(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022199
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】酢酸グラチラマーを含有する微小粒子を調製する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/02 20060101AFI20230207BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230207BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230207BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230207BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230207BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P25/00
A61K9/19
A61K9/14
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189936
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2019507936の分割
【原出願日】2017-08-28
(31)【優先権主張番号】62/380,426
(32)【優先日】2016-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511224254
【氏名又は名称】マピ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブライヒ キメルマン,ナダヴ
(72)【発明者】
【氏名】ルブノヴ,シャイ
(72)【発明者】
【氏名】マロム,エフド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低レベルの残留有機溶媒の酢酸グラチラマーを含有する微粒子調製方法の提供。
【解決手段】(a)酢酸グラチラマーおよび水を含む内部水相を調製する工程(b)生分解性または非生分解性のポリマーおよび水不混和性揮発性有機溶媒を含む有機相を調製する工程(c)水および界面活性剤を含む外部水相を調製する工程(d)工程aで得られた内部水相と工程bで得られた有機相とを混合して油中水型(w/o)エマルジョンを形成する工程(e)工程dで得られたw/oエマルションを工程cで得られた外部水相と混合して水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを得る工程(f)工程eで得られたw/o/wダブルエマルジョンを混合すること、ならびに空気流および少なくとも約3時間真空を適用することにより有機溶媒を除去する工程(g)乾燥して1,000ppm未満の残留有機溶媒を含む酢酸グラチラマーの微粒子を得る工程を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸グラチラマーを含む微粒子を調製するための方法であって、
(a)酢酸グラチラマーおよび水を含む内部水相を調製する工程と、
(b)生分解性または非生分解性のポリマーおよび水不混和性揮発性有機溶媒を含む有機相を調製する工程と、
(c)水および界面活性剤を含む外部水相を調製する工程と、
(d)工程aで得られた内部水相と工程bで得られた有機相とを混合して油中水型(w/o)エマルジョンを形成する工程と、
(e)工程dで得られた油中水型(w/o)エマルションを工程cで得られた外部水相と混合して水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを得る工程と、
(f)工程eで得られた水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを混合すること、ならびに空気流および真空を適用することにより有機溶媒を除去する工程であって、前記真空を少なくとも約3時間適用する工程と、
(g)乾燥して酢酸グラチラマーの微粒子を得る工程であって、前記微粒子は1,000ppm未満の残留有機溶媒を含む、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記微粒子は600ppm未満の残留有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水不混和性揮発性有機溶媒は、ジクロロメタン(DCM)およびクロロホルムからなる群から選択されるハロゲン化有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化有機溶媒はジクロロメタン(DCM)であり、前記微粒子は600ppm未満の残留ジクロロメタン(DCM)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(f)は前記w/o/wダブルエマルジョンをホモジナイザ中で少なくとも2,500回転/分(RPM)の速度で混合することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(f)は前記w/o/wダブルエマルションに対し少なくとも5時間に亘って真空を適用することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(f)は前記w/o/wダブルエマルションに対し0.1~1バールの圧力で圧縮空気流を適用することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(f)は前記w/o/wダブルエマルションをホモジナイザ内で少なくとも2,750RPMの速度で混合し、0.5バールの圧力で圧縮空気流を適用し、真空を少なくとも5時間適用することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
乾燥工程(g)の前に工程(f)の生成物を濾過するかまたは遠心分離する工程、および任意に水で洗浄する工程を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥工程(g)は凍結乾燥または冷凍乾燥を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生分解性または非生分解性ポリマーは、ポリ(D,L,乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、およびポリホスファゼンからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で得られる外部水相中の界面活性剤は、ポリビニルアルコール(PVA)、部分加水分解ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体、およびセルロースエステルからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酢酸グラチラマー微粒子はそれを必要とする被験体における医学的に許容される場所での皮下または筋肉内埋め込みに適した徐放性デポー剤形態での長時間作用型非経口医薬組成物の形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記微粒子は40mgの酢酸グラチラマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低レベルの残留有機溶媒、特にジクロロメタン(DCM)を有する酢酸グラチラマーを含有する微粒子を調製するための改良された方法に関する。当該微粒子は、皮下または筋肉内の埋め込みまたは注射に適し且つ多発性硬化症を治療するために使用できるデポー剤形態で長時間作用型非経口医薬組成物に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
商品名コパキソン(Copaxone、登録商標)として市販される酢酸グラチラマー(GA)は、再発型多発性硬化症の患者の治療に適応される。酢酸グラチラマーは、ミエリン塩基性タンパク質に見出される4つのアミノ酸で構成されるランダムポリマーである。酢酸グラチラマーは、L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシンおよびL-リジンを含むポリペプチドの酢酸塩を含む。これらのアミノ酸の平均モル分率は、それぞれ0.141、0.427、0.095および0.338であり、共重合体1の平均分子量は5,000~9,000ダルトンである。化学的には、酢酸グラチラマーは、L-アラニン、L-リジンおよびL-チロシン、酢酸(塩)を伴うL-グルタミン酸ポリマーを意味する。その構造式は、(Glu,Ala,Lys,Tyr)xCH3COOH,概略比率Glu14Ala43Tyr10Lyz34x(CH3COOH)20である。
