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特開2023-22244安定化α-ガラクトシダーゼを用いた、ファブリー病の治療のための治療レジメン
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  • 特開-安定化α-ガラクトシダーゼを用いた、ファブリー病の治療のための治療レジメン 図1
  • 特開-安定化α-ガラクトシダーゼを用いた、ファブリー病の治療のための治療レジメン 図2
  • 特開-安定化α-ガラクトシダーゼを用いた、ファブリー病の治療のための治療レジメン 図3A
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  • 特開-安定化α-ガラクトシダーゼを用いた、ファブリー病の治療のための治療レジメン 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022244
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】安定化α-ガラクトシダーゼを用いた、ファブリー病の治療のための治療レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20230207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230207BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230207BHJP
【FI】
A61K38/47
A61P43/00 111
A61K47/60
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192939
(22)【出願日】2022-12-01
(62)【分割の表示】P 2019536488の分割
【原出願日】2018-01-05
(31)【優先権主張番号】62/442,537
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505161910
【氏名又は名称】プロタリクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルモン エイナット
(72)【発明者】
【氏名】チェルトコフ ラウル
(72)【発明者】
【氏名】アロン サリ
(72)【発明者】
【氏名】シャールティエル ヨセフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ファブリー病の治療のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、連結部分を介して互いに共有結合している少なくとも2個のα-ガラクトシダーゼ単量体を含む安定化植物組換えヒトαガラクトシダーゼタンパク質の投与によるファブリー病の治療方法、及び当該タンパク質の単位剤形を開示する。開示したプロトコルは、安全であり、各投与間の間隔が2週間を超え、さらに患者の疾患パラメータにおいて重要な改善をもたらすものであり、疾患パラメータは、臨床環境でのGb3蓄積の減少、疼痛及び胃腸パラメータ、腎臓及び心臓に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の、ビス-NHS-PEG45と架橋した植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを含む、ファブリー病の治療を必要とするヒト対象においてファブリー病を治療するための医薬組成物であって、前記治療有効量は、4週間に1回の投与される0.2~2.0mg/kgの用量を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、前記対象においてGb3及び/又はリゾGb3を減少させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ヒトα-ガラクトシダーゼは、静脈投与用に処方されている、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、前記対象において、下記(i)~(vi)の少なくとも1種を達成可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(i)心臓パラメータLVM又はLVMIの安定性の維持又はその悪化の軽減、
(ii)血漿中Gb3濃度の低下、リゾ-Gb3濃度の低下、及び尿中Gb3濃度の低下から成る群から選択される少なくとも1種のパラメータの安定性の維持、
(iii)ファブリー病に関連する腎機能の悪化の軽減、
(iv)腎機能の安定性の維持
(v)少なくとも1種の胃腸パラメータの安定性の維持又はその悪化の軽減、および
(vi)マインツ重症度スコア指数(MSSI)の安定性の維持又はその悪化の軽減。
【請求項5】
前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、投与後の循環半減期(T1/2)が少なくとも5時間、少なくとも20時間、および少なくとも50時間からなる群より選ばれるいずれかである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを1mg/kg投与した後のCmaxが、少なくとも100,00ng/mLであり、任意で、前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2mg/kg投与した後のCmaxが、少なくとも400,00ng/mLである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを1.0mg/kg投与した後の生物学的利用能(AUC0~∞)が少なくとも100,000ng×時/mLであり、任意で、前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2.0mg/kg投与した後の生物学的利用能(AUC0~∞)が少なくとも400,000ng×時/mLである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ヒト対象への投与用に処方した、ビス-NHS-PEG45と架橋した植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2.0~500mg含む単位剤形。
【請求項9】
35~370mgの前記植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを含む、請求項8に記載の単位剤形。
【請求項10】
35mgの前記植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを含む、請求項8に記載の単位剤形。
【請求項11】
40mgの前記植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを含む、請求項8に記載の単位剤形。
【請求項12】
50または100mgの前記植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを含む、請求項9に記載の単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その幾つかの実施形態において、α-ガラクトシダーゼのホモ二量体タンパク質構造に関し、詳細には、α-ガラクトシダーゼの安定化共有結合ホモ二量体タンパク質構造を用いた、酵素補充療法によるファブリー病の治療のための効果的な治療レジメンに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
リソソーム酵素であるα-ガラクトシダーゼ-A(α-GAL又はα-GalA;EC3.2.1.22)は、巨大分子の異化反応中にオリゴ糖、糖タンパク質及び糖脂質からのガラクトースの除去を触媒する。リソソーム酵素が欠乏すると、その基質が様々な組織で蓄積し、リソソーム蓄積症として知られる病態になる。ヒトにおいては、機能性α-ガラクトシダーゼ-Aが存在しないと、組織中に末端α-ガラクトース残基を含む糖脂質(主にグロボトリアオシルセラミド、これは「セラミドトリヘキソシド」、「CTH」又は「Gb」とも称される)が蓄積し、ファブリー病につながる。ファブリー病は、1898年に最初に記載されたX連鎖劣性遺伝疾患であり、慢性疼痛、眼の混濁、肝臓及び腎臓の機能障害、皮膚病変、血管の劣化及び/又は心不全を特徴とする。組換えヒトα-ガラクトシダーゼ-Aは、患者において低下した酵素活性を提供、置換する能力を有し、α-GALを用いた酵素補充療法(ERT)は、ファブリー病の治療として2003年に米国及び欧州諸国で承認された。α-GALは、β-グルコシダーゼの後にリソソーム蓄積症の治療、即ちゴーシェ病の治療のために承認された第2の組換えタンパク質となった。
【0003】
内在性及び組換えα-GAL酵素は、皮膚、腎臓、心臓等の臓器の細胞のリソソーム中の末端ガラクトシル化糖脂質の加水分解を触媒する。この天然作用環境はその酸性pH(4.5にまで低くなる)を特徴とする。従って、α-GALを含むリソソーム酵素は、このような低いpH値で最大の活性を発揮するように設計されている。
【0004】
現在のファブリー病ERT治療は、哺乳動物細胞由来の組換えα-GALに基づくものであるが、これは臨床効果が限られていると考えられており、ファブリー病患者に対して満足のいく臨床的解決策は現在得られていない。
【0005】
X線構造解析によって、ヒトα-GALがホモ二量体糖タンパク質であり、各単量体が2種のドメイン、即ち、活性部位を含む(β/α)ドメインと、βサンドイッチ内の2枚のシート上の8個の逆平行β鎖を含むC末端ドメインとから成ることが分かっている[Garman & Garboczi, J Mol Biol 2004, 337:319-335]。
【0006】
構造的(X線結晶学)証拠と生化学的(動態学的)証拠の両方が、ホモ二量体構造の単量体単位間の活性部位の協同性を示唆し、酵素活性及び治療用α-GAL組成物の安定性に対する二量体化の重要性が強調された。
【0007】
本譲受人による国際公開第2009/024977号(ここにその全てを記載したのと同様に、本参照をもって、本明細書ここに援用する)は、非疎水性リンカーによって共有結合した糖類と生体分子との接合体、及びそのような接合体の医学的使用を教示する。
【0008】
本譲受人による国際公開第2011/061736号(ここにその全てを記載したのと同様に、本参照をもって、本明細書ここに援用する)は、リソソームのpHよりも高いpH値でリソソーム活性を示すα-ガラクトシダーゼを利用する方法を教示する。
【0009】
本譲受人による国際公開第2011/107990号(ここにその全てを記載したのと同様に、本参照をもって、本明細書ここに援用する)は、生理学的条件下で強いα-ガラクトシダーゼ触媒活性を有し、増強された薬力学を有する少なくとも2種のα-ガラクトシダーゼ単量体を含む共有結合多量体タンパク質構造、及びその治療的使用のための提案を教示する。
【0010】
本譲受人による国際公開第2012/098537号(ここにその全てを記載したのと同様に、本参照をもって、本明細書ここに援用する)は、触媒活性を有するα-ガラクトシダーゼの植物における組換え発現のための核酸構築物、及びその治療的使用のための提案を教示する。
【0011】
更なる背景技術としては、Bendele et al.[Toxicological Sciences 1998, 42:152-157]、米国特許第5,256804号、第5,580757号及び第5,766,897号明細書、国際特許出願PCT/NL2007/050684号(国際公開第2008/075957号)、米国特許公開第2016/0184409号、Treco et al, and Seely & Richey[J Chromatography A 2001, 908:235-241]が挙げられる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、ファブリー病の治療を必要とするヒト対象(subject)のファブリー病を治療する方法であって、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼを対象に投与することを含み、組換えヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は0.2~2.0mg/kgであり、これによって対象におけるファブリー病を治療し、投与は2週間超の間隔で行い、組換えヒトα-ガラクトシダーゼの単量体は長さが20~600原子の連結部分を介して互いに共有結合している方法を提供する。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、ファブリー病の治療を必要とするヒト対象のファブリー病を治療する方法であって、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼを対象に投与することを含み、組換えヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は0.2~2.0mg/kgであり、これによって対象におけるファブリー病を治療し、投与は2週間超~4週間毎の間隔で行い、組換えヒトα-ガラクトシダーゼの単量体は長さが20~600原子の連結部分を介して互いに共有結合している方法を提供する。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼは植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼである。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼはビス-NHS-PEG45と架橋している。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は3週間又は4週間である。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は17日間~8週間である。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は17日間~6週間である。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は17日間~5週間である。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は3週間~6週間である。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は3週間~5週間である。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は3週間~4週間である。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は4週間~6週間である。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、間隔は4週間~5週間である。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は静脈内投与である。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は1.0mg/kgの用量で行う。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は2.0mg/kgの用量で行う。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は3週間毎に1回行う。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は4週間毎に1回行う。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は5週間毎に1回行う。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、投与は6週間毎に1回行う。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象のGb3及び/又はリゾGb3を減少させる。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象の心臓パラメータの安定性を維持するか又はその悪化を軽減する。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、心臓パラメータは、MRIによって測定したLVM又はLVMIを治療前の値と比較した結果である。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、下記パラメーター:
血漿中Gb3濃度の低下、リゾ-Gb3濃度の低下、及び尿中Gb3濃度の低下
