(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022318
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】ペプチドWKDEAGKPLVKを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20230207BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230207BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230207BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20230207BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230207BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230207BHJP
A61K 8/64 20060101ALN20230207BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K38/10 ZNA
A61K38/16
A61K38/28
A61K38/26
A61P3/10
A61K8/64
C07K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197132
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2019530215の分割
【原出願日】2017-12-05
(31)【優先権主張番号】16202306.3
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16202305.5
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518017819
【氏名又は名称】ニューリタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノラ カルディ
(72)【発明者】
【氏名】シリル ロペス
(57)【要約】
【課題】筋肉回復、維持、および/または筋肉増殖の一助となる代替物の提供。
【解決手段】配列番号1のペプチド、または、配列番号1に比べて1~3個のアミノ酸変異を有する、配列番号1のグルコース輸送促進変異体を含む組成物であって、アミノ酸変化は、配列番号1の位置1、2、3、9、10および11の1つまたは複数の位置で起こり、変異体におけるアミノ酸変異は、アミノ酸の挿入、付加、欠失および置換を含む、組成物。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のペプチド、または、配列番号1に比べて1~3個のアミノ酸変異を有する、配列番号1のグルコース輸送促進変異体を含む組成物であって、アミノ酸変化は、配列番号1の位置1、2、3、9、10および11の1つまたは複数の位置で起こり、前記変異体におけるアミノ酸変異は、アミノ酸の挿入、付加、欠失および置換を含む、組成物。
【請求項2】
変異体は、位置1でのアミノ酸変化、位置1および2でのアミノ酸変化、位置1、2および3でのアミノ酸変化、位置11でのアミノ酸変化、位置10および11でのアミノ酸変化、または、位置9、10および11でのアミノ酸変化を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アミノ酸変化は、位置1で起こり、アミノ酸の挿入、付加、欠失および置換から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アミノ酸変化は、位置1、2および/または3におけるアミノ酸の欠失である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
アミノ酸変化は、位置1および2におけるアミノ酸の欠失、または位置1および2におけるアミノ酸の欠失である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
アミノ酸変化は、位置9、10および/または11におけるアミノ酸の欠失である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
アミノ酸変化は、位置11におけるアミノ酸の欠失または付加である、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
アミノ酸変化は、位置10および11におけるアミノ酸の欠失である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
アミノ酸変化は、位置9、10および11におけるアミノ酸の欠失である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドは、生体活性ペプチドである、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
複数のペプチドを含む、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の組成物を含む医療器具。
【請求項13】
適切な医薬担体と組み合わせて、前記ペプチドを治療有効量で含む医薬組成物である、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記ペプチドは、配列番号1からなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
患者への経口投与または非経口投与のために製剤化された、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ペプチドは、修飾ペプチドである、請求項1から11または13から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記ペプチドは、その血漿中半減期を延長するように修飾されている、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ペプチドは、側鎖への修飾、保護基の導入、5個までの非天然アミノ酸の組み込み、環化、コンジュゲーションパートナーとのコンジュゲーション、結合パートナーとの共有結合、融合パートナーとの融合、PEG化、アミド化、脂質化、架橋剤の使用、またはペプチドに配座拘束を課す方法により修飾されている、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(たとえば、グリセロール)、およびポリビニルアルコール、コロミン酸または他の炭水化物ベースのポリマー、アミノ酸のポリマー、およびビオチン誘導体からなる群から選択される修飾基で修飾されている、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
糖尿病または前糖尿病を処置または防止する方法における使用のための、請求項13から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
糖尿病が、2型糖尿病である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物は、インスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体、グルカゴン様ペプチド1、グルカゴン様ペプチド2、グルカゴン様ペプチド1またはグルカゴン様ペプチド2の誘導体または類似体の群からなる1種または複数種の剤とともに投与されるべきものである、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
配列番号1のペプチド、または、配列番号1に比べて1~3個のアミノ酸変異を有する、配列番号1の配列のグルコース輸送促進変異体であって、アミノ酸変化は、配列番号1の位置1、2、3、9、10および11の1つまたは複数の位置で起こり、前記変異体におけるアミノ酸変異は、アミノ酸の挿入、付加、欠失および置換を含むグルコース輸送促進変異体。
【請求項24】
変異体は、位置1でのアミノ酸変化、位置1および2でのアミノ酸変化、位置1、2および3でのアミノ酸変化、位置11でのアミノ酸変化、位置10および11でのアミノ酸変化、または、位置9、10および11でのアミノ酸変化を有する、請求項23に記載のペプチド。
【請求項25】
アミノ酸変化は、位置1で起こり、アミノ酸の挿入、付加、欠失および置換から選択される、請求項24に記載のペプチド。
【請求項26】
アミノ酸変化は、位置1、2および/または3におけるアミノ酸の欠失である、請求項24に記載のペプチド。
【請求項27】
アミノ酸変化は、位置1および2におけるアミノ酸の欠失、または位置1および2におけるアミノ酸の欠失である、請求項26に記載のペプチド。
【請求項28】
アミノ酸変化は、位置9、10および/または11におけるアミノ酸の欠失である、請求項24に記載のペプチド。
【請求項29】
アミノ酸変化は、位置11におけるアミノ酸の欠失または付加である、請求項24に記載のペプチド。
【請求項30】
アミノ酸変化は、位置10および11におけるアミノ酸の欠失である、請求項28に記載のペプチド。
【請求項31】
アミノ酸変化は、位置9、10および11におけるアミノ酸の欠失である、請求項28に記載のペプチド。
【請求項32】
修飾されている、請求項23から31のいずれかに記載のペプチド。
【請求項33】
保護基で修飾されている、請求項32に記載のペプチド。
【請求項34】
N末端保護基またはC末端保護基で修飾されている、請求項33に記載のペプチド。
【請求項35】
少なくとも1つのL-アミノ酸を、D-異性体で置きかえることにより修飾されている、請求項32に記載のペプチド。
【請求項36】
ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)コポリマー、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、コロミン酸、または他の炭水化物ベースのポリマー、アミノ酸のポリマー、ならびにビオチン誘導体から選択される修飾基で修飾されている、請求項32に記載のペプチド。
【請求項37】
少なくとも1つのアミノ酸を、アミノ酸類似体で置きかえることにより修飾されている、請求項32に記載のペプチド。
【請求項38】
哺乳動物の消化管プロテアーゼによるタンパク質分解に対する修飾ペプチドの耐性を増大させるように修飾されている、請求項32に記載のペプチド。
【請求項39】
医薬としての使用のための、請求項23から38のいずれかに記載のペプチドまたは修飾ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品組成物および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの組成物が記載されている。改善は、常に所望される。
【0003】
現在、筋肉健康または筋肉グルコース吸収を改善するための異なる手法が存在する。しかし、筋肉回復、維持、および/または筋肉増殖の一助となる代替物を発見することが所望される。
【0004】
特に、人々は、今や、より長く、より健康な生涯を生きつつあるので、実際、若齢の外見を維持しようとする意思の高まりは、皮膚老化を処置するための、新たな化粧品および皮膚科手順についての、ますます多くの研究をもたらしつつある。近年、皺、体重減少、および他の皮膚損傷のような問題に対処するようにデザインされた、侵襲性が最小限である処置および技法に対する関心が高まりつつある。最も一般的な局所アンチエイジング液は、クリームおよびセラムである。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0132667号明細書は、任意選択的に1つまたは複数のさらなる成分と組み合わせられる、ペプチドを含む組成物を開示している。開示される組成物は、ストレス、汚染、および一般的な老化の、多様な原因により引き起こされる皮膚状態を含む、1つまたは複数の皮膚状態の緩和をもたらす。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0120141号明細書は、皮膚および/または粘膜の状態、障害、および/または疾患の処置および/またはケアにおける使用のためのペプチドを含有する化粧品組成物および医薬組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0132667号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0120141号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2050437号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/023290号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/098660号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0053845号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2014/120131号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/132667号明細書
【特許文献9】米国特許第4,186,183号明細書
【特許文献10】米国特許第4,217,344号明細書
【特許文献11】米国特許第4,235,871号明細書
【特許文献12】米国特許第4,261,975号明細書
【特許文献13】米国特許第4,485,054号明細書
【特許文献14】米国特許第4,501,728号明細書
【特許文献15】米国特許第4,774,085号明細書
【特許文献16】米国特許第4,837,028号明細書
【特許文献17】米国特許第4,235,871号明細書
【特許文献18】米国特許第4,261,975号明細書
【特許文献19】米国特許第4,485,054号明細書
【特許文献20】米国特許第4,501,728号明細書
【特許文献21】米国特許第4,774,085号明細書
【特許文献22】米国特許第4,837,028号明細書
【特許文献23】米国特許第4,946,787号明細書
【特許文献24】PCT国際公開第91/17424号パンフレット
【特許文献25】米国特許出願公開第2014120141号明細書
【特許文献26】米国特許第4,766,106号明細書
【特許文献27】米国特許第4,179,337号明細書
【特許文献28】米国特許第4,495,285号明細書
【特許文献29】米国特許第4,609,546号明細書
【特許文献30】米国特許第3,654,090号明細書
【特許文献31】米国特許第3,850,752号明細書
【特許文献32】米国特許第4,016,043号明細書
【特許文献33】米国特許第6,165,779号明細書
【特許文献34】米国特許第6,225,289号明細書
【特許文献35】米国特許第5,708,025号明細書
【特許文献36】米国特許第5,994,106号明細書
【特許文献37】国際特許出願公開第98/32859号パンフレット
【特許文献38】国際公開第00/55119号パンフレット
【特許文献39】米国特許第5,656,722号明細書
【特許文献40】米国特許第5,750,497号明細書
【特許文献41】米国特許第6,251,856号明細書
【特許文献42】米国特許第6,268,335号明細書
【特許文献43】米国特許第6,451,970号明細書
【特許文献44】国際公開第01/62218号パンフレット
【特許文献45】国際公開第98/07744号パンフレット
【特許文献46】国際公開第99/18927号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Topical drug delivery formulations edited by David Osborne and Antonio Aman, Taylor & Francis
【非特許文献2】O’Riordan et al(Respir Care,2002,Nov.47)
【非特許文献3】Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Weller
【非特許文献4】Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R.Gennaro edit. 1985)
【非特許文献5】J.M.Stewart and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois(1984)
【非特許文献6】M. Bodanzsky and A.Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York(1984)
【非特許文献7】Cameselle, J. C., Ribeiro, J. M., and Sillero, A.(1986). Derivation and use of a formula to calculate the net charge of acid-base compounds. Its application to amino acids, proteins and nucleotides. Biochem. Educ. 14, 131-136
【非特許文献8】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi
【非特許文献9】https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_infectious_diseases
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【非特許文献51】Remington’s Parmaceutical Sciences (16th-20th editions)
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記で言及された問題のうちの少なくとも1つを克服し、組成物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド(本明細書の後出では、「本発明のペプチド」とする)を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様は、有効量の、本発明のペプチドを含む組成物(本明細書の後出では、「本発明の組成物」とする)を提供する。
好ましくは、組成物は、局所組成物である。
典型的に、組成物は、配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含む、化粧有効量のペプチドを含む化粧品組成物でありうる。
適切には、組成物は、薬学的有効量の、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドまたはその変異体を含む医薬組成物でありうる。
好ましくは、前記ペプチドは、生体活性ペプチドである。
適切には、組成物は、複数のペプチドを含む。
典型的に、組成物は、少なくとも1つの、化粧にまたは薬学的に許容される賦形剤または添加剤をさらに含む。
典型的に、組成物は、少なくとも1つの、化粧にまたは薬学的に許容される有効成分をさらに含む。
適切には、ペプチドは、配列番号1からなるアミノ酸配列を含む。
典型的に、前記ペプチドは、約3から50アミノ酸の長さを含む。好ましくは、約5から約20アミノ酸の長さ、好ましくは、約11アミノ酸の長さを含む。
【0012】
本発明はまた、少なくとも3アミノ酸の長さを含む配列番号1の断片にも関する。典型的に、前記断片は、生体活性である。
好ましくは、前記断片は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、または11、アミノ酸の長さを有する。
好ましくは、前記ペプチドまたは断片は、抗老化活性、グルコース輸送促進活性、細胞増殖促進活性、または同化活性のうちの1つまたは複数から選択される活性を有する。活性は、化粧活性(すなわち、非治療的活性)、治療的活性、またはこれらの両方でありうる。
適切には、ペプチドまたは断片は、アンチエイジング活性を有する。
適切には、ペプチドまたは断片は、グルコース輸送促進活性を有する。
適切には、ペプチドまたは断片は、細胞増殖促進活性を有する。
適切には、ペプチドまたは断片は、同化活性を有する。典型的に、同化活性は、筋肉増殖活性である。ペプチドまたは断片は、哺乳動物における同化代謝を刺激する。
【0013】
好ましくは、前記ペプチドまたは断片は、GLUT4移動促進活性を呈する。好ましくは、前記ペプチドまたは断片は、タンパク質合成の増大(同化代謝活性の刺激)を呈する
【0014】
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらからなり)、この場合、ペプチドは、典型的に、アンチエイジング活性を有する。
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらからなり)、この場合、ペプチドは、典型的に、グルコース輸送促進活性を有する。
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらからなり)、この場合、ペプチドは、典型的に、細胞増殖促進活性を有する。
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらからなり)、この場合、ペプチドは、典型的に、同化活性を有する。
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらから本質的になり)、この場合、ペプチドは、典型的に、GLUT4移動促進活性を呈する。
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらから本質的になり)、この場合、ペプチドは、典型的に、タンパク質合成の増大(同化代謝活性の刺激)を呈する。
さらに好ましくは、ペプチドは、配列番号1から85のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み(またはこれらから本質的になり)、この場合、ペプチドは、典型的に、細胞増殖促進活性を呈する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、本発明の組成物の、化粧品としての非治療的使用を提供する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、医薬としての、本発明の組成物を提供する。
【0017】
以下の態様は、化粧におけるもの、すなわち、非治療的、または治療的でありうる。
【0018】
本発明の態様は、アンチエイジングのための方法における使用のための組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、医薬としての使用のための、本発明の組成物を提供する。
【0020】
本発明はまた、ヒト皮膚の老化を緩徐化または阻害または防止するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物も提供する。典型的に、投与は、局所適用に適するプラスターまたはパッチまたは製剤による投与でありうる。
【0021】
本発明のさらなる態様は、組織の増殖を促進する方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
本発明はまた、上皮組織の増殖を促進するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物も提供する。
本発明はまた、皮膚の増殖を促進するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物も提供する。
本発明はまた、臓器の増殖を促進するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物も提供する。
本発明はまた、生物の増殖を促進するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物も提供する。
好ましくは、細胞、組織、または生物は、正常な病態(例えば、老化皮膚)を有する。典型的に、細胞、組織、または皮膚は、異常な病態(例えば、外傷、薬物使用に起因して損傷した組織、または炎症性障害に起因して損傷した消化管内上皮組織)を有する。
増殖を促進する使用は、in vivoまたはin vitroにおける使用でありうる。増殖を促進する使用は、哺乳動物の外部(すなわち、皮膚)、または内部(すなわち、消化管)への投与を伴いうる。
【0022】
本発明のさらなる態様は、哺乳動物における筋肉状態を改善するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0023】
本発明のさらなる態様は、典型的に、身体運動後における、筋肉の回復を促進するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、哺乳動物における筋肉健康(例えば、除脂肪組織量)を維持するか、または回復させるための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、局所投与により、身体能力を増強するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、嗜眠または低エネルギーレベルにより特徴付けられる疾患または状態の処置または防止のための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、筋肉増殖または筋肉増強のための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。本発明の組成物は、肉牛および他の農場動物における、除脂肪筋肉量を増大させるための方法において使用することができる。
【0028】
本発明のさらなる態様は、タンパク質合成を増大させるための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、筋力低下を処置するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0030】
本発明の別の態様は、哺乳動物における創傷を処置するための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0031】
本発明の、なおさらなる態様は、哺乳動物における疼痛の処置または防止のための方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0032】
本発明の別の態様は、上皮の細胞もしくは組織の損傷、および/または真皮もしくは上皮の細胞もしくは組織の損傷により特徴付けられる疾患または状態の処置または防止のための方法における使用のためのペプチドまたは組成物を提供する。好ましくは、疾患または状態は、真皮または上皮の細胞または組織の損傷により特徴付けられ、がん、外傷から選択される。
【0033】
本発明のさらなる態様は、前述され、本明細書で記載される疾患、状態、および/または障害のうちのいずれか1つを処置、防止、またはケアする方法であって、本発明のペプチドまたは組成物を投与するステップを含む方法に関する。組成物は、局所投与することができる。
【0034】
本発明の使用は、治療的使用、または化粧における使用、すなわち、非治療的使用でありうる。
【0035】
本発明のさらなる態様は、患者における代謝性障害を処置または防止する方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。一実施形態では、代謝性障害は、患者におけるインスリンの応答または産生の減少により特徴付けられる疾患または症候群である。一実施形態では、代謝性障害は、糖尿病および前糖尿病から選択される。本発明はまた、高脂血症、肥満、高血圧症、食欲関連症候群、糖尿病に関連する症候群または糖尿病関連状態(例えば、グルコースレベルおよび/または糖尿病に関連する、脳卒中、心疾患、腎疾患、失明、ならびに/または四肢における感覚の喪失の割合の低減)、およびシンドロームXから選択される疾患または状態の処置または防止における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物も提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、筋肉消耗、除脂肪筋肉量の減少、同化代謝の低減、異化による消耗、またはタンパク質合成の低減により特徴付けられる疾患または状態を処置する方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。一実施形態では、疾患または状態は、サルコペニアまたは悪液質から選択される。一実施形態では、処置される患者は、老齢であり(すなわち、60歳を超え)、疾患は、加齢に関連する、サルコペニアまたは悪液質である。一実施形態では、患者は、がんを有する。一実施形態では、患者は、嗜眠を有する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、上皮の細胞もしくは組織の損傷、および/または真皮もしくは上皮の細胞もしくは組織の損傷により特徴付けられる疾患または状態を処置または防止する方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。好ましくは、疾患または状態は、上皮の細胞または組織の損傷により特徴付けられ、がん、外傷、薬物使用に起因して損傷した組織、または炎症性障害に起因して損傷した消化管内上皮組織から選択される。
【0038】
本発明のさらなる態様は、哺乳動物における筋肉健康(例えば、除脂肪組織量)を維持するか、または回復させる方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、嗜眠または低エネルギーレベルにより特徴付けられる疾患または状態の処置または防止の方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0040】
本発明の別の態様は、哺乳動物における創傷を処置する方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0041】
本発明の、なおさらなる態様は、哺乳動物における疼痛の処置または防止の方法における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物を提供する。
【0042】
別の態様は、哺乳動物における代謝性障害の処置または防止における使用のための、本発明の局所組成物に関する。代謝性障害は、糖尿病でありうる。
一実施形態では、本発明の使用は、治療有効量の本発明のペプチドを投与するステップを含む。
一実施形態では、本発明の組成物を、全身投与する。
一実施形態では、本発明の組成物(とりわけ、医薬組成物)を、経口投与または非経口投与のために製剤化する。本明細書では、他の投与方法についても記載される。
【0043】
本発明のさらなる態様は、配列番号1から85から選択されるペプチドのうちの1つまたは複数を含む組成物に関する。
一実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1から85のペプチドの実質的に全てを含む。
【0044】
本発明のさらなる態様は、本発明の組成物を含む、人工の処置組成物に関する。好ましくは、処置組成物は、アンチエイジング組成物である。好ましくは、処置は、筋肉処置組成物である。実施形態では、組成物は、局所組成物である。一実施形態では、組成物は、クリーム、ゲル、ローション、ラブ、パウダーを含む。好ましくは、処置は、創傷処置組成物である。
【0045】
本発明はまた、ケラチン組織または創傷への適用に適し、本発明のペプチドまたは組成物を含む、プラスター、包帯、または包帯剤にも関する。
好ましくは、組成物または製品は、人工である。
【0046】
(定義)
