、免疫療法の治験におけるサブセ
ットおよび組み合わせの両方の重要性を実証した。いくつかの前臨床モデルは、効果的な
CAR-T療法ための、異なるT細胞サブセットの利点を実証した:T記憶幹細胞表現型
細胞に最も近いCD8+CD45RA+CCR7+CAR-T細胞は、より大きなCAR
-T細胞の抗腫瘍活性を生じた。CD8+およびCD4+サブセットは共に、相乗的な抗
腫瘍CAR-T活性を発現した。
【0085】
一例では、投与される細胞集団は、CD8+CAR-Tサブセットと、CD4+CAR
-Tサブセットとの組み合わせを含む、CAR-T細胞の集団である。
【0086】
本発明の一例では細胞療法は、養子T細胞療法であり、場合により、CD4+T細胞、
CD8+T細胞、Th1細胞およびTh17細胞からなる群から選択される細胞が、患者に投
与される。一例では、細胞療法は、本発明の方法により増強され、例えば、がん細胞の免
疫細胞細胞傷害性が患者において増強されるか、または、疾病または症状の処置が増強さ
れる。一例では、細胞療法は、本発明の方法により低減され、例えば、例えば、がん細胞
の免疫細胞細胞傷害性が患者において低減されるか、または、(例えば、がん患者におい
て)CRSのリスクが低減される。従って、ある実施形態では、本方法は、患者において
サイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを低減または予防する。ある実施形態では、
本方法は、細胞療法の望まれない副作用(例えば、CRSなどの、ヒト患者におけるCA
R-T療法の副作用)を低減または予防する。
【0087】
一例では、免疫細胞集団は、CAR-T細胞、および/または、操作されたT細胞受容
体(TCR)を発現するT細胞、および/または、腫瘍浸潤リンパ球(TIL、例えば、
操作されたTIL)を含む。WO2013063361、US9113616、US20
130109053、US20160081314およびWO2016044745(こ
れらの開示は、本明細書に参照により組み込まれる)は、本発明において使用するための
細胞を生成するのに使用するための、CARおよびTCRを生成するための好適な遺伝子
導入のインビボのプラットフォームを記載する。免疫細胞集団は、例えば、T細胞、NK
細胞および/またはTILなどの、操作された自家の、または同種の免疫細胞(移植片)
を含んでよく、例えば、ここで細胞および患者はヒトである。自家細胞の利点は、内因性
システムの調節が、自家細胞を移植した細胞の調節と同様に調整される可能性があること
である。ある実施形態では、投与された細胞および患者は、同じ種または株の細胞または
患者であり、例えば、ヒトまたはげっ歯類(例えば、マウス)であり、例えば、HLAま
たはMHC適合のドナー移植片およびレシピエント患者である。
【0088】
一例では、T細胞は、CD4+T細胞またはTh17細胞である。例えば、投与される
CAR-T細胞は、ICOS細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体を含み、場合により
、該細胞は、Th17細胞である。ある実施形態では、投与されるT細胞は、CD8+C
D45RA+CCR7+CAR-T細胞である。
【0089】
マウスにおける養子移入実験は、Th17細胞が、Th1極性細胞よりも高いインビボ
の生存率および自己再生能を有することを示している。それゆえ、一例では、Th17細
胞が、患者において調節され、例えば、アップレギュレートされ(例えば、患者において
増殖し)、あるいは、ダウンレギュレートされる。これらは、患者の内因性T細胞、およ
び/または、患者に投与された細胞、もしくはその子孫であってよい。ある実施形態では
、RORγt発現Th17細胞がアップレギュレートされ、例えば、患者において増殖し
ている。ある実施形態では、1つ以上のTh17関連遺伝子、例えば、Rorc、Il2
2およびIl26の1つ以上の発現が、増加している。ある実施形態では、1つ以上のT
h1関連遺伝子、例えば、Ifng、TnfaおよびTbx21(T-bet)の1つ以
上の発現が、増加している。ある実施形態では、この場合、疾病または症状はがんである
。
【0090】
一例では、Treg細胞は、患者において調節され、例えば、アップレギュレートされ
(例えば、患者において増殖し)、あるいは、ダウンレギュレートされる。これらは、患
者の内因性T細胞であってよく、および/または、患者に投与された細胞、もしくはその
子孫であってよい。ある実施形態では、この場合、疾病または症状は、Treg細胞がア
ップレギュレートされたときの自己免疫性の、炎症性の、または感染性の疾病または症状
である。
【0091】
一例では、CD4+細胞は、患者において調節され、例えば、アップレギュレートされ
(例えば、患者において増殖し)、あるいは、ダウンレギュレートされる。これらは、患
者の内因性細胞および/または患者に投与された細胞、もしくはその子孫であってよい。
【0092】
一例では、CD8+細胞は、患者において調節され、例えば、アップレギュレートされ
(例えば、患者において増殖し)、あるいは、ダウンレギュレートされる。これらは、患
者の内因性細胞および/または患者に投与された細胞、もしくはその子孫であってよい。
【0093】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、患者において調節され、例えば、アップレギュレート
され(例えば、患者において増殖し)、あるいは、ダウンレギュレートされる。これらは
、患者の内因性細胞および/または患者に投与された細胞、もしくはその子孫であってよ
い。
【0094】
一例では、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TE
M)、ステムセルメモリー細胞(TSCM)およびエフェクター細胞(Teff)の1つ
以上などのメモリー細胞が、微生物叢または患者においてアップレギュレートされ、場合
により、該細胞は、患者に投与される免疫細胞集団に含まれ、および/または、その子孫
である。ある実施形態では、メモリー細胞は、CD45RO+CD62L+またはCD2
5+CD45RA-CD45RO+CD127+である。
【0095】
ある細胞集団のアップレギュレーションは、例えば、微生物叢または患者または対象に
おける、そのタイプ(例えば、種または株)の細胞の集団の大きさまたは割合の増加であ
ってよく、および/または、微生物叢または患者または対象における、そのタイプの細胞
の活性(例えば、細胞傷害性、エフェクター機能またはサプレッサー機能)の増加であっ
てよい。ある細胞集団のダウンレギュレーションは、例えば、微生物叢または患者または
対象における、そのタイプ(例えば、種または株)の細胞の集団の大きさまたは割合の減
少であってよく、および/または、微生物叢または患者または対象における、そのタイプ
の細胞の活性(例えば、細胞傷害性、エフェクター機能またはサプレッサー機能)の減少
であってよい。
【0096】
一例では、細胞療法集団は、CAR-T細胞(すなわち、それぞれが、キメラ抗原受容
体(CAR)を表面発現するように操作されたT細胞)を含む。あるいは、該細胞は、C
AR-TILまたはCAR-NK細胞である。CARは、標的抗原(例えば、腫瘍細胞抗
原)に結合するための細胞外受容体ドメイン、膜貫通部分、および、免疫細胞(例えば、
T細胞)においてシグナル伝達するための、1つ以上の(例えば、第1および第2の)シ
グナル伝達ドメインを含む細胞内部分を含む。好適な細胞内ドメインの例はよく知られて
おり、例えば、CD3ζドメインと、ICOS、CD28、OX40または4-1BBシ
グナル伝達ドメインの1つ以上との組み合わせであって、例えば、ICOSおよびCD2
8、またはICOSおよび41-BB、CD28および41-BBシグナル伝達ドメイン
の組み合わせである。
【0097】
場合により、細胞集団は、疾病(例えば、がん、自己免疫性の疾病、移植片拒絶、また
は移植片対宿主病(GvHD))の治療または予防のために患者に投与される移植片に含
まれ、あるいは、細胞または移植片は、該使用のためのものである。
【0098】
一例では、患者はヒトであり、例えば、女性または男性である。
【0099】
一例では、患者またはヒトは、免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)の投与の前に、リ
ンパ球枯渇を受けている。
【0100】
CARおよびCART細胞を生産する技術は、当業界で知られていて通例であり、本発
明において使用するための細胞を生産するために、一般的に適用することができる(例え
ば、本発明に適用可能な一般的方法として、WO2012079000A1;US890
6682、US8911993、US8916381、US8975071、US910
1584、US9102760、US9102761、US9328156、US946
4140、US9481728、US9499629、US9518123、US954
0445、US20130287748、US20130288368、US20130
309258、US20140106449、US20140370017、US201
50050729、US20150093822、US20150099299、US2
0150118202、US20160130355、US20160159907、U
S20160194404、US20160208012; J Immunother. 2009 Sep; 3
2(7): 689―702, doi: 10.1097/CJI.0b013e3181ac6138, “Construction and Pre-clin
ical Evaluation of an Anti-CD19 Chimeric Antigen Receptor”, James N. Kochender
fer et al;またWO2014012001およびUS20150290244を参照さ
れたい)。例えば、エレクトロポレーション、レトロウイルスベクターまたはレンチウイ
ルスベクターの使用は、当業者は知るところであろうが、CARのエレメントをコードす
るヌクレオチド配列を、T-細胞、NK細胞、TILまたは他の免疫細胞に導入して、C
AR-細胞を生産するために用いることができる。患者から単離された細胞(自家細胞サ
ンプル)、または、同種の別のドナーから単離された細胞(同種サンプル)は、遺伝子操
作されてCARをコードする配列を含む祖先細胞を提供するために、用いることができる
。細胞の増幅は、当業界で知られることであるが、該プロセスで用いることができる。例
えば、CAR細胞を操作した後、通例の技術を用いて細胞集団を大量に増幅して、患者に
投与(例えば、注入(transfuse))される移植片を生産することができる。患
者は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。1つ以上のCARエレメントに対する(例えば
、1つ以上のシグナル伝達ドメインに対する)ヌクレオチド配列を、患者または別のドナ
ーから得た細胞を用いて、クローニングまたはシーケンシングすることができる。
【0101】
例えば、CARは、ヒトCD3ζドメインである、第一の細胞内シグナル伝達ドメイン
を含み、患者に投与される細胞は、該ヒトCD3ζドメインをコードする内因性ヌクレオ
チド配列を含む、ヒト細胞である。一例では、CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、W
O2012079000A1に開示される配列番号24のアミノ酸配列を含み、該配列は
、本発明における使用のために本明細書に明示的に組み込まれ、本明細書の1つ以上の特
許請求の範囲に含めることができる。一例では、CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、
WO2012079000A1に開示される配列番号18の核酸配列によりコードされ、
該配列は、本発明における使用のために本明細書に明示的に組み込まれ、本明細書の1つ
以上の特許請求の範囲に含めることができる。
【0102】
例えば、第1のシグナル伝達ドメインは、ヒトCD28ドメインであり、本発明の細胞
集団は、ヒトCD28ドメインをコードする内因性ヌクレオチド配列をそれぞれ含む、ヒ
ト細胞の集団である。
【0103】
例えば、第1のシグナル伝達ドメインは、ヒト4-1BBドメインであり、本発明の細
胞集団は、ヒト4-1BBドメインをコードする内因性ヌクレオチド配列をそれぞれ含む
、ヒト細胞の集団である。
【0104】
例えば、第1のシグナル伝達ドメインは、ヒトOX40ドメインであり、本発明の細胞
集団は、ヒトOX40ドメインをコードする内因性ヌクレオチド配列をそれぞれ含む、ヒ
ト細胞の集団である。
【0105】
一例では、第1のシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインであり、第1および第2
の細胞内シグナル伝達ドメインは、単一の細胞(例えば、ヒト野生型細胞、または患者か
ら単離された細胞)に天然に共生せず、例えば、第2のドメインは、CD28、CD27
、OX40または4-1BBドメインである。
【0106】
一例では、第1の細胞内ドメインは、CD3ζドメイン、CD28ドメインまたは4-
1BBドメインである。
【0107】
一例では、CARは、抗原結合部位(例えば、ヒトであってよい抗体scFv);場合
によりヒンジ(例えば、ヒトCD8αヒンジ);膜貫通ドメイン(例えば、ヒトCD8α
またはCD28膜貫通ドメイン);およびヒトCD3ζドメインを含む、操作された単一
ポリペプチドである。一例では、CARは、2つ以上の前記ポリペプチドの複合体である
。場合により、CARは、膜貫通ドメインと、CD3ζドメインとの間に、さらなる細胞
内シグナル伝達ドメイン(i)を含む。場合により、CARは、さらなる細胞内シグナル
伝達ドメインを含み、CD3ζドメインは、さらなるシグナル伝達ドメインと、膜貫通ド
メインとの間にある。一例では、さらなるシグナル伝達ドメインは、ヒトCD27ドメイ
ン、CD28ドメイン、ICOSドメイン、OX40ドメイン、CD40ドメイン、4-
1BBドメイン、FcεRIγドメイン、CD64ドメインまたはCD16ドメインであ
る。代替としては、単一ポリペプチドの代わりに、CARは、該ドメインを含む少なくと
も2つのポリペプチドの、操作された複合体を含む。
【0108】
免疫細胞は、単独で、または、希釈剤と、および/またはIL-2もしくは他のサイト
カインまたは細胞集団などの他の成分と組み合わせて、医薬組成物として投与されてよい
。
【0109】
ある実施形態では、免疫細胞(例えば、CAR細胞またはTCRを有する細胞)は、T
AAに結合する細胞表面結合部位(例えば、CARまたはTCRにより提供される)を含
む。腫瘍抗原(TAA)は、免疫応答、特にT細胞媒介性免疫応答を誘発する腫瘍細胞に
よって生産されるタンパク質である。抗原結合特異性の選択は、治療される特定のがんの
タイプに依存するであろう。腫瘍抗原は当業界でよく知られており、本発明のある実施形
態の文脈において、例えば、グリオーマ関連抗原, がん胎児抗原(CEA)、β-ヒト絨
毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログ
ロブリン(thyroglobulm)、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラ
ーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸内カルボキシルエステラーゼ(intes
tinal carboxyi esterase)、mut hsp70-2、M-C
SF、プロスターゼ(prostase)、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY
-ESO-1、LAGE-la、p53、プロステイン(prostein)、PSMA
、Her2/neu、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCT
A-1)、MAGE、ELF2M,好中球エラスターゼ,エフリンB2、CD22、イン
スリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体およびメンテリンが含
まれる。
【0110】
一実施形態では、腫瘍抗原は、悪性腫瘍に関連する、1つ以上の抗原性がんエピトープ
を含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃のための標的抗原として働くことができる多くのタンパク
質を発現する。これらの分子には、メラノーマ中のMART-1、チロシナーゼおよびG
P100、並びに、前立腺がん中の前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)および前立腺
特異的抗原(PSA)などの、組織特異的抗原が含まれるが、これらに限定されない。他
の標的分子は、がん遺伝子HER-2/NeuErbB-2などの、形質転換関連分子の
群に属する。標的抗原のさらに別の群は、がん胎児抗原(CEA)などの腫瘍胎児性抗原
である。B細胞リンパ腫において、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の
腫瘍に特有の、真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CDI9、CD20お
よびCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ種における標的抗原の他の候補であ
る。これらの抗原のいくつか(CEA、HER-2、CD19、CD20、イディオタイ
プ)は、モノクローナル抗体による受動免疫療法のための標的として用いられているが、
効果は限られる。1つ目の抗原または4つ目の結合部分は、これらのTAAのいずれかで
あり得るか、またはこれらのTAAのいずれかの抗原性配列であり得る。
【0111】
本発明のある実施形態では、TAAの非限定的な例には、以下が含まれる:MART-
l/MelanA(MART-1)、glOO(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP
-1、TRP-2などの分化抗原、および、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、G
AGE-1、GAGE-2、pi5などの腫瘍特異的多系列の抗原;CEAなどの過剰発
現の胚抗原;p53、Ras、HER-2/neuなどの過剰発現したがん遺伝子および
変異した腫瘍抑制遺伝子;染色体転座に起因する特有の腫瘍抗原(例えば、BCR-AB
L、E2A-PRL、H4-RET、1GH-IGK、MYL-RAR);および、エプ
スタイン・バーウイルス抗原EBVA並びにヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6
およびE7が含まれる。他の、大きな、タンパク質ベースの抗原には、TSP-180、
MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、pl85erb
B2、pl80erbrB-3、c-met、nm-23Hl、PSA、TAG-72、
CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、βカテニン、C
DK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4(791Tgp72}αフェ
トプロテイン(α-fetoprotem)、beta-HCG、BCA225、BTA
A、CA125、CA15-3\CA27.29\BCAA、CA195、CA242、
CA-50、CAM43、CD68\I、CO-029、FGF-5、G250、Ga7
33VEpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV1
8、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Ma
c-2結合タンパク質A、シクロフィリンC関連タンパク質、、TAAL6、TAG72
、TLP、およびTPSが含まれる。
【0112】
一実施形態では、CARまたはTCRは、ヒトCD19のための結合部位を含み、例え
ば、CARについては、これは、抗体CD19scFVにより提供され得、場合により、
抗CD19scFVは、WO2012079000A1に開示される配列番号14により
コードされる。一実施形態では、抗CD19scFVは、配列番号20のアミノ酸配列を
含む。本段落の配列は、WO2012079000A1に示されており、本発明での使用
のために、および、本明細書の1つ以上の請求項に包含され得るために、本明細書に明示
的に組み込まれる。
【0113】
一実施形態では、CAR内のドメインの1つと天然に結合する膜貫通ドメインが用いら
れる。いくつかの例では、膜貫通ドメインを選択するか、アミノ酸置換によっては改変し
て、これらのドメインの同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの結合を
回避し、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にすることができる。
【0114】
膜貫通ドメインは、天然起源または合成起源のいずれかに由来してよい。起源が天然の
場合、該ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来してよい。
本発明において特に有用な膜貫通領域は、T細胞受容体のα、βまたはζ鎖、CD28、
CD3ε、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33
、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137またはCD154
に由来してよい(すなわち、少なくともこれらの膜貫通領域を含む)。あるいは、膜貫通
ドメインは合成であってよく、その場合、該ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎
水性残基を主に含むであろう。場合により、フェニルアラニン、トリプトファン、および
バリンの三つ組が、合成膜貫通ドメインの各末端で見出されるであろう。
【0115】
場合により、短いオリゴペプチドの、またはポリペプチドのリンカー、好ましくは2か
~10のアミノ酸長のリンカーが、CARなどの免疫細胞膜貫通タンパク質の、膜貫通ド
メインと、細胞内部分との間の連結を形成する。グリシン-セリンダブレット(doub
let)は、特に好適なリンカー(例えば、本明細書に開示される(G4S)nリンカー
)を提供する。
【0116】
場合により、膜貫通ドメインは、配列番号16の核酸配列によりコードされるCD8膜
貫通ドメインである。一実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、配列番号22のアミノ
酸配列を含む。本段落の配列は、WO2012079000A1に示されており、本発明
での使用のために、および、本明細書の1つ以上の請求項に包含され得るために、本明細
書に明示的に組み込まれる。
【0117】
いくつかの例では、膜貫通ドメインは、配列番号15の核酸配列によりコードされる、
CD8ヒンジドメインを含む。一実施形態では、CD8ヒンジドメインは、配列番号21
のアミノ酸配列を含む。本段落の配列は、WO2012079000A1に示されており
、本発明での使用のために、および、本明細書の1つ以上の請求項に包含され得るために
、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0118】
患者に投与された細胞集団の細胞により発現される、膜貫通タンパク質の細胞内部分、
言い換えれば細胞内シグナル伝達ドメインは、膜貫通タンパク質を発現する免疫細胞の正
常なエフェクター機能(例えば、(例えば、Tエフェクター細胞に対して)細胞傷害性ま
たは、(T制御性細胞に対して)抑制を導くなどの、T細胞機能)のうち、少なくとも1
つの活性化を担う。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊な機能を指す。T細
胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解溶解活性またはヘルパー活性であってよく、
サイトカインの分泌を含む。従って、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エ
フェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特殊な機能を実行させるタンパク質の部分を指
す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖
全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断された一部が使用される
範囲においては、この切断された一部は、エフェクター機能シグナルを伝達するのであれ
ば、完全な鎖の代わりに使用されてよい。従って、「シグナル伝達ドメイン」という用語
は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの切
断された一部を含むことを意味する。投薬された細胞の膜貫通タンパク質に用いる細胞内
シグナル伝達ドメインの例としては、T細胞受容体(TCR)および、協調して作用して
抗原受容体の結合に続くシグナル伝達を開始する共受容の、細胞質側の配列、ならびにこ
れらの配列の任意の派生物(derivative)または変異体、および同じ機能的能
力を有する任意の合成配列を含む。
【0119】
TCR単独で生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、二次ま
たは共刺激シグナルも必要であることが、知られている。したがって、T細胞活性化は、
2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列により媒介されると言える。すなわち、T
CRを介して抗原依存性の一次活性化を開始する細胞質シグナル伝達配列(一次細胞質シ
グナル伝達ドメイン)と、抗原非依存的に作用して、二次または共刺激シグナルを提供す
る細胞質シグナル伝達配列(二次細胞質シグナル伝達ドメイン)である。一次細胞質シグ
ナル伝達配列は、刺激的方法、または、阻害的方法のいずれかで、TCR複合体の一次活
性化を制御する。刺激的方法で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化
チロシンモチーフ、すなわち、ITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでよ
い。
【0120】
一例では、第1のシグナル伝達ドメインは、一次細胞質シグナル伝達ドメイン(例えば
、CD3ζドメイン)である。一例では、第1のシグナル伝達ドメインは、二次細胞質シ
グナル伝達ドメイン(例えば、CD28または4-1BBドメイン)である。
【0121】
一例では、第1のシグナル伝達ドメインは、1つ以上のITAMを含む。
【0122】
本発明において特に有用な、好適なITAM含有一次細胞質シグナル伝達ドメインの例
には、TCRζ、FcRgamma、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS
、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するシグナル伝達ドメイ
ンが含まれる。本発明の膜貫通タンパク質における細胞質シグナル伝達分子が、CD3ζ
由来の細胞質シグナル伝達配列を含むことが、特に好ましい。
【0123】
細胞内部分は、場合により、(例えば、第1のシグナル伝達ドメイン、またはさらなる
細胞内ドメインとして)共刺激分子のドメインを含む。共刺激分子は、抗原に対するリン
パ球(例えば、T細胞またはNK細胞)の効率的な応答に必要とされる抗原受容体または
そのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子の例には、CD27、CD28、4
-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ
球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-
H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが含まれる。従って、これらおよ
び他の共刺激エレメントは、膜貫通タンパク質の細胞内部分における使用のための本発明
の範囲内である。
【0124】
細胞内部分ドメインは、1つ以上のリンカー、例えば、本明細書に開示される(G4S
)nリンカーにより、共に連結されていてよい。
【0125】
一実施形態では、細胞内部分は、CD3-ζのシグナル伝達ドメインと、CD28のシ
グナル伝達ドメインとを含む。別の実施形態では、細胞内部分は、CD3-ζのシグナル
伝達ドメインと、4-1BBのシグナル伝達ドメインとを含む。さらに別の実施形態では
、細胞内部分は、CD3-ζのシグナル伝達ドメインと、CD28および4-1BBのシ
グナル伝達ドメインとを含む。
【0126】
一実施形態では、細胞内部分は、4-1BBのシグナル伝達ドメインと、CD3-ζの
シグナル伝達ドメインとを含み、4-1BBのシグナル伝達ドメインは配列番号17に記
載される核酸配列によりコードされ、CD3-ζのシグナル伝達ドメインは配列番号18
に記載される核酸配列によりコードされる。本段落の配列は、WO2012079000
A1に示されており、本発明での使用のために、および、本明細書の1つ以上の請求項に
包含され得るために、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0127】
一実施形態では、細胞内部分は、4-1BBのシグナル伝達ドメインと、CD3-ζの
シグナル伝達ドメインとを含み、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、配列番号23の
アミノ酸配列を含み、CD3-ζのシグナル伝達ドメインは、配列番号24のアミノ酸配
列を含む。本段落の配列は、WO2012079000A1に示されており、本発明での