から成る群から選択される少なくとも1種のパラメータの安定性を、対象において維持する。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象の尿中Gb3濃度の低下の安定性を維持する。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象のファブリー病に関連する腎機能の悪化を軽減する。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象の腎機能の安定性を維持する。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象の少なくとも1種の胃腸パラメータの安定性を維持するか又はその悪化を軽減する。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、胃腸パラメータは、6ヶ月間の治療後に測定した腹痛及び/又は腹痛の頻度を、治療前の値と比較した結果である。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、治療有効量の組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、対象のマインツ重症度スコア指数(MSSI)の安定性を維持するか又はその悪化を軽減する。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、MSSIの低下は、6ヶ月間の治療後に測定した値を、治療前の値と比較した結果である。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、投与後の循環半減期(T1/2)が少なくとも5時間である。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、投与後の循環半減期(T1/2)が少なくとも20時間である。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、投与後の循環半減期(T1/2)が少なくとも50時間である。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼを1mg/kg投与した後のCmaxは、少なくとも5000ng/mLである。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2mg/kg投与した後のCmaxは、少なくとも8000ng/mLである。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼを1.0mg/kg投与した後の生物学的利用能(AUC0~∞)は、少なくとも100,000ng×時/mLである。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2.0mg/kg投与した後の生物学的利用能(AUC0~∞)は、少なくとも400,000ng×時/mLである。
【0050】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、ヒト対象への投与用に処方した、組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2.0~500mg含む単位剤形(dosage form)を提供する。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、単位剤形は組換えヒトα-ガラクトシダーゼを10mg含む。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、単位剤形は植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを50mg含む。
【0053】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、単位剤形は組換えヒトα-ガラクトシダーゼを100~180mg含む。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、単位剤形は組換えヒトα-ガラクトシダーゼを150mg含む。
【0055】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、単位剤形は液体として処方する。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、単位剤形は静脈投与用に処方する。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼの単量体は、ポリアルキレングリコール連結部分を介して互いに共有結合している。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、ポリアルキレングリコール連結部分は、少なくとも20個のアルキレン基を含む。
【0059】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼである。
【0060】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、ビス-NHS-PEG45と架橋した植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼである。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、配列番号1~3のいずれか一に記載のアミノ酸配列を有するヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質を含む。
【0062】
本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質は配列番号2又は3に記載のアミノ酸配列からなる。
【0063】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の又は等価な方法及び材料を、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、治療開始時(1日目)から投与開始後14日までの患者の血漿中で測定した、ビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-GAL(ペグニガルシダーゼα)の薬物動態プロファイルを示すグラフであり、血漿1ミリリットル(mL)当たりのペグニガルシダーゼαをナノグラム(ng)で表わす。採取した血液試料中での酵素濃度の測定は、0時間(投与/点滴前)、1時間(投与開始1時間後)、投与(点滴)終了時(EOI)、EOIの1、4、8、24、48、72、96時間後、及び投与から2週間(14日間)後(「C2wk」)であって、次のペグニガルシダーゼα投与の前に行った。グラフは、14日間に亘る様々な試料採取時間での全てのコホートについての平均血漿中濃度(ng/mL)を対数目盛りで表す。三角(薄い灰色の線)はペグニガルシダーゼαの1.0mg/kgの用量を示し、四角(黒い線)は2.0mg/kgの用量を示す。
図2図2は、市販のアガルシダーゼβ(r-αhGalA、哺乳動物細胞組換えヒトα-GAL Aであるファブラザイム(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジのGenzyme Corp.製)の投与(点滴)開始後約10時間(600分間)に亘る薬物動態プロファイルを示す、公的に入手可能なPKデータ由来のグラフ(対数目盛り)である。データはAmerican Journal of Human Genetics, 68, 711-722, 2001.から得た。アガルシダーゼβの生物学的利用能はいずれの濃度でも短期間(約10時間)であるのに比べて、ペグニガルシダーゼαの生物学的利用能は同程度の用量でも日数単位で測定可能(図1参照)であることに留意されたい。
図3A図3Aは、ペグニガルシダーゼαの薬物動態パラメータの、アガルシダーゼβ(r-αhGalA、ファブラザイム(商標))及びアガルシダーゼα(Replagal(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジのShire Human Genetic Therapies(HGT),Inc.製)の入手可能な公表データとの比較を示すヒストグラムである。最大血漿中濃度(Cmax、ng/mL単位)(図3A)で表す。図示のように、ペグニガルシダーゼαの投与量は1.0及び2.0mg/kgであり、アガルシダーゼβの投与量は1.0mg/kg、アガルシダーゼαの投与量は0.2mg/kgである。アガルシダーゼα又はβと比較して、ペグニガルシダーゼαの薬物動態は全てのパラメータ(Cmax、T1/2及びAUC0~∞)において高いことに留意されたい。
図3B図3Bは、ペグニガルシダーゼαの薬物動態パラメータの、アガルシダーゼβ(r-αhGalA、ファブラザイム(商標))及びアガルシダーゼα(Replagal(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジのShire Human Genetic Therapies(HGT),Inc.製)の入手可能な公表データとの比較を示すヒストグラムである。半減期(T1/2、時間単位)(図3B)で表す。図示のように、ペグニガルシダーゼαの投与量は1.0及び2.0mg/kgであり、アガルシダーゼβの投与量は1.0mg/kg、アガルシダーゼαの投与量は0.2mg/kgである。アガルシダーゼα又はβと比較して、ペグニガルシダーゼαの薬物動態は全てのパラメータ(Cmax、T1/2及びAUC0~∞)において高いことに留意されたい。
図3C図3Cは、ペグニガルシダーゼαの薬物動態パラメータの、アガルシダーゼβ(r-αhGalA、ファブラザイム(商標))及びアガルシダーゼα(Replagal(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジのShire Human Genetic Therapies(HGT),Inc.製)の入手可能な公表データとの比較を示すヒストグラムである。利用可能な総酵素量(計算値)(曲線下面積、AUC0~∞、μg×分/mL)(図3C)で表す。図示のように、ペグニガルシダーゼαの投与量は1.0及び2.0mg/kgであり、アガルシダーゼβの投与量は1.0mg/kg、アガルシダーゼαの投与量は0.2mg/kgである。アガルシダーゼα又はβと比較して、ペグニガルシダーゼαの薬物動態は全てのパラメータ(Cmax、T1/2及びAUC0~∞)において高いことに留意されたい。
図4A図4Aは、ペグニガルシダーゼαの単回点滴による4週間に亘る酵素有効性モデリングをグラフで示したものであり、ペグニガルシダーゼαの長期間レジメン(2mg/kgを4週間毎に1回)による有効性モデリングをアガルシダーゼβ(ファブラザイム)の標準レジメン(1mg/kgを2週間毎に1回)のモデリングと比較したものである。図4Aは、単回点滴後4週間に亘って推定された酵素有効性を示す概略図である。
図4B図4Bは、2mg/kgのペグニガルシダーゼαを4週間の間隔内で1回投与した場合と1mg/kgのアガルシダーゼβ(ファブラザイム)を同じ4週間の間隔に亘って2回投与した場合の薬物動態パラメータの比較モデリングである。さらに図4Bは、2mg/kgのペグニガルシダーゼαを4週間毎に1回投与した場合の4週間の酵素有効性(連続週当たりの部分AUC計算値)を1mg/kgのアガルシダーゼβ(ファブラザイム)を2週間毎に1回投与した場合の部分AUCと比較したものを表す。ペグニガルシダーゼαの単回投与後に予測される有意な酵素有効性が投与後4週間全体を通して見られるのに比べて、アガルシダーゼβ酵素の部分AUCが投与後の週で実質的に存在しない(アガルシダーゼβの2週目と4週目を参照)ことに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、その幾つかの実施形態において、安定化共有結合ヒトαガラクトシダーゼホモ二量体酵素に関し、より詳細には、安定化共有結合植物組換えヒトαガラクトシダーゼ酵素、及び酵素補充療法によるヒト対象におけるファブリー病治療でその酵素を使用するための有効な治療レジメンに関するが、これに限定されない。
【0067】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の記載に示す、及び/又は図面及び/又は実施例で例示する、構成の詳細及び要素の配置及び/又は方法に限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな手段で実施又は実行することが可能である。
【0068】
リソソームタンパク質の欠乏(例えば、リソソームタンパク質の欠損又はリソソームタンパク質の欠如)は対象者の健康にかなりの害を及ぼし得る(リソソーム蓄積症)。欠損タンパク質を患者に投与する酵素補充療法(ERT)は、リソソーム蓄積症を治療する試みにおいて使用されてきた。しかし、欠損タンパク質を投与しても、必ずしもインビボで投与されたタンパク質の顕著な及び/又は持続的な活性がもたらされるとは限らない。
【0069】
ファブリー病は、広範囲の様々な症状を引き起こし得るX連鎖の劣性(遺伝性)リソソーム蓄積症の一例である。変異に起因するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの欠乏により、グロボトリアオシルセラミド(これは、Gb又はセラミドトリヘキソシドとしても知られている)として知られている糖脂質が、血管、他の組織及び器官の内部に蓄積する。この蓄積によって、これらの適正な機能に障害が生じる。α-ガラクトシダーゼ欠乏症を機能的に補償するためには、2種の酵素補充療法(ERT)が利用可能である。アガルシダーゼα(レプラガール(Replagal(登録商標))、Shire社製)及びアガルシダーゼβ(ファブラザイム(Fabrazyme(登録商標))、Genzyme-Sanofi社製)は両方共、ヒトα-ガラクトシダーゼA酵素の組換え形態である。アガルシダーゼα及びアガルシダーゼβはいずれも半減期が短いため、生物学的利用能が限られ、その結果、臨床成績が不十分である。
【0070】
α-ガラクトシダーゼの損なわれた活性を解決する必要性に動機付けられて、安定化形態のα-ガラクトシダーゼ(α-GAL)を開発した。この形態はリソソーム条件及び血清環境の両方で高い活性及び/又はより長期の活性を示したが、これによって、臨床に関連する条件下、即ちインビボで、このタンパク質の高い活性が持続する可能性が示された。更に、本発明の共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、ファブリー病患者由来の血清中で高い活性及び/又はより長期間持続する活性を示した。
【0071】
本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを使用して、本発明者らは、ヒトにおけるファブリー病の酵素補充療法のために有効な、新規の治療用量及び治療レジメンを開発した。本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを用いた臨床経験によって、新規の治療レジメンに従った本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを用いたERTが、ヒトにおけるファブリー病の治療に安全且つ有効であることが分かった。本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、非常に高い薬物動態を示し、投与後10日を超えて血漿中濃度を維持し、1.0mg/kgの用量で5,000ng/mL超(7,900~23,000ng/mL)のCmax、2.0mg/kgの用量で8,000ng/mL超(13,900~46,500ng/mL)のCmaxを示し、現在利用可能なERTと比較して生物学的利用能(AUC)が高い。
【0072】
本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼで治療すると、腎尿細管周囲毛細血管セラミダーゼトリヘキソシド封入が減少し、腎機能の特徴的悪化が有意に軽減し、腎機能と胃腸症状が改善し、患者の疼痛指数スコアが減少し、患者の心機能が改善又は安定化し、身体活動と全体的な生活の質が向上した。本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの薬物動態と生物学的利用能が改善したことに起因して、点滴間隔を大きくした有効量2mg/kgの投与レジメンによる臨床試験で観察されるような臨床的改善から、特定のファブリー病の集団(例えば、軽度~中程度、若年、早期診断及び/又は定常の患者が挙げられるが、これらに限定されない)へのERT適用範囲が得られた。従って、患者の症状を管理しながら治療の利便性と患者のコンプライアンスを高めることができ、患者の生活の質を有意に改善し、疾患合併症のリスクを遅らせることができる。
【0073】
従って、本発明の幾つかの実施形態の一様相によれば、ファブリー病の治療を必要とするヒト対象においてファブリー病を治療する方法であって、治療有効量の共有結合植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼを対象に投与することを含み、共有結合植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は0.2~2.0mg/kgであり、これによって対象におけるファブリー病を治療し、投与は2週間超~4週間毎の間隔で行い、共有結合植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼの単量体はポリ(アルキレン)グリコール連結部分を介して互いに共有結合している、方法を提供する。
【0074】
幾つかの実施形態によれば、共有結合植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、共有結合ホモ二量体植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼである。
【0075】