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許、特許出願、および他の参考文献は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照および完全に列挙されたその内容により組み込まれることが、具体的かつ個別に指し示された場合と同様に、参照によりそれらの全体において、全ての目的で、本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書で使用される場合、かつ、そうでないことが具体的に指し示されない限りにおいて、以下の用語は、用語が、当技術分野において帯びうる、任意のより広い(またはより狭い)意味に加えて、以下の意味を有するように意図される。
【0048】
そうでないことが文脈により要求されない限りにおいて、本明細書における単数形の使用は、複数形を含み、この逆も成り立つように読み取られるものとする。実体との関連で使用される「不定冠詞(a)」および「不定冠詞(an)」という用語は、これらの実体のうちの1つまたは複数を指すように読み取られるものとする。このように、本明細書では、「不定冠詞(a)」(または「不定冠詞(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、互換的に使用される。
【0049】
本明細書を通して、「~を含む(comprise)」という語、または「~を含む(comprises)」もしくは「~を含むこと」など、その変化形は、列挙された整数(例えば、特色、エレメント、特徴、特性、方法/工程ステップ、または限界)または整数の群(例えば、複数の特色、エレメント、複数の特徴、複数の特性、複数の方法/工程ステップ、または複数の限界)の包含を指し示し、他の任意の整数または整数の群の除外を指し示さないように読み取られるものとする。したがって、本明細書で使用される「~を含むこと」という用語は、包含的またはオープンエンドであり、さらなる、列挙されていない整数または方法/工程ステップを除外しない。
【0050】
本明細書で使用された、「疾患」という用語は、生理学的機能を損ない、具体的症状と関連する、任意の異常な状態を規定するのに使用される。用語は、病因の性格(または、実際に、疾患の病因的基礎が確立されているのかどうか)に関わらず、生理学的機能が損なわれる、任意の障害、疾病、異常、病態、病気、状態、または症候群を包含するように、広範に使用される。したがって、それは、感染、外傷、損傷、手術、放射線アブレーション、中毒、または栄養失調から生じる状態を包含する。
【0051】
本明細書で使用された、「処置」または「~を処置すること」という用語は、疾患の症状を治癒させるか、改善するか、もしくは軽減するか、またはその原因を除去する(またはそれらの影響を低下させる)(例えば、病理学的レベルのリソソーム酵素の蓄積の低減)介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、用語は、「治療」という用語と同義に使用される。
【0052】
加えて、「処置」または「~を処置すること」という用語は、処置される集団内の、疾患の発生もしくは進行を、防止するかもしくは遅延させるか、またはその発生率を低減する(または根絶する)介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、処置という用語は、「予防」という用語と同義に使用される。
【0053】
本明細書で使用される際に、薬剤の有効量または治療有効量は、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、妥当な有益性/危険性比に相応して、対象に投与することができる量であり、かつ、所望の効果、例えば、対象の状態の恒久的または一時的な改善により顕在化される処置または予防をもたらすのに十分な量を規定する。量は、個体の年齢および全般的な状態、投与方式、および他の因子に応じて、対象毎に変動するであろう。したがって、正確な有効量を指定することは、不可能であるが、規定の実験および一般的な背景知識を使用して、当業者は、任意の個別の症例において、適切な「有効」量を決定することが可能であろう。この文脈における治療結果は、症状の根絶または緩和、疼痛または不快感の軽減、生存の延長、運動の改善、および臨床的改善の他のマーカーを含む。治療結果は、完全な治癒であることを必要としない。
【0054】
本明細書では、「組成物」という用語は、人の手により作られ、天然の組成物を含まない何かを意味するように理解されるものとする。
【0055】
本明細書で使用される場合の「生体活性」という用語は、生物学的活性を有する、ペプチドまたは断片を指す。例えば、生物学的活性は、グルコース輸送促進活性、増殖促進活性、アンチエイジング活性、同化の活性、同化代謝促進活性、GLUT4移動促進活性、およびタンパク質合成促進活性のうちの1つまたは複数でありうる。活性は、抗炎症活性または抗菌活性でありうる。活性は、抗酸化活性でありうる。
【0056】
ペプチドまたは断片へと適用される、「グルコース輸送の促進」または「グルコース輸送促進活性」とは、下記で記載されるグルコース取込みアッセイにおいて、細胞へのグルコース取込みを増大させることが可能な、ペプチド、変異体、または断片を意味する。
【0057】
ペプチドまたは断片へと適用される、「GLUT4移動の促進」または「GLUT4移動促進活性」とは、下記で記載されるin vitroアッセイにおいて、骨格筋へのGLUT4移動を、非処置対照と比較して増大させることが可能なペプチド断片を意味する。
【0058】
「アンチエイジング」とは、ヒトの皮膚の老化の現出を阻害するか、もしくは遅らせること、および/または老化の現出を元に戻すことを意味する。「皮膚の老化を遅らせるか、または阻害すること」とは、皮膚における老化過程を遅らせるか、もしくは阻害すること、および/または老化の現出を元に戻すことを意味する。一実施形態では、ペプチドまたは断片へと適用される、「アンチエイジング」または「アンチエイジング活性」とは、下記で記載されるin vitroアッセイにおいて調べた場合、ヒト皮膚線維芽細胞内のコラーゲン産生またはエラスチン産生を、非処置対照と比較して増大させることが可能であるペプチドまたは断片、および/または、下記で記載された細胞増殖アッセイにおいて、細胞増殖を増大させることが可能であるペプチドまたは断片を意味する。
【0059】
ペプチドまたは断片へと適用される、「細胞増殖の促進」とは、下記で記載されるアッセイにおいて、エラスチン産生もしくはコラーゲン産生または細胞増殖を増大させることが可能なペプチド、変異体、または断片を意味する。細胞増殖を増大させるか、または「細胞増殖促進活性」を有するペプチドは、アンチエイジングペプチドまたはアンチエイジング変異体である。
【0060】
本発明のペプチドへと適用される、「タンパク質合成の増大」とは、下記で記載されるホスホ-MTORアッセイにおいて、MTORのリン酸化の程度を著明に増大させるか、または下記で記載されるピューロマイシンアッセイにおいて、タンパク質合成の程度を著明に増大させることが可能なペプチドを意味する。タンパク質合成を増大させるペプチドおよび組成物を利用して、哺乳動物における同化代謝を刺激すること、および/または異化による消耗により特徴付けられる疾患もしくは状態を処置することができる。
【0061】
ペプチドまたは断片へと適用される、「抗炎症性」とは、マクロファージを、100μMのペプチド、変異体、または断片で処置する場合に、LPSで刺激されたJ774.2マクロファージによるTNFαの分泌(非処置の、LPSで刺激されたJ774.2マクロファージと比較される)を、著明に低減することが可能なペプチドまたは断片を意味する。J774.2マクロファージを、100μMの合成ペプチドで、24時間にわたり処置し、次いで、(A)LPS(10ng/ml)で、5時間にわたり刺激するか、または(B)LPS(10ng/ml)で、5時間にわたり刺激するのに続き、ATP(5mM)で、1時間にわたり刺激した。上清を回収し、TNFαのレベルを、ELISAにより決定した。
【0062】
ペプチドまたは断片へと適用される、「抗菌の」または「抗菌活性」とは、以下の寒天プレートベースの増殖阻害アッセイにおいて、細菌の増殖を、目視可能な程度に阻害することが可能な、ペプチド、変異体、または断片を意味する:ペプチド原液=DMSO中に溶解させた5mg/mLである。細菌接種物は、マクファーランド0.5標準へと調整し、MHAプレートに塗布した。ブランクディスクを、プレート内に置き、10例ずつの各化合物(64μg/mLの最大被験濃度で)を添加した。プレートを、37℃で、16~18時間にわたりインキュベートした。適切な対照(DMSO;ミュラー-ヒントン培地単独;および2つの抗生剤ディスク:シプロフロキサシンおよびテトラサイクリン)もまた設定した。
【0063】
本発明のペプチドへと適用される、「抗酸化活性」とは、下記で記載される、DPPHラジカル捕獲アッセイにより決定される抗酸化活性を呈するペプチドを意味する。本発明は、本発明のペプチドまたは組成物の、抗酸化剤としての使用、および酸化ストレス(または酸化促進因子と、抗酸化因子との不均衡)により特徴付けられる疾患または状態の処置または防止、またはその進行の緩徐化における使用に関する。例は、心血管疾患(とりわけ、アテローム性動脈硬化)、がん、神経変性疾患(すなわち、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびALS)、白内障形成、糖尿病、関節リウマチを含む。鉄を錆びさせるのと同じ化学的反応である酸化は、われわれの体内でも、同様に、腐食の役割を果たす。過程は、酸化ストレスと呼ばれる。多数の研究が、これらの疾患は、酸化ストレス、および酸化促進因子と、抗酸化因子との均衡喪失により媒介されるために、抗酸化剤が、これらの状態の進行の防止または緩徐化において、枢要的役割を果たしうることを実証している。いくつかの研究は、食餌による抗酸化剤摂取の低下と、心疾患頻度の増大との関連を示す。他方、抗酸化剤の血中レベルが高い人は、心疾患の危険性が低い。例えば、看護師による研究において見られる通り、多くのビタミンEを定期的に摂取する人は、心疾患の発生率が、低量を摂取する人より41%小さかった。食事中の抗酸化ビタミンの増大は、心疾患の危険性を、20~30%低減しうる。
【0064】
がんは、世界中で、何百万人をも死亡させる。食餌は、全てのヒトがんのうちの、最大で35%において、がんの原因でありうる。食餌中の低抗酸化剤摂取量もまた、一因でありうる。
【0065】
酸化促進剤、すなわちフリーラジカルを発生させる物質は、細胞分裂を刺激し、突然変異誘発および腫瘍形成の開始をなす。損傷したDNA鎖を伴う細胞が分裂すると、撹乱され、変形された細胞のクラスターをもたらし、これが、がんを形成する。
【0066】
抗酸化剤は、
・DNAに対する酸化的損傷を減少させ、
・細胞分裂の異常な増大を減少させること
により、それらの保護効果を及ぼす。
【0067】
加えて、喫煙および慢性炎症も、強力なフリーラジカル発生をもたらし、これが、多くのがんの理由であると考えられる。一部の研究は、喫煙する人は、抗酸化剤レベルが、非喫煙者より低く、これが、喫煙者のがんの危険性を大きくすることを指し示している。
【0068】
呼吸器系は、フリーラジカル攻撃の周知の標的である。これは、内因性因子のほか、大気汚染物質および毒素、煙草の煙などへの曝露にも由来する。近年の研究は、フリーラジカルが、喘息など、肺障害の発症に関与しうることを示唆する。抗酸化剤は、喘息性症状の発症を低減すると考えられている。ビタミンC、ビタミンE、およびβカロテンの補充は、肺機能の改善と関連する。
【0069】
フリーラジカルはまた、神経および脳も損傷しうる。神経組織は、特に、酸化的損傷を受けやすい。これは、脳は、圧倒的に大部分の酸素を受け取り、酸化および酸化的損傷への傾向が大きいポリ不飽和脂肪酸を大量に有するためである。
【0070】
酸化ストレスの関与が示唆される疾患は、
・アルツハイマー病
・パーキンソン病
・認知症など
を含む。
【0071】
白内障の形成は、フリーラジカルによる、水晶体タンパク質への損傷を伴うと考えられる。これは、水晶体の混濁をもたらす。白内障の形成は、ビタミンE、ビタミンC、およびカロテノイドなど、サプリメントの抗酸化剤の定期的な摂取により、遅らせることができる。糖尿病、関節リウマチなど、他の疾患もまた、血中の低抗酸化剤レベルと関連する。
【0072】
「局所組成物」という用語は、局所投与のための製剤である組成物を指す。「局所投与」とは、皮膚、毛髪、および爪など、ケラチン組織への適用を指す。局所送達とは、一般に、皮膚への送達を意味するが、上皮細胞で覆われた体腔、例えば、肺または気道、消化管、口腔への送達もまた意味しうる。特に、局所送達のための製剤については、その完全な内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Topical drug delivery formulations edited by David Osborne and Antonio Aman, Taylor & Francisにおいて記載されている。気道への送達のための組成物または製剤については、O’Riordan et al(Respir Care,2002,Nov.47)、欧州特許出願公開第2050437号明細書、国際公開第2005023290号パンフレット、米国特許出願公開第2010/098660号明細書、および米国特許出願公開第2007/0053845号明細書において記載されている。活性薬剤を、回腸、とりわけ、近位回腸へと送達するための組成物および製剤は、活性薬剤を、ポリマー、または酸に耐性であるが、よりアルカリ性の回腸の環境で溶解する傾向がある乳製品タンパク質から形成された保護マトリックス内に封入した微粒子およびマイクロカプセルを含む。このような送達系の例については、EP1072600.2およびEP13171757.1に記載されている。経皮投与の代替的手段は、皮膚パッチの使用による。例えば、有効成分は、ポリエチレングリコールまたは液体パラフィンの水性エマルジョンからなるクリームへと組み込むことができる。同様に、有効成分は、1から10重量%の間の濃度で、要求される可能性がある安定化剤および保存剤と併せて、白色蝋または白色軟質パラフィン基剤からなる軟膏へ組み込むことができる。注射形態は、投与1回当たり、10~1000mgの間、好ましくは、10~250mgの間の有効成分を含有しうる。
【0073】
組成物は、単位剤形で、すなわち、単位用量、または複数の単位用量もしくは単位用量のサブユニットを含有する、個別部分の形態で製剤化されうる。
【0074】
本明細書で使用される場合の「化粧品組成物」という用語は、化粧、パーソナルケア、および/または衛生目的で使用しうる組成物に関する。組成物は、2つ以上の化粧目的を有する場合があり、同時に、2つ以上のこれらの目的のために使用しうることが理解されるであろう。本明細書で使用される場合の「化粧品」は、リップスティック、マスカラ、口紅、ファンデーション、頬紅、アイライナー、フェイスパウダーおよびボディーパウダー、サンスクリーン、サンブロック、マニキュア、コンパクト、ソリッド、ペンシルを含みうるがこれらに限定されない。
【0075】
「医薬組成物」:本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドを含む医薬組成物、または、1つもしくは複数の、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、もしくは担体と混合された、本発明のペプチドの組成物に関する。本発明のペプチドおよび組成物は、単独で投与しうるが、一般に、特に、ヒト治療のためには、医薬担体、賦形剤、または希釈剤と混合して投与されるであろう。医薬組成物は、ヒト医療および獣医科医療における、ヒト使用または動物使用のための組成物でありうる。本明細書で記載される医薬組成物の、多様な異なる形態に適する、このような賦形剤の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見出すことができる。特に、局所送達のための製剤については、その完全な内容が、参照により本明細書に組み込まれるTopical drug delivery formulations edited by David Osborne and Antonio Aman, Taylor & Francisにおいて記載されている。治療的使用に許容される担体または希釈剤は、薬学技術分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R.Gennaro edit. 1985)に記載されている。適切な担体の例は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどを含む。適切な希釈剤の例は、エタノール、グリセロール、および水を含む。医薬担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図された投与経路および標準的な薬学的慣行に照らして選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤、もしくは希釈剤として、またはこれらに加えて、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含みうる。適切な結合剤の例は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、β-ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガントなどの天然および合成ガム、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ならびにポリエチレングリコールを含む。適切な滑沢剤の例は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。保存剤、安定化剤、染料、および香味剤さえも、医薬組成物中に提供されうる。保存剤の例は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化剤および懸濁剤もまた使用することができる。
【0076】
「哺乳動物」という用語は、高等哺乳動物、とりわけ、ヒトを意味するように理解されるものとする。しかし、用語は、魚類など、非哺乳動物もまた含む。ヒトは、乳児、幼児、小児、若齢、成人、または老齢のヒトでありうる。本発明の一実施形態では、ヒトは、例えば、55歳またはこれを超える老人である。一実施形態では、ヒトは、除脂肪組織量の低下を経験しつつある老人である。一実施形態では、ヒトは、スポーツ選手である。一実施形態では、ヒトは、妊婦である。一実施形態では、ヒトは、嗜眠または精力の欠如を患っている。
【0077】
本明細書で使用される「皮膚科的に許容される」という用語は、局所組成物または組成物の成分が、毒性、不適合、不安定性、および/またはアレルギー応答などの危険性を伴わずに、ヒトの皮膚またはケラチン組織と接触させる使用に適することを意味する。
【0078】
「持続放出」という用語は、化合物または有効成分の送達系に関する、従来の意味で使用され、一定の期間内にわたって、化合物または有効成分の漸次的な放出をもたらす。必ずしも必須ではないが、好ましくは、一定の期間にわたる、比較的一定の化合物放出レベルで、化合物または有効成分の漸次的な放出をもたらす。
【0079】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、典型的に、ペプチド結合連結を介して連結された、最大で50アミノ酸、例えば、5から50アミノ酸の単量体から構成されたポリマーを指す。本発明のペプチドおよび本発明における使用のためのペプチド(その断片および変異体を含む)は、完全に、もしくは部分的に、化学合成により、または核酸からの発現により作出することができる。例えば、本発明のペプチドおよび本発明における使用のためのペプチドは、当技術分野で公知の十分に確立された、標準的な液相ペプチド合成法、または、好ましくは、固相ペプチド合成法に従い、容易に調製することができる(例えば、J.M.Stewart and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois(1984)、およびM. Bodanzsky and A.Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York(1984)を参照されたい)。必要な場合、本発明で利用されるペプチドの任意のものを化学修飾して、それらの安定性を増大させることができる。化学的に修飾されたペプチドまたはペプチド類似体は、ペプチドの任意の機能的な化学的同等物であって、発明の実施に関して、in vivoまたはin vitroにおける安定性および/または有効性の増大により特徴付けられる同等物を含む。ペプチド類似体という用語は、本明細書で記載されるペプチドの、任意のアミノ酸誘導体もまた指す。ペプチド類似体は、側鎖への修飾、ペプチド合成時における非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の組込み、ならびにペプチドまたはそれらの類似体にコンフォメーション拘束を付与する、架橋剤および他の方法の仕様を含むがこれらに限定されない手順により作製することができる。側鎖修飾の例は、アルデヒドとの反応および引き続くNaBH4による還元による還元的アルキル化;メチルアセトイミデートをによるアミド化;酢酸無水物によるアセチル化;シアネートによるアミノ基のカルバミル化;2、4、6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;コハク酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物によるアミノ基のアルキル化;ならびに、ピリオドキサ-5’-リン酸および引き続くNaBH4による還元によるリジンのピリドキシル化など、アミノ基の修飾を含む。アルギニン残基のグアニジノ基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、およびグリオキサールなどの試薬をによる複素環式縮合生成物の形成により修飾することができる。カルボキシル基は、o-アシルイソウレア形成によるカルボジイミド活性化、および引き続く誘導体化(たとえば、対応するアミドへの誘導体化)により修飾することができる。スルフヒドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、マレイン酸無水物、または他の置換マレイミドによる反応;4-クロロメルクリベンゾエート、4-クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロメルクリック-4-ニトロフェノール、および他の水銀を使用する、水銀誘導体の形成;アルカリ性pHにおける、シアネートのカルバミル化などの方法により修飾することができる。トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化、または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドもしくはハロゲン化スルホニルによるインドール環のアルキル化により修飾することができる。チロシン残基をテトラニトロメタンによるニトロ化により変化させ、3-ニトロチロシン誘導体を形成することができる。ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化、またはジエチルピロカーボネートによるN-カルボエトキシ化により達することができる。ペプチド合成時の非天然アミノ酸および誘導体の組込みの例は、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体の使用を含むがこれらに限定されない。ペプチド構造修飾は、D-アミノ酸によりコードされる逆配列を含むレトロインベルソペプチドの作出を含む。変化は、タンパク質分解への感受性を低減し、酸化への感受性を低減し、変異体配列の結合アフィニティーを変更し(典型的に、アフィニティーを増大させることが所望される)、および/または関連する変異体/類似体ペプチドに対して、他の物理化学的または機能的な特性を付与もしくは修飾する変化でありうる。
【0080】
本明細書で使用される「配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド」という用語は、典型的に、ペプチド結合連結を介して連結された、最大で50アミノ酸、例えば、5から50アミノ酸の単量体から構成されたポリマーであって、配列番号1、または配列番号1と実質的に同一であるが、1つもしくは複数のアミノ酸残基、例えば、1つ、2つ、もしくは3つの残基の変更に関して変更されている、配列番号1から本質的になるアミノ酸配列(本明細書の後出では、「変異体」または「ペプチド変異体」と称する)を含むポリマーを指す。好ましくは、このような変更は、11以下のアミノ酸、より好ましくは、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、好ましくは、5以下、4以下、なおより好ましくは、3以下のアミノ酸、最も好ましくは、1つまたは2つのアミノ酸だけの、挿入、付加、欠失、および/または置換を伴う。天然アミノ酸および修飾アミノ酸による、挿入、付加、および置換が想定される。ペプチドは、導入されるアミノ酸が、置換されるアミノ酸と、構造的に、化学的に、または機能的に同様である、保存的アミノ酸変化を有しうる。一般に、ペプチドは、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも90%の配列同一性を有し、理想的には、親配列との、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するであろう。
【0081】
「断片」という用語は、アミノ酸配列番号1のセグメントを意味するように理解されるものとする。典型的に、断片は、3から10連続アミノ酸の間の長さを有する。一般に、断片は、-5から+3の電荷を有する。ペプチド、断片、または領域の電荷は、Cameselle, J. C., Ribeiro, J. M., and Sillero, A.(1986). Derivation and use of a formula to calculate the net charge of acid-base compounds. Its application to amino acids, proteins and nucleotides. Biochem. Educ. 14, 131-136の方法を使用して決定される。
【0082】
本明細書では、「配列同一性」という用語は、配列同一性および配列類似性の両方を含む、すなわち、基準配列と、70%の配列同一性を共有する変異体(または相同体)とは、変異体(または相同体)のアライメントされた残基のうちの任意の70%が、配列の全長にわたり、基準配列内の、対応する残基と同一であるか、またはこれらの保存的置換である変異体(または相同体)であるように理解されるものとする。配列同一性とは、2つの異なる配列の間で、正確にマッチする文字の量である。本明細書では、ギャップは、カウントされず、測定は、2つの配列のうちの短い方の配列に関する。
【0083】
「配列相同性」との関係で、用語は、変異体(または相同体)のアライメントされた残基の規定されたパーセンテージが、基準配列内の、対応する残基と同一であるか、またはこれらの保存的置換であり、かつ、変異体(または相同体)が、基準配列と同じ機能を共有するときに、変異体(または相同体)が、基準配列と、規定された類似性パーセントまたは同一性パーセントを共有することを意味するように理解されるものとする。
【0084】
このアライメントおよび相同性パーセントまたは配列同一性パーセントは、当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを使用して決定することができ、例えば、1つのアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを使用するBLASTである。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgiにおいて見出すことができる。
【0085】
「炎症性障害」とは、ヒトに影響を及ぼし、1つまたは複数のサイトカインの発現の調節異常により一般に特徴付けられる免疫媒介性の炎症性状態を意味する。炎症性障害の例は、皮膚炎症性障害および関節の炎症性障害、心血管系の炎症性障害、ある種の自己免疫疾患、肺炎症性障害および気道炎症性障害、腸の炎症性障害を含む。皮膚炎症性障害の例は、皮膚炎、例えば、アトピー性皮膚炎および接触皮膚炎、尋常性座瘡、ならびに乾癬を含む。関節の炎症性障害の例は、関節リウマチを含む。心血管系の炎症性障害の例は、心血管疾患およびアテローム性動脈硬化である。自己免疫疾患の例は、1型糖尿病、グレーブス病、ギラン-バレー病、狼瘡、乾癬性関節炎、および潰瘍性大腸炎を含む。肺炎症性障害および気道炎症性障害の例は、喘息、嚢胞性線維症、COPD、肺気腫、および急性呼吸器逼迫症候群を含む。腸の炎症性障害の例は、大腸炎および炎症性腸疾患を含む。他の炎症性障害は、がん、枯草熱、歯周病、アレルギー、過敏症、虚血症、うつ病、全身性疾患、感染後炎症、および気管支炎を含む。本発明のペプチドおよび組成物はまた、炎症の非治療的処置においても利用することができる。炎症の非治療的処置の例は、正常で非病理学的な炎症、たとえば炎症身体運動後の筋肉および関節の炎症を和らげる使用を含む。
【0086】
「真皮または上皮の細胞または組織の損傷により特徴付けられる疾患または状態」とは、真皮または上皮の組織または細胞または臓器の損傷を結果としてもたらす、任意の症状または疾患を意味する。1つの例は、皮膚の損傷を結果としてもたらすことが多い外傷である。別の例は、皮膚の損傷を結果としてもたらすことが多い、乾癬または湿疹など、炎症性皮膚状態である。別の例は、腸管下部の内壁をなす上皮細胞/組織の損傷を結果としてもたらす、腸管下部の炎症性障害である。別の例は、毒性物質または損傷誘発物質(たとえば、毒性化学物質または毒性薬物)の摂取により引き起こされる、腸管下部の内壁をなす上皮細胞/組織の損傷である。別の例は、がん、例えば、腸内の上皮組織の損傷を結果としてもたらす腸がんである。別の状態は、ヒトにおける皮膚への損傷を結果としてもたらしうるアトピー性皮膚炎など、末梢の炎症性障害である。
【0087】
本明細書では、「代謝性障害」という用語は、前糖尿病、糖尿病;1型糖尿病;2型糖尿病;メタボリック症候群;肥満;糖尿病性脂質異常症;高脂血症;高血圧症;高トリグリセリド血症;高脂肪酸血症;高コレステロール血症;高インスリン血症;およびMODYを含むように理解されるものとする。
【0088】
「疾患または状態により特徴付けられた細菌感染」とは、例えば、MRSA性、サルモネラ菌性、リステリン菌性の肺炎、ブドウ球菌性食中毒、細菌性髄膜炎を含む細菌の増殖または細菌感染により引き起こされる病態を有することにより特徴付けられる、任意の状態または疾患を意味する。具体例は、https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_infectious_diseasesにおいて例示されている。
【0089】
可食品へと適用される「人工の」とは、人間により作られたものであり、天然では存在しないことを意味するように理解されるものとする。
【0090】
「筋肉状態の改善」とは、筋肉健康の改善、例えば、骨格筋タンパク質合成、骨格のグルコース吸収の促進、治療的または非治療的状況における除脂肪組織量の改善、一般に活動的身体運動の後における筋肉回復の促進、または筋肉能力の改善を意味する。方法または使用は、治療的または非治療的でありうる。「除脂肪組織量状態の改善」という用語は、除脂肪組織量の増大、または除脂肪組織量の分解速度の阻害もしくは防止を意味するように理解されるものとする。
【0091】
「筋肉回復の促進」とは、骨格筋内のグルコースの吸収の、非処置骨格筋と比較した増大を引き起こすことを意味する。
【0092】
「嗜眠または低エネルギーレベルにより特徴付けられる疾患または状態」とは、疲労感または低エネルギーにより特徴付けられる、任意の症状または疾患を意味する。例は、アレルギー、喘息、貧血、がんおよびその処置、慢性疼痛、心臓疾患、感染、うつ病、摂食障害、悲嘆、睡眠障害、甲状腺問題、投薬副作用、アルコール使用、または薬物使用を含む。
【0093】
「異化による消耗」という用語は、サルコペニアおよび悪液質の両方を包含する(「異化」とは、組織の分解を指し、組織の構築を意味する「同化」の反意語である)。
