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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002227
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/06 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
B60R13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103330
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000123549
【氏名又は名称】化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 竜也
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA33
3D201AA37
3D201BA01
3D201CB07
3D201DA23
3D201EA03D
3D201EA04D
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】成形用金型を用いることなく製造することが可能であり、かつ取設対象となるホイールアーチの曲線形状に沿って良好な追従性や変形性を有し、かつ、高いシール性を発揮可能なシール部材の提供を課題とする。
【解決手段】シール部材1は、ホイールアーチ103の取設面108と当接するシール基体部2と、シール基体部2に取設され、シール部材1の長手方向に対する直交方向の断面が中空形状を呈する中空シールリップ部3とを具備し、シール基体部2及び中空シールリップ部3は、シール部材1の長手方向に沿って一体的に押し出されることによって形成され、シール基体部2及び中空シールリップ部3は、軟質スポンジ材料を用いて構成される。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のホイールアーチの曲線形状に沿って取設されるシール部材であって、
前記ホイールアーチの取設面と当接するシール基体部と、
前記シール基体部に取設され、シール部材の長手方向に対する直交方向の断面が中空形状を呈する中空シールリップ部と
を具備し、
前記シール基体部及び前記中空シールリップ部は、
前記シール部材の長手方向に沿って押し出されることによって一体的に形成され、
前記シール基体部及び前記中空シールリップ部は、
軟質スポンジ材料を用いて構成されるシール部材。
【請求項2】
前記軟質スポンジ材料は、
エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴムである請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記中空シールリップ部は、
前記自動車の車体と面接触の状態で前記ホイールアーチに取設される請求項1または2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記軟質スポンジ材料は、
比重が0.45~0.75の範囲である請求項1~3のいずれか一項に記載のシール部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。更に詳しくは、自動車のホイールアーチに沿って取設され、車両内部への水等の侵入を防ぐことが可能なシール機能を有するホイールアーチ用のシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車100のタイヤ101の形状に合わせて、車体102の一部を曲線状に切り欠いたホイールアーチ103が一般的に設けられている(図4参照)。このようなホイールアーチ103が車体102に設けられることで、タイヤ101と車体102との間にスペース104が形成され、タイヤ101の交換作業やチェーン(図示しない)の装着及び脱着作業を容易に行うことができる。また、タイヤ101が操舵輪の場合、ハンドル操作に応じてタイヤ101の操舵角が変化する場合でも、当該タイヤ101と車体102とが接触することがない。
【0003】
しかしながら、タイヤ101及び車体102の間に上記のスペース104が形成されることで、車両外部から雨水や泥等が車両内部に侵入しやすくなるおそれがある。そこで、図4に示すように、ホイールアーチ103の車体102の裏側部分に、主として硬質のゴム材料で形成されたホイールアーチ用のシール部材105(ホイールアーチシール)が曲線状のホイールアーチ103に沿うようにして取設されている。
【0004】
