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特開2023-22207核酸アジュバントを送達するための細菌ミニ細胞およびその使用方法
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  • 特開-核酸アジュバントを送達するための細菌ミニ細胞およびその使用方法 図1
  • 特開-核酸アジュバントを送達するための細菌ミニ細胞およびその使用方法 図2
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  • 特開-核酸アジュバントを送達するための細菌ミニ細胞およびその使用方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022207
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】核酸アジュバントを送達するための細菌ミニ細胞およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20230207BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230207BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P37/04
A61K35/12
A61K48/00
A61K45/00
A61K31/4745
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190928
(22)【出願日】2022-11-30
(62)【分割の表示】P 2019518509の分割
【原出願日】2017-10-04
(31)【優先権主張番号】62/405,074
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504146523
【氏名又は名称】エンジーンアイシー モレキュラー デリバリー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ブランバット、 ヒマンシュ
(72)【発明者】
【氏名】マックディアミド、 ジェニファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】治療用核酸アジュバントおよび核酸センサーのアゴニストを含む組成物、および該組成物を標的細胞に送達することができる送達システムを提供する。
【解決手段】本開示は、標的細胞において所望の免疫応答を生じさせることができる核酸アジュバントまたは核酸アジュバントをコードするプラスミドを含有する、無傷の細菌由来ミニ細胞を提供する。この開示はさらに、新生物性疾患および癌を含む疾患の治療における使用のための核酸アジュバントを送達するためにミニ細胞を用いる方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの核酸アジュバント分子、(ii)少なくとも1つの核酸アジュ
バント分子をコードするセグメントを含む少なくとも1つのプラスミド、または(iii
)核酸センサーの少なくとも1つのアゴニストを含む(a)無傷の細菌ミニ細胞、および
(b)その薬学的に許容される担体
を含んでなる組成物であって、
核酸アジュバント分子または核酸センサーのアゴニストが、標的細胞からの免疫応答を
生じることを特徴とする組成物。
【請求項2】
(a)標的細胞からの免疫応答が、I型インターフェロンの産生を含む、および/また

(b)標的細胞からの免疫応答が、I型インターフェロンの産生を含み、ここでI型イ
ンターフェロンはインターフェロンαまたはインターフェロンβを含む
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも一つの核酸アジュバントが、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9、RIG-I、MDA5、AIM2
、cGASまたはIFI16の少なくとも一つに結合する核酸を含む
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)無傷のミニ細胞が、少なくとも2つの核酸アジュバント分子を含む、および/ま
たは
(b)無傷のミニ細胞が、1つの核酸アジュバント分子と核酸センサーの1つのアゴニス
トとを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)少なくとも1つの核酸アジュバント分子が少なくとも40ヌクレオチドの配列を含
む、
(b)少なくとも1つの核酸アジュバント分子が40量体である、または
(c)少なくとも1つの核酸アジュバント分子が50量体である
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
核酸センサーの少なくとも1つのアゴニストが、PNPase1、ポリ(I:C)、ポリ-ICLC
、イミキモド、イミダゾキノリンレシキモドまたはCpG-ODNのポリヌクレオチド産物を含
む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに二重特異性リガンドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(a)二重特異性リガンドが、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第一のアーム
および非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二のアームを含む、
および/または
(b)二重特異性リガンドが、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第一のアーム
および非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二のアームを含み、
ミニ細胞表面構造が、ミニ細胞表面上のリポ多糖のO-多糖成分である、および/または
(c)二重特異性リガンドが、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第一のアーム
および非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二のアームを含み、
哺乳動物細胞表面受容体が、ミニ細胞の受容体媒介エンドサイトーシスを活性化すること
ができる、および/または
(d)二重特異性リガンドが、抗体または抗体断片を含む
請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(a)組成物が、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、または
(b)組成物が、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、または
(c)組成物が、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、または
(d)組成物が、1010ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、または
(e)組成物が、1011ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(a)プラスミドが、少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメント
に作動可能に連結された調節要素を含む、および/または
(b)プラスミドが、複数の核酸アジュバント分子をコードする
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(a)少なくとも1つの核酸アジュバント分子、
(b)少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメントからなるプラス
ミド、または
(c)核酸受容体の少なくとも1つのアゴニスト
を含む無傷のミニ細胞に標的細胞を接触させることを含んでなり、
標的細胞がミニ細胞を飲み込むものである、
核酸アジュバントを標的細胞に送達する方法。
【請求項12】
標的細胞が、
(a)哺乳動物細胞、または
(b)ヒト細胞、または
(c)ヒト免疫細胞、または
(d)単球細胞、マクロファージ、T細胞または樹状細胞であるヒト免疫細胞
である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)少なくとも1つの核酸アジュバントが、標的細胞上の受容体に結合する、および
/または
(b)少なくとも1つの核酸アジュバントが、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9、RIG-I、MDA5
、AIM2、cGASまたはIFI16のうちの少なくとも1つに結合する核酸を含む
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
(a)無傷のミニ細胞が、少なくとも2つの核酸アジュバント分子を含む、および/ま
たは
(b)無傷のミニ細胞が、1つの核酸アジュバント分子と核酸センサーの1つのアゴニス
トとを含む
請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1つの核酸アジュバント分子が、少なくとも40ヌクレオチドの配列を
含む、
(b)少なくとも1つの核酸アジュバント分子が、40量体である、または
(c)少なくとも1つの核酸アジュバント分子が、50量体である
請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
核酸センサーの少なくとも1つのアゴニストが、PNPase1、ポリ(I:C)、ポリ-ICLC
、イミキモド、イミダゾキノリンレシキモドまたはCpG-ODNのポリヌクレオチド産物を含
む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(a)ミニ細胞と哺乳動物細胞との間の接触がインビトロで起こる、または
(b)ミニ細胞と哺乳動物細胞との間の接触がインビボで起こる
請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a)プラスミドが、少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメント
に作動可能に連結された調節要素を含む、および/または
(b)プラスミドが、複数の核酸アジュバント分子をコードする
請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
さらに、二重特異性リガンドを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(a)二重特異性リガンドが、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第一のアーム
および非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二のアームを含む、
および/または
(b)二重特異性リガンドが、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第一のアーム
および非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二のアームを含み、
ミニ細胞表面構造が、ミニ細胞表面上のリポ多糖のO-多糖成分である、および/または
(c)二重特異性リガンドが、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有する第一のアーム
および非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二のアームを含み、
哺乳動物細胞表面受容体が、ミニ細胞の受容体媒介エンドサイトーシスを活性化すること
ができる、および/または
(d)二重特異性リガンドが、抗体または抗体断片を含む
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
標的細胞が、食作用またはエンドサイトーシス-コンピテントである、請求項11~2
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~10のいずれか一項に記載の無傷のミニ細胞組成物を疾患を有する対象に投
与することを含んでなり、投与後にミニ細胞が標的細胞によって飲み込まれるものである
、対象における疾患を治療する方法。
【請求項23】
投与後にミニ細胞が標的細胞によって飲み込まれる、疾患を治療するための請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
(a)疾患が癌である、または
(b)疾患が感染症である
請求項22に記載の方法または請求項23に記載の使用。
【請求項25】
(a)疾患を治療するための薬物を対象に投与すること、および/または
(b)疾患を治療するための化学療法剤である薬物を対象に投与すること、および/ま
たは
(c)疾患を治療するための抗ウイルス薬である薬物を対象に投与すること、および/
または
(d)疾患を治療するための無傷のミニ細胞に包装されている薬物を対象に投与するこ

をさらに含む、
請求項22もしくは24に記載の方法、または請求項23もしくは24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年10月6日に出願された米国仮特許出願第62/405,074号からの優先権を
主張する。その出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に核酸ベースの治療の分野に関し、特に、細菌由来の無傷のミニ細胞を
用いた哺乳動物標的細胞(例えば、T細胞、樹状細胞)への核酸アジュバントの送達に関
する。本開示は、特に抗腫瘍免疫応答の促進に関して癌、および感染症(例えば、ウイル
ス感染症)を治療するのに特に有用である。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、本開示を読者が理解することを助けるために提供されているに過ぎず、
それに対する先行技術を説明または構成するものとは認められない。
【0004】
最近の進歩により、哺乳動物細胞中の受容体によって感知される多数の核酸が同定され
た。核酸受容体の関与は、自然免疫系を複数の方法で活性化する。例えば、特定の核酸(
すなわち、核酸アジュバント)の同族受容体への結合は、1型および2型インターフェロ
ン(IFN)の誘発をもたらす。これらのインターフェロンは、免疫系による抗腫瘍活性
の増強においてアジュバントとして機能することができる(Junt and Barchet, 2015に概
説)。
【0005】
細胞内在性およびIFN媒介性エフェクター機構を誘発することとは別に、核酸センサ