【0094】
慢性疾病に起因する、筋組織および脂肪組織の喪失は、悪液質と呼ばれる。加齢と共に生じる、一般的な、体重および筋肉量の減少は、サルコペニアと呼ばれる。悪液質およびサルコペニアのいずれにおいても、筋力低下は、フレイルをもたらし、様々な臨床転帰に有害な影響を及ぼす(Rolland 2011; Fearon 2013; Muscaritoli 2013)。悪液質および/またはサルコペニアを伴う個体は、死亡、感染、および転倒;創傷治癒の遅延;著明に低い身体運動能力および呼吸能;ならびに生活の質の全体的な減退の危険性を増大させている。
【0095】
悪液質は、通例、サルコペニアより急速で顕著な体重低減を引き起こし、一般に、筋組織および脂肪組織の、合計で体重の5%を超える喪失として特徴付けられるが、体重の20%を超える喪失が一般的である。多くの場合、悪液質を伴う人は、十分なカロリーを摂取していてもなお、体重を減少させ続ける。がん、AIDS、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの重度の慢性疾病は、悪液質の公知の原因である。全がん患者の50%から80%は、悪液質を経験し、悪液質は、全がん関連死亡の20%超の主要な原因であることが推定される。HIV/AIDS患者における悪液質は、一般的であり、抗HIVウイルス薬の出現の前に、既に生じていた。サルコペニア(「肉の欠乏」を意味するギリシャ語に由来する)は、一般に、加齢に関連する筋肉量および筋機能の喪失を指す。80歳を超える人の約50%は、サルコペニアを経験する。また、サルコペニアは、身体的不活動、低栄養、または疾病の結果としても生じうる。一部の研究者らは、加齢に関連する、基礎原因と関連しない筋力低下を「一次性サルコペニア」と称し、1つまたは複数の、他の原因の帰結として生じる筋力低下を「二次性サルコペニア」と称する。サルコペニアは、60歳を超える非肥満成人における、インスリン抵抗性および2型糖尿病の危険性の増大と関連する。従来の医学界は、悪液質に対する早期の積極的介入を提供することに失敗し、若齢死および身体機能障害を含む臨床転帰不良をもたらすことが多い。悪液質のための標準的な医療処置は、液体および食物の摂取の促進、ならびにある種の薬物の使用を含む。しかし、サルコペニアおよび悪液質を処置する多くの標準的な医学的治療は、悪心、浮腫、および疲労など、有害作用の危険性をもたらし、それらの一部は、臨床試験においても十分に調べられていない。多数の栄養、生活様式、および革新的な薬理学的介入は、異化による消耗を防止および処置するのに有用でありうる。乳漿タンパク質、クレアチン、およびアミノ酸である、グルタミン、アルギニン、ロイシン、およびヒドロキシ酪酸メチルまたはHMB(ロイシン誘導体)は、除脂肪筋肉量を構築および維持するために、とりわけ、重要である。オメガ3脂肪酸、コンジュゲートリノール酸、およびビタミンDもまた、除脂肪組織喪失に対抗する。筋肉消耗を防止するための、新規で新興の戦略が、真に、強く必要とされている。
(Ribeiro S, Keheyias J. Sarcopenia and the analysis of body composition. Adv Nutr 2014:5:260-267。
Muscaritoli A, Lucia S, Molfino A, Cederholm MT, Rossi Fanelli F, Muscle atrophy in aging and chronic diseases: is it sarcopenia or cachexia? Intern Emerg Med 2013;8: 553-560。
Rolland Y, VanKan GA, Gillette-Guyonnet S, Vellas B. Cachexia versus sarcopenia. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2010;14(1):15-21。
Evans WJ, Morley JE, Argiles JM, et al. Cachexia: a new definition. Clin Nutr 2008;27:793-799。
Fearon K, Arends J, Baracos V. Understanding the mechanisms and treatment options in cancer cachexia. Nat Rev Clin Oncol 2013;10(2):90-99。)
【0096】
「筋肉健康の維持または回復」とは、哺乳動物の筋肉健康を保持するか、または身体運動時に被った損傷から回復させる一助となることを意味する。骨格筋内のグルコース輸送を促進することにより、ペプチドは、身体運動からの回復を促進し、身体運動と関連する筋肉痛および損傷を和らげる。また、それらは、筋痙攣を減少および防止し、筋痙攣からのより迅速な回復を可能とするのにも使用することができる。痙攣は、身体的ストレス、精神的ストレス、および/または反復過多損傷ストレスから生じうる。グルコース輸送を促進することにより、ペプチドは、筋肉のミオパチーを軽減し、哺乳動物におけるサルコペニアを防止し、身体運動時の傷害からの回復を促進し、身体運動と関連する筋肉痛および損傷を和らげる。本発明はまた、哺乳動物における筋肉健康の維持または回復における使用のための、本発明のペプチドまたは組成物にも関する。
【0097】
本明細書では、「パーソナルケア製品」という用語は、ヒトの身体、特に皮膚、歯、爪、足、および毛髪の洗浄または処置における、ヒトによる使用のために製剤化された組成物を意味するように理解されるものとする。例は、シャンプー、コンディショナー、皮膚クリームおよび皮膚ローション、パウダー、歯磨き剤、シャワーゲルまたはシャワークリーム、入浴ゲルまたはシャワーゲル、染毛剤、石鹸、ボディースクラブ、角質除去剤、ふけ防止液、ボディーローション、シェービング液、モイスチャライザー、洗浄液、マスク、オイル、セラム、ならびにリンス、体臭防止剤、および制汗剤を含む。
【0098】
「皮膚老化」という用語は、化粧品およびパーソナルケア製品の技術分野において一般かつ広範に使用されている意味で使用される。皮膚老化の徴候は、皺、皺線、裂け目、瘤、赤色斑、毛穴の肥大、あれ、くすみ、弾力性の喪失、たるみ、張りの喪失、変色、できもの、色素過剰、しみ、角化症、炎症、コラーゲン分解、および下にある組織を含む皮膚層内の他の組織学的変化を含む。
【0099】
「化粧にまたは薬学的に許容される塩」という用語は、動物における使用、より具体的には、ヒトにおける使用が認知されている塩を意味し、塩基付加塩または酸付加塩を形成するために用いられる塩を含む。塩基付加塩は、無機塩(特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、もしくはアルミニウムなどであるがこれらに制約されない)、または、有機塩(特に、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、もしくはピペラジンなどであるがこれらに制約されない)である。酸付加塩は、有機塩(特に、酢酸、クエン酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、安息香酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、コハク酸、オレイン酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、パモ酸、もしくはグルコン酸などであるがこれらに制約されない)、または無機塩(特に、塩化物、硫酸、ホウ酸、もしくは炭酸などであるがこれらに制約されない)である。それが、化粧にまたは薬学的に許容されるという条件で、塩の性質は、それほど重要ではない。本発明のペプチドの化粧にまたは薬学的に許容される塩は、先行技術において周知である、従来の方法により得ることができる[Berge S.M. et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., (1977), 66, 1-19]。
【0100】
断片に適用される「C末端ドメイン」とは、断片のC末端における、最初の3つのアミノ酸を意味する。
【0101】
断片に適用される「N末端ドメイン」とは、断片のN末端における、最後の3つのアミノ酸を意味する。
【0102】
基準タンパク質の「相同体」とは、基準タンパク質との、少なくとも60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性を有する、異なる種の植物に由来するタンパク質を意味するように理解されるものとする。
【0103】
本明細書では、「~を含む(comprise、comprises)、含まれた(comprised)、~を含むこと(comprising)」という用語、またはこれらの任意の変化形、および「~を含む(include、includes)、含まれた(included)、~を含むこと(including)」という用語、またはこれらの任意の変化形は、完全に互換的であると考えられ、全て、可能な限りで広義な解釈を与えられ、この逆も成り立つものとする。
【0104】
添付の図面の参照を伴う、例示の目的のみのために提供される実施形態の以下の記載から、本発明はより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】非処置およびペプチド処置のヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を使用する、細胞増殖アッセイの結果を例示する図である。
【
図2】非処置およびペプチド処置のHACAT細胞を使用する、細胞増殖アッセイの結果を例示する図である。
【
図3】非処置およびペプチド処置のヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を使用する、コラーゲン発現アッセイの結果を例示する図である。
【
図4】非処置およびペプチド処置のヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を使用する、エラスチン発現アッセイの結果を例示する図である。
【
図5】非処置およびペプチド処置のヒト骨格筋芽細胞を使用する、グルコース取込みアッセイの結果を例示する図である。
【
図6】非処置およびペプチド処置のヒト骨格筋芽細胞を使用する、グルコース取込みアッセイの結果を例示する図である。
【
図7】非処置およびペプチド処置のヒト骨格筋芽細胞を使用する、グルコース取込みアッセイの結果を例示する図である。
【
図8】非処置およびペプチド処置のヒト骨格筋芽細胞を使用する、GLUT4移動アッセイの結果を例示する図である。
【
図9】筋タンパク質合成(mTOR)アッセイの結果を例示する図である。
【
図10】筋タンパク質合成(ピューロマイシン)アッセイの結果を例示する図である。
【
図11】配列番号1のペプチドを使用する、HSKMC細胞における細胞毒性研究の結果を例示する図である。
【
図12】ホスホアセチルCoAカルボキシラーゼ(Ser79)ELISA(配列番号1のペプチド)の結果を例示する図である。
【
図13】ホスホAkt1 ELISA(配列番号1のペプチド)の結果を例示する図である。
【
図14】ホスホAMPKα ELISA(配列番号1のペプチド)の結果を例示する図である。
【
図15】配列番号1のペプチドによる、5日間にわたる処置の後における、KKAYマウスの血中グルコースレベルを例示する図である。
【
図16】配列番号1のペプチドによる、7日間にわたる処置の後における、KKAYマウスの血中グルコースレベルを例示する図である。
【
図17】配列番号1のペプチドによる、13日間にわたる処置の後における、KKAYマウスの体重を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
ここで、具体例に言及しながら、本発明について記載する。これらは、例示的な目的だけで例示されるものであり、いかなる形でも、主張する独占権または記載される本発明の範囲へと限定されることを意図するものではない。これらの例は、本発明を実施するために、現在想定される、最良の方式を構成する。
【0107】
最広義において、本発明の第1の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド(本明細書の後出では、「本発明のペプチド」とする)を提供する。
【0108】
第2の態様では、本発明は、有効量の、本発明のペプチドを含む組成物を提供する。
組成物は、局所組成物でありうる。
組成物は、化粧有効量の、配列番号1のアミノ酸配列またはその変異体を含むペプチドを含む化粧品組成物でありうる。
組成物は、薬学的有効量の、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドまたはその変異体を含む医薬組成物でありうる。
組成物は、化粧効果、すなわち、非治療的効果、または治療的効果を及ぼしうることが理解されるであろう。組成物は、化粧効果および治療的効果を及ぼしうる。
【0109】
化粧適用の例は、アンチエイジング、ヒト皮膚の老化の緩徐化または阻害または防止、組織の増殖の促進、上皮組織の増殖の促進、皮膚の増殖の促進、臓器の増殖の促進、生物の増殖の促進、哺乳動物における筋肉状態の改善、典型的には身体運動後における、筋肉の回復の促進、哺乳動物における筋肉健康の維持または回復、身体能力の増強、筋肉増殖または筋肉増強、および筋力低下の処置を含むがこれらに限定されない。
【0110】
本発明はまた、本発明の組成物またはペプチドの治療的使用/適用、とりわけ、非局所的な治療的適用も提供する。
【0111】
治療的適用の例は、組織の増殖の促進、上皮組織の増殖の促進、皮膚の増殖の促進、臓器の増殖の促進、生物の増殖の促進、哺乳動物における筋肉状態の改善、筋肉の回復の促進、哺乳動物における筋肉健康の維持または回復、筋肉増殖または筋肉増強、筋力低下の処置、筋肉消耗または同化活性の低減またはタンパク質合成の低減(異化による消耗)により特徴付けられる疾患または症状の処置または防止、酸化ストレスにより特徴付けられるか、または媒介される疾患または症状の処置または防止、代謝性疾患(特に糖尿病または前糖尿病)の処置または防止、嗜眠または低エネルギーレベルにより特徴付けられる疾患または症状の処置または防止、哺乳動物における創傷の処置、哺乳動物における疼痛の処置または防止、上皮の細胞もしくは組織の損傷、および/または真皮もしくは上皮の細胞もしくは組織の損傷により特徴付けられる疾患または症状の処置または防止、および哺乳動物における代謝性障害(糖尿病など)の処置または防止を含むがこれらに限定されない。
【0112】
配列番号1は、以下の配列:
WKDEAGKPLVKを有する。
【0113】
本発明の実施形態では、ペプチドは、生体活性である。
【0114】
実施形態では、ペプチドは、グルコース輸送促進活性を有する。一実施形態では、ペプチドは、細胞増殖促進活性を有する。一実施形態では、ペプチドは、アンチエイジング活性を有する。実施形態では、ペプチドは、同化活性を有する。ペプチドは、グルコース輸送促進活性、細胞増殖促進活性、アンチエイジング活性、および同化活性のうちの2つまたは3つを有しうることが理解されるであろう。ペプチドは、グルコース輸送促進活性、細胞増殖促進活性、アンチエイジング活性、および同化活性を有しうる。
【0115】
本発明の実施形態では、ペプチドは、約3から50アミノ酸の長さ、約14から約50アミノ酸の長さ、好ましくは、約、15、20、25、30、35、40、45、または49アミノ酸の長さ、好ましくは、約14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸の長さを含む。
【0116】
本発明の実施形態では、ペプチドは、約3から約11アミノ酸の長さ、好ましくは、約、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸の長さを含む。
【0117】
一実施形態では、ペプチドは、配列番号1と比較して、1から5箇所のアミノ酸変化を有する。一実施形態では、ペプチドは、配列番号1と比較して、1から4箇所のアミノ酸変化を有する。一実施形態では、ペプチドは、配列番号1と比較して、1から3箇所のアミノ酸変化を有する。一実施形態では、ペプチドは、配列番号1と比較して、1から2箇所のアミノ酸変化を有する。一実施形態では、アミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化である。一実施形態では、アミノ酸変化は、アミノ酸置換である。一実施形態では、アミノ酸置換は、保存的置換である。一実施形態では、アミノ酸変化は、アミノ酸付加である。一実施形態では、アミノ酸変化は、アミノ酸欠失である。
【0118】
本発明のペプチドは、以下の変異体ペプチドを含む。
【0119】
配列番号1の変異体
1、2、または3箇所の保存的アミノ酸置換、1、2から3箇所の非保存的アミノ酸、1、2、または3箇所のアミノ酸付加、1、2、または3箇所のアミノ酸欠失を有する変異体を含む、配列番号1(WKDEAGKPLVK)の変異体を、下記に提示する:
1箇所の保存的アミノ酸置換:
WKEEAGKPLVK(配列番号2);FKDEAGKPLVK(配列番号3);
WKDEAGKPMVK(配列番号4);WKDEAGRPLVK(配列番号5);
WRDEAGKPLVK(配列番号6);WKDEAGKPLMK(配列番号7);
WKDQAGKPLVK(配列番号8);WKDEATKPLVK(配列番号9)
2箇所の保存的アミノ酸置換:
YKNEAGKPLVK(配列番号10);WKNESGKPLVK(配列番号11);WKDEAGKTLVR(配列番号12);FKDEATKPLVK(配列番号13);FKDEAGKPLIK(配列番号14);WKDEAGKTLLK(配列番号15);WKNEAGKPVVK(配列番号16);WKDEAGRTLVK(配列番号17)
3箇所の保存的アミノ酸置換:
WEDESGKPLLK(配列番号18);WKEEAGKPIVQ(配列番号19);YKNEAGKPLVR(配列番号20);WKDQATRPLVK(配列番号21);WKDESGKPVLK(配列番号22);WQDDSGKPLVK(配列番号23);WKNEAGKTLLK(配列番号24);WKDKAGEPLVR(配列番号25)
1箇所の非保存的アミノ酸置換:
WKDEAGNPLVK(配列番号26);CKDEAGKPLVK(配列番号27);WKDEAGKPLGK(配列番号28);WKDENGKPLVK(配列番号29);WKDEARKPLVK(配列番号30);WKDEAGKPLVT(配列番号31);WKDEAGKRLVK(配列番号32);WKWEAGKPLVK(配列番号33)
2箇所の非保存的アミノ酸置換:
WKDEAGFPTVK(配列番号34);WYDMAGKPLVK(配列番号35);WKDYEGKPLVK(配列番号36);WKREAGKPGVK(配列番号37);WKLEKGKPLVK(配列番号38);WKDEAGKPCVK(配列番号39);WKKEAPKPLVK(配列番号40);SKDEAGPPLVK(配列番号41)
3箇所の非保存的アミノ酸置換:
WKHEPGKPLAK(配列番号42);WKDEREKPFVK(配列番号43);WKQEAGKPWRK(配列番号44);VKDEAKKPLVH(配列番号45);NWDEAGKMLVK(配列番号46);IKDEDGPPLVK(配列番号47);LKDEYGKPLVN(配列番号48);WKDRAGKELTK(配列番号49)
アミノ酸付加
WKDEAGKPLPVK(配列番号50);
WKGDENYAGKPLVK(配列番号51);
LWKDEAGRKYPLVK(配列番号52);
WKDCEGAGKPLVK(配列番号53);
WKDEPAGKPLVVK(配列番号54);
WKDEAGPKPLVK(配列番号55);
WKDEAGWADKPLVK(配列番号56);
WKNDEAGKPLVK(配列番号57)
アミノ酸欠失
WKDAKPLVK(配列番号58);WKEAGKPVK(配列番号59);
WKDEAKPLVK(配列番号60);WDEAGKPV(配列番号61);
WKDEAGKPVK(配列番号62);WDAGKPLVK(配列番号63);
WKDEAGKPLV(配列番号64);WEAGKPLV(配列番号65)
【0120】
変異体ペプチドは、生体活性変異体でありうる。
【0121】
本発明はまた、配列番号1の断片、およびこれらの断片のうちの1つまたは複数を含むペプチドも提供する。
【0122】
断片は、生体活性断片でありうる。一実施形態では、断片は、アンチエイジング断片である。一実施形態では、断片は、細胞増殖促進断片である。一実施形態では、断片は、グルコース輸送促進断片である。一実施形態では、断片は、同化断片である。一実施形態では、生体活性断片は、アンチエイジング断片、グルコース輸送促進断片、細胞増殖促進断片、および同化断片のうちの2つ以上であることが理解されるであろう。一実施形態では、生体活性断片は、アンチエイジング断片、グルコース輸送促進断片、細胞増殖促進断片、および同化断片である。
【0123】
断片は、生体活性断片でありうる。一実施形態では、断片は、細胞増殖促進断片である。一実施形態では、断片は、GLUT4移動促進断片である。一実施形態では、断片は、同化代謝刺激活性を呈する。一実施形態では、断片は、抗酸化活性または抗炎症活性を呈する。
【0124】
配列番号1の断片の例を、下記に提示する。
WKDEAG(配列番号66);WKDEA(配列番号67);KDEAGKPL(配列番号68);KDEAG(配列番号69);DEAGKPL(配列番号70);GKPLV(配列番号71);DEAGK(配列番号72);WKDEAGKPL(配列番号73);WKD(配列番号74);KDE(配列番号75);KPLVK(配列番号76);WKDE(配列番号77);AGKPL(配列番号78);EAG(配列番号79);AGK(配列番号80);KPL(配列番号81);LVK(配列番号82);GKP(配列番号83);DEA(配列番号84);PLV(配列番号85)
【0125】
組成物は、複数のペプチドまたは断片を含みうることが理解されるであろう。好ましくは、組成物は、少なくとも2つの本発明のペプチドを含む。
【0126】
好ましくは、組成物は、少なくとも3つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも4つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも5つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも6つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも7つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも8つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも9つの本発明のペプチドを含む。好ましくは、組成物は、少なくとも10の本発明のペプチドを含む。一実施形態では、組成物は、実質的に全てのペプチドを含む。一実施形態では、組成物は、実質的に全ての変異体を含む。一実施形態では、組成物は、実質的に他のペプチドを含まない。
【0127】
実施形態では、本発明のペプチドまたは組成物は、抗菌活性、抗炎症活性、および抗酸化活性のうちの1つまたは複数から選択される活性を有する。活性は、化粧活性(すなわち、非治療的活性)、治療的活性、またはこれらの両方でありうる。本発明はまた、哺乳動物における消化管健康を維持または回復させる方法における使用のための、本発明の組成物も提供する。本発明はまた、細菌感染を処置するための方法における使用のための、本発明の組成物も提供する。本発明のさらなる態様は、哺乳動物における、炎症性障害および/または炎症の処置または防止のための方法における使用のための、本発明の組成物を提供する。好ましくは、炎症は、症候性炎症である。この使用は、上記で論じられた本発明の使用に加えた使用、または代替的使用でありうる。
【0128】
実施形態では、本発明のペプチドもしくは断片または組成物は、抗菌活性、抗炎症活性、および抗酸化活性のうちの1つまたは複数から選択される活性を有する。
【0129】
組成物は、局所組成物でありうる。局所組成物は、クリーム、多重エマルジョン、無水組成物、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ゲル、クリームゲル、水アルコール溶液、水グリコール溶液、化粧品、パーソナルケア製品、ハイドロゲル、リニメント、セラム、石鹸、ダスティングパウダー、ペースト、半固体製剤、リニメント、セラム、シャンプー、コンディショナー、軟膏、任意のすすぎ製剤、タルク、ムース、パウダー、スプレー、エアゾール、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、多糖フィルム、パッチ、ゲルパッチ、包帯、接着剤系、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、およびシリコーンエマルジョンを含む群から選択される製剤として提供することができる。
【0130】
本発明の実施形態では、エマルジョンは、脂質または油を含有する。エマルジョンは、水中油、油中水、水中油中水、およびシリコーン中水中油エマルジョンでありうるがこれらに限定されない。エマルジョンは、保湿剤を含有しうる。エマルジョンは、シリコーンなどの消泡剤を含有しうる。エマルジョンは、任意の適切な粘度を有しうる。エマルジョンは、乳化剤および/または消泡剤をさらに含有しうる。エマルジョンを調製する方法は、当業者に公知である。
【0131】
本発明の組成物は、様々な適切な形態で提供、調製、および/または投与されうる。このような形態は、例えば、溶液(例えば、注射溶液および注入溶液)、分散液または懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、錠剤、丸剤、粉剤、リポソーム、デンドリマーおよび他のナノ粒子、マイクロ粒子、ならびに坐剤など、液体、半固体、および固体剤形を含むがこれらに限定されない。形態は、意図される投与方式、組成物または組合せの性質、および治療適用、または他の意図される使用に依存しうることが理解されるであろう。また、製剤は、例えば、粉剤、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)を含有する小胞体、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョン、エマルジョン、カーボワックス(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物も含みうる。
【0132】
1つの製品において「有効」成分であると考えられる成分は、別の製品では、「機能的」成分または「賦形剤」成分である場合があり、この逆も成り立つことを理解されたい。一部の成分は、有効成分および機能的成分または賦形剤成分の両方としての二重の役割を果たすこともまた理解されるであろう。
【0133】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法および使用は、1つまたは複数の他の活性薬剤(例えば、市販されている、既存の増殖促進薬または薬理学的増強剤)と組み合わせられる、本発明のペプチドまたは組成物の投与を伴う。このような場合に、本発明の化合物は、1つまたは複数の、他の活性薬剤と、連続的、同時的、または逐次的に投与することができる。
【0134】
好ましい実施形態では、組成物の反復使用が提供される。
【0135】
本発明の組成物は、投与のために、医療器具へと組み込むことができる。このような器具は、織布、パッチ、包帯、ガーゼ、ソックス、タイツ、下着、包帯剤、手袋、マスク、接着性パッチ、非接着性パッチ、閉塞パッチ、および微少電流パッチ、または適切な接着剤系を含むがこれらに限定されない。このような実施形態では、器具は、皮膚などのケラチン層と直接的に接触して存在し、これにより、本発明のペプチドを放出する。局所組成物は、本明細書で詳述される、任意の適切な形態で組み込みうることが理解されるであろう。例えば、本発明の局所組成物または局所ペプチドは、器具中に組み込みうるか、もしくは器具の表面上に存在するか、あるいはクリーム、ゲル、もしくは蝋製剤、または本明細書で規定された、任意の適切な製剤中に存在し、器具中または器具の表面上に組み込むことができる。
【0136】
器具は、皮膚への接着または接合に適応させることができる。一実施形態では、器具を、一定量の本発明の組成物またはペプチドの放出へと適応させる。持続放出系中に含有される組成物の量は、例えば、組成物が、どこに投与されるのか、本発明の組成物の放出の動態および持続時間のほか、処置および/またはケアされる症状、障害、および/または疾患の性質に依存することが理解されるであろう。器具は、組成物が、器具の生体分解により、または器具と身体との摩擦により、身体の水分、皮膚のpH、もしくは体温のために放出されるような器具でありうる。
【0137】
本発明の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの、化粧にまたは薬学的に許容される賦形剤をさらに含みうる。賦形剤は、機能成分または添加剤と互換的に使用することができる。本発明の局所組成物は単独で投与されうるが、一般には、化粧品賦形剤または医薬賦形剤と混合して投与されることが理解されるであろう。当技術分野では、化粧にまたは薬学的に許容される賦形剤が周知であり、それが、局所投与に適し、不適切な毒性、不適合性、および/またはアレルギー反応を伴わずに、皮膚科的に許容されるという条件で、任意の公知の賦形剤を使用することができる。
【0138】
好ましくは、組み入れられる任意の賦形剤は、微量で存在する。組み入れられる賦形剤の量は、使用される賦形剤の種類、賦形剤の性質、局所組成物の成分、局所組成物中の、有効成分もしくはペプチドの量、および/または局所組成物の、意図される使用を含む、多数の因子に依存する。任意の賦形剤の性質および量は、本発明のペプチドの有益性を、許容不可能な形で変更しないものとする。
【0139】
本発明の実施形態では、賦形剤は、適切な希釈剤、担体、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、保存剤、安定化剤、染料、媒体、可溶化剤、基剤、軟化剤、乳化剤、フラグランス、保湿剤、および/または界面活性剤でありうる。
【0140】
適切な希釈剤の例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書に開示されている、任意の希釈剤を含むがこれらに限定されない。例は、エタノール、グリセロール、および水を含む。適切な担体の例は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されている、任意の適切な担体を含むがこれらに限定されない。
【0141】
適切な結合剤の例は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、β-ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガントなどの天然および合成ガム、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ならびにポリエチレングリコール、ならびに米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されている、任意の適切な結合剤を含むがこれらに限定されない。
【0142】
適切な滑沢剤の例は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および塩化ナトリウム、ならびに米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されている、任意の適切な滑沢剤を含むがこれらに限定されない。
【0143】