使用のために、および、本明細書の1つ以上の請求項に包含され得るために、本明細書に
明示的に組み込まれる。
【0128】
一実施形態では、細胞内部分は、4-1BBのシグナル伝達ドメインと、CD3-ζの
シグナル伝達ドメインとを含み、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、配列番号23に
記載されるアミノ酸配列を含み、CD3-ζのシグナル伝達ドメインは、配列番号24に
記載されるアミノ酸配列を含む。本段落の配列は、WO2012079000A1に示さ
れており、本発明での使用のために、および、本明細書の1つ以上の請求項に包含され得
るために、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0129】
T細胞および他の免疫細胞の起源は、WO2012079000A1、US89066
82、US8911993、US8916381、US8975071、US91015
84、US9102760、US9102761、US9328156、US94641
40、US9481728、US9499629、US9518123、US95404
45、US20130287748、US20130288368、US2013030
9258、US20140106449、US20140370017、US20150
050729、US20150093822、US20150099299、US201
50118202、US20160130355、US20160159907、US2
0160194404、US20160208012に開示されており、並びに、これら
を生成、活性化、および増幅する方法も開示されている。これらの開示は、本発明を実施
する際の可能性のある使用のために参照される。
【0130】
本方法による処置または予防のためのがん
【0131】
治療され得るがんには、血管新生されないか、実質的に血管新生されない腫瘍、並びに
、血管新生された腫瘍が含まれる。がんは、非固形腫瘍(例えば、白血病およびリンパ腫
などの血液系腫瘍)を含むか、または固形腫瘍を含み得る。本発明で処置されるがんのタ
イプには、細胞種(細胞腫)、芽細胞腫、および肉腫(肉腫)、およびある種の白血病ま
たはリンパ系悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、悪性腫瘍(例えば、肉腫、細胞腫およびメ
ラノーマ)が含まれるが、これらに限定されない。成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がん
もまた含まれる。
【0132】
血液がんは、血液または骨髄のがんである。血液性(または血行性)のがんの例には、
急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄白血病、および、骨髄芽
球性白血病、前骨髄球性(promyeiocytic)白血病、骨髄単球性白血病、単
球性白血病、および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性
骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキ
ン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度および高悪性度の)、多発性骨髄腫,ワルデンスト
レーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病および
骨髄形成異常症を含む、白血病が含まれる。
【0133】
固形腫瘍は、通常嚢胞または液体領域を含有しない、組織の異常な腫瘤である。固形腫
瘍は、良性または悪性であり得る。さまざまなタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細
胞のタイプ(肉腫、細胞腫、およびリンパ腫など)について、名前が付けられている。肉
腫および細胞種などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫,軟骨肉腫、骨
肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結
腸がん,リンパ系腫瘍、膵臓がん、乳がん,肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん
、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺癌、汗腺がん,甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細
胞腫皮脂腺細胞腫、乳頭がん,乳頭状腺がん、髄様がん,気管支原性肺癌、腎細胞がん、
肝細胞がん,胆管細胞腫、絨毛がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノー
マ、膀胱がん、メラノーマ、および中枢神経系(CNS)腫瘍(例えば、神経膠腫(脳幹
神経膠腫および混合神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られる)、
星細胞腫、中枢神経系(CNS)リンパ腫,胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽
頭腫(craniopharyogioma)、脳室上衣腫、松果体腫(pineaio
ma)、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)
、神経芽腫、網膜芽細胞腫および脳転移)が含まれる。
【0134】
一実施形態では、投与された細胞は、特定の癌を処置するように設計された第1の抗原
結合部位(例えば、CARによって含まれる)を発現する。例えば、第1の抗原結合部位
は、CD19に特異的に結合して、がんおよび疾患、例えば、前駆Bリンパ芽球性白血病
リンパ腫(pre-B ALL)(小児適応症)、成人の急性リンパ性白血病(ALL)
、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、または同種骨髄移植後のサ
ルベージを処置するために用いられ得る。別の実施形態では、第1の部分または第1の結
合部位は、CD22に特異的に結合して、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置する。
【0135】
一実施形態では、がんおよび疾患には、pre-B ALL(小児適応症)、成人の急
性リンパ性白血病(ALL)、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
、同種骨髄移植後のサルベージなどが含まれるがこれらに限定されず、CD19、CD2
0、CD22、およびROR1のうち2つまたは3つを標的とする複数の架橋剤(bri
dging agent)(または、単一の剤に含まれる複数の結合部分もしくは結合部
位)の組み合わせを用いて処置することができる。
【0136】
一例では、細胞は、異なる(例えば、その標的抗原において異なる(かつ、場合により
他の点では同一である))、第1および第2の膜貫通タンパク質(例えば、T細胞により
発現された、2つのCARまたは、1つのCARおよび操作されたTCR)を含む。同様
に、本発明は、例えば同一の移植片に含まれる、免疫細胞の混合物(例えば、CAR細胞
の混合物)を用いてよく、ここで、混合物は、異なる(例えば、その標的抗原において異
なる(かつ、場合により他の点では同一である))膜貫通タンパク質(例えば、T細胞に
より発現された、2つのCARまたは、1つのCARおよび操作されたTCR)を含む細
胞を含む。これは、例えば、がんによる処置に対する抵抗を低下させるため、あるいは、
複数の標的抗原を表面発現するがん細胞などの細胞集団をより効果的に標的とするために
、有用であり得る。
【0137】
一実施形態では、抗原結合部位は、メンテリンに特異的に結合して、中皮腫、膵臓がん
、卵巣がんを、処置または予防する。
【0138】
一実施形態では、抗原結合部位は、CD33/IL3Raに特異的に結合して、急性骨
髄白血病を、処置または予防する。
【0139】
一実施形態では、抗原結合部位は、c-Metに特異的に結合して、トリプルネガティ
ブ乳がんまたは非小細胞肺がんを、処置または予防する。
【0140】
一実施形態では、抗原結合部位は、PSMAに特異的に結合して、前立腺がんを、処置
または予防する。
【0141】
一実施形態では、抗原結合部位は、糖脂質F77に特異的に結合して、前立腺がんを、
処置または予防する。
【0142】
一実施形態では、抗原結合部位は、EGFRvIlIに特異的に結合して、膠芽腫(g
liobastoma)を、処置または予防する。
【0143】
一実施形態では、抗原結合部位は、GD-2に特異的に結合して、神経芽腫またはメラ
ノーマを、処置または予防する。
【0144】
一実施形態では、抗原結合部位は、NY-ESO-1 TCRに特異的に結合して、骨
髄種、肉種、またはメラノーマを処置する。
【0145】
一実施形態では、抗原結合部位は、MAGE A3 TCRに結合して、骨髄腫、肉腫
およびメラノーマを処置する。
【0146】
特異的抗原結合は、インビトロで、25℃または室温で、表面プラズモン共鳴(SPR
)により決定される、1mM以下(例えば、1mM以下、100nM以下、10nM以下
、1nM以下、100pM以下、または10pM以下)のKDによる結合である。
【0147】
1つの例では、本方法を用いた前記処置は、疾病または症状、またはその徴候の進行を
低減させる。1つの例では、本方法を用いた前記処置は、例えば、少なくとも、1、2、
3、4または5年間、疾病または症状、またはその徴候の発生率を低減させる。
【0148】
一例では、本方法は、哺乳動物、例えばヒト、男性または女性、または男児または女児
、またはヒト乳児(例えば、1、2、3または4歳未満)で、インビボで行われる。一例
では、患者は成人または小児のヒト患者である。
【0149】
CARまたはTCRは操作されている、すなわち、天然に存在しない部分とドメインの
組み合わせを含む。一例では、細胞療法は、標的細胞を標的とし、標的細胞はがん細胞で
あり、例えば、白血病細胞、リンパ腫細胞、腺がん細胞、または、がん幹細胞である。場
合により、投与される免疫細胞のCARまたはTCRは、ヒトCD19(場合により、標
的細胞は、白血病細胞またはリンパ腫細胞である)、EpCAM(場合により、標的細胞
は、肺がん細胞、胃腸がん細胞、腺癌、がん幹細胞である)、CD20(場合により、標
的細胞は白血病細胞である)、MCSP(場合により、標的細胞はメラノーマ細胞である
)、CEA、EGFR、EGFRvIII、シアリルTn、CD133、CD33(場合
により、標的細胞は、白血病細胞であり、例えば、急性骨髄性白血病(AML)細胞であ
る)、PMSA、WT1、CD22、L1CAM、ROR-1、MUC-16、CD30
、CD47、CD52、gpA33、TAG-72、ムチン、CIX、GD2、GD3、
GM2、CD123、VEGFR、インテグリン、cMET、Her1、Her2、He
r3、MAGE1、MAGE A3 TCR、NY-ESO-1、IGF1R、EPHA
3、CD66e、EphA2,TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、
アンジオポエチン、メンテリン、糖脂質F77またはテネイシンに、特異的に結合する。
【0150】
場合により、CARは、ブリナツモマブまたは抗体HD37のCD19結合部位、カツ
マキソマブのEpCAM結合部位、AFM11のCD19結合部位、Lymphomun
のCD20結合部位、ErtumaxomabのHer2結合部位、AMG211(ME
DI-565,MT111)のCEA結合部位、PasotuxizumabのPSMA
結合部位、solitomabのEpCAM結合部位、RG7221またはRG7716
のVEGFまたはアンジオポエチン2結合部位、RG7597のHer1またはHer3
結合部位、MM111のHer2またはHer3結合部位、MM141のIGF1Rまた
はHer3結合部位、MGD006のCD123結合部位、MGD007のgpa33結
合部位、TF2のCEA結合部位、AFM13のCD30結合部位、AFM11のCD1
9結合部位、および、LY3164530のHer1またはcMet結合部位からなる群
から選択される、抗体の可変ドメインを含む。
【0151】
場合により、CARは、ReoPro(商標)、アブシキシマブ、Rituxan(商
標)、リツキシマブ、Zenapax(商標)、ダクリズマブ、Simulect(商標
)、バシリキシマブ、Synagis(商標)、パリビズマブ、Remicade(商標
)、インフリキシマブ、Herceptin(商標)、トラスツズマブ、Mylotar
g(商標)、ゲムツズマブ、Campath(商標)、アレムツズマブ、Zevalin
(商標)、イブリツモマブ、Humira(商標)、アダリムマブ、Xolair(商標
)、オマリズマブ、Bexxar(商標)、トシツモマブ、Raptiva(商標)、エ
ファリズマブ、Erbitux(商標)、セツキシマブ、Avastin(商標)、ベバ
シズマブ、Tysabri(商標)、ナタリズマブ、Actemra(商標)、トシリズ
マブ、Vectibix(商標)、パニツムマブ、Lucentis(商標)、ラニビズ
マブ、Soliris(商標)、エクリズマブ、Cimzia(商標)、セルトリズマブ
、Simponi(商標)、ゴリムマブ、Ilaris(商標)、カナキムマブ、Ste
lara(商標)、ウステキヌマブ、Arzerra(商標)、オファツムマブ、Pro
lia(商標)、デノスマブ、Numax(商標)、モタビズマブ、ABThrax(商
標)、ラキシバクマブ、Benlysta(商標)、ベリムマブ、Yervoy(商標)
、イピリムマブ、Adcetris(商標)、ブレンツキシマブ、Vedotin(商標
)、Perjeta(商標)、ペルツズマブ、Kadcyla(商標)、アドトラスツズ
マブ、Gazyva(商標)およびオビヌツズマブからなる群から選択される抗体の抗原
結合部位の可変ドメインを含む。
【0152】
一例では、標的細胞は血液細胞、例えば、ヒトまたは動物の、幹細胞または骨髄細胞で
ある。場合により、標的細胞は、B細胞またはT細胞である。
【0153】
一例では、CARまたはTCRは、自己免疫性の疾病の標的のための抗原結合部位を含
み、シグナル伝達は免疫細胞の細胞傷害活性または増殖をダウンレギュレートする。本明
細書で用いられる場合、「自己免疫性の疾病」という用語は、自己免疫応答の結果生じる
疾患として規定される。自己免疫性の疾病は、自己抗原に対する、不適切および過度な応
答の結果である。自己免疫性の疾病の例には、とりわけ、、アジソン病、円形脱毛症(a
lopecia greata areata)、強直性脊椎炎、自己免疫性の肝炎、自
己免疫性の耳下腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎
、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barr s
yndrome)、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症
筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症
、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰
瘍性大腸炎が含まれるが、これらに限定されない。メモリーT細胞集団全体の範囲内で、
いくつかの異なる亜集団が記載されており、ケモカイン受容体CCR7およびL-セレク
チン(CD62L)の示差的発現によって認識され得る。ステムメモリーTSCM細胞は
、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、C
D27+、CD28+およびIL-7Rα+であるが、大量のCD95、IL-2Rβ、
CXCR3およびLFA-1も発現し、メモリー細胞特有の多数の機能的属性を示す。セ
ントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチンおよびCCR7を発現し、IL-2を分
泌するが、IFNγまたはIL-4は分泌しない。しかしながら、エフェクターメモリー
TEM細胞は、L-セレクチンまたはCCR7は発現しないが、エフェクターサイトカイ
ン様IFNγおよびIL-4を生産する。TSCMなどのメモリーT細胞は、ヒトにおい
て、操作された免疫細胞の持続する集団を確立するために、特に有用であり得る。
【0154】
本明細書の免疫細胞、標的細胞、または幹細胞は、一例では、TSCM、TCMまたは
TEM細胞、例えば、ヒトTSCM、TCMまたはTEM細胞であり得る。一例では、細
胞療法の免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)はそれぞれ、自己免疫性の疾病、炎症性の
疾病、ウイルス感染症、またはがんを患っているヒトの細胞の子孫であり、例えば、該ヒ
トは、リンパ性白血病、ALL(例えば、T-ALL)、CLL(例えば、B細胞慢性リ
ンパ性白血病)または非ホジキンリンパ腫を患っている。該ヒトは、例えば、該患者また
はその親戚(例えば、兄弟または親)であってよい。
【0155】
一例では、投与される免疫細胞は、シグナル伝達が増強されるように、操作されており
、ここで、シグナル伝達は、CD28、4-1BB、OX40、ICOSおよびCD40
シグナル伝達から選択される。
【0156】
場合により、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)は死滅する。一例では、各標的細胞は、腫
瘍細胞であり、本方法は、ヒトにおいて、がんのリスクを処置または低減し、あるいは、
がん進行のリスクを処置または低減する。
【0157】
場合により、ヒトはがんを有する。一例では、がんは血液がんである。一例では、ヒト
は、B細胞起源のがんを有する。一例では、ヒトは、T細胞起源のがんを有する。例えば
、がんは肺がん、メラノーマ、乳がん、前立腺がん、結腸がん、腎細胞がん、卵巣がん、
神経芽腫、横紋筋肉腫、白血病およびリンパ腫である。本発明に使用するのに好ましいが
んの標的は、B細胞起源のがんであり、特に急性リンパ性白血病、B細胞慢性リンパ性白
血病またはB細胞非ホジキンリンパ腫を含む。一例では、がんはT細胞またはB細胞起源
のがんであり、例えば、リンパ性白血病、ALL(例えば、T-ALL)、CLL(例え
ば、B細胞慢性リンパ性白血病)、または非ホジキンリンパ腫である。場合により、投与
される免疫細胞(例えば、CAR-細胞)はそれぞれ、前記ヒトの免疫細胞の子孫であり
、例えば、該ヒトは、リンパ性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
、ALL(例えば、T-ALLまたはB-ALL)、CLL(例えば、B細胞慢性リンパ
性白血病)または非ホジキンリンパ腫を患っている。場合により、投与される免疫細胞(
例えば、CAR-T細胞)はそれぞれ、前記ヒトの自家細胞(例えば、T細胞)であるか
、該自家細胞の子孫である。本明細書で用いられる場合、用語「自家の」は、後に再導入
される個体と同一の個体に由来する任意の物質を指すことが意図されている。「同種の」
は、同じ種の異なる動物に由来するグラフトを指す。
【0158】
場合により、投与される細胞(例えば、CAR-細胞)はそれぞれ、ヒトの血液または
腫瘍サンプルに由来し、ステップ(c)の前に、インビトロで活性化および増殖される。
「活性化」は、本明細書で用いられる場合、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に
刺激されたT細胞または他の免疫細胞の状態をいう。活性化はまた、誘導されたサイトカ
イン生産、および、検出可能なエフェクター機能とも、関連し得る。用語「活性化された
T細胞」は、とりわけ、細胞分裂をしているT細胞を指す。
【0159】
ある実施形態では、ヒトは、自己免疫性の疾病を有し、投与される免疫細胞(例えば、
CAR-細胞)は、アネルギー性であり、または、標的細胞と結合した場合の増殖および
/または細胞傷害活性が低下しており、それにより、細胞移植片細胞(および/またはそ
の子孫)は、前記自己免疫性の疾病をアップレギュレートする、前記ヒトの内因性免疫細
胞と競合する。
【0160】
本方法における免疫細胞の投与は、患者の血液への細胞注入によってよい。免疫細胞は
、患者に投与される増幅免疫細胞集団を生産するように、増幅されてよい。免疫細胞は、
患者に投与される活性化免疫細胞集団を生産するように、活性化されてよい。本明細書に
おける方法では、有効量の免疫細胞が投与される。本明細書で使用される「有効量」は、
疾病または症状を処置または予防するための治療的または予防的利益を提供する量を意味
する。
【0161】
本発明の方法のある実施形態において、方法は、患者への免疫細胞の投与の前に、リン
パ球枯渇を受けている患者(例えば、ヒト)のがんのリスクを処置または低減する。
【0162】
一実施形態では、ヒトは、少なくとも1つの化学療法薬に耐性である。
【0163】
一実施形態では、慢性リンパ性白血病は、難治性のCD19+白血病およびリンパ腫で
ある。
【0164】
本発明はまた、がんと診断されたヒトにおいて、遺伝子操作されたT細胞の存続する集
団を生成する方法を含み、ここで、投与される細胞はT細胞を含み、存続する集団はその
子孫を含む。一実施形態では、本方法は、ヒトにT細胞集団(例えば、CART細胞集団
)を投与することを含み、ここで、遺伝子操作されたT細胞の存続する集団は、投与後少
なくとも1ヵ月間、ヒト中に存続する。一実施形態では、遺伝子操作されたT細胞の存続
する集団は、メモリーT細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作されたT細胞の存続す
る集団は、投与後少なくとも3週間は、ヒト中に存続する。別の実施形態では、遺伝子操
作されたT細胞の存続する集団は、投与後少なくとも4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、
8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、2年、または3年の間、ヒト中に存続
する。
【0165】
一実施形態では、慢性リンパ性白血病が処置される。本発明はまた、がんと診断された
ヒトにおいて、操作されたT細胞またはNK細胞の集団を増幅させる方法であって、投与
される細胞がT細胞および/またはNK細胞を含み、増幅された集団がその子孫を含む方
法を提供する。
【0166】
場合により、自家のリンパ球の注入が、処置において用いられる。例えば、自家のPB
MCを、処置が必要な患者から回収し、CAR-T細胞を、CAR膜貫通タンパク質を発
現するように操作し、当業界で知られる方法を用いて活性化および増幅して、その後、ス
テップ(a)において患者に注入して戻す。一例では、投与される細胞は、多能性または
多分化能である。該幹細胞は、ヒトの細胞に発達することができない。ある実施形態では
、該幹細胞は、ヒトの胚または接合子に発達することができない。
【0167】
一例では、投与される細胞集団は、例えば、ヒトの自家細胞または同種細胞である、骨
髄幹細胞を含む。
【0168】
一例では、投与される細胞集団は、例えば、ヒトの自家細胞または同種細胞である、造
血幹細胞を含む。
【0169】
微生物叢の調節
医療行為は、しばしば、患者に抗生物質を投与することを包含する。 これらの処置は
、典型的には、多くのグラム陽性菌種または多くのグラム陰性種を、区別することなく標
的とする抗生物質、すなわち、広域スペクトル抗生物質の投与を包含し得る。同様に、農
業(farming)や農耕(agriculture)における広域スペクトル抗生物
質の使用は、健康に有害であり、微生物耐性を発展させる可能性のある、これらの抗生物
質のヒトおよび動物の食物連鎖への侵入を含む、環境問題を提起する。むしろ、一例では
、本発明は、微生物叢の第1の微生物の(例えば、細菌または古細菌の)種または株の、
選択的標的化を包含する。本明細書の実施例に示されるように、特定の細菌種の選択的標
的化は、選択された種のゲノムを標的とするの誘導型ヌクレアーゼを用いて達成されてい
るが、同時に、関連する種および株、並びに、共存する種(実施例においては、ヒト腸内
微生物叢に共存する種)を温存する。従って、1つの例では、ディスバイオシスを引き起
こすステップ、または、ステップ(b)は、微生物叢亜集団の第1の細胞を死滅すること
、または、微生物叢亜集団に含まれる第1の細胞のゲノムを標的とする誘導型ヌクレアー
ゼ(例えば、RNA誘導型ヌクレアーゼ)を用いることにより前記亜集団の増殖を阻害す
ることを含む。誘導型ヌクレアーゼ標的化を実行するための好適なシステムは、例えば、
操作されたCRISPR/Casシステム、TALEN、メガヌクレアーゼおよびジンク
フィンガーシステムである。例として、共同体における、選択されたヒト腸内微生物叢細
菌種のCRISPR/Cas媒介ガイド標的化が、本明細書の実施例において実証されて
いる。該標的化は、標的の種または株のDNAのヌクレアーゼ切断を生みだし、例えば、
微生物叢における標的の種の相対的割合を低減させ、あるいは、微生物叢における前記種
の亜集団の増殖を阻害する。本方法における種の選択的標的化は、一般に、微生物叢にお
ける、細菌および/または古細菌種の相対的割合の変化の、より細かい制御を可能にする
のに有利である。このように、本発明は、TH1、TH17および/またはTreg細胞
などの特定の免疫細胞集団のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション、ま
たは本明細書に記載される微生物叢を調節する他の結果に影響を及ぼすことを目的として
、微生物叢を改変する能力を提供する。
【0170】
一例では、第1の細胞集団増殖は、該ディスバイオシスまたはステップ(b)より前の
増殖と比較して、少なくとも5倍低下している。本方法は、腸表面での、第1の細胞集団
増殖を阻害することを含んでよい。本方法は、植物(例えば、葉および/または茎)表面
での、第1の細胞集団増殖を阻害することを含んでよい。
【0171】
あるいは、対象に適用される代わりに、処置は、環境または土壌に適用され(例えば、
処置は、肥料、植物生長促進または阻害、除草剤、または、農薬の処置である)、ここで
、処置は本発明によって調節される。
【0172】
腸内微生物叢または他の微生物叢において、細菌および古細菌の変化をいかにして決定
するかは、当業者には、明らかであろう。例えば、これは、処置前および処置後に、患者
の糞便サンプルを解析することにより、行われ得る。各サンプルにおける異なる種または
株のタイプ、および、処置前および処置後の種または株の割合を決定してよい。16sリ
ボソームRNAをコードするDNA(16s rDNA)の従来の分析を用いて、例えば
種を同定することが可能である。これに加えて、または、これに代えて、標準的な生化学
テストを、株または種を同定するために用いることができ、例えば、染色、運動性試験、
血清学的試験、ファージ分類、(例えば、Kirby Baurディスク拡散法を用いた
)識別ディスク試験(identification disc testing)の1
つ以上もまた包含する。生化学テストは、(a)カタラーゼテスト、(b)コアグラーゼ
テスト、(c)オキシダーゼテスト、(d)糖発酵テスト、(e)インドールテスト、(
f)クエン酸テスト、および(g)ウレアーゼテストの1つ以上を包含してよい。相対的
割合は、各サンプルから(本明細書の実施例のように)寒天プレート上のコロニーを増殖
させ、コロニー数を計測することにより、決定してよい。
【0173】
一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、微生物叢、例えば腸内微生物叢
における、Bacteroides(B thetaiotamicron)の割合を増
加させる。
【0174】
一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、微生物叢、例えば腸内微生物叢
における、Bacteroides(B thetaiotamicron)の割合を減
少させる。一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、微生物叢、例えば腸内
微生物叢における、ファーミキューテス門(Firmicutes)に対するバクテロイ
デス門(Bacteroidetes)の割合を増加させる。一例では、ディスバイオシ
スまたはステップ(b)は、微生物叢、例えば腸内微生物叢における、ファーミキューテ
ス門(Firmicutes)に対するバクテロイデス門(Bacteroidetes
)の割合を減少させる。
【0175】
蓄積した証拠は、Treg細胞の誘導においてクラスターIVおよびXIVaに属する
BifidobacteriumおよびClostridium spp.の共生株の役
割を支持する。例えば、Lopez et al.を参照されたい。一例では、ディスバイオシスまた
はステップ(b)は、腸内微生物叢において、1つ以上のClostridium種また
は株(例えば、一例では、それぞれの種はクラスターIVまたはXIVaClostri
dium種である)の割合を低減する。一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b
)は、腸内微生物叢において、1つ以上のClostridium種または株(例えば、
一例では、それぞれの種はクラスターIVまたはXIVa Clostridium種で
ある)の割合を増加させる。
【0176】
一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、腸内微生物叢において、Bif
idobacterium(例えば、B bifidum)の割合を低減させる。一例で
は、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、腸内微生物叢において、腸内微生物叢に
おいての割合を増加させる。
【0177】
例えば、ヒト腸内微生物叢を選択的に変更することによって、本発明は、CAR-Tま
たは他のACT処置のアップレギュレーションを提供する(例えば、変化した微生物叢は
、CAR-TまたはACT投与を受けた患者においてTreg細胞をダウンレギュレート