ーアゴニストは、樹状細胞(DC)を活性化し、サイトカイン分泌、成熟および抗原提示を
促進することができる。これにより、順応性免疫応答の質が向上し、形成される。それら
の免疫増強特性が原因で、オリゴヌクレオチドまたは核酸センサーの小分子アゴニストが
、臨床試験において免疫原性の低い癌に対する免疫応答を高めるために、および癌に対す
る治療免疫または感染症に対する予防ワクチンにおけるアジュバントとして使用されてい
る。
【0006】
抗ウイルス免疫を誘発するまたは抗腫瘍活性を増強するためのアジュバントとして、核
酸センサーの多くのアゴニストが発見および試験されている。核酸センサーのこれらのア
ゴニストのアジュバントとしての見込みにもかかわらず、実際に臨床開発に入ったものは
ほとんどない。
【0007】
これはいくつかの要因によるものであり得る。特に、核酸アゴニストは、樹状細胞など
の特定の細胞に送達される必要があるが、これらの分子は、標的細胞の位置を突き止める
かまたはそれに入るのを助けるホーミング特性を有さない。さらに、インビボで投与した
場合、遊離核酸は血清中で不安定であり、ヌクレアーゼによって急速に分解され得る。結
果として、核酸アジュバントおよび核酸センサーのアゴニストは局所使用に追いやられて
いるか、またはタンパク質抗原に共有結合していなければならない。
【0008】
したがって、治療用核酸アジュバントおよび核酸センサーのアゴニストを標的細胞に送
達することができる送達システムが当技術分野において明らかに必要とされている。本開
示はそのような送達システムを提供する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に記載されるのは、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含む
細菌由来の無傷のミニ細胞を使用して疾患を治療するための組成物および方法である。一
般に、開示されたミニ細胞送達ベクターは、T細胞または樹状細胞などの標的細胞に核酸
アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを輸送して、癌および/または感染症を含
む様々な疾患と戦うことを助ける免疫応答を誘発することによって機能する。
【0010】
一つの局面において、本開示は、(a)少なくとも1つの核酸アジュバント分子、少な
くとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメントを含むプラスミド、または核
酸センサーのアゴニストを含む無傷のミニ細胞、および(b)その薬学的に許容される担
体を含んでなる組成物であって、少なくとも一つの核酸アジュバント分子または核酸受容
体のアゴニストが、標的細胞からの免疫応答を引き起こすことを特徴とする組成物を提供
する。
【0011】
もう一つの局面において、本開示は、(i)少なくとも1つの核酸アジュバント分子、
(ii)少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメントからなるプラス
ミド、または(iii)核酸センサーの少なくとも1つのアゴニストを含む無傷のミニ細
胞に標的細胞を接触させることを含んでなり、標的細胞がミニ細胞を飲み込むものである
、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを標的細胞に送達する方法を提供す
る。
【0012】
さらにもう一つの局面において、本開示は、(i)少なくとも1つの核酸アジュバント
分子、(ii)少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメントを含むプ
ラスミド、または(iii)核酸受容体の少なくとも1つのアゴニストを含む無傷のミニ
細胞を疾患を有する対象に投与することを含んでなり、投与後にミニ細胞が標的細胞によ
って飲み込まれるものである、対象における疾患を治療する方法を提供する。
【0013】
いくつかの態様において、標的細胞において生じる免疫応答は、インターフェロン-α
および/またはインターフェロン-βを含むI型インターフェロンの産生を含む。
【0014】
いくつかの態様において、少なくとも1つの核酸アジュバントは、TLR3、TLR7、TLR8、T
LR9、RIG-I、MDA5、AIM2、cGASまたはIFI16のうちの少なくとも1つに結合する核酸を含む
【0015】
いくつかの態様において、無傷のミニ細胞は少なくとも2つの核酸アジュバントを含む
。他の態様において、少なくとも1つの核酸アジュバントは少なくとも約40ヌクレオチド
の配列を含み、例えば、少なくとも1つの核酸アジュバントは40量体または50量体の二本
鎖RNAまたはDNAであり得る。
【0016】
いくつかの態様において、無傷のミニ細胞は、核酸アジュバントおよび核酸センサーの
アゴニストを含み、いくつかの態様において、核酸センサーの少なくとも1つのアゴニス
トは、PNPase1のポリヌクレオチド産物、ポリ(I:C)、ポリICLC、イミキモド、イミ
ダゾキノリンレシキモド、CpG-ODNまたは2'3'サイクリックGAMP(GMP-AMP)を含む。
【0017】
いくつかの態様において、開示のミニ細胞は二重特異性リガンドをさらに含み得る。い
くつかの態様において、二重特異性リガンドは、ミニ細胞表面構造に対する特異性を有す
る第一のアームおよび非食作用性哺乳動物細胞表面受容体に対する特異性を有する第二の
アームを含み得る。例えば、ミニ細胞表面構造は、ミニ細胞表面上のリポ多糖のO-多糖
成分であり得、哺乳動物細胞表面受容体は、ミニ細胞の受容体媒介エンドサイトーシスま
たはマクロピノサイトーシスを活性化し得る。いくつかの態様において、二重特異性リガ
ンドは抗体または抗体断片を含む。
【0018】
いくつかの態様において、組成物は、10ミニ細胞あたり、10ミニ細胞あたり、10
ミニ細胞あたり、1010ミニ細胞あたり、または1011ミニ細胞あたり、約1未満の汚染
親細菌細胞を含む。
【0019】
いくつかの態様において、核酸アジュバントをコードするプラスミドは、少なくとも1
つの核酸アジュバントをコードするセグメントに作動可能に連結された調節要素を含み、
いくつかの態様において、プラスミドは複数の核酸アジュバント分子をコードする。
【0020】
いくつかの態様において、標的細胞はヒト免疫細胞などの哺乳動物細胞である。例えば
、標的細胞は、単球細胞、マクロファージ、T細胞、または樹状細胞、またはNK細胞、ま
たはiNKT細胞であり得る。いくつかの態様において、標的細胞は、食作用またはエンドサ
イトーシスまたはマクロピノサイトーシスコンピテントである。
【0021】
いくつかの態様において、ミニ細胞と哺乳動物細胞との間の接触はインビトロまたはイ
ンビボで起こり得る。
【0022】
いくつかの態様において、治療される疾患は癌または感染症であり得る。
【0023】
いくつかの態様において、開示されたミニ細胞の投与は、化学療法薬または抗ウイルス
薬または抗細菌薬などの、疾患を治療するための薬物を対象に投与することをさらに含む
ことができる。これらの態様において、薬物は無傷のミニ細胞に包装されてもよい。いく
つかの態様において、治療は放射線治療をさらに含み得る。
【0024】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的かつ説明的なものであり、本開示
を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】エンドソームおよびサイトゾルの核酸感知経路を示す(Junt and Barchet, 2015より採用)。この図は、本明細書に記載のいくつかの主要な核酸感知経路を示している。略語を以下に示す:cGAMP=サイクリックGMP-AMP;cGAS=cGAMPシンターゼ;DC=樹状細胞;dsRNA=二本鎖RNA;ER=小胞体;IL=インターロイキン;IRAK=IL-1受容体関連キナーゼ;IRF=IFN調節因子;MAVS=ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質;MDA5=メラノーマ分化関連タンパク質5;MYD88=骨髄分化一次応答タンパク質88;NF-κB=核因子κB;pDC=形質細胞様DC;RIG-I=レチノイン酸誘導性遺伝子I;ssRNA=一本鎖RNA;STING=IFN遺伝子の刺激因子;TBK1=TANK結合キナーゼ1;TRIF=TIRドメイン含有アダプタータンパク質誘発IFNβ;およびXCR1=XC-ケモカイン受容体1。
図2】核内の核酸感知経路を示している(Diner, Lumm and Christea, 2015より採用)。二本鎖外来DNAが宿主細胞に侵入した後、それはDNAセンサーIFI16およびIFIXに直接結合する(1)。IFI16は、やがて解明されるべきメカニズムを介してSTINGに信号を送る(2)。STINGの活性化および二量体化の際に、TBK-1がリン酸化され(3)、その結果、IRF3及びNF-κBがリン酸化され(4)、位置が核内に戻って、サイトカインの発現が誘発される(5)。
図3】マウス異種移植腫瘍モデルにおいて、薬物封入ミニ細胞単独の有効性を薬物封入(PNU159682)および核酸アジュバント封入(40量体)のミニ細胞の併用治療と比較したインビボ試験の結果を示す。図に示すように、EGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞40量体を投与したマウス(グループ3)は、合計6回投与後44日目までに非常に有意な腫瘍退縮を示したが、EGFRミニ細胞PNU-159682単独を投与したマウス(グループ2)は安定していただけだった。グループ1は生理食塩水のみを投与された対照マウスを表す。
図4】マウス異種移植モデルにおける核酸アジュバント40量体と50量体の抗腫瘍効果の比較からの結果を示す。グループ1(対照)には滅菌生理食塩水を投与した。他のグループは以下のように投与した:グループ2はEGFRミニ細胞PNU-159682、グループ3はEGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞40量体、グループ4はEGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞50量体、グループ5はEGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、核酸アジュバントおよび/または核酸センサーのアゴニストの新規なミニ細
胞ベースの送達ベクターおよびそれを使用する方法を提供する。特に、本開示は、腫瘍性
疾患(例えば、癌)または感染症などの患者における疾患と戦うために有益な免疫応答を
増強するための有用性を有する。例えば、開示されたミニ細胞送達ベクターは、開示され
たミニ細胞送達ベクターを単独でまたは二重特異性リガンド標的化された細胞傷害性薬物
またはsiRNAもしくはmiRNA包装ミニ細胞と共に同じ患者に投与する場合、抗腫瘍効果を増
強し得る。
【0027】
以前に、本発明者らは、治療有効濃度のsiRNAまたはmiRNA(長さ約23ヌクレオチド)を
無傷のミニ細胞にうまく包装できることを発見した。これは、これらの分子は大きいので
(約14,000ダルトン)、そのような大きい分子が二重外膜を介して無傷のミニ細胞に入る
ことができることは知られておらず、予想外であった。さらに、一旦包装されると、これ
らのsiRNAまたはmiRNAはインビトロまたはインビボでミニ細胞から漏出または拡散しなか
った。
【0028】
本発明者らは、40および50ヌクレオチド長(40量体および50量体)であるはるかに大き
い二本鎖オリゴヌクレオチドを無傷のミニ細胞内に輸送することができ、これらのオリゴ
ヌクレオチドをミニ細胞から拡散しない治療有効濃度で包装できるという驚くべき発見を
した。本開示は、これらのミニ細胞およびその使用方法の詳細な説明を提供する。
【0029】
本開示全体を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書が識別引用によ
って参照されている。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本開
示が関連する技術水準をより完全に説明するために、参照により本開示に組み込まれる。
【0030】
1.治療用ミニ細胞組成物
本開示のミニ細胞組成物は、哺乳動物、特にヒト癌患者の標的細胞に核酸アジュバント
を送達するのに有用である。
【0031】
本開示の文脈において、所与の疾患(すなわち、癌)を治療するための核酸アジュバン
トを含む開示されたミニ細胞送達ベクターの投与は、従来の医療行為と一致して、いくつ
かの要因に左右される。これらの要因としては、患者の年齢、疾患の状態および進行、な
らびに患者が受けたまたは受けている以前のまたは現在の治療があるが、これらに限定さ
れない。
【0032】
a.ミニ細胞
本明細書中で使用される場合、「ミニ細胞」とは、染色体が欠如しており(「無染色体
」)、二分裂の間の、DNA分離を伴う細胞分裂の協調における乱れによって引き起こさ
れる細菌細胞の誘導体をいう。ミニ細胞は、特定の状況で自発的に生成および放出される
が、特定の遺伝子再構成またはエピソーム遺伝子発現によるものではない、いわゆる「膜
ブレブ」(サイズが約0.2μm以下)などの他の小胞とは異なる。同様に、無傷のミニ細胞
は、特定の遺伝子再構成またはエピソーム遺伝子発現のために生成されない細菌性ゴース
トとは異なる。本開示において使用される細菌由来ミニ細胞は完全に無傷であり、したが
って、破壊されているかまたは分解されている、除去されてさえいる外膜または規定膜を
特徴とする他の無染色体型の細菌細胞誘導体とは区別される。米国特許第7,183,105号、1
11欄、54行目以降を参照されたい。本開示のミニ細胞を特徴付ける無傷の膜は、摂取後に
標的細胞内でペイロードが放出されるまで、治療用ペイロード(例えば、核酸アジュバン
トまたは核酸センサーのアゴニスト)をミニ細胞内に保持することを可能にする。
【0033】
本発明のミニ細胞は、大腸菌または他の細菌細胞(例えば、ネズミチフス菌)の無核型
であり得る。大腸菌において、例えば、minCDのようなmin遺伝子の突然変異は、細胞分裂
中の細胞極での隔壁形成の阻害を除去することができ、正常な娘細胞と無核のミニ細胞の
産生をもたらす。de Boerら(1992);Raskin & de Boer(1999);Hu & Lutkenhaus(
1999);Harry(2001)を参照されたい。開示された方法を実施するために、いくつかの
態様において、ミニ細胞が無傷の細胞壁を有することが望ましい(「無傷のミニ細胞」)
【0034】
minオペロン突然変異に加えて、無核ミニ細胞はまた、例えば、枯草菌のdivIVB1におい
て、中隔形成に影響を及ぼす一連の他の遺伝的再配列または突然変異を用いて生成され得
る。Reeve and Cornett(1975);Levinら(1992)を参照されたい。ミニ細胞はまた、細
胞分裂/染色体分離に関与するタンパク質の遺伝子発現のレベルにおける混乱の後に形成
され得る。例えば、minEの過剰発現は、ミニ細胞の極性分裂および産生をもたらす。同様