担体は、当技術分野で公知であるか、または米国特許出願公開第2014/0120131号明細書もしくは米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されている、任意の適切な担体でありうる。いくつかの実施形態では、担体は、水、油などの液体、または石油、動物、植物、または合成由来の界面活性剤を含む界面活性剤、ポリマー、ラッカセイ油、鉱物油、ヒマシ油、ダイズ油などの油、アルコール、ポリソルベート、ソルビタンエステル、エーテルスルフェート、スルフェート、ベタイン、グリコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノンオキシノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロース、グリセロール、またはジキトニンを含みうるがこれらに限定されない。担体は、皮膚科的に許容されることが理解されるであろう。好ましい担体は、水中油、油中水、水中油中水、およびシリコーン中水中油エマルジョンなどのエマルジョンを含有する。エマルジョンは、乳化剤および/または消泡剤をさらに含有しうる。
【0144】
本発明の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の追加の成分をさらに含みうる。本発明の組成物は、1つまたは複数の他の追加の薬剤と、連続的、同時的、または逐次的に投与することができる。このようなさらなる成分は、局所組成物中に組み入れるのに有益であるか、または局所組成物の、意図される使用に応じて有益な成分でありうる。追加の成分は、有効成分もしくは機能的成分、またはこれらの両方でありうる。
【0145】
このような追加の成分の例は、洗浄剤、コンディショニング剤、サンスクリーン、顔料、モイスチャライザー、増粘剤、ゲル化剤、精油、収斂剤、顔料、凝固防止剤、消泡剤、結合剤、添加剤、緩衝剤、キレート剤、外用鎮痛剤、薄膜形成剤または薄膜形成材料、増量剤、ポリマー、乳白剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、封鎖剤、皮膚脱色剤および皮膚美白剤、皮膚コンディショニング剤、アロエ、治癒剤、鎮静剤、平滑剤、パントテン酸、処置剤、増粘剤、ビタミン、着色剤、医薬剤、防腐剤、消泡剤、緩衝剤、収斂剤、ポリマー、pH調整剤、体臭防止剤、または他の任意の皮膚科的に許容される担体もしくは界面活性剤のうちの1つまたは複数を含むがこれらに限定されない。
【0146】
列挙された追加の成分は、1つを超える有益性をもたらしうることを理解されたい。本明細書でなされる分類は、明確さおよび簡便さのためだけのものであり、さらなる成分を、列挙された、この特定の適用または類型へと限定することを意図するものではない。
【0147】
いずれの追加の成分も、不適切な毒性、不適合性、および/またはアレルギー反応を伴わずに、皮膚への適用に適するものであるべきである。
【0148】
いくつかの実施形態では、追加の成分は、グルコース輸送活性を有するか、またはグルコース輸送活性の一助となる。いくつかの実施形態では、追加の成分は、同化活性を有する。いくつかの実施形態では、追加の成分は、抗炎症活性を有するか、または抗炎症活性の一助となる。いくつかの実施形態では、追加の成分は、アンチエイジング活性を有するか、またはアンチエイジング活性の一助となる。いくつかの実施形態では、追加の成分は、ケラチン層健康および/もしくは発生、皮膚健康および/もしくは発生、ならびに/または筋肉健康、回復、および/もしくは発生のための成分である。活性薬剤は、薬理学的増強剤でありうる。このような活性薬剤は、公知であり、市販されている。このような場合に、本発明の局所組成物は、1つまたは複数の、他の活性薬剤と、連続的、同時的、または逐次的に投与することができる。
【0149】
一部の実施形態では、さらなる成分は、ファルネソール([2E、6E]-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール)、フィタントリオール(3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカン-1,2,3-トリオール)、落屑有効成分、酵素、酵素阻害剤、酵素活性化因子、植物抽出物、および海産物抽出物、抗座瘡有効成分、抗皺有効成分または抗萎縮有効成分、抗酸化剤/ラジカル捕捉剤、キレート剤、フラボノイド、抗炎症剤、抗セルライト剤、局所麻酔剤、日焼け有効成分、皮膚美白剤、皮膚治癒剤、ビサボロール、抗微生物または抗真菌有効成分、サンスクリーン有効成分、粒子状材料、コンディショニング剤、構造化剤、増粘剤でありうる。落屑有効成分は、皮膚外見または皮膚の肌理を増強する、任意の適切な薬剤であることが可能であり、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されている通りである。
【0150】
抗座瘡有効成分の例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されており、レゾルシノール、サリチル酸、エリスロマイシン、亜鉛、硫黄、過酸化ベンゾイルを含む。
【0151】
増粘剤の例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されており、カルボン酸ポリマー、架橋ポリアクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、多糖を含む。
【0152】
コンディショニング剤の例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されており、保湿剤、モイスチャライザー、または皮膚コンディショナーを含む。
【0153】
構造化剤の例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されており、組成物にレオロジー特徴をもたらし、組成物の安定性に寄与する任意の薬剤を含む。
【0154】
任意の適切な抗微生物または抗真菌有効成分を使用することができ、例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されている。このような有効成分は、微生物を破壊し、微生物の増殖または作用を防止することが可能である。例は、β-ラクタム薬、キノロン薬、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン硫酸塩、サリチル酸、過酸化ベンゾイルを含むがこれらに限定されない。
【0155】
粒子状材料の例は、金属酸化物を含む。
【0156】
抗セルライト剤の例は、キサンチン剤を含む。
【0157】
日焼け有効成分の例は、1,3-ジヒドロキシ-2-プロパノン、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された日焼け有効成分を含む。
【0158】
局所麻酔剤の例は、ベンゾカイン、リドカイン、およびブピバカイン、ならびに米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された局所麻酔剤を含む。
【0159】
皮膚美白剤の例は、コウジ酸、アスコルビン酸、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された皮膚美白剤など、当技術分野で公知の任意の薬剤を含む。
【0160】
サンスクリーン有効成分の例は、任意の適切な、有機または無機サンスクリーン有効成分を含む。例は、金属酸化物、p-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されたサンスクリーン有効成分を含む。
【0161】
皮膚治癒剤の例は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されたパンテオン酸を含む。
【0162】
抗炎症剤の例は、皮膚外見、色合い、または色を増強する任意の薬剤を含み、コルチコステロイド、ヒドロコルチゾン、イブプロフェンおよびアスピリンなどの非ステロイド系薬剤、ならびに米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された抗炎症剤を含むがこれらに限定されない。
【0163】
フラボノイドの例は、フラバノン、メトキシフラボノン、非置換カルコン、およびこれらの混合物、ならびに米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されたフラボノイドを含む。
【0164】
酵素の例は、リパーゼ、プロテアーゼ、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、アミラーゼ、ペルオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、セラミダーゼ、ヒアルロニダーゼを含む。酵素阻害剤の例は、トリプシン阻害剤、ボーマン-バーク阻害剤、キモトリプシン阻害剤、植物抽出物、フラボノイド、ケルセチンカルコン、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された酵素、ならびにこれらの混合物を含む。酵素活性化因子の例は、コエンザイムA、コエンザイムQ10(ユビキノン)、グリチルリチン、ベルベリン、クリシン、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された酵素活性化因子、ならびにこれらの混合物を含む。
【0165】
抗皺有効成分または抗萎縮有効成分の例は、硫黄を含有するDアミノ酸およびLアミノ酸、特に、N-アセチル-L-システインなどのN-アシル誘導体、ヒドロキシル酸、フィチン酸、リポ酸、リゾホスファチジン酸、皮膚剥離剤、ビタミンB3、レチノイド、ならびに米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された抗皺有効成分または抗萎縮有効成分、ならびにこれらの混合物を含む。
【0166】
抗酸化剤/ラジカル補足剤は、米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示された抗酸化剤/ラジカル補足剤など、UV放射線、または皮膚損傷を引き起こしうる他の環境作用物質に対する保護をもたらすために有用な、任意の薬剤でありうる。抗酸化剤/ラジカル捕捉剤の例は、アスコルビン酸、その塩および誘導体(ビタミンC)、トコフェロール、その塩および誘導体(ビタミンE)、ブチル化ヒドロキシル安息香酸およびそれらの塩、過酸化物、没食子酸およびアルキルエステル、ソルビン酸、リポ酸、アミン、リシンピドレート、アルギニンピロレート、ノルジヒドログアイアレチン酸、ビオフラボノイド、クルクミン、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドジスムターゼ、シルマリン、茶抽出物、およびこれらの混合物を含む。
【0167】
キレート剤の例は、EDTA、NTA、ヒドロキサミン酸、フィチン酸、ラクトフェリン、および米国特許出願公開第2014/0120131号明細書または米国特許出願公開第2004/0132667号明細書において開示されたキレート剤、ならびにこれらの混合物を含む。キレート剤は、金属イオンが、化学反応に参与しえないか、またはこれを触媒しえないように、複合体を形成することにより、金属イオンを除去することが可能な薬剤を意味する。キレート剤は、UV放射線、または皮膚損傷を引き起こしうる他の環境作用物質に対する保護に有用である。
【0168】
複数の追加の成分を添加しうることが理解されるであろう。追加の成分の量は、組成物の約0.001%から約50%の重量、好ましくは、組成物の約0.01%から約20%、好ましくは、約0.1%から約10%、約0.5%から約10%)、約1%から約5%、好ましくは、2%の重量でありうる。追加の成分の量の量は、使用される追加の成分の種類、追加の成分の性質、局所組成物の成分、局所組成物中の、有効成分もしくはペプチドの量、および/または局所組成物の、意図される使用を含む、多数の因子に依存する。どの追加の成分の性質および量も、本発明のペプチドの有益性を、許容不可能な形で変更するべきではない。
【0169】
局所組成物は、アルコール非含有でありうる。
【0170】
本発明の一部の実施形態では、組成物は、本発明のペプチド(組成物の有効成分としてもまた公知である)に加えて、1つまたは複数の追加の活性薬剤をさらに含む。加えて、または、代替的に、組成物は、1つまたは複数の、他の追加の活性薬剤と共に投与することができる。典型的な、追加の活性薬剤は、微量に限り存在する。一部の実施形態では、組成物中に、追加の活性薬剤が存在しない場合もある。組み入れられる、追加の活性薬剤の量は、使用される追加の活性薬剤の種類、追加の活性薬剤の性質、局所組成物の成分、局所組成物中の、有効成分もしくはペプチドの量、および/または局所組成物の、意図される使用を含む、多数の因子に依存する。どの追加の活性薬剤の性質および量も、本発明のペプチドの有益性を、許容不可能な形で変更するべきではない。
【0171】
1つの製品において「有効」成分であると考えられる成分は、別の製品では、「機能的」成分または「賦形剤」成分である場合があり、この逆も成り立つことを理解されたい。一部の成分は、有効成分および機能的成分または賦形剤成分の両方としての二重の役割を果たすこともまた理解されるであろう。
【0172】
追加の活性薬剤の例は、グルコース輸送促進薬、皮膚サプリメント、皮膚の処置および/またはケアのための薬剤、抗炎症剤、アンチエイジング剤、同化剤、細胞増殖促進剤、ならびに薬理学的増強剤を含む。当技術分野では、このような薬剤が周知であり、任意の、適切な、追加の活性薬剤を使用しうることが理解されるであろう。皮膚の処置および/またはケアのための、追加の活性薬剤は、コラーゲン合成薬剤、レチノイド、角質除去剤、抗セルライト剤、エラスターゼ阻害剤、メラニン合成刺激剤またはメラニン合成阻害剤、セルフタニング剤、アンチエイジング剤、抗微生物剤、抗真菌剤、静真菌剤、殺菌剤、および治癒剤を含みうる。活性薬剤は、抗炎症剤もまた含む。
【0173】
どの追加の活性薬剤も、不適切な毒性、不適合性、および/またはアレルギー反応を伴わずに、皮膚への適用に適するものであるべきである。本明細書でなされる分類は、明確さおよび簡便さのためだけのものであり、追加の成分、賦形剤、または有効成分を、列挙された、この特定の適用または類型へと限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0174】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法および使用は、本発明のペプチドまたは組成物の、1つまたは複数の他の活性薬剤(例えば、市販されている、既存の増殖促進薬または薬理学的増強剤)と組み合わせた投与を伴う。このような場合に、本発明の化合物は、1つまたは複数の、他の活性薬剤と、連続的、同時的、または逐次的に投与することができる。
【0175】
実施形態では、本発明の効果は、処置またはケアを必要とする人、動物、または患者への、本明細書で記載される本発明の局所組成物の局所適用または局所投与により達せられる。局所送達とは、好ましくは、皮膚、毛髪、および/または爪など、ケラチン層への送達を意味するが、上皮細胞で覆われた体腔(例えば、肺または気道、消化管、口腔)への送達もまた意味しうる。効果は、皮膚の表面に限定されうるか、もしくは皮膚内のものでありうるか、または両方の組合せでありうる。
【0176】
本発明の局所組成物を、化粧有効量または薬学的に有効な量で投与する。言い換えれば、非毒性であるが、所望の効果をもたらすのに十分な量で投与する。当業者は、不要な実験を伴わずに、本発明の局所組成物の投与に適切な用量を決定することが可能であることが理解されるであろう。あるいはまた、医師は、処置またはケアされる、特定の症状、疾患、または障害、ならびにその人の年齢、体重、および/または健康に応じて、患者に最も適する実際の用量を決定するであろう。それは、利用される具体的化合物の活性、代謝的安定性、およびこの化合物の作用の長さ、年齢、体重、全般的な健康、性別、食餌、投与方式および投与回数、排出速度、薬物組合せ、特定の症状の重症度、ならびに治療を受ける個体を含む、様々な因子に依存するであろう。当然ながら、高投与量範囲または低投与量範囲がふさわしい個別事例が存在する可能性があり、このような事例も、本発明の範囲内にある。例えば、組成物は、体重1kg当たり0.1から30mg/kgなど、0.01から50mg、より好ましくは、体重1kg当たり0.1から20mg、より好ましくは、体重1kg当たり0.1から10mg、好ましくは、体重1kg当たり0.1から5mgの用量で投与することができる。例示的な実施形態では、1日当たり10から300mg、または、より好ましくは、1日当たり10から150mgの、1回または複数回の投与を、患者へと投与する。量および頻度は、目的に最も適する通りとする。適用または投与の頻度は、各対象の必要に応じて、大幅に変動する場合があり、毎月1回から毎日10回、好ましくは、毎週1回から毎日4回、より好ましくは、毎週3回から毎日3回、なおより好ましくは、毎日1回または2回の適用範囲または投与範囲が推奨される。
【0177】
好ましい実施形態では、組成物の反復使用が施される。
【0178】
局所組成物は、ケラチン組織、皮膚、または処置またはケアされる体の領域へと、塗り込むか、またはすり込むことにより適用することができるが、これらの手段に限定されない。いくつかの実施形態では、組成物は、体の領域に放置されるか、または体の領域から除去されない。他の実施形態では、組成物は、約2分間から60分間、約5分間から約30分間、好ましくは、約10分間から約20分間などであるがこれらに限定されない時間の後で除去される。組成物は、適用の後で、速やかに除去することができる。本発明の一部の実施形態では、本発明の組成物は、本発明の組成物および/またはペプチドのより大きな浸透を達成するための手段であって、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス、電気穿孔、微少電流パッチ、機械的圧力、浸透圧勾配、遮閉治癒法、マイクロインジェクション、または圧力による無針注射(酸素圧力による注射など)、またはこれらの任意の組合せなどであにより、処置される領域へと適用することができるが、これらの手段に限定されない。
【0179】
本発明のペプチドまたは断片は、本発明の局所化粧品または医薬組成物中、所望の効果を達成するのに、化粧に、または薬学的に、または治療に有効な濃度で使用され;好ましい形態において、濃度は、組成物の総重量に基づいて、0.00000001%(重量による)から20%(重量による)の間;好ましくは、0.000001%(重量による)から15%(重量による)の間であり、より好ましくは、0.0001%(重量による)から10%(重量による)の間であり、なおより好ましくは、0.0001%(重量による)から5%(重量による)の間である。理想的には、本発明のペプチドは、組成物の、好ましくは、約0.00001%w/wから約0.5%w/wであり、より好ましくは、0.00005%w/wから約0.05%w/wであり、最も好ましくは、約0.0001%w/wから約0.01%w/wで使用される。理想的には、本発明のペプチドは、組成物の、好ましくは、約0.0001%w/wから約0.004%w/wで使用される。
【0180】
本発明の組成物は、個別に、または他の薬理学的な活性薬剤と組み合わせて投与することができる。このような組合せ療法は、単一の剤形中に一緒にした複数の薬剤の投与、または別個の独立したの剤形中の複数の薬剤の投与を含む、異なる治療レジメンを包含し、何らの限定もないことが理解されるであろう。薬剤が、異なる剤形中に存在する場合、投与は、同時的もしくはほぼ同時的でありうるか、または異なる薬剤の投与を包含する、任意の所定のレジメンに従いうる。適切な活性薬剤は、本明細書で記載される通りでありうる。
【0181】
本発明の一部の実施形態では、組成物は、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリカプセル、カプセル、マクロカプセル、ナノカプセル、ナノ構造化脂質担体、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤-リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、スフェア、リポスフェア、粒子、ナノスフェア、ナノ粒子、ミリ粒子、固体ナノ粒子のほか、逆ミセルの内部構造を伴う油中水マイクロエマルジョンを含むマイクロエマルジョン、およびナノエマルジョンマイクロスフェア、マイクロ粒子のうちのいずれか1つを介して送達することができる。
【0182】
リポソームを調製するために、様々な方法が利用可能である。例えば、Szoka et al, Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467(1980)、米国特許第4,186,183号明細書、同第4,217,344号明細書、同第4,235,871号明細書、同第4,261,975号明細書、同第4,485,054号明細書、同第4,501,728号明細書、同第4,774,085号明細書、同第4,837,028号明細書、同第4,235,871号明細書、同第4,261,975号明細書、同第4,485,054号明細書、同第4,501,728号明細書、同第4,774,085号明細書、同第4,837,028号明細書、同第4,946,787号明細書、PCT国際公開第91/17424号パンフレット、Deamer & Bangham, Biochim. Biophys. Acta 443:629-634 (1976);Fraley, et al, PNAS 76:3348-3352 (1979);Hope et al, Biochim. Biophys. Acta 812:55-65 (1985);Mayer et al, Biochim. Biophys. Acta 858:161-168 (1986);Williams et al, PNAS 85:242-246 (1988);Liposomes (Ostro (ed.), 1983, Chapter 1);Hope et al, Chem. Phys. Lip. 40:89 (1986);Gregoriadis, Liposome Technology (1984);およびLasic, Liposomes: from Physics to Applications (1993)を参照されたい。適切な方法は、例えば、それらの全てが当技術分野で周知である、超音波処理、押出し、高圧/ホモジナイゼーション、マイクロフルイダイゼーション、洗剤透析、カルシウムに誘導される小型リポソーム媒体の融合、およびエーテル融合法を含む。
【0183】
これらの送達系は、本発明の化合物および/またはペプチドの、より大きな浸透を達成するように適応させることができる。これは、薬物動態特性および薬力学特性を改善しうる。送達系は、本発明の化合物またはペプチドを、一定の時間中に、好ましくは、一定の時間にわたり、一定の放出速度で徐々に放出する持続放出系でありうる。送達系は、当技術分野で公知の方法により調製する。持続放出系に含有されるペプチドの量は、組成物が送達される場所、ならびに放出の持続時間のほか、処置またはケアされる、症状、疾患、および/または障害の種類に依存する。
【0184】
本発明の化合物は、経口投与により投与することができる。化合物(および所望の場合、他の成分)はまた、ハードゼラチンカプセルもしくはソフトゼラチンカプセルに封入するか、錠剤へと圧縮するか、または対象の食餌へと直接組み込むこともできる。治療的経口投与のために、化合物を、賦形剤と共に組み込み、服用可能な錠剤、口内錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形態で使用することができる。化合物を、その不活化を防止する材料でコーティングしうるか、または化合物を、これと共に共投与することができる。
【0185】
本発明の組成物は、食品または飲料品でありうる。一実施形態では、人工の可食品は、スポーツ栄養品、例えば、飲料、スナック、またはサプリメントである。一実施形態では、人工の可食品は、飲料である。一実施形態では、人工の可食品は、パン製品である。一実施形態では、人工の可食品は、乳製品である。一実施形態では、人工の可食品は、スナック製品である。一実施形態では、人工の可食品は、焼成押出し食品である。一実施形態では、人工の可食品は、粉乳である。一実施形態では、人工の可食品は、人工栄養乳製品である。一実施形態では、人工の可食品は、菓子製品である。一実施形態では、人工の可食品は、ヨーグルトである。一実施形態では、人工の可食品は、ヨーグルトドリンクである。一実施形態では、人工の可食品は、アイスクリーム製品である。一実施形態では、人工の可食品は、冷凍食品である。一実施形態では、人工の可食品は、朝食シリアルである。一実施形態では、人工の可食品は、食パンである。一実施形態では、人工の可食品は、味付ミルクドリンクである。一実施形態では、人工の可食品は、棒状菓子である。一実施形態では、人工の可食品は、茶または茶製品である。一実施形態では、人工の可食品は、ベースの押出しスナック製品である。一実施形態では、人工の可食品は、フライドスナック製品である。一実施形態では、人工の可食品は、栄養補助食品である。一実施形態では、人工の可食品は、スポーツ栄養補助食品である。一実施形態では、人工の可食品は、ベビーフードである。一実施形態では、人工の可食品は、免疫障害個体のための特化食品である。一実施形態では、人工の可食品は、高齢患者のための食物である。
【0186】
一実施形態では、組成物は、植物食品である。一実施形態では、組成物は、細胞培養培地である。一実施形態では、組成物は、動物飼料である。一実施形態では、組成物は、動物飼料サプリメントである。一実施形態では、組成物は、医療食である。
【0187】
実施形態では、本発明の組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、および/または筋内投与)により投与することができる。例えば、それは、静脈内注入もしくは静脈内注射により、または筋内注射もしくは皮下注射により投与することができる。
【0188】
本発明の組成物は、ヒト医療および獣医科医療における、ヒト使用または動物使用でありうる。
【0189】
本発明の組成物は、医薬、パーソナルケア、および/または化粧品使用のために使用することができる。
【0190】
組成物を使用して、乾癬、皮膚炎、アレルギー皮膚炎、湿疹、海綿状態、浮腫、皮膚がん、潰瘍、座瘡、瘢痕、蜂巣炎、弾性線維症、角化症、酒さ、食道静脈瘤、炎症性障害を含むがこれらに限定されない、任意の皮膚の疾患、障害、または症状を処置またはケアすることができる。
【0191】
組成物を、乾癬、皮膚炎、アレルギー皮膚炎、湿疹、海綿状態、浮腫、皮膚がん、潰瘍、座瘡、瘢痕、蜂巣炎、弾性線維症、角化症、酒さ、食道静脈瘤、炎症性障害を含むがこれらに限定されない、任意の皮膚の疾患、障害、または症状の非局所処置のために使用することができる。
【0192】
組成物は、哺乳動物における創傷の、非局所処置のために使用することができる。別の実施形態では、組成物は、上皮の細胞もしくは組織の損傷、および/または真皮もしくは上皮の細胞もしくは組織の損傷により特徴付けられる疾患または症状の、非局所の処置または防止における使用のための組成物である。疾患は、がんおよび外傷でありうるがこれらに限定されない。
【0193】
組成物は、皺、妊娠線および目の隈、乾燥、小皺、加齢しみ、赤色斑、皮膚のたるみ、ならびに日焼けを含む日光曝露、ストレス、汚染、および食餌により引き起こされる状態を含むがこれらに限定されない、目視可能な老化徴候を処置またはケアするために使用することができる。局所組成物は、皮膚の老化の開始を遅延させるか、遅らせるか、または阻害するためにもまた使用することができる。組成物は、本明細書で記載されるプラスターまたはパッチなどの医療器具により投与することができる。
【0194】
組成物を使用して、哺乳動物における創傷を処置またはケアすることができる。別の実施形態では、局所組成物は、上皮の細胞もしくは組織の損傷、および/または真皮もしくは上皮の細胞もしくは組織の損傷により特徴付けられる疾患または状態の処置または防止における使用のための局所組成物である。疾患は、がんおよび外傷でありうるがこれらに限定されない。
【0195】
組成物を使用して、嗜眠または低エネルギーレベルにより特徴付けられる疾患または状態の処置または防止において、哺乳動物における筋肉状態を改善し、典型的に、身体運動後における筋肉の回復を促進し、哺乳動物における筋肉健康(例えば、除脂肪組織量)を維持するかまたは回復させ、身体能力を増強するように、任意の筋肉状態を処置またはケアすることができる。
【0196】
組成物を使用して、筋肉増殖活性を増大させるかまたは刺激することができる。
【0197】
組成物を使用して、組織の増殖を促進し、上皮組織の増殖を促進し、皮膚の増殖を促進し、臓器の増殖を促進し、生物の増殖を促進することができる。皮膚は、正常な病態および/または異常な病態を有しうる。
【0198】
組成物は、任意の炎症性障害を処置またはケアするのにもまた使用することができる。一実施形態では、炎症性障害は、関節の炎症性障害である。一実施形態では、炎症性障害は、心血管系の炎症性障害である。一実施形態では、炎症性障害は、自己免疫疾患である。一実施形態では、炎症性障害は、肺炎症性障害および気道炎症性障害である。一実施形態では、炎症性障害は、腸の炎症性障害である。一実施形態では、炎症性障害は、皮膚炎である。一実施形態では、炎症性障害は、尋常性座瘡である。一実施形態では、炎症性障害は、乾癬である。一実施形態では、炎症性障害は、関節リウマチである。一実施形態では、炎症性障害は、心血管疾患である。一実施形態では、炎症性障害は、アテローム性動脈硬化である。一実施形態では、炎症性障害は、I型糖尿病である。
【0199】
一実施形態では、炎症性障害は、グレーブス病である。一実施形態では、炎症性障害は、ギラン-バレー病である。一実施形態では、炎症性障害は、狼瘡である。一実施形態では、炎症性障害は、乾癬性関節炎である。一実施形態では、炎症性障害は、潰瘍性大腸炎である。一実施形態では、炎症性障害は、喘息である。一実施形態では、炎症性障害は、嚢胞性線維症である。一実施形態では、炎症性障害は、COPDである。一実施形態では、炎症性障害は、肺気腫である。一実施形態では、炎症性障害は、急性呼吸器逼迫症候群である。一実施形態では、炎症性障害は、大腸炎である。一実施形態では、炎症性障害は、炎症性腸疾患である。
【0200】
組成物は、代謝性障害を処置またはケアするのにもまた使用することができる。一実施形態では、代謝性障害は、前糖尿病である。一実施形態では、代謝性障害は、糖尿病である。一実施形態では、代謝性障害は、1型糖尿病である。一実施形態では、代謝性障害は、2型糖尿病である。一実施形態では、代謝性障害は、メタボリック症候群である。一実施形態では、代謝性障害は、肥満である。一実施形態では、代謝性障害は、糖尿病性脂質異常症である。一実施形態では、代謝性障害は、高脂血症である。一実施形態では、代謝性障害は、高血圧症である。一実施形態では、代謝性障害は、高トリグリセリド血症である。一実施形態では、代謝性障害は、高脂肪酸血症である。一実施形態では、代謝性障害は、高コレステロール血症である。一実施形態では、代謝性障害は、高インスリン血症である。一実施形態では、代謝性障害は、MODYである。本発明の組成物は、高インスリン血症、低血糖症、低カリウム血症、および/または低リン酸血症と関連するか、またはこれらにより引き起こされる疾患症状を患う患者を処置するための方法においてもまた使用することができる。本発明は、血糖に関連する疾患または障害を処置するための方法であって、インスリン誘導体またはインスリンコンジュゲートの投与を含む方法にさらに関する。血糖関連疾患または障害は、I型およびII型の糖尿病、ならびに妊娠糖尿病を含む。嚢胞性線維症、多膿疱性卵巣症候群、膵炎、および他の膵臓関連疾患もまた、処置することができる。
【0201】
本発明の実施形態では、組成物は、消化管健康の維持または回復における使用のための組成物である。
【0202】
本発明の実施形態では、組成物は、局所的疼痛の処置または防止のための方法における使用のための組成物である。
【0203】
組成物は、パーソナルケア製品、サプリメント、化粧品、医薬品としての使用を有する。
【0204】
本明細書で記載される疾患、障害、または症状のうちのいずれか1つを処置、防止、またはケアする方法であって、本発明の組成物または局所組成物を投与するステップを含む方法もまた、提供される。組成物は、皮膚、毛髪、爪へと投与することができる。組成物は、本明細書で開示される、任意の用量または頻度で、任意の投与方法または任意の局所適用の方法により投与することができる。
【0205】
一実施形態では、組成物は、化粧品組成物である。一実施形態では、組成物は、医薬組成物である。組成物は、二重の機能を有する場合があり、化粧品組成物および医薬組成物の両方でありうることが理解されるであろう。