【0003】
コパキソン(登録商標)は皮下注射用の溶液として製造される。コパキソン溶液1mLは、酢酸グラチラマー20mgまたは40mgと、マンニトール40mgを含む。20mg/mLの強度が毎日の注射に適応され、一方40mg/mLの強度が週に3回の注射に適応される。副作用は一般的に、注射部位でのしこり(注射部位反応)、痛み、発熱、および悪寒を含む。
【0004】
米国特許第8,377,885号および同第8,796,226号は、皮下または筋肉内への埋め込みまたは注射に適したデポー剤形態での、酢酸グラチラマーを含むグラチラマーの薬学的に許容される塩の長時間作用型非経口組成物を記載する。この長時間作用型組成物は、毎日の注射可能なコパキソン(登録商標)製剤と比較して、同等のまたは優れた治療効果を提供し、投与頻度が少ないため、注射部位の刺激などの副作用の発生率および/または重症度が低い。この組成物は「ダブルエマルジョン」法により調製される。酢酸グラチラマーの水溶液を、揮発性の水不混和性有機溶媒中の生分解性ポリマー(PLGA)の溶液中に分散させる。得られた「油中水型(w/o)エマルジョン」を、界面活性剤を含む連続的な外部水相の中に分散させて、「水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョン」液滴を形成する。この二重エマルジョンをドラフトチャンバ中で撹拌することにより、有機溶媒をゆっくり蒸発させる。得られた微粒子を濾過または遠心分離により回収し、水洗し、凍結乾燥する。上記方法で使用する溶媒は、ハロゲン化炭化水素、特にクロロホルムまたはジクロロメタンであり、これらはポリマーの溶媒として作用する。しかしながら、最終生成物中に残留する検出可能なハロゲン化炭化水素溶媒の存在は、それらの一般的な毒性および可能性のある発癌活性のため望ましくない。これに対処するために、規制当局は、ヒトおよび家畜の用途のための医薬組成物中に存在する残留有機溶媒の量に制限を課している。
【0005】
当技術分野では、残留有機溶媒、特にハロゲン化有機溶媒の量が低い酢酸グラチラマーを含有する微粒子を調製するための、改良された信頼性のある方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、低レベルの残留有機溶媒、特にジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素を有する酢酸グラチラマーを含有する微粒子を調製するための改良された方法を提供する。意外にも、米国特許第8,377,885号および同第8,796,226号に記載されたダブルエマルジョンプロセスにおける有機溶媒蒸発工程を変更することによって、有機溶媒レベルを規制上許容されるレベル(例えば、ジクロロメタンについて約600ppm未満)まで下げ得ることが見出された。上記プロセスを変更する際の主な課題は、プロセスの変更にもかかわらず、微粒子の形態、結合率および酢酸グラチラマー活性成分の放出プロファイルを損なわずに維持することであった。水中油中水型二重エマルジョンに真空および/または空気流を適用すると、酢酸グラチラマーの微粒子を無傷で維持しながら、有機溶媒の量が減少した生成物が得られることが今回見出された。特に、混合、空気のバブリングおよび/または真空の強度を注意深く調整することによって、所望の形態学的および治療的特性(例えば、薬物放出プロファイル)を有する微粒子を達成し、同時に有機溶媒のレベルが規制許容レベルに最小化された。例えば、ジクロロメタン(DCM、互換的に塩化メチレンとも呼ばれる)などの塩素化有機溶媒については、ICH指針による規制限度は600ppmである。
【0007】
従って、本発明は、酢酸グラチラマーを含む微粒子を調製するための方法を提供し、当該方法は、(a)酢酸グラチラマーおよび水を含む内部水相を調製する工程と、(b)生分解性または非生分解性のポリマーおよび水不混和性揮発性有機溶媒を含む有機相を調製する工程と、(c)水および界面活性剤を含む外部水相を調製する工程と、(d)工程aで得られた内部水相と工程bで得られた有機相とを混合して油中水型(w/o)エマルジョンを形成する工程と、(e)工程dで得られた油中水型(w/o)エマルションと工程cで得られた外部水相とを混合して、水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを得る工程と、(f)工程eで得られた水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを混合すること、ならびに空気流および/または真空を適用することにより有機溶媒を除去する工程と、(g)乾燥して酢酸グラチラマーの微粒子を得る工程であって、上記微粒子は約1,000ppm未満の残留有機溶媒を含む工程、を含んでいる。一実施形態において、工程(f)は、有機溶媒のレベルを約1,000ppm未満、好ましくは約600ppm未満に低減するのに十分な条件下で行われる。
【0008】
本明細書で想定されるように、本発明の方法は、残留有機溶媒の量が低減された製品をもたらし、それによって規制により課される制限に適合する。一実施形態において、上記微粒子は約600ppm未満の残留有機溶媒を含み、これはICH指針によるDCMなどの塩素化溶媒の規制限度である。別の実施形態において、上記微粒子は約500ppm未満の残留有機溶媒を含む。別の実施形態において、上記微粒子は約250ppm未満の残留有機溶媒を含む。更に別の実施形態では、上記微粒子は約100ppm未満の残留有機溶媒を含む。
【0009】
他の実施形態において、上記微粒子は約0.1%未満の残留有機溶媒を含む。他の実施形態において、上記微粒子は、約0.05%未満の残留有機溶媒を含む。更に別の実施形態において、上記微粒子は約0.01%未満の残留有機溶媒を含む。
【0010】
本発明の方法で使用される有機溶媒は、水不混和性で且つ揮発性である。現在の幾つかの好ましい実施形態において、上記有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素などのハロゲン化有機溶媒である。現在の幾つかの好ましい実施形態において、上記塩素化炭化水素はジクロロメタンまたはクロロホルムであり、各可能性は本発明の別々の実施形態に対応する。
【0011】
1つの特定の実施形態において、本発明の方法は、有機溶媒としてジクロロメタンを利用する。この実施形態によれば、得られる微粒子は約600ppm未満の、好ましくは約500ppm未満の、約250ppm未満の、または約100ppm未満の残留ジクロロメタンを含む。
【0012】
溶媒除去工程(f)は、混合と上記水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルションへの空気流および/または真空の適用の組み合わせを含む。混合、空気流および/または真空の適用は、最終製品の完全性(例えば、その形態、GA結合百分率または放出プロファイル)には影響を及ぼさない適切な条件下で行われ、一方でなお本明細書に記載の低レベルの有機溶媒を有する製品を生じる。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記w/o/w型のダブルエマルションは、ホモジナイザを使用して、好ましくは少なくとも毎分約2,500回転(RPM)、好ましくは少なくとも約2,750RPMの速度で混合されてよい。幾つかの実施形態において、工程(f)は、真空の適用と組み合わせて、w/o/wダブルエマルジョンを混合することを含む。好ましくは、上記真空は少なくとも約3時間、または少なくとも約5時間適用される。他の実施形態において、工程(f)は、約0.1~1バール、好ましくは約0.5バール、またはその間の任意の値の圧力で圧縮空気流をw/o/wダブルエマルションに適用することと組み合わせて、w/o/wダブルエマルションを混合することを含む。更に他の実施形態において、工程(f)は、上記のように、圧縮空気流と真空の組み合わせを適用することと共に、w/o/wダブルエマルジョンを混合することを含む。
【0014】