に、染色体のないミニ細胞は、染色体分離における欠陥、例えば、枯草菌におけるsmc突
然変異(Brittonら(1998))、枯草菌におけるspoOJ欠失(Iretonら(1994))、大腸菌
におけるmukB突然変異(Hiragaら(1989))、および大腸菌におけるparC突然変異(Stewar
t and D'Ari(1992))から生じ得る。遺伝子産物はトランスで供給され得る。例えば、高
コピー数プラスミドから過剰発現されると、CafAは細胞分裂速度を高める、および/また
は、複製後の染色体分配を阻害し(Okadaら(1994))、その結果、連鎖細胞および無核
ミニ細胞が形成される(Wachiら(1989);Okadaら(1993))。
【0035】
したがって、ミニ細胞は、グラム陽性またはグラム陰性起源のものであれば、任意の細
菌細胞から本開示のために調製することができる。さらに、本開示において使用されるミ
ニ細胞は、上記のように、無傷の細胞壁を有し得(すなわち、「無傷のミニ細胞」であり
)、特定の遺伝子再配列またはエピソーム遺伝子発現に起因しない膜ブレブのような他の
小さな小胞とは異なり得る。
【0036】
したがって、いくつかの態様において、親(供給源)細菌は、テラ-/グリドバクテリ
ア(BV1)、プロテオバクテリア(BV2)、並びにスピロヘータ、スフィンゴバクテリアお
よびプランクトバクテリアを含むBV4から選択される1つ以上の細菌を含み得る。いくつ
かの態様において、細菌は、バチルス、クロストリジウムまたはテネリクテス/モリクテ
スなどのファーミクテス(BV3)、またはアクチノマイセス目またはビフィドバクテリム
目などのアクチノバクテリア(BV5)から選択される1つ以上を含むことができる。
【0037】
いくつかの態様において、細菌は、エオバクテリア(クロロフレクサス属、デイノコッ
カス-テルムス)、シアノバクテリア、テルモデスルホバクテリア、好熱菌(アクウィフ
ィクス門、テルモトガ門)、アルファ、ベータおよびガンマ(腸内細菌科)、デルタまた
はイプシロンプロテオバクテリア、スピロヘータ、フィブロバクター門、クロロビ/バク
テロイデス門、クラミジア/ベルコミクロビウム門、プランクトマイセス門、アシドバク
テリウム門、クリシオゲネス門、デフェリバクター属、フソバクテリウム門、ゲンマティ
モナス門、ニトロスピラ門、シネルギステス門、ディクチオグロミ門、レンティスファエ
ラ門、バチルス目、バチルス科、リステリア科、スタフィロコッカス科、ラクトバチルス
目、エンテロコッカス科、ラクトバチルス科、ロイコノストック科、ストレプトコッカス
科、クロストリジウム目、ハラネロビウム目、テルモアエロバクター目、マイコプラズマ
目、エントモプラズマ目、アナエロプラズマ目、アコレプラズマ目、ハロプラズマ目、ア
クチノマイセス科、アクチノマイセタセス科、コリネバクテリウム亜門、マイコバクテリ
ウム科、ノカルジア科、コリネバクテリウム科、フランキア属、フランキア科、ミクロコ
ッカス科、ブレビバクテリウム科およびビフィドバクテリウム科から選択される1つ以上
を含むことができる。
【0038】
薬学的使用のために、本開示の組成物は、免疫原性成分および他の毒性混入物からでき
るだけ徹底的に単離されたミニ細胞を含み得る。遊離エンドトキシンおよび親細菌細胞を
除去するために細菌由来ミニ細胞を精製するための方法論が、以下にさらに詳細に記載さ
れ、WO2004/113507にも記載れており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる
【0039】
グラム陰性菌由来のミニ細胞の他の構造要素は、リポ多糖(LPS)のO-多糖成分で
あり、これはリピドAアンカーを介して外膜に埋め込まれている。この成分は、1鎖あた
り4から5個の糖の70から100個までの反復単位を有する、反復炭水化物残基単位の鎖であ
る。これらの鎖は、インビボのように液体環境では剛直ではないので、それらは波状の柔
軟な構造をとることができる。
【0040】
以下にさらに詳細に論じるように、本開示のミニ細胞は、送達が望まれる少なくとも1
つの核酸アジュバントまたは核酸アジュバントをコードするプラスミド、ならびに少なく
とも1つの核酸センサーのアゴニストを含み得る。本開示の核酸アジュバントおよび核酸
センサーのアゴニストは、同族受容体に結合し、所望の免疫応答(例えば、IFN免疫応答
)を生じさせることができる。本開示の核酸アジュバントおよび核酸センサーのアゴニス
トの両方が、以下により詳細に考察される。
【0041】
さらに、いくつかの態様において、本開示は、少なくとも1つの核酸アジュバント分子
、少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメントを含むプラスミド、ま
たは核酸センサーの少なくとも1つのアゴニストを含む無傷のミニ細胞に標的細胞を接触
させることを含んでなり、標的細胞がミニ細胞を飲み込むものである、少なくとも1つの
核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを標的細胞に送達する方法を提供する
。標的細胞によるミニ細胞の飲み込みに続いて、核酸アジュバント分子または核酸センサ
ーのアゴニストは、標的細胞の細胞質に放出されるか、または標的細胞によって発現され
る。WO2005/056749に記載されているように、ミニ細胞を二重特異性リガンドを介して標
的細胞と接触させることができる。ミニ細胞と標的細胞との間の接触はインビトロまたは
インビボであってよい。
【0042】
b.核酸アジュバント
本開示の目的のために、「核酸アジュバント」は、標的細胞中の核酸センサーまたは受
容体(すなわち、同族受容体)に結合および/または活性化し、望ましい免疫応答を誘発
する核酸(すなわち、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド)である。核酸アジュ
バントは、DNA、RNA、および/または合成ヌクレオチドを含み得る。さらに、核酸
アジュバントは、一本鎖(ss)または二本鎖(ds)であり得、ヘアピンループ、三重鎖、
および四重鎖などのより複雑な核酸立体配座を含み得る。例えば、いくつかの態様におい
て、開示された核酸アジュバントは、ssDNA、dsDNA、ssRNA、またはdsRNAであり得る。
【0043】
さらに、本開示の核酸アジュバントは様々な長さであり得る。特に、核酸は非常に小さ
いもの、例えばジヌクレオチドであり得る。言い換えれば、核酸アジュバントは、約2、
約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約1
7、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30
、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、
約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約
57、約58、約59または約60以上のヌクレオチドからなる長さを有する。
【0044】
あるいは、核酸は、長さが約27ヌクレオチドより大きく、単一の無傷のミニ細胞中で最
大約4~約5KBのサイズを有し得る。本発明のいくつかの態様において、細菌ミニ細胞
中に存在する核酸は、約27、約28、約29、約30、約35、約40、約50、約60、約75、約100
、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1500、約2000
、約2500、約3000、約3500、約4000、約4500または約5000のヌクレオチドからなる長さを
有することができる。
【0045】
最近の進歩により、哺乳動物細胞中の受容体によって感知される多数の核酸が同定され
た。同族受容体へのこれらの核酸の結合は、1型および2型インターフェロンの誘発をも
たらす。これらのインターフェロンは(Junt and Barchet, 2015に概説)抗腫瘍効果の増
強におけるアジュバントとして機能することができる。
【0046】
例えば、Toll様受容体(TLR)ファミリーの核酸センサーはエンドソームに限定されて
おり(Blasiu sand Beutler, 2010)、少数の細胞型、主に自然免疫系の細胞型によって
選択的に発現される(図1参照)。TLRは、管腔側のアミノ末端ロイシンリッチリピート(
LRR)および細胞質Toll/IL-1R(TIR)ドメインからなる膜貫通タンパク質である。
【0047】
特に、TLR3は二本鎖RNA(dsRNA)によって活性化される。TLR7は一本鎖RNA(ssRNA
)と短いdsRNAを検出する。TLR8は短いssRNAおよびssRNA分解産物に結合する(Tanjiら(
2015))。一方、TLR9は、細菌DNAに一般的に見られる非メチル化CpGモチーフを含むDNA
を感知する(Ohtoら(2015))。
【0048】
TLR7、TLR8およびTLR9において、TIRドメインは、アダプタータンパク質骨髄分化一次
応答タンパク質88(MYD88)を凝集させることによってシグナル伝達を開始する。
MYD88に依存するシグナル伝達カスケードの活性化は、最終的に、核因子-κB(NF-κB)
の活性化、および炎症誘発性サイトカインをコードする遺伝子の転写をもたらす。
【0049】
形質細胞様樹状細胞(pDC)において排他的に、MYD88シグナル伝達複合体は、IFN調
節因子7(IRF7)の直接活性化を介して様々なインターフェロン-α(IFNα)サブタイ
プをコードする遺伝子の十分な転写を誘導することができる。
【0050】
対照的に、TLR3は、TIRドメイン含有アダプタータンパク質誘導IFNβ(TRIF)を介して
シグナル伝達し、それによりNF-κB、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)お
よびIRF3シグナル伝達を活性化し、結果としてIFNBおよび炎症誘発性サイトカインの転写
をもたらす(Hornung(2014)))。
【0051】
したがって、いくつかの態様において、本開示の核酸アジュバントは、TLR7、TLR8およ
び/またはTLR9に結合してそれらを活性化し得る。核酸アジュバントは、免疫細胞および
非免疫細胞を含む様々な細胞型においてこれらの受容体に結合してそれらを活性化するこ
とができる。例えば、いくつかの態様において、核酸アジュバントは、単球、マクロファ
ージ、樹状細胞(例えば、pDC、従来の樹状細胞、または骨髄性樹状細胞)を含み得るが
これらに限定されない、T細胞および/または単球細胞などの免疫細胞を標的とし得る。
【0052】
いくつかの態様において、本開示の核酸アジュバントは、TLR3に結合してそれを活性化
し得る。これらの態様において、核酸アジュバントは、また、免疫細胞または非免疫細胞
を標的とし得る。
【0053】
開示された核酸アジュバントによって活性化され得る別のセットのRNAおよびDNAセンサ
ーは、免疫細胞および非免疫細胞のサイトゾルにおいて広く発現される(図1を参照)。
DExD/H-ボックスヘリカーゼであるレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)およびメラノー
マ分化関連タンパク質5(MDA5)が、相補性dsRNA構造を検出する。RIG-IおよびMDA5は、
いずれも、カルボキシ-末端リガンド結合ドメイン、セントラルDEAxD/H-ボックスヘリカ
ーゼドメインおよびN-末端カスパーゼ活性化および動員ドメイン(CARD)からなる。これ
らのCARDは、ミトコンドリア外膜上のシグナル伝達アダプターミトコンドリア抗ウイルス
シグナル伝達タンパク質(MAVS)の類似のCARDと連動し、それにより、MAVSの多量体化お
よびMAVSシグナル伝達複合体の活性化をもたらす(Houら(2011))。
【0054】
RIG-Iは短いdsRNAの5'三リン酸化または5'二リン酸化末端により活性化される(Hornun
gら(2006);Goubauら(2014))。MDA5は、dsRNAおよび分岐高分子RNA形を結合する
と考えられている(Katoら(2008);Pichlmairら(2009))。
【0055】
したがって、いくつかの態様において、本開示の核酸アジュバントは、RIG-1および/
またはMDA5に結合してそれらを活性化し得る。これらの態様において、核酸アジュバント
は、また、免疫細胞または非免疫細胞を標的とし得る。
【0056】
開示された核酸アジュバントによって活性化され得る別の細胞質センサーは、dsDNAに
対する受容体であるサイクリックGMP-AMP(cGAMP)シンターゼ(cGAS)である(Sunら(2
013))。リガンド結合時に、cGASは、小胞体(ER)上でのIFN遺伝子の刺激因子(
STING)を活性化するためのセカンドメッセンジャーとして機能する非標準連結環状
ジヌクレオチド(CDN)[G(2',5')pA(3',5'-)p](2'3'-cGAMP)を生成する(Wuら(2
013);Gaoら(2013))。
【0057】
したがって、いくつかの態様において、本開示の核酸アジュバントは、cGASに結合
してそれを活性化し得る。これらの態様において、核酸アジュバントは、また、免疫細胞
または非免疫細胞を標的とし得る。
【0058】
これとは対照的に、メラノーマ2(AIM2)では欠如しているが、開示された核酸アジュ
バントによって活性化され得るdsDNAに対する別の細胞質受容体が、IFNではなくIL-1βお
よびIL-18の放出を引き起こす。
【0059】
したがって、いくつかの態様において、本開示の核酸アジュバントは、AIM2に結合
してそれを活性化し得る。これらの態様において、核酸アジュバントは、また、免疫細胞
または非免疫細胞を標的とし得る。
【0060】
最近の研究は、核内のdsDNAを検出して免疫シグナル伝達を引き起こす細胞DNAセン
サーの存在を確立した。これらのDNAセンサーの作用は、主に細胞質とエンドソームで研
究されてたが、新たな証拠により焦点が核に移っている。
【0061】
IFI16(インターフェロン誘導タンパク質16)は、主にタンパク質-タンパク質相互作用
に関与する、C末端にDNA結合ドメインおよびN末端にPYRINドメインを含む200アミノ酸モ
チーフを特徴とする高度に相同なHIN-200(造血発現-インターフェロン誘導性-核局在
化)タンパク質ファミリーに属するDNAセンサー(Dawson and Trapani(1995))であ
る。IFI16は、核内で、そして細胞質内でも機能することが示された最初のウイルスDN
Aセンサーである(Dawson and Trapani(1995);Unterholznerら(2010))。IFI16細
胞内局在は、細胞型、翻訳後修飾および細胞処理によって影響を受ける。
【0062】
例えば、病原体の侵入は、細胞質内にIFI16病巣を形成させ、インターフェロンβ(IFN
B)遺伝子発現を誘導し(Unterholznerら(2010))、UV光は、核から細胞質へのIFI16の伝達
を引き起こす(Costaら(2011))。
【0063】
IFI16のDNA感知能力は、インターフェロン遺伝子の刺激因子との相互作用によるイ
ンターフェロンβ発現の活性化(Unterholznerら(2010))、およびインターフェロンα発現