幾つかの実施形態によれば、共有結合ホモ二量体植物組換えヒトαガラクトシダーゼタンパク質は、以下に詳細に記載するように、天然α-ガラクトシダーゼよりも高い安定性及び/又は天然α-ガラクトシダーゼよりも高い初期活性を特徴とする。幾つかの実施形態では、安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質は、ビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-GALである。
【0076】
幾つかの実施形態では、この方法は、非植物(例えば、哺乳動物)細胞由来の組換えヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質[例えば、市販のアガルシダーゼα(レプラガール(登録商標)、Shire社製)やアガルシダーゼβ(ファブラザイム(登録商標)、Genzyme社製)]、非哺乳動物細胞(植物、細菌、昆虫、真菌等)で産生した組換えαガラクトシダーゼ、又は他の起源の適切なαガラクトシダーゼを含む、安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質を用いて実施できることに留意されたい。
【0077】
本明細書で使用する「ファブリー病」とは、あらゆるα-ガラクトシダーゼA欠乏症を意味する。「αガラクトースA欠乏症」とは、患者におけるα-ガラクトシダーゼAの天然活性の如何なる欠乏症をも意味し、主に毛細血管内皮細胞、腎細胞及び/又は心筋細胞への糖脂質(例えば、グロボトリアオシルセラミド)の異常な蓄積をもたらす。この物質が蓄積した結果、重度の神経障害性疼痛(例えば、先端感覚異常や裂傷性疼痛)、重篤な腎疾患及び心血管疾患、及び/又は脳卒中となり得る。糖脂質の蓄積によって、ファブリー病に罹患している個人で通常見られるような重篤な症状が誘発され得る。一般に、男性患者でより重篤な症状が見られるが、欠損遺伝子のヘテロ接合性女性キャリアで見られることもある。この疾患は、特に女性患者において診断が不十分であることが知られている。罹患した個人は平均余命が大幅に短くなり、通常、生まれて約40年~50年での腎臓、心臓及び/又は脳血管の合併症が死因となる。
【0078】
本明細書において、α-ガラクトシダーゼに関する「単量体」という用語は、α-ガラクトシダーゼの個々のポリペプチドの「サブユニット」を意味する。このポリペプチドは非ペプチド置換基(例えば、1種以上の糖類部分)を含むことができる。
【0079】
本明細書において、α-ガラクトシダーゼに関する「天然型」という用語は、天然に存在するα-ガラクトシダーゼタンパク質のアミノ酸配列に対して実質的に同一である(即ち、少なくとも95%の相同性、場合によっては少なくとも95%の同一性、場合によっては少なくとも99%の相同性、場合によっては少なくとも99%の同一性、場合によっては100%の同一性を有する)アミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。天然型α-ガラクトシダーゼは、天然源から単離されたタンパク質であってもよく、組換えにより産生したタンパク質(例えば、ヒト細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞等に由来)であってもよい。
【0080】
「天然型」という用語は、α-ガラクトシダーゼ(例えば、α-ガラクトシダーゼ二量体)の四次構造に関して使用される場合には、天然に存在するタンパク質の四次構造と実質的に同一な四次構造を更に含む。
【0081】
本明細書において、「天然に存在するタンパク質」という表現は、タンパク質が安定化ホモ二量体の形態である場合には、タンパク質のアミノ酸配列及びタンパク質の四次構造に関して、天然に(例えば、生物において)存在する形態のタンパク質を意味する。
【0082】
天然に存在するα-ガラクトシダーゼタンパク質の(例えば、天然に存在するα-ガラクトシダーゼタンパク質を発現する生物における)翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)は、本明細書で言及されるα-ガラクトシダーゼの天然型形態において存在してもよく、存在しなくてもよく、又は改変されていてもよい。α-ガラクトシダーゼの天然型形態(例えば、組換え産生したα-ガラクトシダーゼ)は、上述したように、α-ガラクトシダーゼの天然型形態が天然に存在するα-ガラクトシダーゼと実質的に同様のアミノ酸配列と構造を保持する限り、天然に存在するα-ガラクトシダーゼの翻訳後修飾とは異なる翻訳後修飾を必要に応じて含むことができる。
【0083】
本明細書において、タンパク質の天然型形態は、単量体構造(例えば、α-ガラクトシダーゼ単量体)及び/又は多量体構造(例えば、α-ガラクトシダーゼ二量体)を意味することがある。例えば、二量体タンパク質をα-ガラクトシダーゼの天然型形態として記載することがあり、二量体タンパク質における単量体ポリペプチドをα-ガラクトシダーゼ単量体の天然型形態として記載することがある。
【0084】
場合によっては、本明細書に記載の多量体タンパク質構造は、α-ガラクトシダーゼの天然型形態と同様に二量体構造である。
【0085】
また、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、3個以上のα-ガラクトシダーゼ単量体を含む。例えば、多量体タンパク質構造はα-ガラクトシダーゼ単量体から成る四量体、六量体又は八量体であってもよい。
【0086】
本明細書に記載の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、その中のα-ガラクトシダーゼ単量体を連結し、α-ガラクトシダーゼの天然型形態には存在しない共有結合を含む。
【0087】
従って、例えば、連結部分は場合によっては、α-ガラクトシダーゼ単量体の翻訳後修飾に関連する側鎖、N末端又はC末端、或いは部分(例えば、糖類部分)、更には別のα-ガラクトシダーゼ単量体の翻訳後修飾に関連する側鎖、N末端又はC末端、或いは部分(例えば、糖類部分)に共有結合する部分である。そのような連結部分の例を以下詳細に記載する。
【0088】
場合によっては、連結部分はジスルフィド結合を有しない。しかし、単量体間の連結を形成しない位置にジスルフィド結合を含む連結部分(例えば、このジスルフィド結合の切断は単量体間の連結を切断しない)は、本発明のこの実施形態の範囲内である。ジスルフィド結合を有しない連結部分の潜在的な利点は、穏和な還元条件による切断に対して感受性がない(ジスルフィド結合は感受性がある)ことである。
【0089】
連結部分は本明細書では架橋部分とも称される。連結部分によるα-ガラクトシダーゼ単量体の連結を本明細書では「架橋」と称する。
【0090】
幾つかの実施形態では、異なるα-ガラクトシダーゼ単量体間の架橋において、比較的短い連結部分は、より長い連結部分に比べて有効でないことがある。
【0091】
従って、幾つかの実施形態によれば、連結部分は、共有結合、即ち化学的な原子又は基ではなく、むしろ橋渡しする部分である。
【0092】
従って、幾つかの実施形態によれば、連結部分は少なくとも10原子の長さであり、場合によっては少なくとも20原子の長さであり、場合によっては少なくとも30原子の長さであり、場合によっては少なくとも50原子の長さであり、場合によっては少なくとも100原子の長さであり、場合によっては少なくとも200原子の長さであり、場合によっては少なくとも300原子の長さであり、場合によっては少なくとも400原子の長さであり、場合によっては少なくとも500原子の長さであり、場合によっては少なくとも600原子の長さであり、場合によっては少なくとも700原子の長さであり、場合によっては少なくとも800原子の長さであり、場合によっては少なくとも1000原子の長さである。幾つかの実施形態では、連結部分の長さ(原子数)は10~1000原子、15~800原子、20~600原子、50~500原子、65~400原子、75~350原子及び80~200原子の範囲である。特定の実施形態では、連結部分の長さ(原子数)は20~600原子である。他の特定の実施形態では、連結部分の長さ(原子数)は140原子である。
【0093】
本明細書では、連結部分の長さは(原子数で表される場合)、連結部分の骨格の長さ、即ち、連結部分を介して連結される2個の単量体の各々の残基の間の線状鎖を形成する原子数を意味する。
【0094】
本発明の幾つかの様相によれば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの単量体は、ポリアルキレングリコール連結部分を介して互いに共有結合しており、例えば、幾つかの実施形態では、連結部分はポリアルキレングリコール鎖を含む。
【0095】
本明細書において「ポリアルキレングリコール」という表現は、次の一般式を共有するポリエーテル重合体の一群を包含する:
-O-[(CH-O-]
(式中、mは、各アルキレングリコール単位に存在するメチレン基の数を表し、nは繰り返し単位の数を表し、従って、重合体のサイズ又は長さを表す)。例えば、m=2の場合、重合体はポリエチレングリコールと称され、m=3の場合、重合体はポリプロピレングリコールと称される。
【0096】
幾つかの実施形態では、mは1よりも大きい整数である(例えば、m=2、3、4等)。
【0097】
場合によっては、mはポリアルキレングリコール鎖の単位の間で変わる。例えば、ポリ(アルキレングリコール)鎖は、一緒に連結されるエチレングリコール(m=2)単位とプロピレングリコール(m=3)単位の両方を含むことができる。
【0098】
ポリアルキレングリコールは場合によっては、少なくとも2個の官能基(例えば、本明細書に記載の官能基)を含み、この場合、各々の官能基がα-ガラクトシダーゼ単量体の内の1個と共有結合を形成する。このような官能基は、場合によってはポリアルキレングリコールの末端基であり、この場合、ポリアルキレングリコールの全長がこれら2個の官能基の間にある。
【0099】
「ポリアルキレングリコール」という表現は、酸素原子が別のヘテロ原子(例えば、S、-NH-等)によって置換されたその類似体も包含する。この用語は更に、重合体を構成するメチレン基の1個以上が置換された上述の誘導体を包含する。メチレン基における置換基の例としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、チオール及びチオアルコキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書で使用する「アルキレングリコール単位」という表現は、ポリアルキレングリコールの骨格鎖を形成する、本明細書で上述した-(CH-O-基又はその類似体を包含する。この場合、(CH(又はその類似体)が、別のアルキレングリコール単位に属するヘテロ原子に結合するか、又は(末端単位の場合には)α-ガラクトシダーゼ単量体部分に結合し、且つ、O(又はそのヘテロ原子類似体)が別のアルキレングリコール単位の(CH(又はその類似体)に結合するか、又はα-ガラクトシダーゼ単量体との結合を形成する官能基に結合する。
【0101】
アルキレングリコール単位は、アルキレングリコール単位が3個以上の隣接アルキレングリコール単位に連結されるように分岐していてもよく、この場合、3個以上の隣接アルキレングリコール単位の各々がポリアルキレングリコール鎖の一部である。このような分岐アルキレングリコール単位は、1個の隣接アルキレングリコール単位にそのヘテロ原子を介して連結され、残りの隣接アルキレングリコール単位のヘテロ原子が各々、分岐アルキレングリコール単位の炭素原子に連結される。更に、ヘテロ原子(例えば、窒素)は、それが一部となっているアルキレングリコール単位の2個以上の炭素原子と結合し、これによって分岐アルキレングリコール単位(例えば、[(-CHN-等)を形成することができる。
【0102】
例示的な実施形態では、アルキレングリコール単位の少なくとも50%が同一であり、例えば、それらは、互いに同じヘテロ原子と同じm値を有する。場合によっては、アルキレングリコール単位の少なくとも70%、場合によっては少なくとも90%、場合によっては100%が同一である。例示的な実施形態では、同一のアルキレングリコール単位に結合するヘテロ原子は酸素原子である。更なる例示的な実施形態では、mは同一単位については2である。
【0103】
一実施形態では、リンカーは単一の直鎖リンカーであり、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0104】
本明細書において「ポリエチレングリコール」という用語は、アルキレングリコール単位の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、好ましくは100%が-CHCH-O-である、本明細書の上で定義したポリ(アルキレングリコール)を表す。同様に、「エチレングリコール単位」という表現は、-CHCHO-の単位として本明細書で定義する。
【0105】
任意の実施形態によれば、連結部分は、次の一般式で表されるポリ(エチレングリコール)又はその類似体を含む。
-X-(CR-CR-Y)-X
(式中、X及びXの各々は、少なくとも1個のα-ガラクトシダーゼ単量体と共有結合を形成する官能基(例えば、本明細書に記載の官能基)であり、
YはO、S又はNR(場合によってはO)であり、
nは整数であり、場合によっては1~200(場合によっては5~150、場合によっては40~70)であるが、より大きいnの値も企図され、
、R、R、R及びRの各々は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、チオール及びチオアルコキシから成る群から選択される。)
【0106】
幾つかの実施形態では、nは少なくとも5であり、場合によっては少なくとも8であり、場合によっては少なくとも15であり、場合によっては少なくとも25であり、場合によっては少なくとも40である。
【0107】
幾つかの実施形態では、nは200以下であり、場合によっては150以下であり、場合によっては70以下である。
【0108】
ポリエチレングリコール又はその類似体は、場合によっては、例えば、上述の式におけるCR-CR-Y単位が互いに同一ではない共重合体を含むことができる。
【0109】
幾つかの実施形態では、CR-CR-Y単位の少なくとも50%が同一である。場合によっては、CR-CR-Y単位の少なくとも70%、場合によっては少なくとも90%、場合によっては100%が同一である。
【0110】
場合によっては、連結部分は分岐しており、例えば、上述の式における1個以上のCR-CR-Y単位について、R、R、R、R及びRの少なくとも1個が-(CR-CR-Y)-X-(式中、R~R及びYは本明細書の上で定義した通りであり、pは、nについて本明細書で定義されるような整数(例えば、1~200)であり、Xは、X及びXについて本明細書で定義される通りである)となっている。
【0111】
官能基は、場合によっては、結合(例えば、アミド結合、アミン結合、エステル結合及び/又はエーテル結合が挙げられるが、これらに限定されない)を形成することができる。
【0112】
例えば、官能基は、場合によっては、ポリペプチドにおける窒素原子(例えば、リジン残基又はN末端における窒素原子)とのアミド結合、又はポリペプチドにおける酸素原子(例えば、セリン残基、スレオニン残基又はチロシン残基における酸素原子)とのエステル結合を形成するカルボニル基を含むことができる。
【0113】
上記の代わりに又は上記に加えて、官能基は、場合によっては、ポリペプチドにおけるカルボニル基(例えば、グルタメート残基又はアスパルテート残基又はC末端におけるカルボニル基)とのアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を形成するヘテロ原子(例えば、N、S、O)を含むことができる。
【0114】
上記の代わりに又は上記に加えて、官能基は、ポリペプチドに結合する(例えば、ポリペプチドにおけるヘテロ原子に結合する)アルキル基又はアリール基を含むことができる。
【0115】
上記の代わりに又は上記に加えて、官能基は、場合によっては、α-ガラクトシダーゼ単量体におけるアルキル基とアミン結合を形成する窒素原子を含むことができる。又、α-ガラクトシダーゼ単量体は、場合によっては、官能基におけるアルキル基とアミン結合を形成する窒素原子を含むことができる。このようなアミン結合は(例えば、後述するような)還元的アミン化によって形成することができる。
【0116】
幾つかの実施形態では、官能基の少なくとも1個がポリペプチド(例えば、ポリペプチドにおけるリジン残基)とアミド結合を形成する。
【0117】
官能基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0118】
幾つかの実施形態では、官能基の少なくとも1個がポリペプチドの1個の官能基(例えば、リジン残基又はN末端のアミン基)に結合し、官能基の少なくとも1個がポリペプチドの異なる官能基(例えば、システイン残基のチオール基)に結合する。
【0119】
幾つかの実施形態では、安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、単一のサブユニット内のリジン残基への結合を介して、当該サブユニットのみに結合した更なるPEG部分を含むことができる。
【0120】
幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、ビス-NHS-PEG45と架橋している。本発明での使用に適したビス-NHS-PEG45と架橋しているそのような植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼの製造方法及び特徴については、本譲受人による国際出願公開第2011/107990号に詳述されている。本明細書に記載のビス-NHS-PEG45と架橋している安定化共有結合植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、本明細書ではペグニガルシダーゼαとも称される。