溶媒を蒸発させた後、酢酸グラチラマー微粒子を乾燥により単離する(工程(g))。幾つかの実施形態において、この工程は、得られた上記微粒子を、バルクまたは単位用量製剤へと乾燥することを含む。この乾燥は、当該技術分野において知られた任意の方法、例えば凍結乾燥もしくは冷凍乾燥、または任意の他の適切な乾燥方法によって実施できる。他の実施形態において、この方法は更に、工程(f)の生成物を濾過または遠心分離し、乾燥前に、任意に水で洗浄し、それによって酢酸グラチラマーの微粒子を得る工程を含む。上記有機相中で使用されるポリマーは生分解性であってもよく、非生分解性であってもよい。幾つかの実施形態において、上記生分解性または非生分解性のポリマーは、ポリ(D,L、乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン酸無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、およびポリホスファゼンからなる群から選択され、それぞれの可能性が本発明の別々の実施形態を表す。現在の好ましい幾つかの実施形態において、上記ポリマーは、PLA、PGAおよびPLGAからなる群から選択される生分解性ポリマーである。現在のところ好ましい生分解性ポリマーはPLGAである。
【0015】
更なる実施形態において、上記外部水相は、ポリビニルアルコール(PVA)、部分加水分解ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体およびセルロースエステルから選択される界面活性剤を含む。各可能性が、本発明の別々の実施形態を表す。現時点での好ましい実施形態において、上記界面活性剤はPVAまたは部分加水分解PVAである。
【0016】
更なる実施形態において、上記組成物は等張化剤を更に含む。好ましい等張化剤は、浸透圧バランスを作り出すために1以上の水相に添加される塩化ナトリウムである。他の適切な張度調整剤は、以下の詳細な説明に記載される。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、上記酢酸グラチラマーは、L-アラニン、L-グルタミン酸、L-リジン、およびL-チロシンの酢酸塩を、約0.14グルタミン酸、約0.43アラニン、約0.10チロシンおよび約0.33リジンのモル比で含む。
【0018】
他の実施形態によれば、酢酸グラチラマーまたは他の薬学的に許容されるグラチラマーの塩は、約15~約100のアミノ酸を含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記微粒子は、約20mg~約750mgの酢酸グラチラマーを含む。他の実施形態において、上記微粒子は、約40mgの酢酸グラチラマーを含む。他の実施形態において、上記微粒子は約80mgの酢酸グラチラマーを含む。
【0020】
本明細書で想定されるように、上記酢酸グラチラマー微粒子は、それを必要とする被験体において医学的に許容される場所での皮下または筋肉内の埋め込みに適したデポー剤の形態で調製される。従って、幾つかの実施形態において、本発明は、治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長期作用型の非経口医薬組成物に関し、当該組成物は、それを必要とする被験体において医学的に許容される場所での皮下または筋肉内の埋め込みに適した徐放性デポー剤の形態であり、上記組成物は、本発明の方法に従って製造される酢酸グラチラマーの微粒子を含む。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、上記長時間作用型デポーは、週に約1回~6ヶ月に1回の投与スケジュールに適している。特定の実施形態によれば、上記組成物は、2週間に約1回~月に約1回の投与に適している。
【0022】
他の実施形態によれば、上記長時間作用型デポー剤は、治療的有効量の酢酸グラチラマーを約1週間~約6ヶ月間に亘って放出する。他の実施形態によれば、上記長時間作用型デポー剤は、治療的有効量の酢酸グラチラマーを約2週間~約1ヶ月間に亘って放出する。長時間作用型組成物の具体例は、生分解性または非生分解性ミクロスフェア、任意の適切な幾何学形状のインプラント、埋め込み型ロッド、埋め込み型カプセル、埋め込み型リング、持続放出ゲルおよび侵食性マトリックスを含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0023】
本発明は更に、多発性硬化症を治療する方法であって、治療的有効量の酢酸グラチラマーを含むデポー剤組成物の非経口投与または埋め込みを含み、上記組成物は本発明の方法に従って調製される、方法を提供する。
【0024】
有利なことに、当該医薬組成物は、局所的および/または全身的なレベルで副作用の発生率および/または重症度が低減された、市販の毎日注射用剤形と同等のまたは優れた治療効果を提供する。
【0025】
本発明は、本発明による方法で調製されるデポー剤形態での酢酸グラチラマーを含有する組成物を包含し、デポー剤は多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療での使用のために、それを必要とする個体に埋め込むのに適している。
【0026】
本発明は更に、本発明の方法に従って製造される酢酸グラチラマーの埋め込み型デポー剤の使用を包含し、当該デポー剤は、被験体においてグラチラマーの持続放出または持続作用を提供するのに適している。
【0027】
本発明の更なる実施形態および全適用範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、当業者には本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が当該詳細な説明から明らかになるので、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【0028】
本発明は、低レベルの残留有機溶媒、特にジクロロメタンを有する酢酸グラチラマーを含む微粒子を調製するための、改良された方法を提供する。当該微粒子は、非経口投与(例えば、筋肉内または皮下)で投与できるデポー剤の形態であり、毎日のコパキソン(登録商標)注射と比較して同等のまたは優れた治療効果を与え、従って患者のコンプライアンスの向上をもたらす。同様の治療効果および低減された副作用を提供することに加えて、長時間作用型デポー剤組成物は、低レベルのまたは残留する有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)を含有し、それによってこのような溶媒の許容される残留量に関する規制要件を満たす。
【0029】
本発明の微粒子組成物は、水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを含む。ダブルエマルジョンは、酢酸グラチラマーを含む内部水相、生分解性または非生分解性ポリマーおよび水不混和性有機溶媒を含む油相または水不混和性有機相、ならびに界面活性剤および任意に張性変更剤を含む外部水相を含む。用語「油相」および「水不混和性有機相」は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0030】
<微粒子の調整>
本発明の組成物は、「二重乳化」法として知られる方法により注射用微粒子の形態で調製でき、これは米国特許第8,377,885号および米国特許第8,796,226号に記載された方法の改良を表す。本発明の原理によれば、酢酸グラチラマーの溶液が、水不混和性揮発性有機溶媒中の生分解性または非生分解性ポリマーの溶液中に分散される。こうして得られた「油中水型(w/o)エマルション」を、次に界面活性剤を含む連続的な外部水相に分散させて「水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルション」液滴を形成する。有機溶媒を次いで、水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルションを混合することおよび医薬品用途に許容されるレベル(例えばICHガイドラインの準拠など)に有機溶媒の量を低減するのに十分な条件下で、空気流および/または真空を適用することによって、除去する(すなわち蒸発させる)。米国特許第8,377,885号明細書および米国特許第8,796,226号明細書に記載された方法は、溶媒蒸発工程の最中に空気流または真空を適用することを想定していない。幾つかの実施形態において、上記残留有機溶媒のレベルは、規制当局により許可された最大残留溶媒未満に低減される。一般に、残留有機溶媒の量は約1,000ppm未満に低減される。ハロゲン化有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)が使用される場合、そのレベルは好ましくは約600ppm未満に低減され、これは最大の規制許容レベルである。有機溶媒を蒸発させた後、上記微粒子は固化し、濾過または遠心分離によって収集される。収集された微粒子(MP)を精製水で洗浄して界面活性剤および非結合ペプチドの大部分を除去し、そして再び遠心分離する。洗浄したMPを収集し、添加剤なしで、またはその後のそれらの再構成を容易にする抗凍結剤(例えば、マンニトール)を添加して凍結乾燥する。驚くべきことに、本発明の方法を利用することにより、形態、結合百分率(「効力」)および放出プロファイルなどの当該微粒子の所望の特性を保持しながら、更に低レベルの有機溶媒を達成する酢酸グラチラマー微粒子が得られる。