【0206】
組成物は、治療組成物でありうるか、または非治療組成物でありうることが理解されるであろう。組成物は、二重の役割を有しうる。
【0207】
組成物は、単位剤形で、すなわち、単位用量、または複数の単位用量もしくは単位用量のサブユニットを含有する、個別部分の形態で製剤化されうる。
【0208】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法および使用は、市販されている1つまたは複数の他の活性薬剤と組み合わせられる、本発明のペプチドまたは組成物の投与を伴う。このような場合に、本発明の化合物は、1つまたは複数の他の活性薬剤と、連続的、同時的、または逐次的に投与することができる。
【0209】
修飾ペプチド
一実施形態では、本発明のペプチド(ペプチド断片およびペプチド変異体を含む)は、修飾ペプチドでありうる。「修飾ペプチド」という用語は、ペプチドの誘導体という用語と互換的に使用される。一実施形態では、「修飾ペプチド」という用語は、非修飾ペプチドと比較して、以下の特性の1つまたは複数を呈するように修飾されたペプチドを意味する:血漿半減期の延長;ペプチドの親油性の増大;修飾ペプチドの腎クリアランスの増大;修飾ペプチドの活性の増大、およびタンパク質分解(すなわち、哺乳動物、とりわけ、ヒトの消化管プロテアーゼによる)に対する、修飾ペプチドの耐性の増大。本明細書では、これらの特性を呈するように、本発明のペプチドを修飾する多様な方法が開示され、それら方法は、ペプチドを、結合パートナー(例えば、低分子に結合するアルブミン、大型ポリマー、長寿命の血漿タンパク質、または抗体もしくは抗体断片)とコンジュゲートさせること、環化、N末端保護基もしくはC末端保護基、または側鎖保護基の付加、1つまたは複数のL-アミノ酸を、D-異性体で置きかえること、アミノ酸修飾、血漿タンパク質結合の増大、アルブミン結合の増大を含む。修飾ペプチドは、本明細書で規定される、1つもしくは複数の基で置換されるか、または結合パートナーとコンジュゲートさせるか、または環化させたペプチドを含むがこれらに限定されない。一般に、ペプチドは、動物のin vivoにおける半減期を延長するように修飾される。多様な修飾方法を、下記に提示する。
【0210】
一実施形態では、修飾は、本発明のペプチドおよび/または組成物に、細胞膜を透過する能力の増大をもたらす、任意の修飾でありうる。一実施形態では、修飾は、本発明の組成物またはペプチドの半減期を延長する、任意の修飾でありうる。一実施形態では、修飾は、本発明の組成物またはペプチドの活性を増大させる、任意の修飾でありうる。一実施形態では、修飾は、本発明の組成物またはペプチドの選択性を増大させる、任意の修飾でありうる。
【0211】
一実施形態では、基は、保護基である。保護基は、N末端保護基、C末端保護基、または側鎖保護基でありうる。ペプチドは、これらの保護基のうちの1つまたは複数を有しうる。
【0212】
当業者は、アミノ酸を、これらの保護基と反応させるのに適する技法について承知している。これらの基は、当技術分野で公知の調製方法、例えば、米国特許出願公開第2014/0120141号明細書の[0104]から[0107]段落において概括されている方法により付加することができる。基は、ペプチド上に残存しうるか、または除去されうる。保護基は、合成時に付加することができる。
【0213】
本発明の実施形態では、ペプチドは、1つまたは複数の、直鎖または分枝鎖、長鎖または短鎖、飽和または不飽和、1から29の炭素原子を有し、ヒドロキシル、アミノ、アミノアシル、硫酸、もしくはスルフィド基で置換された基、または非置換基から選択される基で置換されていてもよい。N-アシル誘導体は、酢酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オクタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、2-エチルヘキサン酸、ヤシ油脂肪酸、獣脂脂肪酸、硬化獣脂脂肪酸、パーム核脂肪酸、ラノリン脂肪酸、または同様の酸に由来するアシル基を含む。これらは、置換しうるか、または非置換でありうる。置換する場合、それらを、ヒドロキシル、またはSO3H、SH、またはS-Sなどであるがこれらに限定されない硫黄含有基で置換することが好ましい。
【0214】
本発明の実施形態では、ペプチドは、R1-X-R2である。
【0215】
R1基および/またはR2基は、それぞれ、ペプチド配列のアミノ末端(N末端)およびカルボキシル末端(C末端)に結合している。
【0216】
一実施形態では、ペプチドは、R1-Xである。あるいは、ペプチドは、X-R2である。
【0217】
好ましくは、R1は、H、C1~4アルキル、アセチル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり;Xは、本発明のペプチドであり;R2は、OHまたはNH2である。
【0218】
実施形態では、R1は、H、非環状で置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換の環状脂肪族基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のヘテロアリールアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアラルキル、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびR5-CO-[式中、R5は、H、非環状で置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換の環状脂肪族基、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のヘテロアリールアルキルにより形成される基から選択される]により形成される基から選択され;
R2は、-NR3R4、-OR3、および-SR3[式中、R3およびR4は、独立に、H、非環状で置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換の環状脂肪族基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のヘテロアリールアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキルにより形成される基から選択される]により形成される基から選択され;かつ、R1およびR2は、α-アミノ酸ではないことを条件とする。
【0219】
別の好ましい実施形態によれば、R2は、-NR3R4、-OR3または-SR3[式中、R3およびR4は、独立に、H、置換または非置換のC1~C24アルキル、置換または非置換のC2~C24アルケニル、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、置換または非置換のC2~C24アルキニル、置換または非置換のC3~C24シクロアルキル、置換または非置換のC5~C24シクロアルケニル、置換または非置換のC5~C24シクロアルキニル、置換または非置換のC6~C30アリール、置換または非置換のC7~C24アラルキル、3から10員からなる、置換または非置換のヘテロ環、および2~24個の炭素原子と、1~3個の炭素以外の原子とからなる、置換または非置換のヘテロアリールアルキルであって、アルキル鎖が、1から6個の炭素原子からなるヘテロアリールアルキルにより形成される基から選択される]である。任意選択的に、R3とR4とを、飽和または不飽和炭素間結合により結合させ、窒素原子を伴う環を形成することができる。より好ましくは、R2は、-NR3R4または-OR3[式中、R3およびR4は、独立に、H、置換または非置換のC1~C24アルキル、置換または非置換のC2~C24アルケニル、置換または非置換のC2~C24アルキニル、置換または非置換のC3~C10シクロアルキル、置換または非置換のC6~C15アリール、3から10員からなる、置換または非置換のヘテロ環基、および3から10員からなる環と、1から6個の炭素原子からなるアルキル鎖とを伴う、置換または非置換のヘテロアリールアルキルにより形成される基から選択される]である。より好ましくは、R3およびR4は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、またはヘキサデシルにより形成される基から選択される。なおより好ましくは、R3は、Hであり、R4は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、またはヘキサデシルにより形成される基から選択される。なおより好ましい実施形態に従い、R2は、-OHおよび-NH2から選択される。
【0220】
本発明の別の実施形態によれば、R1は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイル、またはパルミトイルにより形成される基から選択され、R2は、-NR3R4または-OR3[式中、R3およびR4は、独立に、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、およびヘキサデシルから選択される]であり、好ましくは、R2は、-OHまたは-NH2である。より好ましくは、R1は、アセチルまたはパルミトイルであり、R2は、-NH2である。
【0221】
好ましい実施形態では、アシル(またはアセチル)基を、ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸のN末端に結合させる。
【0222】
本発明の実施形態では、ペプチドは、側鎖保護基を含むように修飾される。側鎖保護基は、ベンジルまたはベンジルをベースとする基、t-ブチルをベースとする基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、およびアリルオキシカルボニル(alloc)保護基を含む基のうちの1つまたは複数でありうる。側鎖保護基は、アキラルグリシンなどのアキラルアミノ酸に由来しうる。アキラルアミノ酸の使用は、結果として得られるペプチドを安定化させ、本発明の簡易な合成経路もまた容易とする一助となる。好ましくは、ペプチドは、修飾C末端、好ましくは、アミド化C末端をさらに含む。アキラル残基は、α-アミノイソ酪酸(メチルアラニン)でありうる。使用される具体的な側鎖保護基は、ペプチドの配列、および使用されるN末端保護基の種類に依存することが理解されるであろう。本発明の一実施形態では、ペプチドを、1つもしくは複数のポリエチレングリコールポリマー、または分子量を増大させる化合物などの他の化合物とコンジュゲートさせるか、連結するか、または融合させる。分子量を増大させる化合物は、分子量を、典型的に、結果として得られるコンジュゲートの、10%から90%、または20%から50%増大させ、200から20,000の間、好ましくは、500から10,000の間の分子量を有しうる、任意の化合物である。分子量を増大させる化合物は、PEG、任意の水溶性(両親媒性または親水性)ポリマー部分、PEGのホモポリマーまたはコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)、およびポリオキシエチレングリセロール(POG)、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸などのポリアミノ酸(特に、L配座を有するもの)、アルブミンなどの薬理学的に不活性なタンパク質、ゼラチン、脂肪酸、多糖、脂質、アミノ酸、およびデキストランでありうる。ポリマー部分は、直鎖状または分枝状であることが可能であり、500から40000Da、5000から10000Da、10000から5000Daの分子量を有しうる。化合物は、tatペプチド、ペネトラチン、pep-1など、任意の適切な細胞膜透過化合物でありうる。化合物は、抗体分子でありうる。化合物は、親油性部分またはポリマー部分でありうる。
【0223】
当技術分野では、親油性置換基およびポリマー性置換基が公知である。親油性置換基は、アシル基、スルホニル基、N原子、O原子、またはS原子を含み、それらはエステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、またはスルホンアミドの一部を形成する。親油性部分は、4から30個のC原子、好ましくは、8から12個のC原子を有する炭化水素鎖を含みうる。それは、直鎖状または分枝状、飽和または不飽和でありうる。炭化水素鎖は、さらに置換することができる。それは、シクロアルカンまたはヘテロシクロアルカンでありうる。ペプチドは、N末端、C末端、またはこれらの両方において修飾することができる。ポリマーまたは化合物は、アミノ、カルボキシル、またはチオ基へと連結されることが好ましく、任意のアミノ酸残基の側鎖のN末端またはC末端により連結することができる。ポリマーまたは化合物は、任意の適切な残基の側鎖へとコンジュゲートさせることができる。
【0224】
ポリマーまたは化合物は、スペーサーを介してコンジュゲートさせることができる。スペーサーは、天然または非天然アミノ酸、コハク酸、リシル、グルタミル、アスパラギル、グリシル、β-アラニル、γ-アミノブタノイルでありうる。
【0225】
ポリマーまたは化合物は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、カルバメート、尿素、スルホンアミドを介してコンジュゲートさせることができる。
【0226】
当業者は、記載されるコンジュゲートを調製するのに適する手段について承知している。
【0227】
ペプチドを、ポリマーへの共有結合的コンジュゲーションにより化学修飾して、例えば、それらの循環半減期を延長することができる。このようなポリマーを、ペプチドへと接合させるための、例示的なポリマーおよび方法は、例えば、米国特許第4,766,106号明細書;同第4,179,337号明細書;同第4,495,285号明細書;および同第4,609,546号明細書において例示されている。さらなる例示的なポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)部分を含む。
【0228】
本発明のペプチドは、ペプチドの生体活性の、保存安定性、薬物動態、および/または任意の側面(例えば、効力、選択性、および薬物相互作用など)を操作するための、1箇所または複数箇所の修飾を受けることができる。ペプチドが受ける化学修飾は、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)コポリマー、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、コロミン酸、または他の炭水化物ベースのポリマー、アミノ酸のポリマー、ならびにビオチン誘導体のうちの1つまたは複数に対するペプチドのコンジュゲーションを含むが、それらに限定されるものではない。Cys残基における、タンパク質のPEGコンジュゲーションは、例えば、Goodson, R. J. & Katre, N. V. (1990) Bio/Technology 8, 343;およびKogan, T. P. (1992) Synthetic Comm. 22, 2417に開示されている。
【0229】
修飾ペプチドは、1つまたは複数の残基が修飾された(すなわち、リン酸化、硫酸化、アシル化、アミド化、PEG化などにより)配列、および親配列に照らして、1つまたは複数の修飾残基を含む突然変異体もまた含みうる。また、アミノ酸配列は、直接的または間接的に、検出可能なシグナルをもたらすことが可能な標識によってもまた修飾することができ、標識は、放射性同位元素標識、蛍光標識、および酵素標識を含むがこれらに限定されない。蛍光標識は、例えば、Cy3、Cy5、Alexa、BODIPY、フルオレセイン(例えば、FluorX、DTAF、およびFITC)、ローダミン(例えば、TRITC)、オーラミン、Texas Red、AMCA blue、およびLucifer Yellowを含む。好ましい同位体標識は、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および286Reを含む。好ましい酵素標識は、ペルオキシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼ(例えば、米国特許第3,654,090号明細書;同第3,850,752号明細書;および同第4,016,043号明細書を参照されたい)を含む。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒドなどの分子を伴う反応によりコンジュゲートさせることができる。酵素標識は、視覚的に検出しうるか、または、熱量測定法、分光光度法、蛍光分光法、電流測定法、もしくは気体定量法により測定することができる。当技術分野では、アビジン/ビオチン、Tyramide Signal Amplification(TSA(商標))など、他の標識化システムも公知であり、市販されている(例えば、ABCキット(Vector Laboratories, Inc.、Burlingame、Calif);NEN(登録商標)(Life Science Products, Inc.、Boston、Mass.)を参照されたい)。
【0230】
実施形態では、ペプチド、変異体、および/または組成物を修飾して、薬物効能を増大させる。実施形態では、ペプチド、変異体、および/または組成物を修飾して、安定性、透過性を増大させ、効力を維持し、毒性を回避し、かつ/または半減期を延長する。修飾は、上記で記載した通りでありうる。例えば、修飾は、N末端およびC末端を保護することである場合があり、それは、アミノ酸の修飾、環化、アミノ酸の置きかえ、および/または高分子もしくは大型ポリマーもしくは長寿命の血漿タンパク質とのコンジュゲーションでありうる。半減期を延長する戦略は、Strohl, et al (BioDrugs, 2015)、Schlapschy, et al (Protein Eng Des Sel. 2013)、Podust, VN, et al (Protein Eng Des Sel. 2013)、Zhang, L et al (Curr Med Chem. 2012)、Gaberc-Porekar, V, et al (Curr Opin Drug Discov Devel. 2008)により記載されている通りである。例は、PEG化(PEGylation)、脂質化(ペプチド側鎖に対する脂肪酸の共有結合)、Fcドメインおよびヒト血清アルブミンへの融合、親水性アミノ酸ポリマー(例えば、XTENもしくはPAS)との融合、および/または半減期延長タンパク質との融合の使用を含む。
【0231】
ペプチドまたはタンパク質は、それらの配列内の脆弱な部位であって、タンパク質分解作用が高められた環境内、例えば、血液中または消化管内にあると、タンパク質分解を受けやすい部位を含みうる。実施形態では、ペプチド、変異体、および/または組成物は1つまたは複数の脆弱な部位の修飾を含み、ペプチド、変異体、および/または組成物が、タンパク質分解/切断を受けないか、または非修飾のペプチドまたはタンパク質と比較してタンパク質分解/切断の量が減少するようにする。したがって、ペプチドを修飾して、哺乳動物の消化管プロテアーゼによるタンパク質分解に対する修飾ペプチドの耐性を増大させることができる。適切な修飾については、Diao et al (Clinical pharmacokinetics 52. 10 (2013): 855-868)において記載されている。
【0232】
ペプチドのin vivo半減期を延長する、ペプチドの修飾については、文献、例えば、Strategies to improve plasma half life time of peptide and protein drugs. Werle M, Bernkop-Schnurch A. Amino Acids. 2006 Jun; 30(4): 351-67に記載されている。
【0233】
長期作用型のペプチド薬およびタンパク質薬の明白な利点のために、このような化合物の血漿半減期を延長する戦略には大きな需要がある。短い血漿半減期時間は、一般に、急速な腎クリアランス、ならびに体循環時に生じる酵素的分解に起因する。ペプチド/タンパク質の修飾は、血漿半減期時間の延長をもたらしうる。ソマトスタチンの全アミノ酸量を短縮し、L-類似体アミノ酸を、D-アミノ酸で置きかえることにより、誘導体オクトレオチドの血漿半減期時間は、ソマトスタチンのわずか数分間と比較して、1.5時間であった。INF-α-2bのPEG(2.40K)コンジュゲートは、天然タンパク質と比較して、330倍に延長された血漿半減期を呈した。N末端およびC末端の修飾、またはPEG化(PEGylation)のような血漿半減期を延長するための可能な戦略に加えて、薬物修飾の有効性を査定する方法の概観を提示することが、この総説の目的であった。さらに、体循環時におけるペプチドおよびタンパク質薬物の酵素的切断を予測するために、ヒトの血液、肝臓、および腎臓の、最も重要なタンパク質分解性酵素のほか、それらの切断特異性およびそれらに対する阻害剤についての基本的データも提示されている。Strategic Approaches to Optimizing Peptide ADME Properties. Li Di AAPS J. 2015 Jan; 17(1): 134-143
【0234】
ペプチドを、タンパク質分解に対して安定化させる戦略
構造修飾を介して、ペプチドの安定性を増強するのに、多くの手法が利用可能である。一部の手法は、安定性を改善するだけでなく、他のADME特性もまた増強し、例えば、環化は、安定性および透過性を増大させることが可能であり、高分子とのコンジュゲーションは、安定性を改善し、腎クリアランスを低減しうる。ペプチドの効力を維持し、毒性を回避する一方で、安定性およびADME特性を改善することが重要である。
【0235】
・N末端およびC末端の保護
血液/血漿、肝臓、または腎臓における、多数のタンパク質分解酵素は、エクソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、およびカルボキシペプチダーゼであり、ペプチド配列を、N末端およびC末端から分解する。N末端または/およびC末端の修飾は、ペプチド安定性を改善しうることが多い。多くの例が、N-アセチル化およびC-アミド化が、タンパク質分解に対する耐性を増大させることを報告している。
【0236】
・L-アミノ酸の、D-アミノ酸による置換
天然L-アミノ酸の、天然D-アミノ酸による置換は、タンパク質分解性酵素の基質認識および結合アフィニティーを低下させ、安定性を増大させる。1つの例は、L-Argを含有し、ヒトにおいて、10~35分間の半減期を有する、バソプレッシンである。D-Arg類似体であるデスモプレシンは、健常ヒトボランティアにおいて、3.7時間の半減期を有する。がん関連プロテアーゼである、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の二環式ペプチド阻害剤についての研究において、特定のグリシンのD-セリンによる置換は、効力を、1.8倍に改善するだけでなく、マウス血漿中の安定性もまた、4倍に増大させる。
【0237】
・アミノ酸の修飾
天然アミノ酸の修飾は、立体障害を導入するか、または酵素認識を混乱させることにより、ペプチドの安定性を改善しうる。例えば、ゴナドトロピン放出ホルモンは、極めて短い半減期(数分間)を有するが、1つのGlyをt-ブチル-D-Serで置換し、別のGlyをエチルアミドにより置換したブセレリンは、ヒトにおいて、はるかに長い半減期を有する。
【0238】
・環化
環化は、配座拘束を導入し、ペプチドの可撓性を低減し、安定性および透過性を増大させる。官能基に応じて、ペプチドは、頭-尾、頭/尾-側鎖、または側鎖-側鎖で環化させることができる。環化は、一般に、ラクタム化、ラクトン化、およびスルフィドベースの架橋により達せられる。ジスルフィド架橋は、効力、選択性、および安定性を改善しうる、フォールディングおよび配座拘束を創出する。多数のジスルフィド結合豊富ペプチド、例えば、リナクロチド、レピルジン、およびジコノチドが、市販されているか、または前臨床開発もしくは臨床開発中である。
【0239】
・高分子とのコンジュゲーション
高分子とのコンジュゲーション(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン)は、ペプチドの安定性を改善し、腎クリアランスを低減するのに有効な戦略である。
【0240】
腎クリアランス
多くのペプチドは、有望なin vitro薬理学的活性を呈するものの、極めて短いin vivo半減期(数分間)のために、in vivoにおける有効性を実証することに失敗している。ペプチドの急速なクリアランスおよび短い半減期は、それらの成功する薬物への開発を妨げる。体循環によるペプチドの急速なクリアランスの主要な原因は、酵素的タンパク質分解または/および腎クリアランスである。糸球体は、約8nmの小孔サイズを有し、MW<2~25kDaの親水性ペプチドは、腎臓の糸球体を通した急速な濾過を受けやすい。ペプチドは腎尿細管によって容易には再吸収されないので、ペプチドは、しばしば大きな腎クリアランス、および短い半減期を有する。ペプチドクリアランスの、他の副次的な経路は、エンドサイトーシス、およびプロテアソームおよび肝臓による分解である。動物モデルにおける、全身クリアランスと腎クリアランスとの比較は、腎クリアランスが、主要な排出経路であるのかどうかについての有用な情報をもたらす。
【0241】
腎機能不全を伴う患者における不適切な投与は、毒性または治療の失効を引き起こすので、腎機能障害患者には、ペプチド薬の蓄積および高薬物曝露を回避するために、用量の調整が必要とされうる。ペプチド腎クリアランスを低減し、半減期を延長するように、いくつかの戦略が開発されている。次に、これらについて総説しよう。
【0242】
・血漿タンパク質結合を増大させる
ペプチドの腎クリアランスは、それらを、膜タンパク質または血清タンパク質に結合させると低減される。例は、リポタンパク質との結合に起因して、ヒトにおいて約100分間(非結合画分:0.65分間)の半減期を有する、内分泌腫瘍の処置である、環状ペプチド薬オクトレオチドである。
【0243】
・アルブミン結合性低分子との共有結合的連結
ペプチドに対するアルブミン結合性低分子の共有結合的接合は、高度に結合した低分子を介してアルブミンと間接的に相互作用することにより、糸球体濾過を低減し、タンパク質分解に対する安定性を改善し、半減期を延長しうる。
【0244】
・大型ポリマーとのコンジュゲーション
ペプチドの、大型の合成もしくは天然ポリマーまたは炭水化物とのコンジュゲーションは、それらの分子量および流体力学容量を増大させ、これにより、それらの腎クリアランスを低減することができる。ペプチドコンジュゲーションのために使用される一般的なポリマーは、PEG、ポリシアル酸(PSA)、およびヒドロキシエチルデンプン(HES)である。
【0245】
・長寿命の血漿タンパク質との融合
アルブミンおよび免疫グロブリン(IgG)断片などの血漿タンパク質は、ヒトにおいて、19~21日間の、長い半減期を有する。高MW(67~150kDa)のために、これらのタンパク質は、腎クリアランスが小さく、新生児Fc受容体(FcRn)に対するそれらの結合は、血管上皮による飲細胞作用を介する排出を低減する。アルブミンまたはIgG断片に対するペプチドの共有結合的連結は、腎クリアランスを低減し、半減期を延長しうる。
Fusion Proteins for Half-Life Extension of Biologies as a Strategy to Make Biobetters William R. Strohl BioDrugs. 2015; 29(4): 215-239
Schlapschy, M, Binder, U, Borger, C et al. PASYlation: a biological alternative to PEGylation for extending the plasma half-life of pharmaceutically active proteins. Protein Eng Des Sel. 2013; 26(8): 489-501
Podust, VN, Sim, BC, Kothari, D et al. Extension of in vivo half-life of biologically active peptides via chemical conjugation to XTEN protein polymer. Protein Eng Des Sel. 2013; 26(11): 743-53
Zhang, L, Bulaj, G. Converting Peptides into Drug Leads by Lipidation. Curr Med Chem. 2012; 19(11): 1602-18
Gaberc-Porekar, V, Zore, I, Podobnik, B et al. Obstacles and pitfalls in the PEGylation of therapeutic proteins. Curr Opin Drug Discov Devel. 2008; 11(2): 242-50
By Dr Ronald V. Swanson-Long live peptides evolution of peptide half-life extension technologies and emerging hybrid approaches. From Drug Discovery World on line. Spring 2014
【0246】
PEG化
PEG化(目的の分子に対する、親水性ポリマーであるポリエチレングリコールの長鎖の接合)は、元来、免疫系による外来タンパク質の認識を防止し、これにより、治療剤としてのそれらの有用性を可能とする修飾であると考えられた。ひとたび形成されると、非修飾薬物に対する抗体は、タンパク質薬物を急速に中和し、除去しうる。予測外にも、PEG化は、抗薬物抗体の非存在下であってもなお、タンパク質の薬物動態を改善した。単に、薬物分子を大型とすることにより、PEG化は、腎臓による濾過が緩徐な薬物をもたらした。次いで、サイズまたは流体力学半径を増大させることにより、腎クリアランスの低減および半減期の延長がもたらされるという経験的な観察は、タンパク質薬およびペプチド薬のPEG化の主要な根拠となった。PEG化は、分子に対して様々な効果を有することができ、その効果は、タンパク質またはペプチドの水溶性を増大させ、それらをタンパク質分解酵素による分解から保護することを含む。PEG化は、治療的タンパク質の、それらのコグネイト細胞受容体への結合にもまた影響を与え、通例、アフィニティーを低減する。PEGポリマーのサイズ、構造、および接合方式の変化は、接合させた薬物の生物学的活性に影響を及ぼしうる。
【0247】
第一世代のPEG化法は、難題づくめであった。しかし、PEG化の化学反応は、極めて単純である。工程は、タンパク質またはペプチドの反応性側鎖に対する、ポリエチレングリコール鎖の共有結合的接合を伴う。例えば、PEGは、タンパク質またはペプチドの表面上のリジンのアミノ基への接合が容易である。反応は、pH依存性である。高pH(8.0以上)で、N-ヒドロキシスクシンイミドにより、リジン側鎖アミノ基は、PEGへと共有結合的に接合する。この方法は、典型的に、単一の個別の生成物ではなく、タンパク質上の異なる部位に接合した異なる数のPEG鎖を含有する生成物のファミリーを結果としてもたらす。最初に承認されたPEG化医薬剤は、重度の複合免疫不全症のための酵素置換療法である、ウシペグアデマーゼ(PEG化ウシアデノシンデアミダーゼ)、および急性リンパ芽球性白血病の処置のためのペガスパルガーゼ(PEG化アスペルギナーゼ)であった。これらの薬物は、多様なPEG化種の複雑な混合物であったが、タンパク質の血清半減期の延長および免疫原性の低下を含む、天然酵素を上回る治療特性の改善を伴った。PEGに固有の多分散性のために、品質およびバッチ間の再現性は、困難であった。この限界にもかかわらず、多数のモノPEG化位置異性体の異質な集団である、2つのPEG化インターフェロン(Pegインターフェロンアルファ2bおよびPegインターフェロンアルファ2a)が、FDAにより、C型肝炎の処置について承認された。これらの薬物は、それぞれ、2001年および2002年に市販された。
【0248】