【0121】
本明細書に記載のビス-NHS-PEG45と架橋している安定化共有結合植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、生物学的に活性であり、α-ガラクトシダーゼ活性を有する。本明細書に記載のα-ガラクトシダーゼ活性は、α-ガラクトシダーゼに特徴的な生物学的活性(例えば、基質の末端α-ガラクトシル部分の加水分解等のα-ガラクトシダーゼに特徴的な触媒活性)である。
【0122】
幾つかの実施形態では、α-ガラクトシダーゼの触媒活性は、飽和時の触媒速度(即ち、Vmax値)によって特徴付けられる。
【0123】
或いは、α-ガラクトシダーゼ活性は、ファブリー病の状況における治療活性等の、治療活性(例えば、治療効果を有する酵素活性)である。必要に応じて、治療活性は実験動物(例えば、ファブリー病マウス)にて確認し、必要に応じてヒトファブリー病患者にて確認する。
【0124】
α-ガラクトシダーゼの活性を確認するための技法は当業者に知られているであろう。通常、α-ガラクトシダーゼ(即ち、本明細書に記載の天然形態又は多量体タンパク質構造)を、α-ガラクトシダーゼの基質として当該技術分野で認識されている化合物と接触させた後、活性度を定量的に求める。α-ガラクトシダーゼ活性を特に簡便に検出することができる化合物は、当該技術分野で知られており、市販されている。
【0125】
幾つかの実施形態では、α-ガラクトシダーゼ活性は、4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドの加水分解の解析によって求める。他の実施形態では、α-ガラクトシダーゼ活性は、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシドの加水分解を解析して求める。
【0126】
本明細書に記載の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質の活性を天然α-ガラクトシダーゼの活性と比較する場合、幾つかの特定の実施形態では、天然α-ガラクトシダーゼは、安定化共有結合組換えヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質のα-ガラクトシダーゼ単量体と実質的に同一(例えば、アミノ酸配列及びグリコシル化パターンに関して)なα-ガラクトシダーゼ単量体を含むことが好ましい。
【0127】
幾つかの実施形態によれば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、ヒト対象の生理系における循環半減期によって特徴付けられ、非架橋α-ガラクトシダーゼ[例えば、アガルシダーゼα(レプラガール(登録商標)、Shire社製)及びアガルシダーゼβ(ファブラザイム(登録商標)、Genzyme社製)]の循環半減期よりも長い(例えば、少なくとも20%、少なくとも50%長く、少なくとも100%長く、少なくとも400%長く、少なくとも900%長く、少なくとも1500%長く、少なくとも2000%長く、少なくとも2500%長く、少なくとも3000%長く、少なくとも3500%長く、少なくとも4000%長く、少なくとも5000%長く、少なくとも7500%長く、少なくとも8000%長く、最大で10,000%長く、最大で20,000%長く、最大で50,000%長く、100,000%長く、200,000%長い)。
【0128】
本明細書に記載のように、臨床的状況で試験した場合、静脈内点滴後の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの循環半減期は、大幅に長くなった。従って、本発明の幾つかの様相によれば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、静脈内点滴後の循環半減期(T1/2)が少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも20時間、少なくとも50時間、少なくとも60時間、少なくとも70時間、少なくとも80時間又は少なくとも90時間である。
【0129】
幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの循環半減期は、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを2mg/kg体重で静脈内投与して14日後の血漿中濃度が、市販の組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(アガルシダーゼβ、ファブラザイム(登録商標))を1mg/kg体重で点滴してから2時間後の、最大血漿中濃度と同程度となる長さである。
【0130】
幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの循環半減期(T1/2)は、対象に静脈内投与した場合、静脈内点滴後から少なくとも5時間、10時間、20時間、30時間、40時間、少なくとも50時間、少なくとも60時間、少なくとも70時間、少なくとも80時間又は少なくとも90時間である。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの静脈内点滴後の循環半減期(T1/2)は、3~100時間の範囲、5~70時間の範囲、5~50時間、10~45時間、15~40時間、20~35時間、40~69時間、60~80時間、60~90時間及び25~50時間の範囲である。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの循環半減期(T1/2)は、5~10時間、10~20時間、20~50時間、又は50~80時間、又は50~90時間である。
【0131】
幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの生物学的利用能は、投与後に利用可能な総酵素量を反映し、μg×分/mL又はng×時/mLの単位で「曲線下面積」(AUC0~∞)として表すことができる。従って、幾つかの実施形態では、1.0mg/kgの本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを対象に静脈内投与した後の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの生物学的利用能(曲線下面積)は、10,000~500,000ng×時/mL、50,000~250,000ng×時/mL、少なくとも10,000ng×時/mL、少なくとも25,000ng×時/mL、少なくとも50,000ng×時/mL、少なくとも75,000ng×時/mL、少なくとも100,000ng×時/mL又は少なくとも200,000ng×時/mLの範囲である。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの生物学的利用能(曲線下面積)は、1.0mg/kgの組換えヒトα-ガラクトシダーゼを投与した後に、100,000ng×時/mLである。
【0132】
他の実施形態では、2.0mg/kgの本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを対象に静脈内投与した後の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの生物学的利用能(曲線下面積)は、50,000~800,000ng×時/mL、100,000~600,000ng×時/mL、150,000~500,000ng×時/mL、少なくとも50,000ng×時/mL、少なくとも75,000ng×時/mL、少なくとも100,000ng×時/mL、少なくとも200,000ng×時/mL、少なくとも300,000ng×時/mL、少なくとも400,000ng×時/mL又は少なくとも600,000ng×時/mLの範囲である。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの生物学的利用能(曲線下面積)は、2.0mg/kgの組換えヒトα-ガラクトシダーゼを投与した後に、400,000ng×時/mLである。
【0133】
循環半減期が長くなるのに伴って、場合によっては、インビボの安定性(例えば、代謝に対する抵抗性)がより高くなり、標的器官における取込み量及び/又は活性がより高くなることがある。
【0134】
循環半減期は、生理系(例えば、ヒトや実験動物)から試料(例えば、血液試料)を様々な間隔で採取し、当該技術分野で知られた技法を用いて試料中のα-ガラクトシダーゼの値を測定することで求めることができる。
【0135】
組織半減期は、生理系(例えば、ヒトや実験動物)から試料(例えば、組織試料)を様々な間隔で採取し、当該技術分野で知られた技法を用いて試料中のα-ガラクトシダーゼの値を測定することで求めることができる。
【0136】
場合によっては、半減期は(例えば、実施例の項目に記載したように)終末相半減期として算出されるが、この場合、半減期は、濃度(例えば、血中濃度)が、分布の偽平衡に達した後で50%低下するのに必要な時間である。終末相半減期は、時間対log濃度の線形回帰によって、時間対log濃度の終末相の直線部分から計算することができる(例えば、Toutain & Bousquet-Melou [J Vet Pharmacol Ther 2004, 27:427-39]参照)。従って、終末相半減期は、薬物排出速度に起因する薬物の血漿中濃度における低下の尺度であって、他の理由に起因する低下の尺度ではなく、投与薬物の量が1/2まで低下するのに必要な時間であるとは限らない。
【0137】
α-ガラクトシダーゼ(例えば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼ又は非架橋α-ガラクトシダーゼ)のレベルの決定は、(例えば、α-ガラクトシダーゼに対する抗体を介して)α-ガラクトシダーゼの物理的存在の検出、及び/又は(例えば、本明細書に記載のように)α-ガラクトシダーゼ活性レベルの検出を含むことができる。
【0138】
本明細書において「ヒトα-ガラクトシダーゼ」とは、ヒトにおいて生まれながらに存在するα-ガラクトシダーゼタンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一な(例えば、本明細書で上述したような)アミノ酸配列を含む植物組換えα-ガラクトシダーゼを意味する。
【0139】
本発明での使用に適したα-GALの例としては、配列番号1、配列番号2及び配列番号3から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するα-GALが挙げられるが、これに限定されない。場合によっては、特定の実施形態では、α-GALは配列番号2及び配列番号3から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態では、α-GALは配列番号2又は配列番号3の内のいずれか一方とすることができる。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、配列番号2のα-GALと配列番号3のα-GALの両方を含む植物組換えα-ガラクトシダーゼタンパク質の組み合わせを含む植物組換えα-ガラクトシダーゼ集団を含む。
【0140】
本明細書において「α-ガラクトシダーゼ」とは、Gb中のガラクトース部分に対して酵素活性(例えば、加水分解)を示す任意のタンパク質(例えば、α-ガラクトシダーゼA)を意味する。場合によっては、「α-ガラクトシダーゼ」とは、E.C.3.2.1.22を意味する。本明細書で使用する「酸性α-ガラクトシダーゼ」とは、リソソーム中で生じるような酸性pH条件下(例えば、約pH4.2~5)でガラクトース含有オリゴ糖から末端結合α-ガラクトース部分を加水分解する能力によって特徴付けられる、α-ガラクトシダーゼを意味する。
【0141】
場合によっては、α-ガラクトシダーゼタンパク質は、少なくとも1個のマンノース-6-リン酸(M6P)部分を更に含む。M6P部分(1又は複数の部分)は、α-ガラクトシダーゼタンパク質の1個以上のα-ガラクトシダーゼ単量体に(例えば、リンカーを介して)連結することができる。
【0142】
M6P含有部分を生体分子(例えば、ポリペプチド)に導入するための技法及び試薬は国際公開第2009/024977号に記載されている。
【0143】
本明細書で詳述するように、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの静脈内投与によって、腎臓、心臓及び患者(例えば、疼痛)スコアを含む、ヒト患者における臨床パラメータが改善/安定化した。
【0144】
Gb3糖脂質の蓄積はファブリー病の自然歴の特徴であり、その蓄積の減少はファブリー病患者にとって、ERTにおける臨床パラメータである。一実施形態では、本発明の方法を用いて糖脂質の蓄積を減少させることができる。従って、幾つかの実施形態では、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを静脈内投与すると、血漿中のGb3及び/又はリゾ-Gb3の濃度が低下する。幾つかの実施形態では、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを静脈内投与すると、対象の腎尿細管周囲毛細血管においてGb3(糖脂質)が減少する。特定の実施形態では、定量的BLISSスコアによって求めた減少は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれ以上である。幾つかの実施形態では、減少をBLISSスコアで測定する。本発明に係る安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの投与に応じたGb3及び/又はリゾGb3の減少は、治療を1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年又はそれ以上行った後に測定する。幾つかの実施形態では、治療開始後6ヶ月で測定したGb3の減少を治療前のGb3と比較した結果が、少なくとも50%である。
【0145】
ファブリー病患者も同様に疼痛、特に神経因性疼痛を患っており、本発明の方法及び安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを用いて患者のファブリー病関連疼痛を軽減することができる。幾つかの実施形態によれば、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与すると、対象の疼痛が軽減する。多くの疼痛質問票が疼痛の軽減を評価するのに利用可能であり、例えば、マクギル疼痛質問票、ファブリー病疼痛質問票及び簡易疼痛質問票が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、疼痛の軽減を簡易疼痛質問票によって測定する。幾つかの実施形態では、質問票による疼痛の軽減は少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又はそれ以上である。特定の実施形態では、疼痛の軽減は少なくとも50%の軽減である。本発明に係る安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの投与に応じた疼痛の軽減は、治療を1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年又はそれ以上行った後に測定する。他の実施形態では、疼痛パラメータの減少を、治療開始後6ヶ月で測定する、及び/又は治療前のスコアと比較する。
【0146】
幾つかの実施形態では、疼痛の軽減を各治療周期間内の1週間、2週間及び3週間に測定する。幾つかの実施形態では、疼痛の軽減を投与後2週目に確認する。幾つかの実施形態では、疼痛の軽減を投与後3週目に確認する。
【0147】
他の実施形態によれば、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与すると、対象において一般的な生活の質に関する感覚が改善する。多くの「生活の質」質問票が治療結果を評価するのに利用可能であり、例えば、マクギルの生活の質質問票、生活の質尺度(QOLS)、WHOの生活の質(WHOQOL)及びEQ-5D-5L質問票が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、生活の質をEQ-5D-5L質問票によって測定するが、これには健康についての5個の側面、即ち、運動性、セルフケア能力、通常の活動を行う能力、疼痛及び不快感、不安及び鬱状態が含まれる。各ドメインには5個のオプション値がある。幾つかの実施形態では、質問票による改善は少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又はそれ以上である。特定の実施形態では、生活の質の改善は少なくとも50%の改善である。本発明に係る安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの投与に応じた生活の質の改善は、治療を1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年以上行った後に測定する。他の実施形態では、生活の質の改善を治療開始後6ヶ月で測定するか、及び/又は治療前のスコアと比較する。
【0148】