し、および/または、該患者においてTH1および/またはTH17細胞をアップレギュ
レートし、これらの細胞は、例えば、CAR-TまたはACT移植片に含まれている)。
Treg細胞のダウンレギュレーションは、患者においてエフェクターT細胞および/ま
たはヘルパーT細胞の抑制を低減させ、それによって、がんまたは他の疾患を媒介する細
胞に対する、CAR-TまたはACT細胞傷害性、または他の望ましい活性を増強し得る
。TH1および/またはTH17細胞のアップレギュレーションは、エフェクターT細胞
の活性を増加させ、それによって、がんまたは他の疾患を媒介する細胞に対する、CAR
-TまたはACT細胞傷害性、または他の望ましい活性を増強し得る。
【0178】
別の例では、微生物叢の変更は、CAR-Tまたは他のACT処置を弱めるためのスイ
ッチとして用いられ得る(例えば、変化した微生物叢は、CAR-TまたはACT投与を
受けた患者においてTreg細胞をアップレギュレートし、および/または、該患者にお
いてTH1および/またはTH17細胞をダウンレギュレートし、これらの細胞は、例え
ば、CAR-TまたはACT移植片に含まれている)。Treg細胞のアップレギュレー
ションは、患者においてエフェクターT細胞および/またはヘルパーT細胞の抑制を増加
させ、それによって、サイトカイン放出を促進するCAR-TもしくはACTの能力、ま
たは他の望ましくない活性を低減し得る。TH1および/またはTH17細胞のダウンレ
ギュレーションは、エフェクターT細胞活性を減少させ、それにより、サイトカイン放出
を促進するCAR-TもしくはACTの能力、または他の望ましくない活性を低減し得る
。これは、患者における、サイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを制限するのに有
用であり得る。本発明の方法を用いた患者の腸内微生物叢のその後のさらなる改変は、目
の前の疾病または症状(例えば、血液がんなどの、がん)に対処するためにこれをもう一
度使用することが望ましい場合に、CAR-TまたはACT処置をアップレギュレートす
るために行うことができる。この例では、メモリーT細胞CAR-TまたはACT集団は
、より初期の治療から、患者に存在し得、本発明による微生物叢の変更を用いたアップレ
ギュレーションは、メモリーT細胞をアップレギュレートして、エフェクター細胞および
/またはヘルパー細胞に分化させ、疾病または症状に対処し得る。従って、1つの例では
、本発明の細胞療法は、免疫メモリー細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM
)および/またはステムセルメモリー細胞(TSCM)などの、メモリーT細胞)を含む
免疫細胞集団を投与することを含み、および/または、投与される集団は、最初の微生物
叢の変更の後にこれらのメモリー細胞を産生する細胞を含む。
【0179】
本発明の1つの局面は、患者における細胞ベースの治療を調節することに対する有用性
を認識するが、別の局面は、例えば患者のT細胞または他の免疫細胞によって媒介される
、自己免疫疾患および炎症性の疾病および症状などの、患者における細胞媒介性の疾患お
よび症状を調節(すなわち、処置または予防)することに対する有用性を認識する。さら
なる局面では、本発明は、疾病または症状の別の治療を調節(例えば、増強)するための
手段として有用性を認識する。例えば、疾病または症状を治療または予防するために、抗
体または抗ウイルス薬による治療を増強する、または、実施するための手段として有用性
を認識する。例えば、薬は、(例えば、メラノーマまたはNSCLCなどのがんを処置ま
たは予防するための)免疫チェックポイントのアンタゴニストまたはアゴニストであるこ
とができる。「治療を実施する」ことによって、患者が薬に応答しないか、応答が不十分
であり、本発明による微生物叢の変更(例えば、本明細書に記載される、細菌または古細
菌の種の選択的誘導型ヌクレアーゼ標的化を用いた微生物叢の変更)が患者による薬への
応答(または改善された応答)をもたらすことが、企図される。例えば、本発明の方法は
、HIV感染症を患う患者において、Th17細胞をアップレギュレートする。一局面で
は、これは、患者の抗レトロウイルス、または抗HIVワクチン療法を増強する。Th1
7細胞は、患者の内因性細胞であるか、または、患者のACTにより提供された細胞であ
ってよい。別の例では、本発明の方法は、がん(例えば、メラノーマまたはNSCLCな
どの肺癌)を患う患者において、Th17細胞をアップレギュレートする。一局面では、
これは、患者の免疫チェックポイントのアンタゴニズムまたはアゴニズムの治療を増強す
る。Th17細胞は、患者の内因性細胞であるか、または、患者のACTにより提供され
た細胞であってよい。例えば、治療は、イピリムマブ(すなわち、YERVOY商標)、
トレメリムマブ、ニボルマブ(すなわち、OPDIVO商標)、ペンブロリズマブ(すな
わち、KEYTRUDA商標)、ピディリズマブ、BMS-936559、デュルバルマ
ブおよびアテゾリズマブから選択した抗体を用いた抗体療法である。
【0180】
本発明は、植物、酵母、環境、土壌、ヒトまたは動物の微生物叢において、第1の細胞
を標的化するか、または、細菌または古細菌の細胞集団の増殖を阻害することにより前記
ディスバイオシスを引き起こすか、または、細胞の1つ以上の亜集団の相対的割合を変更
するために(例えば、ヒトの腸内微生物叢における、バクテロイデス門(Bactero
idetes)(例えば、Bacteroides)、ファーミキューテス門(Firm
icutes)および/またはグラム陽性またはグラム陰性細菌の割合の変更のために)
、本発明の方法において用いられる、誘導型ヌクレアーゼシステム(例えば、操作された
CRISPR/Casシステム、TALEN、メガヌクレアーゼおよびジンクフィンガー
システム)、アレイ(例えば、CRISPRアレイ)、CRISPRアレイ、cRNA、
gRNAおよびベクター(例えば、前記システムの成分を含むファージ)に関する。本発
明は、例えば、宿主細菌細胞(例えば、バクテロイデス門(Bacteroidetes
)細胞、または、ファーミキューテス門(Firmicutes)細胞、または宿主古細
菌細胞)の1つ以上の標的ゲノムまたはエピソームのヌクレオチド配列を改変(例えば、
切断および/または変異)することを包含する。一例では、第1の細菌は、病原性腸内細
菌である。
【0181】
2つの主な腸内微生物の門、バクテロイデス門(Bacteroidetes)および
ファーミキューテス門(Firmicutes)のそれぞれのレベルが、ヒトおよび無菌
マウスの両方において、肥満症と関連していることを指摘した多数の研究がある。これら
の研究の著者等は、糖代謝が重要な因子であると推測している。彼らは、肥満症患者の微
生物叢は、ファーミキューテス門(Firmicutes)の細菌がより豊富であり、バ
クテロテデス門(Bacteroidetes)の細菌がより少ないことを観察し、彼ら
は、この細菌混合物が、(反対の割合を有する)痩身個体の微生物叢よりも、所与の食餌
からエネルギーを抽出することに、より効率的であり得ると推論する。いくつかの研究に
おいて、彼らは、肥満症患者の体重が減少するにつれて、バクテロイデス門(Bacte
roidetes)の相対的存在量が増加すること、さらに、肥満マウスの微生物が無菌
マウスに移されると、これらのマウスは、痩せたマウスからの微生物叢を受け取ったコン
トロール群よりも脂肪が多くなるこが見出した。例えば、Turnbaugh, P. J., R. E. Ley,
M. A. Mahowald, V. Magrini, E. R. Mardis, and J. I. Gordon. 2006, " An obesity
-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest ", Nature
444:1027―1131を参照されたい。さらなる局面において、本発明は、例えば、微生物叢
においてバクテロイデス門(Bacteroidetes)の、ファーミキューテス門(
Firmicutes)に対する比率を増加させることによって、患者の抗肥満症の治療
を増強するための手段としての有用性を認識する。
【0182】
場合により、第1の細胞は、異なる株または種の細胞の存在下にあり、該異なる細胞は
、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、または、ヒトに対し
て(例えばヒトの腸内で)プロバイオティック(probiotic)、片利共生(co
mmensal)、もしくは相利共生(symbiotic)の細菌である。一例では、
第1の細胞はそれぞれ、ファーミキューテス門(Firmicutes)であり、例えば
、Streptococcusの細胞である。
【0183】
一例では、本発明は、同じ種、または、異なる種にもかかわらず系統学的に関連する種
(16s rDNAによって示される)の第2の関連株を標的としないが、微生物叢の標
的微生物を選択的に死滅させるか、ダウンレギュレートすることができる。例えば、微生
物叢は、第2の細菌種または株、または、古細菌種または株の細胞を含み、第2の種また
は株は、第1の細胞種または株の16sリボソームRNAをコードするDNA配列に、少
なくとも80、85、90、95、96、97、98または99%同一である16sリボ
ソームRNAをコードするDNA配列を有し、微生物叢における第2の細胞の増殖は、前
記方法によって阻害されない。ある実施形態では、第2の株または種の増殖は阻害されな
いか、あるいは、前記第1の細胞の増殖は、第2の細胞の少なくとも2倍、3倍、4倍、
5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、50倍、100倍または1000倍の増殖阻害
によって、阻害される。
【0184】
本方法の一局面において、ディスバイオシスを引き起こすことまたはステップ(b)は
、患者の微生物叢(例えば、腸内微生物叢)において第1の細胞(宿主細胞)の亜集団の
割合を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節する変更された腸内微生物
叢を産生することを含み、ここで、該亜集団は前記第1の種または株の宿主細胞を含み、
本方法は、宿主細胞においてそれぞれの標的配列を切断して、標的配列を改変する、誘導
型ヌクレアーゼ (例えば、RNA誘導型ヌクレアーゼ)を用い、それにより、宿主細胞が
死滅するか、宿主細胞集団の増殖が低下し、それにより、微生物叢における該亜集団の割
合を低減させることを含む。誘導型ヌクレアーゼ切断を実行するための好適なシステムは
、例えば、操作されたCRISPR/Casシステム、TALEN、メガヌクレアーゼお
よびジンクフィンガーシステムである例として、共同体における、選択されたヒト腸内微
生物叢細菌種の、CRISPR/Cas媒介ガイド切断が、本明細書の実施例で実証され
ている。
【0185】
一例では、標的配列の改変は、
a.微生物叢を、宿主改変(HM)crRNAをコードする操作された核酸配列の複数の
コピーと組み合わせること、および
b.宿主細胞においてHM-crRNAを発現させること、
によって実行され、
ここで、操作された各核酸配列は、個々の宿主細胞においてCasヌクレアーゼと作動可
能であり、HM-CRlSPR/Casシステムを形成し、かつ、該操作された配列は、
(i)HM-crRNAをコードする、スペーサーおよびリピート配列;
(ii)宿主細胞の標的配列にハイブリダイズしてCasヌクレアーゼを宿主細胞の標的
配列に誘導することができる配列を含む、HM-crRNA;
を含み、場合により、HM-システムは、tracrRNA配列またはtracrRNA
配列を発現するDNA配列を含み、
それにより、HM-crRNAは宿主細胞において宿主標的配列のCas改変を誘導し、
それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞集団の増殖が低下し、それにより、微生物
叢において前記第1の細胞の割合を低減させる。
【0186】
あるいは、HM-crRNAおよびtracrRNAは、シングルガイドRNA(gR
NA)に含まれる。操作された各核酸配列は、それぞれのベクターに含まれており、各ベ
クターは、場合により、プラスミド(例えば、宿主細胞に移行できる接合性プラスミド)
、ファージ、ファージミド、またはプロファージである。ファージは、前記宿主細胞に感
染することができる。
【0187】
一例では、宿主細胞の内因性Casヌクレアーゼが、標的ヌクレオチド配列の改変のた
めに用いられる。ある実施形態では、それゆえ、各ベクターは、Cas(例えば、Cas
9)ヌクレアーゼをコードする配列を欠いている。内因性Casヌクレアーゼを利用する
ことによって、本発明の実施形態は、内因性Casヌクレアーゼ活性を使用する(すなわ
ち、ヌクレアーゼ活性を活性化または増強するために、あらかじめ宿主細胞の遺伝子改変
を行う必要がない)。従って、一例では、Casヌクレアーゼは、宿主細胞の野生型遺伝
子にコードされている。一例では、ヌクレアーゼは活性であり、宿主細胞における内因性
Casヌクレアーゼ(または、Casヌクレアーゼ遺伝子)リプレッサーを阻害すること
なく、細胞の死滅または増殖低下を達成する。従って、本発明は、あらかじめ操作する必
要なく、野生型細菌集団に対処して、効果的なCas媒介性の細胞の死滅または増殖低下
をもたらすことができる。従って、該集団は、その野生型環境にある場合(例えば、植物
、酵母、環境、土壌、ヒト、または動物のマイクロバイオームに含まれる場合)、cRN
Aにさらすことができる。
【0188】
一例では、cRNAまたはgRNAは、粘膜、腸内、経口、鼻腔内、直腸内、または頬
側投与により、ヒトまたは非ヒト動物患者へ投与するためのものである(あるいは、投与
される)。
【0189】
場合により、前駆Casヌクレアーゼは、各第1の細胞の、内因性タイプII CRI
SPR/Casシステムによって提供される。場合により、tracrRNA配列、また
は、tracrRNA配列を発現するDNA配列は、各宿主細胞に内因性である。場合に
より、各標的配列は、それぞれの宿主細胞の抗生物質耐性遺伝子、病原性遺伝子 または
必須遺伝子に含まれ、例えば、標的配列は、宿主細胞間で同一である。場合により、操作
された核酸配列は抗生物質組成物に含まれ、該配列は、抗生物質製剤(第1の抗生剤)と
組み合わせられ、また、一例では、標的配列は抗生物質耐性遺伝子に含まれ、抗生物質は
前記第1の抗生剤である。抗生物質組成物は、患者または対象に投与され、前記ディスバ
イオシスまたはステップ(b)をもたらす。
【0190】
場合により、各宿主細胞は、目的のHM配列をコードする遊離末端を有するデオキシリ
ボ核酸鎖(HM-DNA)を含み、および/または、ここで、該方法は、HM-DNAを
コードする当該配列を宿主細胞に含み、HM-DNAは、HM-DNAを宿主ゲノムに(
例えば、染色体の部位またはエピソームの部位に)挿入するための標的配列の内部または
隣接する配列にそれぞれ相同な1つまたは複数の配列を含む。
【0191】
本発明はまた、本発明の処置または予防方法を実行するために第1の細胞(宿主細胞)
に導入するためのベクターを提供し、各ベクターは、内因性CRISPR/Casシステ
ムを含む細菌または古細菌宿主細胞を改変するための操作された核酸ベクターであって、
該ベクターは、ディスバイオシスを引き起こすのに用いるための、または、本方法のステ
ップ(b)において用いるための、複数の異なるcrRNA(例えば、gRNA)を発現
するための核酸配列を含み、場合により、Casヌクレアーゼをコードする核酸配列を欠
き、
ここで、第1の前記crRNAは、前記宿主細胞において第1の核酸配列にハイブリダイ
ズすることができ、第2の前記crRNAは、前記宿主細胞において第2の核酸配列にハ
イブリダイズすることができ、ここで、前記第2の配列は前記第1の配列と異なり;かつ
a.第1の配列は抗生物質耐性遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、第2の配列
は抗生物質耐性遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、場合により、これらの遺伝
子は異なり、
b.第1の配列は抗生物質耐性遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、第2の配列
は必須遺伝子または病原性遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、
c.第1の配列は必須遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、第2の配列は、必須
遺伝子または病原性遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、あるいは、
d.第1の配列は病原性遺伝子(またはそのRNA)に含まれており、第2の配列は必須
遺伝子または病原性遺伝子(またはそのRNA)に含まれている。
【0192】
各ベクターは、上述の通り、例えば、宿主細胞に感染することができるファージ、また
は、宿主細胞に導入することができる接合性プラスミドであってよい。一例では、ベクタ
ーは、抗生物質製剤(例えば、βラクタム抗生剤)と組み合わせられる。
【0193】
第1の細胞(宿主細胞)はそれぞれ、Staphylococcus、Strepto
coccus、Pseudomonas、Salmonella、Listeria、E
coli、DesulfovibrioまたはClostridium宿主細胞であっ
てよい。一例では、第1の細胞(宿主細胞)はそれぞれ、ファーミキューテス門(Fir
micutes)細胞であり、例えば、Staphylococcus、Strepto
coccus、ListeriaまたはClostridium細胞である。
【0194】
一例では、操作された各核酸配列は、宿主細胞におけるそれぞれのcrRNAの発現ま
たは生産のための配列R1-S1-R1’を含み(例えば、シングルガイドRNAに含ま
れる)、(i)式中、R1は第1のCRISPRリピートであり、R1’は第2のCRI
SPRであり、R1またはR1’は任意であり;かつ(ii)S1は、前記標的配列に9
5%以上同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれから成る第1のCRISPR
スペーサーである。
【0195】
一例では、R1およびR1’は、それぞれ、宿主細胞種のCRISPRアレイの第1お
よび第2のリピート配列に、少なくとも95%同一である。一例では、R1およびR1’
は、それぞれ、前記種、例えば前記種の前記宿主細胞の、のCRISPRアレイの、第1
(最も5’側)および第2(第1のリピートの3’側すぐ)のリピート配列に、少なくと
も95%(例えば、96、97、98、99または100%)同一である。一例では、R
1およびR1’は、タイプIICas9ヌクレアーゼ(例えば、S thermophi
lus、S pyogenesまたはS aureusのCas9)またはタイプICa
s3と共に機能して、前記宿主細胞において標的を改変する。
【0196】
一局面では、実施例の実験例により実証されているように、本方法は以下の使用を包含
する。
【0197】
第1の細胞(宿主細胞)集団の野生型内因性Casヌクレアーゼ活性の、前記集団の増
殖を阻害するための使用であって、各宿主細胞は、野生型Casヌクレアーゼ活性を有す
る内因性CRISPR/Casシステムを有し、該使用は該集団の宿主細胞を形質転換す
ることを含み、ここで、各形質転換宿主細胞は、宿主細胞において宿主改変(HM)cR
NAまたはガイドRNA(gRNA)を提供するために遺伝子操作されたヌクレオチド配
列で形質転換され、HM-cRNAまたはgRNAは、内因性Casを標的に誘導するた
めに宿主細胞標的プロトスペーサー配列とハイブリダイズすることができる配列を含み、
ここでcRNAまたはgRNAは、前記野生型ヌクレアーゼ活性を有する宿主細胞の内因
性Casヌクレアーゼとコグネイトであり、宿主細胞の形質転換後、集団の増殖が阻害さ
れる、使用を包含する。
【0198】
「コグネイトの」とは、内因性Casが、crRNAまたはgRNAと作動可能であり
、宿主細胞の標的へと誘導されることを意図している。当業者であれば、このCas誘導
が、一般的に、細菌および古細菌細胞における、CRISPR/Cas活性の特徴であり
、例えば、内因性の活性野生型CRISPR/Casシステムを有する細菌または古細菌
の細胞における、野生型CRISPR/Cas活性の特徴であることは、理解するであろ
う。
【0199】
「野生型」Cas活性とは、当業者には明らかであろうが、内因性Casが操作された
Casではないこと、または、細胞が内因性Cas活性を抑制解除するように操作されて
はいないことを意図している。これは、Casヌクレアーゼ活性が天然に抑制されている
特定の細菌とは対照的である(すなわち、野生型Casヌクレアーゼ活性は存在しないか
、または本発明に有用な野生型Casヌクレアーゼ活性は存在せず、反対に、in situで
野生型宿主細胞に対処することに適用可能であり、例えば、内因性Cas活性が細胞集団
増殖阻害をもたらすために利用できる場合が挙げられる)。
【0200】
以下の実施例では、固体表面上の細菌集団(グラム陽性ファーミキューテス門(Fir
micutes))において、阻害を調べた。宿主細胞集団の増殖の、10倍を超える阻
害が達成された。標的化は、抗生物質耐性遺伝子および必須遺伝子を対象とした。表面上
の宿主細胞増殖を阻害する本発明の能力の実証は、実施形態において、重要かつ望ましく
、ここで、本発明はヒトまたは動物対象において本明細書に開示される微生物叢によって
媒介または引き起こされる疾病または症状を処置または予防するためのものである。該微
生物叢は、典型的には、対象の組織(例えば、腸組織)と接触しており、従って、表面上
の微生物叢の細菌種(Streptococcusが例示される)の増殖を阻害する活性
の実証は、この有用性を支持すると我々は信じている。 植物表面の微生物叢の標的化も
また、望ましい適用である。
【0201】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)集団の増殖の阻害は、前記の操作されたヌクレオチ
ド配列にさらされていない同じ種または株の細胞の増殖と比較して、少なくとも、2、3
、4、5、6、7、8、9または10倍である。例えば、増殖阻害は、宿主細胞の第1の
サンプル(単独、または混合細菌集団であって、例えば、処置後の患者の微生物叢または
糞便サンプル)の細菌のコロニー数が、宿主細胞の第2のサンプル(単独、または混合細
菌集団であって、例えば、処置前の患者の微生物叢または糞便サンプル)のコロニー数と
比較して、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍低いことにより示
され、ここで、第1の細胞は、前記操作されたヌクレオチド配列により形質転換されてい
るが、第2のサンプルは、前記操作されたヌクレオチド配列に曝されていない。ある実施形態では、コロニー数は、第1のサンプルが操作された配列にさらされてから、12、24、36、または48時間後に決定される。ある実施形態では、コロニーは、インビトロで(例えば、ペトリ皿にて)固体寒天上で増殖する。それゆえ、増殖阻害は、第1の細胞または集団(宿主細胞または集団)の増殖の低下(処置なし、すなわち、コントロールサンプルの増殖と比較して100%を下回る増殖)により示され得ること、または、該増殖の完全な消失であり得ることは、理解されるであろう。一例では、宿主細胞集団の増殖は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90または95%低下し、すなわち、所定の期間にわたって(例えば、宿主細胞におけるcRNAまたはgRNA、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーなどの組み合わせ後の24時間または48時間)、宿主細胞集団の増殖が、前記cRNAまたはgRNA等に曝されていないが、前記所定の期間継続して同じ条件に置かれたコントロール宿主細胞集団の増殖と比較して、少なくとも当該パーセント低い。一例では、増殖の低下率は、前記期間の終わり(例えば、コントロールサンプルの対数増殖期中期の時点)に各集団のサンプルのコロニー数を比較することによって決定される。例えば、テスト集団を、O時間にcrRNAまたはgRNA等に曝した後、テスト集団およびコントロール集団のサンプルを採取して、各サンプルを寒天プレート上にプレーティングし、前記所定の期間、同一条件下でインキュベートする。所定の期間の終わりに、各サンプルのコロニー数をカウントして、増減率を計算する(すなわち、テストコロニー数をコントロールコロニー数で除して、100を掛け、その結果を100から引いて増殖低下率を求める)。倍数差は、コントロールコロニー数を、テストコロニー数で除して、計算する。
【0202】
集団の増殖阻害は、集団における第1の細胞(宿主細胞)の増殖数における低下により
示され得る。これは、ヌクレアーゼによる細胞の死滅および/または標的プロトスペーサ
ー配列に対するヌクレアーゼの作用による宿主細胞増殖(分裂および/または細胞増殖)
のダウンレギュレーションによる可能性がある。本明細書に開示される処置または予防の
ある実施形態では、ヒトまたは動物対象の宿主細胞負荷が減少し、それによって疾病また
は症状が処置される(例えば、軽減または除去される)か、または予防される(すなわち
、対象が疾病または症状を発症するリスクが軽減または除去される。)
【0203】
一例では、野生型宿主細胞内因性Cas9またはcfp1活性が用いられる。一例では
、野生型宿主細胞内因性Cas3および/またはCASCADE活性が用いられる。操作
されたヌクレオチド配列は、外因性のCasヌクレアーゼをコードする配列と組み合わせ
てはならない。場合により、前記Casヌクレアーゼはニッカーゼである。
【0204】
一例では、前記宿主細胞の細菌コロニーの形成は、前記ディスバイオシスまたはステッ
プ(b)に続いて阻害される。一例では、宿主細胞の増殖は、前記ディスバイオシスまた
はステップ(b)に続いて阻害される。一例では、宿主細胞は、前記ディスバイオシスま
たはステップ(b)に続いて死滅する。
【0205】
別の局面において、本方法は、疾病または症状を処置または予防するための前記ディス
バイオシスを引き起こすことまたはステップ(b)のための、患者へ投与するための医薬
をエクスビボで生産することを含み、該医薬は改変された混合細菌集団(例えば、1つ以
上のヒトドナーまたは前記患者の糞便または腸内微生物叢から得られる)を含み、該改変
された集団は、患者に投与され、前記ディスバイオシスを引き起こすか、または、ステッ
プ(b)において患者の腸内微生物叢における種または株のバランスを変更し、それによ
り、腸内微生物叢における第1の細胞の割合を変更する。改変された混合集団は、本明細
書に記載される誘導型ヌクレアーゼ改変技術を用いて、エクスビボで生産され得る。従っ
て、例えば、本方法は、例えば、本明細書に開示される代謝性の、またはGIの症状また
は疾病の処置または予防のための医薬の生産のために、混合集団において、特定のファー
ミキューテス門(Firmicutes)亜集団の割合を低減し、バクテロイデス門(B
acteroidetes)を温存するために用いられ得る。このように、本発明は、ヒ
トまたは動物における、これらの使用または、当該処置または予防のための、改変された
細菌移植片(例えば、改変された糞便移植片)の医薬を使用するとができる。例えば、本
方法は、医薬的使用(例えば、代謝性の症状(肥満症または糖尿病)または、消化管の症
状(例えば、本明細書に記載の任意の当該症状)、またはがん(例えば、消化管がん)の
処置または予防)のためにヒトまたは動物に投与するための、改変された細菌コレクショ
ンを生産するために、1つ以上の微生物叢をインビトロで改変するのに用いられ得る。一
例では、本明細書に記載される操作された各核酸配列を含むファージまたはプラスミドベ
クターによる細菌細胞の形質転換が、インビトロで実行されるか、または、操作されたヌ
クレオチド配列が、宿主細胞にエレクトロポレーションされる核酸に含まれる。一例では
、核酸はRNA(例えば、gRNAのコピー)である。別の例では、核酸は、宿主細胞に
おいて発現するための、crRNAまたはgRNAをコードするDNAである。
【0206】
従って、一例では、本発明は、本発明の方法において用いられる植物、酵母、環境、土
壌、ヒトまたは動物対象に含まれる野生型細菌宿主細胞の集団において、宿主細胞改変(
HM)cRNAまたはガイドRNA(gRNA)を提供するための操作されたヌクレオチ
ド配列提供し、該cRNAまたはgRNAは、Casを標的に誘導するための宿主細胞標
的プロトスペーサー配列にハイブリダイズすることができる配列を含み、該cRNAまた
はgRNAは、野生型ヌクレアーゼ活性を有する内因性宿主細胞Casヌクレアーゼにコ
グネイトであり、宿主細胞の形質転換後に、集団の増殖が阻害され、かつ、疾病または症
状が処置または予防されるか、あるいは、治療または処置が調節される。
【0207】
一例では、操作されたヌクレオチド配列は、HM-CRISPRアレイを含む。一例で
は、操作されたヌクレオチド配列は、シングルガイドRNAをコードする。一例では、操
作されたヌクレオチド配列は、ガイドRNA(例えば、シングルガイドRNA)、または
、crRNAである。一例では、操作された配列は宿主細胞に感染することができるバク
テリオファージに含まれており、ここで、形質転換は、バクテリオファージによる宿主細
胞の形質導入を含む。バクテリオファージは、本明細書に記載されるファージであり得る
。一例では、操作されたヌクレオチド配列は、宿主細胞を形質転換することができるプラ
スミド(例えば、接合性プラスミド)に含まれる。該プラスミドは、本明細書に記載され
るプラスミドであり得る。一例では、操作されたヌクレオチド配列は、宿主細胞に、およ
び/または、宿主細胞間を、移行することができるトランスポゾンに含まれる。トランス
ポゾンは、本明細書に記載されるトランスポゾンであり得る。
【0208】
本発明の方法はいずれも、細胞においてcRNAまたはgRNAを生産するために、宿
主細胞を核酸で形質転換することを含む。例えば、操作されたヌクレオチド配列を含むベ
クターまたは核酸は、経口的に、静脈内に、局所的に、眼に、鼻腔内に、吸入により、直
