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特開2023-22174進行型の多発性硬化症を治療するためのグラチラマーデポシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022174
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】進行型の多発性硬化症を治療するためのグラチラマーデポシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230207BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230207BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P25/00
A61P13/10
A61P25/04
A61P25/28
A61P27/02
A61P25/02
A61P1/00
A61K47/34
A61P37/02
A61K9/107
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188123
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2019546249の分割
【原出願日】2018-03-25
(31)【優先権主張番号】62/476,794
(32)【優先日】2017-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511224254
【氏名又は名称】マピ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダノン,ウリ
(72)【発明者】
【氏名】ブライヒ キメルマン,ナダヴ
(72)【発明者】
【氏名】ポッパー,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】マロム,エフド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】進行型のMSに対する治療のための、酢酸グラチラマー(GA)等のグラチラマー塩を含むデポ製剤を提供する。
【解決手段】治療有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含有する徐放性デポ製剤であって、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)を治療または緩和する方法、またはPPMSと診断された患者においてそれらの症状を治療または緩和する方法に用いられ、前記徐放性デポ製剤は、40mg用量の前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含有し、かつ1~15週毎に1回投与される徐放性デポ製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含有する徐放性デポ製剤であって、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)を治療または緩和する方法、またはPPMSと診断された患者においてそれらの症状を治療または緩和する方法に用いられ、
前記徐放性デポ製剤は、40mg用量の前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含有し、かつ1~15週毎に1回投与される
徐放性デポ製剤。
【請求項2】
前記患者が、
(i)少なくとも1年の間PPMSと診断されかつ昨年にEDSSスコアで1ポイント以上の持続的な増加を伴う;
(ii)2~5.5の、(2以上のピラミッド形または小脳のFS)を含む、EDSSスコアを有する;
(iii)定量的検査が行われた場合は1より多いオリゴクローナルバンド(OCB)、または定量的検査が行われなかった場合はOCB+、および/または脳脊髄液(CSF)中の陽性IgGインデックスの確認された病歴、もしくはその存在を有する;
(iv)MRIでの少なくとも1つのガドリニウム増強病巣および/またはMRIで前の年のうちに確認された少なくとも1つのガドリニウム増強病巣を有する、または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを有する
請求項1に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項3】
前記症状が、歩行能力の障害、脚の虚弱、脚のこわばり、平衡障害、協調運動障害、記憶障害、認知機能障害、嚥下困難、視力障害、全身疲労、疼痛、膀胱機能障害、腸機能障害、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される
請求項1または請求項2に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項4】
PPMSを治療することが、
(i)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、拡大能力障害状態スケール(EDSS)によって評価される前記患者の12週間の確認される疾患進行(CDP)の発症までの時間を増加させること;
(ii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の全脳容積変化もしくは皮質容積変化を減少させること;
(iii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者が25フィート歩行に要する時間(T25FW)検査を完了するのに必要とされる時間を減少させること;
(iv)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者が9ホールペグ検査を完了するのに必要とされる時間を減少すること;
(v)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳における新たなもしくは増大するT2病巣の数を減少させること;
(vi)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳におけるT2病巣の容積を減少させること;
(vii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳における新たなT1病巣もしくは増大するT1病巣の数を減少させること;
(viii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳におけるT1病巣の容積を減少させること;
(ix)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳におけるガドリニウム(Gd)病巣の数もしくは容積を減少させること;
(x)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、PPMSの進行の速度を減少させること;
(xi)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、PPMSの更なる進行を予防すること;または
(xii)(i)~(xi)の任意の組み合わせ
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項5】
前記患者が、5.5未満のEDSSスコアを有しかつCDPが、EDSSスコアの少なくとも1ポイントの増加である、または
前記患者が、5.5~10のEDSSスコアを有しかつCDPが、EDSSスコアの少なくとも0.5ポイントの増加である
請求項4に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項6】
前記ベースラインが、前記徐放性デポ製剤による治療前の12週間以上の期間である、または
前記ベースラインが、前記徐放性デポ製剤による治療前の1年の期間である
請求項4または5に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項7】
前記徐放性デポ製剤が、全身に投与されるまたは埋め込まれる、または
前記徐放性デポ製剤が、筋肉内に、皮下に、経皮的に、静脈内に、または吸入によって投与されるまたは埋め込まれる
請求項1~6のいずれか一稿に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項8】
前記徐放性デポ製剤が、4週毎に一回投与される、または
前記徐放性デポ製剤が、1年間以上の間に反復して投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項9】
前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩が、酢酸グラチラマー(GA)である、又は
前記徐放性デポ製剤が、20%~30%の固体を含む、又は
前記徐放性デポ製剤が、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コポリマーを含む、または
前記PLGAコポリマーが、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(50:50)コポリマーである、または
前記徐放性デポ製剤が、前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩の40mg当たり550mgのPLGAコポリマーを含む、または
前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩を少なくとも部分的にカプセル化した前記PLGAコポリマーを含む
請求項1~8のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項10】
前記徐放性デポ製剤が、撹拌中に、37℃にて、閉鎖容器中で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)において:
(i)1週間以内に約15%~約30%の前記グラチラマー塩を放出する;
(ii)2週間以内に約30%~約50%の前記グラチラマー塩を放出する;
(iii)3週間以内に約50%~約90%の前記グラチラマー塩を放出する;
(iv)4週間以内に約90%~約100%の前記グラチラマー塩を放出する;または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせである、又は
前記徐放性デポ製剤が、1週間以内に約15%~約30%の前記グラチラマー塩、2週間以内に約30%~約50%の前記グラチラマー塩、3週間以内に約50%~約90%の前記グラチラマー塩、および4週間以内に約90%~約100%のグラチラマー塩を放出する、請求項1~9のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項11】
治療有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含有する徐放性デポ製剤であって、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を治療または緩和する方法、またはSPMSと診断された患者においてそれらの症状を治療または緩和する方法に用いられ、
前記徐放性デポ製剤は、40mg用量の前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含有し、かつ1~15週毎に1回投与される
徐放性デポ製剤。
【請求項12】
前記患者が、
(i)2~5.5の、(2以上のピラミッド形または小脳のFS)を含む、EDSSスコアを有する;
(ii)定量的検査が行われた場合は1より多いオリゴクローナルバンド(OCB)、または定量的検査が行われなかった場合はOCB+、および/または脳脊髄液(CSF)中の陽性IgGインデックスの確認された病歴、もしくはその存在を有する;
(iii)MRIでの少なくとも1つのガドリニウム増強病巣および/またはMRIで前の年のうちに確認された少なくとも1つのガドリニウム増強病巣を有する、または
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせを有する
請求項11に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項13】
前記症状が、歩行能力の障害、脚の虚弱、脚のこわばり、平衡障害、協調運動障害、記憶障害、認知機能障害、嚥下困難、視力障害、全身疲労、疼痛、膀胱機能障害、腸機能障害、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される
請求項11または請求項12に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項14】
SPMSを治療することが、
(i)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、拡大能力障害状態スケール(EDSS)によって評価される前記患者の12週間の確認される疾患進行(CDP)の発症までの時間を増加させること;