腎障害は、ファブリー病の他の一般的な臨床的合併症であり、主に腎尿細管内の糖脂質の蓄積によって引き起こされ、末期腎疾患に至る過程での進行性の悪化によって特徴付けられる。本発明の方法及び安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを用いて、腎症の進行を遅らせ、腎機能を安定化させ、或いは患者の腎機能を定常レベルに維持することができる。従って、幾つかの実施形態によれば、本発明の方法を用いて、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与して、対象におけるファブリー腎症を軽減する。
【0149】
従って、他の実施形態によれば、本発明の方法を用いて、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与して、対象における腎機能の定常レベルを維持する。
【0150】
ファブリー病患者の腎機能を評価する方法としては、検査マーカー(タンパク尿、微量アルブミン尿、慢性腎臓病(CKD)評価等)、肉眼的血尿、生検、生検の電子顕微鏡検査、腎機能障害、腎超音波検査及びMRI異常が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、腎機能(及び腎機能障害、又は腎症)は糸球体濾過率及び/又はタンパク尿スコアによって測定する。糸球体濾過率(GFR)は、単位時間当たりに腎臓糸球体毛細血管からボーマン嚢に濾過される体液の量である。糸球体濾過率(GFR又はeGFR)を算出又は概算するのに用いる幾つかの異なる技法が存在する。診療では、クレアチニンクリアランス又は血清クレアチニン値に基づくクレアチニンクリアランスの概算値を用いてGFRを概算する。腎疾患における食事改善(MDRD)式(4種の変数:血清クレアチニン、年齢、民族、性別を使用)を用いた推定GFR(eGFR)のための方法が最も一般的に用いられ、CKD-EPI式(慢性腎疾患疫学共同研究)がMDRD式よりも正確な式を作成するために開発された。
【0151】
幾つかの実施形態では、腎機能の悪化が軽減する。本発明の幾つかの様相に係る本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの静脈内投与に応じた腎機能低下の軽減は、治療を3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又はそれ以上行った後に測定する。他の実施形態では、ファブリー病関連腎臓悪化の軽減を、治療開始後6ヶ月で測定する、及び/又は治療前のスコアと比較する。特定の実施形態では、治療を6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又はそれ以上行った後に概算糸球体濾過率及び/又はタンパク尿スコアを用いて腎機能を測定した場合、腎機能は治療開始時と同じか又は同等の定常レベルに維持されていた。
【0152】
幾つかの実施形態では、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与すると、対象における少なくとも1個の胃腸パラメータが改善する。幾つかの実施形態では、胃腸パラメータとして腹痛及び/又は腹痛の頻度が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、胃腸関連の徴候及び症状の頻度が低下する。他の実施形態では、胃腸パラメータの低下を治療開始後6ヶ月で測定し、及び/又は治療前の状態と比較する。
【0153】
特定の実施形態では、ファブリー病関連胃腸パラメータは、治療を2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月又はそれ以上行った後に測定した場合、の定常レベルと同等のままである。
【0154】
幾つかの実施形態では、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与すると、対象における少なくとも1個の心臓パラメータが改善/安定化する。心臓パラメータとしては、心電図成分、心機能(例えば、駆出率)、不整脈、弁機能不全及び心肥大が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、心臓パラメータは、MRIによって測定したLVM及びLVMIである。本発明の幾つかの様相に係る、治療有効量の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの静脈内投与に応じた心臓パラメータの改善/安定化は、治療を6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又はそれ以上行った後に測定する。他の実施形態では、MRIによって測定するLVM又はLVMIの低下を、治療開始後6ヶ月で測定する、及び/又は治療前の値と比較する。
【0155】
特定の実施形態では、治療を6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又はそれ以上行った後の心臓パラメータは、治療開始時に測定した定常レベルのままである。
【0156】
他の実施形態では、患者のファブリー病の状態は、ファブリー病による負担、疾患の複合徴候及び症状を定量化するためのツールであるマインツ重症度スコア指数(MSSI)によって評価することができる。従って、MSSIを用いて、本発明のαガラクトシダーゼタンパク質及びそれを用いた方法で治療した患者の病状を評価することができる。従って、幾つかの実施形態によれば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量を投与すると、対象において安定又は改善されたMSSIスコアが維持される。本発明の幾つかの様相に係る本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの投与に応じたMSSIスコアは、治療を6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又はそれ以上行った後に測定することができる。他の実施形態では、MSSIの低下を治療開始後6ヶ月で測定する、及び/又は治療前のスコアと比較する。
【0157】
他の特定の実施形態では、治療を6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月又はそれ以上行った後に、MSSIを用いて測定した患者のファブリー病の状態は、治療開始時に測定した定常レベルのままである。
【0158】
本発明の実施形態の他の様相によれば、本明細書に記載の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、安定化共有結合植物組換えヒトαガラクトシダーゼタンパク質を含む。
【0159】
本明細書において「医薬組成物」とは、本明細書に記載の、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質の1種以上と、他の化学成分(例えば、薬学的に許容可能な適切な担体や賦形剤)との製剤を意味する。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0160】
以下、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、生物に対して著しい刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を意味する。担体の例としては、プロピレングリコール、生理食塩水、乳濁液、有機溶媒と水の混合物、固体(例えば、粉末)及び気体担体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
本明細書における「賦形剤」という用語は、医薬組成物に添加して化合物の投与を更に容易にするための不活性物質を意味する。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び各種デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
この医薬組成物は、場合によっては、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼのα-ガラクトシダーゼを更に安定化する追加成分を含む。場合によっては、追加成分はガラクトースである。
【0163】
或いは、ガラクトースの代わりにガラクトース誘導体(例えば、ガラクトース含有グリコシド)を使用することができる。場合によっては、非還元ガラクトース誘導体を使用する。
【0164】
薬物の処方及び投与のための技法は、 “Remington’s Pharmaceutical Sciences” Mack Publishing Co., Easton, PA, latest editionに記載されており、この文献を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0165】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知の方法、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。
【0166】
従って、本発明で使用するための医薬組成物は、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの薬学的に使用可能な製剤への加工を容易にする、賦形剤及び助剤を含む1種以上の薬学的に許容可能な担体を用いて、従来法によって処方することができる。適切な処方は選択された投与経路に依存する。
【0167】
注射又は点滴の場合、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを水溶液中、好ましくは、生理学的に適合する緩衝液(例えば、ハンクス液、リンゲル液、又はプロピレングリコールやポリエチレングリコール等の有機溶媒を含むか又は含まない生理食塩水緩衝液)中で処方することができる。
【0168】
本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、静脈内(IV)投与用の水性流体懸濁液又は溶液の一部として処方することができる。
【0169】
本明細書に記載の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、例えば、ボーラス注射又は持続点滴による非経口投与用に処方することができる。注射又は点滴のための製剤は、単位剤形(例えば、アンプル、又は必要に応じて防腐剤が添加された多用量容器)で提供することができる。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又は乳濁液とすることができ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤等の処方剤を含むことができる。
【0170】
非経口投与用の医薬組成物としては、水溶性形態の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの水溶液が挙げられる。更に、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの懸濁液は、適切な油性注射懸濁液及び乳濁液(例えば、油中水型、水中油型又は油中油中水型乳濁液)として調製することができる。適切な親油性溶媒又は媒体としては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル等の合成脂肪酸エステル、トリグリセリド又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストラン)を含むことができる。必要に応じて、懸濁液は、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの溶解度を高くして高濃度溶液の調製を可能にする、適切な安定剤又は薬剤を含むことができる。
【0171】
本発明の製剤は、本明細書に記載の方法と共に、又はファブリー病を治療するための他の方法と共に使用することができる。本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの製剤は、対象へ投与する前に更に希釈することができる。幾つかの実施形態では、製剤を生理食塩水で希釈し、対象へ投与する前にIVバッグ又は注射器で保持する。
【0172】
代表的な実施態様では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として通常の手順に従って処方する。通常、静脈内投与用の組成物は滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、医薬品は可溶化剤及び局所麻酔薬(例えば、注射部位の痛みを軽減するためのリグノカイン)を含むこともできる。一般に、成分は別々に供給されるか、又は混合して単位剤形、例えば、活性剤の量を示すアンプルやサシェ等の密封容器中の凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給される。医薬品を点滴によって投与する場合、例えば、滅菌医薬グレード水又は生理食塩水を含む点滴ボトルを用いて分注することができる。医薬品を注射によって投与する場合、例えば、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを用意して成分を投与前に混合できるようにする。
【0173】
或いは、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを粉末形態として、使用前に適切な媒体(例えば、無菌の発熱物質を含まない水)で構成することができる。
【0174】
本明細書に記載の医薬組成物は、適切なゲル相担体又は賦形剤の固体を含むこともできる。そのような担体又は賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン及びポリエチレングリコール等の重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
本発明の状況での使用に適した医薬組成物としては、活性成分をその意図する目的を達成するのに有効な量で含む組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量とは、疾患の症状を予防、軽減又は改善し、生活の質を改善し、又は治療対象の生存を延長するのに有効な、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの量を意味する。
【0176】
本発明の方法で使用する任意の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの場合、治療有効量又は用量は、動物における活性アッセイから最初に推定することができる。例えば、動物モデルで用量を処方して、活性アッセイによって求められるIC50を含む循環濃度範囲(例えば、安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質の生物学的活性の最大上昇の半分を達成する、安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質の試験濃度)を得ることができる。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に求めることができる。
【0177】
以下の実施例の項で示すように、本発明の実施形態の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は、0.1mg/kg体重~約5.0mg/kg体重の範囲とすることができる。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は、0.1、0.2、0.5、0.75、1.0、1.25、1.50、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.50、3.75、4.0、4.25、4.50、4.75又は5.00mg/kg体重のいずれか一種とすることができる。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は1.0mg/kg体重である。他の特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は2.0mg/kg体重である。更に他の特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの治療有効量は5.0mg/kg体重である。一般に、本明細書に記載の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの毒性及び治療有効性については、実験動物における標準的な製薬手順によって、例えば、対象タンパク質構造のEC50、IC50及びLD50(試験動物の50%の死亡を引き起こす致死量)を測定することによって、求めることができる。このような活性アッセイや動物試験から得たデータを用いて、ヒトに使用する投与量の範囲を処方することができる。
【0178】
投与量は使用する剤形及び利用する投与経路に応じて変わり得る。正確な処方、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択することができる(例えば、Fingl et al., 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p.1参照)。
【0179】