シール部材105は、図5に示すように、一般的な構成として、車体102のホイールアーチ103の取設面108と当接するシール基体部106と、シール基体部106から所定方向に突出し、車体102の一部と先端部107aが当接可能なシールリップ部107とを具備している。これにより、雨水等の車両内部への侵入を防ぐことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシール部材の場合、下記に示すような不具合を生じる可能性があった。すなわち、一般的なホイールアーチ用のシール部材の場合、予め所定温度で加熱され、溶融状態となったエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム材料を、シール部材の外観形状に基づいて型彫りされ、製作された成形用金型のキャビティ内に流し込み、当該成形用金型内でゴム材料を冷却して固化させることによって主に製造されていた。すなわち、成形用金型を用いる型成形加工によって製造されていた。
【0006】
したがって、取設対象となる自動車の車種やホイールアーチの形状、或いはサイズ等に応じて、それぞれに適合するシール部材を製造するために、複数の成形用金型を予め準備する必要があり、当該成形用金型の製作コストを含むシール部材の製造開始までの初期コスト(イニシャルコスト)が高くなるといった問題があった。
【0007】
また、成形用金型への溶融状態のゴム材料の流し込みのための工程、ゴム材料を冷却固化させるための工程、及び、固化したシール部材を成形用金型から取り出す工程等の各工程を経る必要があり、それぞれの工程のための必要な作業時間が多くなることがあった。
【0008】
そのため、短時間で大量のシール部材を製造することができない場合もあり、作業効率や生産効率の点で問題となったり、作業工程が複雑化したりするなどの種々の課題を生じる場合があった。また、成形用金型によって製造された成形加工品には、一般的に所謂「バリ」が生じる可能性が高く、当該バリを取り除くバリ除去工程が必要となることもあった。
【0009】
成形用金型による型成形加工の場合、製造されるシール部材は、基本的には一種類の素材、例えば、硬質のEPDM等で構成されていた。すなわち、上述したシール基体部及びシールリップ部は、同一の素材で一体的に形成されていた。しかしながら、シール基体部に求められる、例えば、シール部材全体の強度の向上やホイールアーチの取設面に対する装着性や密着性を良好にする特性と、シールリップ部による水等の止水効果を発揮するための特性とは、互いに相反する材料を用いる場合もあった。
【0010】
更に具体的に説明すると、シール部材の強度を強くしようとした場合、シール基体部をホイールアーチの曲線状に沿って変形させることが困難となる。換言すれば、ホイールアーチの曲線形状に対するシール部材の追従性が低下し、ホイールアーチとシール部材との間に隙間が生じ、十分な密着性を維持することができず、高いシール性を得ることができないおそれがあった。一方、上記のシール部材の変形性や追従性を良好に使用とした場合、シール部材全体の強度が低下するおそれがあった。その結果、強度及び変形性のバランスを勘案し、シール部材を構成するゴム材料等の素材を選定する必要があった。
【0011】
また、シール部材のシールリップ部の一端は、自動車の車体と当接するように取設されている。そのため、シールリップ部が硬質のゴム材料で形成されている場合、当該車体とシールリップ部とが点接触し、走行時の振動等によって車体にダメージを与える可能性があった。加えて、硬質のゴム材料の場合、その他の樹脂成形品と比較して比重が高くなる傾向があり、自動車の車両全体の重量増に影響する可能性があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、成形用金型を用いることなく製造することが可能であり、かつ取設対象となるホイールアーチの曲線形状に沿って良好な追従性や変形性を有し、かつ、高いシール性(止水性)を発揮可能なシール部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、押出成形技術を用いてシール部材を製造することにより、良好な追従性や強度を備え、かつ、高いシール性を発揮可能なことを見出し、下記に示す本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
[1] 自動車のホイールアーチの曲線形状に沿って取設されるシール部材であって、前記ホイールアーチの取設面と当接するシール基体部と、前記シール基体部に取設され、シール部材の長手方向に対する直交方向の断面が中空形状を呈する中空シールリップ部とを具備し、前記シール基体部及び前記中空シールリップ部は、前記シール部材の長手方向に沿って押し出されることによって一体的に形成され、前記シール基体部及び前記中空シールリップ部は、軟質スポンジ材料を用いて構成されるシール部材。
【0015】