(Thompsonら(2014))に関連する。DNAへのIFI16の結合は、配列特異的でもAT含有量
依存性でもないが、DNA長さ依存性が強い(Unterholznerら(2010))。
【0064】
結晶学的研究によると、IFI16 HIN-B二本鎖DNAインターフェースは、負に帯電した糖-
リン酸骨格と正に帯電したタンパク質残基との間の静電相互作用を介して達成される(Ji
nら(2012))。長いプラスミドDNAに結合するIFI16が研究され、線状形態よりもスー
パーコイルに、二本鎖DNAよりも十字型構造に優先されることが観察された(Brazdaら
(2012))。
【0065】
IFI16は、四重鎖DNAの形成および安定化に対してプラスの効果を有する四重鎖DN
Aへの優先的な結合を示す(Haronikovaら(2016))。非免疫細胞型にわたって、IFI16は
主に核に局在する(Dinerら(2015);Liら(2012)(2013);Orzalliら(2012))。
【0066】
したがって、いくつかの態様において、本開示の核酸アジュバントは、IFI16に結合し
てそれを活性化し得る。これらの態様において、核酸アジュバントは、また、免疫細胞ま
たは非免疫細胞を標的とし得る。
【0067】
上記のものに加えて、いくつかの他の核酸センサーが当該分野において記載されている
。同族受容体(すなわち、核酸センサー)に結合するように設計された核酸アジュバント
を含む開示されたミニ細胞送達ベクターを用いて、任意の既知の核酸センサーを活性化ま
たは標的化できることを当業者は理解するであろう。したがって、開示された組成物によ
って標的化または活性化され得る核酸センサーは特に限定されない。
【0068】
本開示の目的のために、いくつかの態様において、ミニ細胞送達ベクターは少なくとも
1つの核酸アジュバントを含み得る。例えば、ミニ細胞送達ベクターは、少なくとも1、
少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少
なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10の異なる核酸アジュバントを含み得る。い
くつかの態様において、開示のミニ細胞送達ベクターは、少なくとも1つの核酸アジュバ
ントおよび少なくとも1つの核酸センサーのアゴニストの両方を含み得る。
【0069】
c.核酸感知経路アゴニスト
本開示の目的において、「核酸センサーのアゴニスト」は、前のセクションで開示され
たものに限定されるものではないが、既知の核酸センサーを作動させることができる天然
または合成の化合物であり、所望の免疫応答(すなわち、IFN応答)を誘発するために
使用することができる。
【0070】
例えば、酵素ポリヌクレオチドホスホリラーゼ(PNPase1)のポリヌクレオチド産物が
、IFN活性の合成誘導物質として研究されている(Fieldら(1967))。同様に、dsRNA模
倣ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリ(I:C))は、TLR3およびMDA5の両方に対す
るアゴニストとして機能することが示されている(Alexopoulouら(2001);Gitlinら(2006
))。
【0071】
RNase抵抗を増すためにポリ-l-リシンが処方されたポリ(I:C)の類似体であるポリIC
LCが、最近、有望な癌ワクチンアジュバントとして評価されている(Ammiら(2014)に概説
)。
【0072】
核酸センサーの小分子アゴニストも開発されている。例えば、イミダゾキノリン誘導体
であるイミキモドは、TLR7のアゴニストである(Hemmiら(2002))。これは、基底細胞
癌および光線性角化症などの皮膚腫瘍の治療に有効であることが示されている。炎症誘発
性サイトカインの局所的誘導、免疫細胞の局所的動員、ならびにTヘルパー1(TH1)およ
びCD8+T細胞応答の誘導のための抗原提示の改善は、すべてイミキモドの投与から生じる
が、治療の成功にとって重要であると考えられている。
【0073】
アゴニストは、また、2つの以上の核酸センサーに結合することができる。例えば、イ
ミダゾキノリンレシキモドは、TLR7とTLR8の二重アゴニストである。したがって、ヒトで
は、レシキモドはさらなる細胞型を活性化し、広範囲のサイトカインを誘発する性能があ
る。欠点は、これが、おそらく臨床試験で観察される全身性有害作用のより頻繁な発生に
寄与することであり得る(HuenandRook(2014))。
【0074】
ヒトSTINGに対するアゴニストを開発する試みがなされており、これらは、ワクチンア
ジュバント特性を有することが最近示されている生理学的アゴニスト2'3'-cGAMPをモデ
ルとしている(Liら(2013))。
【0075】
合成オリゴヌクレオチドを、核酸センサーのアゴニストとして設計および使用すること
もできる。例えば、TLR9-刺激性合成CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG-ODN)が、ヒ
トDNAとは対照的に、非メチル化CpGモチーフが豊富である細菌DNAの免疫刺激特性に基づ
いて設計された(Kriegら(1995))。シーケンス特徴および骨格修飾の最適化により、B細
胞またはpDCを優先的に活性化するCpG-ODNサブタイプが得られた。化学療法と組み合わせ
てまたは治療用ワクチン中で、CpG-ODNの抗腫瘍活性を決めるために、複数の臨床試験が
進行中である。
【0076】
最近のデータが、ワクチンアジュバントの前臨床試験において複数の核酸受容体が共同
で関与することが最も強力な免疫反応を誘発することを示しているので、異なるアゴニス
トを組み合わせて用いることがより有益であると分かるかも知れない(Goffら(2015);Te
mizozら(2015))。
【0077】
このように、いくつかの態様において、ミニ細胞送達ベクターは、核酸センサーの少な
くとも1種のアゴニストを含むことができる。例えば、ミニ細胞送達ベクターは、少なく
とも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくと
も7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10の核酸センサーの異なるアゴニス
トを含むことができる。いくつかの態様において、開示のミニ細胞送達ベクターは、少な
くとも1つの核酸アジュバントおよび少なくとも1つの核酸センサーのアゴニストの両方
を含み得る。
【0078】
d.核酸アジュバントをコードする核酸
本開示のいくつかの態様において、開示されたミニ細胞送達ベクターは、少なくとも1
つの核酸アジュバントをコードする核酸を含むことができる。例えば、プラスミドは、標
的細胞(すなわち、哺乳動物細胞または免疫細胞)の内部に発現される核酸アジュバント
をコードしてもよい。これは、核酸アジュバントの内因性送達を可能にし、これは、いく
つかの疾患の治療のためには、外因性送達の一時的な性質よりも有利であり得る。
【0079】
したがって、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9、RIG-1、MDA5、AIM2、cGASまたはIFI16に結合す
るおよび/またはこれらを活性化することができる二本鎖または一本鎖RNAまたはDNAに限
定されるものではないが、これらを包含する1以上の核酸アジュバントをコードするプラ
スミドDNAを、細菌由来の無傷のミニ細胞は有することができる。複数の核酸アジュバン
トをコードするミニ細胞を使用して、患者において強力な免疫応答を生じさせることが可
能である。例えば、第一の核酸アジュバントはU6プロモーターから発現させることがで
き、第二の核酸アジュバントはH1プロモーターから発現させることができる。これらの
複数の発現カセットは単一のプラスミド上に担持されてもよいが、異なるプラスミド上に
も存在してもよい。
【0080】
いくつかの態様において、異なる核酸アジュバントを単一のプロモーターから発現させ
ることができ、ここで、組換えプラスミドは、非コードポリヌクレオチド配列を介して一
緒に連結されている複数の核酸アジュバント配列からなる発現カセットを担持する。単一
遺伝子転写ターミネーターを完全発現カセットの下流に配置することができる。
【0081】
いくつかの態様において、プラスミドは、標的細胞内で発現させた後に機能性核酸アジ
ュバントを形成するようにハイブリダイズする2つの独立した転写物としてdsRNAまたはd
sDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖をコードすることができる。いくつかの態様におい
て、プラスミドは、それぞれが短いヘアピンステム-ループ構造を形成する単一の転写物
として発現される1つまたは複数のdsRNAまたはdsDNAをコードする。ヘアピン構造は、細
胞内の他の酵素によって処理されて機能的核酸アジュバントを生成し得る。
【0082】
このセクションに記載されている手法を介して導入される核酸アジュバント分子をコー
ドする核酸は、プロモーター、ターミネーター、エンハンサーおよび/またはシグナルシ
ーケンスなどの調節要素に作動可能に連結された所望のコーディングセグメントを有する
こともできる。適切なプロモーターは、治療の文脈が指示するように、組織特異的または
さらに細胞特異的であり得る。
【0083】
本開示の目的のために、シグナル配列を用いて、発現産物の分泌または発現産物の特定
の細胞区画への局在化を達成することができる。したがって、無傷のミニ細胞を介して送
達される治療用核酸アジュバント分子をコードする核酸(すなわちプラスミド)は、適切
な読み枠においてシグナル配列を含むことができ、それにより、目的の発現産物は、飲み
込み細胞またはその子孫によって分泌され、それによって、選択された治療パラダイムに
従って、周囲の細胞に影響を及ぼす。例示的なシグナル配列としては、米国特許第5,143,
830号に記載のヘモリシンC末端分泌配列、米国特許第5,037,743号に開示のBAR1分泌配列
、および米国特許第6,025,197号に記載のzsig32ポリペプチドのシグナル配列部分が挙げ
られる。
【0084】
e.レポーター要素
開示されたミニ細胞送達ベクターを介して送達される核酸アジュバント分子または核酸
センサーのアゴニストは、さらにレポーター要素を含むことができる。レポーター要素は
、典型的には、発現時に組織学的またはインビボイメージング技術などのインサイチュ分
析によって検出することができるが宿主によっては産生されないポリペプチドをコードす
ることによって、その標的宿主細胞上に容易に検出可能な表現型または特徴を付与する。
例えば、本開示によれば、無傷のミニ細胞によって送達されるレポーター要素は、インサ
イチュ分析によって検出可能であると共に転写活性化の定量的または半定量的機能である
比色または蛍光変化を飲み込み宿主細胞において産生するタンパク質をコードすることが
できる。これらのタンパク質の実例はエステラーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼおよ
び他の酵素であり、それらの活性は検出可能な発色団または発蛍光団を生成する。
【0085】
レポーター要素の好ましい例としては、これらに限定されないが、インジゴ基質の切断
を介して色の変化をもたらす大腸菌β-ラクトシダーゼ、インドリル-β-D-ガラクトシド
、および長鎖アルデヒドを酸化(バクテリアルシフェラーゼ)または複素環式カルボン酸
を酸化(ルシフェリン)して、同時に光を放出する、ルシフェラーゼが挙げられる。これ
に関連して、Prasherら(1995)によって記載されているように、クラゲAequorea victoria
の緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレポーター要素も有用である。GFP関連技術の
分野は、2つの公開されたPCT出願、すなわち、WO95/21191(アミノ酸65から67までか
ら形成される発色団を含有する238アミノ酸のGFPアポタンパク質をコードするポリヌクレ
オチド配列を開示する)およびWO95/21191(変更された蛍光特性を有するペプチドを提供
する、A.ビクトリアGFPのアポペプチドに対するcDNAの修飾を開示する)により、およ
び、励起振幅の4から6倍の改善を特徴とする突然変異体GFPについてのHeimらの報告(19
94)により、説明される。
【0086】
レポーター要素として使用するための他の遺伝子は、顕著な細胞表面抗原を発現するよ
うにミニ細胞送達ベクターの標的細胞を形質転換することができるものを含み、例えば、
HIV gp120またはヘルペスgDのようなウイルスエンベロープタンパク質であり、イムノ
アッセイによって容易に検出可能である。
【0087】
f.ミニ細胞における核酸アジュバントの包装
核酸によってコードされ得る核酸アジュバントは、核酸アジュバントをコードするプラ
スミドのようなベクターにおいて親細菌細胞内へコード化核酸を形質転換することにより
、ミニ細胞に導入することができる。ミニ細胞が親細菌細胞から形成されるとき、ミニ細
胞は、プラスミドおよび/または発現産物である核酸アジュバントの特定のコピーを保持
する。発現産物をミニ細胞に包装することのさらなる詳細は、WO03/033519に
提供されており、その内容はその全体が参照により本開示に組み込まれる。
【0088】
核酸アジュバントは、ミニ細胞に直接包装することもできる。従って、核酸アジュバン
トは、緩衝液中で複数の無傷ミニ細胞を核酸アジュバントと同時インキュベートすること
によって無傷ミニ細胞に直接包装することができる。無傷のミニ細胞内への核酸アジュバ
ントの負荷を最適化するために、緩衝液組成をこの分野で周知の条件の関数として変える
ことができる。緩衝液は、ヌクレオチド配列およびミニ細胞内に負荷される核酸アジュバ
ントの長さに応じて変えることもできる。一旦包装されると、核酸はミニ細胞内に残り、
分解から保護される。滅菌食塩水中でインキュベートしたsiRNA包装ミニ細胞を用いた長
期インキュベーション研究は、例えば、siRNAの漏出がないことを示した。
【0089】
いくつかの態様において、複数の核酸アジュバントは、同じミニ細胞に包装することが
できる。そのようなアプローチは、患者において強力な免疫応答を生じさせるために使用
され得る。例えば、癌患者は日常的に先天性免疫応答を回避することができる腫瘍を呈す
る。この回避に対抗するために、ミニ細胞を、免疫細胞(例えば、T細胞、樹状細胞、ま
たは単球)に対する治療上有効な濃度の核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニス
トと共に包装して、免疫系を刺激して癌細胞を検出および破壊することができる。さらに
、同じミニ細胞中への多数の核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストの包装は
、多くの同族受容体が異なるシグナル伝達経路に属し、IFNαまたはIFNβを含む種
々のサイトカインまたはケモカインの産生および分泌を誘導し得るので、治療の成功を高