基本的なPEG化技術に対して、様々な増強および変更がなされている。第二世代のPEG化工程は、分枝状構造の使用のほか、PEG接合のための代替的な化学反応を導入した。特に、マレイミドまたはヨードアセトアミドなどのシステイン反応性基を伴うPEGは、ペプチドまたはタンパク質内の単一の残基に対してPEG化のターゲティングして、PEG自体の多分散性に起因する異質性を消失させずに、最終的な製品の不均質性は低減させることを可能とする。
【0249】
PEG化の元来の根拠は、免疫原性を低減することであったにもかかわらず、免疫原性PEG化タンパク質の少数の例も存在する。1つの例は、痛風患者における血漿尿酸レベルを低下させる酵素である、PEG化尿酸オキシダーゼである。臨床試験では、比較的高い比率の痛風患者が、治療、および、PEGに特異的であるがウリカーゼタンパク質には特異的でない開発された抗体に応答しなかった。一部の研究では、これもまた、一般に非免疫原性であると考えられているPEG化リポソームが、免疫原性であることが見出された。PEG化リポソームは、強力な抗PEG免疫グロブリンM(IgM)応答を誘発する。加えて、PEG-グルクロニダーゼの複数回の注射は、特異的抗PEG IgM抗体の発生を誘発し、したがって、PEG修飾タンパク質の、体内からのクリアランスを加速させることが示された。
【0250】
PEGを修飾剤として使用することの、主要な潜在的欠点は、それが、非生体分解性であることである。米国食品医薬品局(FDA)は、PEGを、注射剤、局所、直腸内、および経鼻製剤を含む医薬剤中の媒体としての使用について承認した。PEGは、ほとんど毒性を示さず、腎臓(<30kDaのPEGについて)または糞便(>20kDaのPEGについて)により、そのまま体内から排出される。一部のPEG化タンパク質の動物への反復投与は、腎尿細管の細胞の空胞化の観察を結果としてもたらした。また、近年、大型(>40kDa)PEGとコンジュゲートさせたタンパク質に関する毒性研究において、脈絡叢上皮細胞の空胞化も見られている。脈絡叢上皮細胞は、脳脊髄液を産生し、血液CSF関門を形成する。細胞の空胞化の、長期的な負の帰結は、不明であるが、一部の潜在的な治療剤について、所望されない帰結を表す。1つの可能な代替法は、PEGに代えた生体分解性ポリマーの置換であろう。ヒドロキシエチルデンプン(HES)などのポリマーは、可能な代替物である。HESは、非毒性であり、生体分解性であり、血液増量剤として使用される。HES化の工程は、ペプチドの流体力学半径を増大させることによる腎クリアランスの低減においてPEG化と同様に機能するが、生体分解性のために、蓄積傾向の付与が小さい。しかし、PEG代替物である、HES、および他の提案されている生体分解性ポリマーも、PEGと同様に、多分散性であることから、最終生成物および代謝物の特徴付けを難しくしている。両方の懸念を軽減する1つの新興の解決策は、化学組成が明確なポリペプチドをポリマー成分として使用することであり、この手法については、本論文の後出において論じる。
【0251】
脂質化
ペプチド半減期を延長する第2の主要な化学的修飾方法は、ペプチド側鎖に対する脂肪酸の共有結合を伴う脂質化である。元来、インスリンの半減期を延長する方法として考案および開発された脂質化は、PEG化と同じ、半減期延長の基礎的機構、すなわち、流体力学半径を増大させて、腎濾過を低減する機構を共有する。しかし、脂質部分自体は、比較的小型であり、効果は、循環アルブミンに対する脂質部分の非共有結合を介して、間接的にもたらされる。大型(67KDa)であり、ヒト血清中の存在度(35~50g/L)が大きなタンパク質であるアルブミンは、本来的に、体全体にわたって、分子(脂質を含む)を輸送する機能を有する。これもまたPEG化に関して見られたことだが、血漿タンパク質への結合は、立体障害を介して、ペプチダーゼによる攻撃からペプチドを保護する。脂質化の1つの帰結は、それが、ペプチドの水溶性を低減することであるが、ペプチドと脂肪酸との間のリンカーを操作することにより、例えば、リンカー内におけるグルタミン酸またはミニPEGの使用により、この効果を調整することができる。リンカーの操作および脂質部分の変更は、アルブミンに依存せずに生体内分布を遅らせることにより半減期の延長に寄与しうる自己凝集に影響を及ぼしうる。
【0252】
インスリンに関する先駆的な研究の後、様々なペプチド、特に、糖尿病分野におけるペプチドであって、とりわけ、ヒトグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)類似体、グルコース依存インスリン分泌性ポリペプチド、およびGLP-1R/グルカゴン受容体コアゴニストを含むペプチドの脂質化が探索されている。現在、2つの脂質化ペプチド薬が、ヒトにおける使用について、FDAにより承認されている。これらは、いずれも、長期作用型抗糖尿病剤である、GLP-1類似体リラグルチドおよびインスリンデテミルである。
【0253】
PEG化と脂質化との潜在的に薬理学的に意味がある差違は、治療活性があるペプチドを、はるかに大型のPEGへと共有結合的に連結するのに対し、小型の脂肪酸アシル-ペプチドコンジュゲートは、大型のアルブミンと非共有結合的に会合するので、結合形態と非結合形態とが平衡状態で存在することである。これは、異なる薬理学を結果としてもたらしうる生体内分布の差違をもたらすことができる。なぜなら、異なる組織に局在化している受容体へのアクセスは、差別的効果を誘発しうるからである。一部の場合には、より制約された生体内分布が所望されうる一方、他の場合には、より大きな組織浸透が重要でありうる。この問題に取り組むPEG法の興味深い変法であって、予測可能な切断速度で放出可能なPEGコンジュゲートを用いる変法が、Santiらにより開発されている。
【0254】
PEG化および脂質化は、共に立体障害を介する遮蔽により、直接的または間接的に、プロテアーゼおよびペプチダーゼに対する保護を付与し、直接的または間接的な流体力学半径の増大により循環半減期を延長する。いずれの方法も、化学的コンジュゲーションを用い、修飾されるペプチドを生成するのに使用される手段(生物学的に生成されるか、合成的に生成されるかという点)に寛容であるという点で柔軟である。合成ペプチドを使用する利点は、多数の独特な問題(公知の、タンパク質分解性切断を受けやすいことに起因する不安定性を含む)に対処するように設計された、非天然アミノ酸を組み込みうることである。活性または効力が遊離末端またはC末端アミドなどの修飾残基に高度に依存する場合に、それら方法は、極めて重要である接合部位の選択の点でもまた、より柔軟でありうる。
【0255】
古典的な遺伝子融合体:FcおよびHSA
長寿命の血清タンパク質との古典的な遺伝子融合体は、PEGまたは脂質との化学的コンジュゲーションとは異なる半減期延長の代替法をもたらす。2つの主要なタンパク質:抗体Fcドメインおよびヒト血清アルブミン(HAS)が、融合パートナーとして使用されている(
図2)。Fc融合体は、抗体のFc部分に対する、ペプチド、タンパク質、または受容体細胞外ドメインの融合を伴う。Fc融合体およびアルブミン融合体のいずれも、ペプチド薬物のサイズを増大させることのみならず、体内の天然の循環機構:新生児Fc受容体であるFcRnもまた利用して、半減期の延長を達成する。FcRnに対するこれらのタンパク質のpH依存性結合は、エンドソームにおける融合タンパク質の分解を防止する。これらのタンパク質に基づく融合体は、典型的なPEG化ペプチドまたは脂質化ペプチドよりはるかに長い、3~16日間の範囲の半減期を有しうる。抗体Fcとの融合は、ペプチド薬またはタンパク質薬の可溶性および安定性を改善しうる。ペプチドFc融合体の例は、現在、後期臨床試験中のGLP-1受容体アゴニストであるデュラグルチドである。脂肪酸アシル化ペプチドにより利用される同じタンパク質であるヒト血清アルブミンは、他の一般的な融合パートナーである。アルビグルチドは、このプラットフォームに基づくGLP-1受容体アゴニストである。Fcとアルブミンとの主要な差違は、HASの単量体的構造に対するFcの二量体的性格であり、融合パートナーの選択に応じて、二量体または単量体としての融合ペプチドの表現をもたらす。標的受容体が十分に近接した離間しているか、またはそれら自体が二量体である場合、ペプチド-Fc融合体の二量体的性格は、アビディティー効果をもたらしうる。これは、標的に応じて、所望されうるか、または所望されえない。
【0256】
デザインされたポリペプチド融合体:XTENおよびPAS
組換え融合のコンセプトの興味深い変化形は、融合パートナーとしてデザインされた、低複雑性配列の開発であった(
図1)。その配列は、PEGの機能的な類似体である、基本的に構造化されていない、親水性アミノ酸ポリマーである。ポリペプチドプラットフォームの固有の生体分解性は、これを、PEGの潜在的により良好な魅力的な代替物にする。別の利点は、PEGの多分散性と対照的な、組換え分子の正確な分子構造である。融合パートナーの三次元フォールディングを維持することを必要とするHSAペプチド融合体およびFcペプチド融合体と異なり、非構造化パートナーとの組換え融合体は、多くの場合、高温、またはHPLC精製などの過酷な条件下に置くことができる。
【0257】
このクラスのポリペプチドのうちで、最も先進的なものは、XTEN(Amunix)と称され、864アミノ酸長であり、6つのアミノ酸(A、E、G、P、S、およびT)を含む(
図1)。ポリマーの生体分解的性質により可能となったことであるが、これは、典型的に使用される40KDaのPEGよりはるかに大型であり、付随して大きな半減期延長を付与する。ペプチドに対するXTENの融合体は、天然分子の60倍から130倍の半減期延長をもたらす。2つの、完全に組換えにより作製されたXTEN化(XTENylated)生成物、すなわち、VRS-859(エキセナチド-XTEN)およびVRS-317(ヒト成長ホルモン-XTEN)が、臨床試験にかけられている。フェーズIa研究では、VRS-859は、2型糖尿病を伴う患者において、寛容性が高く、効果的であることが見出された。VRS-317については、かつて研究されたrhGH生成物と比較して優れた薬物動態特性および薬力学特性が報告され、毎月1回投与の潜在的可能性を有する。同様のコンセプトの検討に基づく第2のポリマーは、PAS(XL-Protein GmbH)である。ランダムコイルポリマーは、3つの小型の非帯電アミノ酸である、プロリン、アラニン、およびセリンだけによる、さらに制約されたセットから構成された(
図1)。PASと、高度に負に帯電したXTENとの生物物理的特性の差違が、生体内分布および/またはin vivo活性の差違に寄与するのかどうかは、いまだ知られていない。しかしながら、これらのポリペプチドが、より多くの治療剤へと組み込まれ、融合体の挙動が特徴付けられるにつれて、明らかにされるであろう。
【0258】
、パートナーが、Fc、HSA、XTEN、またはPASのいずれであれ、全てのペプチドタンパク質融合体は遺伝子的にコードされ、結果として、同様の制限を被る。1つの限界は、非天然アミノ酸を組み込む合成ペプチドの使用を可能とする化学的コンジュゲーションを利用する方法と異なり、天然のアミノ酸だけが組み込まれることである。遺伝子コードを拡張することにより、これを克服する方法が、AmbrxまたはSutroなどの企業により開発されつつあるが、これらは、広く使用されてはいない。第2の限界は、ペプチドのN末端またはC末端が、パートナーへと融合される必要があることである。しばしば、ペプチド末端は、受容体相互作用に関与し、一方または両方の末端への融合は、活性を大幅に損なう恐れがある。PEGコンジュゲーションまたは脂質コンジュゲーションの部位は、ペプチド上のいずれの場所でもありうるので、結果として得られる治療剤の生物学的活性を最大化するように、最適化することができる。
【0259】
合成ペプチドを、半減期延長タンパク質と統合する、ハイブリッド法
遺伝子融合体は、歴史的に、より大きな半減期延長に対する潜在的可能性をもたらしてきたが、それらは、接合部位、およびペプチド骨格に対する非天然アミノ酸または修飾の組込みの柔軟性の点で、化学的コンジュゲーション(PEG化および脂質化)を用いる方法により与えられる利点を欠く。半減期延長のために、遺伝子融合体の利点を、化学的コンジュゲーションと統合しようとする、第1の取組みのうちの1つは、後に、バイオテック企業であるCovXのための基盤を形成した技術により、La Jollaの、Scripps Research Instituteにおける研究者らにより実行された。触媒性アルドラーゼ抗体を使用して、これらの研究者らは、抗体の活性部位リジンが、ペプチドまたは低分子へと組み込まれたβ-ジケトンと、可逆性の共有結合的エナミン結合を形成するプラットフォームを開発した。結果として得られた複合体を、CovXBody(商標)と称する。この手法は、遺伝子融合を介するのではなく、化学的連結を介して、ペプチド薬または低分子の機能的品質を、抗体の長い血清半減期と組み合わせる。初期の技術実証の後、研究者らは、インテグリンをターゲティングするペプチド模倣ファーマコフォアに基づき、CovX-Body(商標)試作品の使用へと拡張した。このアーキテクチャーに基づく、少なくとも3つの分子:Glp-1RアゴニストであるCVX-096;アンジオポエチン2結合ペプチドであるCVX-060;およびトロンボスポンジン模倣体であるCVX-045が、臨床開発に入った。
【0260】
同様に、近年、XTENポリペプチドも、それを、PEGとなおより直接的に類似させる化学的コンジュゲーション方式において使用されている。この方法を使用して創出された、XTEN化ペプチドの第1の例は、マレイミド-チオール化学反応を使用してペプチドをXTENタンパク質ポリマーへと化学的にコンジュゲートさせた、GLP2-2G-XTENである。化学的にコンジュゲートさせたGLP2-2GXTEN分子は、ラットにおいて、組換え融合型GLP2-2G-XTENに匹敵する、in vitro活性、in vitro血漿安定性、および薬物動態を呈した。
【0261】
XTENポリペプチドまたはPASポリペプチドの完全にデザインされた配列内のリジン側鎖またはシステイン側鎖のような反応性基の数および間隔は、それらを構成する、制約されたアミノ酸セットに起因する、部位指定変化を介して、正確に制御することができる。これは、それらの配列が多くの反応性基を本来的に含有するFcまたはアルブミンを用いることができる方法を上回る、さらなる柔軟度をもたらし、高度に特化された活性部位内の反応性残基に依拠するCovX技術と対照的である。加えて、XTENまたはPASの三次構造の欠如は、コンジュゲートのカップリングおよび精製において使用される条件および化学反応を上回る、より大きな柔軟性をもたらすはずである。
【0262】
まとめると、化学的コンジュゲーションおよび遺伝子融合法の利点を組み合わせ、それぞれの限界を克服する、ハイブリッド型ペプチド半減期延長法が勃興しつつある。これらの方法は、長い半減期を付与するとともに、治療的ペプチド部分を、天然L-アミノ酸だけから構成されるか、またはN末端またはC末端において融合させた直鎖状の一方向性ポリペプチドとしてだけ構成されるかという限界から解放して、組換えポリペプチドベースのパートナーに基づく分子の創出を可能とする。これにより、広範にわたる長時間作用型ペプチドベースの薬物への門戸を開く。
【0263】
医薬組成物
1つまたは複数の本発明のペプチドを含む薬学的に許容される組成物を調製する状況において、本発明のペプチド(変異体および修飾ペプチドを含む)を、1つまたは複数の意図される投与経路に適する1つまたは複数の担体(希釈剤、賦形剤など)と組み合わせることができる。
【0264】
本発明のペプチドは、例えば、ラクトース、スクロース、粉末(例えば、デンプン粉末)、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、アカシア、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合することができ、任意選択的に、従来の投与のために、さらに錠剤化または封入することもできる。あるいはまた、本発明のペプチドは、生理食塩液、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントガム、および/または多様な緩衝剤中に溶解させることができる。製薬技術分野では、他の担体、アジュバント、および投与方式も周知である。担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリンまたはグリセリル二ステアリン酸など時間遅延材料を、単独で、または蝋もしくは他の機能的に類似の材料とともに含みうる。
【0265】
薬学的に許容される担体は、一般に、インスリン類似体と生理学的に適合性である、任意で全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などもまた含む。薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのほか、これらの任意の組合せを含む。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことが望ましい可能性がある。湿潤剤など、薬学的に許容される物質、あるいはインスリン類似体、関連する組成物、またはこれらの組合せの、保管寿命または有効性を増強しうる少量の補助物質(保湿剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤など)は、。担体、および医薬組成物の他の成分の好適性は、インスリン類似体、関連する組成物、または組合せの、所望の生物学的特性に対する有意の負の影響(例えば、インスリン受容体(IR)の結合および/もしくは活性化の、約20%、15%、10%、5%、もしくは1%未満の低減;または標的宿主における血糖を低減する能力)の欠如に基づき決定することができる。
【0266】
本発明に従う組成物、関連する組成物、および組合せは、様々な適切な形態で提示、調製、および/または投与されうる。このような形態は、例えば、液体溶液(例えば、注射溶液および注入溶液)、分散液または懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、錠剤、丸剤、粉剤、リポソーム、デンドリマーおよび他のナノ粒子(例えば、Baek et al, Methods Enzymol. 2003; 362: 240-9;Nigavekar et al, Pharm Res. 2004 March; 21(3): 476-83を参照されたい)、マイクロ粒子、ならびに坐剤など、液体、半固体、および固体剤形を含む。本発明に関連する組成物の任意のペプチドに最適の形態は、意図される投与方式、組成物または組合せの性質、および治療適用、または他の意図される使用に依存する。製剤は、例えば、粉剤、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)を含有する小胞、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョン、エマルジョン、カーボワックス(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物もまた含みうる。前出の混合物のいずれも、コグネイトIRに対するペプチドの結合が製剤により著明に阻害されず、製剤が、投与経路と生理学的に適合性かつ寛容性であることを条件として、本発明に従う処置および治療に適切でありうる。創薬化学者には周知の賦形剤および担体と関連するさらなる情報については、例えば、Powell et al. "Compendium of excipients for parenteral formulations" PDA J Pharm Sci Technol. 52: 238-311 (1998)、およびこの中の引用文献もまた参照されたい。
【0267】
特定の態様では、本発明のペプチドを、リポソームにより投与する。別の態様では、本発明のペプチドを、1つまたは複数の抗糖尿病薬などの1つまたは複数の副次的薬剤と共に、リポソームにより投与する。
【0268】
また、本発明の組成物は、本発明のペプチドと、これに適する塩との任意の適する組合せを含む組成物も含む。任意の適切な形態のアルカリ土類金属塩(例えば、緩衝液塩)など、任意の適切な塩を、本発明のペプチドの安定化において使用することができる(好ましくは、塩の量は、ペプチドの酸化および/または沈殿を回避するような量である)。適切な塩は、典型的に、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウムを含む。基剤と、1つまたは複数の本発明のペプチドとを含む組成物もまた、提供される。
【0269】
本発明の組成物の送達のための典型的な方式は、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、および/または筋内投与)による方式である。一態様では、本発明の組成物またはペプチドを、静脈内注入または静脈内注射により、ヒト患者に対して投与する。別の態様では、本発明の組成物またはペプチドを、筋内注射または皮下注射により投与する。上記で指し示した通り、特定の治療レジメンでは、腫瘍内投与もまた、有用でありうる。
【0270】
したがって、本発明のペプチドは、例えば、固体製剤(例えば、顆粒、粉末、投射粒子、または坐剤を含む)、半固体形態(ゲル、クリームなど)、または液体形態(例えば、溶液、懸濁液、またはエマルジョン)により製剤化することができる。本発明の組成物またはペプチドは、様々な溶液により適用することができる。本発明に従う使用に適する溶液は、無菌であり、十分な量の本発明のペプチドおよび組成物の他の成分を溶解させ、製造および保存のための条件下で安定であり、提起された適用のための対象に有害でないことが典型的である。本発明のペプチドは、滅菌処理など、従来の製薬工程にかけてもよく、および/または、慣用のアジュバント(保存剤、安定化剤、保湿剤、乳化剤、緩衝剤など)を含有しうる。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、パウダー、マクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適する他の秩序構造としてもまた製剤化することができる。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合に要求される粒子サイズを維持することにより、および、界面活性剤を使用することにより、溶液の所望の流動性を維持することができる。注射組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を組み入れることによりもたらすことができる。本発明の薬学的に許容される組成物の、これらの成分および他の成分は、改善された移入、送達、寛容性など、有利な特性を付与しうる。
【0271】
医薬使用のための組成物は、多様な希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、洗剤(例えば、Tween-80などの非イオン性洗剤)、安定化剤(例えば、糖またはタンパク質非含有アミノ酸)、保存剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または医薬使用のための組成物中の組入れに適する、他の材料を含みうる。適切な成分の例は、例えば、Berge et al, J. Pharm. Sci., 6661), 1-19 (1977);Wang and Hanson, J. Parenteral. Sci. Tech: 42, S4-S6 (1988);米国特許第6,165,779号明細書および同第6,225,289号明細書;ならびに本明細書で引用される他の文書においてもまた記載されている。このような医薬組成物は、保存剤、抗酸化剤、または当業者に公知の、他の添加剤もまた含みうる。当技術分野では、さらなる薬学的に許容される担体が公知であり、例えば、Urquhart et al, Lancet, 16, 367 (1980);Lieberman et al, Pharmaceutical Dosage Forms-Disperse Systems (2nd ed.,vol.3,1998);Ansel et al, Pharmaceutical Dosage Forms & Drug Delivery Systems (7th ed.2000);Martindale, The Extra Pharmacopeia (31st edition);Remington's Parmaceutical Sciences (16th-20th editions);The Pharmacological Basis Of Therapeutics, Goodman and Gilman, Eds. (9th ed.-1996);Wilson and Gisvolds' TEXTBOOK OF ORGANIC MEDICINAL AND PHARMACEUTICAL CHEMISTRY, Delgado and Remers, Eds. (10th ed.-1998)、ならびに米国特許第5,708,025号明細書および同第5,994,106号明細書において記載されている。薬学的に許容される組成物を製剤化する原理は、例えば、Piatt, Clin. Lab Med., 7: 289-99 (1987);Aulton, Pharmaceutics: The Science Of Dosage Form Design, Churchill Livingstone (New York) (1988);EXTEMPORANEOUS ORAL LIQUID DOSAGE PREPARATIONS, CSHP (1998);および”Drug Dosage,” J. Kans. Med. Soc, 70(I), 30-32(1969)においてもまた記載されている。本発明のペプチドまたは組成物、および関連の組成物(例えば、本発明のペプチドをコードする核酸、または本発明のペプチドをコードする核酸を含むベクターを含む組成物)の投与に、特に適する、さらなる薬学的に許容される担体については、例えば、国際特許出願公開第98/32859号パンフレットにおいて記載されている。
【0272】
本発明のペプチドまたは組成物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロ封入送達系を含む制御放出製剤など、急速な放出に対して化合物を保護する担体により調製することができる。このような組成物をもたらすために、エチレンビニル酢酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸、ならびにこれらのうちのいずれかの組合せなど、生体分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。このような組成物を調製するための方法は公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0273】
別の態様では、本発明の組成物を、例えば、不活性の希釈剤または同化可能な可食性担体と共に経口投与する(本明細書の他の箇所には、具体的な経口投与製剤および経口投与法もまた、個別に記載されている)。化合物(および所望の場合、他の成分)はまた、ハードゼラチンカプセルもしくはソフトゼラチンカプセルに封入するか、錠剤へと圧縮するか、または対象の食餌へと直接組み込むこともできる。治療的経口投与のために、化合物を、賦形剤と共に組み込み、服用可能な錠剤、口内錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形態で使用することができる。本発明の化合物を、非経口投与以外により投与するために、化合物を、その不活化を防止する材料でコーティングするか、またはこれと共に共投与することが必要でありうる。
【0274】
有効成分としてペプチドを含有する医薬組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的に、このような組成物は、溶液または懸濁液としての注射剤として調製されるが、注射の前に液体中に溶解または懸濁させるのに適する固体形態としても調製することができる。また、調製物を乳化させることもできる。治療的有効成分は、薬学的に(すなわち、生理学的に)許容され、有効成分と適合性である、賦形剤と混合することが多い。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびこれらの組合せである。加えて、所望の場合、組成物は、有効成分の有効性を増強する、保湿剤または乳化剤、pH緩衝剤など、少量の補助物質を含有しうる。
【0275】
本発明のペプチドは、生理学的に許容される中和塩形態として、医薬組成物へと製剤化することができる。適切な塩は、酸付加塩(すなわち、ペプチド分子の遊離アミノ基により形成される)であって、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデリン酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩を含む。遊離カルボキシル基から形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基にもまた由来しうる。
【0276】
組合せ組成物(本明細書でさらに論じられる)の場合、本発明のペプチドは、1つまたは複数の追加の治療剤(例えば、インスリン、インスリン類似体、メトホルミン、または他の抗糖尿病性ビグアニド、グルカゴン受容体アンタゴニスト、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼ阻害剤、メグリチニド、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1類似体などの抗糖尿病剤)と共に、共製剤化および/または共投与することができる。このような組合せ療法は、多様な単剤療法と関連する、可能な毒性または合併症を回避するように、低投与量の、本発明のペプチドおよび/または共投与される薬剤を要求しうる。
【0277】
治療適用
上記で指し示した通り、本発明のペプチドまたは組成物は、個別的に、または他の薬理学的な活性薬剤と組み合わせて投与することができる。このような組合せ療法は、異なる治療レジメンを包含することが理解されるであろう。治療レジメンは、単一の剤形中に一緒にされた複数の薬剤の投与、または別個の独立した剤形中の複数の薬剤の投与を含むが、それらに限定されるものではない。薬剤が、異なる剤形中に存在する場合、投与は、同時的もしくはほぼ同時的でありうるか、または異なる薬剤の投与を包含する、任意の所定のレジメンに従いうる。
【0278】
例えば、糖尿病、またはインスリンの応答もしくは産生の減少と関連する他の疾患もしくは症候群、高脂血症、肥満、食欲関連症候群などを処置するのに使用する場合、本発明のペプチドは、インスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体、グルカゴン様ペプチド1または2(GLP-1、GLP-2)、GLP-1またはGLP-2の誘導体または類似体(例えば、国際公開第00/55119号パンフレットにおいて開示されているものなど)を含むがそれらに限定されるものではない1つまたは複数の薬剤を伴う、組合せ処置レジメンにより投与されると有利でありうる。本明細書で使用されるインスリン、GLP-1、またはGLP-2の「類似体」とは、該当する場合、インスリン、GLP-1、またはGLP-2の天然配列と比べて、1箇所または複数箇所のアミノ酸置換を含有するペプチドを指し;本明細書で使用されるインスリン、GLP-1、またはGLP-2の「誘導体」とは、特に、天然配列と比べて、アミノ酸配列の、1箇所または複数箇所のさらなる化学的修飾を経た、天然または類似体インスリン、GLP-1、またはGLP-2ペプチドを指すことが理解されるであろう。インスリン誘導体およびインスリン類似体は、例えば、米国特許第5,656,722号明細書、同第5,750,497号明細書、同第6,251,856号明細書、および同第6,268,335号明細書において開示されている。一部の実施形態では、組合せ薬剤は、LysB29(ε-ミリストイル)des(B30)ヒトインスリン、LysB29(ε-テトラデカノイル)des(B30)ヒトインスリン、およびB29-Nε-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリンのうちの1つである。当技術分野で周知のものなどの、非ペプチド性血糖降下剤、抗脂質異常剤などもまた、組合せ療法に適する。
【0279】
一実施形態では、本発明は、糖尿病、または関連する症候群もしくは関連状態を処置する(例えば、グルコースレベルに関連し、かつ/もしくは糖尿病に関連する脳卒中、心疾患、腎疾患、失明、ならびに/または四肢における感覚の喪失の割合を低減する)方法であって、(遺伝子発現により、均質なペプチドの送達により、または、典型的に、上記で記載した、1つまたは複数のペプチドと、1つまたは複数の、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的に許容される組成物の投与により)有効量の少なくとも1つの本発明のペプチドを送達するステップを含む方法を包含する。別の態様では、本発明は、本発明のペプチドまたは組成物(組合せ組成物など)の、1型糖尿病または2型糖尿病の処置において使用される医薬の製造における使用を提供する。
【0280】
本発明のペプチドは、一般に、1型糖尿病または2型糖尿病、すなわち、インスリン依存性糖尿病(IDDM)および非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)の両方の処置において使用することができる。
【0281】
例示的な組合せ療法態様では、本発明は、糖尿病を処置する方法(例えば、宿主における、これと関連する、1つもしくは複数の症状を低減する方法、および/または宿主へと、少なくとも実質的な比率の、同様の宿主集団において、治療に有効であることが裏付けられている量の組成物を施す方法)であって、第1の量の本発明のペプチドまたは組成物と、第2の量の長期作用型インスリン類似体(例えば、LysB29(ε-ミリストイル)des(B30)ヒトインスリン、LysB29(ε-テトラデカノイル)des(B30)ヒトインスリン、またはB29-Nε-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリンなど)とを送達するステップを含み、第1の量および第2の量が一緒になって、症候群を処置するために有効である方法を提供する。本明細書で使用される、長期作用型インスリン類似体とは、例えば、米国特許第6,451,970号明細書において開示されている通り、天然ヒトインスリンと比べて、持続的な作用プロファイルを呈するインスリン類似体である。別の態様では、本発明は、疾患の処置(1型糖尿病または2型糖尿病の処置など)において使用される医薬の製造における、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは組成物と、少なくとも1つのインスリンまたはインスリン類似体との、治療に有効な組合せを含む組合せ組成物の、使用を提供する。1つまたは複数の本発明のペプチドまたは組成物と、1つまたは複数の長期作用型インスリン類似体および/または短期作用型インスリン類似体との組合せを含む、同様の組成物もまた、糖尿病の処置などの治療方法に適しうる。
【0282】
一態様では、本発明は、(疾患の診断および/またはその発生の実質的な危険性に起因して)処置を必要とする患者における、2型糖尿病と関連する症状および/または基礎状態を処置する方法であって、患者に対して、治療または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を送達して、このような症状および/または状態を処置するステップを含む方法を提供する。特定の態様では、本発明は、2型糖尿病および高インスリン血液レベル(高インスリン血症)を有する患者を処置する方法を提供する。このような一態様では、患者は、肥満である。別の態様では、患者は、同時または二者択一的に、インスリン耐性遺伝子型/突然変異も含む。
【0283】
別の態様では、本発明は、インスリン/IRに関連する高血圧を有する患者における血圧を低下させる方法であって、患者の血圧を低下させるように、治療有効量の本発明のペプチドまたは組成物を投与するか、または他の形で送達するステップを含む方法を提供する。
【0284】
別の態様では、本発明は、患者におけるシンドロームXの症状および/もしくは基礎状態、またはこれらの様態(例えば、高脂血症、高血圧症、および/または肥満)を処置する方法であって、患者に対して、治療および/または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を投与するか、または他の形で送達して、シンドロームXまたはシンドロームX状態を処置するステップを含む方法を提供する。
【0285】
さらに別の態様では、本発明は、IR関連神経変性疾患;IR関連非糖尿病性自己免疫疾患など、患者における非糖尿病性のIRに媒介される症状、障害、または疾患を処置する方法であって、患者に対して、治療または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を投与して、このような状態/症状を処置するステップを含む方法を提供する。
【0286】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における体重増加を防止する方法であって、患者に対して、治療または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を投与して、IR関連の体重増加を防止するステップを含む方法を提供する。
【0287】
関連する態様では、本発明は、肥満を処置する方法であって、患者に対して、治療または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を投与して、(患者の体重を安定化および/または低減することにより)肥満またはこれと関連する状態を処置するステップを含む方法を提供する。
【0288】
別の態様では、本発明は、高インスリン血症、低血糖症、低カリウム血症、および/または低リン酸血症と関連するか、またはこれらにより引き起こされる疾患症状を患う患者を処置する方法であって、患者に対して、治療または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を投与して(または他の形で送達して:あらゆる場合と同様に)、このような状態/症状を処置するステップを含む方法を提供する。本発明は、血糖に関連する疾患または障害を処置するための方法であって、インスリン誘導体またはインスリンコンジュゲートの投与を含む方法にさらに関する。血糖関連疾患または障害は、I型およびII型の糖尿病、ならびに妊娠糖尿病を含む。嚢胞性線維症、多膿疱性卵巣症候群、膵炎、および他の膵臓関連疾患もまた、本発明のインスリン誘導体またはインスリンコンジュゲートの投与により処置することができる。インスリンは、増殖因子としても公知であり、したがって、本発明のインスリン誘導体またはインスリンコンジュゲートは、創傷治癒、および他の関連する適応のための局所投与においても有用でありうる。
【0289】
別の態様では、本発明は、本発明のペプチドまたは組成物(組合せ組成物など)の、前出の状態のうちのいずれかの処置において使用される医薬の製造における使用を提供する。
【0290】
一般的な一態様では、本発明は、個体におけるグルコースレベルを調整する方法であって、生理学的に有効量の本発明のペプチドまたは組成物を投与して、患者におけるグルコースレベルを、検出可能に調整するステップを含む方法を提供する。別の態様では、本発明は、、血中グルコースレベルの低減において使用される医薬の製造における、本発明のペプチドまたは組成物(組合せ組成物など)の使用を提供する。
【0291】
別の一般的な態様では、本発明は、IR活性を媒介する方法であって、IR提示細胞上の応答性のIRが、IRに媒介される活性または応答を誘導、促進、増強、および/または他の形で調整するのに十分な量および条件下で結合するように、生理学的に有効量の本発明のペプチドまたは組成物を投与するステップを含む方法を提供する。例えば、本発明のペプチドを、部位1または部位2に結合して、インスリンまたはインスリン類似体分子を他の部位へと導き、インスリンまたはインスリン類似体処置のプロファイルを修飾するように、宿主へと送達することができる。
【0292】
なおさらなる面では、本発明は、患者に対して、治療または予防に有効な量の本発明のペプチドまたは組成物を送達するか、または他の形で投与して、このような生理学的応答を誘導、促進、および/または増強することにより、以下の方法を提供する:患者内皮細胞内など、患者における一酸化窒素産生レベルを調整する方法;RAS、RAF、MEK、および/もしくはマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路を媒介する方法;血管組織増殖および/または平滑筋細胞、単球、マクロファージ、および/または内皮細胞の増殖および/もしくは遊走を調整する方法;1型プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤(PAI-1)の産生を刺激する方法;エンドセリン産生を調整する方法;IR関連アテローム性動脈硬化促進性経路生物学的イベントを調整する方法;IR関連炎症を調整する方法;動脈損傷の危険性を処置および/もしくは低減する方法;アテローム性動脈硬化を処置および/もしくは防止する方法;ならびに/または患者の血管壁内のLDLコレステロールなど、IR関連炎症分子を低減する方法。
【0293】
本発明のペプチドおよび組成物はまた、異化による消耗(例えば、悪液質およびサルコペニア)を処置するのにも利用することができ、例えば、運動選手、スポーツ選手、またはボディビルダーにおける筋肉量を増大させるときの、非治療的使用のためにも利用することができる。ペプチドは、運動選手の筋肉量に対するそれらの同化効果のためにもまた使用される(GHRPとは、成長ホルモン放出ホルモンの種類である、成長ホルモン放出ヘキサペプチドを意味する)。
【0294】
これは、いくつかの形で有用でありうる。明らかに、運動選手は、損傷の直後に、迅速に治癒し、産生性である必要がある。ペプチドは、この再構築的治癒過程において、筋肉または軟部組織の一助となるであろう。同化効果をもたらすサプリメントを、プレシーズン中、および筋肉量の構築が重要である他の期間においてもまた使用することができる。運動選手は、筋肉内に小さな断裂をもたらし、これを、急速なスケジュールで治癒させて、過程を反復するため、筋肉量は、急速に構築されうる:終末の効果は、短い時間枠内における、筋肉量の増大、および体脂肪の低減である。新たなペプチドはアナボリックステロイドの副作用を伴わないので、ボディビルディングコミュニティーは、この第2の方式において最も有効なペプチドを使用する。
【0295】
例示的な投与量および投与戦略
上記で記載した通り、本発明の組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の本発明のペプチド(または本発明のペプチドと、第2の成分とを含む組合せ組成物の場合における、第1の量および第2の量;2つの本発明のペプチドと、副次的薬剤とを含むか、または本発明のペプチドと、2つの副次的薬剤とを含む組合せ組成物の場合における、第1、第2、および第3の量など)を含みうる。より良好に特定の態様を例示するために、投与量原則についての詳細な議論を、ここでさらに提示する。
【0296】
本発明を実施するときに利用される、本発明のペプチドの量または投与量範囲は、典型的に、コグネイトIRに対する本発明のペプチドの結合と関連する生理学的応答を、有効に誘導、促進、または増強する範囲である。一態様では、利用される本発明のペプチドが、例えば、少なくとも部分的にIR活性により調整される関連症状(糖尿病の形態など)を患うか、またはこれを発症する実質的な危険性がある患者において、平均的(medially)に有意な効果を誘導、促進、または増強するように、投与量範囲を選択する。平均的に有意な効果は、コグネイトIRの活性化、シグナル伝達、および/または生物学的修飾(例えば、リン酸化)と関連する。
【0297】
さらに別の態様では、毎日体重1キログラム当たり約0.01から100ミリグラムの投与量の有効成分(例えば、本発明のペプチド)を、患者に提供する。通常、毎日約1から約6回にわたる分割投与、または持続放出形態で施される、1日当たり1キログラム当たり約1から約5または約1から約10ミリグラムが、所望の結果を得るのに有効でありうる。
【0298】
非限定例としては、ヒトまたは動物におけるIR関連病態の処置は、単回であるか、または約24、12、8、6、4、もしくは2時間ごとに分割された投与、またはこれらの任意の組合せを使用する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしく40日目のうちの少なくとも1つ、あるいはまた、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20週目のうちの少なくとも1つ、またはこれらの任意の組合せにおける、1日当たり約0.1~100mg/kg(0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、または100mg/kgなど)の量の本発明のペプチドの毎日の投与量の投与により施すことができる。
【0299】
一態様では、本発明の方法は、2つの異なる本発明のペプチドを、1カ月間にわたり投与または他の形で送達するステップを含み、第2の本発明のペプチドを伴う治療の開始、または、宿主において第1の本発明のペプチドに対する有意な免疫応答が発生し、その結果、第1の本発明のペプチドの持続的な使用が、患者に対して有害となった任意の時点における。
【実施例0300】
実施例において言及されるペプチドは、配列番号1の配列を有するペプチドである。
【0301】
(実施例1)
細胞増殖アッセイ
研究の説明
BrDuを、活発に増殖する細胞の、新たに合成されるDNA鎖へと組み込む。二本鎖DNAの部分的変性の後、BrDuを免疫化学的に検出し、DNAを合成しつつある細胞集団についての評価を可能とする。
【0302】
方法
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF-Sigma 10605a)を、96ウェルプレート内、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%Pen/strep、1%L-グルタミンを含有するDMEM中に、ウェル1つ当たりの細胞10,000個で播種し、24時間にわたり接着させた。
【0303】
初期24時間インキュベーションの後、細胞を、5μg/ml、0.5μg/ml、または0.05μg/mlの合成ペプチドのそれぞれと共に、24時間にわたりインキュベートした。
【0304】
合成ペプチドを伴う18時間インキュベーションの後、20μLのBrDu試薬を、各ウェルへと添加した。24時間インキュベーションの後、細胞を固定し、BrdU細胞増殖アッセイを使用して、2-DG6Pの量を測定し、全てのステップを、製造元の指示書に従い実行した。
【0305】
次いで、HACAT細胞を使用して、この実験を反復した。
【0306】
結果
結果は、非処置対照に対する百分率として計算した。
図1(HDF細胞)および
図2(HACAT細胞)により例示される通り、光学濃度読取値の増大は、BrDuの組込みの増大、および細胞増殖の増大を示す。
図1および
図2により例示される通り、本発明のペプチドで刺激された試料は、非処置対照と比較した、細胞増殖の増大を示した。
【0307】
結論
これらの結果は、細胞増殖を容易とするペプチドの有効性を裏付ける。
【0308】
(実施例2)
コラーゲン産生アッセイ
研究の説明
組織調製物中のヒドロキシプロリンは、存在するコラーゲンの量についての直接的な尺度である。FIRELISAヒトヒドロキシプロリンELISAキットアッセイをデザインして、組織組成またはペプチド組成におけるヒドロキシプロリンを測定する。
方法
【0309】
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF Sigma 10605a)を、24ウェルプレート内、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%Pen/strep、1%L-グルタミンを含有するDMEM中に、ウェル1つ当たりの細胞50,000個で播種し、24時間にわたり接着させた。
【0310】
初期24時間インキュベーションの後、細胞を、5μg/ml、1μg/ml、または0.1μg/mlの合成ペプチドのそれぞれと共に、96時間にわたりインキュベートした。
【0311】
処置の後、細胞上清を取り出し、遠心分離した。FIRELISAヒトヒドロキシプロリンELISAキットを使用して、50μLずつの各上清をアッセイした。全てのステップを、製造元の指示書に従い実行した。
【0312】
結果
結果は、非処置対照に対する百分率として計算した。光学濃度読取値の増大は、コラーゲン含量の増大を示す。
図3により例示される通り、非処置対照と比較したコラーゲン産生の増大が見られた。
【0313】
結論
これらの結果は、コラーゲン産生を容易とするペプチドの有効性を裏付ける。
【0314】
(実施例3)
エラスチン産生アッセイ
研究の説明
エラスチンとは、結合組織内の高弾性タンパク質であり、体内の多くの組織が、伸縮の後に、それらの形状を旧復させることを可能とする。FIRELISAヒトエラスチンELISAキットアッセイをデザインして、組織組成またはタンパク質/ペプチド組成物におけるエラスチンを測定する。
方法
【0315】
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を、24ウェルプレート内、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%Pen/strep、1%L-グルタミンを含有するDMEM中に、ウェル1つ当たりの細胞50,000個で播種し、24時間にわたり接着させた。
【0316】
初期24時間インキュベーションの後、細胞を、5μg/ml、1μg/ml、または0.1μg/mlの合成ペプチドのそれぞれと共に、96時間にわたりインキュベートした。
【0317】
処置の後、細胞溶解緩衝液を使用して細胞を溶解させ、10秒間にわたり超音波処理した。溶解させた細胞を遠心分離し、上清を各試料から取り出した。BCAアッセイを使用して、合計タンパク質濃度を決定した。10μgの合計タンパク質を含有するように、各試料をアッセイ緩衝液で希釈した。次いで、FIRELISAヒトエラスチンELISAキットを使用して、50μLずつの各試料をアッセイした。全てのステップを、製造元の指示書に従い実行した。
【0318】
結果
結果は、非処置対照に対する百分率として計算した。光学濃度読取値の増大は、エラスチン含量の増大を示す。
図4により例示される通り、本発明のペプチドで刺激された試料は、非処置対照と比較してエラスチン産生の増大を示した。
【0319】
結論
これらの結果は、エラスチン産生を容易とするペプチドの有効性を裏付ける。
【0320】
(実施例4)
グルコース取込み
研究の説明
2-デオキシグルコース(2-DG)を使用して、骨格筋細胞内のグルコース取込みを測定した。2-DGは、グルコース輸送体により取り込まれ、2-DG-6-リン酸(2-DG6P)へと代謝される。非代謝性の2-DG6Pの蓄積量は、細胞によるグルコース取込みと比例する。
方法
【0321】
ヒト骨格筋芽細胞(Sigma 150-05a)を、96ウェルプレート内、骨格筋分化培地中に、ウェル1つ当たりの細胞10,000個で播種し、実験の前に、72時間にわたり分化させた。
【0322】
分化させた細胞を、インスリンまたは合成ペプチドによる刺激の前に、24時間にわたり血清飢餓させた。飢餓の後で、無血清培地を除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)ですすぎ、培地を100μLのクレブス-リンゲル-リン酸-HEPES(KRPH)で置きかえ、1時間にわたりインキュベートした。
【0323】
次いで、細胞を、100nMのインスリンで30分間にわたり、または5μg/ml、0.5μg/ml、または0.05μg/mlの合成ペプチドのそれぞれで、3時間にわたり刺激した。
【0324】
刺激の後、細胞を、ウェル1つ当たり10μLの2-DG溶液と共に、40分間にわたりインキュベートし、「PrismColor Glucose Uptake Assay Kit」(Molecutools)を使用して、グルコース取込みを測定し、全てのステップを、製造元の指示書に従い実行した。HACAT細胞を使用して、実験を反復した。
【0325】
結果
結果は、非処置対照に対する百分率として計算した。光学濃度読取値の増大は、2-DG6Pの組込みの増大、およびグルコース取込みの増大を示す。全ての実験を、3つのプレート上、二連(状態1つ当たり6つのウェル)で実行した。スチューデントのt検定(
*対照と比較してp<0.05、
**対照と比較してp<0.01、
***対照と比較してp<0.001)を使用して、有意性を決定した。
図6は、0.5μg/mlの合成ペプチドについての結果を例示し、
図7は、5μg/mlの合成ペプチドについての結果を例示する。
図5は、HACAT細胞についての結果を表示する。これらの図により例示される通り、本発明のペプチドで刺激された試料は、非処置対照と比較した、グルコース取込みの増大を示した。
【0326】
結論
これらの結果は、骨格筋内のグルコース取込みを容易とするペプチドの有効性を裏付ける。
【0327】
(実施例5)
GLUT-4移動
方法
HSKMC細胞を、6ウェルプレート内で培養し、次いで、0.5μg/mlおよび5μg/mlの濃度のペプチド/加水分解物で、2時間にわたり処置した。処置が完了したら、細胞膜タンパク質を回収した。略述すると、細胞クレーパーにより、ウェルから細胞を採取し、300×gで5分間にわたり遠心分離した。細胞ペレットを、300μlの細胞洗浄液で洗浄し、次いで、300×gで5分間にわたり再び遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を、1.5mlの細胞洗浄液中に再懸濁させ、2mlの遠心管へと移した。次いで、細胞を、300×gで5分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄した。細胞ペレットに対して150μlの透過化緩衝液を添加し、短時間にわたり渦撹拌(vortex)して、均質な細胞懸濁液を得た。次いで、懸濁液を、定常的に混合しながら、4℃で10分間にわたりインキュベートした。次いで、透過化された細胞を、16000×gで15分間にわたり遠心分離し、細胞質ゾルタンパク質を含有する上清を、未使用のチューブへと移した。100μlの可溶化緩衝液を、ペレットへと添加し、静かにピペッティングすることにより再懸濁させた。次いで、試料を、定常的に混合しながら、4℃で10分間にわたりインキュベートした。次いで、試料を、16000×gで、15分間にわたり、4℃で、10分間にわたり遠心分離した。可溶化させた膜および膜関連タンパク質画分を含有する上清を、未使用のチューブへと移し、評価の準備ができるまで、-80℃で保存した。
【0328】
LSBio製のサンドイッチELISAを使用して、細胞膜画分中のGLUT-4を評価した。各試料から10μgずつのタンパク質を、96ウェルプレート上の個別のウェルへと、100μlの最終容量までロードした。GLUT-4標準物質(0.3ng/ml~20ng/ml)もまた、プレートへと、同一の容量で添加した。次いで、プレートをシーリングし、37℃で1時間にわたりインキュベートした。液体を、各ウェルから吸引し、次いで、100μlの検出試薬Aを、各ウェルへと添加し、この時点で、プレートをシーリングし、静かに攪拌して確実に混合させ、次いで、37℃で1時間にわたりインキュベートした。液体を、各ウェルから吸引し、350μlの洗浄緩衝液を使用して、ウェルを、3回にわたり洗浄した。100μlの検出試薬Bを、各ウェルへと添加し、この時点で、プレートをシーリングし、37℃で30分間にわたりインキュベートした。ウェルを、既に概括した通り、5回にわたり洗浄し、90μlのTMB基質を、各ウェルへと添加した。プレートを、シーリングし、光から保護し、37℃で10分間にわたりインキュベートして、最適の発色を確認した。50μlの停止溶液を、各ウェルへと添加し、450nmへと設定されたマイクロプレートリーダーを使用して、試料の光学濃度を決定した。試料中のGLUT-4濃度は、4パラメータロジスティック(4-PL)曲線フィットを生成した後で、検量線から計算した。次いで、結果に、希釈倍数を乗じることにより、曲線の試料濃度読取値を補正した。
【0329】
結果
図8により例示される通り、0.5μg/mlおよび5μg/mlのペプチドの両方により刺激された試料中で、GLUT4移動の増大が見られた。
【0330】
結論
ペプチドは、骨格筋GLUT4移動に対する刺激効果についての傾向、および骨格筋内のグルコース輸送を容易とするその能力を示した。
【0331】
(実施例6)
筋肉タンパク質合成(ホスホmTORアッセイ)
研究の説明
哺乳動物におけるラパマイシンの標的(mTOR)は、ATPおよびアミノ酸センサーとして機能して、栄養物質のアベイラビリティーおよび細胞増殖を平衡させる、Ser/Thrタンパク質キナーゼである。mTORの活性は、インスリン、アミノ酸、身体運動、酸化ストレス、および増殖因子により調節され、一貫して、そのリン酸化が、タンパク質合成経路を促進する。しかし、mTORの調節異常は、他の多くの病態の中でも、老化の加速を引き起こす。筋肉内で、mTORは、活性化(リン酸化)されると、骨格筋肥大をもたらす。この事実は、齧歯動物およびヒトの両方において、文献的に広く報告されている。ロイシンなどのアミノ酸は、mTORのリン酸化を増強し、その活性化は、真核生物開始因子4E結合性タンパク質1(4E-BP1)およびリボソームタンパク質S6キナーゼ(S6K)のリン酸化を介して、タンパク質翻訳を上方調節し、細胞増殖(growthおよびproliferation)をもたらす。
【0332】
ホスホmTORサンドイッチELISAは、Ser2448におけるリン酸化mTORの内因性レベルを検出する。
【0333】
方法
第1日:HSkMC細胞を、ウェル1つ当たり500uLのHSkMC増殖培地中に播種し、16~24時間にわたり、ウェルに対してそれらを接着させる。
第2日:増殖培地を除去し、ウェル1つ当たり500uLのHSkMC分化培地を添加して、それらを、5~7日間にわたり分化させる。
第7日:細胞を、2時間にわたり処置する。細胞溶解物を、溶解緩衝液中に回収する。
第8日:BCA(タンパク質決定)を実施し、アッセイを行う。第1のインキュベーションステップでは、ELISAマイクロウェル上に被覆されたmTOR抗体を使用して、細胞溶解物からmTOR(ホスホおよび非ホスホ)を捕捉する。次いで、十分な洗浄の後、特異的ホスホmTOR検出抗体を添加して、既に捕捉されたホスホmTORタンパク質だけを検出する。最後に、HRP連結抗体を使用して、検出抗体を認識し、TMB(HRP基質)の添加により、Ser2448においてリン酸化されたmTORの数量に比例して発色させる。
【0334】
結果
結果を、
図9により例示する。0.5μg/mlおよび5μg/mlで刺激された試料は、mTORの増大を示した。
【0335】
結論
これらの結果は、筋タンパク質合成および筋肉増殖活性を容易とするペプチドの有効性を裏付ける。
【0336】
(実施例7~15)
製剤
実施形態では、組成物を、局所組成物として製剤化する。一実施形態では、それは、エマルジョンもしくはクリーム、または筋肉ラブなどのラブでありうる。
【0337】
実施形態では、クリームは、賦形剤または希釈剤、懸濁剤、保存剤、および不定量の少なくとも1つの本発明のペプチドを含む。
【0338】
実施形態では、クリームは、アルコール、カルボマー、ソルベート、水、および少なくとも1つの本発明のペプチドを含む。
【0339】
好ましくは、アルコールは、ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)である。アルコールは、組成物の1から10%の間、好ましくは、2から6%の間、好ましくは、4%の量で存在しうる。ソルベートは、ポリソルベート20でありうる。ソルベートは、組成物の0.01から1%の間、好ましくは、0.05から0.5%の間、好ましくは、0.10%の量で存在しうる。水は、10%から90%の間、好ましくは、30%から75%の量で存在する。カルボマーは、0.05%から1%、好ましくは、0.1%から0.5%、好ましくは、0.15%の量で存在しうる。カルボマーは、Ultrez 10でありうる。
【0340】
本発明のペプチドは、0.5%から10%、好ましくは、1%から5%、好ましくは、3%の量で存在しうる。
【0341】
組成物は、グリセリンなどの糖アルコール、パラベン、シクロヘキサシロキサンなどのシリコン、脂肪アルコールもしくはリン酸、または脂肪アルコールとリン酸との混合物(セテアリルアルコール、リン酸ジセチル、およびリン酸Cereth 10、もしくはこれらの組合せなど)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(Steareth 2および10など)、ならびにフラグランスのうちの1つまたは複数をさらに含みうる。
【0342】
(実施例7)
例示的なラブまたはエマルジョンは、実施例7においては、以下の通りである。
【0343】
【0344】
結果として得られるエマルジョンは、ラブとして適する。加えて、ラブは、脆弱な老化皮膚に適する。エマルジョンは、小皺、皺、乾燥を改善し、発赤および刺激を低減するのに適する。
【0345】
百分率は、例であるに過ぎず、使用に応じて、任意の適切な百分率を使用しうることが理解されるであろう。
【0346】
エマルジョンは、以下の方式で調製する:相A:Ultrez 10(カルボマー)を、水中に分散させ、これを、20分間にわたり膨潤させ、次いで、相Bを添加し、75℃へと加熱する。相Cを、別個に、75℃へと加熱する。2つの相を、攪拌下で混合し、ホモジナイズし、相Dを添加し、相Eで中和し、30℃に達するまで冷却し、次いで、相Fおよび相Gを添加し、NaOHにより、pHを6へと調整する。これは、例であるに過ぎず、当技術分野で公知である、任意の適切な方法を使用しうることが理解されるであろう。
【0347】
さらなる実施形態では、組成物は、水、カルボマー、ソルビン酸カリウムなどのソルベート、グリセリンなどの糖アルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどのアルコール、Steareth 2などのポリオキシエチレンステアリルエーテル、脂肪アルコールもしくはリン酸、またはセテアリルアルコール、リン酸ジセチル、およびリン酸Cereth 10、またはこれらの組合せなど、脂肪アルコールとリン酸との混合物、シクロメチコンなどのシロキサン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタン、パラベン、水酸化ナトリウム、グリセリン(および)ブチレングリコール(および)クマコケモモ(Arcostaphylus Uva Ursi)葉抽出物(および)ミトラカーパス・スケーバー(Mitracarpus Scaber)抽出物の混合物(ETIOLINE(登録商標))などの皮膚美白剤、または筋肉健康薬剤、および本発明のペプチドなどの活性薬剤のうちの1つまたは複数を含みうる。
【0348】
(実施例8)
実施例8における以下の組成物は、エマルジョンまたはクリームまたはラブの例である。
【0349】
【0350】
活性剤は、ETIOLINE(登録商標)[グリセリン(および)エチレングリコール(および)クマコケモモ葉抽出物およびミトラカーパス・スケーバー抽出物]でありうる。ETIOLINE(登録商標)とは、SEDERMAにより販売されている皮膚美白成分(1996年11月19日の国際公開第98/05299号パンフレット)である。
【0351】
ETIOLINEを、筋肉健康、発生、または回復の一助となる薬剤など、任意の活性薬剤で置きかえうることが理解されるであろう。
【0352】
この製剤は、実施例7で一般に概括される手順に従い作ることができる。組成物は、水、Ultrez 10などのカルボマー、グリセリンなどの糖アルコール、フェノーバ(フェノキシエタノールおよび混合パラベン)などのアルコール、パルミチン酸エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル、セテアリルアルコールなどの脂肪アルコール、乳酸ミリスチルなどの乳酸エステル、ポリソルベート20および/もしくはソルビン酸カリウムなどのソルベート、アクリレート(C10~30アルキルアクリレート)などのポリマー性乳化剤、ならびに架橋ポリマー、シクロメチコンなどのシロキサン、水酸化ナトリウム、筋肉健康薬剤、またはツクシメナモミ(siegesbeckia Orientalis)抽出物(Darutoside)など、妊娠線の処置のための薬剤、およびペプチドなど、少なくとも1つの活性薬剤のうちの1つまたは複数を含むエマルジョンまたはクリームまたはラブでありうる。