投与量及び投与間隔を個々に調整して、所望の効果を維持するのに十分な活性部分の血漿中濃度を得ることができる。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを20~200mL/時の速度で静脈内点滴によって投与する。特定の実施形態では、例えば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを総量150mLで送達し、投与量が2.0mg/mL未満の場合、体重が75kg未満の患者では点滴速度を37.5又は75mL/時とし、体重が75kgを超える患者では25.2mL/時とすることができる。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを総量350mLで送達し、投与量が2.0mg/kg体重の場合、体重が90kg未満の患者では点滴速度を58.2mL/時とし、体重が90kgを超える患者については点滴速度を個々に決めることができる。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを点滴1回当たり、例えば、体重が70kg以下の患者には150mLの量で送達し、例えば、体重が70~100kgの患者には総量を250mLとし、例えば、体重が100kgを超える患者には総量を500mLの点滴とし、150mLの点滴では0.83mL/分(50mL/時)の速度、250mLの点滴では1.38mL/分(82.2mL/時)の速度、500mLの点滴では2.78mL/分(167mL/時)の速度とする。
【0180】
治療に対する患者の耐性を観察した後に点滴時間を変更することができる。幾つかの実施形態では、医師の評価の管理に基づいて、点滴時間を1.5時間まで徐々に短縮することができる。
【0181】
幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの所望投与量の点滴時間は開始から終了まで最大で8時間とすることができる。幾つかの実施形態では、点滴時間は1時間、2時間、3時間、4.5時間、5時間、6時間、7時間又は8時間である。場合によっては、個々の状況及び個々の対象の必要性に応じて点滴時間が8時間を超えることがある。
【0182】
幾つかの実施形態では(例えば、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの投与量が2.0mg/kgである場合)、静脈内点滴を行うと共に、点滴開始の12時間前及び/又は2時間前に、H1遮断薬(ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、セトリジン、ロラタジン、デスロラチジン)及びH2遮断薬(ラニチジン、シメチジン、ファモチジン)を標準用量で含む(但し、これらに限定されない)前投薬プロトコルを行うことができる。
【0183】
驚くべきことに、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼをファブリー病患者に投与した場合、ファブリー病ERTに使用される従来の入手可能なα-ガラクトシダーゼ製剤と比較して、長期間に亘り優れた生物学的利用能を示した(後述の実施例3~5参照)。従って、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼは、投与後2週間の実証期間中だけでなく、静脈内投与後3週目及び4週間目までの長期間に亘って、生物学的利用能を有する。
【0184】
従って、特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを点滴として2週間を超える投与間隔(14日±3日)で静脈内投与する。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを点滴として2週間(14日±3日)を超え4週間(28日、±3日)までの投与間隔で静脈内投与する。幾つかの実施形態では、間隔を15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日(3週間)、22日、23日、24日、25日、26日、27日又は28日(4週間)、29日、30日、31日(1ヶ月)、32日、33日、34日、35日(5週間)、36日、37日、38日、39日、41日、42日(6週間)、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日(7週間)、50日、51日、52日、53日、54日、55日又は56日(8週間)の内のいずれか一種とすることができる。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを点滴として2週間(14日±3日)を超え8週間(56日、±3日)までの投与間隔で静脈内投与する。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを点滴として17日~8週間、17日~6週間、17日~5週間、3週間~6週間、3週間~5週間、3週間~4週間、4週間~6週間又は4週間~5週間の間隔で静脈内投与する。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを6週間±3日毎に1回の範囲の間隔で静脈内投与する。他の実施形態では、間隔は6週間毎に1回である。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを5週間±3日毎に1回の範囲の間隔で静脈内投与する。他の実施形態では、間隔は5週間毎に1回である。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを4週間±3日毎(例えば、毎月)に1回の範囲の間隔で静脈内投与する。他の実施形態では、間隔は4週間に1回である。一実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質を各投与間に3週間±3日の間隔で投与する。
【0185】
他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを各投与間に3週間の間隔で投与する。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを各投与間に3週間の間隔で1.0mg/kg体重の用量で投与する。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを各投与間に3週間の間隔で2.0mg/kg体重の用量で投与する。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを各投与間に4週間の間隔で1.0mg/kg体重の用量で投与する。更に他の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを各投与間に4週間の間隔で2.0mg/kg体重の用量で投与する。
【0186】
本発明の方法(例えば、レジメン)に従った本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼの投与を容易にするために、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを静脈内投与用に処方した単位剤形として、或いは静脈内投与(点滴)用に処方した医薬組成物として提供することができる。
【0187】
従って、本発明の一様相によれば、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを2.0~500mg含む単位剤形を提供する。この範囲は、体重が10~250kgの患者において、2週間を超え4週間までの間隔で投与する最小用量から2週間を超え4週間までの間隔で投与する最大用量を対象とすることが理解されるであろう。
【0188】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを2.0~500mg含む。
【0189】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを5.0~470mg含む。
【0190】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを10.0~450mg含む。
【0191】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを17.0~425mg含む。
【0192】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを21.0~400mg含む。
【0193】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを35.0~370mg含む。
【0194】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを55.0~340mg含む。
【0195】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを75.0~300mg含む。
【0196】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを90.0~270mg含む。
【0197】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを100.0~225mg含む。
【0198】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを100.0~200mg含む。
【0199】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを110.0~190mg含む。
【0200】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを120.0~175mg含む。
【0201】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを130.0~150mg含む。
【0202】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを10.0mg含む。
【0203】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを30.0mg含む。
【0204】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを50.0mg含む。
【0205】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを75.0mg含む。
【0206】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを100.0mg含む。
【0207】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを125.0mg含む。
【0208】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した架橋している植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼタンパク質を150.0mg含む。
【0209】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを175.0mg含む。
【0210】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを200.0mg含む。
【0211】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを250.0mg含む。
【0212】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを300.0mg含む。
【0213】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを350.0mg含む。
【0214】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを400.0mg含む。
【0215】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを430.0mg含む。
【0216】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを480.0mg含む。
【0217】
一実施形態によれば、単位剤形は、ヒト対象への投与用に処方した本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを500.0mg含む。
【0218】
本発明に係るヒト対象においてファブリー病を治療する方法は、ファブリー病に対する独立型治療として提供することができる。或いは、更なる治療選択肢、従来の治療又は非従来型治療と組み合わせることができる。本発明の方法又は安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼによる治療に適したファブリー病患者は、本発明の方法又はタンパク質による治療前、治療中又は治療後に、例えば、非ERT治療剤による治療を受けることができる。非ERT治療剤の例としては、ミガーラスタット塩酸塩(Chaperone Amicus Therapeutics社製)、イビグルスタット(INN)(グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)阻害剤)(Genzyme Corp製)、ルセラスタット(INN)-ピペラジン誘導体(Actelion Ltd製)、NP-003-(糖タンパク質-1(MDR-1又はABCB1)阻害剤)(Neuraltus Pharmaceuticals,Inc製)、SBLSD-4-(遺伝子療法(インビボ遺伝子編集)-Sangamo BioSciences,Inc.製)、Genz-78132(グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)阻害剤)(Genzyme Corporation製)、ミグルスタット-(グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)阻害剤、GlaxoSmithKline Plc and Actelion Ltd製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
本発明の方法又は安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼによる治療に適したファブリー病患者は、本発明の方法又は安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼによる治療前又は治療後に、ERT治療剤及びレジメンによる治療を受けることができる。ERT治療剤の例としては、ファブラザイム(登録商標)及びレプラガール(登録商標)又は従来のレジメンにおけるペグニガルシダーゼαが挙げられるが、これらに限定されない。
【0220】
本発明の方法又はタンパク質による治療に適した患者集団としては、全年齢層の男女のファブリー病患者、重篤な症状の有無に関わらないファブリー病患者、進行の遅い患者、早期診断患者及びファブリー病罹患患者、若年患者及び定常ファブリー病患者が挙げられる。
【0221】
本明細書で使用される「定常」ファブリー病患者とは、所定の期間に亘ってファブリー病パラメータの少なくとも1種のレベルを維持している、及び/又はそのパラメータ(例えば、心臓、腎臓[eGFR低下等]、疼痛、胃腸及びバイオマーカー[血漿や尿Gb3やリゾ-Gb3等])において同等の悪化率を維持しているファブリー患者を意味する。幾つかの実施形態では、定常ファブリー病患者としては、症状の重症度が軽度~中程度の新たに診断されたファブリー病患者、未経験患者及び以前にファブリー病の治療を受けた患者を含む集団に由来する患者を挙げることができる。幾つかの実施形態では、定常ファブリー病患者としては、本発明の方法及び/又は組成物による治療の開始前に定常であった患者が挙げられる。
【0222】
投与する組成物の量は、当然のことながら、治療対象、苦痛の重症度、投与方法、処方医の判断等に依存する。
【0223】
本発明の組成物は、必要に応じて、FDA/EMA(米国食品医薬品局/欧州医薬品庁)承認のキット等のパック又はディスペンサー装置にて提供することができ、これは有効成分を含む1種以上の単位剤形を含むことができる。パックは、例えば、金属又はプラスチック箔を含むことができ、その例としてはブリスターパックや加圧容器等が挙げられるが、これらに限定されない。パック又はディスペンサー装置には投与用の説明書を添付することができる。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する、政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知が添付されていてもよく、この通知はヒト又は獣医投与用組成物の形態に関する政府機関による承認を反映する。このような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は承認された製品挿入物、又はEMAや他の任意の規制機関によるものとすることができる。適合する医薬担体に処方した本発明の実施形態のタンパク質構造含有組成物は、本明細書で詳述するように調製し、適切な容器に入れ、示された病態の治療又は診断に向けてラベルを貼ることもできる。
【0224】