めることができる。核酸をミニ細胞に直接包装することのさらなる詳細は、WO2009/02783
0に提供されており、その内容は参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
【0090】
核酸センサーのアゴニストを含む小分子薬物は、親水性であっても疎水性であっても、
ミニ細胞を含む細胞外媒体とミニ細胞の細胞質との間に薬物の濃度勾配を作成することに
よって、ミニ細胞に包装することができる。細胞外培地がミニ細胞質よりも高い薬物濃度
を含む場合、薬物は自然にこの濃度勾配を下ってミニ細胞質に移動する。しかしながら、
濃度勾配が逆転すると、薬物はミニ細胞から出ない。
【0091】
g.標的細胞へのミニ細胞の誘導
本開示の目的において、組成物のミニ細胞は、上述したように、リガンドを介して標的
細胞に導かれる。標的細胞は哺乳動物細胞、特にヒト細胞を含み得る。標的細胞は免疫細
胞または非免疫細胞であり得るが、好ましい態様において、標的細胞はT細胞、単球、樹
状細胞および/またはマクロファージなどの免疫細胞である。
【0092】
いくつかの態様において、リガンドは「二重特異性」である。すなわち、リガンドは、
ミニ細胞と標的(例えば、免疫)細胞成分の両方に対して特異性を示し、それにより、所
与のミニ細胞を標的細胞に結合させ、それによって後者が前者を飲み込む。ミニ細胞を腫
瘍細胞に標的化するための二重特異性リガンドの使用が、WO05/056749およびWO05/079854
にさらに記載されており、それらのそれぞれの内容は参照により全体として本明細書に組
み入れられる。そのようなリガンドがミニ細胞に付着すると、それが標的細胞と相互作用
するまで、リガンドの占有されていない特異性(「単一特異性」)が付随する。
【0093】
リガンドはミニ細胞またはその親の中から発現させることができ、その後ミニ細胞表面
に提示される。あるいは、リガンドは、例えばリガンド-受容体相互作用によって、ミニ
細胞の細胞膜に付着(「被覆」)することができる。いずれの場合も、リガンドはミニ細
胞に対する特異性を必要とせず、標的細胞に特徴的な成分に対する特異性を示すだけであ
る。すなわち、そのような成分は、標的細胞がそれらの細胞表面上に成分を提示する限り
、標的細胞それ自体、または標的とされている特定の種類の免疫細胞に固有である必要は
ない。
【0094】
いくつかの態様において、本開示の投与された組成物中に含まれるミニ細胞送達ベクタ
ーは、標的型の細胞と接触して結合し、細胞へのそれらの取り込みを誘発し、次いでそれ
らは治療ペイロードによって影響を受ける。そのペイロードは、少なくとも1つの核酸ア
ジュバントおよび/または少なくとも1つの核酸センサーのアゴニストであり得る。
【0095】
本発明者らは、この標的送達アプローチは、ミニ細胞の特異的な接着およびエンドサイ
トーシスに通常不応性である細胞を含む哺乳動物標的細胞の範囲に広く適用可能であるこ
とを見出した。したがって、標的とされる細胞の種類は特に限定されない。実際、標的細
胞へのミニ細胞の結合は、非食細胞でさえもミニ細胞の急速なエンドサイトーシスに先行
する。しかしながら、いくつかの態様において、本開示に適した標的細胞は、リガンドの
結合時にエンドサイトーシスまたはマクロピノサイトーシスを促進する細胞表面受容体の
発現を特徴とする。
【0096】
「エンドサイトーシス」という用語は、(1)食作用および、それ自体マクロピノサイ
トーシス(2a)を含むカテゴリである(2)ピノサイトーシスを含み、そのすべてが後期
エンドソーム/リソソーム経路にアクセスする傾向がある。ミニ細胞上のリガンドと哺乳
動物細胞表面受容体との間の相互作用が、後期エンドソーム/リソソーム区画への受容体
媒介エンドサイトーシス(rME)を含む特定のエンドサイトーシス経路を活性化するこ
とを、本発明者らは発見した。このようなエンドサイトーシス経路のおかげで、本発明者
らは、ミニ細胞がそれらのペイロードを標的哺乳動物細胞の細胞質に放出することができ
ることをさらに発見した。ペイロードがコード化核酸である場合、核酸は後期エンドソー
ム/リソソーム区画中で完全に分解されないだけでなく、標的哺乳動物細胞中でも発現さ
れる。
【0097】
本開示に基づき、上記標的送達アプローチにおいて有用なリガンドは、標的細胞上の表
面成分およびミニ細胞の表面成分に結合する任意の薬剤を含む。いくつかの態様において
、標的細胞上の表面成分は受容体である。リガンドは、ポリペプチドおよび/または炭水
化物成分を含み得る。いくつかの態様において、抗体は好ましいリガンドである。
【0098】
例えば、標的哺乳動物細胞上の免疫細胞マーカーなどの表面成分に対する特異性を有す
る抗体は、ミニ細胞を標的細胞に標的化して免疫応答を生じさせるように効率的に使用す
ることができる。
【0099】
いくつかの態様において、好ましいリガンドは、抗体および/または抗体誘導体を含む
。その現在の使用において、「抗体」という用語は、インビトロまたはインビボでの免疫
原性応答の発生によって得られる免疫グロブリン分子を包含する。したがって、「抗体」
カテゴリは、モノクローナル抗体およびヒト化抗体、ならびに一本鎖抗体フラグメント(
scFv)、二重特異性抗体などの抗体誘導体を含む。多数の異なる二重特異性タンパク
質および抗体ベースのリガンドが知られており、Caravella and Lugovskoy(2010)の総説
によって証明されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本開示にお
いて有用な抗体および抗体誘導体は、組換えDNA技術によって得ることもできる。
【0100】
本開示は、所望の有益な免疫応答が宿主において誘発されるように、哺乳動物宿主の所
望の細胞内に治療上有意な濃度の核酸アジュバントまたは核酸受容体アゴニストを送達す
ることができる、二重特異性リガンド標的化核酸アジュバントおよび/または核酸受容体
アゴニスト包装ミニ細胞含有組成物を提供する。
【0101】
2.治療方法
本明細書に提供されるのは、開示されたミニ細胞送達ベクターを用いて様々な疾患また
は状態を治療または予防する方法である。いくつかの態様において、治療または予防され
る疾患は、腫瘍、癌、悪性疾患、または癌細胞の増殖を含む。いくつかの態様において、
治療または予防される疾患はウイルス感染症などの感染症である。より具体的には、本開
示は、IFN免疫応答、特に1型インターフェロンの産生を活性化する方法を提供する。
このような方法は、少なくとも1つの核酸アジュバントおよび/または核酸センサーの少
なくとも1つのアゴニストを含む開示されたミニ細胞送達ベクターの治療有効量を投与す
ることを含み得る。
【0102】
開示された方法は、少なくとも1つの核酸アジュバント、少なくとも1つの核酸アジュ
バントをコードする核酸、または核酸センサーのアゴニストを含む無傷のミニ細胞を投与
することによって、免疫系を刺激して異物または病原体細胞(すなわちウイルス、ウイル
スに感染した細胞、癌細胞など)を認識および/または破壊するために用いることができ
る。
【0103】
いくつかの態様において、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含む開
示されたミニ細胞の投与は、直接的に異物や病原性細胞を殺すことを意図するものではな
い。むしろ、そのようなミニ細胞の投与は、他の治療薬の治療効果を補助することを意図
している。
【0104】
例えば、いくつかの態様において、対象に、核酸アジュバントまたは核酸センサーのア
ゴニストを含有する開示されたミニ細胞の第1の用量、および別の治療薬(すなわちsiRN
Aまたは別の生物学的化合物)または薬物を含有するミニ細胞の第2の用量を投与すること
ができる。いくつかの態様において、第2の用量は化学療法剤などの細胞傷害性薬物を含
むことができ、いくつかの態様において、第1および第2の用量は異なる細胞型を標的と
することができる。例えば、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含有す
る第1の用量で使用するためのミニ細胞は、免疫細胞を標的とすることができ、化学療法
薬を含有する第2の用量で使用するためのミニ細胞は、腫瘍細胞を標的とすることができ
る。核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含む開示されたミニ細胞の投与
と同時投与または前後に投与される化学療法剤および薬物は、別のミニ細胞または別の種
類の標的粒子に包装することができる、または、化学療法剤および薬物をカプセル化され
ていない自由状態で投与することができる。
【0105】
さらに、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含む開示されたミニ細胞
は、癌の治療のための放射線療法を受けている、受けたまたは受ける予定の対象に投与す
ることができる。実際、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含む開示さ
れたミニ細胞は、例えば、対象の生来の抗腫瘍免疫防御を高めることによって、任意の既
知の形態の癌治療を増強することができる。
【0106】
実際に、開示された方法は、単一無傷ミニ細胞に、長さが約27ヌクレオチドより大きい
オリゴヌクレオチドを約4~約5KBまで投与することを可能にする。他の態様において、
核酸は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13
、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、
約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約
40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53
、約54、約55、約56、約57、約58、約59または約60以上のヌクレオチドからなる非常に小
さな長さであり得る。
【0107】
これらのオリゴヌクレオチドは、I型インターフェロン(IFNαおよびIFNβ)の産生の
形で免疫調節を誘発することができる。I型インターフェロンの産生は、アジュバント効
果を生み出し、癌および/または感染症を治療するのを助けることが示されている。した
がって、いくつかの態様において、核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを
含有する開示されたミニ細胞を他の治療薬または薬物と共に投与することは、他の治療薬
または薬物を単独で投与することよりも高い抗腫瘍効果をもたらす。
【0108】
開示された方法は、直接タイプIインターフェロンを投与することが困難であることが
知られているように、従来技術に対する劇的な改善である。インターフェロンは循環中の
半減期が短く、インターフェロンの静脈内投与は一般に重篤な副作用をもたらす。したが
って、開示された方法は、生理学的に許容される方法で治療有効レベルのインターフェロ
ンの産生を促進する新規な手段を提供する。
【0109】
開示されたミニ細胞は、特異的な免疫細胞を直接標的とすることができる、またはそれ
らは、非標的化することができる。いくつかの態様において、非標的化無傷ミニ細胞は、
マクロファージまたは他の単球細胞において貪食され、それによってこれらの細胞におい
て所望の免疫調節を惹起する。
【0110】
理論に縛られることなく、開示された方法は、1型インターフェロン産生を活性化する
ことによって作用し、それは、癌細胞または感染細胞を殺すことができる免疫細胞を刺激
するように作用すると考えられている。免疫系は癌患者において抑制されることが多いこ
とが知られており、開示された方法は癌患者の免疫系を「目覚めさせる」手段を提供し得
る。
【0111】
したがって、いったんがん患者の免疫系が活発になると、細胞傷害性前線治療の成功は
より効果的になるだろう。実施例1および2に示すように、核酸アジュバントまたは核酸
センサーのアゴニストを含有する開示のミニ細胞を細胞傷害性薬物を含む無傷のミニ細胞
と対にすることは、薬物単独の治療よりも優れた有効性を提供する。
【0112】
以下でさらに詳細に議論されるように、本発明の製剤は、局所的または全身的に、所望
の治療効果を達成するために、様々な経路を介して、哺乳動物体内の様々な部位に投与す
ることができる。送達は、例えば、経口投与により、体腔への製剤の適用により、吸入も
しくは吹送により、または非経口、筋肉内、静脈内、ポータル内、肝内、腹腔内、皮下、
腫瘍内もしくは皮内投与により達成され得る。投与形態および投与部位は標的細胞の位置
に依存する。
【0113】
a.純度
本発明のミニ細胞は、汚染親細菌細胞を実質的に含まない。したがって、本発明のミニ
細胞含有製剤は、好ましくは、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、よ
り好ましくは、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、さらにより好まし
くは、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、なおより好ましくは、10
ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、最も好ましくは、1011ミニ細胞あ
たり約1未満の汚染親細菌細胞を含む。
【0114】
ミニ細胞の精製方法は、当該分野で公知であり、PCT/IB02/04632、WO2004/113507およ
び米国特許第8,591,862号に記載されている。そのような方法の1つは、クロスフロー濾
過(供給流が膜表面に対して平行である;Forbes、1987)と全量濾過(供給流が膜表面に
対して垂直である)とを組み合わせたものである。任意選択で、組み合わせ濾過は、細菌
細胞の一部を除去し、それによって上清をミニ細胞用に濃縮するために、低い遠心力での
分別遠心分離が先行することができる。
【0115】
別の精製方法は、生物学的に適合する培地中での密度勾配遠心分離を用いる。遠心分離
後、ミニ細胞バンドをグラジエントから収集し、任意に、ミニ細胞をさらなる密度勾配遠
心分離にかけて純度を最大にする。この方法は、ミニ細胞含有サンプルに対して分画遠心
分離を実施する予備工程をさらに含み得る。低遠心力で行うと、分画遠心分離によって親
細菌細胞の一部が除去され、それによって上澄みがミニ細胞用に濃縮される。
【0116】
特に効果的な精製方法は、ミニ細胞の純度を高めるために細菌のフィラメント化を利用
する。したがって、ミニ細胞精製方法は、(a)ミニ細胞を含有するサンプルを、親細菌
細胞が糸状形態をとるように誘導する条件に供し、続いて(b)サンプルを濾過して精製
ミニ細胞製剤を得る工程を含み得る。
【0117】
既知のミニ細胞精製方法を組み合わせることも可能である。たとえば、非常に効果的な
方法の組み合わせは次のとおりである。
【0118】
ステップA:細菌細胞培養物を産生するミニ細胞の分画遠心分離。この工程は、2000gで
約20分間実施することができ、上清中にミニ細胞を残しながら、ほとんどの親細菌細胞を
除去する。
【0119】
ステップB:等張性かつ非毒性の密度勾配媒体を用いた密度勾配遠心分離。このステッ
プは、ミニ細胞の損失を最小限に抑えながら、ミニ細胞を親細菌細胞を含む多くの汚染物
質から分離する。好ましくは、この工程は精製方法内で繰り返される。
【0120】
ステップC:0.45μmフィルターを通るクロスフロー濾過により、さらに親細菌細胞汚染
を低減する。
【0121】
ステップD:残留親細菌細胞のストレス誘発フィラメンテーション。これは、ミニ細胞
懸濁液をいくつかのストレス誘発性環境条件のいずれかにさらすことによって達成するこ
とができる。
【0122】
工程E:親細菌細胞を殺すための抗生物質処理。
【0123】
ステップF:膜ブレブ、膜断片、細菌破片、核酸、培地成分などのような小さな汚染物
質を除去するため、およびミニ細胞を濃縮するためのクロスフローろ過。小さな汚染物質
からミニ細胞を分離するために0.2μmフィルターを用いることができ、ミニ細胞を濃縮す
るために0.1μmフィルターを用いることができる。
【0124】
ステップG:糸状の死んだ細菌細胞を除去するための全量濾過。このステップのために0
.45μmフィルターを使用することができる。
【0125】
ステップH:ミニ細胞製剤からのエンドトキシンの除去。このステップのために、抗リ
ピドA被覆磁性ビーズを使用することができる。
【0126】
いくつかの態様において、精製プロセスは、(a)一般的にサイズが約0.2μmより小さ
い膜ブレブのような小さな小胞、(b)細胞膜から遊離した遊離エンドトキシン、および
(c)遊離エンドトキシンの供給源でもある、生きているか死んでいるかを問わない親細
菌およびそれらの破片、の除去を達成する。そのような除去は、とりわけ、より小さい小
胞および細胞片を除去するための0.2μmフィルター、親細胞を誘導してフィラメント
を形成した後に親細胞を除去するための0.45μmフィルター、生きた細菌細胞を殺す
ための抗生物質、および遊離のエンドトキシンに対する抗体、を用いて実施することがで
きる。
【0127】
開示された精製手順は、それらの細菌供給源の違いにもかかわらず、全ての無傷のミニ
細胞は、サイズが約400nmであり、すなわち、膜ブレブおよび他のより小さい小胞より大
きく、さらに親の細菌より小さい、という本発明者らによる発見に基づく。ミニ細胞のサ
イズ決定は、電子顕微鏡法などの固体状態を使用することによって、または液体ベースの
技術、例えば動的光散乱によって達成することができる。そのような各技法によってもた
らされるサイズ値は、誤差範囲を有する可能性があり、その値は技法間で多少異なる可能
性がある。従って、乾燥状態のミニ細胞の大きさは、電子顕微鏡によって約400nm±50nm
として測定することができる。他方、動的光散乱は、同じミニ細胞を約500nm±50nmの大
きさと測定することができる。また、薬物包装されたリガンド標的化ミニ細胞は、やはり
動的光散乱を使用して測定することができ、約500nm±50nmである。
【0128】
サイズ値のこのばらつきは、例えば上記のように免疫原性成分および他の毒性汚染物質
からミニ細胞を単離する目的で、実際には容易に適応される。すなわち、無傷の細菌由来
のミニ細胞は、ミニ細胞に剛性の球状構造を与える剛性の膜によって囲まれた細胞質によ
って特徴付けられる。この構造は、透過型電子顕微鏡写真において明らかであり、ミニ細
胞の直径は、ミニ細胞を横切って、剛性膜の外側限界の間で測定される。この測定により
、上述の400nm±50nmのサイズ値が得られる。
【0129】
グラム陰性細菌由来のミニ細胞の他の構成要素は、脂質Aアンカーを介して外膜に埋め
込まれているリポ多糖(LPS)のO-多糖成分である。その成分は、1鎖あたり4から5個の
糖の70から100個までの繰り返し単位を有する、繰り返しの炭水化物残基単位の鎖である
。これらの鎖は生体内のように液体環境では剛直ではないので、サンゴ海環境での海草の
一般的な外観を与える波状の柔軟な構造をとることができる、すなわち、鎖はミニ細胞膜
に固定されたまま液体により動く。
【0130】
O-多糖成分の影響を受け、動的光散乱は、上述のように約500nmのミニ細胞サイズの値
を提供することができる。それにもかかわらず、グラム陰性菌およびグラム陽性菌由来の
ミニ細胞は、同様に0.45μmフィルターを容易に通過し、これは400nm±50nmの有効ミニ細
胞サイズを実証する。上述のサイズのばらつきは、本発明に包含され、特に、「約400nm
のサイズ」などの語句の中の「約」という修飾子によって表される。
【0131】
有毒汚染物質については、本開示の組成物は、約350EU未満の遊離エンドトキシンを含
有することができる。これに関して例示的なものは、それぞれ、約250EU、約200EU、約15
0EU、約100EU、約90EU、約80EU、約70EU、約60EU、約50EU、約40EU、約30EU、約20EU、約
15EU、約10EU、約9EU、約8EU、約7EU、約6EU、約5EU、約4EU、約3EU、約2EU、約1EU、約0
.9EU、約0.8EU、約0.7EU、約0.6EU、約0.5EU、約0.4EU、約0.3EU、約0.2EU、約0.1EU、約
0.05EUおよび約0.01EUの遊離エンドトキシンのレベルである。
【0132】
本開示の組成物はまた、少なくとも約10個のミニ細胞、例えば少なくとも約5×10
個のミニ細胞を含有することもできる。あるいは、組成物は、約10または約1010の小
胞、例えば、約5×10、約1×1010または約5×1010の小胞を含有することができる
。さらに、任意のそのような数のミニ細胞の中で、本開示の組成物は、約10未満の汚染生
/親細菌細胞、例えば約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、または約1未満の生/
親細菌細胞を含み得る。
【0133】
b.製剤
本明細書に記載する方法で使用するのに適した医薬組成物は、開示されたミニ細胞送達
ベクターおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含むことができる。
【0134】
本発明は、その範囲内に、(a)無傷のミニ細胞および(b)そのための薬学的に許容
される担体を含む組成物または製剤を含み、ここで、そのミニ細胞は、少なくとも1つの
核酸アジュバント分子、少なくとも1つの核酸アジュバント分子をコードするセグメント
を含むプラスミド、および/または少なくとも1つの核酸センサーのアゴニストを含む。
少なくとも核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストは、本明細書に記載の核酸
アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストのいずれか、またはそれらの組み合わせを
含み得る。
【0135】
本明細書に記載されるようにいくつかの態様において、製剤はさらに薬物を含んでいて
もよい。好ましくは、製剤のミニ細胞は薬物を含む。あるいは、ミニ細胞は、薬物をコー
ドするプラスミドなどの核酸分子を含み得る。
【0136】
ミニ細胞含有製剤は、好ましくは、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含
む、より好ましくは、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、さらにより
好ましくは、10ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、なおより好ましくは
、1010ミニ細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む、最も好ましくは、1011ミニ
細胞あたり約1未満の汚染親細菌細胞を含む。
【0137】
製剤は、必要に応じて、標的細胞にミニ細胞を標的とする二重特異性リガンドも含む。
ミニ細胞およびリガンドは、本明細書に記載されているもののいずれでもよい。したがっ
て、いくつかの態様において、ミニ細胞は、少なくとも1つの核酸アジュバント、核酸ア
ジュバントをコードする核酸、および/または核酸センサーの少なくとも1つのアゴニス
ト、ならびに、ミニ細胞の表面成分および標的哺乳動物細胞の表面成分に結合することが
できる二重特異性リガンドを含む。
【0138】
ミニ細胞、および任意に薬剤および二重特異性リガンドを含む本開示の製剤は、1つま
たは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を用いて、従来の方法で製剤化すること
ができる。
【0139】
製剤は、保存剤を添加してまたは添加せずに、例えばアンプルまたはバイアルなどの単
位剤形で、または複数回投与用容器において提供することができる。製剤は、油性または
水性ビヒクル中の溶液、懸濁液、または乳濁液であり得、懸濁剤、安定剤および/または
分散剤のような処方剤を含み得る。適切な溶液はレシピエントの血液と等張であり、生理
食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液によって例示される。あるいは、製剤
は、適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水または生理食塩水で再構成す
るために、凍結乾燥粉末形態であり得る。製剤はデポー製剤の形態であってもよい。この
ような長時間作用型製剤は、移植(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって
投与することができる。
【0140】
いくつかの態様において、開示されたミニ細胞送達ベクターは、別の治療剤または薬剤
と同時に投与されるように処方することができる。いくつかの態様において、開示された
ミニ細胞送達ベクターは、他の治療薬または薬物と順次投与されるように処方され得る。
例えば、いくつかの態様において、開示されたミニ細胞送達ベクターは、患者が癌の治療
のために化学療法の治療を受けた前後のいずれかに投与することができる。あるいは、い
くつかの態様において、開示されたミニ細胞送達ベクターは、感染を予防するために患者
がワクチンを接種される前または後に投与され得る。
【0141】
c.投与スケジュール
一般に、本明細書に開示されている製剤は、潜在的な毒性を最小限に抑えながら、最適
な生理学的効果を得るために、日常的な試験によって定義された適切な投与量で使用する
ことができる。投与計画は、年齢、体重、性別、患者の病状、治療すべき状態の重症度、
投与経路、ならびに患者の腎機能および肝機能を含む様々な要因に従って選択することが
できる。
【0142】
最小の副作用で最大の有効性をもたらす範囲内のミニセルの濃度を達成する際の最適な
精度は、標的部位および標的細胞に対するミニ細胞の利用可能性の動態に基づく計画を必
要とし得る。ミニ細胞または薬物の分布、平衡、および排除は、治療計画のための最適濃
度を決定するときに考慮され得る。ミニ細胞および薬物の投薬量は、所望の効果を達成す
るために、組み合わせて使用されるときに調整され得る。
【0143】
また、製剤の投薬量の投与は、薬物動態/薬力学モデリングシステムを使用して最適化
することができる。例えば、1つ以上の投与計画を選択することができ、1つ以上の投与
計画の薬物動態学的/薬力学的プロファイルを決定するために薬物動態学的/薬力学的モ
デルを使用することができる。次に、特定の薬物動態学的/薬力学的プロファイルに基づ
いて所望の薬物動態学的/薬力学的応答を達成する投与のための投与計画の1つを選択す
ることができる。例えば、WO00/67776を参照されたい。
【0144】
具体的には、製剤は、数週間にわたって少なくとも週に一度投与されてもよい。いくつ
かの態様において、製剤は、数週間から数ヶ月にわたって少なくとも週に一度投与される
。いくつかの態様において、製剤は、数週間から数ヶ月にわたって少なくとも週に2回投
与される。いくつかの態様において、製剤は、数週間から数ヶ月にわたって週に少なくと
も3回投与される。いくつかの態様において、製剤は、数週間から数ヶ月にわたって週に
少なくとも4回投与される。いくつかの態様において、製剤は、数週間から数ヶ月にわた
って週に少なくとも5回投与される。いくつかの態様において、製剤は、数週間から数ヶ
月にわたって週に少なくとも6回投与される。
【0145】
より具体的には、製剤は、少なくとも1日1回で、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約
8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、
約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30または約31日間投与してよい。
あるいは、製剤は、毎日約1回、または、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14
、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日毎に約
1回投与してよい。
【0146】
製剤は、あるいは、毎週約1回、または、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、
14、15、16、17、18、19または20週間毎に約1回投与してよい。あるいは、製剤は、少な
くとも週に1回で、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13
、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20週間投与してよい。
【0147】
あるいは、製剤は、毎月約1回、または、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ
月以上毎に約1回投与してよい。
【0148】
製剤は、1回の日用量で投与するか、または、総1日量を、1日2回、3回または4回の分割
用量として投与してよい。
【0149】
ミニ細胞を他の治療剤または薬剤の前に投与される方法では、治療薬または薬剤の投与
は、ミニ細胞の投与の前または後の数分から数時間でいつでも起こり得る。他の治療薬ま
たは薬物は、ミニ細胞の前後の数時間から数日、おそらく数週間から数ヶ月の間に投与し
てよい。
【0150】
より具体的には、ミニ細胞を、他の治療薬または薬物の前後の少なくとも約1、約2、約
3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17
、約18、約19、約20、約21、約22、約23または約24時間に投与してよい。さらに、ミニ細
胞を、他の治療薬または薬物の投与の前後の少なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、
約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20
、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30または約31日に投与し
てよい。さらに別の態様において、ミニ細胞を、他の治療薬または薬物の投与の前後の少