【0031】
本発明によれば、酢酸グラチラマーを含む微粒子は、(a)酢酸グラチラマーおよび水を含む内部水相を調製する工程と、(b)生分解性または非生分解性のポリマーおよび水不混和性揮発性有機溶媒を含む有機相を調製する工程と、(c)水および界面活性剤を含む外部水相を調製する工程と、(d)工程aで得られた内部水相と工程bで得られた有機相とを混合して油中水型(w/o)エマルジョンを形成する工程と、(e)工程dで得られた油中水型(w/o)エマルションを工程cで得られた外部水相と混合して水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを得る工程と、(f)工程eで得られた水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを混合すること、および空気流および/または真空を適用することにより有機溶媒を除去する工程と、(g)乾燥して酢酸グラチラマーの微粒子を得る工程であって、上記微粒子は約1,000ppm未満、好ましくは600ppm未満の残留有機溶媒を含む工程、を含む方法により調製される。一実施形態において、工程(f)は、有機溶媒のレベルを約1,000ppm未満、好ましくは約600ppm未満に低減するのに十分な条件下で行われる。
【0032】
<内部水相>
内部水(水性)相は酢酸グラチラマーおよび水を含み、この水は好ましくは注射用滅菌水(WFI)である。内部水相中の酢酸グラチラマーの適切な濃度範囲は、約10mg/mL~約150mg/mL、またはその間の任意の量である。例えば、内部水相中の酢酸グラチラマー濃度は、80~120mg/mL、90~110mg/mLなどであり得る。
【0033】
内部水相の調製のために、滅菌WFIおよび酢酸グラチラマーを含有する溶液を調製し、任意に濾過する。
【0034】
<有機相(水不混和性相)>
上記有機相は、生分解性または非生分解性ポリマーおよび有機溶媒を含む。この有機溶媒は水不混和性で揮発性である。現在の好ましい幾つかの実施形態において、上記有機溶媒はハロゲン化炭化水素である。幾つかの実施形態において、このハロゲン化溶媒は塩素化溶媒、例えばジクロロメタンまたはクロロホルムである。ジクロロメタンはまた、互換的にジクロロメタンまたはDCMとも呼ばれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0035】
1つの特定の実施形態において、本発明の方法は、有機溶媒としてジクロロメタンを利用する。医薬組成物中のこの溶媒の規制許容量は約600ppmである。上記溶媒の医薬組成物中での規制許容量は約600ppmである。従って、本発明の方法から生じる微粒子は好ましくは、約600ppm未満のジクロロメタンを含む。好ましい実施形態において、得られる微粒子は約500ppm未満、例えば約250ppm未満または約100ppm未満の残留ジクロロメタンを含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0036】
上記ポリマーは生分解性または非生分解性ポリマーであってよく、生分解性ポリマーが好ましい。本明細書で使用される用語「生分解性」は、少なくとも部分的に、周囲の組織液中に見出される物質との接触により、または細胞作用により、その表面で経時的に侵食または分解される成分を指す。特に、生分解性成分は、ポリラクチドなどの乳酸系ポリマー例えばポリ(D,L-ラクチド)即ちPLA;ポリグリコリド(PGA)などのグリコール酸ベースのポリマー例えばデューレクト(Durect)社からのラクテル(Lactel、登録商標);ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)即ちPLGA(ベーリンガー(Boehringer)社からのレゾマー(Resomer、登録商標)RG-504、レゾマー(登録商標)RG-502、レゾマー(登録商標)RG-504H、レゾマー(登録商標)RG-502H、レゾマー(登録商標)RG-504S、レゾマー(登録商標)RG-502S、デューレクト社からのラクテル(登録商標));ポリ(ε-カプロラクトン)などのポリカプロラクトン即ちPCL(デューレクト社からのラクテル(登録商標));ポリ無水物;ポリ(セバシン酸)、SA;ポリ(リセノール酸)、RA;ポリ(フマル酸)、FA;ポリ(脂肪酸ダイマー)、FAD;ポリ(テレフタル酸)、TA;ポリ(イソフタル酸)、IPA;ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}メタン)、CPM;ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}プロパン)、CPP;ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}ヘキサン) CPH;ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル{CHDM:シス/トランス-シクロヘキシルジメタノール、HD:1,6-ヘキサンジオール、DETOU:(3,9-ジエチリデン-2,4,8,10-テトラオキサスピロウンデカン)};ポリジオキサノン;ポリヒドロキシブチラート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアミド;ポリエステルアミド;ポリウレタン;ポリアセタール;ポリケタール;ポリカーボネート;ポリオルトカーボネート;ポリシロキサン;ポリホスファゼン:コハク酸;ヒアルロン酸;ポリ(リンゴ酸);ポリ(アミノ酸);ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンサクシネート;ポリビニルピロリドン;ポリスチレン;合成セルロースエステル;ポリアクリル酸;ポリ酪酸;トリブロック共重合体(PLGA-PEG-PLGA)、トリブロック共重合体(PEG-PLGA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)トリブロック共重合体(PEO-PPO-PEO);ポリ吉草酸;ポリエチレングリコール;ポリヒドロキシアルキルセルロース;キチン;キトサン;ポリオルトエステルおよび共重合体、ターポリマー;コレステロール、レシチンなどの脂質;ポリ(グルタミン酸-co-グルタミン酸エチル)など、またはそれらの混合物、などのポリマーであるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記微粒子は、限定されるものではないがPLGA、PLA、PGA、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン酸無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、ポリホスファゼンなどから選択される生分解性ポリマーを含有する。他の実施形態において、上記微粒子は、限定されるものではないが、PLGA、PLAおよびPGAから選択される生分解性ポリマーを含有する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0038】
現時点での好ましい生分解性ポリマーは、乳酸ベースのポリマー、より好ましくはポリラクチド、またはポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)即ちPLGAである。好ましくは、生分解性ポリマーは当該組成物の約10%~約98%w/wの量で存在する。上記乳酸系ポリマーは、乳酸対グリコール酸のモノマー比が100:0~約0:100、好ましくは約100:0~約10:90の範囲であり、また約1,000~約200,000ダルトンの平均分子量を有する。しかしながら、生分解性ポリマーの量は使用期間などのパラメータによって決定されることが理解される。
【0039】
PLGAポリマーは、複数の供給業者;アルケルメス(Alkermes)社[メディソーブポリマー(Medisorb・polymers)、アブソーブアブル・ポリマーズ・インターナショナル(Absorbable・Polymers・International)社(以前のバーミンガムポリマー(デューレクト社の一部門))、ピューラクト(Purac)社、およびベーリンガー・インゲルハイム(Boehringer・Ingelheim)社から市販されている。