腸投与により、または本明細書で開示される任意の他の投与経路により、または他の方法
で、患者に投与され、ここで、投与は、第1の細胞(宿主細胞)を、ベクターまたは核酸
で形質転換する。
【0209】
一例では、第1の細胞は、患者または対象の微生物叢において、第2の細菌と混合され
る。場合により、第2の細菌種は、以下の実施例に示されるように、E coli、L
lactisまたはS thermophilusであり、ヒトおよび動物の腸内微生物
叢において、相利共生的に共存する株である。実施例はまた、グラム陽性細菌およびグラ
ム陰性細菌の混合集団における標的化に対処している。さらに、実施例は、ファーミキュ
ーテス門(Firmicutes)の集団(S thermophilus)、および、
エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)の集団(E coli)
に対処しており、これらは共に、ヒトの微生物叢に見られる。エンテロバクター科(En
terobacteriaceae)の他の例は、Salmonella、Yersin
ia pestis、Klebsiella、Shigella、Proteus、En
terobacter、SerratiaおよびCitrobacterである。
【0210】
一例では、症状または疾病は、代謝性の、または胃腸の疾病または症状であり、例えば
、肥満症、IBD、IBS、クローン病または潰瘍性大腸炎である。一例では、症状また
は疾病は、がんであり、例えば、固形腫瘍、すなわち、GIがん(例えば、胃がん)、肝
臓がん、または膵臓がんである。一例では、症状は、抗生物質(例えば、本明細書に開示
される任意の抗生物質)に耐性であるか、応答性が低下している。
【0211】
一例では、各第1の細胞(宿主細胞)は、細胞における前記HM-crRNAの生産に
おいて、操作された配列で作動可能な内因性RNaseIIIを含む。代替としては、1
つ以上のベクターが、宿主細胞におけるRNaseIIIの発現のために、該RNase
IIIをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0212】
一例では、必須遺伝子(標的を含む)は、細胞のDNAポリメラーゼを含む。これは、
以下に例示されている。
【0213】
一例では、cRNAまたはgRNAは、NGG、NAG、NGA、NGC、NGGNG
、NNGRRTまたはNNAGAAWプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、例えば
、AAAGAAAまたはTAAGAAA PAM(これらの配列は、5’から3’の方向
で記載されている)に隣接する、宿主細胞の標的プロトスペーサー配列にハイブリダイズ
することができる配列を含む。ある実施形態では、PAMは、プロトスペーサー配列の3
’末端に直接隣接している。一例では、CasはS aureus、S theromo
philusまたはS pyogenesのCasである。一例では、Casは、Cpf
1であり、および/または、PAMは、TTNまたはCTAである。
【0214】
一例では、操作されたヌクレオチド配列またはベクターはそれぞれ、前記crRNAま
たはgRNAをコードする前記CRISPRアレイまたは配列を含み、さらに、抗生物質
耐性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性)を含み、ここで、HM-crRNAまたはgR
NAは、抗生物質耐性遺伝子を標的としない。一例では、標的配列は、宿主細胞の抗生物
質耐性遺伝子に含まれており、該抗生物質は、第1の抗生物質(例えば、カナマイシン)
とは異なる。このように、操作された配列またはベクターは、それ自身を標的とせずに、
宿主を標的とすることができる。宿主細胞を、第1の抗生物質にさらすことによって(例
えば、患者に対して、経口的に、または、静脈内に投与することによって)、ポジティブ
選択圧によって操作された配列またはベクターの保持を促進することができる。なぜなら
、第1の抗生物質耐性遺伝子を含む細胞は、第1の抗生物質の存在下で生存に有利になる
であろうからである(操作された配列またはベクターによって形質転換されていない宿主
細胞が、第1の抗生物質に耐性でない場合)。従って、ある例では、以下を提供する:宿
主細胞におけるcRNAまたはgRNAをコードする配列の維持を促進するための、第1
の(宿主)細胞集団を前記抗生物質(例えば、カナマイシン)および前記操作された配列
またはベクターに曝露することを含む本発明の方法;あるいは、本発明の操作された配列
、アレイまたはベクターは前記抗生物質と組み合わされている。
【0215】
一例では、cRNAまたはgRNAをコードする配列は、宿主細胞の種において作動可
能な構成的プロモーター(例えば、強力なプロモーター)、または、誘導性プロモーター
の下にある。
【0216】
一例では、当該またはそれぞれの第一の(宿主)細胞はグラム陽性細胞である。別の例
では、当該またはそれぞれの第一の(宿主)細胞はグラム陽性細胞である。
【0217】
本発明はまた、本方法を実行した後に患者から腸内微生物叢を単離することによって、
または、本方法を実行した後に患者から糞便サンプルを単離することによって、本方法に
より得られる微生物叢細菌のエクスビボ混合集団を提供する。一例では、混合集団は、医
薬的使用または栄養的使用のための容器に入っている。例えば、容器は滅菌容器であり、
例えば、吸入器、鼻腔内送達装置であり、または、シリンジまたは静脈注射用針に連結さ
れている。一例では、混合集団は、疾病または症状(例えば、本明細書中に開示される疾
病または症状)を処置するために、そのマイクロバイオームを生息させるための、ヒトま
たは動物への投与に有用である。
【0218】
本明細書において、一例では、Bacteroidesは、caccae、capil
losus、cellulosilyticus、coprocola、coproph
ilus、coprosuis、distasonis、dorei、eggerthi
i、faecis、finegoldii,fluxus、fragalis、inte
stinalis、melaninogenicus、nordii、oleicipl
enus、oralis、ovatus、pectinophilus、plebeiu
s、stercoris、thetaiotaomicron、uniformis、v
ulgatusおよびxylanisolvensから選択される種である。例えば、B
acteroidesは、thetaiotaomicronである。一例では、第1の
(宿主細胞)集団または第2の細菌は、複数の異なるバクテロイデス門(Bactero
idetes)の種、または、複数のBacteroides種(例えば、B thet
aiotaomicronおよびB fragalis)、または、Bacteroid
esおよびPrevotella種を含む。本明細書において、一例では、Prevot
ellaは、bergensis、bivia、buccae、頬側is、copri、
melaninogenica、oris、ruminicola、tannerae、
timonensis およびveroralisから選択される種である。あるいは、
第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、ファーミキューテス門(Firmicut
es)の細胞であり、例えば、Anaerotruncus、Acetanaeroba
cterium、Acetitomaculum、Acetivibrio、Anaer
ococcus、Anaerofilum、Anaerosinus、Anaerost
ipes、Anaerovorax、Butyrivibrio、Clostridiu
m、Capracoccus、Dehalobacter、Dialister、Dor
ea、Enterococcus、Ethanoligenens、Faecaliba
cterium、Fusobacterium、Gracilibacter、Gugg
enheimella、Hespellia、Lachnobacterium、Lac
hnospira、Lactobacillus、Leuconostoc、Megam
onas、Moryella、Mitsuokella、Oribacterium、O
xobacter、Papillibacter、Proprionispira,Ps
eudobutyrivibrio、Pseudoramibacter、Rosebu
ria、Ruminococcus、Sarcina、Seinonella、Shut
tleworthia、Sporobacter、Sporobacterium、St
reptococcus、Subdoligranulum、Syntrophococ
cus、Thermobacillus、TuribacterおよびWeisella
から選択される1つ以上のファーミキューテス門(Firmicutes)を含むか、こ
れらから成る。一例では、第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、Clostri
dium(例えば、dificile)細胞を含むか、これらから成る(また、場合によ
り、他の亜集団はBacteroides(例えば、thetaiotaomicron
)細胞から成る)。一例では、第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、Enter
ococcus細胞を含むか、これらから成る(また、場合により、他の細胞はBact
eroides(例えば、thetaiotaomicron)細胞からなる)。一例で
は、第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、Enterococcus細胞を含む
か、これらから成る(また、場合により、他の細胞はBacteroides(例えば、
thetaiotaomicron)細胞からなる)。一例では、第1の細胞(宿主細胞
)または第2の細菌は、Ruminococcus細胞を含むか、これらから成る(また
、場合により、他の細胞はBacteroides(例えば、thetaiotaomi
cron)細胞からなる)。一例では、第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、S
treptococcus細胞を含むか、これらから成る(また、場合により、他の細胞
はBacteroides(例えば、thetaiotaomicron)細胞からなる
)。一例では、第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、Faecalibacte
rium細胞を含むか、これらから成る(また、場合により、他の細胞はBactero
ides(例えば、thetaiotaomicron)細胞からなる)。例えば、Fa
ecalibacteriumは、Faecalibacterium prausni
tzii(例えば、A2-165、L2-6、M21/2またはSL3/3)である。
【0219】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)または第2の細菌は、Streptococcus
細胞(場合によりS thermophilusおよび/またはpyogenes細胞)
からなり、第2の細菌は、Bacteroides(例えば、thetaiotaomi
cron)および/またはエンテロバクター科(Enterobacteriaceae
)(例えば、E coli)細胞からなる。
【0220】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、ヒト、動物(例えば、非ヒト動物)、または植
物の、感染性の疾病の病原体である。
【0221】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、scherichia(例えば、E coli
O157:H7またはO104:H4)、Shigella(例えば、dysente
riae)、Salmonella(例えば、typhiまたはenterica、例え
ば、serotype typhimurium、例えば、DT 104)、Erwin
ia、Yersinia(例えば、pestis)、Bacillus、Vibrio、
Legionella(例えば、pneumophilia)、Pseudomonas
(例えば、aeruginosa)、Neisseria(例えば、gonnorrho
eaまたはmeningitidis)、Bordetella(例えば、pertus
sus)、Helicobacter(例えば、pylori)、Listeria(例
えば、monocytogenes)、Agrobacterium、Staphylo
coccus(例えば、aureus、例えば、MRSA)、Streptococcu
s(例えば、pyogenesまたはthermophilus)、Enterococ
cus、Clostridium(例えば、dificileまたはbotulinum
)、Corynebacterium(例えば、amycolatum)、Mycoba
cterium(例えば、結核)、Treponema、Borrelia(例えば、b
urgdorferi)、Francisella、Brucella、Campylo
bacter(例えば、jejuni)、Klebsiella(例えば、pneumo
niae)、Frankia、Bartonella、Rickettsia、Shew
anella、Serratia、Enterobacter、Proteus、Pro
videncia、Brochothrix、Bifidobacterium、Bre
vibacterium、Propionibacterium、Lactococcu
s、Lactobacillus、Pediococcus、Leuconostoc、
Vibrio(例えば、コレラ、例えば、O139、またはvulnificus)、H
aemophilus(例えば、influenzae)、Brucella(例えば、
abortus)、Franciscella、Xanthomonas、Erlich
ia(例えば、chaffeensis)、Chlamydia(例えば、pneumo
niae)、Parachlamydia、Enterococcus(例えば、fae
calisまたはfaceim、例えば、リネゾイド耐性)、Oenococcusおよ
びAcinetoebacter(例えば、baumannii、例えば、多剤耐性の)
の種から選択される。
【0222】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、例えば、メチシリン、バンコマイシン耐性およ
びテイコプラニンから選択される抗生物質に耐性である、Staphylococcus
aureus細胞である。
【0223】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Pseudomonas aeurogino
sa細胞であり、例えばセファロスポリン(例えば、セフタジジム)、カルバペネム(例
えばイミペネムまたはメロペネム)、フルオロキノロン、アミノグリコシド(例えばゲン
タマイシンまたはトブラマイシン)およびコリスチンから選択される抗生物質に耐性であ
る。
【0224】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Klebsiella(例えば、pneumo
niae)細胞であり、例えば、カルバペネムに耐性である。
【0225】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Streptoccocus(例えば、pne
umoniaeまたはpyogenes)細胞であり、例えば、エリスロマイシン、クリ
ンダマイシン、βラクタム、マクロライド、アモキシシリン、アジスロマイシンおよびペ
ニシリンから選択される抗生物質に耐性である。
【0226】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Salmonella(例えば、seroty
pe Typhi)細胞であり、例えば、セフトリアキソン、アジスロマイシンおよびシ
プロフロキサシンから選択される抗生物質に耐性である。
【0227】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)はShigella細胞であり、例えば、シプロフ
ロキサシンおよびアジスロマイシンから選択される抗生物質に耐性である。
【0228】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、mycobacterium tubercu
losis細胞であり、例えば、イソニアシド(INH)、リファンピシン(RMP)、
フルオロキノロン、アミカシン、カナマイシンおよびカプレオマイシンに対する耐性から
選択される抗生物質に耐性である。
【0229】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Enterococcus細胞であり、例えば
、バンコマイシン耐性である。
【0230】
全ての宿主細胞がエンテロバクター科(Enterobacteriaceae)細胞
であり、セファロスポリンおよびカルバペネムから選択される抗生物質に耐性である、請
求項13に記載の方法。
【0231】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)はE.coli細胞であり、例えば、トリメトプリ
ム、ニトロフラントイン(itrofurantoin)、セファレキシンおよびアモキ
シシリンから選択される抗生物質に耐性である。
【0232】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Clostridium(例えば、dific
ile)細胞であり、例えば、フルオロキノロン抗生物質およびカルバペネムから選択さ
れる抗生物質に耐性である。
【0233】
一例では、第1細胞(宿主細胞)は、Neisseria gonnorrhoea細
胞であり、例えば、セフィキシム(例えば、経口セファロスポリン)、セフトリアキソン
(注射用セファロスポリン)、アジスロマイシンおよびテトラサイクリンから選択される
抗生物質に耐性である。
【0234】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Acinetoebacter bauman
nii 細胞であり、例えば、βラクタム、メロペネムおよびカルバペネムから選択され
る抗生物質に耐性である。
【0235】
一例では、第1の細胞(宿主細胞)は、Campylobacter細胞であり、例え
ば、シプロフロキサシンおよびアジスロマイシンから選択される抗生物質に耐性である。
【0236】
一例では、第2の種または株は、ヒト腸内片利共生種または株、および/または、ヒト
腸内プロバイオティック種または株である。
【0237】
一例では、第2の種または株は、バクテロイデス門(Bacteroidetes)(
例えば、Bacteroides)であり、場合により、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞
である。
【0238】
一例では、第1の細胞は、ファーミキューテス門(Firmicutes)の細胞であ
る。
【0239】
一例では、前記ディスバイオシスを引き起こすことまたはステップ(b)は、患者の微
生物叢に、前記免疫細胞集団と同時に、または連続して、抗細菌剤または抗古細菌剤を投
与することにより、第1の細胞の亜集団を標的化することによって実行され、それにより
、第1の細胞が死滅するか、該亜集団の増殖が低下し、それにより、患者の腸内微生物叢
における前記亜集団の割合を低減させる。
【0240】
一例では、本方法は、第1の(宿主)細胞集団の増殖を、前記誘導型ヌクレアーゼ(例
えば、Cas)の改変を受けていない宿主細胞のコントロール集団の増殖と比較して、少
なくとも5、10、20、50、または100倍低下させる。
【0241】
一例では、本方法は、腸表面における宿主細胞集団の増殖を阻害する。
【0242】
一例では、各宿主細胞について、本システムは、(i)~(iv)に記載の成分を含む
:
(i)Casヌクレアーゼをコードする、少なくとも1つの核酸配列;
(ii)HM-crRNAをコードするスペーサーおよびリピート配列を含む操作された
HM-CRISPRアレイであって、該HM-crRNAは、宿主細胞の標的配列にハイ
ブリダイズして前記Casを宿主細胞における標的に誘導して標的配列を改変する配列を
含む;
(iii)任意のtracrRNA配列、または、tracrRNA配列を発現するDN
A配列;
(iv)ここで、本システムの前記成分は、宿主細胞と宿主細胞を形質転換する少なくと
も1つの核酸ベクターとの間で分割され、それによってHM - crRNAはCasを標
的に誘導して、宿主細胞における宿主標的配列を改変する;および
ここで、該標的配列はCasにより改変され、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主
細胞の増殖が低下する;
本方法は、(iv)のベクターを宿主細胞へ導入することおよび宿主細胞において前記H
M-crRNAを発現することを含み、HM-cRNAが宿主細胞の標的配列にハイブリ
ダイズしてCasを宿主細胞における標的に誘導して標的配列を改変することを可能にし
、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞の増殖が低下し、それにより、微生物叢
における前記亜集団の割合を変更する。
【0243】
一例では、成分(i)は、各宿主細胞に内因性である。
【0244】
一例では、各ベクターは、ウイルスまたはファージである。
【0245】
一例では、各標的配列は、NNAGAAWまたはNGGNGプロトスペーサー隣接モチ
ーフ(PAM)に隣接している。
【0246】
一例では、あるいは、HM-crRNAおよびtracrRNAは、シングルガイドR
NA(gRNA)に含まれ、本方法は、前記gRNAを宿主細胞に導入すること、または
、宿主細胞において該gRNAを発現することを含む。
【0247】
一例では、微生物叢は、第2の細菌または古細菌の種を含み、第1および第2の種はそ
れぞれ同じ門の種(例えば、共にファーミキューテス門(Firmicutes)種)で
あり、第2の細菌の増殖はHM-システムによって阻害されないか;または、微生物叢が
第2の細菌または古細菌の株を含み、第1および第2の細菌または古細菌はそれぞれ同じ
種の株であり、第2の細菌または古細菌の増殖はHM-システムによって阻害されない。
【0248】
一例では、微生物叢は、第2の細菌種を含み、第1および第2の種はそれぞれグラム陽
性種であり、第2の細菌の増殖はHM-システムによって阻害されない。
【0249】
一例では、各標的配列は、宿主細胞の、抗生物質耐性遺伝子、病原性遺伝子、または必
須遺伝子に含まれる。
【0250】
一例では、各第1の細胞は、Staphylococcus、Streptococc
us、Pseudomonas、Salmonella、Listeria、E col
i、Desulfovibrio、VibrioまたはClostridium細胞であ
る。
【0251】
一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、腸のBacteroides(
例えば、B thetaiotamicron)により患者のパネート細胞を刺激するこ
とを含み、ここで、ディスバイオシスまたはステップ(b)により産生された変化した微
生物叢は、ディスバイオシスまたはステップ(b)の前の微生物叢と比較して、増加した
割合のBacteroidesの第1の細菌を含み、それにより、パネート細胞が刺激さ
れ、細胞療法が調節される。
【0252】
Bacteroidesは、パネート細胞タンパク質の発現に影響を及ぼし得る。小腸
陰窩には、死滅して絨毛から失われる上皮細胞を絶えず補充する働きをする幹細胞がある
。パネート細胞(好中球に類似する免疫系細胞)は、これらの幹細胞に隣接しており、多
くの抗菌分子(デフェンシン)を陰窩の内腔に分泌することにより、微生物から幹細胞を
保護しており、これらの保護効果が、絨毛に移動した成熟細胞にまで及ぶことも可能であ
る。動物モデルにおいて、B.thetaiotaomicronは、特定の病原性生物
(例えば、Listeria monocytogenes)を死滅することができる抗
菌性のパネート細胞タンパク質(Ang4)の生産を刺激することができる。Liste
ria monocytogenesは強力なTH1細胞誘導因子であり、したがって、
これは、本発明の特定の局面においてパネート細胞を刺激することによって、TH1から
TH17などの他の細胞型へ免疫を歪めるために有用であり得る。これは、本発明の免疫
細胞療法を増加または増強させるために有用であり得る。例えば、これは、本発明は、T
h17ベースの細胞療法(例えば、CAR-Th17細胞)を患者に投与することを含む
場合に、有用であり得る。
【0253】
一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、患者において腸Bactero
ides(例えば、B thetaiotamicron)に対する免疫応答を発達させ
ることを含み、ここで、ディスバイオシスまたはステップ(b)により産生された変化し
た微生物叢は、ディスバイオシスまたはステップ(b)の前の微生物叢と比較して、増加
した割合のBacteroidesの第1の細菌を含み、それにより、細胞療法が調節さ
れる。
【0254】
一例では、ディスバイオシスまたはステップ(b)は、患者の腸内微生物叢において、
第1の細胞の相対的割合または前記亜集団を変更し、それにより、患者において免疫細胞
療法を調節する変更された腸内微生物叢を産生することを含み、ここで、ディスバイオシ
スまたはステップ(b)は、亜集団に含まれる第1の細胞のゲノムを標的とする誘導型ヌ
クレアーゼを用いることにより、前記亜集団の第1の細胞を死滅させるか、前記亜集団の
増殖を阻害することを含む。
【0255】
本発明はまた、本発明の方法を用いて、患者において疾病または症状を治療するために
患者へ投与するための、細菌または古細菌の移植片を提供する。場合により、移植片は、
前記第1の種の細胞を含む。場合により、移植片は、前記第2の種の細胞を含む(かつ、
例えば、第1の種の細胞を含まない)。
【0256】
本発明はまた、本発明の方法を用いて、それらの処置を調節するために、対象(例えば
、植物または酵母)または土壌もしくは環境に投与するための、細菌または古細菌の移植
片を提供する。場合により、移植片は、前記第1の種の細胞を含む。場合により、移植片
は、前記第1の種の細胞を含む。場合により、移植片は、前記第2の種の細胞を含む(か
つ、例えば、第1の種の細胞を含まない)。
【0257】
一例では、酵母は、同じ種または株の酵母細胞の集団を含む。例えば、酵母は、微生物
叢に含まれ、例えば、酵母は、微生物叢の細胞の亜集団を含み、例えば、標的細胞は、微
生物叢にまた含まれる、細菌または古細菌細胞である。ある実施形態では、本方法は、標
的細胞(例えば、細菌)を死滅させるか、微生物叢に含まれる標的細胞亜集団の増殖を低
下させ、ここでは、微生物叢における標的細胞による1つ以上の化学物質またはメッセン
ジャーの放出(または濃度)が低下する。例えば、微生物叢の微生物(例えば、細菌)に
おいて、クオラムセンシングを媒介する、1つ以上の化学物質またはメッセンジャーが低
下する。このことは、微生物叢における、標的細胞および/または他の微生物細胞集団の
増殖を形成するのに有用であり得る。一例では、1つ以上の化学物質またはメッセンジャ
ーは、酵母の増殖を阻害するか、酵母を死滅させ、従って、微生物叢における化学物質ま
たはメッセンジャーの放出または濃度の低下は、微生物叢における酵母の増殖および/ま
たは維持の促進に有利である。これらの例のある実施形態では、処置は、酵母の栄養法、
または増殖促進物質による酵母の処置である(例えば、ここで、酵母は食糧または飲料製
造用であり、あるいは、例えば抗体などのバイオテクノロジー製品または医薬品の製造用
であり、例えば、酵母はSaccharaomycesである)。別の例では、化学物質
またはメッセンジャーが酵母の増殖を促進し、ここで、酵母の処置は、酵母殺菌剤(例え
ば、殺真菌薬)による処置である。これは、酵母が望ましくない場合(例えば、望ましく
ないカビである場合)に、死滅処置の有効性を促進する。一例では、対象が植物の場合、
1つ以上の化学物質またはメッセンジャーが植物の生長を阻害するか、植物を死滅させる
ため、微生物叢における化学物質またはメッセンジャーの放出または濃度の低減が、植物
の生長の促進、および/または、植物の死滅の阻害に有利である。これらの例のある実施
形態では、処置は、植物の栄養法であるか、または、肥料または窒素固定剤による酵母の
処置である。ある実施形態では、処置は、植物の農薬処置であり、例えば、標的の微生物
叢細胞の存在下で阻害または低減される処置である。
【0258】
一例では、植物は、農作物(例えば、小麦、大麦、禾穀類または家畜用飼料植物)、果
樹(例えば、リンゴ、オレンジ、シトラス(citrus)、ライム、レモン、ラズベリ
ー、イチゴ、ベリーまたはバナナの植物)、サトウキビの植物、香辛料の植物、庭の植物
、野菜の植物、草、木または顕花植物である。例えば、植物は、塊茎植物、例えば、ジャ
ガイモまたはサツマイモである(例えば、かつ、第1の、宿主、または標的細菌はPec
tobacterium atrosepticum細胞であり、場合により、処置はそ
の収穫物(例えば、ジャガイモ収穫物)の植物の保管(例えば、冷蔵)、洗浄、殺虫剤も
しくは除草剤処置、施肥、または水分補給である)。例えば、植物はタバコ植物である(
例えば、かつ、第1の、宿主、または標的細菌はRalstonia solanace
arum細胞であり、場合により、処置ははその収穫物(例えば、タバコ葉収穫物)の植
物の保管(例えば、冷蔵)、洗浄、殺虫剤もしくは除草剤処置、施肥、または水分補給で
ある)。
【0259】
一例では、対象は、原生動物(protozoa)である。一例では、対象または患者
は魚類である。一例では、対象または患者は鳥類である。一例では、対象または患者は爬
虫類である。一例では、対象または患者はクモである。一例では、対象は酵母細胞(例え
ば、Saccharomyces細胞)である。一例では、対象または患者は動物(例え
ば、げっ歯類、マウスまたはラット)である。一例では、対象または患者は(例えば、胎
児である、または胎児でない)ヒトである。一例では、対象または患者は、ペットの動物
(例えば、トリ、ウマ、イヌ、ネコまたはウサギ)である。一例では、対象または患者は
昆虫(例えば、卵、幼虫、または蛹などのライフサイクルの任意の段階の昆虫、例えば、
飛ぶ虫、這う虫、または甲虫)である。一例では、対象または患者は、頭足類または線形
動物である。一例では、対象または患者は、植物または動物の害虫である。一例では、動
物またはヒトの処置は、栄養処置、疾病または症状の治療、疾病または症状の予防、眼の
処置、農薬処置、場の処置、局所的処置、または消化の処置であってよい。一例では、本
方法は、病原体(例えば、病原性の寄生虫、原生動物、ウイルスまたは細菌)に対する対
象または患者の免疫を増強する。一例では、処置または治療は、ヒトまたは動物に実施さ
れる併用処置または併用治療であり、ここで、ヒトまたは動物には、第1の医薬が、第2
の医薬または放射線と組み合わせて投与される。第1および/または第2の医薬は、抗体
療法または免疫細胞移植片(例えば、CAR-TまたはTIL移植片)療法であってよい
(また、本発明の免疫調節の局面は、これらの治療を調節するのに有利であってよい)。
一例では、それぞれの医薬または処置は、表2から選択される。
【0260】
一例では、疾病または症状は、糖尿病(例えば、I型またはII型糖尿病、インスリン
抵抗性糖尿病(例えば、インスリン抵抗性II型糖尿病))、糖尿病患者または前糖尿病
患者におけるインスリン抵抗性の発症、または糖尿病患者または前糖尿病患者におけるイ
ンスリン応答性の低下である。場合により、さらにこの例では、標的とされる第1の細胞
または宿主細胞は、Prevotella copri細胞またはBacteroide
s vulgatus細胞である。ある実施形態では、患者においてPrevotell
a copri細胞およびBacteroides vulgatus細胞の両方が標的
とされ(すなわち、本明細書に記載されるように、死滅し、および/または、集団の増殖
が低下し、または移植片投与後に微生物叢において低下し)、ここで前記疾病または症状
は、処置または予防される。
【0261】
本発明はまた、本発明の方法を用いて、患者において疾病または症状を治療するために
患者へ投与するための、HM-CRISPR/Casシステム、HM-アレイ、またはH
M-crRNAを提供する。
【0262】
本発明はまた、患者の養子細胞療法のための免疫細胞のエクスビボ集団を含むキットを
提供し、ここで、キットはさらに、移植片、システム、アレイ、またはcrRNAを含み
、場合により、免疫細胞は、CAR-T細胞、操作されたT細胞受容体(TCR)を発現
するT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびNK細胞から選択される。
【0263】
可動遺伝因子(MGE)
一例では、各ベクターは、可動遺伝因子(MGE)を含む、または可動遺伝因子(MG
E)からなる核酸ベクターであり、ここで、MGEは、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞
内のウイルス(例えば、プロファージ)のゲノムの標的配列を改変するための、伝達起点
(oriT)およびCRISPRアレイを含む。MGEの例は、ICE、トランスポゾン
、プラスミドおよびバクテリオファージである。伝達起点(oriT)は、接合中にそれ
を含むDNAを細菌宿主からレシピエントに伝達するのに必要な短い配列(例、最大50
0bp)である。oriTはシス作用性であり、伝達されているDNAと同じDNA上に
あり、そのDNAと共に伝達される。典型的な伝達起点は、機能的に規定された3つのド
メイン:ニッキングドメイン、伝達ドメイン、および終結ドメインを含む。
【0264】
本発明のための好適なICEおよび、好適なoriTのための起源を提供する、ICE
bergデータベース(http://db-mml.sjtu.edu.cn/ICE
berg/)が参照される。一例では、ICEはグループ1~28から選択されるICE
を含むICEファミリーの一員であり、あるいは、oriTは当該ファミリーの一員のo
riTである:1=SXT/R391;2=Tn916;3=Tn4371;4=CTn
DOT/ERL;5=ICEclc;6=ICEBs1;7=ICEHin1056;8
=PAPI-1;9=ICEMlSym(R7A);10=ICESt1;11=SPI
-7;12=ICE6013;13=ICEKp1;14=TnGBS1;15=Tn5
253;16=ICESa2603;17=ICEYe1;18=10270-RD.2
;19=Tn1207.3;20=Tn1806;21=ICEA5632;22=IC
EF-I/II;23=ICEAPG2;24=ICEM;25=10270-RD.1
;26=Tn5801;27=PPI-1;28=ICEF-III。ファミリーの説明
は、ICEbergデータベースにある。例えば、Tn916ファミリーは、Roberts et
al (2009)により規定された(Trends Microbiol. 2009 Jun;17(6):251-8. doi: 10.101
6/j.tim.2009.03.002. Epub 2009 May 20; "A modular master on the move: the Tn916
family of mobile genetic elements", Roberts A, Mullany P)。Tn916ファミリー
に属する因子は、次の基準により規定されている:それらは、Roberts et alにより示さ
れた一般的な組織を有していなければならず、かつDNAレベルで元のTn916と配列
および構造が類似しているコア領域(接合および調節モジュール)を有していなければな
らない。例外は、以前にこのファミリーに分類されていたTn1549などの接合性トラ
ンスポゾンや、対応する参考文献に記載されているような高度のタンパク質類似性を有す
るトランスポゾンである。場合により、ICEはトランスポゾンであり、例えば、接合性
トランスポゾンである。一例では、MGEは、機能性ヘルパーエレメントの存在下で可動
性(mobilisable)である、可動性トランスポゾンであり、場合により、該ト
ランスポゾンは、前記ヘルパーエレメントと組み合わせられる。
【0265】
場合により、ベクターはプラスミドであり、場合により、ここで、MGEはプラスミド
に含まれるトランスポゾンである。例えば、トランスポゾンは接合性トランスポゾンであ
る。一例では、トランスポゾンは、可動性トランスポゾンである(例えば、プラスミドが
コードする1つ以上の因子を用いて、例えば、プラスミドのトランスポゾン配列の外側の
遺伝子により、可動性である)。場合により、トランスポゾンはI型トランスポゾンであ
る。場合により、トランスポゾンは、II型トランスポゾンである。場合により、ベクタ
ーoriTは、バクテロイデス門(Bacteroidetes)(例えば、Bacte
roidalesもしくはBacteroides)またはPrevotellaトラン
スポゾンのoriTである。これは、第1の細胞(宿主細胞)がそれぞれバクテロイデス
門(Bacteroidetes)(例えば、BacteroidalesまたはBac
teroides)またはPrevotellaである場合に有用である。場合により、
ベクターoriTは、CTnDot、CTnERL SXT/R391、Tn916また
はTn4371ファミリーのトランスポゾンoriTである。
【0266】
場合により、本方法は、患者の微生物叢を、第2の細胞内で作動可能であるが、第1の
(宿主)細胞内で作動できない、または、機能が低下する抗毒素遺伝子を含む、毒素-抗
毒素モジュールを含むベクターまたはMGE(例えば、上述の)に曝すことを含む。従っ
て、第1の細胞が死滅し、第2の細胞は温存され、それにより、患者の微生物叢において
第1の細胞の割合を変更する。
【0267】
SPLIT CRISPR/CASシステム
一局面では、第1の細胞(宿主細胞)の内因性Casが利用され、宿主細胞に導入され
たベクター(例えば、ファージ)に含まれる操作された配列と共に作動する。本局面は、
外因性の配列を運搬する能力が限られているウイルスやファージなどのベクターにおいて
、スペースを確保するのに有利である。スペースを確保することによって、より標的指向
性の高いスペーサーまたはアレイを含むことができ、宿主の抵抗を回避するのに有用であ
る。例えば、特にspCas9またはsaCas9などのかさ高いCas配列にとっては
、内因性Casエンドヌクレアーゼを利用することは、それをベクター内でコードするよ
りも有利である。さらに、非宿主起源由来のいくつかの外因性のCasでみられるような
、互換性が劣る可能性はない。ウイルス、例えばファージゲノムサイズを縮小させる能力
はまた、宿主細胞の取り込み(宿主細胞におけるウイルスの感染および/または維持)を
促進するのに有益であり得る。いくつかの例において、ベクター(例えばファージ)によ
る宿主への侵入が、宿主が侵入する核酸と戦おうとして、宿主CRISPR/Cas活性
をアップレギュレートし得る(宿主Casヌクレアーゼの発現増加を含む)ことが利点で
ある。しかしながら、これはまた、宿主Casによって認識されるcRNAまたはgRN
Aを使用する場合、本発明と共に使用するための内因性Casを提供するのにも有用であ
る。本発明が宿主CRISPRアレイを標的とするcRNAまたはgRNAを包含する場
合、これは、次いで、それ自身のCRISPRシステムを不活性化するためにそれ自身の
Casヌクレアーゼを使用する「自殺」宿主細胞と同様に、宿主CRISPRアレイ自体
の不活性化を促進する。
【0268】
従って、ベクターは、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)をコードする配列を欠
いていてよい。
【0269】
場合により、内因性の第1の細胞(宿主細胞)システムは、CRISPR/Cas9シ
ステムである。場合により、ヌクレアーゼは、タイプICasヌクレアーゼである。場合
により、ヌクレアーゼは、タイプIICasヌクレアーゼ(例えば、Cas9)である。
場合により、ヌクレアーゼは、タイプIIICasヌクレアーゼである。
【0270】
さらによりスペースを節約するために、場合により、tracrRNA配列はベクター
により提供されないが、内因性宿主細胞CRISPR/CasシステムのtracrRN
A配列であり、ここでtracrRNAは、その後の宿主細胞内の標的へのCasの誘導
のための成熟crRNAへのプロセシングのために、細胞内のHM-crRNAとハイブ
リダイズすることができる。
【0271】
一般的に適用可能な特徴
以下の特徴は、本発明の任意の構成(例えば、任意のその局面、実施形態、コンセプト
、段落、または実施例における)に適用される。
【0272】
一例では、標的配列は、染色体の配列、内因性宿主細胞の配列、野生型宿主細胞の配列
、非ウイルス染色体宿主細胞の配列、および/または非ファージ配列であり(すなわち、
これらの1つ以上またま全て)、例えば、標的配列は、宿主細胞染色体に含まれる抗生物
質耐性遺伝子または必須遺伝子などの、野生型宿主染色体細胞配列である。一例では、標
的配列は、宿主細胞プラスミド配列であり、例えば、抗生物質耐性遺伝子配列である。
【0273】
一例では、少なくとも2つの標的配列が、Casにより改変され、例えば、抗生物質耐
遺伝子および必須遺伝子である。このような複数の標的化は、エスケープ変異体宿主細胞
の進化を低減させるのに有用であり得る。
【0274】
一例では、Casは野生型内因性宿主細胞Casヌクレアーゼである。一例では、各宿
主細胞は、恒常的Casヌクレアーゼ活性、例えば、恒常的野生型Casヌクレアーゼ活
性を有する。一例では、宿主細胞は細菌細胞である。別の例では、宿主細胞は古細菌細胞
である。内因性Casの使用は、ベクターのcRNAまたはgRNAにおいてスペースを
確保することを可能にするために、有利である。例えば、タイプIICRISPR/Ca
sシステムが本発明において宿主細胞の改変のために用いられる場合において、タイプI
ICas9ヌクレオチド配列は大きく宿主細胞の内因性Casの代替の使用は、有利であ
る。最も一般的に用いられるCas9は、4.2キロベース(kb)と測定され、S p
yogenesに由来する。これは効率的なヌクレアーゼであるが、その分子の長さは、
ベクターがどれだけの遺伝物質を収容することができるかという限界を押し上げ、生きて
いる動物の組織および本明細書に記載の他の設定において、CRISPRを使用すること
に対する障壁を作り出す(F.A. Ran et al., “In vivo genome editing using Staphyloc
occus aureus Cas9,” Nature, doi:10.1038/nature14299, 2015参照)。従って、ある実
施形態では、本発明のベクターは、AAVベクターであるか、またはAAVベクター以下
の外因性DNA挿入能力を有し、Casは宿主細胞の内因性Casであり、ここで細胞は
細菌細胞または古細菌細胞である。S thermophilus Cas9(UniP
rotKB-G3ECR1(CAS9_STRTR))ヌクレオチド配列は、1.4kb
のサイズを有する。
【0275】
一例では、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、特に限られた外
因性DNA挿入能力を有するので、ウイルスパッケージング能力を考慮する必要がある。
コートタンパク質およびポリメラーゼを発現させるためなどの、不可欠なウイルス機能を
コードする配列のために余地を残す必要がある。一例では、ベクターはファージベクター
、AAV、またはレンチウイルスベクターである。ファージベクターは、宿主が細菌細胞
である場合には有用である。
【0276】
「操作された」という用語の使用により、本発明の、アレイ、配列、ベクター、cRN
A、gRNA、MGEまたは他の構成、コンセプト、局面、実施形態、段落、または実施
例などが、天然に生じるものではないことは、当業者にとって、容易に明らかとなるであ
ろう。例えば、該MGE、ベクター、配列またはアレイは、MGE、ベクター、配列、ま
たはアレイの、他の配列または成分と一緒に天然には見出されない1つ以上の配列または
成分を含む。例えば、該アレイまたは配列は、宿主細胞に対して組み換え、人工、合成ま
たは外因性(すなわち、非内因性である、または野生型でない)である。
【0277】
一例では、本発明のアレイまたは配列は、単離された(例えば、宿主細胞から単離され
た)アレイまたは配列の操作されたバージョンである。一例では、操作されたアレイまた
は配列は、細胞内で天然に見出されるCasエンドヌクレアーゼをコードする配列と組み
合わせられていない。
【0278】
研究により、Bacteroidesは、Clostridium difficil
による感染を予防する役割を有することが示唆されている。潜在的な病原体の侵入および
増殖を制限する免疫応答の発達は、B fragilisに大きく依存している。また、
パネート細胞タンパク質は、B thetaiotomicronによる刺激に応答して
、抗菌ペプチドを生産し得、これらの分子は、病原体が腸に定着することを予防し得る。
さらに、B thetaiotomicronは、パネート細胞に殺菌性レクチン、Re
gIIIを生産させることができ、RegIIIはグラム陽性生物のペプチドグリカンに
結合することによってその抗菌作用を発揮する。従って、患者の微生物叢において、Ba
cteroides(例えば、thetaiotomicronおよび/またはfrag
alis)の割合を増加させるための構成のいずれかにおける本発明の使用は、ヒトもし
くは非ヒト動物の腸における集団の病原性細菌の定着を制限するのに有用である。
【0279】
Hooper et alは、B thetaiotomicronがフコースリプレッサー遺伝子
によって媒介される複雑な相互作用における腸内フコシル化と、シグナル伝達システムを
改変できることを実証した。転写解析を用いて、B thetaiotaomicron
が、栄養素の吸収、粘膜のバリア強化、および血管新生因子の生産に関わる遺伝子を含む
、様々な宿主遺伝子の発現を調節できることが実証された。
【0280】
場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、グラム陰性細菌(
例えば、spirillaまたは vibrio)である。場合により、宿主(すなわち
、第1および/または第2の細菌)はグラム陽性細菌である。場合により、宿主(すなわ
ち、第1および/または第2の細菌)は、mycoplasma、chlamydiae
、spirocheteまたはmycobacteriumである。場合により、宿主(
すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Streptococcus(例えば、
pyogenesまたはthermophilus)宿主である。場合により、宿主(す
なわち、第1および/または第2の細菌)は、Staphylococcus(例えば、
aureus、例えば、MRSA)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1およ
び/または第2の細菌)は、E.coli(例えば、O157:H7)宿主であり、例え
ば、ここで、Casはベクターによりコードされるか、または、内因性宿主Casヌクレ
アーゼ活性は抑制解除されている。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第
2の細菌)は、Pseudomonas(例えば、aeruginosa)宿主である。
場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Vibro(例えば
、cholerae(例えば、O139)またはvulnificus)宿主である。場
合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Neisseria(
例えば、gonnorrhoeaeまたはmeningitidis)宿主である。場合
により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Bordetella(
例えば、pertussis)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/
または第2の細菌)は、Haemophilus(例えば、influenzae)宿主
である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)はShigel
la(例えば、dysenteriae)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第
1および/または第2の細菌)は、Brucella(例えば、abortus)宿主で
ある。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)はFrancis
ella宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は
Xanthomonas宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または
第2の細菌)はAgrobacterium宿主である。場合により、宿主(すなわち、
第1および/または第2の細菌)はErwinia宿主である。場合により、宿主(すな
わち、第1および/または第2の細菌)はLegionella(例えば、pneumo
phila)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌
)はListeria(例えば、monocytogenes)宿主である。場合により
、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)はCampylobacter(例
えば、jejuni)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第
2の細菌)はYersinia(例えば、pestis)宿主である。場合により、宿主
(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Borelia(例えば、burgd
orferi)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細
菌)はHelicobacter(例えば、pylori)宿主である。場合により、宿
主(すなわち、第1および/または第2の細菌)はClostridium(例えば、d
ificileまたはbotulinum)宿主である。場合により、宿主(すなわち、
第1および/または第2の細菌)は、Erlichia(例えば、chaffeensi
s)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、S
almonella(例えば、typhiまたはenterica、例えば、serot
ype typhimurium、例えば、DT 104)宿主である。場合により、宿
主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Chlamydia(例えば、pn
eumoniae)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2
の細菌)は、Parachlamydia宿主である。場合により、宿主(すなわち、第
1および/または第2の細菌)は、Corynebacterium(例えば、amyc
olatum)宿主である。場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細
菌)は、Klebsiella(例えば、pneumoniae)宿主である。場合によ
り、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Enterococcus(
例えば、faecalisまたはfaecim、例えば、リネゾイド耐性)宿主である。
場合により、宿主(すなわち、第1および/または第2の細菌)は、Acinetoba
cter(例えば、baumannii、例えば、多剤耐性)宿主である。
【0281】
例えばtracrRNAを使用しないタイプのCasシステムの場合、tracrRN
A配列を本発明のアレイまたはベクターから除くことができる。
【0282】
一例では、標的に誘導されるCasはエキソヌクレアーゼである。場合により、本明細
書で言及されるニッカーゼは、ダブルニッカーゼである。ニッカーゼの例は、Cas9ニ
ッカーゼであり、すなわち、2つのヌクレアーゼドメインのうちの一方(RuvCドメイ
ンおよび/またはHNHドメインのいずれか)が不活性化されているCas9である。
【0283】
本明細書におけるベクターDNAの使用についての言及はまた、別の実施形態において
、文脈が許す場合に、必要な変更を加えてベクターRNAに適用することもできる。例え
ば、ベクターがRNAベクターである場合である。したがって、本発明の全ての特徴は開
示された代替形態であり、文脈が許す場合に、本明細書中でベクターDNAを指す場合に
は「DNA」の代わりに「RNA」として読まれるべきである。一例では、当該またはそ
れぞれのベクターはまた、逆転写酵素をコードする。
【0284】
一例では、当該またはそれぞれのアレイまたは操作されたヌクレオチド配列は、ナノ粒
子ベクターによって、または、リポソーム中で、提供される。
【0285】
一例では、Casは切断用のCasヌクレアーゼ、遮断用の不活性化型Cas(dea
d Cas)(dCas)、または標的を活性化するための転写活性化因子に結合したd
Casである。
【0286】
一例では、当該またはそれぞれのアレイまたは操作された配列は、宿主におけるcrR
NAまたはgRNAの転写に機能的である外因性プロモーターを含む。
【0287】
ある実施形態において、アレイまたは操作された配列は、ヴィロファージベクターに含
まれ、宿主は、あるいは、細胞に感染することができるウイルスである。例えば、宿主は
、アメーバ細胞に感染し得る大きなウイルスである。例えば、宿主は、スプートニクウイ
ルス(Sputnik virus)、ピソウイルス(Pithovirus)、ミミウ
イルス(mimivirus)、ママウイルス(mamavirus)、メガウイルス(
Megavirus)、またはパンドラウイルス(Pandoravirus)であり、
例えば、ここで、宿主ウイルスは水中に存在する。本実施形態の一例では、本発明は水処
理または下水処理(例えば浄化処理、例えば水路、河川、湖、池または海の処理)のため
のものである。
【0288】
ある実施形態において、当該またはそれぞれのベクターまたは操作された配列は、ΦΝ
Μ1ファージであるか、これに含まれ、例えば、ここで、宿主細胞は、S.aureus
(例えば、MRSA)細胞である。
【0289】
例えば、本方法は、哺乳動物対象、例えば、ヒト、げっ歯類、マウスまたはラットに実
施される。例えば、本方法は脊椎動物、爬虫類、鳥類または魚類に実施される。
【0290】
細胞集団は、1回以上の投与で、患者に投与することができる。例えば、本方法は、抗
菌剤を投与して前記ディスバイオシスを引き起こすこと、または、細菌移植片を患者に投
与して前記ディスバイオシスを引き起こすことを含む。
【0291】
本方法が細胞療法を軽減する場合、該療法を、例えば細胞療法の望まれない副作用(例
えば、CRSなどの、ヒト患者におけるCAR-T療法の副作用)を軽減または予防する
ために、ダウンレギュレート、緩和または停止させることができる。本方法が細胞療法を
上昇させる場合、該療法を、例えば標的細胞に対する細胞傷害性を増強させるために、ア
ップレギュレート、増強、または開始させることができる。
【0292】
本方法は、疾病または症状を、処置または予防する(すなわち、そのリスクを低減する
)。これは、完全なまたは部分的な、処置または予防であってよく、すなわち、疾病/症
状またはその徴候の軽減であるが、完全な軽減でなくてよく;あるいは、疾病/症状また
はその徴候のリスクの軽減であるが、完全な予防でなくてよい。同様に、本方法は、疾病
もしくは症状または治療の望ましくない徴候(例えば、CRS)を処置または予防する(
すなわち、そのリスクを軽減する)。
【0293】
コンセプト
1.患者において疾病または症状の養子免疫細胞療法を調節する方法であって、
a.免疫細胞の集団を患者に投与することを含む、養子免疫細胞療法を患者において実行
すること、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが
可能である;および、
b.患者において細菌微生物叢(例えば、腸内微生物叢)ディスバイオシスを引き起こし
、それにより、前記ディスバイオシスが患者において免疫細胞療法を調節すること
を含む方法。
2.患者において疾病または症状の養子免疫細胞療法を調節する方法であって、
a.免疫細胞の集団を患者に投与することを含む、養子免疫細胞療法を患者において実行
すること、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが
可能である;および、
b.患者の微生物叢(例えば、腸内微生物叢)において、第1の細菌種もしくは株、また
は、古細菌種もしくは株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者におい
て免疫細胞療法を調節する変更された微生物叢を産生すること
を含む方法。
3.ステップ(b)が、抗細菌剤または抗古細菌剤を、患者の微生物叢に、免疫細胞集団
と同時に、または連続して投与することにより、第1の細胞の亜集団を標的化することに
より実行され、それにより、第1の細胞が死滅するか、該亜集団の増殖が低下し、それに
より、患者の微生物叢における前記亜集団の割合を低減させる、コンセプト2の方法。
4.細胞療法が養子T細胞療法である、コンセプト1~3のいずれかに記載の方法。
5.ステップ(a)において、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Th1細胞およびTh
17細胞からなる群から選択される細胞が患者に投与される、コンセプト4に記載の方法
。
6.患者においてTh17細胞が調節される、コンセプト4または5に記載の方法。
7.患者においてTreg細胞が調節される、コンセプト4、5または6に記載の方法。
8.細胞療法が増強される、コンセプト1~7のいずれかに記載の方法。
9.患者においてTh17細胞がアップレギュレートされ、および/または、患者におい
てTreg細胞がダウンレギュレートされる、コンセプト1~8のいずれかに記載の方法
。
10.患者においてCD4+T細胞がアップレギュレートされる、コンセプト1~9のい
ずれかに記載の方法。
11.患者においてCD8+T細胞がアップレギュレートされる、コンセプト1~10の
いずれかに記載の方法。
12.患者においてセントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞
(TEM)、ステムセルメモリー細胞(TSCM)およびエフェクター細胞(Teff)
の1つ以上がアップレギュレートされ、ここで、該細胞が、ステップ(a)で投与される
免疫細胞集団に含まれる、および/または、それらの子孫である、コンセプト1~11の
いずれかに記載の方法。
13.細胞療法が低減される、コンセプト1~7のいずれかに記載の方法。
14.患者においてサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを低減または予防する、
コンセプト13に記載の方法。
15.患者においてTh17細胞がダウンレギュレートされ、および/または、患者にお
いてTreg細胞がアップレギュレートされる、コンセプト1~7、13および14のい
ずれかに記載の方法。
16.患者においてCD4+T細胞がダウンレギュレートされる、コンセプト1~7、お
よび、13~15のいずれかに記載の方法。
17.患者においてCD8+T細胞がダウンレギュレートされる、コンセプト1~7、お
よび、13~16のいずれかに記載の方法。