なくとも約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約1
4、約15、約16、約17、約18、約19または約20週間以上に投与してよい。さらなる態様に
おいて、ミニ細胞を、他の治療薬または薬物の投与の前後の少なくとも約1、約2、約3、
約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11または約12ヶ月に投与してよい。
【0151】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、腫瘍退縮または寛解などの治療応答)提供す
るように調整することができる。例えば、いくつかの態様において、ミニ細胞送達ベクタ
ーの単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの態様において、いくつかの分割用量を経
時的に投与してもよく、状況によって示されるように比例的に用量を増減してもよい。例
えば、いくつかの態様において、開示されたミニ細胞送達ベクターは、皮下注射、筋肉内
注射、または静脈内注射によって週に1回または2回投与されてもよい。いくつかの態様に
おいて、開示されたミニ細胞送達ベクターは、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射
によって月に1回または2回投与してよい。いくつかの態様において、開示されたミニ細
胞送達ベクターは、週に1回、隔週に1回、3週間に1回、4週間に1回、隔月に1回、
3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回または6ヶ月に1回、投与してよい。
【0152】
特定の治療計画は、それらが再発のリスクを減らすか、与えられた癌または感染症の無
増悪生存期間の可能性を増加させる治療を意味し、与えられた患者の転帰を改善するかど
うかに応じて評価することができる。
【0153】
したがって、本開示の目的のために、望ましい臨床結果を含む1つまたは複数の有益な
または望ましい結果が得られた場合、対象は治療されている。例えば、有益なまたは望ま
しい臨床結果には、それだけには限定されないが、以下のうちの1つまたは複数が含まれ
る:疾患から生じる1つまたは複数の症状の低減、疾患を患う人々の生活の質の向上、疾
患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、疾患の進行の遅延、および/または個人の生存
期間の延長。
【0154】
さらに、本方法の対象は一般にある種の癌または感染症を有する患者であるが、患者の
年齢は制限されない。開示された方法は、すべての年齢層およびコホートにわたる様々な
再発および予後結果を伴う、腫瘍、癌、悪性疾患、または癌細胞増殖の治療に有用である
。開示された方法はまた、感染の前またはその過程を通して、細菌性およびウイルス性の
両方を含む様々な感染症を治療または予防するためにも有用である。さらに、いくつかの
態様において、対象は小児科対象であり得るが、他の態様において、対象は成人対象であ
り得る。
【0155】
3.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、他に定義さ
れない限り、当業者によって一般的に理解されている意味を有する。当業者に公知の任意
の適切な材料および/または方法論が、本明細書に記載の方法を実行する際に利用され得
る。
【0156】
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語
および語句の意味を以下に提供する。他の用語および句は本明細書を通して定義されてい
る。
【0157】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形を含
む。
【0158】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は当業者によって理解され、それが使用
される文脈に応じてある程度変動するであろう。使用される文脈を考慮して当業者には明
らかではない用語の使用がある場合、「約」は特定の用語の±10%までを意味するであろ
う。
【0159】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物および方法が列挙された要
素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図している。組成物および方
法を定義するために使用される場合、「から本質的になる」は、組成物または方法にとっ
て本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。「からなる」は、特許
請求された組成物および実質的な方法工程のための他の成分の微量より多くの要素を除外
することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される態様は
、本開示の範囲内にある。したがって、該方法および組成物は、追加の工程および構成要
素を含むことができ(を含む)、あるいは意味のない工程および組成物を含むことができ
(本質的にからなる)、あるいは述べられた方法工程または組成物のみを含むことができ
る(からなる)。
【0160】
本明細書で使用する場合、「配列」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の
全体または部分を指す。
【0161】
本明細書において互換的に用いられる「癌」、「新生物」、「腫瘍」、「悪性腫瘍」お
よび「癌腫」は、細胞増殖の制御の有意な喪失を特徴とする異常な増殖表現型を示す細胞
または組織を指す。本発明の方法および組成物は、特に前癌性、悪性、前転移性、転移性
、および非転移性細胞に適用される。
【0162】
「相補的」とは、相補的ヌクレオチド配列における塩基対合のような、2つの分子の相
互作用表面の位相的適合性または一致を指す。したがって、分子は相補的であると説明す
ることができ、さらに、接触表面の特徴は互いに相補的である。
【0163】
「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞集団に作用する、ある細胞
集団によって放出されるタンパク質の総称である。
【0164】
「薬物」は、動物、特に哺乳動物及びヒトにおける局所または全身効果を生じる任意の
生理学的または薬理学的に活性な物質を指す。
【0165】
「発現」とは、一般に、検出可能なレベルのアミノ酸配列またはタンパク質が発現され
るように、ポリヌクレオチド配列が成功した転写および翻訳を受けるプロセスを指す。本
明細書の特定の文脈において、発現は、タンパク質またはアミノ酸の発現よりもむしろ、
核酸配列(すなわち、核酸アジュバント)の産生を指す。他の文脈では、発現はタンパク
質の産生を指す。
【0166】
「宿主細胞」とは、組換えベクターまたは他のポリヌクレオチド移入のレシピエントと
して使用されている、または使用されてきた細胞をいい、トランスフェクトされた元の細
胞の子孫を含む。単一の細胞の子孫は、天然の、偶然の、または意図的な突然変異のため
に、元の親と、形態学的にまたはゲノムもしくは全DNA相補体において必ずしも完全に
同一ではないかもしれない。
【0167】
「ハイブリダイゼーション」とは、ポリヌクレオチド配列が塩基対合を介して相補的配
列に結合する任意の過程を指す。
【0168】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、開示されたビーズ粒子の用
量が、そのような治療を必要とする対象に薬物が投与されて、例えば、癌/腫瘍の増殖、
進行または再発を低減、改善または排除する特定の薬理学的効果を与えることを意味する
。核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含むミニ細胞の治療上有効な量は
、たとえそのような投与量が当業者によって治療上有効な量であると考えられていても、
あらゆる個々の対象の癌/腫瘍の治療において常に有効であるとは限らないことが強調さ
れる。当業者は、特定の対象および/または特定の種類の疾患、すなわち所与の癌または
感染症を治療するために必要とされる標準的な実務に従って治療上有効な量であると思わ
れる量を調整することができる。治療有効量は、投与経路および剤形、対象の年齢および
体重、および/または、処置時の疾患の進行、病期および/またはクラスを含む、対象の
状態に基づいて変動し得る。
【0169】
「治療」または「治療する」という用語は、活動性の疾患に対して所望の薬理学的およ
び/または生理学的効果を得ることを指す。例えば、その効果は、例えば癌/腫瘍の増殖
および/または進行を阻害する、あるいは癌/腫瘍細胞死を引き起こすなど、完全にまた
は部分的に疾患を軽減、改善または排除することができる。「治療」は、哺乳動物、特に
ヒトにおける疾患の任意の治療を含み、(1)疾患の症状を抑制する、すなわちその発症
を止める、または(2)疾患の症状を軽減する、すなわち疾患または症状の後退を引き起
こす、ことを含む。
【0170】
本明細書で用いられる「予防」または「予防する」という用語は、その疾患または症状
にかかりやすいおよび/またはそれを有するとまだ診断されていない対象において疾患ま
たは症状が発生するのを防ぐことを指す。疾患を「予防する」は、癌/腫瘍細胞の形成を
停止すること、または癌/腫瘍増殖の再発を抑制すること、または感染が個体にかかるの
を予防的に止めることを含み得る。
【0171】
「個体」、「対象」、「宿主」および「患者」は本明細書で互換的に使用され、診断、
処置または治療が望まれる任意の哺乳動物対象を指す。好ましい一態様において、個体、
対象、宿主または患者はヒトである。他の対象は、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット
、ウサギ、ラット、霊長類およびマウスを含み得るが、これらに限定されない。
【0172】
「オリゴヌクレオチド」は、例えば、約10ヌクレオチド(nt)から約1000ntを含むポリ
ヌクレオチドを指す。本発明における使用のためのオリゴヌクレオチドは、好ましくは約
10nt~約150ntである。オリゴヌクレオチドは、天然に存在するオリゴヌクレオチドまた
は合成オリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは修飾されていてもよい。
【0173】
「ミニ細胞」とは、二分裂中に、DNA分離を伴う細胞分裂の協調の乱れによって引き
起こされる、無核形態の細菌細胞を指す。特定の状況において自発的に生成および放出さ
れると共にミニ細胞とは対照的に特定の遺伝子再構成またはエピソーム遺伝子発現による
ものではない他の小さな小胞とは、ミニ細胞は異なる。本発明を実施するために、ミニ細
胞が無傷の細胞壁を有することが望ましい(「無傷のミニ細胞」)。
【0174】
「修飾オリゴヌクレオチド」および「修飾ポリヌクレオチド」は、塩基、糖部分、ヌク
レオシド間リン酸結合の全てまたはいずれかの天然の分子構造の分子レベルでの1つまた
は複数の化学修飾を有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、ならびにこれら
の部位で追加された置換または修飾の組み合わせを有する分子を指す。ヌクレオシド間リ
ン酸結合は、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、シロキサン
、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエ
ーテル、架橋ホスホルアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メ
チルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエートまたはスルホンヌク
レオチド間結合、または3'-3'、5'-3'もしくは5'-5'結合、およびそのような類似の結合
の組み合わせであってよい。ホスホジエステル結合は、ホスホロチオエート、メチルアミ
ノ、メチルホスホネート、ホスホルアミデートおよびグアニジンなどの置換結合で置き換
えられてもよく、ポリヌクレオチドのリボースサブユニットが置換されていてもよい(例
えば、ヘキソースホスホジエステル;ペプチド核酸)。修飾は、オリゴヌクレオチド分子
の内部(単一または反復)または末端であってよく、反対鎖または関連酵素または他のタ
ンパク質を切断または架橋するデオキシリボースおよびリン酸修飾のような、ヌクレオシ
ド間リン酸結合の分子への付加を含むことができる。「修飾オリゴヌクレオチド」および
「修飾ポリヌクレオチド」という用語は、糖部分に対する修飾を含むオリゴヌクレオチド
またはポリヌクレオチド(例えば、3'-置換リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレ
オチドモノマー)を含み、それらのいずれも、5'-3'結合を介して一緒に結合される。
【0175】
「核酸分子」という用語および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド
またはデオキシヌクレオチドである任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を意味する
。それらは、一本鎖、二本鎖、もしくは多本鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA
-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、あるいは他の天
然、化学もしくは生化学的修飾、非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む。ポリ
ヌクレオチドの主鎖は、糖およびリン酸基(典型的にはRNAまたはDNAに見られるように)
、または修飾もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含み得る。あるいは、ポリヌクレ
オチドの主鎖は、ホスホルアミダイトなどの合成サブユニットのポリマーを含むことがで
き、したがってオリゴデオキシヌクレオシドホスホルアミデートまたは混合ホスホルアミ
デート-ホスホジエステルオリゴマーであり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレ
オチドおよびヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチド、ウラシル、他の糖、ならび
にフルオロリボースおよびチオエートなどの連結基、ならびにヌクレオチド分岐を含み得
る。ポリヌクレオチドは、標識成分との接合などによってさらに修飾することができる。
他の種類の修飾には、キャップ、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの類似体での置
換、およびポリヌクレオチドをタンパク質、金属イオン、標識成分、他のポリヌクレオチ