【0040】
内部水相を調製するために、有機溶媒およびポリマーが混合され、任意に濾過される。
【0041】
<外部水相>
外部水相は、水および界面活性剤を含む。水は、滅菌WFIが好ましい。外部水相は更に、浸透圧バランスを維持するために等張化剤を含んでもよい。好ましい等張化剤は、外部水相に添加される塩化ナトリウムである。他の適切な等張化剤としては、マンニトールおよびグルコースが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0042】
外部水相中の界面活性剤は、好ましくはポリビニルアルコール(PVA)である。しかしながら、他の界面活性剤、例えばポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体もしくはセルロースエステル、または以下に記載する任意の共界面活性剤を使用できる。
【0043】
外部水相の調製(工程(c))のために、界面活性剤および任意の等張化剤を水中で、好ましくは滅菌WFI中で混合し、任意に濾過する。或いは、水中の界面活性剤の溶液は、等張化剤を含む水の溶液中に分散または溶解されてよい。本発明の一実施形態では、外部水相を、滅菌WFI中で部分的に加水分解されたPVA溶液を調製すること、および膜を通して濾過することにより調製した。別途、NaCl溶液を滅菌WFIで調製し、膜を通して濾過した。このNaCl溶液を上記PVA溶液に添加して、それにより外部水相を形成した。
【0044】
<油中水型(w/o)エマルジョンの調製>
水相および有機相のそれぞれを調製した後に、w/oエマルションが形成される。そのために、上記内部水相と有機相を、任意にホモジナイザまたは他の高剪断混合方法を用いて、w/oエマルションを形成するのに十分な条件下で、混合する。一実施形態では、内部水相を有機相に添加し、ローター・ステータ分散装置を備えたホモジナイザを使用して、毎分2,500~10,000回転(RPM)で1~30分に亘る時間処理した。1つの特定の実施形態において、上記w/oエマルションは7,200RPMで10分間ホモジナイズ(高剪断混合)することにより調製された。
【0045】
<水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョン製剤>
次に、上記w/oエマルションを上記外部水相と混合して、水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルションを形成する。混合は、ホモジナイザまたは他の高剪断混合方法を使用して行うことができ、かつ1つのバッチまたは複数のバッチで実施できる。例えば、w/oエマルションを外部水相の一部に添加し、続いて混合し、その後に外部水相の残りを添加できる。混合は、w/oエマルションについて上述したようにして行う。一実施形態において、w/o/wエマルションは、エマルションの連続混合の間に、上記w/oエマルションを上記外部水相の半分に添加することによって調製された。w/o/wダブルエマルジョンを、ローター・ステータ分散装置を備えたホモジナイザを用いて、毎分2,500~10,000回転(RPM)で1~30分に亘る時間処理した。1つの特定の実施形態において、w/o/wダブルエマルジョンは、上記有機相と共に半分の外部水相を含む混合物を、3分間に亘って2,900RPMでホモジナイズし、続いて残りの外部水相を加える(急冷)ことによって調製された。
【0046】
<溶媒の除去/蒸発>
次に、有機溶媒を除去させる。溶媒除去工程は、混合と上記水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルションへの空気流および/または真空の適用の組み合わせを含む。上記混合、空気流および/または真空の適用は、最終製品の完全性に影響を及ぼさないであろう適切な条件下で行われ、本明細書中に記載の低レベルの有機溶媒を有する製品を生じるであろう。
【0047】
幾つかの実施形態において、w/o/wダブルエマルションは、ホモジナイザまたは他の高剪断混合方法を使用して、好ましくは少なくとも約2,500RPM、好ましくは少なくとも約2,750RPMの速度で混合されてよい。所望であれば、より高い混合速度またはより遅い混合速度を使用してよい。
【0048】
幾つかの実施形態において、溶媒除去工程は、真空の適用と組み合わせてw/o/wダブルエマルションを混合することを含む。所望の結果、即ち溶媒の除去を達成するために、所望の時間真空を適用できる。例えば、真空を少なくとも1時間、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも約3時間、少なくとも約5時間等適用してよい。真空をより長い時間、例えば、12~24時間または一晩適用してもよい。
【0049】
他の実施形態において、上記溶媒除去工程は、上記w/o/wダブルエマルションに圧縮空気流を適用することと組み合わせて、上記w/o/wダブルエマルションを混合することを含む。空気流を、約0.1~約1バール、好ましくは約0.5バールの圧力で適用してよい。空気流を、所望の結果に応じて、より高い圧力またはより低い圧力で適用してよい。空気圧を、所望の時間、例えば、1~24時間、5~24時間、10~20時間、10~12時間等適用してよい。
【0050】
更に他の実施形態において、上記溶媒除去工程は、w/o/wダブルエマルションの混合および圧縮空気流と真空の組み合わせを適用することを含む。
【0051】
幾つかの特定の実施形態では、上記w/o/wダブルエマルジョンを、ホモジナイザを使用して異なる速度で15~17時間混合した。圧縮空気を、上記エマルジョンを通して0.5Paにて10~12時間バブリングした。真空を、工程の一部、例えば約3時間または約5時間適用した。
【0052】
「水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルション」の粒径は、この工程で適用される力の量、混合の速度、界面活性剤の種類および濃度などを含むが、これらに限定されない種々のパラメータにより決定できる。適切な粒径は、約1~約100μmの範囲である。
【0053】
<分離および洗浄>
溶媒を蒸発させた後、酢酸グラチラマー微粒子を反応混合物から分離する。幾つかの実施形態において、この工程は、溶媒蒸発工程から得られた懸濁液を濾過または遠心分離することを含む。遠心分離は、エマルジョンからの微粒子の分離を達成する任意の速度および時間で行われてよい。例えば、非限定的な例において、遠心分離を、例えば5~30分の時間に亘って2,500~10,000RPMの速度で実施してよい。得られたペレットを任意に、水で1回または複数回洗浄してもよい。特定の一実施形態では、懸濁液を5,300RPMで10分間遠心分離する。上清を捨て、ペレット(沈降した微粒子)をWFI中に再懸濁し、マグネチックスターラを用いて混合する。再懸濁させた微粒子を再度2,900RPMで10分間遠心分離して、酢酸グラチラマー微粒子を得る。
【0054】
<乾燥>
上記洗浄された微粒子を次いで、例えば凍結乾燥/冷凍乾燥または当技術分野で既知の他の乾燥方法により乾燥して、バルクまたは単位用量製剤中の酢酸グラチラマーの微粒子を得る。乾燥は、溶媒を除去して乾燥微粒子を得るために十分な時間および温度で行われる。例えば、凍結乾燥は、-20℃以下で12~48時間に亘って生じ得る。
【0055】
本明細書で想定するように、本発明の方法は、残留有機溶媒の量が低減された製品をもたらし、それによって規制による制限に適合する。一実施形態において、上記微粒子は、約600ppm未満の残留有機溶媒を含む。一実施形態において、上記微粒子は約500ppm未満の残留有機溶媒を含む。別の実施形態において、上記微粒子は約250ppm未満の残留有機溶媒を含む。更に別の実施形態において、上記微粒子は約100ppm未満の残留有機溶媒を含む。好ましい態様において、上記有機溶媒はハロゲン化有機溶媒、例えばジクロロメタンまたはクロロホルムなどの塩素化有機溶媒である。この場合、上記微粒子は、最大許容量である600ppm以下の残留溶媒を有するはずである。
【0056】
<有効成分>
本明細書で使用する用語「酢酸グラチラマー」は、商品名Copaxone(登録商標)として販売される以前はコポリマー1として知られた化合物を指し、4つの天然アミノ酸:即ち、L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシン、およびL-リジンをそれぞれ0.141、0.427、0.095、および0.338の平均モル分率で含む、合成ポリペプチドの酢酸塩からなる。Copaxone(登録商標)中の酢酸グラチラマーの平均分子量は5,000~9,000ダルトン(FDA・Copaxone(登録商標)ラベル)であり、またアミノ酸の数は約15~約100アミノ酸の範囲である。この用語はまた、当該化合物の化学誘導体および類似体をも指称する。