18.患者においてセントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞
(TEM)、ステムセルメモリー細胞(TSCM)およびエフェクター細胞(Teff)
の1つ以上がダウンレギュレートされ、ここで、該細胞が、ステップ(a)で投与される
免疫細胞集団に含まれる、および/または、それらの子孫である、コンセプト1~7およ
び13~17のいずれかに記載の方法。
19.免疫細胞集団が、CAR-T細胞、および/または、操作されたT細胞受容体(T
CR)を発現するT細胞、および/または、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む、コンセ
プト1~18のいずれかに記載の方法。
20.免疫細胞集団が、操作された自家の、または同種の免疫細胞、例えば、T細胞、N
K細胞および/またはTILを含む、コンセプト1~19のいずれかに記載の方法。
21.T細胞が、CD4+T細胞またはTh17細胞である、コンセプト19または20
に記載の方法。
22.ステップ(b)が、微生物叢において、Bacteroides(例えば、B f
ragalisおよび/またはB thetaiotamicron)の割合を増加させ
る、コンセプト1~21のいずれかに記載の方法。
23.ステップ(b)が、微生物叢において、Bacteroides(例えば、B f
ragalisおよび/またはB thetaiotamicron) の割合を減少さ
せる、コンセプト1~21のいずれかに記載の方法。
24.ステップ(b)が、微生物叢において、バクテロイデス門(Bacteroide
tes)の、ファーミキューテス門(Firmicutes)に対する割合を増加させる
、コンセプト1~23のいずれかに記載の方法。
25.ステップ(b)が、微生物叢において、バクテロイデス門(Bacteroide
tes)の、ファーミキューテス門(Firmicutes)に対する割合を減少させる
、コンセプト1~23のいずれかに記載の方法。
26.ステップ(b)が、微生物叢において、1つ以上のClostridium種また
は株(例えば、各種は、クラスターIVまたはXIVaのClostridium種であ
る)の割合を低減させる、コンセプト1~25のいずれかに記載の方法。
27.ステップ(b)が、微生物叢において、1つ以上のClostridium種また
は株(例えば、各種は、クラスターIVまたはXIVaのClostridium種であ
る)の割合を増加させる、コンセプト1~25のいずれかに記載の方法。
28.ステップ(b)が、微生物叢において、Bifidobacterium(例えば
、B bifidum)の割合を低減させる、コンセプト1~27のいずれかに記載の方
法。
29.ステップ(b)が、微生物叢において、Bifidobacterium(例えば
、B bifidum)の割合を増加させる、コンセプト1~27のいずれかに記載の方
法。
30.ステップ(b)が、患者の微生物叢において、第1の細胞の相対的割合または前記
亜集団を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節する変化した微生物叢を
産生することを含み、ここで、該亜集団は前記第1の種または株の宿主細胞を含む方法で
あって、
a.微生物叢を、宿主改変(HM)crRNAをコードする操作された核酸配列の複数の
コピーと組み合わせること、および
b.宿主細胞においてHM-crRNAを発現させること
を含む方法であって、
ここで、操作された各核酸配列は、個々の宿主細胞においてCasヌクレアーゼと作動可
能であり、HM-CRlSPR/Casシステムを形成し、かつ、該操作された配列が、
(iii)HM-crRNAをコードする、スペーサーおよびリピート配列;
(iv)宿主細胞の標的配列にハイブリダイズしてCasヌクレアーゼを宿主細胞の標的配列
に誘導することができる配列を含む、HM-crRNA;
を含み、場合により、HM-システムは、tracrRNA配列またはtracrRNA
配列を発現するDNA配列を含み、
それにより、HM-crRNAは宿主細胞において宿主標的配列のCas改変を誘導し、
、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞集団の増殖が低下し、それにより、微生
物叢における該亜集団の割合を低減させる、コンセプト1~29のいずれかに記載の方法
。
31.標的ヌクレオチド配列の改変のために、宿主細胞の内因性Casヌクレアーゼを用
いることを含む、コンセプト30の方法。
32.前記Cas改変を受けていない宿主細胞のコントロール集団の増殖と比較して、少
なくとも5倍、宿主細胞集団の増殖を低下させることを含む、コンセプト30または31
に記載の方法。
33.腸表面上の宿主細胞集団の増殖を阻害することを含む、コンセプト30~32のい
ずれかに記載の方法。
34.微生物叢が、第2の細菌種または株、または、古細菌種または株の細胞を含み、第
2の種または株が、宿主細胞の種または株の16sリボソームRNAをコードするDNA
配列に少なくとも80%同一である16sリボソームRNAをコードするDNA配列を有
し、微生物叢における第2の細胞の増殖が前記HM-システムにより阻害されない、コン
セプト30~33のいずれかに記載の方法。
35.第2の種または株が、ヒト腸内片利共生種または株、および/または、ヒト腸内プ
ロバイオティック種または株である、コンセプト34に記載の方法。
36.第2の種または株が、バクテロイデス門(Bacteroidetes)(例えば
、Bacteroides)であり、場合により、宿主細胞が、グラム陽性細菌細胞であ
る、コンセプト34または35に記載の方法。
37.第1の細胞が、ファーミキューテス門(Firmicutes)の細胞である、コ
ンセプト30~36のいずれかに記載の方法。
38.各宿主細胞について、該システムが、(i)~(iv)に記載の成分を含む、コン
セプト30~37のいずれかに記載の方法:
(i)Casヌクレアーゼをコードする、少なくとも1つの核酸配列;
(ii)HM-crRNAをコードするスペーサー配列およびリピートを含む操作された
HM-CRISPRアレイであって、該HM-crRNAは、宿主細胞の標的配列にハイ
ブリダイズして前記Casを宿主細胞における標的に誘導して標的配列を改変する配列を
含む;
(iii)任意のtracrRNA配列、または、tracrRNA配列を発現するDN
A配列;
(iv)ここで、本システムの前記成分は、宿主細胞と宿主細胞を形質転換する少なくと
も1つの核酸ベクターとの間で分割され、それによってHM-crRNAはCasを標的
に誘導して、宿主細胞における宿主標的配列を改変する;および
ここで、該標的配列はCasにより改変され、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主
細胞の増殖が低下する;
本方法は、(iv)のベクターを宿主細胞へ導入することおよび宿主細胞において前記H
M-crRNAを発現することを含み、HM-cRNAが宿主細胞の標的配列にハイブリ
ダイズしてCasを宿主細胞における標的に誘導して標的配列を改変することを可能にし
、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞の増殖が低下し、それにより、微生物叢
における前記亜集団の割合を変更する。
39.成分(i)が、各宿主細胞に対して内因性である、コンセプト38に記載の方法。
40.各ベクターが、ウイルスまたはファージである、コンセプト38または39に記載
の方法。
41.各標的配列が、隣接するNNAGAAWまたはNGGNGのプロトスペーサー隣接
モチーフ(PAM)である、コンセプト30~40のいずれかに記載の方法。
42.代わりに、HM-crRNAおよびtracrRNAが、シングルガイドRNA(
gRNA)に含まれ、前記gRNAを宿主細胞に導入すること、または、宿主細胞におい
て該gRNAを発現することを含む、コンセプト30~41のいずれかに記載の方法。
43.微生物叢が、第2の細菌または古細菌の種を含み、第1および第2の種はそれぞれ
同じ門の種(例えば、共にファーミキューテス門(Firmicutes)種)であり、
第2の細菌の増殖はHM-システムによって阻害されない;あるいは、微生物叢が、第2
の細菌または古細菌の株を含み、第1および第2の細菌または古細菌はそれぞれ同じ種の
株であり、第2の細菌または古細菌の増殖はHM-システムによって阻害されない、コン
セプト30~35および37~42のいずれかに記載の方法。
44.微生物叢が第2の細菌種を含み、第1および第2の種のぞれぞれが、グラム陽性種
であり、第2の細菌の増殖がHM-システムによって阻害されない、コンセプト30~4
3のいずれかに記載の方法。
45.各標的配列が、宿主細胞の、抗生物質耐性遺伝子、病原性遺伝子または必須遺伝子
に含まれる、コンセプト30~33のいずれかに記載の方法。
46.各第1の細胞が、Staphylococcus、Streptococcus、
Pseudomonas、Salmonella、Listeria、E coli、D
esulfovibrio、VibrioまたはClostridium細胞である、コ
ンセプト1~45のいずれかに記載の方法。
47.ステップ(b)が、腸のBacteroides(例えば、B thetaiot
amicron)により患者のパネート細胞を刺激することを含み、ステップ(b)によ
り産生された変化した微生物叢が、ステップ(b)より前の微生物叢と比較して、割合が
増加したBacteroidesである第1の細菌を含み、それにより、パネート細胞が
刺激され、細胞療法が調節される、コンセプト1~46のいずれかに記載の方法。
48.ステップ(b)が、患者において腸のBacteroides(例えば、B th
etaiotamicron)に対する免疫応答を発達させることを含み、ステップ(b
)により産生された変化した微生物叢が、ステップ(b)より前の微生物叢と比較して、
割合が増加したBacteroidesである第1の細菌を含み、それにより、細胞療法
が調節される、コンセプト1~47のいずれかに記載の方法。
49.ステップ(b)が、患者の微生物叢において、第1の細胞の相対的割合または前記
亜集団を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節する変更された腸内微生
物叢を産生することを含み、ステップ(b)が、亜集団に含まれる第1の細胞のゲノムを
標的とする誘導型ヌクレアーゼを用いることにより、前記亜集団の第1の細胞を死滅させ
るか、前記亜集団の増殖を阻害することを含む、コンセプト1~48のいずれかに記載の
方法。
50.コンセプト1~49のいずれかに記載の方法を用いて、患者において疾病または症
状を治療するために患者へ投与するための、細菌または古細菌の移植片であって、場合に
より前記第1の種の細胞を含む移植片。
51.コンセプト1~49のいずれかに記載の方法を用いて、患者において疾病または症
状を治療するために患者へ投与するための、コンセプト30~45のいずれかに記載され
る、HM-CRISPR/Casシステム、HM-アレイまたはHM-crRNA。
52.さらに、コンセプト50または51の移植片、システム、アレイまたはcrRNA
を含み、場合により免疫細胞がCAR-T細胞、操作されたT細胞受容体(TCR)を発
現するT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびNK細胞から選択される、患者の養子
細胞療法のための免疫細胞のエクスビボ集団を含むキット。
【0294】
局面
1.患者において疾病または症状を治療または予防するための、患者の養子細胞療法の方
法における使用のための、免疫細胞のエクスビボ集団であって、該方法が、
a.該集団の細胞を患者に投与することを含む養子免疫細胞療法を患者において実行する
こと、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが可能
である;および
b.腸内細菌の微生物叢ディスバイオシスを患者において引き起こし、それにより、該デ
ィスバイオシスが患者において免疫細胞療法を調節し、該疾病または症状が処置または予
防されること;
を含む、免疫細胞のエクスビボ集団。
2.患者において疾病または症状を治療または予防するための、以下を含む、患者の養子
細胞療法の方法における使用のための、免疫細胞のエクスビボ集団。
a.該集団の細胞を患者に投与することを含む養子免疫細胞療法を患者において実行する
こと、ここで、該免疫細胞の投与は、患者において疾病または症状を処置することが可能
である;および
b.患者の腸内微生物叢において、第1の細菌種もしくは株、または、古細菌種もしくは
株の細胞の亜集団の相対的割合を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節
する変更された腸内微生物叢を産生すること。
3.ステップ(b)が、抗細菌剤または抗古細菌剤(例えば、誘導型ヌクレアーゼ)を、患
者の微生物叢に、前記免疫細胞集団と同時に、または連続して投与することにより、第1
の細胞の亜集団を標的化することにより実行され、それにより、第1の細胞が死滅するか
、該亜集団の増殖が低下し、それにより、患者の腸内微生物叢における前記亜集団の割合
を低減させる、局面2の免疫細胞集団。
4.細胞療法が養子T細胞療法である、局面1~3のいずれかに記載の免疫細胞集団。
5.ステップ(a)において、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Th1細胞およびTh
17細胞からなる群から選択される細胞が患者に投与される、局面4の免疫細胞集団。
6.患者においてTh17細胞が調節される、局面4または5に記載の免疫細胞集団。
7.患者においてTreg細胞が調節される、局面4、5または6に記載の免疫細胞集団
。
8.細胞療法が増強される、局面1~7のいずれかに記載の免疫細胞集団。
9.患者においてTh17細胞がアップレギュレートされ、および/または、患者におい
てTreg細胞がダウンレギュレートされる、局面1~8のいずれかに記載の免疫細胞集
団。
10.患者においてCD4+T細胞がアップレギュレートされる、局面1~9のいずれか
に記載の免疫細胞集団。
11.患者においてCD8+T細胞がアップレギュレートされる、局面1~10のいずれ
かに記載の免疫細胞集団。
12.患者においてセントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞
(TEM)、ステムセルメモリー細胞(TSCM)およびエフェクター細胞(Teff)
の1つ以上がアップレギュレートされ、ここで、該細胞が、ステップ(a)で投与される
る免疫細胞集団に含まれる、および/または、それらの子孫である、局面1~11のいず
れかに記載の免疫細胞集団。
13.細胞療法が低減される、局面1~7のいずれかに記載の免疫細胞集団。
14.該方法が、患者においてサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを低減または
予防する、局面13に記載の免疫細胞集団。
15.患者においてTh17細胞がダウンレギュレートされ、および/または、患者にお
いてTreg細胞がアップレギュレートされる、局面1~7、13および14のいずれか
に記載の免疫細胞集団。
16.患者においてCD4+T細胞がダウンレギュレートされる、局面1~7および13
~15のいずれかに記載の免疫細胞集団。
17.患者においてCD8+T細胞がダウンレギュレートされる、局面1~7および13
~16のいずれかに記載の免疫細胞集団。
18.患者においてセントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞
(TEM)、ステムセルメモリー細胞(TSCM)およびエフェクター細胞(Teff)
の1つ以上がダウンレギュレートされ、ここで、該細胞が、ステップ(a)で投与される
免疫細胞集団に含まれる、および/または、それらの子孫である、局面1~7および13
~17のいずれかに記載の免疫細胞集団。
19.免疫細胞集団が、CAR-T細胞および/または操作されたT細胞受容体(TCR
)を発現するT細胞および/または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む、または、これら
から成る、局面1~18のいずれかに記載の免疫細胞集団。
20.免疫細胞集団が、操作された自家の、または同種の免疫細胞、例えば、T細胞、N
K細胞および/またはTILを含む、またはこれらから成る、局面1~19のいずれかに
記載の免疫細胞集団。
21.T細胞が、CD4+T細胞またはTh17細胞である、局面19または20に記載
の免疫細胞集団。
22.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、Bacteroides(例えば、B
fragalisおよび/またはB thetaiotamicron)の割合を増加
させる、局面1~21のいずれかに記載の免疫細胞集団。
23.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、Bacteroides(例えば、B
fragalisおよび/またはB thetaiotamicron)の割合を減少
させる、局面1~21のいずれかに記載の免疫細胞集団。
24.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、バクテロイデス門(Bacteroi
detes)の、ファーミキューテス門(Firmicutes)に対する割合を増加さ
せる、局面1~23のいずれかに記載の免疫細胞集団。
25.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、バクテロイデス門(Bacteroi
detes)の、ファーミキューテス門(Firmicutes)に対する割合を減少さ
せる、局面1~23のいずれかに記載の免疫細胞集団。
26.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、1つ以上のClostridium種
または株(例えば、各種は、クラスターIVまたはXIVaのClostridium種
である)の割合を低減させる、局面1~25のいずれかに記載の免疫細胞集団。
27.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、1つ以上のClostridium種
または株(例えば、各種は、クラスターIVまたはXIVaのClostridium種
である)の割合を増加させる、局面1~25のいずれかに記載の免疫細胞集団。
28.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、Bifidobacterium(例
えば、B bifidum)の割合を低減させる、局面1~27のいずれかに記載の免疫
細胞集団。
29.ステップ(b)が、腸内微生物叢において、Bifidobacterium(例
えば、B bifidum)の割合を増加させる、局面1~27のいずれかに記載の免疫
細胞集団。
30.ステップ(b)が、患者の微生物叢において、第1の細胞の相対的割合または前記
亜集団を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節する変化した微生物叢を
産生することを含み、ここで、該亜集団は前記第1の種または株の宿主細胞を含む方法で
あって、
a.微生物叢を、宿主改変(HM)crRNAをコードする操作された核酸配列の複数の
コピーと組み合わせること、および
b.宿主細胞においてHM-crRNAを発現させること
を含む方法であって、
ここで、操作された各核酸配列は、個々の宿主細胞においてCasヌクレアーゼと作動可
能であり、HM-CRlSPR/Casシステムを形成し、かつ、該操作された配列が、
(iii)HM-crRNAをコードする、スペーサーおよびリピート配列;
(iv)宿主細胞の標的配列にハイブリダイズしてCasヌクレアーゼを宿主細胞の標的配列
に誘導することができる配列を含む、HM-crRNA;
を含み、場合により、HM-システムは、tracrRNA配列またはtracrRNA
配列を発現するDNA配列を含み、
それにより、HM-crRNAは宿主細胞において宿主標的配列のCas改変を誘導し、
、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞集団の増殖が低下し、,それにより、微
生物叢における該亜集団の割合を低減させる、局面1~29のいずれかに記載の免疫細胞
集団。
31.標的ヌクレオチド配列の改変のために、宿主細胞の内因性Casヌクレアーゼを用
いることを含む、局面30の免疫細胞集団。
32.前記Cas改変を受けていない宿主細胞のコントロール集団の増殖と比較して、少
なくとも5倍、宿主細胞集団の増殖を低下させることを含む、局面30または31に記載
の免疫細胞集団。
33.腸表面上の宿主細胞集団の増殖を阻害することを含む、局面30~32のいずれか
に記載の免疫細胞集団。
34.微生物叢が、第2の細菌種または株、または、古細菌種または株の細胞を含み、第
2の種または株が、宿主細胞の種または株の16sリボソームRNAをコードするDNA
配列に少なくとも80%同一である16sリボソームRNAをコードするDNA配列を有
し、微生物叢における第2の細胞の増殖が前記HM-システムにより阻害されない、局面
30~33のいずれかに記載の免疫細胞集団。
35.第2の種または株が、ヒト腸内片利共生種または株、および/または、ヒト腸内プ
ロバイオティック種または株である、局面34に記載の免疫細胞集団。
36.第2の種または株が、バクテロイデス門(Bacteroidetes)(例えば
、Bacteroides)であり、場合により、宿主細胞が、グラム陽性細菌細胞であ
る、局面34または35に記載の免疫細胞集団。
37.第1の細胞が、ファーミキューテス門(Firmicutes)の細胞である、局
面30~36のいずれかに記載の免疫細胞集団。
38.各宿主細胞について、該システムが、(i)~(iv)に記載の成分を含む、局面
30~37のいずれかに記載の免疫細胞集団:
(i)Casヌクレアーゼをコードする、少なくとも1つの核酸配列;
(ii)HM-crRNAをコードするスペーサー配列およびリピートを含む操作された
HM-CRISPRアレイであって、該HM-crRNAは、宿主細胞の標的配列にハイ
ブリダイズして前記Casを宿主細胞における標的に誘導して標的配列を改変する配列を
含む;
(iii)任意のtracrRNA配列、または、tracrRNA配列を発現するDN
A配列;
(iv)ここで、本システムの前記成分は、宿主細胞と宿主細胞を形質転換する少なくと
も1つの核酸ベクターとの間で分割され、それによってHM-crRNAはCasを標的
に誘導して、宿主細胞における宿主標的配列を改変する;および
ここで、該標的配列はCasにより改変され、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主
細胞の増殖が低下する;
本方法は、(iv)のベクターを宿主細胞へ導入することおよび宿主細胞において前記H
M-crRNAを発現することを含み、HM-cRNAが宿主細胞の標的配列にハイブリ
ダイズしてCasを宿主細胞における標的に誘導して標的配列を改変することを可能にし
、それにより、宿主細胞が死滅するか、宿主細胞の増殖が低下し、それにより、微生物叢
における前記亜集団の割合を変更する。
39.成分(i)が、各宿主細胞に対して内因性である、局面38に記載の免疫細胞集団
。
40.各ベクターが、ウイルスまたはファージである、局面38または39に記載の免疫
細胞集団。
41.各標的配列が、隣接するNNAGAAWまたはNGGNGのプロトスペーサー隣接
モチーフ(PAM)である、局面30~40のいずれかに記載の免疫細胞集団。
42.代わりに、HM-crRNAおよびtracrRNAが、シングルガイドRNA(
gRNA)に含まれ、本方法が、前記gRNAを宿主細胞に導入すること、または、宿主
細胞において該gRNAを発現することを含む、局面30~41のいずれかに記載の免疫
細胞集団。
43.微生物叢が、第2の細菌または古細菌の種を含み、第1および第2の種はそれぞれ
同じ門の種(例えば、共にファーミキューテス門(Firmicutes)種)であり、
第2の細菌の増殖はHM-システムによって阻害されない;あるいは、微生物叢が、第2
の細菌または古細菌の株を含み、第1および第2の細菌または古細菌はそれぞれ同じ種の
株であり、第2の細菌または古細菌の増殖はHM-システムによって阻害されない、局面
30~35および37~42のいずれかに記載の免疫細胞集団。
44.微生物叢が第2の細菌種を含み、第1および第2の種のぞれぞれが、グラム陽性種
であり、第2の細菌の増殖がHM-システムによって阻害されない、局面30~43のい
ずれかに記載の免疫細胞集団。
45.各標的配列が、宿主細胞の、抗生物質耐性遺伝子、病原性遺伝子または必須遺伝子
に含まれる、局面30~44のいずれかに記載の免疫細胞集団。
46.各第1の細胞が、Staphylococcus、Streptococcus、
Pseudomonas、Salmonella、Listeria、E coli、D
esulfovibrio、VibrioまたはClostridium細胞である、局
面1~45のいずれかに記載の方法。
47.ステップ(b)が、腸のBacteroides(例えば、B thetaiot
amicron)により患者のパネート細胞を刺激することを含み、ステップ(b)によ
り産生された変化した微生物叢が、ステップ(b)より前の微生物叢と比較して、割合が
増加したBacteroidesである第1の細菌を含み、それにより、パネート細胞が
刺激され、細胞療法が調節される、局面1~46のいずれかに記載の免疫細胞集団。
48.ステップ(b)が、患者において腸のBacteroides(例えば、B th
etaiotamicron)に対する免疫応答を発達させることを含み、ステップ(b
)により産生された変化した微生物叢が、ステップ(b)より前の微生物叢と比較して、
割合が増加したBacteroidesである第1の細菌を含み、それにより、細胞療法
が調節される、局面1~47のいずれかに記載の免疫細胞集団。
49.ステップ(b)が、患者の腸内微生物叢において、第1の細胞の相対的割合または
前記亜集団を変更し、それにより、患者において免疫細胞療法を調節する変更された腸内
微生物叢を産生することを含み、ステップ(b)が、亜集団に含まれる第1の細胞のゲノ
ムを標的とする誘導型ヌクレアーゼを用いることにより、前記亜集団の第1の細胞を死滅
させるか、前記亜集団の増殖を阻害することを含む、局面1~48のいずれかに記載の免
疫細胞集団。
50.局面1~49のいずれかに記載の方法を用いて、患者において疾病または症状を治
療するために患者へ投与するための、細菌または古細菌の移植片であって、場合により前
記第1の種の細胞を含む移植片。
51.局面1~49のいずれかに記載の方法を用いて、患者において疾病または症状を治
療するために患者へ投与するための、局面30~45のいずれかに記載される、HM-C
RISPR/Casシステム、HM-アレイまたはHM-crRNA。
52.さらに、局面50または51の移植片、システム、アレイまたはcrRNAを含み
、場合により免疫細胞がCAR-T細胞、操作されたT細胞受容体(TCR)を発現する
T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびNK細胞から選択される、前記疾病または症
状を処置するための患者の養子細胞療法のための、局面1~49のいずれかに記載の、免
疫細胞のエクスビボ集団を含むキット。
【0295】
場合により、宿主細胞、第1の細胞、第2の細胞、または混合細菌集団は、ヒトまたは
非ヒト動物対象に含まれ、例えば、該集団は、腸内の微生物叢、皮膚の微生物叢、口腔の
微生物叢、喉の微生物叢、毛髪の微生物叢、腋窩の微生物叢、膣の微生物叢、直腸の微生
物叢、肛門の微生物叢、眼の微生物叢、鼻の微生物叢、舌の微生物叢、肺の微生物叢、肝
臓の微生物叢、腎臓の微生物叢、生殖器の微生物叢、陰茎の微生物叢、陰嚢の微生物叢、
乳腺の微生物叢、耳の微生物叢、尿道の微生物叢、口唇の微生物叢、臓器の微生物叢また
は歯の微生物叢に含まれる。場合により、混合細菌集団は、植物に(例えば、タバコ、農
作物、果樹、野菜、またはタバコに、例えば、植物の表面上に、または、植物内に含有さ
れて)または環境に(例えば、土壌または水中または水路または水溶液(acqueou
s liquid)に)含まれる。
【0296】
場合により、ヒトまたは動物の対象または患者の、疾病または症状は、以下から選択さ
れる。
(a)神経変性の疾病または症状;
(b)脳の疾病または症状;
(c)中枢神経系(CNS)の疾病または症状;
(d)記憶喪失または記憶障害;
(e)心臓または循環器の疾病または症状、例えば、心臓発作、脳卒中または心房細動;
(f)肝臓の疾病または症状;
(g)腎臓の疾病または症状、例えば、慢性腎臓病(CKD);
(h)膵臓の疾病または症状;
(i)肺の疾病または症状、例えば、嚢胞性線維症またはCOPD;
(j)胃腸の疾病または症状;
(k)喉または口腔の疾病または症状;
(l)眼の疾病または症状;
(m)生殖器の疾病または症状、例えば、陰唇、陰茎または陰嚢の疾病または症状;
(n)性行為感染性疾病または症状、例えば、淋病、HIV感染症、梅毒またはクラミジ
ア感染症;
(o)耳の疾病または症状;
(p)皮膚の疾病または症状;
(q)心臓の疾病または症状;
(r)鼻の疾病または症状
(s)血液性の疾病または症状、例えば、貧血、例えば、慢性病の貧血またはがん;
(t)ウイルス感染症;
(u)病原性細菌感染症;
(v)がん;
(w)自己免疫性の疾病または症状、例えば、SLE;
(x)炎症性の疾病または症状、例えば、関節リウマチ、乾癬、湿疹、喘息、潰瘍性大腸
炎、大腸炎、クローン病またはIBD;
(y)自閉症;
(z)ADHD;
(aa)双極性障害;
(bb)ALS[筋萎縮性側索硬化症];
(cc)骨関節炎;
(dd)先天性または発達の欠損または症状;
(ee)流産;
(ff)血液凝固の症状;
(gg)気管支炎;
(hh)ドライ型またはウェット型加齢黄斑変性(AMD);
(ii)血管新生(例えば、腫瘍の、または眼の中の);
(jj)かぜ;
(kk)てんかん;
(ll)線維症、例えば、肝臓または肺の線維症;
(mm)真菌症または症状、例えば、鵞口瘡;
(nn)代謝性の疾病または症状、例えば、肥満症、食欲不振、糖尿病、I型またはII
型糖尿病.