ド、または固体支持体に結合するための手段の導入が含まれる。
【0176】
「薬学的に許容される」は、生理学的適合性を意味する。薬学的に許容される担体また
は賦形剤は、投与される組成物の生物学的活性を無効にせず、化学的に不活性であり、そ
れが投与される生物に対して毒性ではない。
【0177】
本明細書中で交換可能に使用される「ポリペプチド」および「タンパク質」は、翻訳、
非翻訳、化学的に修飾、生化学的に修飾、および誘導体化されたアミノ酸を含んでよい、
任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。ポリペプチドまたはタンパク質は、天然に
存在するもの、組換え型、または合成型、あるいはこれらの任意の組み合わせであり得る
。さらに、ポリペプチドまたはタンパク質は、天然に存在するタンパク質またはペプチド
の断片を含み得る。ポリペプチドまたはタンパク質は、単一分子でもよく、または多分子
複合体でもよい。さらに、そのようなポリペプチドまたはタンパク質は修飾ペプチド骨格
を有していてもよい。この用語は、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N末端メチオ
ニン残基を含むまたは含まない異種および同種リーダー配列との融合、免疫学的にタグ付
けされたタンパク質などを含む融合タンパク質を含む。
【0178】
「精製された」は、その天然の環境から取り出され、天然では関連していた他の成分を
少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、
約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%含まない化合物を
意味する。
【0179】
「配列同一性」は、類似性または相補性の程度を指す。部分的な同一性または完全な同
一性があり得る。部分的に相補的な配列は、同一の配列が標的ポリヌクレオチドにハイブ
リダイズするのを少なくとも部分的に阻害するものであり、それは機能的用語「実質的に
同一」を使用して言及される。標的配列への完全に相補的な配列のハイブリダイゼーショ
ンの阻害は、低ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ(サザン
またはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を用いて調べることができ
る。実質的に同一の配列またはプローブは、低ストリンジェントな条件下で標的配列への
完全に同一の配列またはプローブの結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)について
競合し、阻害するであろう。これは、低ストリンジェントな条件が非特異的結合が許容さ
れるようなものであるということではなく、低ストリンジェントな条件は、2つの配列の
相互への結合が特異的(すなわち選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的結
合が存在しないことは、部分的な程度の相補性(例えば、約30%未満の同一性)さえも欠
いている第二の標的配列の使用によって試験することができ、非特異的結合が存在しない
場合、プローブは第二の非相補的標的配列にハイブリダイズしないであろう。
【0180】
2つの核酸またはポリペプチド配列との関連で配列同一性を見る別の方法は、特定の領
域にわたって最大の一致が得られるように整列させた場合に同一である2つの配列中の残
基を参照することを伴う。本明細書で使用するとき、「配列同一性のパーセンテージ」は
、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列した配列を比較することによって決定され
る値を意味し、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最
適アラインメントのための参照配列(付加または欠失を含まない)と比べて、追加または
欠失(すなわちギャップ)を含むことがある。パーセンテージは、一致した位置の数を得
るために両方の配列において同一の核酸塩基が存在する位置の数を決定し、一致した位置
の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、その結果に100を掛けることによって配
列同一性のパーセンテージを得る、ことにより計算される。
【0181】
本開示の組成物および方法は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは
複数の要素、1つまたは複数の制限がなくても適切に実施することができる。したがって
、例えば、「含むcomprising」、「含むincluding」、「含むcontaining」などは限定的
ではなく拡大的に読まれるべきである。さらに、本明細書で使用されている用語および表
現は、説明の用語として使用されており、限定のためではなく、そのような用語および表
現の使用において、提示され説明された特徴またはその一部の均等物を除外する意図はく
、特許請求された開示の範囲内で種々の変更が可能であることが理解される。
【0182】
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【0219】
以下の実施例は本発明を説明するために与えられている。本発明はこれらの実施例に記
載された特定の条件または詳細に限定されるべきではないことを理解すべきである。
【実施例0220】
(実施例1)
EGFRミニ細胞PNU-159682およびミニ細胞40量体で治療した後の大幅に向上した腫瘍退行
この実施例は、マウス異種移植片を、二重特異性リガンドで標的化しPNU-159682で包装
された無傷ミニ細胞と、標的化していない40量体で包装された無傷ミニ細胞とを組み合わ
せて治療すると、前者のみで治療したものと比較して、抗腫瘍効果を高めることができる
ことを示している。
【0221】
ミニ細胞を、ネズミチフス菌minCDE変異株から得て、以前に記載されているように(Ma
cDiarmidら(2007))、勾配遠心分離/フィラメント化/濾過/内毒素除去手順を使用して
精製した。精製ミニ細胞を、化学療法薬ドキソルビシン誘導体、PNU-159682(Quintieri
ら(2005))または二本鎖40ヌクレオチド長RNA(40量体)を用いて包装した(MacDiarmidら(
2007),(2009))。
【0222】
ミニ細胞を標的化するために使用された二重特異性抗体(BsAb)は、ネズミチフス菌O
-多糖(ミニ細胞上に存在する)およびヒトEGFR(肺胞腺癌細胞A549上に過剰発現)の両
方に対する結合特異性を含む単一ポリペプチドであった。O-多糖特異性は、マウスモノク
ローナル抗体に由来し、その可変領域はハイブリドーマ細胞株1H10から単離され、単鎖可
変フラグメント(scFv)として提示された。scFvとしても示されるEGFR特異性は、市販の
抗体VECTIBIX(登録商標)(Amgen、米国)から誘導した。2つのscFv成分を柔軟なリンカー
により分離し、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易にするた
めに6xHisタグをN末端に組み込み、さらなる検出を助けるためにC末端にc-mycタグを組
み込んだ。BsAbをコードするDNAベクターは、高レベル発現のためのhCMVプロモーター
、および細胞培養培地へのBsAbの分泌のためのシグナルペプチドを含んでいた。BsAbをコ
ードする発現ベクターを、化学的に定義されたタンパク質および動物起源を含まない培地
中の懸濁液適合チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に安定的にトランスフェクトし
、タンパク質を培養中で10日間発現させる。
【0223】
抗体を精製するために2つのクロマトグラフィーカラムを使用し、それらは固定化金属
イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC-HisTrapExcelカラム)およびヒドロキ
シアパタイトクロマトグラフィー(BioRad CHT Iカラム)であり、98%を超える最終抗体
純度を提供した。製品のウイルス安全性のために、抗体は溶媒/洗剤不活性化(TNBP/Twe
enを使用)およびウイルス濾過を経た。抗体の最終収量は1Lの細胞培養上清から10mgで
あった。
【0224】
この例で使用したマウス(6週齢メス無胸腺ヌードマウス)は、動物資源センター(Per
th, WA, Australia)から購入し、すべての動物実験は、実験動物の管理と使用のガイド
を遵守し動物倫理委員会の承認を得て実施した。実験は、EnGeneIC Pty Ltd(Sydney, NS
W, Australia)のNSW Agriculture認定小動物施設で行われた。ヒト肺胞腺癌細胞(A549
,ATCC)を、37℃で95%空気および5%COの加湿雰囲気中、5%子牛血清(GIBCO-BRL L
ife Technologies, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA, USA)およびグルタミン(I
nvitrogen)を加えたRPMI 1640培地中、T-75フラスコにおいて完全に密集するまで、組織
培養で増殖させた。
【0225】
50μLの成長因子低減マトリゲル(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ, USA)と共に
50μLの無血清培地中の1×10細胞を、23ゲージ針を用いて各マウスの肩甲骨の間に皮下
注射した。電子デジタルノギス(Mitutoyo、日本、精度0.001まで)を用いて週に2回腫
瘍を測定し、平均腫瘍体積を式:長さ(mm)×幅(mm)×0.5=体積(mm)を用いて
計算した。腫瘍が平均約285mmに達したときに治療を開始し、マウスを1群7匹のマウス
の4つの異なる群に無作為に分けた。全ての治療薬は、静脈内(i.v.)に総量100μl
で投与された。全てのミニ細胞用量は、それぞれの種類の1×10個のミニ細胞を含んで
いた。
【0226】
以下のように実験を設計した。グループ1(対照)には滅菌生理食塩水を投与しなかっ
た。グループ2には、EGFRミニ細胞PNU-159682、グループ3にはEGFRミニ細胞PNU-159682
+ミニ細胞40量体を投与した。
【0227】
結果は、EGFRミニ細胞PNU-159682で処置したマウス(グループ2)が腫瘍安定化を達成
したことを示した(図3)。これに対して、EGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞40量体で処
置したマウス(グループ3)は、合計6回の投与後44日目までに非常に有意な腫瘍退縮を示
した。
【0228】
これらの結果は、非アジュバント添加薬物による治療と比較して治療結果がアジュバン
トの使用により有意に良好であったので、本発明による核酸アジュバントの有効性を実証
している。
【0229】
(実施例2)
EGFRミニ細胞PNU-159682およびミニ細胞40量体またはミニ細胞50量体で治療した後に大
幅に向上した腫瘍退縮
この実施例は、マウス異種移植片を、二重特異性リガンドで標的化しPNU-159682で包装
された無傷ミニ細胞と、標的化していない40量体または50量体で包装された無傷ミニ細胞
とを組み合わせて治療すると、前者のみで治療したものと比較して、抗腫瘍効果を高める
ことができることを示している。
【0230】
実施例1に記載したように様々のミニ細胞を調製した。実施例1に記載したように、1
群あたり7匹のマウスをA549異種移植片用に調製した。
【0231】
実験を以下の通り設計した。グループ1(対照)には滅菌生理食塩水を投与しなかった
。グループ2には、EGFRミニ細胞PNU-159682、グループ3には、EGFRミニ細胞PNU-159682
+ミニ細胞40量体、グループ4には、EGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞50量体、およびグ
ループ5には、EGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞を投与した。
【0232】
結果は、EGFRミニ細胞PNU-159682で治療したマウス(グループ2)およびEGFRミニ細胞P
NU-159682+ミニ細胞で治療したマウス(グループ5)は腫瘍安定化を達成した(図4)。
これに対して、EGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞40量体で治療したマウス(グループ3)
またはEGFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞50量体で治療したマウス(グループ4)は、合計
6回の投与後38日目までに腫瘍退縮の有意な向上を示した。さらに興味深いことに、生理
食塩水で治療したマウスが36日目までに大きな腫瘍体積(約600mm)を生み出し治療をE
GFRミニ細胞PNU-159682+ミニ細胞40量体に変えると、腫瘍体積は38日目までに約300mm
に急縮小した。これは、2日間の期間での腫瘍体積の劇的な50%の減少である。
【0233】
これらの結果は、非アジュバント添加薬物による治療と比較して治療結果がアジュバン
トの使用により有意に良好であったので、本発明による核酸アジュバントの有効性を実証
している。
【0234】
(実施例3)
ヒトの治療予想
この実施例は、癌の治療において開示されたミニ細胞送達ベクターを使用する方法を説
明する。
【0235】
癌を有することが知られているかまたは疑われる患者に、静脈内、筋肉内、または皮下
注射により、少なくとも1つの核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを含む
治療有効量の細菌由来ミニ細胞送達ベクターを投与する。限定はされないが疼痛、脱力感
、腫瘍の大きさなどを含む、癌に関連する徴候および症状の存在および/または重症度に
ついて患者を評価し、1つまたは複数の徴候/症状が軽減、改善または消失するまで患者を
治療する。
【0236】
任意選択で、治療後の癌の進行を監視するために患者からサンプルを採取することがで
きる。場合によっては、徴候/症状が持続する場合および/または癌が進行するかまたは
再発する場合に、少なくとも1つの核酸アジュバントまたは核酸センサーのアゴニストを
含む別の用量の細菌由来ミニ細胞送達ベクターが投与される。
【0237】
当業者は、本開示が目的を実行し、そして言及された目的および利点、ならびにそれに
固有のものを得るのによく適合していることを容易に認識する。その中の修飾および他の
用途が当業者には思い浮かぶであろう。これらの修飾は、本開示の精神の範囲内に包含さ
れ、本開示の非限定的な態様を記載する特許請求の範囲によって定義される。本明細書に
おいて参照される、公開特許文書を含むがそれらに限定されない全ての公開文書が、参照
により具体的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4