従って、本発明の一実施形態によれば、本発明の選択した安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼに応じて、本明細書に記載の医薬組成物を包装材料に包装し、包装材料内又は包装材料上に印刷して識別させ、上述のように架橋タンパク質構造の活性が有益となる病態の治療での使用に備える。
【0225】
幾つかの実施形態では、安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼ又はヒトα-ガラクトシダーゼ含有組成物をそれを必要とする対象に投与するための説明書を包装材料、パック又はディスペンサー、キット又は容器に含めるか又は添付することができる。幾つかの実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼ又はヒトα-ガラクトシダーゼ含有組成物を含む容器及び/又はバイアルに貼付したラベル内に投与用の説明書を含めることができる。
【0226】
使用及び投与のための説明書には、特に、具体的な適応症(例えば、ファブリー病)、投与用の本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼ又はヒトα-ガラクトシダーゼ含有組成物を調製するための指示書、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼ又は組成物の投与についての詳細と投与後プロトコルについての詳細、及び本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼ又はヒトα-ガラクトシダーゼ含有組成物を用いた治療における投与量及びレジメンに関する詳細を含めることができる。特定の実施形態では、本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを点滴として2週間(14日±3日)を超える投与間隔、即ち、3週間毎に1回、又は4週間±3日に1回(例えば、月に1回)の間隔で静脈内投与するための指示書を説明書に含めることができる。他の実施形態では、4週間毎に1回の投与間隔で投与するための指示書が説明書に含まれる。更なる実施形態では、各投与間に3週間±3日の間隔で本発明の安定化共有結合ヒトα-ガラクトシダーゼを投与するための指示書が説明書に含まれる。
【0227】
本明細書で使用される「約」という用語は±10%を意味する。
【0228】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」ことを意味する。
【0229】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0230】
「例示的」という用語は、本明細書では「例、実例又は例示となること」を意味するためにに使用する。「例示的」として説明されたいずれの実施形態も、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではなく、及び/又は他の実施形態からの特徴の組み入れを排除すると解釈されるべきではない。
【0231】
「場合により」という用語は、「幾つかの実施形態で提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために本明細書で使用する。本発明の任意の特定の実施形態は、複数の「任意の」特徴を含むことができる(但し、そのような特徴が矛盾する場合を除く)。
【0232】
本明細書において、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数をも対象とする。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
【0233】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、及びその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0234】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、それらの間の分数及び整数の全部を含むことを意図する。
【0235】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医療の各分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0236】
異常な活性、疾病又は病態と関連して本明細書で使用する「治療する」という用語は、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延又は逆転、病態の臨床的又は審美的な症状の実質的な寛解、あるいは病態の臨床的又は審美的な症状の悪化の実質的な予防を含む。
【0237】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、又は任意の好適な部分的な組み合わせ、又は適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0238】
上述したように、本明細書に記載され、特許請求の範囲に請求される本発明のさまざまな実施形態及び態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【0239】
ここで、上記の記載と共に本発明を限定することなく説明する以下の実施例に参照する。
【実施例0240】
臨床試験プロトコル:成人ファブリー病患者に対して2週間毎に静脈内点滴によって投与するペグニガルシダーゼαの安全性、耐容性、薬物動態及び探索的有効性パラメータを評価するための、第1/2相非盲検用量範囲研究
この研究では、標的集団においてビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(prh-α-GAL-I-CL45)(ペグニガルシダーゼα)の安全性、耐容性、薬物動態及び探索的有効性を評価する。対象は、ファブリー病の徴候と共に、α-GAL-A活性(男性)又は遺伝子検査(女性)に基づいてファブリー病の確定診断を受ける必要があり、過去6ヶ月間にERTによる治療を受けていないことが求められた。評価項目として選択されたパラメータは、疾患に最も関連性のあるパラメータであり、これによって、安全性、薬物動態学及び有効性評価項目の有意且つ関連性のある評価が可能となる。3種の用量レベルの研究によって、安全性、耐容性及び臨床成績に関する3種の用量レベルについて重要な情報が得られた。
【0241】
研究集団の選択
包含基準:
1.症状を示す成人ファブリー病患者(18歳以上、男性及び女性)
2.男性:血漿及び/又は白血球αガラクトシダーゼ活性(活性アッセイによる)が正常値の下限未満(血漿中LLN=3.2nmol/時/mL、白血球中LLN=32nmol/時/mg/タンパク質)
3.女性:ファブリー病変異と一致する過去の遺伝子検査結果
4.尿中グロボトリアオシルセラミド(Gb3)濃度>正常上限値の1.5倍
5.過去に酵素補充療法(ERT)を受けたことがない患者、又は過去6ヶ月間にERTを受けたことがなく、陰性抗ペグニガルシダーゼα抗体検査を受けた患者
6.eGFR≧60mL/分/1.73m
7.インフォームド・コンセントの署名
8.女性患者、及びパートナーが出産可能年齢の男性患者は、医学的に許容し得る避妊法(リズム法を含まない)を用いることに同意する
【0242】
除外基準
以下のいずれかに該当した場合、対象を登録から除外した。
1.試験検診前30日以内に何らかの治験薬の試験に参加
2.ファブラザイム(登録商標)(アガルシダーゼ-β)、レプラガール(登録商標)(アガルシダーゼ-α)又はファブリー病治療用の他の任意の治験薬のいずれかによる治療
3.慢性腎臓病ステージ3~5(CKD3~5)
4.透析又は腎移植の履歴
5.検診前4週間以内にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)療法の開始又は用量変更
6.MRIによる重度の心筋線維症(2個以上の後期増強[LE]陽性左室セグメント)(Weidemann et al. 2009)。
7.臨床脳卒中の履歴
8.妊娠中又は授乳中
9.HIV及び/又はHBsAg及び/又はC型肝炎感染の存在
10.ERTに対する既知のアレルギー
11.ガドリニウム系造影剤に対する既知のアレルギー
12.治験責任医師及び/又は医長の判断において、患者が試験の要件を順守することを妨げるような医学的、感情的、行動的又は心理的状態のいずれかの存在。
【0243】
薬物投与
全ての点滴は入院中に行い、点滴後の観察期間は必要に応じて外来患者モニタリングとした。
【0244】
3種の治療群で対象集団を構成した。治療群I:2週間毎に0.2mg/kg。治療群II:2週間毎に1mg/kg。治療群III:2週間毎に2mg/kg。
【0245】
対象(1群当たり4~8名の患者)は2週間(14日間)毎に静脈内点滴を受けた。
【0246】
薬物動態(PK)パラメータ
次のPKパラメータ:Cmax、t1/2、Tmax、AUC0-t及びAUC0-∞を血漿中濃度対時間プロファイルから導き出して、試験薬物のプロファイルを求める。試料の採取は治療1日目(最初の点滴)、3ヶ月目の訪問点滴時、6ヶ月目の訪問点滴時及び12ヶ月目の訪問点滴時に行った。PK用血液を以下の時点で採取した:点滴前(ベースライン)、点滴開始1時間後、点滴終了時、点滴終了から1、4、8、24、48±3、72±3、96±3時間後及び2週間±3日後(最後の血液試料は患者の次回点滴の直前に採取した)。
【0247】
有効性変数
評価項目解析用に評価した有効性パラメータは次の通りである。
・試験中のベースライン時と各点滴時の、血漿中及び尿沈渣中のGb3濃度
・試験中のベースライン時と各点滴時の、血漿中グロボトリアオシルスフィンゴシン(リゾ-Gb3)濃度
・ベースライン時と最終点滴時の胃腸症状の評価
・ベースライン時と最終点滴時の腎機能(eGFRとタンパク尿)
・ベースライン時と最終点滴時の略式簡易型疼痛一覧表(BPI)
【0248】
以下の追加の手順を必要に応じてベースライン時に実施した。
・Gb3濃度に関する腎生検
・Gb3濃度に関する皮膚パンチ生検
・心臓と脳のMRI
・マインツ重症度スコア指数(MSSI)
・心機能評価(心エコー検査とストレス試験)
【0249】
安全性変数
安全性の評価は、治療により発現したAE(有害事象)(例えば、臨床的に有意な研究レベルの異常、ベースラインからのECG変化、身体検査所見、及び治験薬投与後の注射部位の評価)の頻度、重症度及び期間によって行った。
抗(ペグニガルシダーゼα)抗体の評価を投与前(ベースライン時)、1ヶ月毎、最終点滴時、及び最終点滴の1ヶ月及び3ヶ月後に行った。
【0250】
臨床検査評価
ビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(prh-α-GAL-I-CL45、ペグニガルシダーゼα)の投与過程に亘って、以下の臨床パラメータも評価した。
・血液学:全血球数、即ち、総白血球数(1mm)(好中球、リンパ球、単球、好酸球及び好塩基球)、総赤血球(ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン及び平均赤血球ヘモグロビン濃度)及び血小板。
・凝固プロファイル:プロトロンビン時間(PT)と部分トロンボプラスチン時間(PTT)
・生化学:ナトリウム、カリウム、グルコース、血中尿素窒素、クレアチニン、カルシウム、リン酸(無機)、尿酸、総タンパク質、アルブミン、ビリルビン(総量)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、乳酸脱水素酵素及びクレアチンホスホキナーゼ
・尿検査:血液、グルコース、ケトン及びタンパク質の存在を確認するための尿試験紙
【0251】
抗ペグニガルシダーゼα抗体
陽性IgG抗体応答を有する対象における中和抗体を含む抗ペグニガルシダーゼαを評価した。
【0252】
有害事象(AE)と重篤有害事象(SAE)
有害事象(AE)は、臨床試験に参加する対象におけるあらゆる不都合な医療上の出来事として定義し、薬物治験に関連すると見なされるかどうかに関わらず、ペグニガルシダーゼαの使用に一時的に伴う、望ましくなく、意図しないあらゆる徴候、症状又は疾患を含む。AEの収集は治療開始から最終訪問投与後90日まで行った。AEには偶発的な負傷、計画された用量設定以外の処方の変更(薬物及び/又は用量)の理由、入院の理由、又は外科的処置(但し、既存の病態に対する軽微な選択的手術を除く)の理由も含まれる。
【実施例0253】
ペグニガルシダーゼαはファブリー病の症状の軽減において安全で有効である
0.2mg/kg、1.0mg/kg及び2.0mg/kgのペグニガルシダーゼαで静脈内治療を行った後の安全性(有害作用)と臨床パラメータの改善について患者をモニターした。安全性データから、ペグニガルシダーゼαは耐容性が良好であり、18名の患者間で有害作用(AE)の発生率が低いことが分かった。ペグニガルシダーゼαは、血漿中及び腎臓の尿細管周囲毛細血管中グロボトリアコシルセラミド(Gb3)の減少にも有効であった。
【0254】
ペグニガルシダーゼαによる治療の6ヶ月後にモニターすると、血漿中Gb3及びリゾGb3の有意な減少も男性患者で見られた。腎機能(eGFR及び尿タンパク質/クレアチニン)は、ペグニガルシダーゼαによる12ヶ月間の治療を通して、患者全てにおいて安定したままであった。従って、隔週で投与するペグニガルシダーゼαによる治療は明らかに安全であり、ファブリー病患者に対して有効である。
【実施例0255】
ペグニガルシダーゼαの薬物動態プロファイル:
架橋はペグニガルシダーゼαの生物学的利用能を高める
血漿中ペグニガルシダーゼα濃度に基づき、治療1日目(最初の点滴)、3ヶ月目の訪問静脈内点滴時、6ヶ月目の訪問静脈内点滴時及び12ヶ月目の訪問静脈内点滴時に0.2mg/kg、1.0mg/kg及び2.0mg/kgのペグニガルシダーゼαを投与した患者において、薬物動態パラメータをモニターした。投与直前と各治療の間の14日間を通じて、PK用血液を採取した。
【0256】
全ての投与量に対し(図1の例を参照)、有意な血漿中酵素濃度(抗ペグニガルシダーゼα抗体を用いたイムノアッセイによって測定)が用量依存的に投与後14日間の全期間に亘って明らかに検出可能であった。全ての投与量において、血漿中濃度は投与直後にピークに達し、その後の14日間を通じてゆっくりと着実に低下した。図2は、臨床的に承認された市販のアガルシダーゼβ(r-αhGalA、哺乳動物細胞組換えヒトα-GALA、ファブラザイム(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジ、Genzyme Corp製)の投与後の血漿中濃度についての薬物動態プロファイルを示す。グラフから明らかなように、ペグニガルシダーゼαの薬物動態プロファイルとは著しく対照的に、アガルシダーゼβは投与後10時間までは、患者の血漿中で殆ど検出されない。従って、ペグニガルシダーゼαは、本明細書で示した14日間より更に長く、臨床的に承認されたファブラザイム(商標)よりも明らかに優れた、遥かに高い生物学的利用能を有すると思われる。
【0257】
特定の薬物動態変数を評価すると、ペグニガルシダーゼαの利点が更に明らかになる。投与後の最大血漿中酵素濃度(Cmax図3A)と総生物学的利用能(無限に外挿された血漿中濃度対時間曲線下面積(AUC0-∞)、血漿1mL当たり酵素質量(例えば、μg又はng)×時間(例えば、分又は時間)で表される、図3C)はいずれも用量依存的であり、図1に示した全体的な薬物動態プロファイルと一致する。アガルシダーゼβと比較すると、ペグニガルシダーゼαのCmaxとAUC0-∞はいずれもこの市販の酵素より明らかに優れている。どの投与量でも、ペグニガルシダーゼαの半減期(t1/2)は、臨床的に承認された市販のアガルシダーゼβ(ファブラザイム(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジ、Genzyme Corp製)及びアガルシダーゼα(Replagal(商標)、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、Shire Human Genetic Therapies(HGT),Inc.製)よりもほぼ2桁長かった(図3B)。
【0258】
次の表Iに、ペグニガルシダーゼαの薬物動態パラメータについての詳細な値を示す。
【0259】
【表1】
【0260】
ペグニガルシダーゼαの半減期を考慮した(図3B参照)、上述の14日間の期間経過後14日目の血漿中濃度を外挿すると、21日目及び28日目、又はそれ以降でも、かなりの潜在的な治療量のペグニガルシダーゼαが患者の血漿中に残ることが予想される。
【実施例0261】
架橋prh-α-GAL-I-CL45の免疫原性と生物学的利用能:
血清試料の採取は、最初の4ヶ月間は月に1回、その後は2ヶ月毎に1回行った。144個の試料を解析し、その内の123個が抗薬物抗体(ADA)に対して陰性であった。確認した陽性試料を中和活性、抗グリカン抗体及び抗PEG抗体について更に特徴付けた。
【0262】
抗架橋prh-α-GAL-I-CL45抗体形成の発生率が低いことが報告された。3名の患者(19%)が少なくとも1回の訪問で治療誘発性ADA陽性と確認され、3名の内2名が中和抗体を有していた。ADAの存在は一過性であり、6~15ヶ月間の治療後にこれらの患者のいずれにもADAは見られなかった。重要なことは、12ヶ月の治療後、2.0mg/kgの架橋prh-α-GAL-I-CL45を投与したコホートの患者のいずれにおいても、治療誘導性抗架橋prh-α-GAL-I-CL45抗体は生じなかった。
【0263】