【0057】
酢酸グラチラマーは、米国特許第8,377,885号、同第8,796,226号、同第7,199,098号、同第6,620,847号、同第6,362,161号、同第6,342,476号、同第6,054,430号、同第6、048,898号および同第5,981,589号の何れかに詳述されているようにして、調製および特徴付けでき、これらの各参考文献の内容の全体を本明細書の一部として援用する。
【0058】
<デポー剤組成物>
本発明の方法によって調製される微粒子は、好ましくは治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長時間作用型の非経口医薬組成物の形態、特にそれを必要とする被検者において医学的に許容される場所での皮下または筋肉内の埋め込みに適したデポー剤の形態である。
【0059】
本明細書で使用される用語「非経口」は、皮下(SC)、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内(ID)、腹腔内(IP)などから選択される経路を指す。
【0060】
本明細書で使用する用語「治療的有効量」は、多発性硬化症の症状の軽減という目的を達成する酢酸グラチラマー共重合体の量を限定することを意図している。適切な投与量としては、各投与形態について20~750mgが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、投与される酢酸グラチラマー共重合体の量は、選択された投与経路、年齢、体重、および患者の症状の重症度を含む様々なパラメータに従って、医師により決定されるであろうことが理解される。例えば、酢酸グラチラマーの治療的有効量は、約20~100mgの範囲であり得る。幾つかの実施形態において、デポー剤中の酢酸グラチラマーの治療的有効量は40mgである。幾つかの実施形態では、デポー剤中の酢酸グラチラマーの治療的有効量は80mgである。
【0061】
本明細書で使用される用語「長時間作用型」は、被験体の全体の全身循環へのまたは被験体における局所作用部位への酢酸グラチラマーの長期の、持続するまたは延長された放出を提供する組成物を指す。この用語は更に、被験体におけるグラチラマー塩の作用(薬物動態)の長い、持続するまたは延長された期間をもたらす組成物を指称し得る。特に、長時間作用型医薬組成物は、毎週1回~6ヶ月に1回の範囲の投与計画を提供する。現在の好ましい実施形態によれば、投与計画は、週に1回、月に2回(ほぼ2週間に1回)~月に1回の範囲である。必要とされる作用の持続時間に応じて、各デポー剤または埋め込み型デバイスは典型的には、約1週間~約6ヶ月の期間、例えば約2週間~約1ヶ月に亘って放出されるように設計された、約20~750mgの、例えば40mgまたは80mgの有効成分を含むであろう。
【0062】
本発明は更に、それを必要とする被験体への治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長時間作用型医薬組成物の非経口投与により多発性硬化症を治療する方法を提供し、ここで医薬組成物は本発明の方法に従って調製され、また本明細書に記載されるような低レベルの有機溶媒を含む。本明細書で使用される用語「治療すること」は、多発性硬化症の発症後の症状の抑制または軽減を指す。多発性硬化症の発症後の一般的な症状は、視力の低下または喪失、つまずきおよび歩行のむら、会話の鈍化、ならびに頻尿および失禁を含むが、これらに限定されない。加えて、多発性硬化症は、気分の変化および鬱、筋肉の痙攣および重度の麻痺を引き起こし得る。薬物が投与される「被験体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、これに限定されない。本明細書で使用される用語「多発性硬化症」は、上記症状の1以上を伴う中枢神経系の自己免疫疾患を指す。
【0063】
本発明は更に、治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長時間作用型医薬組成物を患者に投与することを含む、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)に罹患した患者におけるRRMSの少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供し、ここで上記医薬組成物は本発明の方法に従って調製され、かつ本明細書に記載される低減されたレベルの有機溶媒を含む。
【0064】
本発明は更に、別の態様において、治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長時間作用型医薬組成物を患者に投与することを含む、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)に罹患したヒト患者におけるGA治療の忍容性を増加させる方法を提供し、ここで上記医薬組成物は本発明の方法に従って調製され、かつ本明細書に記載される低減されたレベルの有機溶媒を含む。
【0065】
本発明は更に、別の態様において、治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長時間作用型医薬組成物を患者に投与することを含む、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)に罹患したヒト患者における再発頻度を減少させる方法を提供し、ここで上記医薬組成物は本発明の方法に従って調製され、かつ本明細書に記載される低減されたレベルの有機溶媒を含む。
【0066】
本発明は更に、別の態様において、治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長時間作用型医薬組成物を患者に投与することを含む、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)に罹患したヒト患者におけるRRMSの進行を防ぐまたは遅延させる方法を提供し、ここで上記医薬組成物は本発明の方法に従って調製され、かつ本明細書に記載される低減されたレベルの有機溶媒を含む。
【0067】
上記デポー組成物は更に、共界面活性剤、溶媒/共溶媒、水不混和性溶媒、水、水混和性溶媒、油性成分、親水性溶媒、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、緩衝剤、pH調整剤、浸透剤、チャネル形成剤、浸透圧調整剤、または当技術分野で既知の他の任意の賦形剤から選択されるが、これらに限定されない1以上の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。適切な共界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、「ポロキサマー」として知られるポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、モノラウリン酸デカグリセリル、およびモノミリスチン酸デカグリセリルなどの脂肪酸ポリグリセリンエステル、モノステアリン酸ソルビタンなどの脂肪酸ソルビタンエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween)などの脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンなどの脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油などの硬化ひまし油、およびこれらの類似体または混合物が挙げられる。適切な溶媒/共溶媒としては、アルコール、トリアセチン、ジメチルイソソルビド、グリコフロール、プロピレンカーボネート、水、ジメチルアセトアミドなど、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な消泡剤としては、シリコンエマルジョンまたはセスキオレイン酸ソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。組成物中の成分の劣化を防止または低減するための適切な安定剤としては、グリシン、α-トコフェロールまたはアスコルベートなどの酸化防止剤、BHA、BHTなど、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な浸透圧調整剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、およびグルコースが挙げられるが、これらに限定されない。適切な緩衝剤としては、適切なカチオンを有する酢酸塩、リン酸塩、およびクエン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
デポー系は、当業者に既知の任意の形態を包含する。適切な形態としては、生分解性または非生分解性ミクロスフェア、埋め込み型ロッド、埋め込み型カプセル、および埋め込み型リングが挙げられるが、これらに限定されない。更に、持続放出ゲル型デポー剤および侵食性マトリックスが想定される。適切な埋め込み型システムは、例えば、米国特許出願公開第2008/0063687号明細書に記載されており、その内容全体を本明細書の一部として援用する。埋め込み型ロッドは、適切なマイクロ押出機を使用して、当技術分野で知られているようにして調製できる。
【0069】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の長時間作用型医薬組成物は、局所および/または全身レベルで低下された副作用の発生率および低下された副作用の重症度を有して、市販の連日の注射剤形と同等のまたは優れた治療効果をもたらす。幾つかの実施形態において、当該組成物は、酢酸グラチラマーの即時放出型製剤の実質的に同じ用量と比較して、被験体におけるグラチラマーの持続される放出または持続される作用を提供する。
【0070】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより十分に説明するために提示される。しかしながら、それらは如何なる意味においても本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形および修飾を容易に考案できる。
【0071】
<実施例>
実施例1:低レベルのジクロロメタンを含む酢酸グラチラマーのPLGA系デポー剤微粒子の調製
【表1】
【0072】
調製プロセス
(1)外部水相の調製:滅菌WFI中の濃度2%w/wの部分加水分解ポリビニルアルコール(PVA)溶液を反応器中で調製し、0.22μmの膜を通して濾過した。滅菌WFI中のNaCl溶液を調製し、PVAを含む上記反応器中に0.22μmの膜を通して濾過した。
【0073】
(3)有機相の調製:ジクロロメタンおよびポリ(ラクチド-co-グリコリド)で構成された有機相を反応器中で調製し、0.22μmの膜を通して濾過した。
【0074】
(4)内部水相の調製:滅菌WFIおよび酢酸グラチラマーを含有する溶液を調製し、0.22μmの膜を通して濾過した。
【0075】
(5)油中水型(w/o)エマルジョンの調製:上記内部水相を上記有機相に添加し、ローター・ステータ分散装置を備えたIKA・Ultra-Turrax・T50ホモジナイザを使用して7,200RPMで10分間処理した(高剪断混合)。
【0076】
(6)水中油中水型(w/o/w)エマルションの調製:工程5で調製した油中水型エマルション(w/o)を、w/oエマルションの混合を続けながら、上記外部水相の半分に添加した。このw/o/wダブルエマルションを、ローター・ステータヘッド付きのIKA・Ultra-Turrax・UTS80ホモジナイザを使用して、外部水相中へのw/o移送の終了から3分間、2,900RPMで処理した。続いて、更に30リットルの外部水相をエマルジョンに添加した(急冷)。
【0077】
(7)溶媒除去/蒸発:工程(6)で形成されたw/o/wダブルエマルションを、IKA・UTS80ホモジナイザを用い、異なる速度で15~17時間混合した。このエマルジョンを通して、圧縮空気を0.5Paで10~12時間バブリングした。工程の一部に真空を適用した。
【0078】
(8)分離洗浄:懸濁液を5,300RPMで10分間遠心した。上清を捨て、ペレット(沈降した微粒子)を550gのWFIに再懸濁し、マグネチックスターラを用いて3分間混合する。再懸濁した微粒子を2900RPMで10分間遠心分離する。
【0079】
(9)凍結乾燥による乾燥:洗浄した微粒子を約750gの滅菌WFIに再懸濁し、凍結乾燥まで-20℃に保った。凍結乾燥を、滅菌リオガードトレイを使用して以下のように実施した:-40℃で24時間凍結。0.2hPa、-5℃で48時間の一次乾燥。 0.2hPa、10℃で48時間の二次乾燥。
【0080】
【0081】
100Lの反応器システムを用いるGAデポー55gの調製に含まれる手順、設備および材料の概要を表3に示す。
【表3】
【0082】
<結果および考察>
DCM残留量:表4は、調製された8つのバッチの蒸発速度、真空適用の期間、およびDCM残留含有量を詳述する。結果は、GAデポー最終製剤中のDCM残留量が、蒸発速度および真空時間を増加させることによって減少することを示す。残留DCMは、プラセボバッチで実施したように2,750RPMの速度および5時間の真空で限界値に適合した(6)。2つの追加のバッチ、(7、(プラセボ))および(8、(酢酸グラチラマー))を、再現性を保証するために同じ蒸発条件下で調製した。
【表4】
【0083】
無菌性および細菌性エンドトキシン:最初の4つのプラセボバッチは無菌的に調製されなかったため、無菌性および細菌性エンドトキシンのデータは関係ない。その後のバッチは、下記の表5に見られるように、無菌であり細菌性エンドトキシンの制限内にあることが証明された。
【表5】
【0084】
インビトロ放出プロファイル:
インビトロ系は、以下に要約するように、米国特許第8,377,885号および米国特許第8,796,226号に記載される通りである。
【0085】
材料および方法
装置
20mLバイアル
多点磁気スターラ
インキュベータ
ピペッター
紫外可視分光光度計島津1601
試薬およびプラスチック/ガラス製品
【0086】
試験物品:本発明の方法により製造された酢酸グラチラマーを含有する乾燥凍結乾燥微粒子(バッチ9)、または米国特許第8,377,885号および米国特許第8,796,226号のプロセスに従って製造された酢酸グラチラマーを含有する乾燥凍結乾燥微粒子(バッチ10)。
温度:37℃
MeOH中の2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS、ピクリルスルホン酸、170.5mM)5%
【0087】
工程の説明:20mLのPBS(0.01Mリン酸塩、0.05%NaN3)pH7.4を各バイアルに添加した。バイアルを37℃に置き、小さな磁石で攪拌した。600μLのサンプルを10,000gで5分間遠心分離した。500μLの上清を1.5mLのマイクロチューブに移し、続いて500μLの0.1Mホウ酸緩衝液(2倍希釈)および50μLのTNBSを加えた。得られた組成物を混合し、作業台に30分間置いた。分析を、TNBS法(後述)を用いて行った。
【0088】
残留する沈殿粒子を、500μLの新しいPBS(NaN3を含む)を用いて再懸濁し、バイアルに戻した。酢酸グラチラマーの放出量についての正確な計算を、各時点について2.5%の更なる放出プロセスにおいて行った。
【0089】
組み込まれた酢酸グラチラマーの放出を、多点磁気スターラを備えた37℃のインキュベータを用いて、密閉された20mLのガラスバイアル中で行った。pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)を放出媒体として使用した。
【0090】
酢酸グラチラマーの放出を、1~30日の期間に亘って試験した。放出されたGAの量を、GPC法によって決定する。
機器:UV検出器を備えた適切なHPLCシステム
カラム:スーパーロース(Superose)12HR10/30カラム
検出:208nmの紫外線
流速:0.5mL/分
注入量:10μL
カラム温度:周囲温度
移動相:0.2Mリン酸緩衝液pH1.5
【0091】
本発明の方法によって製造されたGAデポー剤の2つの代表的なサンプルの、代表的な放出プロファイルを表6に提供する。
【表6】
【0092】
<結論>
本明細書で実証されるように、蒸発速度を増加させること、続いて真空を適用することにより、DCM蒸発を最適化し要求される仕様の範囲内に入る結果を得ることができたと結論づけることができる。結果は、最適蒸発条件が、約2,750RPMのホモジナイズ速度および約5時間の真空であることを示す。驚くべきことに、DCMレベルの最小化が本発明の方法を利用して達成可能であった一方、所望の生成物特性を依然として維持できた(GA結合百分率、粒子形態および酢酸グラチラマー活性成分の放出特性は、プロセス変更にもかかわらず損なわれないままであった)。
