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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022138
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】光走査装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4912 20200101AFI20230207BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20230207BHJP
   G02B 26/10 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
G01S7/4912
G01S17/93
G02B26/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185799
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2018568610の分割
【原出願日】2018-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2017026094
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】河村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】宮鍋 庄悟
(57)【要約】
【課題】光によって距離を測定する装置において、装置外部の物体によって反射された光の受光タイミングを正確に把握するための技術を提供する。
【解決手段】光走査装置(10)は、光源(110)、受光回路(120)、光学系(130)、及び制御部(140)を有する。光学系(130)は、光源(110)が出射した出射光を外部に向ける。また、光学系(130)は、光走査装置(10)の外部に位置する物体による出射光の反射光を受光回路(120)に備えられている受光素子に向ける。制御部(140)は、受光回路(120)に備えられている受光素子が外部に位置する物体による反射光を受光する前の期間において、当該受光素子に電荷が溜まりにくくする又は溜まらないようにする処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射光を出射する光源と、
外部に位置する物体による前記出射光の反射光を受光する受光素子と、
前記光源が出射した出射光を外部に向け、かつ、前記反射光を前記受光素子に向ける光学系と、
前記受光素子が前記反射光を受光する前の期間において、前記受光素子に電荷が溜まりにくくする又は電荷が溜まらないようにする処理を実行する制御部と、
を備える光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、
前記受光素子はアバランシェフォトダイオードである光走査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光走査装置において、
前記制御部は、前記処理として、前記期間の前記受光素子の増幅率を、当該光走査装置が距離を測定している間の1/10以下にする光走査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光走査装置において、
前記制御部は、前記処理として、前記期間の前記受光素子の印加電圧を、当該光走査装置が距離を測定している間の95%以下にする光走査装置。
【請求項5】
請求項2に記載の光走査装置において、
前記受光素子の出力側は、スイッチ素子を介して接地点に接続されており、
前記制御部は、
当該光走査装置が距離を測定している間は前記スイッチ素子をオフ状態にし、
前記処理として、前記期間に、前記スイッチ素子をオン状態にする光走査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の光走査装置において、
前記受光素子の受光面への光の入射を妨げるフィルター部を更に備え、
前記制御部は、前記処理として、前記期間に、前記フィルター部を作動させる光走査装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記制御部は、当該光走査装置が測定する距離の下限値に応じて、前記処理を終了するタイミングを決定する光走査装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記制御部は、当該光走査装置が測定する距離の上限値に応じて、前記処理を開始するタイミングを決定する光走査装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記制御部は、前記光源から出射された第1の出射光の次に出射される第2の出射光の出射タイミングに応じて、前記処理を開始するタイミングを決定する光走査装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光走査装置において、
当該光走査装置は、LIDAR(Light Detection and Ranging)装置である光走査装置。
【請求項11】
出射光を出射する光源と、
外部に位置する物体による前記出射光の反射光を受光する受光素子と、
前記光源が出射した出射光を外部に向け、かつ、前記反射光を前記受光素子に向ける光学系と、を備える光走査装置の制御方法であって、
前記受光素子が前記反射光を受光する前の期間において、前記受光素子に電荷が溜まりにくくする又は電荷が溜まらないようにする処理を実行する制御工程を備える制御方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記制御部は、
当該光走査装置または当該光走査装置を搭載する移動体の現在位置と前記物体との距離を算出し、
前記算出された距離に基づいて、前記処理を開始するタイミングおよび前記処理を終了するタイミングの少なくとも一方を決定する、光走査装置。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光走査装置において、
地物の位置情報を含む地図情報を取得して所定の記憶領域に記憶する地図情報取得部を更に備え、
前記制御部は、
当該光走査装置または当該光走査装置を搭載する移動体の現在位置を示す現在位置情報を取得し、
前記地図情報に含まれる地物の位置情報と、前記現在位置情報と、に基づいて、前記地物の位置と前記現在位置との距離を算出し、
前記算出された距離に基づいて、前記処理を開始するタイミングおよび前記処理を終了するタイミングの少なくとも一方を決定し、
当該決定したタイミングにて前記処理を実行することにより、前記地物による反射光を受光する前の期間において前記受光素子に電荷が溜まりにくくする又は電荷がたまらないようにする、
光走査装置。
【請求項14】
請求項1~10、12および13のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記処理は、前記受光素子が飽和状態となることを防止する処理である、
光走査装置。
【請求項15】
請求項11に記載の制御方法において、
前記処理は、前記受光素子が飽和状態となることを防止する処理である、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び当該光走査装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部に位置する物体までの距離を、光を用いて測定する装置がある。このような装置に関する技術の一例が、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、レーザ光を出力する時間間隔と同じ又は当該時間間隔よりも短い時間間隔でレーザ光のパワーを調節しすることによって、他の画素の測定に悪影響を及ぼさずに特定の画素の飽和を回避する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-205884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、光源から出射される光と、外部の物体によって反射される光は、互いに異なる光学系を通過しているが、これらの光が同じ光学系を利用するような構造では、例えば次のような問題が発生し得る。即ち、光源から光が出射されたときに、装置内部の部材によって反射された光が、光学系を介して受光素子側に漏れてしまい、受光素子が意図しないタイミングで飽和してしまう虞がある。このような場合には、外部の物体に反射された光の受光タイミングが正確に把握できなくなってしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、光によって距離を測定する装置において、当該装置の外部に位置する物体によって反射された光の受光タイミングを正確に把握するための技術を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る第1の発明は、
出射光を出射する光源と、
外部に位置する物体による前記出射光の反射光を受光する受光素子と、
前記光源が出射した出射光を外部に向け、かつ、前記反射光を前記受光素子に向ける光学系と、
前記受光素子が前記反射光を受光する前の期間において、前記受光素子に電荷が溜まりにくくする又は電荷が溜まらないようにする処理を実行する制御部と、
を備える光走査装置である。
【0008】
本開示に係る第2の発明は、
出射光を出射する光源と、
外部に位置する物体による前記出射光の反射光を受光する受光素子と、
前記光源が出射した出射光を外部に向け、かつ、前記反射光を前記受光素子に向ける光学系と、を備える光走査装置の制御方法であって、
前記受光素子が前記反射光を受光する前の期間において、前記受光素子に電荷が溜まりにくくする又は電荷が溜まらないようにする処理を実行する制御工程を備える制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
図1】光走査装置の機能構成を概念的に例示するブロック図である。
図2】制御部による処理の実行タイミングを説明するための図である。
図3】第1の具体例における光走査装置の機能構成を例示するブロック図である。
図4】第2の具体例における光走査装置の機能構成を例示するブロック図である。
図5】第2の具体例における光走査装置の機能構成を例示するブロック図である。
図6】制御部および信号処理部のハードウエア構成を例示する図である。
図7】実施形態2における光走査装置の機能構成を概念的に例示するブロック図である。
図8】実施形態2における制御部の処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
[実施形態1]
〔機能構成〕
図1は、実施形態1における光走査装置の機能構成を概念的に例示するブロック図である。本発明に係る光走査装置は、例えば移動体に搭載される、所謂LIDAR(Light Detecting and Ranging)装置である。ここで「移動体に搭載」とは、移動体の部品として当該移動体に組み込まれることのみならず、別途組み立てられた単体の装置が移動体の室内または移動体の室外に設置されることを含む。なお、以下では、移動体が車両であるケースを想定して説明するが、移動体は車両に限定されない。例えば、移動体は、飛行機、船舶、または、自律航行が可能なロボット(例:ドローン)などであってもよい。図1に示されるように、光走査装置10は、光源110、受光素子(図示せず)を含む受光回路120、光学系130、及び、制御部140を備える。また、本図の例において、光走査装置10は信号処理部150を更に備えている。なお、図1において、実線は配線等による各構成要素間の接続関係を、破線は光源110が出射した光(以下、「出射光」とも表記)の進路を、点線は光走査装置10外部に位置する何らかの物体により上述の出射光が反射された光(以下、「外部反射光」とも表記)の進路をそれぞれ概念的に表している。
【0013】
光源110は、例えばLD(Laser Diode)などの発光素子を含む回路によって構成される。受光回路120は、例えば、APD(Avalanche Photo Diode)などの受光素子を含んで構成される。
【0014】
光学系130は、光の進行方向を変える可動反射部(例えば、ミラー)と、集光レンズなどを含んで構成される。この構成によって、光学系130は、光源110が出射した出射光を、光走査装置10の外部に向けることができる。またこの構成によって、光学系130は、光走査装置10の外部に位置する物体による外部反射光を受光回路120の受光素子に向けることができる。
【0015】
制御部140は、光源駆動回路112に制御信号を送信し、光源110から光を出射するタイミングを制御する。また、制御部140は、受光回路120に制御信号を送信し、受光回路120の動作を制御する。また、制御部140は、光学系駆動回路132に制御信号を送信し、光学系130の動作を制御する。また、制御部140は、信号処理部150による処理結果を受け取り、例えばECU(Electronic Control Unit)といった、車両の動作制御等を行う制御装置に出力することができる。
【0016】
信号処理部150は、例えばTOF(Time-of-Flight)法などを利用して、受光回路120から出力される信号を基に光走査装置10の走査可能範囲における測定結果(例えば、距離画像など)を生成することができる。信号処理部150により生成された測定結果は、制御部140を介して、車両の動作制御等を行う図示しない制御装置(例えば、ECU)に出力される。
【0017】
図1に示される例では、出射光と外部反射光が同じ光学系130を通る構造となっている。このような構造において光源110から光が出射されると、その出射光が光走査装置10の内部部材(例えば、光学系130のミラーやレンズなど)によって反射して不要な反射光(以下、「内部反射光」とも表記)が生じ得る。そして、この内部反射光が受光回路120の受光素子の受光面に外部反射光よりも前に入射することによって受光回路120の受光素子が意図しないタイミング(測定対象範囲からの外部反射光が戻ってくるタイミングとは異なるタイミング)で飽和してしまう可能性もある。この場合、外部反射光の受光タイミングを正確に測定できないといった問題が発生し得る。この問題に対しては、外部反射光が受光素子の受光面に到達するまでの間において受光素子が飽和しないようにする工夫が必要となる。
【0018】
そこで、制御部140は、光源110から出射光が出射されるタイミングに基づいて定められた期間(以下、「第1の期間」とも表記)に、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を実行する。第1の期間は、光走査装置10が距離を測定している期間(以下、「第2の期間」とも表記)と重ならないように定義される。ここで、光源110が出射光を出射してから、外部反射光を受光回路120が検出するまでにかかる時間は、光走査装置10と外部に位置する物体との距離によって決まる。よって、光走査装置10の測定対象範囲(測定する距離の上限値と下限値)が決まっていれば、出射光の出射タイミングに基づいて上述の第2の期間を定めることができる。
【0019】
以下、制御部140による処理の実行タイミングについて、図2を用いて説明する。図2は、制御部140による処理の実行タイミングを説明するための図である。
【0020】
図2の横軸は時間軸である。図の例において、制御部140は、時刻t1および時刻t2において、光源110から光を出射させる信号(出射タイミング制御信号)を光源駆動回路112に送信している。光源駆動回路112は、出射タイミング制御信号に応じて動作し、光源110から光を出射させる。以下、時刻t1に光源110から出射される光を「第1の出射光」と、また、時刻t2に光源110から出射される光を「第2の出射光」とも表記する。光源駆動回路112は、出射タイミング制御信号に基づいて、光源110から光を出射させる。
【0021】
このとき、光走査装置10の測定対象範囲に位置する物体により反射された外部反射光が受光素子1201により検出されると予測される時刻は、上述したように、光源110の光の出射タイミングに基づいて事前に把握できる。図2において、これらの時刻は時刻tLLおよび時刻tULと表されている。図中の時刻tLLは、測定する距離の下限値に位置する物体による外部反射光が受光素子1201により検出されるタイミングを示す。また、図中の時刻tULは、測定する距離の上限値に位置する物体による外部反射光が受光素子1201により検出されるタイミングを示す。
【0022】
図中の期間Aは「光源110から光が照射されてから、光走査装置10の測定対象範囲の下限値に位置する物体による外部反射光が戻ってくるまでの期間」に相当する。また、図中の期間Bは「光走査装置10が距離を測定している期間」に相当する。また、図中の期間Cは「光走査装置10の測定対象範囲の上限値に位置する物体による外部反射光が戻ってきてから、光源110が次の出射光を出射するまでの期間」に相当する。
【0023】
制御部140は、第1の出射光の出射により発生し得る内部反射光による影響を回避するために、第1の出射光の出射タイミング(時刻t1)又は当該タイミングよりも少し前の時点において、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始する。そして、制御部140は、例えば、光走査装置10が測定する距離の下限値に基づいて、制御部140の処理を終了させるタイミングを決定することができる。制御部140は、期間Aの終点(時刻tLL)に合わせて、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を終了させることができる。また受光素子1201の追従性を考慮して、制御部140は、期間Aの終点(時刻tLL)より少し前のタイミングで、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を終了させてもよい。
【0024】
制御部140は、第2の出射光(第1の出射光の次に出射される光)の出射により発生し得る内部反射光による影響を回避するために、第2の出射光の出射タイミング(時刻t2)に基づいて、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始するタイミングを決定することができる。制御部140は、例えば、第2の出射光が出射されるタイミング(時刻t2)に合わせて、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始させることができる。また例えば、制御部140は、時刻t2よりも少し前の時刻から、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始させてもよい。
【0025】
制御部140は、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理の開始タイミングを、光走査装置10が測定する距離の上限値に基づいて決定してもよい。制御部140は、期間Bの終点(時刻tUL)に合わせて、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始させることができる。また測定対象範囲の上限値に位置する物体による外部反射光の受光タイミングを正確に把握するために、制御部140は、期間Bの終点(時刻tUL)より少し後のタイミングで、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始させてもよい。
【0026】
以上、本実施形態では、光走査装置10の外部に位置する測定対象範囲内の物体による外部反射光を検出する前の段階で、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理が実行される。これにより、測定対象範囲内の物体による外部反射光が光走査装置10の受光素子1201に到達する前に、光走査装置10の内部の部材による内部反射光によって受光素子1201が飽和することを防止できる。これにより、光走査装置10の測定対象範囲内に存在する物体による外部反射光の受光タイミングを正確に把握できるようになる。結果として、光走査装置10の外部に位置する測定対象範囲内の物体による外部反射光を、受光素子によって高精度に検出できるようになり、光走査装置10の外部に位置する物体までの距離の測定精度を高めることができる。
【0027】
〔制御部140による処理の具体例〕
以下、具体的な例をいくつか挙げて、制御部140の具体的な処理について説明する。
【0028】
<第1の具体例>
図3は、第1の具体例における光走査装置の機能構成を例示するブロック図である。
【0029】
図3において、光学系130は、可動反射部1301とレンズ部1302を備える。可動反射部1301は、少なくとも高さ方向と横方向の2方向(2軸)それぞれについて回転可能に構成されている1つのミラーを有する。このミラーは、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。なお、可動反射部1301は、例えば1方向に走査可能なMEMSミラーとその垂直方向に走査可能なモータとによって、2方向それぞれについて走査可能な構成とすることもできる。また、可動反射部1301は、それぞれ互いに直交するように配置された、1方向に走査可能な2つのMEMSミラーによって構成されていてもよい。可動反射部1301は、このような構成によって、光源110からの出射光の進行方向、並びに、物体により反射された外部反射光の進行方向を制御する。レンズ部1302は、単独または複数のレンズによって構成される、集光レンズである。
【0030】
図3において、受光回路120は、受光素子1201と、I/V変換回路1202と、増幅率制御部1203と、を備える。受光素子1201は、例えばAPDである。I/V変換回路1202は、受光素子1201に蓄積された電荷による電流を電圧に変換する回路である。信号処理部150は、I/V変換回路1202からの信号を基に、距離画像などを生成することができる。増幅率制御部1203は、制御部140からの制御信号に応じて受光素子1201に印加する電圧値を制御することによって、受光素子1201の増幅率を調整する。
【0031】
光源110から光が出射されたときに、光源110の出射光の一部が光学系130の可動反射部1301やレンズ部1302などによって反射され、内部反射光が発生することもある。そして、この内部反射光は、物体による外部反射光よりも先に受光素子1201の受光面に入射され得る。受光素子1201の増幅率によっては、内部反射光によって受光素子1201が飽和してしまい、外部反射光を検出できなくなってしまう。
【0032】
本具体例において、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間の受光素子1201の増幅率を、光走査装置10が距離を測定している間の1/10以下にする。例えば、光走査装置10が距離を測定している間の受光素子1201の増幅率が「1000」である場合、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間の受光素子1201の増幅率を「100」にする制御信号を増幅率制御部1203に送信する。また、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間の増幅率を「100」以下にする制御信号を増幅率制御部1203に送信してもよい。但し、この場合における「光走査装置10が距離を測定している間の受光素子1201の増幅率」は「100」よりも大きいことを前提とする。増幅率制御部1203は、制御部140からの制御信号に従って受光素子1201に印加する電圧を制御することによって、受光素子1201の増幅率を調整することができる。なお、受光素子1201が、例えばInGaAs(インジウムガリウムヒ化物) APDなどで構成される場合、受光素子1201は、増幅率30倍程度で降伏電圧に達してしまうこともある。このような場合、受光素子1201の特性に合わせた増幅率(InGaAs APDであれば増幅率「20」以下など)を光走査装置10のメモリ(図示せず)等に予め記憶しておくことによって、制御部140は、適切な範囲の増幅率で受光素子1201の動作させることが可能となる。
【0033】
制御部140は、例えば、受光素子1201を所謂リニアモードで動作させるように、降伏電圧未満の電圧を受光素子1201に印加させる制御信号を増幅率制御部1203に送信してもよい。また、制御部140は、受光素子1201を増幅率が比較的小さい範囲で動作させるように、降伏電圧付近(例えば、降伏電圧の95%以下)の電圧を受光素子1201に印加させる制御信号を増幅率制御部1203に送信してもよい。
【0034】
このような処理によって、受光素子1201に蓄積される電荷量が減少し、受光素子1201が飽和しにくくなる。これにより、内部反射光によって受光素子1201が飽和することを妨げて、外部反射光の受光タイミングを正確に把握できるようになる。
【0035】
<第2の具体例>
図4は、第2の具体例における光走査装置の機能構成を例示するブロック図である。第2の具体例において、光走査装置10は、以下の点を除き、第1の具体例で説明した構成と同様の構成を備える。
【0036】
本具体例では、受光回路120はスイッチ素子1204を更に備える。スイッチ素子1204は、受光素子1201の一端と接地点GNDとを接続する。制御部140は、光走査装置10が距離を測定している間は、スイッチ素子1204をオフ状態にする。また、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間に、スイッチ素子1204をオン状態にする。
【0037】
スイッチ素子1204がオン状態となると、受光素子1201が接地される。すると、受光素子1201の受光面に入射された光によって生成される電荷は、受光素子1201に蓄積されず、接地点GNDに流れていく。スイッチ素子1204をオン状態にすることで受光素子1201に蓄積された電荷がリセットされるため、受光素子1201に蓄積される電荷量が減少し、受光素子1201は飽和しにくくなる。これにより、内部反射光によって受光素子1201が飽和することを妨げて、外部反射光の受光タイミングを正確に把握できるようになる。
【0038】
<第3の具体例>
図5は、第2の具体例における光走査装置の機能構成を例示するブロック図である。第3の具体例において、光走査装置10は、以下の点を除き、第1の具体例で説明した構成と同様の構成を備える。
【0039】
本具体例において、受光回路120は、受光素子1201の受光面への光の入射を妨げるフィルター部1205を更に備える。また、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間に、フィルター部1205を作動させる。例えば、フィルター部1205は、印加電圧によって屈折率が変化する光学素子で構成される。この場合、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間において、フィルター部1205に印加する電圧値を調整することによって、内部反射光を受光素子1201の受光面から逸らすことができる。また、フィルター部1205は、受光面を物理的に覆うシャッターによって実現されてもよい。この場合、制御部140は、出射光の出射タイミングに基づいて定められた期間においてフィルター部1205のシャッターを閉めることによって、受光素子1201の受光面に内部反射光が入射するのを妨げることができる。
【0040】
このような処理によって、受光素子1201に蓄積される電荷量が減少し、受光素子1201が飽和しにくくなる。これにより、内部反射光によって受光素子1201が飽和することを妨げて、外部反射光の受光タイミングを正確に把握できるようになる。
【0041】
以上、制御部140は、物体によって反射された反射光が光走査装置10に戻ってくる期間は受光素子1201を駆動させ、それ以外の期間は受光素子1201に電荷が溜まらない(接地して電荷を逃がす、又は、受光面をマスクする)、或いは、溜まりにくく(増幅率を下げる)ようにする。これにより、光走査装置10内で発生する内部反射光によって受光素子1201が飽和状態となることを妨げて、周囲に存在する物体による外部反射光の受光タイミングを正確に把握することが可能となる。
【0042】
〔ハードウエア構成〕
【0043】
図6は、制御部140および信号処理部150のハードウエア構成を例示する図である。本図において制御部140および信号処理部150は、集積回路200を用いて実装されている。集積回路200は、例えばSoC(System-on-a-Chip)である。
【0044】
集積回路200は、バス202、プロセッサ204、メモリ206、ストレージデバイス208、入出力インタフェース210、及びネットワークインタフェース212を有する。バス202は、プロセッサ204、メモリ206、ストレージデバイス208、入出力インタフェース210、及びネットワークインタフェース212が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ204などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ204は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ206は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス208は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0045】
入出力インタフェース210は、集積回路200を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。本図において、入出力インタフェース210には光源駆動回路112、受光回路120、光学系駆動回路132が接続されている。
【0046】
ネットワークインタフェース212は、集積回路200を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えばCAN(Controller Area Network)通信網である。光走査装置10は、ネットワークインタフェース212を介してCAN通信網に接続し、車両の動作を制御するECUなどと通信することができる。なお、ネットワークインタフェース212が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0047】
ストレージデバイス208は、制御部140を実現するためのプログラムモジュールおよび信号処理部150の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ204は、これらのプログラムモジュールをメモリ206に読み出して実行することで、制御部140および信号処理部150それぞれの機能を実現する。
【0048】
集積回路200のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ206に格納されてもよい。この場合、集積回路200は、ストレージデバイス208を備えていなくてもよい。
【0049】
[実施形態2]
本実施形態2において、光走査装置10は、以下の点を除き、実施形態1で説明した構成と同様の構成を備える。すなわち、本実施形態2に記載の光走査装置10は、現在位置から測定対象となる物体(地物)までの距離に応じて、制御部140が実行する処理の開始タイミング又は終了タイミングの少なくとも一方を決定する。言い換えれば、本実施形態2に記載の光走査装置10は、現在位置から測定対象となる物体(地物)までの距離に応じて、制御部140が実行する処理の開始タイミング又は終了タイミングの少なくとも一方を変化させる。
【0050】
〔機能構成〕
図7は、実施形態2における光走査装置の機能構成を概念的に例示するブロック図である。本実施形態2では、図1に記載の構成に加え、光走査装置10は、光走査装置10又は光走査装置10を搭載した移動体(例えば、車両)の現在位置に関する情報を取得する現在位置取得部160、地物に関する地物情報等を含む地図情報を取得する地図情報取得部170、を更に備える。
【0051】
現在位置取得部160は、例えばGPS(Global Positioning System)等の測位衛星システムからの信号を受信する受信器を含んで構成されている。また、現在位置取得部160は、測位衛星システムからの信号を受信する受信器を備えた他の機器や装置(例えば車両に配置されたGPS受信器)と通信することによって、当該他の機器や装置から、車両の現在位置に関する情報を取得するように構成されていてもよい。また、現在位置取得部160は、CANなどを介して、移動体内の制御ユニットと通信し、当該制御ユニットから、車両の現在位置情報を取得するように構成されていてもよい。
【0052】
地図情報取得部170は、例えば地図情報を記憶・管理している地図サーバ装置(図示せず)と通信することによって、当該地図サーバ装置から地図情報等を取得する。この場合、地図情報取得部170は、例えば、取得した地図情報を光走査装置10が備える不図示の記憶部に記憶してもよい。なお、地図情報取得部170は、任意のタイミングで地図サーバ装置と通信することができる。例えば、地図情報取得部170は、ユーザからの指示入力や所定のスケジュールに従って、地図サーバ装置と通信を行うことができる。また、地図情報取得部170が取得する地図情報は、光走査装置10が備える不図示の記憶部に予め記憶されていてもよい。この場合、地図情報取得部170は、必要に応じて、当該記憶部から地図情報を読み出すことができる。地図情報には、車両が通行する道路等に関する情報の他、地物に関する地物情報が含まれている。地物の例としては、例えば、道路上に配置される看板、標識、建築物、又は、路面に描かれる標示(例:車線境界線や停止線)等が挙げられる。地物情報には、上述した地物の位置情報、地物を特定するための地物ID、地物の属性を示す属性情報、等が含まれる。
【0053】
以下、図8を用いて、制御部140が実行する処理を開始するタイミング又は当該処理終了させるタイミングを決定する際の動作フローを説明する。図8は、実施形態2における制御部140の処理の流れを例示するフローチャートである。
【0054】
制御部140は、現在位置取得部160が取得した現在位置情報から、光走査装置10又は車両の現在位置を特定する(S102)。
【0055】
そして、制御部140は、地図情報取得部170が取得した地図情報(地物情報に含まれる地物の位置情報)を参照して、S102の処理で特定した現在位置の周辺に存在すると推測される地物を特定および抽出する(S104)。なお、本処理において、制御部140は、例えば現在位置から光走査装置10の測定可能範囲内に存在すると推測される地物を特定および抽出するようにしてもよい。なお、光走査装置10の測定可能範囲は、例えば、光走査装置10のメモリやストレージといった記憶部(図示せず)に予め記憶されている。
【0056】
そして、制御部140は、S104の処理で特定された地物の位置情報と、現在位置取得部160により取得された現在位置情報と、に基づいて、S104の処理で特定された地物と現在位置との距離(地物までの距離)を算出する(S106)。
【0057】
そして、制御部140は、S106で算出した距離に応じて、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理を開始するタイミング又は当該処理を終了させるタイミングを決定する(S108)。以下、本実施形態における制御部140の動作を具体的に例示する。
【0058】
第1の例として、算出した地物までの距離が、光走査装置10の測定対象範囲の下限値に近い場合(言い換えれば、算出した地物までの距離が比較的短い場合)、制御部140は、上述の実施形態1と同様に、処理を開始するタイミングを、図2における第1の出射光の出射タイミング(時刻t1)又は当該タイミングよりも少し前の時点となるように決定する。また、制御部140は、処理を終了させるタイミングを、「光源110から光が照射されてから、光走査装置10の測定対象範囲の下限値に位置する物体による外部反射光が戻ってくるまでの期間」に相当する期間Aの終点(時刻tLL)となるように決定する。
【0059】
第2の例として、算出した地物までの距離が比較的長い場合、制御部140は、処理を終了させるタイミングを、上述の期間Aの終点(時刻tLL)よりも、遅くすることができる。言い換えれば、制御部140は、算出した地物までの距離が長くなるにつれ、処理を終了させるタイミングを遅くすることができる。さらに言い換えれば、制御部140は、算出した地物までの距離と光走査装置10の測定対象範囲の下限値との差分が大きいほど、処理を終了させるタイミングを遅くすることができる。これは、次の理由による。すなわち、算出した地物までの距離が長いほど(言い換えれば、光走査装置10の測定対象範囲の下限値よりも離れた位置に測定対象たる地物が存在するほど)、当該地物に反射された反射光が光走査装置10に戻ってくるまでの時間が長くなる。よって、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理等を上述の期間Aの終点(時刻tLL)で終了させる必要性がなくなる。言い換えれば、受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理等を終了させるタイミングを時間的に後ろにずらしたとしても、地物からの反射光を受信する際に悪影響を及ぼす可能性が低くなる。このことから、制御部140は、当該処理等を終了させるタイミングを、上記期間Aの終点(時刻tLL)よりも時間的に後ろにずらすことができる。このようにすることで、制御部140は、実施形態1よりも長い期間を利用して受光回路120の受光素子に蓄積される電荷を減少させる処理等を実行することが可能となり、より精度良く受光素子1201が飽和することを防止できる。
【0060】
上述した実施形態2を他の観点から説明する。上述した実施形態1は、図2における期間Aを「光源110から光が照射されてから、光走査装置10の測定対象範囲の下限値に位置する物体による外部反射光が戻ってくるまでの期間」としており、当該期間Aの範囲内で制御部140が処理を実行するという思想であった。これに対し上述の実施形態2においては、算出した地物までの距離に応じて、制御部140が処理を実行する期間である期間Aを設定する(即ち、期間Aの終点を、時間的に後ろにずらす)という思想である。
【0061】
本実施形態の変形例として、例えば算出した地物までの距離に相当する時刻が期間Bの中央付近である場合(即ち、地物が光走査装置10の測定対象範囲の中央付近に位置している場合)、制御部140は、期間Aの終点を時刻tLLよりも一定時間後ろに設定し、期間Cの始点を時刻tULよりも一定時間前に設定することとしてもよい。また、例えば算出した地物までの距離に相当する時刻がtUL付近である場合(即ち、地物が光走査装置10の測定対象範囲の上限付近に位置している場合)、制御部140は、期間Aの終点のみを時刻tLLよりも一定時間後ろに変更し、期間Cの始点は時刻tULのままに設定することとしてもよい。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の構成について述べたが、これらはあくまで例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0063】
この出願は、2017年2月15日に出願された日本出願特願2017-026094号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8