(oo)潰瘍、例えば、胃潰瘍または皮膚潰瘍;
(pp)皮膚乾燥;
(qq)シェーグレン症候群;
(rrサイトカインストーム;
(ss)難聴、聴覚消失または聴覚障害;
(tt)代謝が遅いまたは速い(すなわち、対象の体重、性別および年齢の平均よりも遅
いまたは速い);
(uu)受胎障害、例えば、不妊症または低受胎能;
(vv)黄疸;
(ww)発疹;
(xx)川崎病;
(yy)ライム病;
(zz)アレルギー、例えば、ナッツ、草、花粉、イエダニ、ネコまたはイヌの毛または
フケのアレルギー;
(aaa)マラリア、腸チフス熱、結核またはコレラ;
(bbb)鬱;
(ccc)精神障害;
(ddd)小頭症;
(eee)栄養失調;
(fff)結膜炎;
(ggg)肺炎;
(hhh)肺塞栓症;
(iii)肺高血圧症;
(jjj)骨の疾患;
(kkk)敗血症または敗血症性ショック;
(lll)副鼻腔炎(Sinusitus);
(mmm)ストレス(例えば、職業ストレス);
(nnn)地中海貧血症、貧血、フォン・ヴィルブランド病、または血友病;
(ooo)帯状疱疹または口唇ヘルペス;
(ppp)月経;
(qqq)精子数減少
【0297】
本方法により処置または予防する、神経変性または中枢神経系(CNS)の疾病または
症状
【0298】
一例では、神経変性または中枢神経系(CNS)の疾病または症状は、ルツハイマー病
、腰筋症(geriopsychosis)、ダウン症候群、パーキンソン病、クロイツ
フェルト・ヤコブ病、糖尿病性ニューロパチー、パーキンソン症候群、ハンチントン病、
マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病性ニューロパチー、およびクロイツ
フェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt Creutzfeldt-Jakobd
isease)からなる群から選択される。例えば、該疾病はアルツハイマー病である。
例えば、該疾病は、パーキンソン症候群である。
【0299】
一例では、本発明の方法は、中枢神経系(CNS)または神経変性の疾病または症状の
処置のために、ヒトまたは動物対象に実行され、本方法は、対象においてTreg細胞の
ダウンレギュレーションを引き起こし、それにより、全身性単球由来マクロファージおよ
び/Treg細胞の、脈絡叢を通った対象の脳への移行を促進し、それにより、疾病また
は症状(例えば、アルツハイマー病)が処置、予防され、あるいは、その進行が軽減され
る。ある実施形態では、本方法は、対象の中枢神経系(CNS)システム(例えば、脳内
および/またはCSFの)において、IFN-γの増加を引き起こす。一例では、本方法
は、神経線維を回復させ、および/または、神経線維の損傷の進行を低減させる。一例で
は、本方法は、神経ミエリンを回復させ、および/または、神経ミエリン損傷の進行を低
減させる。一例では、本発明の方法は、WO2015136541に開示された疾病また
は症状を、処置または予防し、および/または、本方法は、WO2015136541に
開示された方法と共に用いられ得る(当該文書の開示は、その全体が参照により本明細書
に組み込まれ、例えば、当該方法、疾病、症状および中枢神経系(CNS)および神経変
性の疾病および症状の処置および/または予防をもたらすために対象に投与され得る潜在
的治療薬(例えば、当該文書に開示される抗PD-1、抗PD-L1、抗TIM3、また
は他の抗体などの、免疫チェックポイント阻害剤などの薬)の開示を提供することを目的
とする)。
【0300】
本方法により処置または予防するがん
【0301】
処置され得るがんには、血管形成されていない、または実質的に血管形成されていない
腫瘍、ならびに、血管形成腫瘍が含まれる。がんは、非固形腫瘍(血液系腫瘍など、例え
ば、白血病およびリンパ腫)を含んでよく、あるいは、固形腫瘍を含んでもよい。本発明
で処置されるがんのタイプには、細胞腫、芽細胞腫、および肉腫、およびある種の白血病
、またはリンパ系悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、および悪性病変(malignanc
y)(例えば、肉腫、細胞腫、およびメラノーマ)が含まれるが、これらに限定されない
。成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんもまた含まれる。
【0302】
血液がんは、血液または骨髄のがんである。血液性(または血行性)のがんの例には、
急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄白血病、および、骨髄芽
球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病など
(promyeiocytic))、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性
骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキ
ン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度および高悪性度の)、多発性骨髄腫,ワルデンスト
レーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病および
骨髄形成異常症を含む、白血病が含まれる。
【0303】
固形腫瘍は、通常嚢胞または液体領域を含有しない、組織の異常な腫瘤である。固形腫
瘍は良性または悪性であることができる。さまざまなタイプの固形腫瘍は、それらを形成
する細胞のタイプ(肉腫、細胞腫、およびリンパ腫など)について、名前が付けられてい
る。肉腫および細胞種などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉
腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉
腫、結腸がん,リンパ系腫瘍、膵臓がん、乳がん,肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細
胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺癌、汗腺がん,甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、
褐色細胞腫皮脂腺細胞腫、乳頭がん,乳頭状腺がん、髄様がん,気管支原性肺癌、腎細胞
がん、肝細胞がん,胆管細胞腫、絨毛がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セ
ミノーマ、膀胱がん、メラノーマ、および中枢神経系(CNS)腫瘍(例えば、神経膠腫
(脳幹神経膠腫および混合神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られ
る)、星細胞腫、中枢神経系(CNS)リンパ腫,胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫、
頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、脳室上衣腫、松果体腫(pine
aioma)、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangio
ma)、神経芽腫、網膜芽細胞腫および脳転移)が含まれる。
【0304】
本方法により処置または予防する自己免疫性の疾病
・急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
・急性壊死性出血性白質脳炎
・アジソン病
・無ガンマグロブリン血症
・円形脱毛症
・アミロイドーシス
・強直性脊椎炎
・抗GBM/抗TBM腎炎
・抗リン脂質抗体症候群(APS)
・自己免疫性の血管浮腫
・自己免疫性の再生不良性貧血
・自己免疫性の自律神経障害
・自己免疫性の肝炎
・自己免疫性の高脂血症
・自己免疫性の免疫不全
・自己免疫性の内耳疾病(AIED)
・自己免疫性の心筋炎
・自己免疫性の卵巣炎
・自己免疫性の膵炎
・自己免疫性の網膜症
・自己免疫性の血小板減少性紫斑病(ATP)
・自己免疫性の甲状腺疾患
・自己免疫性のじんま疹
・軸索およびニューロンのニューロパシー
・バロ病
・ベーチェット病
・水疱性類天疱瘡
・心筋症
・キャッスルマン病
・セリアック病
・シャガス病
・慢性疲労症候群
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
・慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)
・チャーグ・ストラウス症候群
・瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡
・クローン病
・コーガン症候群
・寒冷凝集素症
・先天性心ブロック
・コクサッキー心筋炎
・CREST症
・本態性混合型クリオグロブリン血症
・脱髄性ニューロパシー
・ヘルペス状皮膚炎
・皮膚筋炎
・デビック病(視神経脊髄炎)
・円盤状ループス
・ドレッスラー症候群
・子宮内膜症
・好酸球性食道炎
・好酸球性筋膜炎
・結節性紅斑
・実験的アレルギー性脳脊髄炎
・エバンス症候群
・線維筋痛症
・線維性肺胞炎
・巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
・巨細胞性心筋炎
・糸球体腎炎
・グッドパスチャー症候群
・多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれた)
・グレーブス病
・ギラン・バレー症候群
・橋本脳炎
・橋本甲状腺炎
・溶血性貧血
・ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
・妊娠性疱疹
・低ガンマグロブリン血症
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
・IgA腎症
・IgG4関連硬化性疾病
・免疫調節性リポタンパク質
・封入体筋炎
・間質性膀胱炎
・若年性関節炎
・若年性糖尿病(1型糖尿病)
・若年性筋炎
・川崎症候群
・ランバート・イートン症候群
・白血球破砕性血管炎
・扁平苔癬
・硬化性苔癬
・木質性結膜炎
・線状IgA病(LAD)
・ループス(SLE)
・ライム病、慢性
・メニエール病
・顕微鏡的多発血管炎
・混合性結合組織病(MCTD)
・モーレン潰瘍
・ムッハ・ハーベルマン病
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・筋炎
・ナルコレプシー
・視神経脊髄炎(デビック病)
・好中球減少症
・眼の瘢痕性類天疱瘡
・視神経炎
・回帰性リウマチ
・PANDAS(Streptococcusに関連する小児自己免疫性精神神経疾患)
・傍腫瘍性小脳変性症
・発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)
・Parry Romberg症候群
・パーソネージ・ターナー症候群
・毛様体扁平部炎(周辺部ぶどう膜炎)
・天疱瘡
・末梢神経障害
・静脈周囲脳脊髄炎
・悪性貧血
・POEMS症候群
・結節性多発動脈炎
・多腺性自己免疫症候群I型、II型、およびIII型
・リウマチ性多発筋痛
・多発性筋炎
・心筋梗塞後症候群
・心膜切開後症候群
・プロゲステロン皮膚炎
・一次胆汁性肝硬変
・一次硬化性胆管炎
・乾癬
・乾癬性関節炎
・特発性肺線維症
・壊疽性膿皮症
・赤芽球癆
・レイノー現象
・反応性関節炎
・反射性交感神経性ジストロフィー
・ライター症候群
・再発性多発軟骨炎
・下肢静止不能症候群
・後腹膜線維症
・リウマチ熱
・関節リウマチ
・サルコイドーシス
・シュミット症候群
・強膜炎
・強皮症
・シェーグレン症候群
・精子および精巣の自己免疫性疾患(Spem&testicular autoimm
unity)
・全身硬直症候群
・亜急性細菌性心内膜炎(SBE)
・スザック症候群
・交感性眼炎
・高安動脈炎
・側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎
・血小板減少性紫斑病(TTP)
・トロサ・ハント症候群
・横断性脊髄炎
・1型糖尿病
・潰瘍性大腸炎
・未分化結合組織病(UCTD)
・ぶどう膜炎
・血管炎
・小水疱水疱性皮膚病
・白斑
・ウェゲナー肉芽腫症(現在は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれる)
【0305】
本方法により処置または予防する炎症性の疾病
・アルツハイマー病
・強直性脊椎炎
・関節炎(骨関節炎、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎)
・喘息
・アテローム動脈硬化症
・クローン病
・大腸炎
・皮膚炎
・腸憩室炎
・線維筋痛症
・肝炎
・過敏性腸症候群(IBS)
・全身性エリテマトーデス(SLE)
・腎炎
・パーキンソン病
・潰瘍性大腸炎
【0306】
一例では(例えば、混合細菌集団を包含する本発明の方法において)、宿主細胞(また
は第1の細胞または第2の細胞)の属または種は、表1に列挙した属または種から選択さ
れる。本発明の実施例において、Cas(例えば、タイプI、IIまたはIIIなどのC
asヌクレアーゼ、例えば、Cas3またはCas9)は、表1に列挙した属または種か
ら選択された属または種の細菌に含まれるCasであり、かつ、場合により、宿主細胞(
または第1の細胞または第2の細胞)は、同一の属または種の細胞である。この一例では
、Casは前記宿主細胞(または第1または第2の細胞)に内因性であり、このことは、
内因性Casが標的配列の改変に用いられる本明細書の実施形態にとって有用である。こ
の場合、HM-アレイは、前記細胞、属または種のリピート配列に少なくとも90、95
、96、97、98または99%同一(または100%同一)である、1つ以上のリピー
トヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)配列を含み得、それにより、Casは該細
胞において1つ以上の標的配列を改変するためにHM-アレイによってコードされるcR
NAと作動可能である。一例では、CasはタイプICasであり、タイプICASCA
DEと共に用いられ、ここで、Cas3およびCASCADEの1つまたは両方が、宿主
細胞または第1の細胞に内因性であるか、あるいは、ベクター媒介性である(すなわち、
宿主細胞または第1の細胞に外因性である)。
【0307】
一例では、本発明の方法は、微生物叢において第1の細胞を選択的に死滅する一方で、
第2の細胞は標的とせず、例えば、第2の細胞は、(a)第1の種の株に関連する株の細
胞であるか、または(b)第1の種と異なり、かつ第1の種と系統学的に関連する種の細
胞であり、第2の種または株が、第1の細胞の種または株の16sリボソームRNAをコ
ードするDNA配列と少なくとも80%同一である16sリボソームRNAをコードする
DNA配列を有する。ある実施形態では、第1の細胞は、表1から選択された第1の種の
細胞であり、かつ、第2の細胞は、表1から選択された異なる種の細胞である。一例では
、該種は、同じ属の種であり、または、異なる属の種である。
【0308】
本明細書に記載された特定の実施形態は例示として示されており、本発明の限定として
示されていないことは理解されるであろう。本発明の主たる特徴は、本発明の範囲を逸脱
することなく、様々な実施形態に採用することができる。当業者であれが、本明細書に記
載の特定の手順に対する多数の均等物を認識するか、または日常的な研究のみを用いて確
認することができるであろう。これらの均等物は本発明の範囲内にあると考えられ、特許
請求の範囲により包含される。本明細書中で言及されている全ての刊行物および特許出願
は、本発明が関係する当業者の技術レベルを示している。すべての刊行物および特許出願
ならびにすべての同等の米国特許出願および特許は、まるで各刊行物または特許出願が参
照により組み込まれることが、具体的かつ個別に示されたのと同程度に、参照により本明
細書に組み込まれる。特許請求の範囲および/または明細書中で「含む」という用語と一
緒に使用される場合の「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得る
が、「1つ以上」、「少なくとも一つ」、および「1つまたはそれより多い」の意味とも
一致する。請求項における用語「または」の使用は、本開示は、代替物および「および/
または」のみを指す規定を支持するが、代替物のみを指すように明示的に示されていない
限り、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使
用される。本出願を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために使
用されている装置、方法にとって固有の誤差の変動、または研究対象間に存在する変動を
含むことを示すために使用されている。
【0309】
本明細書および特許請求の範囲で使用されているように、「comprising」(
および「comprise」および「comprises」などの任意の形式のcomp
rising)、「having」(および「have」および「has」などの任意の
形式のhaving)、「including」(および「includes」および「
include」などのあらゆる形式のincluding)、または「contain
ing」(および「contains」および「contain」などのあらゆる形式の
containing)という単語は、包括的またはオープンエンドであり、さらなる、
記載されていないエレメントまたは方法のステップを除外するものではない。
【0310】
本明細書で使用される場合、「またはそれらの組み合わせ」または同様の用語は、その
用語の前に列挙された項目のすべての順列および組み合わせを指す。例えば、「A、B、C
、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうち
の少なくとも1つを含むことを意図しており、特定の文脈で順序が重要な場合は、BA、
CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABもまた含むことを意図してい
る。この例を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA
、CABABBなど、1つ以上の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせが明確に含
まれる。当業者であれば、文脈から他に明らかでない限り、典型的には任意の組み合わせ
における項目または用語の数に制限がないことを、理解するであろう。
【0311】
文脈から明らかでない限り、本開示の任意の部分は、本開示の任意の他の部分と組み合
わせて読むことができる。
【0312】
本明細書に開示され特許請求されている全ての組成物および/または方法は、本開示に
照らして過度の実験をすることなく製造および実行することができる。本発明の組成物お
よび方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、組成物および/または方法、な
らびに本明細書に記載の方法の工程または方法の工程の順序において、本発明の概念、精
神および範囲から逸脱することなく、変形が適用され得ることは当業者に明らかであろう
。当業者に明らかなこれらの類似の代替物および改変物はすべて、添付の特許請求の範囲
によって規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内にあるとみなされる。
【0313】
本発明は、以下の非限定的な実施例において、さらに詳細に記載されている。
【実施例0314】
実施例1:野生型内因性Casを利用することによる、特定の微生物叢細菌集団の増殖阻
害
1.材料および方法
1.1.株
【0315】
本実施例および実施例2および3の過程では、以下の株を用いた:E.coli MG
1655、E.coli TOP10、Streptococcus thermoph
ilus LMD-9(ATCC BAA-491、Manassas、Virgini
a)、Streptococcus thermophilus DSM 20617(
T)(DSMZ、Braunschweig、Germany)、Lactococcu
s lactis MG1363および Streptococcus mutans
Clarke 1924 DSM 20523(DSMZ、Braunschweig、
Germany)。
【0316】
培地選択および遺伝子構築物の試験の過程では、異なるStreptoccoci株を
用いた。適合性のある増殖要件のために、Streptococcus thermop
hilus LMD-9(ATCC BAA-491)およびEscherichia
coli TOP10が考えられた。全ての株は、他に示されない限り、好気的条件下お
よび37度で、Todd-Hewitt broth(TH)(T1438 Sigma
-Aldrich)中で培養した。株は、-80度で、25%グリセロール中で保存した
。
【0317】
1.2.分化増殖培地(Differential growth media)
全ての株を、37度で20時間、TH培地上で増殖させた。S.thermophil
usのための選択培地は、3g/lの2-フェニルエタノール(PEA)を添加したTH
培地であった。PEAを培地に添加し、15psiで、15分間121℃、オートクレー
ブ処理した。寒天プレートは、対応する培地に1.5%(wt/vol)寒天を添加する
ことにより調製した。選択またはプラスミド維持のために必要な場合、30μg/mlの
カナマイシンをS.thermophilus株およびE.coliの両方に使用し、5
00μg/mlをS.mutansに使用した。
【0318】
いくつかの場合では、株およびプラスミドに応じて、PEAを添加して培地上での増殖
を見るには、最大48時間のより長い培養が、必要とされ得る。用いる生物の生存率を制
御するためには、並行してコントロールTH寒天培地を行わなければならない。
1.3.クローニング
【0319】
E.coli(One Shot(登録商標)Thermo Fisher TOP1
0ケミカルコンピテント細胞)をすべてのサブクローニング手順に使用した。Phusi
onポリメラーゼを用いてPCRを行った。製造元のプロトコールに従って、全てのPC
R産物を、Macherey-NagelのNucleospin GelおよびPCR
Clean-upにより精製した。精製した断片を、総量34μl中に1μlの酵素を
含む1×FD緩衝液において、制限酵素DpnIで分解した。製造元のプロトコールに従
って、分解反応物を再び、Macherey-NagelのNucleospin Ge
lおよびPCR Clean-upで精製した。製造元(NewEngland Bio
lab)のプロトコールに従って、10μlの反応液中で、ギブソン・アセンブリを行っ
た。
【0320】
製造元の説明書に従い、Qiagenキットを用いて、プラスミドDNAを調製した。
グラム陽性株に対する改変は、細胞溶解を促進するために0.5%グリシンおよびリゾチ
ームを添加した培地中で細菌を増殖させることを含んだ。
【0321】
1.4.形質転換
1.4.1 エレクトロコンピテントE.coli細胞および形質転換
市販のエレクトロコンピテント細胞(One Shot(登録商標)ThermoFi
scher TOP10 ケミカルコンピテントE. coli)を、クローニングおよ
び実験に用いた。エレクトロポレーションは、標準設定を用いて行った:Electro
Cell Manipulator(BTX Harvard Apparatus
ECM630)を用いて1800V、25μFおよび200Ωで行った。パルスの後、1
mlのLB-SOC培地を添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートした。形質転換
細胞を、50μg/mlのカナマイシンを含有する、LB寒天培地にプレーティングした
。
【0322】
1.4.2 エレクトロコンピテントS.thermophilus細胞の調製
エレクトロポレーションプロトコールは、Somkuti and Steinberg, 1988から改変した
。40mMのDL-スレオニン(T8375 Sigma - Aldrich)を添加し
たTH Broth中のStreptococcus thermophilusの一晩
培養した培養液を、5mlの同じ培地中で100倍希釈し、0.3~0.5の間のOD6
00まで増殖させた(播種後約2.5時間)。細胞を、10,000×g、4℃で10分
間遠心分離することにより回収し、5mlの氷冷洗浄バッファー(0.5Mショ糖+10
%グリセロール)で3回洗浄した。細胞を洗浄後、エレクトロポレーションバッファー(
0.5Mショ糖、10%グリセロールおよび1mM MgCl2)にOD600が15~
30になるように懸濁した。エレクトロポレーションバッファー中の細胞は、使用するま
で、4℃で保存され得るか(1時間以内)、あるいは、エッペンドルフチューブに50μ
lずつ分注し、液体窒素中で凍結し、後で使用するために-80℃で保管され得る。
【0323】
1.4.3 S.thermophilus細胞のエレクトロポレーション
1μlの精製プラスミドDNAを、50μlの細胞懸濁液に添加し、予冷した2mmギ
ャップのエレクトロポレーションキュベットでエレクトロポレーションを実施した。エレ
クトロポレーションの設定は、Electro Cell Manipulator(B
TX Harvard Apparatus ECM630)を用いて、2500V、2
5μFおよび200Ωであった。電気パルスの直後に、1mlのTH brothを細胞
に添加し、懸濁液を氷上で10分間保存し、続いて、細胞を37℃で3時間インキュベー
トした。耐性遺伝子が発現するのを待った後、細胞を30μg/mのカナマイシンを含有
するTH-寒天プレート上にプレーティングした。構築物に応じて、コロニーは、37℃
で12時間~48時間インキュベーションする間に出現した。
【0324】
1.5.XylSプラスミドの構築
本研究に使用したすべてのプラスミドは、Streptococcus cremor
isの潜在プラスミドpWV01に由来する広宿主域発現ベクターであるpBAV1K
- T5に基づいており(Bryksin&Matsumura、2010)、ギブソン
法を使用して他のフラグメントとアセンブルするためのオーバーハングを含むものを用い
て主鎖を増幅した。
【0325】
XylRリプレッサーの前にプロモーターgyrAをクローニングすることにより、キ
シロース誘導性システムを構築した(
図1)。XylRリプレッサーは、ギブソン・アセンブ
リのためのオーバーハングを含むリバースプライマー、並びに、gyrAプロモーター(
Xie et al.2011)およびpBAV1KT5主鎖にアセンブルするための対応するオーバー
ハングを導入するのに使用されるウルトラマー(ultramer)であるフォワードプ
ライマーで、Bacillus Subtilis株SCK6 (Zhang et al. 2011)から
増幅した。得られた断片を、pCL002から増幅されたmCherry(未発表の研究
)に、Pldha+PxylAハイブリッドプロモーターを含むウルトラマーで隣接させ
た(Xie et al.2013)。得られた3つのPCR産物は、製造元の説明書に従い、Gibs
on Master Mix(登録商標)(NewEngland Biolab)中で
アセンブルした。該産物を、最後に、E.coli TOP10エレクトロコンピテント
細胞に形質転換した。
図1参照。
【0326】
1.6. CRISPRアレイプラスミドの設計および構築
Streptococcus thermophilusは4つの異なるCRISPR
システムを有し(Sapranauskas, et al. 2011)、本研究ではタイプIICRISPR1
(ST1-CRISPR)システムを選択した。標的配列の設計は、LMD-9(Gen
Bank:CP000419.1)の入手可能なゲノム配列に基づいた。ST1-CRI
SPRアレイは、キシロース誘導性プロモーター(Xie et al. 2013)の支配下に、CRI
SPRアレイリピートおよびスペーサーのみを含有し、その後ろに、Streptoco
cci speciesの強力な構成的プロモーター(Sorg et al. 2014)の支配下に対応
するtracrRNAを含有するように、設計した(
図2、配列番号)。
【0327】
tracrRNAは、crRNAの成熟において役割を果たし、S.thermoph
ilus内因性RNaseIIIによってプロセシングされ、crRNAと複合体を形成
する。本複合体は、エンドヌクレアーゼST1-Cas9のためのガイドとして機能する
(Horvath & Barrangou, 2010)。キシロース誘導性プロモーターからの合成アレイの転写
後、内因性Cas9およびRNAseはそれを機能的gRNAにプロセシングするであろ
う。gRNA/Cas9複合体が、標的部分で、二重鎖切断を引き起こすであろう。
【0328】
該アレイの設計は、GC含有量が高い2つの特異的標的配列およびtracrRNAの
縮小された部分(すなわち、完全ではないtracrRNA配列)を使用しており、該部
分は、crRNAの適切な成熟に必要ではないことが示唆されている(Horvath & Barrang
ou, 2010)。
【0329】
2つの標的は、必須遺伝子(DNAポリメラーゼIIIサブユニットα)および抗生物
質耐性遺伝子(tetA様遺伝子)(配列番号)であった。
【0330】
プライマーを用いて、pBAV1KT5-XylR-PldhA主鎖を増幅した。CR
ISPRアレイgBlockおよびオーバーハングを有する該主鎖を、製造元(NewE
ngland Biolabs)の説明書に従い、Gibson Master Mix
(登録商標)中でアセンブルした。該産物を、最後に、E.coli TOP10エレク
トロコンピテント細胞に形質転換した。
【0331】
1.7.Streptoccocus thermophilus LMD-9における
キシロース誘導性システムの特徴付け
一晩培養した定常期の培養液を、対応する抗生剤を含むTHbrothに1:100で
希釈した。対数増殖期中期の細胞を、様々な濃度のD-(+)-キシロース(0、0.0
01、0.01、0.1、0.5および1%wt/vol)で誘導して、細胞培養液を培
地中で直接測定して、培地の自己蛍光の程度を、細胞懸濁液または懸濁バッファー(PB
Sバッファー)上で評価した。20μlの細胞培養液サンプルを、平底の96ウェルプレ
ート上のPBSバッファーで1/10に希釈した。細胞懸濁液または培地の蛍光を、プレ
ートリーダーで読んだ。558nmの励起波長および612nmでの発光を用いてmCh
erry蛍光を測定した。再懸濁した細胞の吸光度を、OD600nmで測定した。各実
験について最低3回の独立した生物学的反復試験を行った。
【0332】
1.8.S.thermophilusにおけるCRISPRアレイの活性化
S.thermophilusのDNAポリメラーゼIIIおよびをtetA標的とす
るCRISPRアレイを含有するプラスミドおよびを共に有する、S.thermoph
ilus LMD-9およびE.coli TOP10を、プラスミド維持のための30
μg/mlのカナマイシンを添加した3mlの培養液中で一晩増殖させた。翌日、96ウ
ェルのディープウェルプレートに、30μg/mlのカナマイシンを添加した新鮮なTH
培地中で一晩培養した培養液を100倍希釈して、500μl接種した。対数増殖期中期
の細胞培養液を、1%キシロースで誘導した。死滅効果はS.thermophilus
およびE.coli単独で試験した。試験した各株および条件について、ネガティブコン
トロールをキシロースなしで維持した。細胞をOD約0.5まで増殖させ、次にTH培地
中で10倍段階希釈し、96ウェルレプリケーター(Mettler Toledo Li
quidator(商標)96)を使用して5μLの体積の液滴を、TH寒天プレート上
およびg/lのPEAを添加したTH寒天プレート上にスポットした。プレートを、37
℃で24時間インキュベートして、コロニー形成率(CFU)を3回測定から計算した。
【0333】
2.結果
2.1 増殖条件および選択培地
本発明者らは、最初に、共培養実験に使用することを計画した全ての菌株について増殖
を支持するであろう細菌株および培養プロトコールを確立することに着手した。本発明者
らは、37℃のTHブロス中でE.coliと同様の増殖を支持することができたS.
thermophilus株LMD-9を使用した(
図3)。
【0334】
混合培養液から異なる細菌を区別することは、異なる種の細胞数を決定するために重要
である。マッコンキー寒天培地を用いると、大腸菌を選択的に増殖させることが可能であ
るが、S.thermophilusの選択的増殖のための特定の培地は存在しない。P
EA寒天培地はグラム陰性菌(E.coli)からグラム陽性菌(S.thermoph
ilus)を単離するために使用される選択培地である。さらに、本発明者らは、異なる
濃度のPEAが他のグラム陽性菌の増殖を部分的に阻害することを見出した。これにより
、本研究で使用した他のグラム陽性菌の間の選択が可能になる(
図4)。3g/lのPE
Aは、E.coliの増殖を制限しながら、S.thermophilus LMD-9
を選択的に増殖させることが証明された。3g/lのPEAは、E.coliの増殖を制
限しながら、S.thermophilus LMD-9を選択的に増殖させることが証
明された。
【0335】
2.2.誘導システムの設計と検証
Streptococcus種の誘導システムは、以前は、Bacillus meg
ateriumキシロースオペロン(
図5)に基づいて、異種のキシロース誘導カセット
(Xyl-S)を作成することによって開発されていた。xylRおよびxylAプロモ
ーターを、それぞれ、S.mutansの恒常的に発現されるgyrAおよびldhプロ
モーターで置換した。Streptococcus種に対するこの発現カセットは、異な
る種間で、感度および発現レベルに違いがあったが、該システムはS.thermoph
ilusでは試験しなかった(Xie et al. 2013)。従って、発明者らは、最初に、S.