(ii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の全脳容積変化もしくは皮質容積変化を減少させること;
(iii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者が25フィート歩行に要する時間(T25FW)検査を完了するのに必要とされる時間を減少させること;
(iv)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者が9ホールペグ検査を完了するのに必要とされる時間を減少すること;
(v)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳における新たなもしくは増大するT2病巣の数を減少させること;
(vi)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳におけるT2病巣の容積を減少させること;
(vii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳における新たなT1病巣もしくは増大するT1病巣の数を減少させること;
(viii)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳におけるT1病巣の容積を減少させること;
(ix)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、前記患者の脳におけるガドリニウム(Gd)病巣の数もしくは容積を減少させること;
(x)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、SPMSの進行の速度を減少させること;
(xi)ベースラインもしくは治療されない対照と比較して、SPMSの更なる進行を予防すること;または
(xii)(i)~(xi)の任意の組み合わせ
を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項15】
前記患者が、5.5未満のEDSSスコアを有しかつCDPが、EDSSスコアの少なくとも1ポイントの増加である、または
前記患者が、5.5~10のEDSSスコアを有しかつCDPが、EDSSスコアの少なくとも0.5ポイントの増加である、または
前記ベースラインは、前記徐放性デポ製剤による治療の12週間以上前の期間である、または
前記ベースラインは、前記徐放性デポ製剤による治療の1年以上前の期間である
請求項14に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項16】
前記徐放性デポ製剤は、投与または埋め込まれる、または
前記徐放性デポ製剤は、筋肉内に、皮下に、経皮的に、静脈内に、または吸入投与によって投与または埋め込まれる、または
前記徐放性デポ製剤が、4週毎に一回投与される、または
前記徐放性デポ製剤が、1年間以上の間に反復して投与される
請求項11~15のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【請求項17】
前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩が、酢酸グラチラマー(GA)である、又は
前記徐放性デポ製剤が、20%~30%の固体を含む、又は
前記徐放性デポ製剤が、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コポリマーを含む、または
前記PLGAコポリマーが、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(50:50)コポリマーである、または
前記徐放性デポ製剤が、前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩の40mg当たり550mgのPLGAコポリマーを含む、または
前記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩を少なくとも部分的にカプセル化した前記PLGAコポリマーを含む
請求項11~16のいずれか一項に記載の徐放性デポ製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次的進行性多発性硬化症(PPMS:primary progressive multiple sclerosis)および二次性進行性多発性硬化症(SPMS:secondary progressive multiple sclerosis)を治療するための、酢酸グラチラマーまたはグラチラマーの他の薬学的に許容可能な塩の長期放出用のデポ製剤および他の埋め込み型システムに関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸グラチラマー(GA)としても知られ商品名コパキソン(登録商標)で市販されるコポリマー-1は、4つのアミノ酸、すなわちL-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシンおよびL-リジンのランダムコポリマーの酢酸塩を含む。酢酸グラチラマーは、合成ポリペプチドの混合物の酢酸塩であり、合成ポリペプチドの各々は、4つの天然起源のアミノ酸、それぞれ0.141、0.427、0.095、および0.338の平均モル分率を有するL-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシンおよびL-リジンから本質的になる。酢酸グラチラマーの平均分子量は、5000ダルトン~9000ダルトンである。酢酸グラチラマーは、米国でコパキソン(登録商標)として販売され、再発寛解型多発性硬化症(RRMS:Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis)を有する患者における再発頻度の低減に適応される。
【0003】
コパキソン(登録商標)は、毎日の皮下注射によって投与される20mg用量で、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療に対して1996年から承認されている。2014年から、コパキソン(登録商標)は、少なくとも48時間あけて行われる1週間当たり3回の注射による40mg用量の投与でも承認されている。20mg用量のコパキソン(登録商標)の毎日の投与と比較して、後者の用量およびレジーム(regime)は、同じ有効性を維持しながら、年間の注射回数を約200回減少する。
【0004】
毎日および毎週3回のコパキソン(登録商標)治療は、活性物質の自己注射を含む。頻繁に観察される注射部位の問題としては、刺激、過敏性、炎症、疼痛、更にはネクローシス(インターフェロン1β治療の場合)、および結果として生じる患者のコンプライアンスの問題が挙げられる。副作用としては一般的に、注射部位のしこり(注射部位反応)、疼痛、発熱および悪寒が挙げられる。これらの副作用は、本質的に概ね軽度である。時折、反応は注射の数分後に起こり、潮紅、息切れ、不安および速い鼓動がある。これらの副作用は30分以内におさまる。経時的に、脂肪組織萎縮症として知られる、脂肪組織の局所破壊による注射部位での目に見えるくぼみが生じる場合がある。したがって、代替の投与法が望ましい。FDAの処方ラベルによれば、幾つかの重篤な副作用が酢酸グラチラマーについて報告されており、これらは、身体の心血管系、消化器系(肝臓を含む)、血液系およびリンパ系、筋骨格系、神経系、呼吸器系、特殊感覚(特に眼)、泌尿生殖器系に対する重篤な副作用を含み、また代謝障害および栄養障害も報告されたが、酢酸グラチラマーとこれらの有害作用の間のつながりは決定的には確立されていない(FDAコパキソン(登録商標)のラベル)。
【0005】
静脈内(IV)、筋肉内(IM)、または皮下(SC)注射による非経口経路は、小さな分子量の薬物ならびに大きな分子量の薬物のための送達の最も一般的で最も有効な形態である。しかしながら、針刺による疼痛、不快および不都合は、薬物送達のこの様式を患者に最も好まれないものにする。したがって、少なくとも注射の総数を減らすことができるいずれかの薬物送達技術が好ましい。実施の際のそのような薬物の投薬頻度の減少は、ゆっくりではあるが予測可能な様式で薬物を放出できる注射用デポ製剤の使用によって達成され結果的にコンプライアンスを改善できる。大半の薬物について、用量に応じて、注射頻度を毎日から毎月またはそれより長い間(6カ月)に1回または2回へと減少することが可能であり得る。患者の快適さを改善することに加えて、デポ製剤の形態での薬物のより少ない頻度の注射は、大きな分子量の薬物としばしば関連する免疫原性等の、望ましくない事象を減少することが示されている。
【0006】
マイクロ粒子、インプラントおよびゲル剤は、体内での薬物の放出を延長するために、実施の際に使用される生物分解性ポリマーデバイスの最も一般的な形態である。マイクロ粒子は注射の直前に水性媒質に懸濁され、懸濁液中に40%もの固体を充填できる。インプラント/ロッド製剤は、水性媒質を必要とせずに、乾燥状態で特殊な針を用いてSC/IM組織に送達される。ロッド/インプラントのこの特徴は、製剤ならびに送達される薬物含有量の、より大きな質量を可能にする。更に、ロッド/インプラントでは、マイクロ粒子と比較してインプラント中の領域がはるかに小さいため、初期バーストの問題が最小化される。生物分解性システムの他に、体外に装着できる非生物分解性インプラントおよび輸液ポンプがある。非生物分解性のインプラントは、SC/IM組織へのデバイスの埋め込みのためだけでなく薬物放出期間後のそれらのデバイスの摘除のためにも、診察を必要とする。
【0007】
粒子調剤薬を含む注射用組成物は、特に問題が起きやすい。微粒子懸濁液は、他の種類の注射用懸濁液中の0.5%~5%の固体と比較して、40%もの固体を含む場合がある。更に、注射用デポ製品で使用されるマイクロ粒子は、IMまたはSCの投与に推薦される5μm未満の粒子径と比較して、最大で約250μm(平均60μm~100μm)のサイズの範囲にある。より高濃度の固体、ならびにより大きな固体粒子径は、注射のためにより大きなサイズの針(約18ゲージ~21ゲージ)を必要とする。総合的に、より大きく不快な針の低頻度の使用にかかわらず、患者はなお、より小さな針による毎日または週に3回の薬物投与などのより頻度の高い投与レジメンよりも、相当に頻度の低い投与剤型の方を好む。
【0008】
ポリ(乳酸)(PLA)の生分解性ポリエステル、およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)と称されるラクチドとグリコリドのコポリマーは、生物分解性の剤形で使用される最も一般的なポリマーである。PLAは疎水性分子であり、PLGAは、親水性グリコリド基がより多く存在するため、PLAより速く分解する。これらの生体適合性ポリマーは、エステル結合のランダムな非酵素加水切断を経て、体内での正常な代謝化合物である乳酸およびグリコール酸を形成する。再吸収可能な縫合糸、クリップおよびインプラントは、これらのポリマーの最も初期の適用である。Southern Research Instituteは、1970年に最初の合成の再吸収可能な縫合糸(Dexon(登録商標))を開発した。徐放性剤形でのPLGAポリマーの使用を記載する最初の特許は、1973年(米国特許第3,773,919号)に登場した。
【0009】
今日、PLGAポリマーは、複数の供給者から商業的に入手可能である。PLGAおよびPLAの他に、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン等の天然セルロースポリマーおよび非PLGA合成高分子等も、かかるシステムでの生分解性高分子として探索されている。
【0010】
本発明者らのうち数名に対する米国特許第8,377,885号および米国特許第8,796,226号は、デポ形態で酢酸グラチラマーを含む、長期作用型医薬組成物に関する。
【0011】
オクレリズマブ(OCREVUS(商標))は、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体であり、2016年に食品医薬品局(FDA)によってPPMSに対するブレーク・スルー・セラピー指定(Breakthrough Therapy Designation)が認められた。オクレリズマブは多発性硬化症の治療として2017年にFDAによって承認され、PPMSに対して最初にFDAに認可された薬物である。オクレリズマブは静脈注射によって投与される。
【0012】
これまでのところ、酢酸グラチラマーの長期作用型剤型は、MS患者の治療に対して商業的に入手可能でない。進行中の臨床試験は、再発寛解型のMSにおいてデポ形態のGAの安全性および/または有効性を試験するために行われている。進行型のMSに対する治療選択肢において満たされていない医学的ニーズが存在する。好ましくは、かかる治療は、薬物送達工程および関連する副作用の頻度を最小限にするために、デポ製剤で投与され得る。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、薬学的に許容可能なグラチラマー塩、例えば酢酸グラチラマーの長期作用型デポ製剤の投与またはその埋め込みを含む、進行型の多発性硬化症(MS)および関連する症状を治療する方法を提供する。様々な実施形態によれば、デポ製剤は、毎週1回、数週間毎に1回、1カ月に1回、または数カ月毎に1回投与される。更なる実施形態によれば、上記デポ製剤は、患者に対して、10mg用量~100mg用量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩、例えば酢酸グラチラマーを提供する。
【0014】
本発明の原理による長期作用型医薬組成物およびデポ製剤が、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)および二次性進行型多発性硬化症(SPMS)の患者において治療有効性を提供することが、本発明において初めて開示される。予想外に、本発明の原理による10mg~100mgの酢酸グラチラマーのデポの数週間毎に1回の投与が、PPMSおよびSPMSの患者に有益であることが更にわかった。
【0015】
本発明は、一態様では、GAのデポ製剤を使用して、PPMSまたはSPMSと診断された患者において、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)、またはPPMSもしくはSPMSの少なくとも1つの症状を治療するまたは緩和するための方法を提供する。方法は、酢酸グラチラマー(GA)またはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩を含むデポ製剤の治療的に有効なレジメンを患者に投与する工程を含み、レジメンは、PPMS、SPMS、またはPPMSもしくはSPMSの少なくとも1つの症状を治療または緩和するのに十分である。特定の実施の形態によれば、デポ製剤は酢酸グラチラマーを含む。
【0016】
特定の実施の形態では、患者は、PPMSを患っていると診断されている。特定の実施の形態では、患者は、SPMSを患っていると診断されている。
【0017】
特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、PPMSまたはSPMSの進行の速度を減少させることを含む。特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、確認される疾患進行(CDP:Confirmed Disease Progression)の発症までの時間を増加させることを含む。特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、EDSSによって評価される12週間の確認される疾患進行(CDP)の発症までの時間を増加させることを含む。特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、全脳容積変動または皮質容積変動を減少させることを含む。特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、25フィート歩行に要する時間(T25FW:timed 25-foot walk)の検査を完了するのに必要とされる時間を減少することを含む。特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、9-ホールペグ検査(9-HPT:9-Hole Peg Test)を完了するのに必要とされる時間を減少させることを含む。
【0018】
特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、(i)新たなもしくは増大するT2病巣の数;(ii)T2病巣の容積;(iii)新たなもしくは増大するT1病巣の数;(iv)T1病巣の容積;(v)ガドリニウム(Gd)病巣の数もしくは容積;または(vi)(i)~(v)の任意の組み合わせを減少することを含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施の形態を表す。特定の実施の形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、PPMSまたはSPMSの更なる進行を予防することを含む。
【0019】
特定の実施の形態では、上記症状は、協調運動障害、歩行能力障害、平衡障害、脚の虚弱、脚のこわばり、記憶障害、認知機能障害、嚥下困難、視力障害、全身疲労、疼痛、膀胱機能障害、腸機能障害、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施の形態を表す。
【0020】
特定の実施の形態では、デポ製剤は、1~15週毎に1回投与される。特定の実施の形態では、デポ製剤は2~6週毎に1回投与される。幾つかの実施の形態によれば、上記投与は、2~6週毎に1回のデポ製剤の注射を含む。特定の実施の形態では、デポ製剤は4週間毎に1回投与される。幾つかの実施の形態によれば、投与は、4週間毎に1回のデポ製剤の筋肉注射を含む。
【0021】
特定の実施の形態では、デポ製剤は非経口投与される。特定の実施の形態では、デポ製剤は、筋肉内に、皮下に、経皮的に、静脈内に、または吸入投与によって投与される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施の形態を表す。特定の実施の形態では、デポ製剤は筋肉内投与される。特定の実施の形態では、デポ製剤は皮下投与される。
【0022】
特定の実施の形態では、デポ製剤は、担体1mL当たりGA20mgの濃度で投与される。特定の実施の形態では、担体は注射用水(WFI:water for injection)である。特定の実施の形態では、デポ製剤は、20%~30%の固体を含む。特定の実施の形態では、デポ製剤はポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コポリマーを含む。特定の実施の形態では、PLGAコポリマーはポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(50:50)コポリマーである。特定の実施の形態では、デポ製剤は、GA40mg当たり550mgのPLGAコポリマーを含む。特定の実施の形態では、PLGAコポリマーはGAを少なくとも部分的にカプセル化する。特定の実施の形態では、デポ製剤は、40mg用量~80mg用量のGAを含む。特定の実施の形態では、デポ製剤は40mg用量のGAを含む。特定の実施の形態では、デポ製剤は80mg用量のGAを含む。
【0023】
特定の実施の形態では、GAの45%未満が、連続撹拌のもと37℃にてPBS中で、14日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施の形態では、GAの90%超が、連続撹拌のもと37℃にてPBS中で、28日以内にデポ製剤から放出される。
【0024】
特定の実施の形態では、患者は、(i)少なくとも1年間PPMSまたはSPMSと診断されており、昨年にEDSSスコアでの1ポイント以上の持続的な増加またはEDSSスコアで0.5ポイント以上を有する;(ii)2~5.5を含むEDSSスコアを有する;(iii)1より多いオリゴクローナルバンド(OCB)(IGG OCB陽性(OCGB+))および/または脳脊髄液(CSF)中の陽性IgGインデックスの確認された病歴、もしくはその存在を有する;(iv)MRIで少なくとも1つのガドリニウム増強病巣および/またはMRIで前年のうちに確認された少なくとも1つのガドリニウム増強病巣を有する;または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施の形態を表す。特定の実施の形態では、患者は、異なる時間点で発生した、中枢神経系(CNS)における少なくとも2つの別々の領域の損傷を有する。特定の実施の形態では、患者は、少なくとも1年の疾患進行の病歴を有し、(i)CNSにおける少なくとも1つの損傷領域、(ii)脊髄における少なくとも2つの類似するタイプの損傷領域、および(iii)髄液におけるオリゴクローナルバンドまたは高いIgGインデックスからなる群から少なくとも2つを有する。特定の実施の形態では、患者は、再発事象の病歴を有しない。特定の実施の形態では、患者は、寛解事象の病歴を有しない。特定の実施の形態では、患者は本発明のレジメンの開始の前にGA療法を受けたことがない。特定の実施の形態では、患者は本発明のレジメンの開始の前にGA療法を受けたことがある。特定の実施の形態では、患者は本発明のレジメンの開始の前に毎日のGA療法を受けたことがある。特定の実施の形態では、患者は本発明のレジメンの開始の前に毎週3回のGA療法を受けたことがある。
【0025】
特定の実施の形態では、本発明のデポ製剤の複数回の投与が、それを必要とする被験体に提供される。特定の実施の形態では、レジメンは、少なくとも2回繰り返される。特定の実施の形態では、上記レジメンは、少なくとも6カ月間継続して繰り返される。特定の実施の形態では、上記レジメンは、少なくとも1年間継続して繰り返される。
【0026】
特定の実施の形態では、投与頻度は、GA20mgの毎日の投与またはGA40mgの毎週3回の投与と比べて減少される。特定の実施の形態では、投与されるGAの用量は、GA20mgの毎日の投与またはGA40mgの毎週3回の投与と比べて減少される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施の形態を表す。
【0027】
本発明は、別の態様で、GA治療に対する、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者の忍容性を高める方法を更に提供し、方法は、患者におけるGA治療の忍容性を高めるように、GAの投与頻度をGAまたはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩のデポ製剤の治療的に有効なレジメンへと減少することを含む。
【0028】
特定の実施の形態では、GA治療の忍容性を高めることは、注射頻度を減少させることを含む。特定の実施の形態では、GA治療の忍容性を増加させることは、注射部位反応の頻度を減少させることを含む。特定の実施の形態では、GA治療の忍容性を高めることは、ある期間に亘って投与されるGAの全薬用量を減少させることを含む。特定の実施の形態では、GA治療の忍容性を高めることは、患者のコンプライアンスを改善することを含む。
【0029】
本発明は、別の態様では、GAの投与頻度を減少させることによって、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療の利便性を高める方法を更に提供する。上記方法は、GAまたはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩のデポ製剤の治療的に有効なレジメンを設けることによって投与の頻度を減少させ、それによって患者のGA治療の利便性を高めることを含む。
【0030】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療のアドヒアランスを高める方法を更に提供し、方法は、GAまたはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩のデポ製剤の治療的に有効なレジメンを設けることによってGAの投与頻度を減少させ、それによって患者のGA治療のアドヒアランスを増加させることを含む。
【0031】
本発明の更なる実施の形態および適用性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内の様々な変化および修飾がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるため、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施の形態を示す一方で、解説のため与えられるに過ぎないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】C57BL/6マウス群における、生理食塩水対照、コパキソン(登録商標)(GA2mg、0日目~8日目)およびGAデポ(GA4mg、0日目)についての平均臨床スコアの結果を示す図である。は、治療されない対照と比較した全ての治療群について、一因子ANOVAの後、不等分散を仮定する片側T検定でP<0.05。N=20/群、+/-標準誤差。
図2】C57BL/6マウス群における、生理食塩水対照、コパキソン(登録商標)(GA2mg、0日目~8日目)およびGAデポ(GA4mg、0日目)についての平均体重の結果を示す図である。は、治療されない対照と比較した全ての治療群について、一因子ANOVAの後、不等分散を仮定する片側T検定でP<0.05。N=20/群、+/-標準誤差。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、PPMSまたはSPMSの患者において顕著な治療有効性を有し、かつ低頻度のGA投与の結果副作用が低減された、酢酸グラチラマー(GA)の長期作用型デポ製剤を提供する。
【0034】
本発明は、PPMS患者の複数の臨床研究において以前は有効ではないとされていたGAが、デポシステムとして製剤化され予想よりも低い用量で投与される場合に、PPMSおよびSPMSの患者の治療において実際に有効であるという驚くべき知見に基づく。
【0035】
本発明は、一態様では、PPMSもしくはSPMSと診断された患者においてPPMSもしくはSPMS、またはPPMSもしくはSPMSの少なくとも1つの症状を治療するまたは緩和するための方法を提供し、方法は、酢酸グラチラマー(GA)またはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩を含むデポ製剤の治療的に有効なレジメンを患者に適用する工程を含み、レジメンは、PPMSもしくはSPMS、またはPPMSもしくはSPMSの少なくとも1つの症状を治療または緩和するのに十分である。
【0036】
本発明の原理によれば、本明細書において同じ意味で使用される「PPMSを患っていると診断された患者」という句、または「PPMS患者」という用語は、PPMSを患っていると診断された患者、すなわち、MSの進行期にある患者を指す。本発明の原理によれば、本明細書において同じ意味で使用される「SPMSを患っていると診断された患者」という句、または「SPMS患者」という用語は、SPMSを患っていると診断された被験体、すなわちMSの再発寛解期が事実上終了した後の、進行期が開始した後の、および進行期にある被験体を指す。
【0037】
特定の実施形態では、患者は、PPMSを患っていると診断されている。特定の実施形態では、PPMSを患っていると診断された患者は、PPMSの進行期にある。特定の実施形態では、患者は、SPMSを患っていると診断されている。特定の実施形態では、SPMSを患っていると診断された患者は、SPMSの進行期にある。
【0038】
本明細書で使用される「治療的に有効なレジメン」という用語は、PPMSもしくはSPMSの治療もしくは緩和の、またはPPMSもしくはSPMSの症状の治療もしくは緩和の目標を達成するGAの投与頻度および量を認定することが意図される。本明細書で使用される「デポ製剤」という用語は、被験体の一般的な全身循環または被験体における局所作用部位へのグラチラマー塩の長期の、持続性のまたは延長された放出を提供する組成物を指す。この用語は、被験体においてグラチラマー塩の長期の、持続性のまたは延長された作用持続時間(薬物動態)を提供する組成物を更に指す場合がある。本明細書で使用される用語「治療すること、治療」は、PPMSまたはSPMSの発症後に或る一つの症状のまたは複数の症状の予防、抑制または緩和を指す。
【0039】
本明細書で使用される「酢酸グラチラマー」という用語は、商品名コパキソン(登録商標)で販売されるコポリマー1として以前に知られた化合物を指し、4つの天然起原のアミノ酸、すなわちそれぞれ、0.141、0.427、0.095および0.338の平均モル分率を有するL-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシンおよびL-リジンを含む、合成ポリペプチドの酢酸塩からなる。コパキソン(登録商標)中の酢酸グラチラマーの平均分子量は、4700ダルトン~11000ダルトン(FDA コパキソン(登録商標)表示)であり、アミノ酸の数は約15~約100アミノ酸の範囲である。上記用語はまた、化合物の化学誘導体および類縁体も指す。典型的には、上記化合物は、米国特許第5,981,589号;同第6,054,430号;同第6,342,476号;同第6,362,161号;同第6,620,847号;および同第6,939,539号のいずれかに明示される通り作製され、それらに記載される通り特徴づけられ、これらの各引用文献の内容はそれらの全体が本明細書の一部をなす。
【0040】
コポリマーは、当業者に利用可能な任意の手順によって作製され得る。例えば、コポリマーは、溶液中で所望のモル比のアミノ酸を使用する縮合条件下で、または固相合成手順により作製され得る。縮合条件は、1個のアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基を縮合してペプチド結合を形成するための適切な温度、pHおよび溶媒の条件を含む。縮合剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドを使用してペプチド結合の形成を促進できる。
【0041】
幾つかの実施形態では、組成物は、限定されないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、酢酸塩、硝酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオレート、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、コハク酸トコフェリル、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニルアセテート、フェニルプロピオン酸塩、フェニルブチレート、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシブチレート、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホネート、p-トルエンスルホン酸塩、マンデル酸塩等の塩を含むグラチラマーの任意の他の薬学的に許容可能な塩を含んでよい。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0042】
特定の実施形態では、症状は協調運動障害である。特定の実施形態では、症状は歩行能力障害である。特定の実施形態では、症状は平衡障害である。特定の実施形態では、症状は脚の虚弱である。特定の実施形態では、症状は脚のこわばりである。特定の実施形態では、症状は記憶障害である。特定の実施形態では、症状は認知機能障害である。特定の実施形態では、症状は嚥下困難である。特定の実施形態では、症状は視力障害である。特定の実施形態では、症状は全身疲労である。特定の実施形態では、症状は疼痛である。特定の実施形態では、症状は膀胱機能障害である。特定の実施形態では、症状は腸機能障害である。特定の実施形態では、症状はPPMSまたはSPMSの症状の組み合わせである。
【0043】
特定の実施形態では、デポ製剤は1~15週毎に1回投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は1~10週毎に1回投与される。幾つかの実施形態によれば、投与は注射を含む。幾つかの実施形態によれば、投与は2~6週毎の注射を含む。幾つかの実施形態によれば、投与は2~6週毎の投与を含む。特定の実施形態では、デポ製剤は2週間毎に1回投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は3週間毎に1回投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は4週間毎に1回投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は5週間毎に1回投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は6週間毎に1回投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は非経口投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は、筋肉内に、皮下に、経皮的に、静脈内に、または吸入投与によって投与される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態では、デポ製剤は筋肉内投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は皮下投与される。
【0044】
特定の実施形態では、デポ製剤は、担体1mL当たり10mgのGAの濃度で投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は、担体1mL当たり20mgのGAの濃度で投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は、担体1mL当たり40mgのGAの濃度で投与される。特定の実施形態では、担体はWFIである。本明細書で使用される「注射用水」すなわち「WFI」という用語は一般的に、例えば微粒子、溶解された固形物、有機物、無機物、微生物およびエンドトキシン混入物に対する規制基準を満たす無菌の純水を意味する。特定の実施形態では、デポ製剤は、WFI)、または懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、CMC)、緩衝剤(例えば、クエン酸塩)および/または等張化剤(例えば、NaCl)を含むバッファー中で投与される。
【0045】
特定の実施形態では、デポ製剤は、10%~40%の固体を含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、20%~30%の固体を含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コポリマーを含む。特定の実施形態では、PLGAコポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(50:50)コポリマーである。特定の実施形態では、デポ製剤は、GA40mg当たり150mg~1500mgのPLGAコポリマーを含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、GA40mg当たり550mgのPLGAコポリマーを含む。特定の実施形態では、PLGAコポリマーは、GAを少なくとも部分的にカプセル化する。特定の実施形態では、PLGAコポリマーはGAをカプセル化する。
【0046】
特定の実施形態では、デポ製剤は、少なくとも20mg用量のGAまたはその別の薬学的に許容可能な塩を含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、20mg~1000mg用量のGAまたはその別の薬学的に許容可能な塩を含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、20mg~750mg用量のGAまたはその別の薬学的に許容可能な塩を含む。特定の実施形態では、デポ製剤は40mg~80mg用量のGAを含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、40mg用量のGAを含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、50mg用量のGAを含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、60mg用量のGAを含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、70mg用量のGAを含む。特定の実施形態では、デポ製剤は、80mg用量のGAを含む。
【0047】
特定の実施形態では、GAの30%未満が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で7日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施形態では、GAの20%超が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で7日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施形態では、GAの45%未満が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で14日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施形態では、GAの30%超が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で14日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施形態では、GAの85%未満が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で21日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施形態では、GAの40%超が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で21日以内にデポ製剤から放出される。特定の実施形態では、GAの90%超が、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で28日以内にデポ製剤から放出される。
【0048】
特定の実施形態では、連続的撹拌のもと37℃にてPBS中で、(i)約14%のグラチラマーが0日以内にデポ製剤から放出される、および/または(ii)約15%のグラチラマーが1日以内にデポ製剤から放出される、および/または(iii)約21%のグラチラマーが5日以内にデポ製剤から放出される、および/または(iv)約25%のグラチラマーが8日以内にデポ製剤から放出される、および/または(v)約34%のグラチラマーが13日以内にデポ製剤から放出される、および/または(vi)約43%のグラチラマーが15日以内にデポ製剤から放出される、および/または(vii)約80%のグラチラマーが22日以内にデポ製剤から放出される、および/または(viii)約96%のグラチラマーが27日以内にデポ製剤から放出される、および/または(x)約99%のグラチラマーが32日以内にデポ製剤から放出される。それぞれの可能性および可能性の各組み合わせは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0049】
特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、PPMS関連またはSPMS関連の症状の進行速度を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、PPMSまたはSPMSの進行速度を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、確認される疾患進行(CDP)の発症までの時間を増加させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、EDSSによって評価される12週間の確認される疾患進行(CDP)の発症までの時間を増加させることを含む。クルツケの拡大能力障害状態スケール(Kurtzke Expanded Disability Status Scale)(EDSS)は、多発性硬化症における身体障害を定量する方法である。EDSSは、8つの機能系(FS)において身体障害を定量し、神経学者がこれらの各々において機能系スコア(FSS)を割り当てることを可能にする。EDSSは、0~10の範囲の尺度で身体障害の状態を測定し、より高いスコアはより重い身体障害を示す。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、全脳容積変動または皮質体積変動を減少させることを含む。参加者が25フィート歩く間の時間を測る、T25FWは、定量的運動性および脚機能のパフォーマンス検査である。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、25フィート歩行に要する時間(T25FW)を完了するまでの所要時間を減少することを含む。9-HPTは、9つの穴に9つのペグを入れその後ペグを取り外すのに要する時間を測定する、上肢機能の定量試験である。特定の実施形態では、PPMSを治療することは、ベースラインと比較して、9-ホールペグ検査(9-HPT)を完了するまでの所要時間を減少させることを含む。「ベースライン」および「対照」という用語は、同じ意味で使用可能であり、本明細書では、本発明の方法による治療を開始する前の期間を指す。特定の実施形態では、本明細書で使用される「ベースライン」という用語は、本発明の方法によって治療されていないPPMSまたはSPMSの患者を更に指す。特定の実施形態では、本明細書で使用される「ベースライン」という用語は、本発明の方法による治療を使用することを開始する前の1年の期間を指す。
【0050】
特定の実施形態では、CDPは、以下の基準の1以上と定義され、以下の評価の1以上を使用して確認される:ベースラインEDSSが5.5以下の場合1ポイント以上、またはベースラインEDSSが5.5超の場合0.5ポイント以上の、ベースラインから増加した持続的なEDSSスコア。特定の実施形態では、CDPは、ベースラインEDSSが2.0ポイント~5.5ポイントであった場合、1.0ポイント以上のベースラインからのEDSSの持続的な(12週間以上)増加と定義され、またはベースラインEDSSが5.5ポイント超であった場合、0.5ポイント以上のEDSSの増加と定義される。
【0051】
特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、新たなまたは増大するT2病巣の数を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、T2病巣の容積を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、新たなまたは増大するT1病巣の数を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、T1病巣の容積を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ガドリニウム(Gd)病巣の数または容積を減少させることを含む。特定の実施形態では、PPMSまたはSPMSを治療することは、ベースラインと比較して、PPMSまたはSPMSの更なる進行を予防することを含む。
【0052】
特定の実施形態では、患者は、少なくとも1年間PPMSと診断され、昨年にEDSSスコアの1ポイント以上の持続的な増加を伴う。特定の実施形態では、患者は2~5.5を含むEDSSスコアを有する。特定の実施形態では、患者は、1より多いオリゴクローナルバンド(OCB)(IgG OBC陽性(OCGB+)および/または脳脊髄液(CSF)中の陽性IgGインデックスの確認された病歴またはそれらの存在を有する。特定の実施形態では、患者は、MRIで少なくとも1つのガドリニウム増強病巣を有し、および/またはMRIで前年の内に確認された少なくとも1つのガドリニウム増強病巣を有する。特定の実施形態では、患者は、異なる時間点で発生した中枢神経系(CNS)における少なくとも2つの別々の損傷領域を有する。特定の実施形態では、患者は、少なくとも1年の疾患進行の病歴、および(i)CNSにおける少なくとも1つの損傷領域、(ii)脊髄における少なくとも2つの類似するタイプの損傷領域、および(iii)髄液におけるオリゴクローナルバンドまたは高IgGインデックスからなる群から少なくとも2つを有する。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態では、患者は、再発事象の病歴を有しない。特定の実施形態では、患者は、寛解事象の病歴を有しない。特定の実施形態では、患者は、レジメンの開始前にGA療法を受けたことがない。特定の実施形態では、患者は、レジメンの開始前にGA療法を受けたことがある。
【0053】
特定の実施形態では、レジメンは繰り返される。特定の実施形態では、レジメンは、少なくとも2回繰り返される。特定の実施形態では、レジメンは、少なくとも6カ月間継続的に繰り返される。特定の実施形態では、レジメンは、少なくとも1年間継続的に繰り返される。特定の実施形態では、レジメンは、患者の生涯に亘って継続的に繰り返される。
【0054】
特定の実施形態では、投与頻度は、20mgのGAの毎日の投与または40mgのGAの1週間に3回の投与と比べて減少される。特定の実施形態では、投与されるGAの用量は、20mgのGAの毎日の投与または40mgのGAの1週間に3回の投与と比べて減少される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。幾つかの実施形態では、本発明は、実質的に同様の量の酢酸グラチラマーの即時放出製剤と比較して、被験体におけるグラチラマーの長期放出または持続作用を提供する。
【0055】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療に対する忍容性を高める方法を更に提供し、方法は、20mg用量のGAの毎日の皮下注射、または毎回の注射の間に少なくとも1日あけて7日間の期間に亘る40mg用量のGAの3回の皮下注射から、GAまたはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩のデポ製剤の治療的に有効なレジメンへとGAの投与頻度を減少させて、患者におけるGA治療の忍容性を高めることを含む。
【0056】
特定の実施形態では、GA治療の忍容性を高めることは、注射の頻度を減少させることを含む。特定の実施形態では、GA治療の忍容性を高めることは、注射部位反応の頻度を減少させることを含む。
【0057】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療の利便性を高める方法を更に提供し、方法は、GAまたはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩のデポ製剤の治療的に有効なレジメンへとGAの投与頻度を減少させて、患者のGA治療の利便性を高めることを含む。
【0058】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療のアドヒアランスを高める方法を更に提供し、方法は、GAまたはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩のデポ製剤の治療的に有効なレジメンへとGAの投与頻度を減少させて、患者のGA治療のアドヒアランスを高めることを含む。
【0059】
本発明は、別の態様では、PPMSまたはSPMSと診断された患者において、PPMS、SPMS、またはPPMSもしくはSPMSの少なくとも1つの症状を治療するまたは緩和するための方法における使用のための、酢酸グラチラマー(GA)またはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩を含むデポ製剤を更に提供し、方法は、患者に上記デポ剤を投与する工程を含む。
【0060】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療に対する忍容性を高める方法における使用のための、酢酸グラチラマー(GA)またはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩を含むデポ製剤を更に提供し、方法は、20mg用量のGAの毎日の皮下注射または毎回の注射の間に少なくとも1日あけて7日間の期間に亘る40mg用量のGAの3回の皮下注射から、デポ製剤の投与へと、GAの投与頻度を減少させることを含む。
【0061】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療の利便性を高める方法における使用のための、酢酸グラチラマー(GA)またはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩を含むデポ製剤を更に提供し、方法は、デポ製剤の治療的に有効なレジメンへとGAの投与頻度を減少させることを含む。
【0062】
本発明は、別の態様では、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または二次性進行型多発性硬化症(SPMS)を患う患者のGA治療のアドヒアランスを高める方法における使用のための、酢酸グラチラマー(GA)またはグラチラマーの別の薬学的に許容可能な塩を含むデポ製剤を更に提供し、方法は、デポ製剤の治療的に有効なレジメンへとGAの投与頻度を減少させることを含む。
【0063】
特定の実施形態では、剤型として、限定されないが、PLGA系注射用デポシステム等の生分解性注射用デポシステム;非PLGA系注射用デポシステム、および注射用生分解性ゲル剤または分散液が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。本明細書で使用される「生分解性(の)」という用語は、周辺の組織液に見られる物質との接触に、少なくとも部分的に、起因して、または細胞の作用によって、経時的にその表面で腐食または分解する成分を指す。特に、生分解性成分は、限定されないが、ポリラクチド等の乳酸系ポリマー、例えばポリ(D,L-ラクチド)、すなわちPLA;ポリグリコリド(PGA)等のグリコール酸系ポリマー、例えば、Durect製のLactel(登録商標);ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、すなわちPLGA(Boehringer製のResomer(登録商標)RG-504、Resomer(登録商標)RG-502、Resomer(登録商標)RG-504H、Resomer(登録商標)RG-502H、Resomer(登録商標)RG-504S、Resomer(登録商標)RG-502S、Durect製のLactel(登録商標));ポリ(e-カプロラクトン)等のポリカプロラクトン、すなわちPCL(Durect製のLactel(登録商標));ポリ無水物;ポリ(セバシン酸)SA;ポリ(リシノール(ricenolic)酸)RA;ポリ(フマル酸)、FA;ポリ(脂肪酸二量体)、FAD;ポリ(テレフタル酸)、TA;ポリ(イソフタル酸)、IPA;ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}メタン)、CPM;ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}プロパン)、CPP;ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}ヘキサン)sCPH;ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル{CHDM:シス/トランス-シクロヘキシルジメタノール、HD:1,6-ヘキサンジオール DETOU:(3,9-ジエチリデン-2,4,8,10-テトラオキサスピロウンデカン};ポリジオキサノン;ポリヒドロキシブチレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアミド;ポリエステルアミド;ポリウレタン;ポリアセタール;ポリケタール;ポリカーボネート;ポリオルトカーボネート;ポリシロキサン;ポリホスファゼン;コハク酸塩;ヒアルロン酸;ポリ(リンゴ酸);ポリ(アミノ酸);ヒドロキシバレレート;ポリアルキレンサクシネート;ポリビニルピロリドン;ポリスチレン;合成セルロースエステル;ポリアクリル酸;ポリ酪酸;トリブロックコポリマー(PLGA-PEG-PLGA)、トリブロックコポリマー(PEG-PLGA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)トリブロック共重合体(PEO-PPO-PEO)、ポリ吉草酸;ポリエチレングリコール;ポリヒドロキシアルキルセルロース;キチン;キトサン;ポリオルトエステルおよびコポリマー、ターポリマー;コレステロール、レシチン等の脂質;ポリ(グルタミン酸-co-エチルグルタメート)等、またはそれらの混合物等のポリマーである。
【0064】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、限定されないが、PLGA、PLA、PGA、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアルケン無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、ポリホスファゼン等から選択される生分解性ポリマーを含む。それぞれの可能性は、別々の実施形態を表す。
【0065】
特定の実施形態では、生分解性ポリマーは、乳酸系ポリマー、より好ましくはポリラクチド、またはポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、すなわちPLGAである。生分解性ポリマーは、組成物の約10重量/重量%~約98重量/重量%の量で存在する。乳酸系ポリマーは、100:0~約0:100、好ましくは100:0~約10:90の範囲のグリコール酸に対する乳酸のモノマー比を有し、約1000ダルトン~2000000ダルトンの平均分子量を有する。しかしながら、生分解性ポリマーの量は使用期間等のパラメータによって決定されることが理解される。
【0066】
本発明の組成物および製剤は、補助界面活性剤、溶媒/共溶媒、水不混和性溶媒、水、水混和性溶媒、油系成分、親水性溶媒、乳化剤、防腐剤、抗酸化剤、消泡剤、安定剤、緩衝剤、pH調整剤、浸透剤、チャネル形成剤、浸透圧調整剤、または当該技術分野で知られる任意の他の賦形剤から選択されるが、それらに限定されない、1以上の薬学的に許容可能な賦形剤(複数の場合もある)を更に含んでよい。好適な補助界面活性剤としては、限定されないが、ポリエチレングリコール、「ポロキサマー」として知られているポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、デカグルセリルモノラウレートおよびデカグルセリルモノミリステート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の硬化ヒマシ油等、またはそれらの混合物が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な溶媒/共溶媒としては、限定されないが、アルコール、トリアセチン、ジメチルイソソルビド、グリコフロール、プロピレンカーボネート、水、ジメチルアセトアミド等、またはそれらの混合物が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な消泡剤としては、限定されないが、シリコーンエマルジョンまたはセスキオレイン酸ソルビタンが挙げられる。本発明の組成物中の成分の劣化を予防または低減させるのに適した安定剤としては、限定されないが、グリシン、α-トコフェロールもしくはアスコルビン酸塩、BHA、BHT、またはそれらの混合物等の抗酸化剤が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な浸透圧調整剤としては、限定されないが、マンニトール、塩化ナトリウムおよびグルコースが挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な緩衝剤としては、限定されないが、好適な陽イオンを伴う酢酸塩、リン酸塩、およびクエン酸塩が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0067】
「水中油中水(w/o/w)型ダブルエマルジョン」の粒子径は、この工程で加えられる力の量、混合速度、界面活性剤の種類、および濃度等を含むが、これらに限定されない様々なパラメータによって決定され得る。好適な粒子径は約1~100μmの範囲である。
【0068】
本発明のデポシステムは、当業者に知られる任意の形態を包含する。好適な形態として、限定されないが、生分解性または非生分解性のミクロスフェア、埋め込み型ロッド、埋め込み型カプセル、および埋め込み型リングが挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。更に、長期放出ゲルデポおよび可食性マトリクスが企図される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。好適な埋め込み型システムは、例えば、米国特許出願公開第2008/0063687号に記載され、その内容全体が本明細書の一部をなす。埋め込み型ロッドは、当該技術分野で知られている通り、好適なミクロ押し出し機を使用して作製され得る。
【0069】
幾つかの実施形態では、本発明のデポ製剤は、限定されないが、酢酸グラチラマーの水中懸濁液、油相またはワックス相;酢酸グラチラマーの難溶性高分子電解質複合体;酢酸グラチラマーと水混和性溶媒の組み合わせに基づく「in-situ」ゲル形成マトリクス;および酢酸グラチラマーが組み込まれた生分解性ポリマーマイクロ粒子を含む。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特に、本発明の組成物は、注射用マイクロ粒子の形態であり、ここで、酢酸グラチラマーは生分解性または非生分解性の担体に捕捉される。本発明のマイクロ微粒子組成物は、水中油中水型ダブルエマルジョンを含んでもよい。グラチラマーまたはその任意の薬学的に許容可能な塩を含む内部水相と、生分解性または非生分解性のポリマーを含む油相または水不混和相と、外部水相とを備える、マイクロ微粒子組成物が本発明の範囲に含まれる。外部水相は、界面活性剤、好ましくはポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーまたはセルロースエステルを更に含んでよい。「油相」および「水不混和相」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され得る。
【0070】
幾つかの実施形態によれば、酢酸グラチラマーは、グルタミン酸約0.14、アラニン約0.43、チロシン約0.10、および約リジン0.33のモル比で、L-アラニン、L-グルタミン酸、L-リジンおよびL-チロシンの酢酸塩を含む。他の実施形態によれば、酢酸グラチラマーまたはグラチラマーの他の薬学的に許容可能な塩は、約15~約100アミノ酸を含む。
【0071】
特定の実施形態では、デポ製剤は、患者によって筋肉内に自己投与される。特定の実施形態では、デポ製剤は三角筋に注入される。
【0072】
酢酸グラチラマーまたはグラチラマーの任意の他の薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの他の活性物質の併用療法が本発明に包含される。本発明の範囲に含まれる活性物質としては、限定されないが、インターフェロン、例えば、PEG化もしくは非PEG化α-インターフェロン、またはβ-インターフェロン、例えばインターフェロンβ-laもしくはインターフェロンβ-1b、またはτ-インターフェロン;任意に抗増殖活性/抗腫瘍活性を有する免疫抑制剤、例えばミトキサントロン、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、またはステロイド、例えばメチルプレドニゾロン、プレドニゾンもしくはデキサメタゾン、またはステロイド分泌剤、例えばACTH;アデノシンデアミナーゼ阻害剤、例えばクラドリビン;様々なT細胞表面マーカーに対するIV免疫グロブリンG(例えば、Neurology,1998,May 50(5):1273-81に開示される)モノクローナル抗体、例えばナタリズマブ(ANTEGREN(登録商標))またはアレムツズマブ;TH2促進サイトカイン、例えばIL-4、IL-10、またはTH1促進サイトカインの発現を阻害する化合物、例えばホスホジエステラーゼ阻害薬、例えばペントキシフェリン;バクロフェン、ジアゼパム、ピラセタム、ダントロレン、ラモトリジン、リフルゾール(rifluzole)、チザニジン(tizanidine)、クロニジン、ベータ遮断薬、シプロヘプタジン、オーフェナドリンまたはカンナビノイドを含む抗痙縮剤;AMPAグルタメート受容体アンタゴニスト、例えば、2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイルベンゾ(f)キノキサリン、[1,2,3,4,-テトラヒドロ-7-モルフォリン-イル-2,3-ジオキソ-6-(トリフルオロメチル)キノキサリン-i-イル]メチルホスホネート、1-(4-アミノフェニル)-4-メチル-7,8-メチレン-ジオキシ-5H-2,3-ベンゾジアゼピン、または(-)l-(4-アミノフェニル)-4-メチル-7,8-メチレン-ジオキシ-4,5-ジヒドロ-3-メチルカルバノイル-2,3-ベンゾジアゼピン;VCAM-1発現の阻害剤またはそのリガンドのアンタゴニスト、例えば、α4β1インテグリンVLA-4および/またはα-4-β-7つのインテグリンのアンタゴニスト、例えばナタリズマブ(ANTEGREN(登録商標));抗マクロファージ遊走阻止因子(抗MIF);xii)カテプシンS阻害剤;xiii)mTor阻害剤が挙げられる。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。現在好ましい1つの他の活性剤は、免疫抑制剤のクラスに属する、FTY720(2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル)プロパン-1,3-ジオール);フィンゴリモド)である。別の可能性は、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体であるオクレリズマブ(OCREVUS(商標))による治療と酢酸グラチラマーを組み合わせることであり、オクレリズマブは、PPMSの治療に対して現在承認されている唯一の治療法である。
【0073】
より具体的な実施形態では、徐放性デポ製剤は、治療的有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含み、製剤は、約1週~約6カ月の期間に亘って治療的有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を放出する徐放性デポ形態である。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、それを必要とする被験体における医学的に許容可能な場所での埋め込みに適したデポ形態で、治療的有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含む。特定の実施形態では、グラチラマーは、グルタミン酸約0.14、アラニン約0.43、チロシン約0.10およびリジン約0.33のモル比で、L-アラニン、L-グルタミン酸、L-リジンおよびL-チロシンを含む。特定の実施形態では、グラチラマーは約15~約100アミノ酸を含む。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、薬学的に許容可能な生分解性または非生物分解性の担体を更に含む。特定の実施形態では、担体は、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロースおよびポリホスファゼンから選択される。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、水中油中水型ダブルエマルジョンプロセスによって作製されるマイクロ粒子の形態である。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、治療的有効量のグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含む内部水相と、生分解性または非生分解性のポリマーを含む水不混和性ポリマー相と、外部水相とを備える。特定の実施形態では、水不混和性ポリマー相は、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)およびポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)から選択される生分解性ポリマーを含む。特定の実施形態では、外部水相は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、およびセルロースエステルから(form)選択される界面活性剤を含む。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、生物分解性ミクロスフェア、非生物分解性ミクロスフェア、任意の好適な幾何学的形状のインプラント、埋め込み型ロッド、埋め込み型カプセル、埋め込み型リング、または長期放出ゲル剤もしくは可食性マトリクスの形態である。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、局所レベルおよび/または全身レベルで副作用の発生率が減少されたおよび/または副作用の重症度が低減された、毎日のまたは毎週3回の商業的に入手可能な酢酸グラチラマー注射用剤型に等しいまたはそれよりも優れた治療有効性を提供する。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、実質的に同じ用量の酢酸グラチラマーの即時放出製剤と比較して、被験体におけるグラチラマーの長期放出または持続作用を提供する。
【0074】
特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、少なくとも1つの追加の薬物を更に含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の薬物は免疫抑制剤である。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の薬物はフィンゴリモドである。特定の実施形態では、徐放性デポ製剤は、約20~約750mgの範囲の用量でグラチラマーの薬学的に許容可能な塩を含む。特定の実施形態では、グラチラマーの薬学的に許容可能な塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、酢酸塩、硝酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオレート、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、コハク酸トコフェリル、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニルアセテート、フェニルプロピオン酸塩、フェニルブチレート、クエン酸塩、乳酸塩、ベータ-ヒドロキシブチレート、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホネート、p-トルエンスルホン酸塩、およびマンデル酸塩からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態では、上記グラチラマーの薬学的に許容可能な塩の治療的に許容可能な量は、約1mg/日~約500mg/日、または約20mg/日~約200mg/日である。
【0075】
以下の実施例は、より完全に本発明の特定の実施形態を解説するために提示される。しかしながら、以下の実施例は、決して本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される原理の多くの変化および修飾を容易に考案できる。
【0076】
実施例
実施例1:PLGAデポ中のGA40mgのin vitro調製方法
調製プロセス:(1)外部水相の調製:無菌WFI中の2重量/重量%の濃度の部分加水分解されたポリビニルアルコール(PVA)溶液をリアクターに用意し、0.22μmのメンブレンを通して濾過した。(2)無菌WFI中のNaCl溶液を調製し、PVAを含むリアクター中に0.22μmのメンブレンを通して濾過した。(3)有機相の調製:ジクロロメタンおよびポリ(ラクチド-co-グリコリド)で構成される有機相をリアクターに用意し、0.22μmのメンブレンを通して濾過した。(4)内部水相の調製:無菌WFIおよび酢酸グラチラマーを含む溶液を調製し、0.22μmのメンブレンを通して濾過した。(5)油中水型(w/o)エマルジョンの調製:内部水相を上記有機相に添加し、10分間7200RPM(高剪断混合)でロータステータ分散装置を備えたIKA Ultra-Turrax T50ホモジナイザーを使用して処理した。(6)水中油中水型(w/o/w)エマルジョンの調製:工程5で調製された油中水型(w/o)エマルジョンを、w/oエマルジョンを混合し続けている間に外部水相の半分に添加した。w/o/wダブルエマルジョンを、外部水相へのw/oの移送の最後から3分間2900RPMで、ロータステータヘッドを備えるIKA Ultra-Turrax UTS80ホモジナイザーを使用して処理した。続いて、更に30リットルの外部水相をエマルジョンに添加した(クエンチ)。(7)溶媒の除去/蒸発:工程(6)で形成されたw/o/wダブルエマルジョンを、種々の速度で15時間~17時間に亘りIKA UTS80ホモジナイザーを使用して混合した。圧搾空気を、10時間~12時間エマルジョンを通して0.5Paで通気した。真空を、処理の一部に対して適用した。(8)分離および洗浄:懸濁液を10分間5300RPMで遠心分離した。上清を廃棄し、ペレット(沈降物のマイクロ粒子)を550gのWFIに再懸濁し、マグネティックスターラーを使用して3分間混合した。再懸濁した微粒子を、10分間2900RPMで遠心分離した。(9)凍結乾燥:洗浄したマイクロ粒子を約750gの無菌WFIに再懸濁し、凍結乾燥まで-20℃で維持した。凍結乾燥を、以下の通り無菌リオガード(lyoguard)トレーを使用して行った:-40℃で24時間の凍結。0.2hPa、-5℃で、48時間の予備乾燥。0.2hPa、10℃で、48時間の二次乾燥。得られた組成物は、1:11.5の重量比でGAおよびPLGA(50:50、分子量7000~17000)を含む。
【0077】
実施例2:PLGAデポからのGA40mgin vitro放出プロファイル。
組み込まれた酢酸グラチラマーの放出を、マルチポイントマグネティックスターラーを備えた37℃でのインキュベータを使用して、堅く締めた20mlのガラス容器中で行った。pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を放出培地として使用した。表1はPLGAデポからのGAの放出プロファイルを要約する。
【表1】
【0078】
実施例3:in-vivoでのGA40mgのデポ対商業的に入手可能なGA(コパキソン(登録商標))
材料および方法
動物:動物研究はいずれも、イスラエルMOH実験動物委員会によって承認された。7週齢~9週齢のC57BL/6雌性マウスを、同様の平均重量で対照群または治療群に無作為化した。動物は、実験を通して自由に食物および水が与えられた。
【0079】
進行性EAEの誘導:ヒトにおける進行型のMSに最も類似する一次性進行型EAE(PP-EAE)(Sayed et al.,The Journal of Immunology,2011,Vol.186,3294-3298)を誘導するために、改変完全フロインドアジュバント(CFA)(米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich)中のMOG35~55(中国上海のGL Biochem co.Ltd)のエマルジョンを以下の通り調製した:加熱殺菌M.チューバキュロシス(M.tuberculosis)株H37RA(Sigma)をCFAに添加して最終濃度を4mg/mLにした。その後、2mg/mLのMOG35-55を等量の改変CFAで乳化した。EAEは、剃毛したマウス背部の1部位でのこのエマルジョンの皮下(SC)注射によって誘導され、その後、PBS中のボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)毒素(Sigma)を0日目およびMOG免疫付与後48時間に腹腔内注射した。21G針をマウスでの注射に使用した。このモデルは、脱髄現象ならびに軸索損傷が明らかな、着実な炎症段階を9日目~15日目に呈した。この段階の後、炎症は通常ごくわずかである。
【0080】
測定:体重を、0~28日に2日毎に測定した。EAEを、免疫付与後0日目~28日目に毎日1回、マウスの臨床スコアリングによって評価した(表2)。分析のため、死亡した動物に臨床スコア5および動物が死亡する前の最後の測定時に記録された体重を与えた。
【表2】
【0081】
以下の計算は、臨床スコア生データに由来した:平均最大スコアは、分析の指定日までの特定の群における各マウスについて認められた最も高いスコアの平均である;平均罹病期間および平均発症日を以下の通り計算した:平均罹病期間=(分析の日-各マウスの疾患発症の日)の合計/(1群当たりのマウスの数);平均発症日=(各マウスの疾患発症日の合計)/(1群当たりのマウスの数)。臨床スコアの曲線下面積(AUC)はMicrosoft Excelを使用して計算され、疾病負荷を表す。
【0082】
酢酸グラチラマーデポ(GAデポ):GAデポを注射用水(WFI)に懸濁し、直ちに指定の用量で筋肉内(IM)注射した。GAデポの用量は、有効成分の量に応じて与えられる(すなわち、GAデポ4mgは4mgのGAを含む)。
【0083】
GA結合抗体分析:疾患誘導後35日目に、各治療群から5匹の動物を犠牲にした。血液試料を回収し、血清を単離し、-80℃で保管した(表3および表5を参照されたい)。
【0084】
ELISAプレートを以下の通り用意した:平底ELISAプレート(Nunc)を、ホウ酸塩緩衝液(BB)0.17M pH8.0中の50μg/mlGA100μlで4℃にて一晩被覆した。ウェルを空にし、室温にて0.05%Tween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。洗浄後、非特異的結合部位をブロッキングするために、1%BSAを室温(RT)で2時間適用した。その後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。
【0085】
ELISA試験を以下の通り行った:100μlの血清試料を1:1000希釈し、4℃で18時間ウェルに添加し(血清希釈は1%BSAおよび0.05%Tween 20を含むPBSを使用して行った)、その後、室温にて0.5%Tween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した。その後、100μlの1:50000希釈されたアルカリホスファターゼコンジュゲートAffinityPureヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)(Jackson Laboratories)をウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再び洗浄溶液で3回洗浄し、呈色反応を、100μlの基質p-ニトロフェニルホスフェート(Jackson Laboratories)を添加することによって起こさせ、室温で40~60分間インキュベートした。反応を、30μlの3N NaOHで終了させた。吸光度をその後、マイクロELISAリーダー(Dynatech)を用いて405nmで記録した。各アッセイプレートは、陽性抗GA結成試料および正常マウス血清の対照(N=5)を含んだ。
【0086】
結果を、以下の式に従って結合インデックス(BI)として表した。結合インデックス=試験した血清の平均光学密度/対照血清の平均光学密度。正常マウス血清に対する平均値は0.230 ODであり、結合インデックスに対するカットオフ値は2.0±1.0である。したがって、3.0超の値を陽性とみなした。
【0087】
実験計画:研究実験計画を表3に明示する。
【表3】
【0088】
統計学的分析:データを、Microsoft Excelを使用して分析した。各データセットを、一因子分散分析(ANOVA)の後、片側スチューデントT検定を使用して分析した。
【0089】
GAデポ用量の変換
図1は、それらの群が、それぞれ0、20および40mgの推奨されるヒト用量の範囲(先の研究から推定されるように、アロメトリック1:10スケールを使用して)を表すことから、生理食塩水対照(黒丸印)群、2mgコパキソン(登録商標)(黒四角印)群およびGAデポ4mg(灰色三角印)群についての平均臨床スコアの結果を示す。は、 治療されない対照と比較した全ての治療群について、一因子ANOVAの後、不等分散を仮定する片側T検定でP<0.05。N=20/群、+/-標準誤差。
【0090】
平均臨床スコアAUC(曲線下面積)、平均発症日、および平均罹病期間は、治療されない対照群と比較して、GAデポ群およびコパキソン(登録商標)群で有意に減少された(表4、p<0.05)。統計学的有意差は、どの計算値においてもGAデポとコパキソン(登録商標)の間で見られなかった(表4)。11~19日目に、生理食塩水群の平均臨床スコアは、他の全ての群のスコアよりも有意に高かった(図1、p<0.05)。20日目に、生理食塩水群の平均臨床スコアは、コパキソン(登録商標)群およびGAデポ群のスコアよりも有意に高かった(図1、P<0.05)。GAデポ治療群およびコパキソン(登録商標)治療群の体重は、免疫付与後10~17日目に、治療されない対照の体重よりも有意に大きかった。21日目に、コパキソン(登録商標)群の体重は、治療されない対照群の体重よりも有意に大きかった(図2、P<0.05)。は、治療されない対照と比較した全ての治療群についてP<0.05。**は、治療されない対照と比較したコパキソン(登録商標)について、一因子ANOVAの後、不等分散を仮定する片側T検定でP<0.05。N=20/群、+/-標準誤差。
【表4】
【0091】
GAに対する抗体によって測定されるマウスにおける免疫学的応答
血清を、疾患誘導後35日目にMOG-EAE研究においてマウスから単離した。マウスを、GAデポ(4mgで1回)またはコパキソン(登録商標)(2mg/日、0~8日目)のいずれかで治療した。抗体(Ab)力価を、ELISAアッセイを使用して評価した。結果は、結合インデックス(BI)として表される。N=5。表5に示されるデータは、コパキソン(登録商標)またはGAデポに曝露されたマウスは全抗GA抗体の同様の力価を呈したのに対し、生理食塩水で治療された対照マウスはかかる抗体を有しなかったことを実証した。抗体力価は、全ての治療群で同様であり、同様の免疫学的応答を示唆した。
【表5】
【0092】
GA2mgの標準的な毎日の投与に対してGA4mgデポの単回投与の効果を比較する、提示されるデータは、2つの投薬レジメン間で同様の有効性を示す。具体的には、GAデポは、少なくともコパキソン(登録商標)治療群について認められるものと同じぐらい有効な、疾患発症を遅延させ症状を緩和する明らかで有意な効果を示した(図1を参照されたい)。
【0093】
更に、この実験は、GAデポの筋肉内投与が、標準的な毎日のGA皮下注射と同様のレベルで、抗GA抗体の体液性応答を誘導したことを示す(表5を参照されたい)。したがって、標準的なGA注射と比較したGAデポに対する同様の体液性応答は、GAデポに対する免疫学的応答の類似性を表す可能性がある。これはしたがって、コパキソン(登録商標)とGAデポの間のAUCが統計学的に有意な様式で異ならない、このEAE研究でみられるような、等価な臨床上の免疫調の治療効果も示唆する可能性がある(表4を参照されたい)。したがって、抗GA抗体の存在は、新たな製剤でかつ新たな経路により投与される場合、薬物の治療的バイオアベイラビリティに対するバイオマーカーとして役立ち得る。
【0094】
全体として、データは、MOG誘導性EAEにおける4mg用量GAのGAデポの有効性はコパキソン(登録商標)の有効性に少なくとも匹敵すること、および両治療に対する免疫応答は同様であることを支持する。
【0095】
実施例4:PPMSと診断されたヒトにおける40mgまたは80mgのGAのデポ。
概要:一次性進行型多発性硬化症(PPMS)を有する被験体における、40mgの酢酸グラチラマー(GAデポ)の月1回の長時間作用型筋肉内注射の安全性および有効性を評価するための前向き、多施設、単一群、非盲検、初期第II相研究。
【0096】
主要評価項目:安全性および忍容性:有害事象(AE)の評価;注射部位反応(ISR)の評価。
【0097】
副次的評価項目:有効性:EDSSによって評価される12週間の確認される疾患進行(CDP)の発症までの時間;少なくとも12週間のその後の通院で持続した、ベースラインEDSSスコアからの1ポイント以上の増加として定義される。MRI評価:全脳容積変化のパーセント;皮質容積変化のパーセント。
【0098】
探索的評価項目:有効性分析:25フィート歩行に要する時間(T25FW)のベースラインからの変化。9-HPT評価におけるベースラインからの変化。MRI評価:新たなおよび増大するT2病巣;T2病巣容積;新たなおよび増大するT1病巣;T1病巣容積;ガドリニウム(Gd)病巣数;ガドリニウム(Gd)病巣容積。
【0099】
手順:被験体は、医療専門家(HCP)によって投与されるGAデポ(40mg)筋肉内注射を受けるため、4週間毎に施設を訪れ;スクリーニング時、ベースライン時、2回目のGAデポ注射の1週間後、1回目の注射の3カ月後、およびその後治療期間の終わりまで3カ月毎に調査者によって評価される。患者の安全性を評価するためのフォローアップ(FU)訪問を、EoTの1カ月後に予定する。
【0100】
評価基準:LP:CSF検査:被験体がスクリーニング訪問の前にCSF検査を受けていない限り、スクリーニング訪問時に行った。MRIスキャン:スクリーニング時、24週目および52週目(EoT訪問)に行った。EDSS、T25FWおよび9-HPTを含む神経学的評価を、スクリーニング時、ベースライン時、3カ月目、その後治療終了まで3カ月毎に行った。有害事象(AE):研究期間を通してモニターした。バイタルサイン:血圧(BP)および心拍度数を各訪問で記録した。BP(収縮期および拡張期)を各訪問で2回測定した(各測定の間を数分間あけた)。身体検査:全身の身体検査を、選択基準および除外基準ごとの適性を保証するため、スクリーニング時、ベースライン時、2回目のデポ治療から1週間後、1回目のGAデポ治療の3カ月後、およびその後3カ月毎に行った。最後の身体検査をFU訪問時に行った。臨床検査室での検査:化学、血液学および尿検査に関する臨床検査を、スクリーニング時、ベースライン時、1回目の治療から1カ月後、3カ月後、6カ月後、9カ月後、およびEoT訪問時に行った。血液学的検査は以下を含む:ヘモグロビン、赤血球数、MCV、ヘマトクリット、MCH、白血球数、白血球百分率、血小板数。化学検査は以下を含む:クレアチニン、グルコース、血液尿素性窒素(BUN)、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/SGPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/SGOT)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、総ビリルビン、タンパク質、アルブミン、アルブミン/グロブリン比、ナトリウム、カリウム、クロリド、カルシウム、尿酸、CPK、コレステロール、トリグリセリド。尿検査-スティック検査を、施設で行った。
【0101】
各患者を、スクリーニング訪問時に行われたその患者の個々のベースライン検査と比較した。被験体の最善の利益において、被験体の健康状態を保証するために、追加の検査を調査者の裁量で行ってもよい。
【0102】
抗体検査:全酢酸グラチラマーIgG結合抗体および酢酸グラチラマーに対する中和抗体の検出用の血液試料を、ベースライン時、1回目のGAデポ注射の1カ月後、3カ月後、およびその後3カ月毎に採取する。12-誘導ECGを、スクリーニング時に行なう。ECGを、被験体が仰臥位で安静にしている時に記録する。Wilsonに従い、Einthoven(I、IIおよびIII)およびGoldberger(aVR、aVL、aVF)によって指定される、6つの四肢リード、および6つの前胸部リード(V1~V6)を使用する。調査者は、パラメータHR、RR、PQ、QRS、QTおよびQTcを評価する。更に、脱分極または再分極の障害、不整脈障害または他の異常の発生を評価し記録する。胸部X線写真を、スクリーニング訪問前6カ月以内に行っていなければ、スクリーニング時に行う。
【0103】
治療部位および患者の指導:治験用注射剤を投与し、施設でモニターする。被験体は、1回目のGAデポ後1時間観察のために、および後のGAデポの後30分間健康状態を保証するために、治験施設に留まる。
【0104】
治験薬の臨床試験治療、投薬量および投薬レジメン:登録した被験体全員を、合計52週間の治療の間4週間の間隔でGAデポ(40mg)IMで治療する。
【0105】
被験体参加の予想期間、順番、フォローアップを含む全臨床試験期間:個々の被験体に対する治験期間は、以下のようなクリーニング期間および12カ月の治療に続くフォローアップ訪問からなる最長14カ月である:最長4週間のスクリーニング期間(-4週目~0週目)、52週間の非盲検治療期間、52週目でのEoT訪問、およびEoT訪問の4週間後のフォローアップ訪問。
【0106】
被験体選択基準:被験体は、研究に組み入れられる前に以下の基準を全て満たさなければならない:PPMSと診断された男性または女性の被験体。PPMSの診断はマクドナルド診断基準(2010改訂)と一致する;18歳~60歳(含む)の年齢;少なくとも1年間PPMSと診断され、スクリーニング前の年にEDSSスコアでの1ポイント以上の持続的増加を伴う被験体;EDSS≧2および≦5.5(ピラミッド形FSまたは小脳FS≧2);定量的検査が行われた場合1より多いオリゴクローナルバンド(OCB)、もしくは定量的試験が行われなかった場合OCB+、および/または脳脊髄液(CSF)中の陽性IgGインデックスの確認された病歴またはスクリーニング時での存在;ベースラインMRIの上のおよび/またはスクリーニング訪問前12カ月以内に以前のMRIで確認された少なくとも1つのガドリニウム増強病巣を有する被験体;妊娠の可能性がある女性はスクリーニング時に尿妊娠検査陰性でなくてはならず、研究を通して適切な避妊法を使用しなければならない;書面のインフォームドコンセントを提供する能力。
【0107】
被験体の除外基準:被験体が以下の基準のいずれかを示す場合には、被験体は研究から除外される:RRMS、SPMSまたはPRM;再発事象の確認された病歴;調査者の意見で、被験体を治験登録に不適にするまたは被験体が全ての研究態様をおそらく完了できなくする、何らかの関連する医学的、外科的、精神医学的な状態臨、床検査値、または併用薬;順調な磁気共鳴画像(MRI)スキャンに対する禁忌または不能;サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ライム病、APLA症候群等のMS様病巣を伴いCNSに影響を及ぼし得るMS以外の何らかの全身性自己免疫疾患と診断された被験体;乾癬、皮膚エリテマトーデス、甲状腺炎(橋本病、グレーブス病)等の安定な局所的/臓器の自己免疫疾患を有する被験体は、PIの裁量によって適格とされ得る;重症貧血(ヘモグロビン10g/dL未満);腎機能異常;(血清中クレアチニン>1.5×ULNまたはクレアチニンクリアランス<30ml/分);肝機能異常(トランスアミナーゼ>2×ULN);妊娠中または授乳中の女性;スクリーニング訪問前1カ月中の任意の種類のステロイドによる治療;何らかのアナフィラキシー反応および/またはワクチン接種後の重篤なアレルギー反応の病歴、治験薬のいずれかの成分、例えば、酢酸グラチラマー、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、ポリビニルアルコール(PVA)に対する既知の過敏性;薬物またはアルコールの乱用の既知のまたはそれが疑われる病歴;HIV、肝炎、VDRLまたは結核に対して陽性であることが知られている;任意の種類の活動性悪性疾患。しかしながら、過去に悪性疾患を有し、治療され、現在は少なくとも過去7年間に亘り無病である患者は、PIおよび治験依頼者の裁量により適格とされ得る;スクリーニング前6カ月のB細胞標的療法(例えば、リツキシマブ、オクレリズマブ、アタシセプト、ベリムマブまたはオファツムマブ)による先の治療;スクリーニング訪問前2年以内のクラドリビンによる先の治療;スクリーニング訪問前6カ月以内のアザチオプリン、ミトキサントロンまたはメトトレキセートによる先の治療;スクリーニング訪問前6カ月以内のリンパ球トラフィキング調節因子(例えばナタリズマブ、フィンゴリモド)による先の治療。被験体は、正常範囲内の全リンパ球数を有していなければならない;スクリーニング訪問前2カ月以内のベータインターフェロン、静脈内免疫グロブリン、血漿交換療法による先の治療;スクリーニング訪問前3カ月以内のいずれかの酢酸グラチラマー療法による先の治療;管理されていない糖尿病;治験登録前30日以内の治験薬への参加。
【0108】
治験薬の製剤化および投薬:GAデポは、注射用のGAおよび非経口用途のための希釈剤を含む持続放出型ミクロスフェアの組み合わせである。持続放出ミクロスフェア製剤は、1容器当たり40mgのGAの有効成分含有量での白色~灰白色の流動性粉末である。GAは、ミクロスフェア1グラム当たり80mgのGAの濃度プラス引き抜き時の喪失(withdrawal losses)を補填するための10%過剰分で、酸末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコシド)(50:50)中にマイクロカプセル化される。非経口用途のための希釈剤は注射用水である。ミクロスフェアを、注射の前に、希釈剤に懸濁する。
【0109】
試験治療:IP:長時間作用型酢酸グラチラマー(GAデポ)製剤:40mgのGAを含む、550mgの凍結乾燥されたPLGAカプセル化酢酸グラチラマー。注射用水(WFI):10mlのアンプル。1.6mlのWFIを、1つの40mgのGAデポバイアルの懸濁に使用して、最終容量2mlの注射剤用懸濁液に達した。投与経路:筋肉内。単位用量:40または80mgのGAデポ。投薬スケジュール:各被験体は、全52週間の治療のために13回、4週間毎に1回、筋肉内投与で40または80mgのGAデポを受ける。
【0110】
有効性/薬理学的パラメータの詳細:以下の臨床および有効性のパラメータを評価する:EDSSスコア;MRI評価(全脳容積、皮質脳容積、新たなおよび増大するT2病巣、T2病巣容積、新たなおよび増大するT1病巣、T1病巣容積、ガドリニウム(Gd)-病巣数、ガドリニウム(Gd)-病巣体積);25フィート歩行に要する時間(T25FW);および/または9-HPT。
【0111】
本発明は個々に詳しく記載されるが、当業者は多くの変化および修飾を行うことができると十分に理解するであろう。したがって、本発明は、個々に詳しく記載される実施形態に限定されるものと解釈されるものではなく、本発明の範囲および概念は、以下の特許請求の範囲を参照することにより、容易に理解されるであろう。

図1
図2