[2] 前記軟質スポンジ材料は、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴムである前記[1]に記載のシール部材。
【0016】
[3] 前記中空シールリップ部は、前記自動車の車体と面接触の状態で前記ホイールアーチに取設される前記[1]または[2]に記載のシール部材。
【0017】
[4] 前記軟質スポンジ材料は、比重が0.45~0.75の範囲である前記[1]~[3]のいずれかに記載のシール部材。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシール部材は、押出成形技術を用い、軟質スポンジ材料で形成された中空シールリップ部を備えることにより、ホイールアーチの曲線形状に沿った良好な追従性を維持しホイールアーチ103への取り付けを良好なものとし、かつ、面接触の状態で中空シールリップ部が車体と接することにより、高いシール性、すなわち、良好な止水性を発揮可能なものである。特に、従来のシール部材と比して、成形用金型の製作にかかる製作コストを抑え、シール部材の製造における初期コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のシール部材の概略構成を示す斜視図である。
図2図1におけるA-A’線拡大断面図である。
図3】中空シールリップ部の変形を模式的に示す拡大参考断面図である。
図4】ホイールアーチに対するシール部材の取設の一例を示す説明図である。
図5】従来のシール部材の概略構成を示す拡大参考断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のシール部材の実施の形態について説明する。なお、本発明のシール部材は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0021】
1.シール部材
本発明の一実施形態のシール部材1は、図1図3に示すように、長手形状を呈し、自動車100のタイヤ101の形状に合わせて車体102の一部を曲線状に切り欠いて形成されたホイールアーチに沿って弾性変形させながら取設可能なものであり、自動車部品の「ホイールアーチシール」に相当する。なお、シール部材1の取設対象となるホイールアーチ103等の構成については、既に図4を用いて説明したものと略同一であり、同一符号を付してここでは詳細な説明は省略する。
【0022】
本実施形態のシール部材1は、ホイールアーチ103と当接可能なシール基体部2と、当該シール基体部2に取設された中空シールリップ部3とを具備して主に構成されている。
【0023】
更に、シール部材1のシール基体部2及び中空シールリップ部3は、押出成形技術を用い、当該シール部材1の断面形状に合わせて形成された成形用の口金(図示しない)から原材料となる樹脂材料をシール部材1の長手方向に沿って押し出すことによって一体的に形成されている。また、シール部材1は、弾性変形可能な軟質スポンジ材料(詳細は後述する)によって全体が構成されており、外部からの応力に応じて自在に変形することが可能である。
【0024】
シール部材1のそれぞれの構成について具体的に説明すると、シール基体部2は、略平板状の基体部底部4と、基体部底部4の左右(図2における紙面左右方向に相当)の底部端部5a,5bから上方(図2における紙面上方向に相当)に向かってそれぞれ立設された一対の基体部側部6a,6bと、基体部側部6a,6bの上端同士を連結する基体部天板部7とを主に具備し、一体的に形成されている。ここで、一方の基体部側部6aは、立設方向が途中でシール部材1の内側に向かって折れ曲がった斜辺部8を有している。
【0025】
これにより、本実施形態のシール部材1のシール基体部2は、図2に示すように、シール部材1の長手方向(図2及び図3における紙面手前方向から紙面奥行方向に相当)対する直交方向の断面が略台形(または、略矩形)の中空形状を呈し、内部に基体中空部9が形成されている。
【0026】
更に、シール基体部2は、ホイールアーチ103の取設面108(図3参照)と当接可能な当接脚部10a,10bが基体部底部4の下面4aから下方(図2における紙面下方向に相当)に向かって突設されている。その結果、両面テープ(図示しない)等の周知の貼着手段によってホイールアーチ103の取設面108と当接し、固定することができる。
【0027】
一方、中空シールリップ部3は、上記シール基体部2と一体的に形成され、シール基体部2の基体部天板部7を一部共有するように構成されている。更に、中空シールリップ部3は、基体部天板部7の天板部端部11a,11bからそれぞれ立設されたリップ側部12a,12bと、リップ側部12a,12bをそれぞれ連結する湾曲形状の湾曲連結部13とを具備している。
【0028】