単一の仮説に限定されることを望むものではないが、このような結果から示唆されるのは、架橋prh-α-GAL-I-CL45による反復治療は、その改善された安定性故に、連続的な暴露をもたらし、その結果、免疫寛容が誘導され得るということである。
【実施例0264】
架橋ペグニガルシダーゼαの薬物動態の向上と長期投与レジメン:多施設非盲検切り換え研究
ファブリー病患者に対する従来の酵素補充療法では、各治療間で最大2週間(14日)の間隔で薬物を投与することが要求される。治療の臨床的有効性を大幅に低下させたり、治療に関連した有害事象を増加させたりせずに各治療間の期間を延長することは、臨床的に非常に重要であり、これによって介入の回数が減少し、患者のコンプライアンスを改善することができる。ペグニガルシダーゼαの隔週の点滴を受けているファブリー病患者で見られる薬物動態の向上を考慮して、長期投与レジメンの効果を評価することができる。
【0265】
研究用の患者の選択は、次の包含基準と除外基準の選択肢(例えば、重篤な症状のないファブリー病患者、比較的ゆっくり進行する患者、早期診断患者又は定常の疾患症状を維持する患者の治療、あるいは選択期間における同等の悪化率の維持が挙げられるが、これらに限定されない)に従って行うことができる。
【0266】
研究包含基準の例としては、例えば、α-ガラクトシダーゼ活性及び遺伝子検査によって定義されるファブリー病が確認され、例えば、eCFR及びeGFR勾配によって定義される症状が軽度~中等度であり、年齢が16~65歳で、ERTを少なくとも3年受けている患者を挙げることができるが、これに限定されない。
【0267】
臨床検査評価、安全性及び有効性の変数と有害事象のモニタリング、更には薬物動態パラメータの記録を、実施例1に詳述したように行った。但し、各治療間の期間の延長に応じて、変更を加えた(例えば、試料の採取を最初及び最後の点滴時、点滴前(ベースライン)、点滴開始の1時間後、点滴終了時、点滴から1、4、8、24、48±3、72±3、96±3時間後、2週間±3日後及び3週間±3日後に行う(最後の血液試料は患者の2回目の点滴の直前に採取する))。必要に応じて、試料の採取を点滴後2週目と3週目との間の期間で行い、更に必要に応じて、点滴後3週間を超える時点、例えば、点滴から4週間±3日後、及び/又は点滴後3週目と4週目との間の期間で行う。
【0268】
重大な悪影響を及ぼすことなく、臨床パラメータ(例えば、以前のERT治療におけるような治療期間中の臨床パラメータ)を満足のいくレベル又は同等のレベルに維持しながら、3週間毎又は4週間毎の投薬、或いは点滴後2週間を超えた時点での任意の投薬を受けた患者において、治療用血漿中ペグニガルシダーゼα濃度を継続させることは、ペグニガルシダーゼαによるファブリー病の酵素補充療法のための長期投与レジメンの新しい改良プロトコルの基礎を構成することができる。臨床データ及び薬物動態パラメータの解析によって、各点滴間の最適な間隔を決定(又は概算)することができる。
【実施例0269】
2mg/kgのペグニガルシダーゼα対1mg/kgのファブラザイム(登録商標))の予測解析:
投与間隔を2週間から3週間又は4週間に延長した場合のペグニガルシダーゼαの推定薬物動態特性を決定し、推定ペグニガルシダーゼα曝露を推定ファブラザイム曝露と比較するために予測解析を行った。
【0270】
架橋prh-α-GAL-I-CL45(ペグニガルシダーゼα)の動態
実施例1に示した2mg/kgのペグニガルシダーゼαを投与した患者(n=4)のデータを、ペグニガルシダーゼαに関する予測の主要部分に使用した。予測は一般に線形の用量比例性に依存する。このような予測の出発点として3か月間のデータを選択した。3ヶ月での半減期の値は4名の対象において70.1~105時間の範囲であった。
【0271】
以前のペグニガルシダーゼα投与に起因して、3ヶ月で測定可能な投与前濃度が存在したため、各対象の最終排出率(λz)値を用いて、投与前濃度を各試料採取時間に対して外挿した。このような外挿濃度を測定濃度から差し引き、3ヶ月で投与した用量に起因する濃度を得た。Phoenix WinNonlinソフトウェアを使用し、各対象について調整した3ヶ月データを2-コンパートメントモデルに適合させた。モデル変数の平均推定値を使用して、2、3又は4週間の間隔で2mg/kgの3回連続投与をシミュレートした。仮想点滴時間は6時間であった。Cmax、AUCtau(投与間の時間の面積)及びCmin(次の投与前の濃度)の値を表IIに示す。
【0272】
【表2】
【0273】
ファブラザイムの薬物動態
ファブラザイムのPKパラメータは、その添付文書とEng et al, 2001 の文献(Am J Hum Genet, 68:711-722)の図2から得た。
【0274】
部分AUC及びCave
表IIIは、2週間毎に1mg/kgのペグニガルシダーゼα及びファブラザイムを種々の投与レジメンにしたがって投与した後の予測される薬物動態パラメータの比較を示す。
【0275】
ペグニガルシダーゼαについてのデータは進行中の第I相/II相試験から得た。ファブラザイムの薬物動態特性に関する情報は、添付文書と公知文献(Eng et al, 2001 (Am J Hum Genet, 68:711-722))から入手可能である。予測モデリングはPhoenix WinNonlinソフトウェア(Ver.6.3)を使用して行った。
【0276】
週毎の部分AUCとCaveの計算によって、ペグニガルシダーゼαの1、2、3及び4週目の薬物有効性の比較評価/推定、及び2週間毎のファブラザイムとの比較が可能になった。
【0277】
データは週毎に計算し、順次表示する。太線は繰り返し投与の時間を表す。従って、2週間の間隔では3、5及び7行目が用量投与を表し、3週間の間隔では、4、7及び10行目が用量投与を表し、同様に続く。灰色と白色のボックスは異なる点滴間隔を視覚的に示している。週毎の薬物適用範囲を推定するために、168時間(1週間)と336時間(2週間)における週平均酵素濃度を内挿又は外挿した。表に示すように、ペグニガルシダーゼαを2、3又は4週間毎に2mg/kg投与した場合、週毎のCave値(それぞれ709、87及び11ng/mL)は、ファブラザイムの無視できる2週目のCave値よりも有意に高い。
【0278】
点滴から10時間後のファブラザイムのCave値は、4週間毎に2mg/kg投与した後の4週目のペグニガルシダーゼαの推定Cave値(11ng/mL)と同等である。
【0279】
図4Aは、2mg/Kgのペグニガルシダーゼαを単回点滴した後に4週間に亘って推定(外挿)した酵素の有効性(血漿中濃度)をグラフで示す。ペグニガルシダーゼαで治療後に4週間に亘って予測したAUCを、ファブラザイムを2週間毎に同様の期間投与した場合と比較すると、ペグニガルシダーゼαの酵素有効性の維持は、ファブラザイムよりも明らかに優れている(図4B参照、特に挿入図)。
【0280】
この結果から、ファブラザイムとは対照的に、3週間及び4週間の点滴間隔で2mg/kgのペグニガルシダーゼαを投与した後、有意濃度の酵素が治療の全期間に亘って循環血液中に留まることが予想され、標的臓器に到達し得ることが分かる。
【0281】
【表3】
【0282】
まとめると、本明細書に記載の結果から、架橋α-ガラクトシダーゼ(ペグニガルシダーゼα)の薬物動態特性が、哺乳動物細胞由来の現在承認されている市販のファブリー病ERTであるアガルシダーゼβ(ファブラザイム(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジ、Genzyme Corp製)及びアガルシダーゼα(Replagal(商標)、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、Shire Human Genetic Therapies(HGT),Inc.製)とは異なり、いずれと比較しても有利であることが分かる。ペグニガルシダーゼαのいずれの投与量でも見られる長い半減期(t1/2)と実質的に高い全体の生物学的利用能(AUC0~∞)は、各点滴(投与)間の2週間を通じて有効な活性酵素が存在することを反映している。薬物動態プロファイルの改善から、ペグニガルシダーゼαがファブリー病に対して有効な長期酵素補充療法に適しており、少なくとも2週間~4週間毎の間隔で投与可能であることが分かる。
【実施例0283】
臨床試験プロトコル:ERT、即ち、ファブラザイム(登録商標)(アガルシダーゼβ)又はレプラガール(登録商標)(アガルシダーゼα)で現在治療している成人ファブリー病患者に対して4週間毎に静脈内点滴によって投与したペグニガルシダーゼαの安全性、有効性及び薬物動態を評価するための、第3相非盲検スイッチ研究
本研究では、市販のERT(アガルシダーゼα又はアガルシダーゼβ)で現在治療しているファブリー病患者に対する、ビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(prh-α-GAL-I-CL45)(ペグニガルシダーゼα)の安全性、有効性及び薬物動態を評価する。対象は、疾患の徴候と共にα-GAL-A活性(男性)又は遺伝子検査(女性)に基づいてファブリー病の確定診断を受けており、且つ少なくとも3年間ERTで治療していることが必要である。ビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(prh-α-GAL-I-CL45)(ペグニガルシダーゼα)を4週間毎に2mg/kgの用量で52週間投与した。評価項目として選択したパラメータは、疾患に最も関連性のあるパラメータであり、これによって、安全性、薬物動態及び有効性の評価項目について重要且つ関連のある評価が可能となる。
【0284】
薬物用量と投与:
適格性が確認されたら、患者は4週間毎のペグニガルシダーゼαの静脈内投与(2mg/kg)に切り換えられる。ペグニガルシダーゼαの点滴時間は、保留中の患者の体重、患者の耐容性、治験責任医師の評価、及びスポンサーメディカルモニター/ディレクターの承認に応じて、使用中の前投薬を徐々に減らす試みの後に入れ替える。
【0285】
薬物動態(PK)パラメータ
次のPKパラメータ:Cmax、t1/2、Tmax、AUC0-t及びAUC0-∞を血漿中濃度対時間プロファイルから導き出して、試験薬物のPKプロファイルを求める。1日目と治療終了時(52週間目)にPK解析用血液を採取する。採血の日に、血液試料の採取を以下の時点、即ち、点滴前(ベースライン)、点滴開始から1時間後、点滴終了時、点滴終了から1±0.25、2±0.25、4±0.25、8±0.25、24±0.5、48±3及び96±3時間後、及び点滴終了から14±3、21±3及び28±3日後に行う(最後の血液試料は患者の次回点滴の直前に採取する)(28日以内で計13時点)。
【0286】
有効性変数
評価項目解析のために評価した有効性パラメータは以下の通りである。
1.推定糸球体濾過率(eGFRCKD-EPI
2.心エコー図による左室心筋重量係数(g/m
3.血漿中グロボトリアオシルスフィンゴシン(リゾ-Gb3)濃度
4.血漿中Gb3濃度
5.尿中リゾ-Gb3
6.タンパク質/クレアチニン比スポット尿検査
7.鎮痛剤の使用頻度
8.運動負荷(ストレス試験)
9.略式簡易型疼痛一覧表(BPI)
10.マインツ重症度スコア指数(MSSI)
11.生活の質EQ-5D-5L
【0287】
安全性変数
安全性の評価は、以下の項目におけるベースラインからの変化によって行う:臨床検査、身体検査、薬物投与後の注射部位の評価、心電図(ECG)、治療によって生じたAE(有害事象)の頻度、重症度及び期間、点滴前投薬を漸減させる能力、点滴反応と治療誘導性の抗ペグニガルシダーゼα抗体とを管理するための全体的な前投薬の使用の必要性。
【0288】
以前の結果から、隔週の点滴(投与)レジメンでは全ての用量でペグニガルシダーゼαは半減期(t1/2)が長く、総生物学的利用能(AUC0-∞)が実質的に高いことが明らかになった。投薬間隔を延長すると、ファブリー病に対するERTの利便性、費用、服薬遵守率及び有害作用の頻度に大きな影響を及ぼす場合がある。ファブリー病の有効な長期酵素補充療法に対する、ビス-NHS-PEG45と架橋している植物組換えヒトα-ガラクトシダーゼ(prh-α-GAL-I-CL45)(ペグニガルシダーゼα)の適合性を評価するために、ペグニガルシダーゼαを4週間毎の間隔で投与する。
【0289】
ERT、即ち、アガルシダーゼα又はアガルシダーゼβで少なくとも3年間に亘り治療を継続していおり、少なくとも最後の6ヶ月間は安定した用量(>80%標識用量/kg)で既に治療していた患者における、4週間毎に2mg/kgのペグニガルシダーゼαを用いる治療の安全性、有効性及び薬物動態を評価する非盲検切り換え研究では、患者は登録を行うと共に、現在のERTから、2mg/kgのペグニガルシダーゼの静脈内(IV)点滴を4週間毎に52週間に亘り受ける(合計14回の点滴)。
【0290】
各点滴間の4週間の間隔に亘って架橋α-ガラクトシダーゼ(ペグニガルシダーゼα)が高い薬物動態特性を維持しているという有意な証拠は、架橋α-ガラクトシダーゼ(ペグニガルシダーゼα)が他の現在承認されている市販のファブリー病ERT、即ち、アガルシダーゼβ(ファブラザイム(商標)、マサチューセッツ州ケンブリッジ、Genzyme Corp製)及びアガルシダーゼα(Replagal(商標)、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、Shire Human Genetic Therapies(HGT),Inc.製)とは異なり、これらと比較して有利であることを証明するのに役立つ。
【0291】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、修正及び変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、修正及び変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0292】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許及び特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用又は特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
【配列表フリーテキスト】
【0293】
配列番号1: ヒト成熟α-ガラクトシダーゼタンパク質配列
配列番号2: SEKDELに融合したN末端のGを有する、組換えα-ガラクトシダーゼ成熟タンパク質
配列番号3: SEKDELに融合したN末端のGを有していない、組換えα-ガラクトシダーゼ成熟タンパク質
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
【配列表】
2023022244000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファブリー病の治療を必要とするヒト対象においてファブリー病を治療するためのキットであって、
ビス-NHS-PEG 45 と架橋した組換えヒトα-ガラクトシダーゼを活性成分として含む単位剤形と、
前記単位剤形の投与方法を示す説明書と
を含み、前記説明書は、4週間に1回、2.0mg/kgの前記活性成分を静脈投与することを示す、キット
【請求項2】
4週間に1回、2.0mg/kgの前記活性成分を投与することによって、前記対象において、下記(i)~(vi)の少なくとも1種が提供される請求項1に記載のキット
(i)心臓パラメータLVM又はLVMIの安定性の維持又はその悪化の軽減、
(ii)血漿中Gb3濃度の低下、リゾ-Gb3濃度の低下、及び尿中Gb3濃度の低下からなる群から選択される少なくとも1種のパラメータの安定性の維持、
(iii)ファブリー病に関連する腎機能の悪化の軽減、
(iv)腎機能の安定性の維持
(v)少なくとも1種の胃腸パラメータの安定性の維持又はその悪化の軽減、および
(vi)マインツ重症度スコア指数(MSSI)の安定性の維持又はその悪化の軽減。
【請求項3】
前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼは、投与後の循環半減期(T1/2)が少なくとも5時間、少なくとも20時間、および少なくとも50時間からなる群より選ばれるいずれかである、請求項1に記載のキット
【請求項4】
前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを1mg/kg投与した後のCmaxが、少なくとも5,000ng/mLであり、任意で、前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2mg/kg投与した後のCmaxが、少なくとも8,000ng/mLである、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット
【請求項5】
前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを1.0mg/kg投与した後の生物学的利用能(AUC0~∞)が少なくとも100,000ng×時/mLであり、任意で、前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを2.0mg/kg投与した後の生物学的利用能(AUC0~∞)が少なくとも400,000ng×時/mLである、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット
【請求項6】
前記単位剤形が、40mgの前記組換えヒトα-ガラクトシダーゼを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット