(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002212
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20221227BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H05K9/00 A
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103300
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】飯高 健治
【テーマコード(参考)】
5E321
5E338
【Fターム(参考)】
5E321AA05
5E321AA14
5E321AA17
5E321BB44
5E321CC03
5E321CC06
5E321CC09
5E321CC12
5E321GG05
5E321GH03
5E338AA16
5E338BB71
5E338CC05
5E338EE13
(57)【要約】
【課題】
金属接続部の配置を考慮することで十分なノイズの低減効果が得られる電子機器を提供する。
【解決手段】
電子機器は、基板と、前記基板の表面に実装される集積回路と、前記基板の表面で前記集積回路の周囲に実装される電子部品と、前記基板の表面で前記集積回路及び前記電子部品の周囲に実装される金属接続部と、前記金属接続部に対して前記基板とは反対側に設けられる金属板とを含み、前記金属接続部は、前記基板に接続される第1端部と前記金属板に接続される第2端部とを備え側面視で前記基板に対して傾斜する傾斜部を有し、前記第1端部は前記第2端部よりも前記集積回路の近くに位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に実装される集積回路と、
前記基板の表面で前記集積回路の周囲に実装される電子部品と、
前記基板の表面で前記集積回路及び前記電子部品の周囲に実装される金属接続部と、
前記金属接続部に対して前記基板とは反対側に設けられる金属板と
を含み、
前記金属接続部は、前記基板に接続される第1端部と前記金属板に接続される第2端部とを備え側面視で前記基板に対して傾斜する傾斜部を有し、前記第1端部は前記第2端部よりも前記集積回路の近くに位置する、電子機器。
【請求項2】
前記金属接続部は、
前記基板の前記表面に載置され、前記傾斜部を保持する基部をさらに有する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記基部と一体的に形成されており、前記基部に対して傾斜する方向に折り曲げられている、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記金属接続部の高さは、前記電子部品の高さよりも高く、
前記基部は、前記傾斜部の前記基板の表面に対する角度が前記傾斜部と前記電子部品との間に間隔を設ける所定角度以下にならないように前記傾斜部を支持する支持部を有する、請求項2又は3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記基部は、前記基板の表面に載置され、前記傾斜部を保持するとともに、前記支持部と一体的に形成された底板をさらに有し、
前記支持部は、前記底板に対して前記基板の表面から離れる方向に折り曲げられている、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記基部は、前記底板と一体的に形成され、前記基板の表面から離れる方向に延在するアーチ部をさらに有し、
前記支持部は前記底板の一端側に設けられており、
前記傾斜部は、前記底板の他端側から、前記底板と前記アーチ部とで囲まれた空間内を通って前記基板に対して斜めに延在する、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記傾斜部、前記底板、前記支持部、及び前記アーチ部は、1枚の金属板を折り曲げて形成されている、請求項6に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品が実装される基板と、金属製のシールド筐体と、前記基板上に前記シールド筐体の下面と前記基板とを離間して固定するためのシールド筐体固定部とを有する電子部品と、前記基板に実装され、前記シールド筐体の一部と接触するオンボードコンタクトと、を備えることを特徴とする車載装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車載装置は、電子部品が発生するノイズを低減するためにオンボードコンタクト(金属接続部)を用いているが、ノイズを発生する電子部品と他の電子部品との位置関係を考慮して金属接続部の位置を決めていないため、ノイズの低減効果が十分に得られないおそれがある。
【0005】
そこで、金属接続部の配置を考慮することで十分なノイズの低減効果が得られる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の電子機器は、基板と、前記基板の表面に実装される集積回路と、前記基板の表面で前記集積回路の周囲に実装される電子部品と、前記基板の表面で前記集積回路及び前記電子部品の周囲に実装される金属接続部と、前記金属接続部に対して前記基板とは反対側に設けられる金属板とを含み、前記金属接続部は、前記基板に接続される第1端部と前記金属板に接続される第2端部とを備え側面視で前記基板に対して傾斜する傾斜部を有し、前記第1端部は前記第2端部よりも前記集積回路の近くに位置する。
【発明の効果】
【0007】
金属接続部の配置を考慮することで十分なノイズの低減効果が得られる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の電子機器100の構成の一例を示す図である。
【
図3】基板120の上面におけるSoC130、チップ部品140、OBC150又は比較用のOBC15の配置を示す図である。
【
図4】基板120の上面におけるSoC130、チップ部品140、OBC150又は比較用のOBC15の配置を示す図である。
【
図5】シミュレーションモデル50を示す図である。
【
図6】シミュレーションの4種類の条件を説明する図である。
【
図8】OBC150の構成の一例を示す斜視図である。
【
図9】OBC150の構成の一例を示す側面図である。
【
図10】OBC150を展開した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電子機器を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の電子機器100の構成の一例を示す図である。
図2は、
図1のA-A矢視断面を示す図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。X軸に平行な方向(X方向)、Y軸に平行な方向(Y方向)、Z軸に平行な方向(Z方向)は、互いに直交する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称す場合があるが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはXY面視することをいう。また、以下では構成が分かり易くなるように各部の長さ、太さ、厚さ等を誇張して示す場合がある。
【0011】
電子機器100は、筐体110、基板120、SoC(System on a Chip)130、シート135、チップ部品140、OBC(On Board Contact)150を含む。SoC130は集積回路の一例であり、チップ部品140は電子部品の一例であり、OBC150は金属接続部の一例である。電子機器100は、車両に搭載される種々の電子機器であってもよいし、車両以外の製品に含まれる電子機器であってもよい。
【0012】
筐体110は、基板120が上面に搭載される第1部111と、基板120よりも上側に配置される第2部112とを有する。第1部111と第2部112とは、図示しない壁部や柱状部材等によって接続されていてもよい。第1部111及び第2部112は、金属製である。第2部112は、金属板の一例である。なお、ここでは第1部111を板状の部材として示すが、第1部111は、基板120の下側に位置する凹部等を有する中空の部材であってもよい。
【0013】
基板120は、第1部111の上面に固定されている。基板120の上面には、SoC130、チップ部品140、OBC150が配置される。基板120は、配線基板であり、例えばFR-4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板であればよい。
【0014】
SoC130は、一例として、電子機器100の機能を実現するための制御処理を行う集積回路であり、一例として制御用のクロックに基づいて動作を行う。SoC130は、クロックやクロックに基づく動作によってノイズを発生する。
【0015】
シート135は、SoC130の上面と第2部112の下面との間に設けられている熱伝導シートであり、SoC130の動作に伴って生じる熱を第2部112に伝達することで、SoC130の放熱性を向上させている。
【0016】
チップ部品140は、基板120の上面において、SoC130の周囲に実装されている。チップ部品140は、SoC130の周囲に複数設けられている。チップ部品140は、基板120の配線等を解してSoC130に接続されている。チップ部品140は、例えば、コンデンサや抵抗等の電子部品(実装部品)である。
【0017】
OBC150は、基板120の上面において、SoC130及び複数のチップ部品140の周囲に実装されている。OBC150は、SoC130が発生するノイズを低減するために設けられており、ここでは一例として4つ設けられている。各OBC150は、基部151及び傾斜部152を有する。
【0018】
基部151は、OBC150の下端に位置し、基板120の上面のパッド等にはんだ付け等によって接続され、傾斜部152を保持する。基部151は、基板120の上面のパッド等を介して基板120のグランド層に接続されている。このため、OBC150は、グランド電位に保持される。
【0019】
傾斜部152は、下端152A及び上端152Bを有する。下端152Aは第1端部の一例であり、上端152Bは第2端部の一例である。下端152Aは基部151に固定され、上端152Bは第2部112の下面に接触している。傾斜部152は、
図2に示す側面視で、下端152Aよりも上端152Bの方がSoC130の近くに位置する。すなわち、傾斜部152は、下端152Aよりも上端152Bの方がSoC130の近くに位置するように、基板120の上面に対して傾斜している。すなわち、OBC150は、傾斜している。
【0020】
次に、基板120の上面において、SoC130及び複数のチップ部品140の周囲に傾斜したOBC150を実装する理由について説明する。
図3及び
図4は、基板120の上面におけるSoC130、チップ部品140、OBC150又は比較用のOBC15の配置を示す図である。
図3(A)には、電子機器100における基板120、SoC130、シート135、チップ部品140、OBC150の配置の一例を示す。
図3(B)及び
図3(C)には、それぞれ、比較用の電子機器10A及び10Bにおける基板120、SoC130、シート135、チップ部品140、OBC15の配置の一例を示す。比較用の電子機器10A及び10Bに含まれるOBC15は、基板120の上面に対して垂直に+Z方向に延在している。
【0021】
また、
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)には、それぞれ、
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)におけるB-B矢視断面、C-C矢視断面、D-D矢視断面におけるSoC130の中央よりも-X方向側の断面構造を示す。
【0022】
まず、
図3(B)及び
図4(B)に示す比較用の電子機器10Aと、
図3(C)及び
図4(C)に示す比較用の電子機器10Bとについて説明する。比較用の電子機器10A及び10Bは、基板120の上面に対して垂直に+Z方向に延在するOBC15を含む。
【0023】
一般に、SoC130のノイズを効率的に低減するには、OBC15をSoC130の近くに配置することが考えられる。このような場合には、
図3(B)及び
図4(B)に示す比較用の電子機器10Aのように、SoC130の周囲に複数のOBC15を配置し、OBC15の周囲にチップ部品140を配置する構成が考えられる。このような比較用の電子機器10Bでは、SoC130から出力されてグランド電位のOBC15を通ってSoC130に戻るリターン電流のループは、
図4(B)に示すように小さくなるため、電流ループを貫く領域の面積は小さくなり、OBC15が配置されている領域よりも外において、SoC130が発生するノイズは低減される。
【0024】
しかしながら、OBC15よりも外側にチップ部品140があるため、SoC130の動作に伴ってチップ部品140から発生するノイズが、電子機器10Aの外部に漏洩することになる。電子機器10Aの外部にノイズが漏洩すると、電子機器10Aの周囲に配置される他の電子機器がノイズを拾い、誤動作を引き起こすおそれがある。すなわち、比較用の電子機器10Aでは、チップ部品140から発生するノイズを低減可能とするチップ部品140の配置領域の確保が困難である。
【0025】
また、電子機器10Aのように、チップ部品140のノイズが電子機器10Aの外部に漏洩することを抑制するには、OBC15をSoC130及びチップ部品140の周囲に配置することが考えられる。このような場合には、
図3(C)及び
図4(C)に示す比較用の電子機器10Bのように、SoC130及びチップ部品140の周囲に複数のOBC15を配置する構成が考えられる。このような比較用の電子機器10Cでは、チップ部品140が発生するノイズの外部への漏洩はOBC15によって低減される。
【0026】
しかしながら、SoC130から出力されてグランド電位のOBC15を通ってSoC130に戻るリターン電流のループは、
図4(C)に示すように大きくなるため、電流ループを貫く領域の面積は大きくなり、SoC130が電子機器10Bの外部に漏洩するおそれがある。このため、電子機器10Bの周囲に配置される他の電子機器がノイズを拾い、誤動作を引き起こすおそれがある。すなわち、比較用の電子機器10Bでは、SoC130のノイズ対策が不十分となる。
【0027】
電子機器10A及び10Bに対して、
図3(A)及び
図4(A)に示す実施形態の電子機器100は、
図4(A)に示すように、下端152Aよりも上端152Bの方がSoC130の近くに位置することによって、傾斜部152は、下端152Aよりも上端152Bの方がSoC130の近くに位置するように基板120の上面に対して傾斜している。
【0028】
このように傾斜するOBC150を採用すると、SoC130から出力されてグランド電位のOBC150を通ってSoC130に戻るリターン電流のループは、
図4(A)に示すように電子機器10Aにおけるリターン電流のループ(
図4(B)参照)よりも小さくなるため、電流ループを貫く領域の面積は小さくなり、OBC150が配置されている領域よりも外において、SoC130が発生するノイズは低減される。また、チップ部品140もOBC150に囲まれているため、チップ部品140が発生するノイズの外部への漏洩もOBC150によって低減される。
【0029】
以上のような理由から、実施形態の電子機器100では、傾斜部152を有するOBC150を採用している。傾斜部152を有するOBC150を採用することによって、チップ部品140の配置領域の確保と、SoC130のノイズ対策とを両立している。
【0030】
図5は、シミュレーションモデル50を示す図である。
図5(A)には、筐体110の内部に基板120を配置した状態を示す。筐体110は±Y方向側の側面に開口部110Aを有する。筐体110のサイズは、X方向の長さが170mm、Y方向の幅が120mm、Z方向の高さが125mmである。また、開口部110Aの開口サイズは、X方向の長さが140mm、Z方向の高さが15mmである。
【0031】
図5(B)には、
図5(A)から筐体110を取り除いたシミュレーションモデル50Aを示す。
図5(B)には、一例として、基板120の上にSoC130とOBC15が実装されている状態を示す。基板120のサイズは、X方向の長さが160mm、Y方向側の幅が110mmである。SoC130はX方向の長さとY方向の幅がともに20mmであり、SoC130の上端は、筐体110と接触している。
【0032】
図6は、シミュレーションの4種類の条件を説明する図である。
図6(A)~
図6(D)には、4種類のシミュレーションにおける基板120の上面の構成を示す。
図6(A)には、実施形態の電子機器100に相当する構成として、基板120の上面の中央にSoC130を配置し、SoC130の周囲の矩形環状の領域をチップ部品140を配置する領域として確保し、8本のOBC150をチップ部品140を配置する領域の外側に実装する構成を示す。各OBC150の下端150Aはチップ部品140を配置する領域の外側に位置し、各OBC150の上端150Bは、チップ部品140を配置する領域の内側において、SoC130の近くに位置する。
【0033】
図6(B)には、比較用の電子機器10Bに相当する構成として、基板120の上面の中央にSoC130を配置し、SoC130の周囲の矩形環状の領域をチップ部品140を配置する領域として確保し、8本のOBC15をチップ部品140を配置する領域の外側に実装する構成を示す。OBC15は、チップ部品140を配置する領域の外側で、基板120の上面に対して垂直に+Z方向に延在している。
【0034】
図6(C)には、比較用の電子機器10Cの構成として、基板120の上面の中央にSoC130を配置し、SoC130の周囲にチップ部品140を配置する領域を設けずに、SoC130の周囲に8本のOBC15を実装する構成を示す。比較用の電子機器10Cは、チップ部品140を配置する領域を含まない。
図5(B)に示すシミュレーションモデル50Aの基板120の上面の構成は、比較用の電子機器10Cの構成に相当する。
【0035】
図6(D)には、比較用の電子機器10Dの構成として、
図6(C)に示す比較用の電子機器10Cから、8本のOBC15を省いた構成を示す。比較用の電子機器10Dは、チップ部品140を配置する領域と、OBC15とを含まない。
【0036】
図7は、シミュレーション結果を示す図である。
図7には、
図6(A)~
図6(D)に示す4種類の基板120の上面の構成によって筐体110の外側で得られたノイズ強度(dB(μV/m))の周波数特性を示す。
図7において、電子機器100の特性を実線で示し、電子機器10Bの特性を破線で示し、電子機器10Cの特性を一点鎖線で示し、電子機器10Dの特性を二点鎖線で示す。
【0037】
図7に示すように、ノイズ強度が最も小さかったのは電子機器10Cであった。SoC130のすぐそばにOBC15を配置した構成によって、ノイズが効果的に低減されたことを確認することができた。ただし、電子機器10Cはチップ部品140を含まない。また、OBC15を含まない電子機器10B及び10Dは、ノイズ強度が最も大きかった。電子機器10Dの結果は、SoC130のノイズ強度を示すものである。
【0038】
また、SoC130からOBC15が離れている電子機器10Bのノイズ強度は、OBC15を含まない電子機器10Dの結果に近いレベルになり、OBC15があってもリターン電流のループを貫く領域の面積が大きいことで、SoC130のノイズが電子機器10Bの外部に漏洩することが確認できた。
【0039】
これに対して、実施形態の電子機器100のノイズ強度は、100MHzから約750MHzまでは、ノイズ強度が最も小さかった電子機器10Cに近いレベルが得られた。また、電子機器100のノイズ強度は、約800MHzから約1500MHzでは電子機器10Bのレベルと同等であったが、1500MHzから2000MHzでは、電子機器10Bのレベルよりも低減できることが分かった。GPS(Global Positioning System)が利用する周波数帯域は、約1500MHzから約1600MHzであるため、例えば車両に電子機器100を搭載する場合に、GPS帯のノイズ強度を低減することで、GPS信号を利用するナビゲーション機器等の動作に悪影響を与えにくい構成を実現することができた。
【0040】
図8は、OBC150の構成の一例を示す斜視図である。
図9は、OBC150の構成の一例を示す側面図である。
図10は、OBC150を展開した状態を示す図である。ここでは、小文字のx、y、zで記すxyz座標系を定義して説明する。x軸に平行な方向(x方向)、y軸に平行な方向(y方向)、z軸に平行な方向(z方向)は、互いに直交する。また、以下では、説明の便宜上、-z方向側を下側又は下、+z方向側を上側又は上と称す場合があるが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはxy面視することをいう。
【0041】
なお、
図10ではOBC150を展開した状態で底板151Aを基準としてxyz座標系を示す。以下では特に断らない限り、
図8及び
図9に示すように組み立てが完成した状態におけるOBC150の構成について説明する。
【0042】
OBC150は、基部151及び傾斜部152を有する。基部151及び傾斜部152は、一体的に形成されており、OBC150は、
図10に示す1枚の金属板を折り曲げることによって作製することができる。OBC150の高さは、チップ部品140の高さよりも高い。
【0043】
基部151は、底板151A、支持部151B、及びアーチ部151Cを有する。底板151Aは、基板120の表面のグランド電位に保持されるパッドにはんだ付けによって接続される。底板151Aは平面視で矩形状であり、-x方向側に支持部151Bが接続されており、±y方向側にアーチ部151Cが接続されている。
【0044】
支持部151Bは、底板151Aの-x方向側の端部から+z方向に起立している。
図9に示すように傾斜部152の下面側に当接し、支持部151Bは、傾斜部152の傾斜角度が所定角度θ1以下にならないように支持する。支持部151Bは、傾斜部152の基板120の表面に対する角度が傾斜部152とチップ部品140との間に上下方向の間隔を設ける所定角度θ1以下にならないように傾斜部152を支持する。所定角度θ1は、OBC150とチップ部品140との距離に応じて設定すればよい。すなわち、支持部151Bの高さは、OBC150とチップ部品140との距離に応じて所定角度θ1が得られるように設定すればよい。
【0045】
アーチ部151Cは、底板151Aの±y方向側の部分で+z方向に起立する部分と、底板151Aの上方で底板151Aに対向する部分とによって、yz面視においてアーチ状に構成される。
図10に示すようにOBC150を展開した状態では、アーチ部151Cのうちの底板151Aの+y方向側に接続される部分の+y方向側の先端には、先端から+y方向に突出した接合部151C1が設けられている。接合部151C1は、アーチ部151Cのうち、底板151Aの上方で底板151Aに対向する部分よりもちいさい。
【0046】
アーチ部151Cのうちの底板151Aの-y方向側に接続される部分の-y方向側の先端の部分と、接合部151C1とを重ねてはんだ付け等で接合することによって、yz面視においてアーチ状に接合されたアーチ部151Cが完成する。アーチ部151Cの上端でxy平面に変更な部分は、OBC150を基板120上に移動させるときに、自挿機で吸着する吸着面になる。
【0047】
傾斜部152は、下端152Aが底板151Aの+x方向側の端部に接続されており、底板151Aの+x方向側に連続して一体的に形成されている。傾斜部152は、
図9に示すように、底板151Aに対して角度θ2で折り曲げられることにより、アーチ部151Cの中に挿通されている。傾斜部152が底板151Aに対して角度θ2で折り曲げられた状態で、傾斜部152の上面はアーチ部151Cのうちの底板151Aに対向する部分の-x方向側の端部に接触している。このため、傾斜部152の基板120の上面に対する角度を角度θ2以下に規制することができる。
【0048】
また、傾斜部152は、底板151Aに対して折り曲げられているため、角度θ2を小さくする方向の外力に反発するバネ性を有する。このため、傾斜部152は、底板151Aに対して自立しており、基板120の上面に対する角度が角度θ2からθ1になるまで撓むことができる。基板120と筐体110の第2部112の下面との上下方向の間隔を考慮して、傾斜部152の基板120に対する角度が角度θ2よりも小さくなるように角度θ2を設定すれば、OBC150を基板120の表面に実装した状態で、バネ性を利用して傾斜部152の上端152Bを筐体110の第2部112の下面に当接させることができる。これにより、OBC150を介して筐体110の第2部112をグランド電位に保持することができる。また、このときに、傾斜部152の基板120に対する角度は角度θ1以下にはならず、傾斜部152とチップ部品140との接触を抑制でき、OBC150とチップ部品140との短絡を抑制できる。
【0049】
以上のようなOBC150を平面視でSoC130及びチップ部品140の周囲に配置し、下端152Aよりも上端152BがSoC130に近くなるように傾斜部152を傾斜させて基板120の上面に実装すれば、
図4(A)に示すようにリターン電流の電流ループを貫く領域の面積を小さくすることができ、SoC130が発生するノイズをOBC150が配置されている領域よりも外において低減することができる。
【0050】
したがって、OBC150の配置を考慮することで十分なノイズの低減効果が得られる電子機器100を提供することができる。OBC150の数や位置は、筐体110、基板120、及びSoC130のサイズや、チップ部品140の種類、数、及び配置等に応じて、ノイズの漏洩を適切に抑制できるように選択すればよい。
【0051】
また、OBC150は、下端152Aよりも上端152BがSoC130に近くなるように傾斜する傾斜部152を有していればよく、上述のような構成に限定されるものではないが、傾斜部152を保持する基部151を有することにより、OBC150を安定的に基板120に取り付けることができるとともに、OBC150を安定的にグランド電位に保持することができる。すなわち、基部151を有することにより、電気的特性が安定したOBC150及び電子機器100が得られる。
【0052】
また、OBC150は、傾斜部152と基部151が基部と一体的に形成されており、基部151に対して傾斜する方向に折り曲げられているため、傾斜部152を自立させることができるとともに、傾斜部152にバネ性を持たせることができる。これにより、OBC150が第2部112の下面にバネの弾性力によって押圧された状態で接触するため、電気的特性が安定したOBC150及び電子機器100が得られる。
【0053】
また、OBC150の高さは、チップ部品140の高さよりも高く、基部151は、傾斜部152の基板120の上面に対する角度が傾斜部152とチップ部品140との間に間隔を設ける角度θ1以下にならないように傾斜部152を支持する支持部151Bを有するので、OBC150とチップ部品140との接触を抑制でき、OBC150とチップ部品140との短絡を抑制できる。この結果、信頼性の高い電子機器100を提供することができる。
【0054】
また、基部151は、基板120の上面に載置され、傾斜部152を保持するとともに、支持部151Bと一体的に形成された底板151Aをさらに有し、支持部151Bは、底板151Aに対して基板120の上面から離れる方向に折り曲げられているので、簡易な構成で傾斜部152を自立させることができるとともに、傾斜部152にバネ性を持たせることができる。これにより、OBC150が第2部112の下面にバネの弾性力によって押圧された状態で接触するため、簡易な構成で電気的特性が安定したOBC150及び電子機器100が得られる。
【0055】
また、基部151は、底板151Aと一体的に形成され、基板120の上面から離れる方向に延在するアーチ部151Cをさらに有し、支持部151Bは底板151Aの一端側に設けられており、傾斜部152は、底板151Aの他端側から、底板151Aとアーチ部151Cとで囲まれた空間内を通って基板120に対して斜めに延在するので、傾斜部152の基板120の上面に対する角度を角度θ2以下に規制することができ、簡易な構成で傾斜部152を基板120の上面に対して傾斜した状態に保持することができる。
【0056】
また、傾斜部152、底板151A、支持部151B、及びアーチ部151Cは、1枚の金属板を折り曲げて形成されているので、折り曲げるだけで電気的に信頼性の高いOBC150を容易に作製することができ、このようなOBC150を用いることで、OBC150の配置を考慮することで十分なノイズの低減効果が得られる電子機器100を容易に提供することができる。
【0057】
以上、本発明の例示的な実施形態の電子機器について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 電子機器
110 筐体
120 基板
130 SoC
135 シート
140 チップ部品
150 OBC
151 基部
151A 底板
151B 支持部
151C アーチ部
152 傾斜部
152A 下端
152B 上端