これにより、本実施形態のシール部材1の中空シールリップ部3は、図2に示すように、シール基体部2と同様、シール部材1の長手方向に対する直交方向の断面が略円筒形(または、略楕円形)の中空形状を呈し、内部にリップ中空部14が形成されている。
【0029】
更に、シール部材1は、シール基体部2の基体部天板部7の一方の天板部端部12の天板部端部11bと中空シールリップ部3のリップ側部12bの下端が接続した付近から斜め下方に向かって突設された分枝リップ部15を具備している。
【0030】
なお、当接脚部10a,10bの高さは、基体部底部4の下面4a及びホイールアーチ103の取設面108との間に介設され、シール部材1をホイールアーチ103に貼着するために使用される取設用の両面テープ(図示しない)のテープ厚さと略同一となるように設定されている。
【0031】
シール部材1は、当接脚部10a,10bがホイールアーチ103の取設面108と当接し、かつ、シール部材1の基体部底部4及び取設面108の間に両面テープを挟んだ状態で当該ホイールアーチ103に取設されている。これにより、ホイールアーチ103との取設を安定させ、かつ、両面テープによってかかる取設状態を強固なものとすることができる。その結果、自動車100(図4参照)の走行時であってもホイールアーチ103からシール部材1が脱落するような不具合の発生を避けることができる。
【0032】
一方、中空シールリップ部3は、前述のように、リップ側部12a,12b、湾曲連結部13、及びシール基体部2の基体部天板部7の一部によって、断面が略円筒形の中空形状を呈して構成されている。更に、前述したように、中空シールリップ部3を含むシール部材1は、全体が弾性変形可能な軟質スポンジ材料によって形成されている。
【0033】
そのため、中空シールリップ部3の一部に外部から荷重F(例えば、図3の矢印参照)が加わった場合、かかる中空シールリップ部3は断面の中空形状が変化し、荷重Fが加わっていない状態(図2参照)と比較し、断面略円筒形がやや押し潰された扁平状態となる(図3参照)。なお、図3は、ホイールアーチ103に取設されたシール部材1に対し、車体102の一部が接触し、中空シールリップ部3に上方から荷重Fが加えられた状態を示すものである。更に、図3は、説明を簡略化するため、車体102及びホイールアーチ103等の構成についても図示している。
【0034】
本実施形態のシール部材1をホイールアーチ103の曲線形状に沿って徐々に折り曲げながら当該ホイールアーチ103に取設する場合において、シール部材1の全体が軟質スポンジ材料によって形成されているため、外部から加わる応力(荷重F)に応じて容易に変形することができ、所望の形状に変形させた状態で本実施形態のシール部材1をホイールアーチ103に取設することができる。
【0035】
すなわち、車体102の形状に対するシール部材1の追従性(変形性)が向上し、車体102及びシール部材1(中空シールリップ部3)の間に隙間等が形成されるおそれを小さくすることができる。特に、シール部材1の中空シールリップ部3と車体102とが広い範囲で面接触するため、外部から車体102の内部に浸入しようとする雨水等を中空シールリップ部3が規制することができる。これにより、従来と比して高い止水効果を本実施形態のシール部材1が発揮することができる。
【0036】
加えて、車体102と中空シールリップ部3とが面接触することにより、車体102に加わる圧力(いわゆる「面圧」)が分散することになり、特定の部位に荷重Fが集中することがない。これにより、車体102に加わる負荷を低減することができる。
【0037】
これに対し、図5に示すような、シール基体部106と、シール基体部106から所定方向に突出し、車体102の一部と先端部107aが当接可能なシールリップ部107とを具備する従来型のシール部材105の場合、車体102及びシールリップ部107との当接は、シールリップ部107の先端部107aにおける点接触となる。そのため、高い止水効果を得ることが困難となる。
【0038】
加えて、シール基体部106から突出した断面略棒状のシールリップ部107であるため、車体102との接触によってシールリップ部107が変形しようとする場合、圧縮変形後のシールリップ部107が前後方向(図5における紙面左右方向)のいずれか一方に倒れたり、変形が偏ったりする等の不具合を生じることがある。すなわち、本実施形態のシール部材1は、車体102と当接する構成が中空シールリップ部3であることから、上記のような、シールリップ部107の倒れや偏った変形が生じることがなく、当接による変形を安定したものとすることができ、止水性の向上等の優れた効果を更にそうすることができる。
【0039】
また、シール部材1のシール基体部2及び中空シールリップ部3が押出成形技術を用いて一体的に形成されているため、従来の成形用金型を用いた場合に発生する成形用金型の分割面における線である「パーティングライン」がシール部材1の外表面等に発生することがない。すなわち、従来の成形用金型を用いて製造されたシール部材105(例えば、図5参照)と異なり、パーティングラインに起因するバリの発生を抑制し、かつ、発生したバリの削除にかかる削除工程を省略し、効率的な生産が可能となる。
【0040】
ここで、本実施形態のシール部材1に原材料として使用される軟質スポンジ材料は、特に限定されるものではなく、例えば、軟質スポンジ材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー、或いはその他のゴム材料、またはゴム様弾性を有するその他の弾性材料を挙げることができ、特に、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを原材料とするスポンジ状エチレン-プロピレン-ジエンゴム(以下、「スポンジEPDM」と称す。)を用いるものが好適である
【0041】
本実施形態のシール部材1は、上記のスポンジEPDMを用いて構成されている。なお、スポンジEPDMは、自動車用の樹脂成形部品の製造において比較的多く使用される周知の材料であり、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0042】
本実施形態のシール部材1において、使用されるスポンジEPDMは、その比重が0.45~0.75の範囲となるように調整される。シール部材1の全体がスポンジEPDMによって構成されることにより、シール部材1の比重を低減することができ、軽量化を図ることができる。これにより、シール部材1の取設される車体全体の重量の低減化に寄与することができる。
【0043】
本実施形態のシール部材1は、シール基体部2及び中空シールリップ部3の全体が軟質スポンジ材料で形成されていることにより、応力に対する変形の程度が、従来シール部材の原材料として主に使用されている硬質ゴムよりも大きく、車体102との当接によって大きく潰れて変形する。そのため、既に説明した、車体102との面接触の範囲が大きくなり、止水性の効果を高めることができ、かつ、走行時等に発生する振動等による車体102へのダメージを軽減する効果を有する。
【0044】
以上の通り、シール部材1全体をスポンジEPDMによって構成し、かつ、これによって形成されたシール基体部2及び中空シールリップ部3を具備することで、ホイールアーチ103の曲線形状に対する追従性が良好となり、かつ、シール部材1自体の強度を十分なものとすることができ、雨水等の侵入を防ぐ高いシール性を備えたシール部材1が形成される。加えて、従来の成形用金型を用いた場合と比較して、「バリ」が発生することがないため、かかるバリの除去等を行う工程を省略化することができる。すなわち、シール部材の製造における工数の削減が可能となる。
【0045】
2.シール部材の製造方法
前述したように、本実施形態のシール部材1は、原材料として一種類のスポンジEPDMを用いて製造される。
【0046】
更に具体的に説明すると、始めに図2に示すような断面形状を呈するように調整された成形用口金を、押出成形可能な押出装置にセットする。一方、押出装置に設けられた二つの原材料供給部には、加熱され、押出可能な粘度に調整され、流動可能な状態のスポンジEPDMを準備する。かかる状態で原材料供給部からスポンジEPDMを所定の押出圧力によって加圧し、成形用口金から押し出し成形を行う。このとき、スポンジEPDMの押出圧力を調整することで、成形用口金から適量のスポンジEPDMを押し出すことができる。
【0047】
成形用口金から押し出されたスポンジEPDMは、周囲の外気と接することで冷却され、流動性を失う。そして、所定の長さ(例えば、500mm程度)まで押し出した後でカットされる。これにより、スポンジEPDMで構成された長手形状の加工物が形成される。かかる長手形状の加工物に対してその他の加工をものであってもよい。その結果、本実施形態のシール部材1の製造が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシール部材は、自動車等の車両に設けられたホイールアーチに適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,106:シール部材、2,107:シール基体部、3:中空シールリップ部、4:基体部底部、4a:下面、5a,5b:底部端部、6a,6b:基体部側部、7:基体部天板部、8:斜辺部、9:基体中空部、10a,10b:当接脚部、11a,11b:天板部端部、12a,12b:リップ側部、13:湾曲連結部、14:リップ中空部、15:分枝リップ部、100:自動車、101:タイヤ、102:車体、103:ホイールアーチ、104:スペース、105:シール部材、107:シールリップ部、107a:先端部、108:取設面、F:荷重。

図1
図2
図3
図4
図5