更に、これらのバッチを細菌性エンドトキシンおよび無菌性について試験し、これらもまたそれらの許容基準に適合していた。
【0093】
実施例2:比較実験
GAデポー剤を、国際公開第2011/080733号(米国特許第8,377,885号および米国特許第8,796,226号に対応)の実施例3に記載された方法に従って調製した。溶媒(DCM)除去のために、ダブルエマルジョンを含む開放ビーカーを磁気プレートスターラ上に置き、全ての溶媒が蒸発し微粒子が固化するまでドラフト中で室温にて3~4時間撹拌した。空気流および/または真空は適用しなかった。
【0094】
凍結乾燥された試料を、ヘッドスペースGCを用いてDCMレベルについて試験した。 サンプル中に検出されたDCMの平均量は19,453ppmであった。
【0095】
本発明を具体的に説明してきたが、当業者は多くの変形および修正が可能であることを理解するであろう。従って、本発明は、具体的説明された実施形態に限定されると解釈されるべきでなく、本発明の範囲および概念は、添付の特許請求の範囲を参照することによって更に容易に理解されるであろう。
本発明の好ましい態様を以下に示す。
[1]酢酸グラチラマーを含む微粒子を調製するための方法であって、
(a)酢酸グラチラマーおよび水を含む内部水相を調製する工程と、
(b)生分解性または非生分解性のポリマーおよび水不混和性揮発性有機溶媒を含む有機相を調製する工程と、
(c)水および界面活性剤を含む外部水相を調製する工程と、
(d)工程aで得られた内部水相と工程bで得られた有機相とを混合して油中水型(w/o)エマルジョンを形成する工程と、
(e)工程dで得られた油中水型(w/o)エマルションを工程cで得られた外部水相と混合して水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを得る工程と、
(f)工程eで得られた水中油中水型(w/o/w)ダブルエマルジョンを混合すること、ならびに空気流および/または真空を適用することにより有機溶媒を除去する工程と、
(g)乾燥して酢酸グラチラマーの微粒子を得る工程であって、前記微粒子は約1,000ppm未満の残留有機溶媒を含む、工程
を含む、方法。
[2][1]に記載の方法であって、前記微粒子は約600ppm未満、好ましくは約500ppm未満、約250ppm未満または約100ppm未満の残留有機溶媒を含む、方法。
[3][1]に記載の方法であって、前記水不混和性揮発性有機溶媒はハロゲン化有機溶媒である、方法。
[4][1]に記載の方法であって、前記ハロゲン化有機溶媒はジクロロメタン(DCM)およびクロロホルムからなる群から選択される塩素化炭化水素である、方法。
[5][4]に記載の方法であって、前記塩素化有機溶媒はジクロロメタン(DCM)である、方法。
[6][5]に記載の方法であって、前記微粒子は約600ppm未満、好ましくは約250ppm未満、より好ましくは約100ppm未満の残留ジクロロメタン(DCM)を含む、方法。
[7]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、工程(f)は前記w/o/wダブルエマルジョンをホモジナイザ中で少なくとも約2,500回転/分(RPM)、好ましくは少なくとも約2,750RPMの速度で混合することを含む、方法。
[8]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、工程(f)は前記w/o/wダブルエマルションに対し少なくとも約3時間、好ましくは少なくとも約5時間に亘って真空を適用することを含む、方法。
[9]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、工程(f)は前記w/o/wダブルエマルションに対し約0.1~1バール、好ましくは約0.5バールの圧力で圧縮空気流を適用することを含む、方法。
[10]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、工程(f)は前記w/o/wダブルエマルションに対し圧縮空気流と真空の組み合わせを適用することを含む、方法。
[11]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、乾燥工程(g)の前に工程(f)の生成物を濾過するまたは遠心分離する工程および任意に水で洗浄する工程を更に含む、方法。
[12]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記乾燥工程(g)は凍結乾燥または冷凍乾燥を含む、方法。
[13]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記生分解性または非生分解性ポリマーはポリ(D,L,乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、およびポリホスファゼンからなる群から選択される、方法。
[14][13]に記載の方法であって、前記ポリマーはPLA、PGAおよびPLGAからなる群から選択される生分解性ポリマーであり、好ましくは、前記ポリマーはPLGAである、方法。
[15]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、工程(c)で得られる外部水相中の界面活性剤はポリビニルアルコール(PVA)、部分加水分解ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体およびセルロースエステルからなる群から選択され、好ましくは、前記界面活性剤は部分的に加水分解されたPVAである、方法。
[16]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記内部水相および/または前記外部水相は等張化剤を更に含む、方法。
[17][16]に記載の方法であって、前記等張化剤はNaClである、方法。
[18]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記酢酸グラチラマーはL-アラニン、L-グルタミン酸、L-リジン、およびL-チロシンを約0.14のグルタミン酸、約0.43のアラニン、約0.10のチロシンおよび約0.33のリジンのモル比で含む、方法。
[19]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記酢酸グラチラマーは約15~約100個のアミノ酸を含む、方法。
[20]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記酢酸グラチラマー微粒子はそれを必要とする被験体における医学的に許容される場所での皮下または筋肉内埋め込みに適した徐放性デポー剤形態での長時間作用型非経口医薬組成物の形態である、方法。
[21]先行する請求項の何れか1項に記載の方法であって、前記微粒子は約20mg~約750mgの酢酸グラチラマーを含む、方法。
[22][21]に記載の方法であって、前記微粒子は約40mgの酢酸グラチラマーを含む、方法。
[23][21]に記載の方法であって、前記微粒子は約80mgの酢酸グラチラマーを含む、方法。
[24]治療的有効量の酢酸グラチラマーを含む長期作用型の非経口医薬組成物であって、前記組成物はそれを必要とする被験体の医学的に許容される場所での皮下または筋肉内埋め込みに適した徐放性デポー剤の形態であり、前記組成物は先行する何れか1項に記載の方法に従って製造される酢酸グラチラマーの微粒子を含む、非経口医薬組成物。
[25][24]に記載の医薬組成物であって、前記デポー剤組成物は約1週間~約6ヶ月間に亘って治療敵有効量の酢酸グラチラマーを放出する、医薬組成物。
[26][24]に記載の医薬組成物であって、前記デポー剤組成物は約2週間~約1ヶ月間に亘って治療的有効量の酢酸グラチラマーを放出する、医薬組成物。
[27][24]に記載の医薬組成物であって、前記デポー剤組成物は生分解性ミクロスフェア、非生分解性ミクロスフェア、任意の適切な幾何学的形状のインプラント、埋め込み型ロッド、埋め込み型カプセル、埋め込み型リング、または持続放出性ゲルもしくは侵食性マトリックスからなる群から選択される形態である、医薬組成物。
[28][24]に記載の医薬組成物であって、多発性硬化症の治療における使用のための、医薬組成物。
[29][1]~[23]の何れか1項に記載の方法に従って調製された酢酸グラチラマー微粒子、または[24]~[27]の何れか1項に記載のこのような微粒子を含むデポー剤形態の医薬組成物の非経口投与による多発性硬化症の治療方法。
[30]前記多発性硬化症は再発寛解型多発性硬化症(RRMS)である、[27]に記載の使用のための医薬組成物、または[28]に記載の方法。