thermophilusにおいてキシロース誘導カセットを検証することに着手した。
【0336】
誘導カセットの代替バージョンを、xylRプロモーターをS.mutansのgyr
Aプロモーターと置き換えるだけで、内因性B.megateriumのxylAプロモ
ーターをそのままにして構築した。キシロース誘導性システムの設計中に、Bacill
us megateriumに見いだされる天然型P
XylAプロモーターと、P
Xyl
Aプロモーターのリプレッサー結合部位と融合した高度に保存されたプロモーターPld
haのハイブリッドプロモーターの、両方のバージョンの誘導性プロモーターを検討した
(
図5)。キシロースを代謝すると報告されているStreptococcus種はごく
わずかであるため、他のStreptococcus種におけるxylAプロモーターを
認識するための調節機構の存在はありそうもない。従って、我々は両方のキシロース誘導
システムを構築したが、P
ldha + XylAシステムを用いたmCherryの誘
導性のみを試験した。
【0337】
キシロースによるmCherry誘導発現を決定するために、プラスミド(pBAV1
KT5-XylR-mCherry-P
ldha+XylA)を有する細胞の対数増殖期
中期の培養液を、異なる濃度のキシロースで誘導した。誘導の6時間後に、培養液中のm
Cherry蛍光を測定し、プラスミドを保持している細胞において、全体的にかなり高
い発現レベルが観察された(
図6)。キシロースが添加されていない培養液においても、
該システムが相当なレベルの基礎発現を示したことは注目に値する。これは、該システム
が「リーキー(leaky)」であることを意味しており、死滅アレイ(kill-ar
ray)の場合、該システムがキシロースで誘導される前であっても細胞死を招く可能性
がある。しかしながら、本研究の後の過程において、我々はプラスミドバージョンの両方
(pBAV1KT5-XylR-mCherry-P
ldha+XylAおよびpBAV
1KT5-XylR-mCherry-P
xylA)を用いた。
【0338】
2.3 CRISPR/CAS9アレイの設計
CRISPRアレイのゲノムを標的とするスペーサーがS.thermophilus
LMD-9の死を引き起こす可能性があるかどうかを決定するために、我々は既に構築
した2つのキシロース誘導性システム(pBAV1KT5-XylR-mCherry-
P
ldha+XylAおよびpBAV1KT5-XylR-mCherry-P
xylA
)に、設計したCRISPRアレイを挿入した。これらのプラスミドにおいて、mChe
rryを、CRISPRアレイを含有するgBlockで置換した(
図7)。P
ldha
+XylAプロモーターを有する変異体は、P
xylAを有する変異体よりも強く、かつ
、より高い基礎活性を有することが予想された(Xie et al.2013)。
【0339】
2.4. 内因性Cas9を用いた細菌集団の増殖の阻害
E.coliでプラスミドを構築した後、該プラスミドをS.thermophilu
sに形質転換した。これにより、特定の細菌種の細胞の死を引き起こす可能性があるかど
うかを決定することができるであろう。興味深いことに、強いP
ldh+XylAハイブ
リッドプロモーターを含有するプラスミドにさらされたS.thermophilusの
細菌宿主集団サイズ(寒天プレート上で細菌を増殖させて、コロニー数をカウントするこ
とによって示される)は、弱い、正常なP
xylAプロモーターを含有するプラスミドに
さらされたS.thermophilusと比較して10倍小さかった(
図8;強力なア
レイ発現を有する52個のコロニー対弱いアレイ発現を有する556個のコロニー、10
.7倍の差)。これら2つの株は、同じバッチのエレクトロコンピテントS.therm
ophilus細胞を用いて同時に形質転換された。これは、S.thermophil
us遺伝子を標的とするCRISPRアレイを保有するプラスミドが、内因性Casヌク
レアーゼおよびRNaseIIIを使用して細胞を死滅させることができ、それによって
集団の増殖を10倍阻害できることを示唆している。
【0340】
我々は、PxylAプロモーターを含むプラスミドによって形質転換された宿主細胞に
おける弱いアレイ発現が、強力なプロモータープラスミドを用いた場合よりはるかに少な
いにもかかわらず、ある程度の細胞の死滅をもたらしたと予想する。我々は、強力なアレ
イ発現の活性が、いずれのアレイをコードするプラスミドにも曝露されていないS th
ermophilus(腸内微生物叢から直接分離された細菌など)と比較された場合、
観察された10倍阻害よりも大きい集団増殖阻害が決定されるであろうと我々は予想する
。したがって、我々は、内因性Casヌクレアーゼを利用するための宿主細胞におけるア
レイ(またはシングルガイドRNA)発現は、本明細書に記載の環境的、医学的および他
の状況において標的宿主細胞の効果的な増殖阻害を提供するために有用であろうと信じて
いる。抗生物質の同時投与はまた、特に1つ以上の抗生物質耐性遺伝子を標的とする場合
に、増殖阻害を増強するのに有用であろう。
【0341】
3.考察および展望
本研究において、内因性Cas9システムを用いてS.thermophilusを特
異的に死滅させるためのCRISPRアレイの設計に着手した。死滅シグナルを制御する
ために、我々はS.thermophilusに適用することができる誘導システムを適
用しようとした。B.megaterium由来のキシロース誘導性XylRシステムは
、既にS.mutansにおいて適用されているが(Xie, 2013)、S.thermop
hilusにおいては適用されていない。本研究では、S.thermophilusに
おいて、設計したXylR-mCherry-Pldha回路(circuit)を用い
てxylR誘導システムの機能性を検証した。我々は、0.1%wt/volが、S.t
hermophilusにおいてXylRシステムを完全に誘導するのに十分であること
を見出した(
図6)。
【0342】
S.thermophilusとE.coliとを共培養する場合に存在量を観察する
ために、3g/lのPEAを培養培地に添加することにより、E.coliの増殖を制限
しながらS.thermophilusを選択的に増殖させることを確立した(
図4)。
【0343】
S.thermophilus LMD-9ゲノムにおいてDNAポリメラーゼIII
サブユニットおよびtetA様遺伝子を標的とするST1-CRISPRアレイを、キシ
ロース誘導性プロモーター(Xie et al. 2013)支配下に置いた。これらの領域を標的と
することは、二重鎖切断を引き起こし、それゆえにS.thermophilusの生存
率を制限するはずである(
図9)。操作されたアレイは、コードされたCRISPRアレ
イをプロセシングするための内因性CRISPR/Cas装置を用いてS.thermo
philusゲノムを標的とするように設計されているので、該アレイは、E.coli
などの無関係な株の増殖に影響を及ぼさないと予想され、そのゲノム上に見出し得る同様
の標的にさえ、影響を及ぼさないと予想される。実施例3で論じるように、このことは混
合細菌集団(ヒト微生物叢の局面を模倣する)において試験することに成功した。
【0344】
表面上での宿主細胞増殖を阻害する能力の実証は、本発明がヒトまたは動物対象におい
て本明細書中に開示される微生物叢によって媒介または引き起こされる疾病または症状を
治療または予防することを目的とした実施形態において、重要かつ望ましい。これらの微
生物叢は、典型的には対象の組織(例えば、腸組織)と接触しており、従って、表面上で
の微生物叢細菌種(Streptococcusにより例示される)の増殖を阻害する活
性の実証が、この実用性を指示すると信じている。
【0345】
実施例2:異なる株における、特定の微生物叢細菌集団の増殖阻害
実施例1は、Streptococcus thermophilus LMD-9の
特異的な増殖阻害を実証した。ここに、増殖阻害が、第二の株:Streptococc
us thermophilus DSM 20617においても得られ得ることを実証
する。実施例1に記載した方法を、それゆえ、後者の株に適用した(ただし、S.the
rmophilus DSM 20617の選択培地は、2.5g/lの2-フェニルエ
タノール(PEA)を添加したTH培地であったことを除く)。
【0346】
CRISPRアレイプラスミドで形質転換したStreptococcus ther
mophilus DSM 20617を、回復のために37℃で3時間、液体培地中でイ
ンキュベートして、カナマイシン耐性の発現を可能にした。回復期間の後、細胞の死を誘
導するために、細胞を1%キシロースの存在下で、およびコントロールとしてキシロース
なしで、異なる選択培地中にプレーティングした(
図10)。(1)キシロース誘導によ
りS.thermophilusの増殖を阻害することができ(「強い」プロモーターは
、コントロールの約10倍)、(2)「強い」システム(pBAV1KT5-XylR-
CRISPR-PldhA)は「弱い」システム(pBAV1KT5-XylR-CRI
SPR-PxylA)よりもより増殖低下をもたらすことが明らかである。
【0347】
実施例3:異なる微生物叢の種の混合共同体における、選択的細菌集団増殖阻害
次に、これらの種の混合集団における、特定の細菌種の選択的増殖阻害を実証した。ヒ
トおよび動物の腸内微生物叢に見出される種を選択した(S thermophilus
DSM 20617(T)、Lactobacillus lactisおよびE c
oli)。これがS thermophilusの種の選択的死滅の能力に影響を与える
かどうかを確かめるために2つのグラム陽性種(S thermophilusおよびL
lactis)を含めた;さらに、複雑さを増すために(および、微生物叢の状況をよ
り厳密に模倣するために)、S thermophilusに系統学的に関連する種(2
つの種間の16sリボソームRNAの高い配列同一性によって示される)であるがゆえに
L lactisを選択した。S thermophilusおよびL lactisは
共に、ファーミキューテス門(Firmicutes)である。さらに、微生物叢を模倣
するために、ヒト片利共生腸内種(E coli)を含めた。
【0348】
1.材料および方法
実施例1で設定した方法を用いた(ただし、選択培地が、2.5g/lの2-フェニル
エタノール(PEA)を添加したTH培地であることを除く)。
【0349】
1.1 エレクトロコンピテントL.lactis細胞の調製
0.5Mショ糖および1%グリシンを添加したTH培地中のL.lactisの一晩培
養した培養液を、5mlの同じ培地中で100倍希釈し、0.2~0.7の間のOD60
0まで30℃で増殖させた(播種後約2時間)。
細胞を、7000×g、4℃、5分間で回収し、5mlの氷冷洗浄バッファー(0.5M
ショ糖+10%グリセロール)で3回洗浄した。細胞を洗浄後、エレクトロポレーション
バッファー(0.5Mショ糖、10%グリセロールおよび1mM MgCl2)にOD6
00が15~30になるように懸濁した。エレクトロポレーションバッファー中の細胞は
、使用するまで、4℃で保存されたか(1時間以内)、あるいは、エッペンドルフチュー
ブに50μlずつ分注し、液体窒素中で凍結し、後で使用するために-80℃で保管され
た。全ての種に対するエレクトロポレーションの条件は、実施例1に記載した通りであっ
た。
【0350】
1.2 CRISPRアレイの活性化:共同体実験。
S.thermophilusDSM 20617、L.lactisMG1363お
よびE.coliTOP10を、S.thermophilusのDNAポリメラーゼI
IIおよびtetAを標的とするCRISPRアレイを含有するプラスミドで遺伝子形質
転換した。形質転換の後、全ての細胞を単独で、および、共培養で、37℃で3時間増殖
させ、プラスミド中にコードされた抗生物質耐性を発現させるための回復を可能にした。
CRISPRでコードされた増殖阻害の読み取りとして形質転換効率を使用することとし
た。それゆえ、細胞を回復させた後に、培養液をTH培地にプレーティングした。TH培
地にはPEAを添加し、マッコンキー寒天培地には全てカナマイシンを添加し、1%キシ
ロースで誘導した。
【0351】
2.結果
2.0 L.lactis、E.coliおよびS.thermophilusの間の系
統発生的距離
S.thermophilusおよびL.lactisの16S rRNAをコードす
るDNA配列における計算される配列類似性は83.3%と決定された。以下の16S配
列を用いた:E.coli:AB030918.1、S.thermophilus:A
Y188354.1、L.lactis:AB030918。
配列はニードル(needle)(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucl
eotide.html)で、以下のパラメーターを用いてアライメントした:-gapopen10
.0-gapextend0.5-endopen10.0-endextend0.5
-aformat3pair-snucleotide1-snucleotide2。
図11は、S.thermophilus、L.lactisおよびE.coli由来の
16S配列の最尤系統樹を示している。
【0352】
2.1増殖条件および選択培地
S.thermophilusおよびL.lactisは一般的に多くの発酵食品やヨ
ーグルトに一緒に使用されている。これらは、宿主と密接な関係を形成する腸内微生物で
あることが一般的に知られていること、および、S.thermophilusおよびL
.lactisの16SリボソームRNA領域の以前の特徴付けで、これらの生物が系統
学的に密接に関連していることを示したこと(Ludwig et al。、1995)から、これらの株
を選択した。同時に、E.coliもまた、腸微生物群集においても一般的に見られるの
で、我々の混合集団共培養実験のためにE.coliの増殖もまた評価した。最初に、我
々が共培養実験に使用することを計画した全ての菌株の増殖を支持するであろう、細菌株
および培養プロトコールを確立することに着手した。我々は、全ての株が37℃でのTH
ブロス中での増殖を支持することができることを見出した(
図3)。
【0353】
混合培養液から異なる細菌を区別することは、異なる種の細胞数を決定するために重要
である。マッコンキー寒天培地を用いると、大腸菌を選択的に増殖させることが可能であ
るが、S.thermophilusの選択的増殖のための特定の培地は存在しない。P
EA寒天培地はグラム陰性菌(E.coli)からグラム陽性菌(S.thermoph
ilus)を単離するために使用される選択培地である。さらに、異なる濃度のPEAが
異なるグラム陽性菌および株の増殖を部分的に阻害し、これにより、本研究で使用した他
のグラム陽性細菌の間の選択が可能になる。2.5g/lのPEAの使用は、L.lac
tisおよびE.coliの増殖を制限しながら、S.thermophilusを選択
的に増殖させることが証明された。
【0354】
全ての株を、カナマイシン選択マーカーを有するpBAV1KT5のベクター主鎖を用
いたプラスミドで形質転換した;我々は、プラスミドを維持しながら細胞を増殖させるの
に、30μg/mlのカナマイシンを添加した培地を用いることは十分であることを見出
した。
【0355】
2.3 混合集団における形質転換および選択的増殖阻害
我々は、S.thermophilus、L.lactis、およびE.coliを、
CRISPRアレイを含むプラスミドで形質転換し、それら全ての細菌種を等分に組み合
わせた共同体で培養した。これにより、S.thermophilusにおいて細胞の死
を特異的に引き起こす可能性があるかどうかを判断できるであろう。全ての種を、pBA
V1KT5-XylR-CRISPR-PXylAまたはpBAV1KT5-XylR-
CRISPR-Pldha+XylAプラスミドのいずれかで形質転換した。
【0356】
図12は、pBAV1KT5-XylR-CRISPR-PxylAまたはpBAV1
KT5-XylR-CRISPR-PldhA+XylAプラスミドのいずれかを有する
E.coli、L.lactisおよびS.thermophilusの共培養物におけ
るS.thermophilusの選択的増殖阻害を示す。pBAV1KT5-XylR
-CRISPR-PxylAまたはpBAV1KT5-XylR-CRISPR-Pld
hA+XylAプラスミドを有するE.coli(中央の列)の間で増殖の違いは観察さ
れない。しかしながら、S.thermophilus(2.5μl/1PEAを添加し
たTH寒天プレート上で選択的に増殖させた、最後の列)は、pBAV1KT5-Xyl
R-CRISPR-PxylA(強い)またはpBAV1KT5-XylR-CRISP
R-PldhA(弱い)プラスミドの間で、予想通り形質転換効率の低下を示す。従って
、細胞の混合集団における標的とするS thermophilus亜集団の選択的増殖
阻害を実証した。
【0357】
参考文献
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【0358】
実施例4:混合腸内微生物叢集団におけるClostridium dificileの
比率の変更
細菌の比率の変更は、混合腸内微生物叢サンプル中のClostridium dif
icile細菌のノックダウンを参照して記載されている本実施例に従って行われるであ
ろう。該サンプルは、Bacteroidesおよびメトロニダゾール(MTZ)耐性C
dificile株630亜集団を含有するであろう。エクスビボで、該混合集団を、
CRISPRアレイを含むように操作されているキャリア細菌(Lactobacill
us acidophilus La - 14および/またはLa - 5)の集団と組み合
わせる。
【0359】
各CRISPRアレイは、キャリア細菌およびC dificile細胞と互換性のあ
るプラスミドに含まれている。該アレイは、oriT、intDOT配列、tetQ-r
teA-rteBオペロン、rteCおよびオペロンxis2c-xis2d-orf3
-excもまた含むBacteroides thetaiotamicron CTn
Dotトランスポゾンに含まれる。ある実験では、mobおよびtraオペロンは除かれ
る(その代わりに、トランスポゾンがキャリア細菌と組み合わされた混合物中で移送され
るBacteroidesの細胞によって供給されるオペロンに依存する)。別の実験で
は、mobおよびtraオペロンがトランスポゾンに含まれている。
【0360】
細胞質膜を横切るタンパク質移行は、全ての細菌において必須の過程である。その中核
にATPaseであるSecA、および膜チャネルであるSecYEGを含むSecシス
テムは、このタンパク質輸送の大部分を担っています。第2の並行するSecシステムが
、多くのグラム陽性種において記載されている。この付属の(accessory)Se
cシステムは、活性化ATPaseの第2のコピー、SecA2の存在を特徴としており
、研究されているところでは、SecA2はSec基質のサブセットの移行を担っている
。多くの病原性のグラム陽性種と共通して、Clostridium difficil
eは2コピーのSecAを持っている。表層タンパク質(SLP)およびさらには細胞壁
タンパク質(CwpV)の排出はSecA2に依存している。SLPの細胞質前駆体Sl
pAおよび他の細胞壁タンパク質の蓄積は、細胞壁における成熟SLPのレベルの減少と
同時に、ドミナントネガティブなsecA1またはsecA2対立遺伝子を発現する細胞
において観察される。さらに、SecA1またはSecA2のドミナントネガティブ対立
遺伝子またはアンチセンスRNAのいずれかのノックダウンの発現は、増殖を劇的に損な
い、このことは両方のSecシステムがC.difficileに必須であることを示し
ている。
【0361】
C.difficile株630(流行型X)は、4,290,252bp(G+C含
有量=29.06%)の単一環状染色体および7,881bp(G+C含有量=27.9
%)の環状プラスミドを有する。全ゲノムの配列決定がなされ、ゲノムの11%が接合性
トランスポゾンなどの可動遺伝因子からなることが見出された。これらのエレメントは、
その抗微生物剤耐性、病原性、宿主相互作用および表面構造の生産に関与する遺伝子をC
.difficileに提供する。例えば、C.difficileのcdeA遺伝子は
多剤排出ポンプを生産し、これは多剤および毒性化合物排出(MATE)ファミリーの既
知の排出トランスポーターと相同であることが示された。このタンパク質は、細胞からの
薬物のエネルギー依存性およびナトリウム結合型排出を促進する。さらに、C.diff
icileのcme遺伝子は、他の細菌において多剤耐性を与えることが示されている。
【0362】
該アレイは、C dificile細胞の必須遺伝子(SecA2)において、ある配
列を標的とするための、R1-S1-R1’CRISPRユニット(2つのCRISPR
リピートが隣接するスペーサー)を含む。別の実験では、標的化は、MTZおよび場合に
よっては1つ以上の他の抗C dificile抗生物質の存在下での、cdeA遺伝子
に対するものである。各スペーサー(S)は、SecAまたはcdA遺伝子の20mer
のヌクレオチド配列を含み、ここで、該配列は、リピート配列にコグネイトなC dif
icile株630CRISPR/CasシステムのPAMを含む。各リピートは、C
dificile株530リピートに同一である。
【0363】
該リピートは、混合集団におけるC dificile細胞に内因性であるCasと共
に機能する。細菌の混合集団は、C dificile感染症に罹患しているヒト患者の
便サンプルから、エクスビボサンプルとして回収される。混合集団をインビトロでキャリ
ア細菌と混合し、テトラサイクリンの存在下で腸の条件を模倣するために、好気的条件下
で、37℃でインキュベートする。CRISPRアレイを含有するトランスポゾンは、混
合物中のBacteroidesおよびC dificile細胞に移行すると予想され
る。さらに、さらに、後者の細胞中の標的部位はCasヌクレアーゼ作用によって切断さ
れ、それによって混合集団中のC dificileの割合を低減させる(そしてC d
ificileに対するBacteroidesの割合が増加する)と予想される。
【0364】
その後の実験では、キャリア細菌を含む飲料が生産され、これは、制酸剤の有無にかか
わらず、数日間連続して1~2回ヒト患者によって消費される。該患者にはまた、処置の
期間にテトラサイクリンが投与される。便解析により、便サンプル中のC difici
leの割合が低減する(そしてC dificileに対するBacteroidesの
比率が増加する)ことが明らかになるだろうと予想される。
【0365】
実施例5:ベクターにコードされた、混合細菌共同体における種および株の選択的増殖阻
害のためのシステム
実施例3において、驚くべきことに、異なる種の混合共同体における選択的集団増殖阻
害のために宿主細菌における内因性Casヌクレアーゼ活性を利用する可能性を確立した
。次に、異なる種の混合共同体における選択的集団増殖阻害のために、代わりにベクター
にコードされたCas活性を使用する可能性を探った。3つの異なる種の混合集団におけ
る特定の細菌種の選択的増殖阻害を実証し、そしてさらに標的細菌とは別の株を含んだ選
択的増殖阻害を実証した。驚くべきことに、所定の標的種のうちの標的株のみの選択的増
殖阻害を示すことができた。さらに、該別の株は、ベクターにコードされたCRISPR
/Casシステムによって標的とされず、ヒトまたは動物の腸内微生物叢エレメントを模
倣した混合細菌共同体におけるこれらのベクター媒介性システムの細かな特異性を確立す
るのに望ましかった。
【0366】
ヒトおよび動物の腸内微生物叢で見出された種を選択した(Bacillus sub
tilis、Lactobacillus lactisおよびE coli)。ヒト片
利共生腸内種であるE.coliの2つの株を含んだ。密接に関連した株ではあるが、一
方の株では標的死滅に使用できるが、もう一方の株では標的死滅に使用できない配列の違
いを有する株を、区別できるかどうかを確認することは興味深いと考えた。これは、微生
物叢中のE coliのいくつかの株が望ましく、一方で他の株は望ましくなく(例えば
、ヒトまたは動物に対して病原性である)、したがって、その株をノックダウンするCa
s改変の標的となり得るため、興味深かった。
【0367】
1.材料および方法
1.1.プラスミドおよび株
表7および表8を参照されたい。全ての株は、他に示されない限り、好気的条件下でT
odd-Hewitt broth(TH)(T1438 Sigma-Aldrich
)において、37℃で培養した。株は、-80℃で、25%グリセロールで保管した。
【0368】
自己標的化sgRNA-Cas9複合体は、テオフィリンリボスイッチおよびAraC
/PBAD発現システムによってそれぞれ厳密に調節された。E.coli内で安定に運
ばれるためには、Cas9の厳密な調節が望ましい。プラスミドは、E.coliのK-
12株を標的とするシングルガイドDNA(sgRNA)と共に、Streptococ
cus pyogenes由来の外因性のCas9を含んでいた。したがって、K-12
由来株TOP10は、システムが活性化されたときに二本鎖自己切断およびその結果とし
ての死を受けやすかった。NissleなどのE.coli株は同じ標的配列を持ってい
ないため、sgRNA-Cas9活性の影響を受けなかった。実施例9において用いた配
列を示す、以下の表9~11を参照されたい。標的細胞に保存され、複数のコピー(7コ
ピー)で存在する標的配列(リボソームRNAをコードする配列)を選択した。これによ
り、宿主細胞ゲノムを複数の場所で切断する確率が増加し、シングルgRNAデザインを
用いた死滅を促進した。
【0369】
図13は、spCas9の発現およびリボソームRNAサブユニット16sを標的とす
る自己標的化sgRNAを制御する調節因子を示す。
【0370】
1.2. 分化増殖培地
全ての株は、37度で20時間、TH培地上で増殖させた。B.subtilisのため
の選択培地は、2.5g/lの2-フェニルエタノール(PEA)を添加したTH培地で
あった。PEAを培地に添加し、15psiで、15分間121℃、オートクレーブ処理
した。寒天プレートは、対応する培地に1.5%(wt/vol)寒天を添加することに
より調製した。
【0371】
1.3. クローニング
E.coli(One Shot(登録商標)Thermo Fisher TOP1
0ケミカルコンピテント細胞)をすべてのサブクローニング手順に使用した。Phusi
on(商標)ポリメラーゼを用いてPCRを行った。製造元のプロトコールに従って、全
てのPCR産物を、Macherey-Nagel(商標)のNucleospin(商
標)GelおよびPCR Clean-upにより精製した。精製した断片を、総量34
μl中に1μlの酵素を含む1×FD緩衝液において、制限酵素DpnIで分解した。製
造元のプロトコールに従って、分解反応物を再び、Macherey-NagelのNu
cleospin GelおよびPCR Clean-upで精製した。製造元(New
England Biolab)のプロトコールに従って、10μlの反応液中で、ギブ
ソン・アセンブリを行った。製造元の説明書に従い、Qiagenキットを用いて、プラ
スミドDNAを調製した。グラム陽性株に対する改変は、細胞溶解を促進するために0.
5%グリシンおよびリゾチームを添加した培地中で細菌を増殖させることを含んだ。
【0372】
1.4. 形質転換
1.4.1 エレクトロコンピテントE.coli細胞および形質転換
市販のエレクトロコンピテント細胞(One Shot(登録商標)ThermoFi
scher TOP10ケミカルコンピテントE.coli)を、クローニングおよび実
験に用いた。エレクトロポレーションは、標準設定を用いて行った: Electro C
ell Manipulator(BTX Harvard Apparatus EC
M630)を用いて1800V、25μFおよび200Ωで行った。パルスの後、1ml
のLB-SOC培地を添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートした。形質転換細胞
を、対応する抗生物質を含有する、LB寒天培地にプレーティングした。
【0373】
1.5. E.coliおよび共同体実験における、sgRNA-Cas9の活性化
K-12由来株および他の細菌のリボソームRNAコードする配列を標的とするsgR
NAを含むプラスミドを有するE.coliTOP10およびNissleをいずれも、
3mlのTH broth中で一晩増殖させた。翌日、細胞をOD約0.5まで希釈し、
次にTH培地中で10倍段階希釈し、96ウェルレプリケーター(Mettler To
ledo Liquidator(商標)96)を使用して4μLの体積の液滴を、TH
寒天プレート上、誘導因子(1%アラビノースおよび2mMテオフィリン)を添加したT
H寒天プレート上、2.5g/lのPEAを添加したTH寒天プレート上、および1%マ
ルトースを添加したマッコンキー寒天培地上にスポットした。プレートを、37℃で24
時間インキュベートして、コロニー形成率(CFU)を3回測定から計算した。プレート
を27℃で20時間インキュベートして、コロニー形成率(CFU)を3回測定から計算
した。
【0374】
2.結果
2.1 外因性のCRISPR-Cas9システムを用いたE.coli株の特異的標的
化
最初に、E.coli TOP10とNissleの両方に死滅システムを導入するこ
とにより、該システムが2つのE.coli株を区別できるかどうかを最初に試験した。
【0375】
2.1 混合培養液における外因性のCRISPR-Cas9システムを用いたE.co
liの標的化
一晩培養した培養液の段階希釈を、両方のE.coli株、B.subtilis、L
.lactisについて2回、そして混合培養液について3回行った。全ての株を、誘導
因子の有無で、選択プレートにおいて、37℃で20時間増殖させた。該システムの誘導
は、他の細菌は無傷のまま、sgRNA-Cas9のK-12由来株の標的化を活性化す
る。
【0376】
混合培養液から異なる細菌を区別することは、異なる種の細胞数を決定しそして種の特
異的除去を決定するために重要である。マッコンキー寒天培地はE.coliを選択的に
増殖させ、PEA寒天培地はグラム陰性菌(E.coli)からグラム陽性菌(B.su
btilis)を単離するために使用される選択培地である。さらに、本発明者らは、異
なる濃度のPEAが他のグラム陽性菌の増殖を部分的に阻害することを見出した。2.5
g/lのPEAは、E.coliおよびL.ラクティスの増殖を制限しながら、B.su
btilisを選択的に増殖させることがわかった。
【0377】
図14は、誘導性の、外因性の、ベクター媒介性のCRISPR-Casシステムによ
るE.coli株の特異的標的化を示す。sgRNAはK-12由来のE.coli株、
E.coliTOP10のゲノムを標的とし、一方試験した他のE.coli株は影響を
受けなかった。
【0378】
図15は、CRISPR-Cas9システムの誘導なしのTH寒天培地中の本研究で用
いた個々の細菌種および混合培養液の段階希釈によるスポットアッセイを示す。
【0379】
図16、異なる選択培地上の1000倍希釈のスポットアッセイを示す。2.5g/l
のPEAを有するTHは、B.subtilis単独のための選択的培地である。マルト
ースを添加したマッコンキーは、グラム陰性菌と腸内桿菌を選択的に単離し、それらをマ
ルトース発酵に基づいて区別するように設計された、細菌用の選択的かつ差次的(dif
ferential)培養培地である。従って、TOP10ΔmalK変異体は、プレー
ト上に白いコロニーを形成し、一方Nissleは、ピンクのコロニーを形成する;Aは
E coli ΔmalK、BはE coli Nissile、CはB subtil
is、DはL lactis、Eは混合培養液である;マッコンキー-のBとEの画像は
ピンクに見える;マッコンキー+のBとEの画像はピンクに見える。
図17は、本研究で
使用した細菌の異なる培地および選択プレート上での選択的増殖を示す。明らかに、混合
集団において標的E coli株(
図17のx軸上の「E coli」)を選択的に死滅
させたが、他の関連株(「E coli-Nissle」)は同じようには死滅しないこ
とがわかった。混合集団における標的株の死滅は、本実験において1000倍であった。
【0380】
参考文献
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gy, 189(8), 3256-70. http://doi.org/10.1128/JB.01768-06
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患者において疾病または症状を処置または軽減する方法において用いるための誘導型ヌクレアーゼシステムであって、該方法が、該システムの誘導型ヌクレアーゼを用いて患者の微生物叢を変更することにより患者において免疫細胞を調節することを含み、該疾病または症状が、免疫細胞(例えば、T細胞)により媒介されるか、または、患者において免疫細胞活性または免疫細胞集団を変更することにより処置または予防される、誘導型ヌクレアーゼシステム。
該方法が、微生物叢において第2の細胞を標的とせずに第1の細胞を選択的に死滅させ、第2の細胞が、(i)第1の種の株に関連する株の細胞であるか、または(ii)第1の種と異なり、かつ第1の種と系統学的に関連する種の細胞であり、第2の種または株が、第1の細胞の種または株の16sリボソームRNAをコードするDNA配列と少なくとも80%同一である16sリボソームRNAをコードするDNA配列を有し、微生物叢における第2の細胞の増殖が、前記方法によって阻害されないか、または、前記第1の細胞の増殖が、第2の細胞の少なくとも5倍の増殖阻害で阻害される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
第1の細胞が、細菌または古細菌の細胞であり、例えばファーミキューテス門(Firmicutes)の細胞である、請求項2~6のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
該方法が、第1の種の細胞の1つ以上の標的ゲノムまたはエピソームのヌクレオチド配列を改変(例えば、切断および/または変異)することを含む、請求項2~7のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
調節された免疫細胞が、患者の内因性細胞および/または(例えば養子細胞療法を介して)投与された細胞を含む、請求項1~5および7~9のいずれか一項に記載のシステム。
システムが、操作されたCRlSPR/Casシステム、TALENシステム、メガヌクレアーゼシステムまたはジンクフィンガーシステムである、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
疾病または症状が、がん、自己免疫性の疾病または症状、炎症性の疾病または症状、ウイルス感染症(例えば、ヒト患者のHIV感染症)、アレルギー性の疾病または症状、または、ウイルス感染症により媒介されるか、または、引き起こされる疾病または症状である、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
該方法を実行して微生物叢を変更し、それにより患者においてパネート細胞を刺激し、それにより免疫細胞が調節され、疾病または症状が処置または低減されることを目的とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステムまたは集団。
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実行するための該請求項に記載のシステムにおいて用いるための、誘導型ヌクレアーゼ;または、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を用いて患者において疾病または症状を治療するために患者へ投与するための、HM-CRlSPR/Casシステム、gRNA、HM-アレイもしくはHM-crRNA;または、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実行するために前記請求項のHM-CRlSPR/Casシステムにおいて用いるための、HM-アレイ、gRNAもしくはHM-crRNA;または、該システム、HM-アレイ、gRNAまたはHM-crRNAを含む、またはコードする、第1の細胞に感染することができるか、または第1の細胞を形質転換することができる、ベクター、例えば、バクテリオファージ、接合性プラスミドもしくはトランスポゾン;または、該システム、HM-アレイ、gRNAまたはHM-crRNAを含む、またはコードする、医薬;ここで、場合により、gRNAはシングルガイドRNAである。