【0353】
(実施例9)
実施例9における以下の組成物は、エマルジョンまたはクリームの例である。実施形態では、エマルジョンまたはクリームは、抗妊娠線クリームである。
【0354】
【0355】
活性剤は、Darutoside(ツクシメナモミ抽出物)でありうる。Darutosideとは、妊娠線の処置のために、SEDERMAにより販売されている分子である。Darutosideを、筋肉健康、発生、または回復の一助となる、任意の薬剤など、任意の活性薬剤で置きかえうることが理解されるであろう。
【0356】
このエマルジョンまたはラブは、以下の方式で調製する:相A:Ultrez 10(カルボマー)を、水中に分散させ、これを、20分間にわたり膨潤させ、次いで、相Bを添加し、75℃へと加熱する。相Cを、別個に、75℃へと加熱する。2つの相を、攪拌下で混合し、ホモジナイズし、相Dを添加し、相Eで中和し、30℃に達するまで冷却し、次いで、相Fおよび相Gを添加し、NaOHにより、pHを、-6へと調整する。
【0357】
本発明の実施形態では、組成物は、エマルジョン、クリーム、またはゲル、好ましくは、水、Ultrez 10などのカルボマー、グリセリンなどの糖アルコール、フェノーバ(フェノキシエタノールおよび混合パラベン)などのアルコール、ポリソルベート20および/またはソルビン酸カリウムなどのソルベート、アクリレート(C10~30アルキルアクリレート)などのポリマー性乳化剤、シクロメチコンなどのシロキサン、水酸化ナトリウム、ペプチド、ならびに筋肉健康、回復、もしくは発生のための薬剤、またはチガヤ(Imperata Cylindrica)(根)抽出物を、水、グリセリン、PEG-8、およびカルボマーを含む薬剤(MOIST 24)などの適切な保湿剤など、少なくとも1つの薬剤のうちの1つまたは複数を含むゲルでありうる。実施形態では、ゲルは、保湿ゲルである。
【0358】
(実施例10)
実施例10における以下の組成物は、ゲルの例である。実施形態では、ゲルは、保湿ゲルである。
【0359】
【0360】
(実施例11)
この製剤は、実施例11で一般に概括される手順に従い作ることができる。
【0361】
有効成分は、MOIST-24(登録商標)[チガヤ(根)抽出物(および)水(および)グリセリン(および)PEG-8(および)カルボマー]でありうる。任意の薬剤を使用して、MOIST-24を置きかえうることが理解されるであろう。例えば、筋肉健康、発生、または回復の一助となる、任意の薬剤である。
【0362】
本発明の実施形態では、組成物は、水、Ultrez 10などのカルボマー、ポリソルベート20、ポリソルベート60、および/またはソルビン酸カリウムなどのソルベート、フェノーバ(フェノキシエタノールおよび混合パラベン)、ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、ラノリンアルコール、および/またはセテアリルアルコールなどのアルコール、ステアリン酸ソルビタン、ジメチコーンなどのポリジメチルシロキサン、イソノナン酸イソトリデシル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セチルエステル、水酸化ナトリウム、水、筋肉健康、回復、および/もしくは発生のための薬剤、またはブチレングリコール、水、ラウレス3、ヒドロキシエチルセルロース、およびアセチル-ジペプチド-1-セチルエステルを含む薬剤(CALMOSENSINE(登録商標))などのアンチエイジング剤のうちの1つまたは複数を含むエマルジョン、クリーム、またはラブでありうる。
【0363】
実施例11における以下の組成物は、クリームまたはラブの例である。
【0364】
【0365】
この製剤は、実施例9で一般に概括される手順に従い作ることができる。有効成分は、CALMOSENSINE(登録商標)[ブチレングリコール(および)水(および)Laureth-3(および)ヒドロキシエチルセルロース(および)アセチル-ジペプチド-1-セチルエステル]でありうる。Calmosensine(登録商標)とは、SEDERMAにより提供されている鎮痛剤ペプチド(1998年2月26日の国際公開第98/07744号パンフレット)である。任意の薬剤を使用して、CALMOSENSINEを置きかえうることが理解されるであろう。例えば、筋肉健康、発生、または回復の一助となる、任意の薬剤である。
【0366】
本発明の実施形態では、組成物は、水、Ultrez 10などのカルボマー、グリセリンなどの糖アルコール、ソルビン酸カリウムなどのソルベート、Steareth 10などのステアレス、脂肪アルコールもしくはリン酸、またはセテアリルアルコール、リン酸ジセチル、およびリン酸Cereth 10、またはこれらの組合せなど、脂肪アルコールとリン酸との混合物、ジコハク酸エチルヘキシル、混合パラベン、ステアリン酸ソルビタン、水酸化ナトリウム、水、ペプチド、ならびに筋肉健康、回復、および/もしくは発生のための薬剤、またはムササキツメクサ(Trifolium Pratense)(クローバー)花弁抽出物(および)グリセリン(および)ブチレングリコール(および)レシチンを含む薬剤(TEROCARE(登録商標))など、成熟皮膚のための薬剤などの活性薬剤のうちの1つまたは複数を含むエマルジョン、クリーム、またはラブでありうる。
【0367】
(実施例12)
実施例12における以下の組成物は、クリームまたはラブの例である。
【0368】
【0369】
この製剤は、実施例9で一般に概括される手順に従い作ることができる。活性剤は、STEROCARE(商標)[ムササキツメクサ(クローバー)花弁抽出物(および)グリセリン(および)ブチレングリコール(および)レシチン]でありうる。Sterocare(登録商標)は、SEDERMAにより、成熟皮膚のための有効成分として提供されている(2000年4月14日の仏国特許出願公開第2769502号明細書、1999年4月22日の国際公開第99/18927号パンフレット)。任意の薬剤を使用して、STEROCARE(登録商標)を置きかえうることが理解されるであろう。例えば、筋肉健康、発生、または回復の一助となる、任意の薬剤である。
【0370】
(実施例13)
実施例13における以下の組成物は、ラブまたはトニックの例である。
【0371】
【0372】
(実施例14)
実施例14における以下の組成物は、クリームまたはラブの例である。
【0373】
【0374】
剤は、デフェロキサミンおよび/またはベルベリンでありうる。これらは、皮膚肥厚剤として使用される。デフェロキサミンおよびベルベリンは、筋肉健康、回復、および発生のための薬剤など、別の活性薬剤で置きかえることができる。
【0375】
(実施例15)
実施例15における以下の組成物は、ゲルまたはラブの例である。
【0376】
【0377】
このゲルは、以下の方式で調製することができる:パートBをホモジナイズし、パートAへと注ぐ。パート(A+B)を、75℃へと加熱する。パートCおよびパートDを、75℃へと加熱する。パートCを、らせん状に攪拌しながら、パート(A+B)へと注ぎ、次いで、パートDを、パート(A+B+C)へと注ぐ。パートFおよびパートEを添加する。パートGを、約35℃で注ぐ。
【0378】
活性剤は、ルチンおよび/またはボーマン-バーク阻害剤(BBI)でありうる。これらの薬剤は、組織再生のために使用される。ルチンおよびボーマン-バーク阻害剤(BBI)は、筋肉健康、回復、および発生のための薬剤など、別の活性薬剤で置きかえることができる。
【0379】
(実施例16)
ピューロマイシンELISA
研究の説明
ピューロマイシンは、細菌ストレプトマイセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)により産生される、アミノヌクレオシド抗生剤である。それは、アミノアシル転移RNAの構造的類似体であり、したがって、ペプチド結合の形成を介して、伸長しつつあるペプチド鎖へと組み込まれうる。しかしながら、アミノアシルtRNAが、加水分解可能なエステル結合を含有するのに対し、ピューロマイシンは、同等な位置にこれを有さない。したがって、ピューロマイシンの、成長しつつあるペプチド鎖への結合は、次のアミノアシルtRNAにより新たなペプチド結合が形成されることを妨げる。帰結として、ピューロマイシン結合は、ペプチド伸長の終結を結果としてもたらし、ピューロマイシンが結合して切断されたペプチドのリボソームからの放出をもたらす。極めて高濃度では、ピューロマイシンは、翻訳の伸長期を、有効に遮断し、したがって、タンパク質合成を阻害する。しかしながら、極めて低濃度では、全体的な翻訳速度を抑制せず、ピューロマイシンで標識化されたペプチドが形成される速度は、全体的なタンパク質合成速度を反映する。この後者の特性は、ピューロマイシンを、タンパク質合成速度の変化を測定するための潜在的なツールとする。
【0380】
方法
1.ウェル1つ当たり100μlずつのコーティング緩衝液を、96ウェルELISAプレート内の、要求された数のウェルに分注する。タンパク質抽出物を、5μg/μlへと希釈および混合する(試料を入れる同じ緩衝液中で)。直ちに、ウェル1つ当たり1μLずつを、プレートに分注する。
2.プレートを、4℃で、16~24時間にわたりインキュベートする。
3.内容物を、強く振盪する。200μlのPBSにより、1回にわたり洗浄する。
4.200μlのブロッキング液(PBS中の5%BSA)を添加する。室温で、4~6時間にわたりインキュベートする。
5.ピューロマイシン抗体を、ブロッキング液中で希釈し、4℃で、一晩にわたりインキュベートする。
8.200μlのPBSにより、2回にわたり洗浄する。
9.ブロッキング液中、1:1000に希釈された二次抗体100μlを添加する。室温で、1時間にわたりインキュベートする。
10.200μlのPBSにより、4回にわたり洗浄する。内容物を、強く振盪する。
11.100μlのTMB基質を添加し、15~20分間にわたりインキュベートする。
12.停止液を添加し、プレートを、450nmで読み取る。
【0381】
【0382】
(実施例17)
毒性
方法
100μlのHSkMC細胞を、コラーゲンでプレコーティングされた96ウェルプレート内、ウェル1つ当たりの細胞1×104個の濃度で播種した。細胞を、37℃、5%CO2で、一晩にわたり接着させ、翌日、増殖培地を、100μlの細胞分化培地で置きかえ、37℃、5%CO2のインキュベーターへと戻した。HSkMC細胞が筋管へと完全に分化するまで、6日間にわたり、2日ごとに、細胞分化培地を交換した。7日目に、細胞分化培地を、100μlの基礎培地で置きかえ、37℃、5%CO2で、一晩にわたり飢餓させた。
【0383】
MTTアッセイの当日、飢餓培地を除去し、配列番号1のペプチドを含有する基礎培地100μlで置きかえた。細胞を、この処置中、37℃、5%CO
2で、20分間にわたりインキュベートし、この時点で、処置培地を除去し、110μlのMTT液で置きかえ、37℃、5%CO
2で、2時間にわたりインキュベートした。このインキュベーションステップの後、MTT液を除去し、110μlのDMSOで置きかえた。プレートを、スズ箔で覆い、室温で、5分間にわたり、シェーカー内に入れた。570nmに設定された分光光度計(SpectraMax M3、Molecular devices、Sunnyvale、CA 94089 USA)を使用して、プレートを読み取り、配列番号1のペプチドの細胞傷害作用を、試料の光学濃度に基づき評価した。結果を、
図11により例示する。
【0384】
(実施例18)
この実験のセットは、配列番号1のペプチドの作用機構を理解するために企図された。
【0385】
ホスホアセチルCoA
方法
ホスホアセチルCoAカルボキシラーゼ(Ser79)サンドイッチELISAキットは、Ser79においてリン酸化された場合のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)の内因性レベルを検出する、固相サンドイッチ酵素免疫測定アッセイ(ELISA)である。ホスホACC(Ser79)ウサギ抗体を、マイクロウェルへとコーティングした。細胞溶解物を伴うインキュベーションの後、ホスホACCタンパク質を、コーティングされた抗体により捕捉した。十分な洗浄の後、ACCマウス検出mAbを添加して、捕捉されたACCタンパク質を検出した。次いで、抗マウスIgG HRP連結抗体を使用して、結合した検出抗体を認識した。HRP基質であるTMBを添加して、発色させた。発色についての吸光度の大きさは、Ser79でリン酸化されたACCの数量と比例した。これらの結果を、
図12により例示する。
【0386】
アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)は、アセチル-CoAの、マロニルCoAへのカルボキシル化を触媒する。それは、脂肪酸の生合成および酸化において、鍵となる酵素である。齧歯動物では、265kDaのACC1(ACCα)形態は、脂質合成組織内で主に発現するが、280kDaのACC2(ACCβ)は、酸化組織内の主要なアイソフォームである。しかしながら、ヒトでは、脂質合成組織および酸化組織のいずれにおいても、ACC2が優勢なアイソフォームである。Ser79におけるAMPK、またはSer1200におけるPKAによるリン酸化は、ACCの酵素活性を阻害する。ACCは、抗肥満薬の潜在的な標的である。
【0387】
ホスホAkt1
方法
ホスホAkt1(Ser473)サンドイッチELISAキットは、ホスホAkt1(Ser473)タンパク質の内因性レベルを検出する、固相サンドイッチ酵素免疫測定アッセイ(ELISA)である。ホスホAkt(Ser473)ウサギmAbを、マイクロウェルへとコーティングした。細胞溶解物を伴うインキュベーションの後、ホスホAkt(Ser473)タンパク質を、コーティングされた抗体により捕捉した。十分な洗浄の後、Akt1マウス抗体を添加して、捕捉されたホスホAkt1(Ser473)タンパク質を検出した。次いで、抗マウスIgG HRP連結抗体を使用して、結合した検出抗体を認識した。HRP基質であるTMBを添加して、発色させた。この発色についての吸光度の大きさは、ホスホAkt1(Ser473)タンパク質の数量と比例する。
【0388】
【0389】
PKBまたはRacとも称されるAktは、生存およびアポトーシスの制御において極めて重要な役割を果たす。このタンパク質キナーゼは、インスリンならびに多様な増殖および生存因子により活性化して、PI3キナーゼを伴うワートマニン感受性経路において機能する。Aktは、リン脂質結合およびThr308における、PDK1による活性化ループリン酸化、ならびにSer473中のカルボキシ末端内のリン酸化により活性化する。かつては実体が不明だった、Ser473におけるAktのリン酸化の一因となるPDK2が、rictorおよびSin1を伴うラパマイシン非感受性複合体内の、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)として同定された。Aktは、Bad、フォークヘッド型転写因子、c-Raf、およびカスパーゼ9を含む、いくつかの標的のリン酸化および不活化を介して、アポトーシスを阻害することにより、細胞生存を促進する。PTENホスファターゼは、PI3キナーゼ/Aktシグナル伝達経路の、主要な負の調節因子である。LY294002は、特異的なPI3キナーゼ阻害剤である。別の重要なAkt機能は、GSK-3αおよびβのリン酸化および不活化を介する、グリコーゲン合成の調節である。Aktは、グルコース輸送のインスリン刺激における役割もまた果たしうる。生存およびグリコーゲン合成におけるその役割に加えて、Aktは、GSK-3βに媒介されるサイクリンD1のリン酸化および分解を防止し、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p27 Kip1およびp21 Waf1/Cip1を負に調節することにより、細胞周期調節にも関与する。Aktは、raptorを含有するラパマイシン感受性複合体内のmTORを、直接リン酸化することにより、細胞増殖において、極めて重要な役割もまたを果たす。より重要なことだが、Aktは、mTOR-raptor複合体内の、mTORの阻害剤である、ツベリン(TSC2)をリン酸化し、不活化させる。
【0390】
ホスホAMPKα
方法
ホスホAMPKα(Thr172)サンドイッチELISAキットは、Thr172においてリン酸化された場合の、AMPKαの内因性レベルを検出する、固相サンドイッチ酵素免疫測定アッセイ(ELISA)である。AMPKαウサギ抗体を、マイクロウェルへとコーティングした。細胞溶解物を伴うインキュベーションの後、AMPKα(ホスホおよび非ホスホ)を、コーティングされた抗体により捕捉した。十分な洗浄の後、ホスホAMPKα(Thr172)マウス検出抗体を添加して、捕捉されたAMPKαタンパク質の、Thr172におけるリン酸化を検出した。次いで、抗マウスIgG HRP連結抗体を使用して、結合した検出抗体を認識した。HRP基質であるTMBを添加して、発色させた。この発色についての吸光度の大きさは、Thr172においてリン酸化されたAMPKαの数量と比例した。結果を、
図14により例示する。
【0391】
AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)は、酵母から植物および動物まで高度に保存され、エネルギーホメオスタシスの調節において鍵となる役割を果たす。AMPKは、それらの各々が、2つまたは3つの別個の遺伝子(α1、2;β1、2;γ1、2、3)によりコードされる、触媒性αサブユニットならびに調節的βおよびγサブユニットから構成された、ヘテロ三量体複合体である。キナーゼは、熱ショック、低酸素症、および虚血症などの細胞および環境のストレスに起因するAMP/ATP比の上昇により活性化する。アクセサリータンパク質STRADおよびMO25と関連する腫瘍抑制因子LKB1は、活性化ループ内のThr172において、AMPKαをリン酸化し、このリン酸化は、AMPK活性化に要求される。AMPKαは、Thr258およびSer485(α1について;α2についてSer491)においてもまた、リン酸化される。これらのリン酸化イベントの、上流のキナーゼおよび生物学的重要性は、未だ解明されていない。β1サブユニットは、ミリストイル化、ならびにSer24/25、Ser96、Ser101、Ser108、およびSer182を含む多部位リン酸化により翻訳後修飾される。β1サブユニットのSer108におけるリン酸化が、AMPK酵素の活性化に要求されるのに対し、Ser24/25およびSer182におけるリン酸化は、AMPK局在化に影響を及ぼす。AMPKγサブユニット内のいくつかの突然変異が同定されており、これらのうちの大半は、推定AMP/ATP結合部位(CBSまたはベイトマンドメイン)に位置する。これらの部位における突然変異は、AMPK活性の低減をもたらし、心臓または骨格筋におけるグリコーゲン蓄積を引き起こす。蓄積の証拠は、AMPKが、脂肪酸およびグリコーゲン代謝を調節するだけでなく、EF2およびTSC2/mTOR経路を介して、タンパク質合成および細胞増殖もまたモジュレートするほか、eNOS/nNOSを介して、血流もモジュレートすることを指し示す。
【0392】
結論
配列番号1の配列を伴うペプチドは、AMPK経路を介して働いている。骨格筋では、AMPKの活性化(リン酸化)は、脂肪酸酸化を促進する、リン酸化ACCをもたらす。これは、下記で記載される、骨格筋細胞内の遺伝子発現プロファイルにおいて示される通り、インスリンの経路とは、極めて異なる経路である。
【0393】
(実施例19)
遺伝子発現研究
方法
インスリンおよび配列番号1のペプチドに対して、陰性対照に対する過剰および過小な遺伝子発現を示す、上位50の遺伝子を探索した。
【0394】
容量2mlのHSkMC細胞を、コラーゲンでプレコーティングされた6cmプレート内、細胞2×105個の濃度で播種した。細胞を、37℃、5%CO2で、一晩にわたり接着させ、翌日、増殖培地を、2mlの細胞分化培地で置きかえ、37℃、5%CO2のインキュベーターへと戻した。HSkMC細胞が筋管へと完全に分化するまで、6日間にわたり、2日ごとに細胞分化培地を交換した。7日目に、細胞分化培地を、2mlの基礎培地で置きかえ、37℃、5%CO2で、一晩にわたり飢餓させた。
【0395】
実験の当日、飢餓培地を除去し、配列番号1のペプチド0.5μg/mlを含有する基礎培地2mlで置きかえた。並行して、非処置細胞を試験した。細胞を、この処置中、37℃、5%CO2で、20分間にわたりインキュベートし、この時点で、処置培地を除去し、1mlのPBS中で、細胞をこすり落とした。細胞懸濁液を、マイクロ遠心分離機内、1500rpmで、5分間にわたりペレット化させ、上清を除去した。直ちに、細胞を、液体窒素中でフラッシュ冷凍し、CROに発送するまでの保存のために、-80℃の冷凍庫へと移した。
【0396】
遺伝子発現を決定するため、Agilent Single Color実験は、Agilent G2565CAマイクロアレイスキャナーシステムを使用して、Elda Biotechにより実施された。RNAを、細胞から抽出し、次いで、Agilent Human Gene Expression Microarrayへとハイブリダイズさせた。以下のキット:Qiagen Rneasy、Agilent RNA 6000 Nano、Lowlnput QuickAmp labeling、RNA Spike In(単色)、Hi RPM GE Hybridisation Kit Large、Gene Expression Wash Packを使用した。実験は、SurePrint G3 Human Gene Expression v3 8x60Kマイクロアレイを使用した。各試料は、三連であった。試料は、RNA品質検査および数量検査に合格した。後続のデータ解析は、Bioconductorパッケージ「limma」を使用して実施した。
【0397】
normexp法および50のオフセットにより、強度生データをバックグラウンド補正し、四分位数正規化を施す結果として、log 2による発現尺度をもたらした。ComBatを使用して、主成分分析により明らかにされる複製数により、バッチ-効果補正を適用して、分離のための調整を行った。次いで、経験的ベイズ解析を適用した。示差的発現は、非処置試料との比較に基づき計算し、モデレートt統計を使用して評価した。複数の試験について補正するため、結果として得られるp値を、BenjaminiおよびHochberg法を使用して補正した。示差的発現は、0.05の調整p値閾値下では検出されなかった。代わりに、0.001の生p値閾値を使用した。1.3を超える絶対倍数変化値を有する遺伝子を、以下のリストに示す。
【0398】
有意に上方調節および下方調節された遺伝子のリスト、ならびにそれらの倍数変化(マイクロアレイ遺伝子発現)
【0399】
インスリン処置に対して上方調節された遺伝子:
ABCA9、ACIN1、ADAP2、AKIRIN2、ALG3、AMN、ANKS3、ANP32A-IT1、ARGLU1、ARHGEF35、ARPC5L、ASAP1-IT1、ATP5H、ATP8、AURKAPS1、BMS1P6、BOD1L1、BRD3、BROX、C12orf65、C14orf169、C20orf96、C21orf59、C4orf33、C5orf24、C5orf58、C6orf47、CACNA1A、CASC15、CATSPER2P1、CBX5、CCDC102B、CCNL1、CCNT2-AS1、CD86、CDK11B、CENPC、CFAP36、CHD3、CIAO1、CLASRP、CMTM8、COPG2IT1、CRHR1-IT1、CWC22、DKFZP586B0319、DKFZp686M1136、DPP9-AS1、DRAP1、DRD4、DYX1C1、EIF4G3、EIF5、EPSTI1、EXOC1、FAM127C、FAM155A-IT1、FAM173A、FAM212A、FAM71F1、FASTKD1、FIP1L1、FLJ11292、FLJ13773、FTSJ3、GABPB1-AS1、GADD45B、GATA2、GBP2、GOLGA2P6、GOLGA6L4、GPATCH11、GPR135、GRIN2D、GSK3A、HEBP2、HMGB1、HMGB3P1、HNRNPA1L2、HOXB-AS1、HOXC9、HOXD8、ID1、IER2、IFI44、IFT172、IGF1R、IGF2BP2、KANK3、KCTD3、KIAAI654、K1Z、KLF17、KRTAP19-2、KRTAP4-11、LDHAL6A、LINC00083、LINC00504、LRRC37A2、MALAT1、MAP3K10、MAP3K3、MBNL1、MIDN、MIR22HG、MIR612、MPV17L2、MRE11A、MTA2、MYO1C、MZF1、NAMPT、NBPF8、ND4L、NF1P2、NIPBL、NOL8、NOP58、NPIPB5、NR2C1、OLA1、PAK1IP1、PCDHGA2、PDCD6IP、PDGFRB、PFDN4、PGBD2、PGF、PGM5P2、PMAIP1、PNPLA8、POU2F1、PP12719、PPIG、PPP6R1、PRKAG2、PRO2852、PRPF40A、PRR4、PSMA4、PTMA、RALBP1、RC3H2、RCC1、REP15、RHOB、RN7SL1、ROM1、RPLP1、RPS6KC1、SAMD11、SFSWAP、SH3KBP1、SLC25A34、SLFN5、SMARCC1、SMCR6、SMIM11、SNAI1、SNAR-A3、SNAR-B2、SNAR-D、SNAR-F、SNAR-G2、SNAR-H、SNHG9、SNORA10、SNORD97、SNORD99、SOCS3、SOX8、SRP19、SRSF11、SSC5D、STAR、TAB2、TAF3、TCEAL7、TCF7L1、TFPI2、THOC2、TINAGL1、TNFAIP8L1、TOPORS、TRANK1、TRAPPC10、TXLNG、UBE2Q2P1、UBN2、VASP、VHL、VPS37D、YBX3、ZBTB2、ZCCHC17、ZMYND11、ZNF503-AS2、ZSWIM4、ZSWIM6
【0400】
インスリン処置に対して下方調節された遺伝子:
ABHD2、ACTA2、ACVR1、ADAMTS9、ADCY6、ADD3、ADPRHL2、AGTRAP、ALAD、AMZ2P1、ANXA2P1、AP2B1、ARMCX6、ATP5A1、ATP5B、ATP5G1、ATP6V0E1、ATRAID、AXL、BFAR、BOD1、BRF2、C1orf43、C5orf15、C9orf78、CA12、CAV1、CD47、CD82、CD9、CDC123、CDC42BPA、CDC42EP4、CHST14、CHST3、CHSY3、CLMP、CLPTM1L、CLU、CNPPD1、COLGALT1、COPG1、COPZ2、CRISPLD2、CRTC3、CSRP1、CTSLP8、CYB5D2、CYB5R1、DAG1、DANCR、DEK、DENND4C、DFNA5、DHRS1、DLST、DNAJB9、DNASE1L1、DNASE2、DPAGT1、EBF2、EI24、EIF2B4、EIF3I、EIF3K、EIF3L、EMC3、ENDOD1、ENO2、ENPP4、EPRS、ESYT1、ESYT2、EXT1、EZH1、FAF1、FAM57A、FAM96A、FAS、FHOD1、FKBP14、FLII、FLNB、FN3KRP、G6PD、GABARAP、GALM、GARS、GBA、GBAP1、GDE1、GJA1、GOLM1、GPRC5A、GPX3、GREM1、GSTM2、HDDC2、HEPH、HEXB、HLA-A、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB4、HOOK2、HTRA2、IDH1、IDS、IFIT3、IGF2R、IGFBP6、IL10RB、IL11RA、ILK、ITGA3、ITGAE、JKAMP、KIF3B、KLHDC2、LAMA2、LAPTM4B、LASP1、LUM、MAGED1、MAN2A1、MAN2B2、MANBA、MANSC1、MAP2K1、MFSD5、MKNK1、MLEC、MMGT1、MPHOSPH8、MRPL17、MRPL37、MRPS18A、MTFR1L、MTHFD1L、MUL1、MYD88、NBAS、NDRG1、NDUFA9、NIF3L1、NLRP1、NME6、NPC1、NSMCE1、NUDT2、OAT、OLFML3、OXA1L、P4HA2、P4HTM、PAMR1、PARP6、PCYOX1、PDE6D、PDLIM1、PDXP、PEA15、PEAR1、PEF1、PELO、PGAM1、PGM1、PGRMC1、PHB2、PIGH、PLEKHG4、PLP2、PLS3、PPAP2B、PPIAL4B、PPL、PRKAB1、PRMT5、PRNP、PRPF8、PRPS1、PRRC1、PSAP、PSMB8、PSMD10、PTGS1、QSOX2、RAB11FIP5、RAF1、RARG、RBM23、RER1、RHBDD2、RP9、RPL29P2、RPL5、RPRD1B、RPUSD4、RTCB、SCAMP2、SCG2、SDC4、SDHB、SEC22C、SEC23A、SEC63、SENP3、SEP15、SERINC1、SERINC3、SF3B2、SFXN3、SGCE、SIAE、SLBP、SLC12A4、SLC1A1、SLC35B1、SLC35E2、SLC35E3、SLC39A1、SLC39A7、SMPD1、SNORA70F、SNX11、SNX19、SPPL2A、SPRED2、SRPR、STAU1、STEAP1B、STIM1、STK38、STX18、SYPL1、SYT11、TAF11、TAPBPL、TBC1D22B、TCN2、TCTA、TES、TFG、TFRC、TGFB3、TM7SF2、TM9SF1、TMBIM1、TMCO1、TMCO3、TMED10、TMEM138、TMEM179B、TMEM185A、TMEM216、TMEM50A、TNS1、TNS3、TPI1P2、TRAM2、TRIM16L、TSPAN9、TUB、TUBA1A、UBAC2、UBE2E3、UNC50、USO1、USP24、VCL、VOPP1、VPS25、VPS33B、WAS、WBP1、WNT5B、ZCCHC24、ZFP91、ZMAT3、ZMYM6NB、ZNF384、ZNF667-AS1
【0401】
配列番号1処置に対して上方調節された遺伝子
ACAA2、ACSL1、ACVR1、ADAR、ADD3、ADIPOR2、ADPRM、AGTR1、AKR1B10、AKR1B15、ALAD、ALG14、AMZ2、AMZ2P1、ANKHD1、APOL6、ASCC1、ASH2L、ATF5、ATG3、ATP5A1、ATP5C1、ATP5J2、ATP6V0E1、ATP6V1B2、ATXN7L3B、B2M、B4GALT5、BBS4、BIRC5、BLMH、BOD1、BRK1、BST1、BTF3、C11orf73、C16orf58、C17orf62、C19orf52、C1orf43、C4orf3、C5orf15、C5orf58、C7orf25、C8orf33、CALM1、CCNB1IP1、CCNG2、CD47、CDCA8、CFDP1、CHAMP1、CHCHD3、CHURC1、CISD3、CKAP5、CLMP、CLTA、COA1、COG3、COG8、COPS8、COX14、CPD、CSTF1、CSTF2T、CTCF、CYB5R3、CYCS、CYTB、DCTN6、DCTPP1、DDX21、DDX5、DDX60、DECR1、DERL1、DFNA5、DHX15、DHX32、DRG1、DSTYK、EFNB3、EMCN、EMG1、ENDOD1、ENPP2、ERICH1、ETFA、EZH1、F8A2、FAM96A、FH、FOS、FOSB、FUCA2、FUNDC2、GABARAPL2、GADD45B、GALNT15、GAS1、GATS、GBF1、GBP1、GDE1、GGA3、GJA1、GLB1、GLUL、GOLM1、GPR89B、GRAMD3、GSTA4、GTF2E2、H2AFZ、HES1、HEXB、HIBADH、HIST1H4F、HIST2H2AA4、HMGN3、HMGN4、HNRNPM、HOOK2、HSPB8、IDH1、IER3、IFI44L、IFIT1、IFT88、IMMP2L、IMPA2、INTS12、KAT7、KCTD10、KDELR3、KIAA0196、KIF2C、KIFAP3、KLF10、KLHL18、LAP3、LAPTM4B、LDHA、LDLR、LETMD1、LMAN2L、LMO4、LOXL4、LRP10、LSM1、LTBP2、LYPD6B、LYSMD2、MAD2L1BP、MANBA、MAT2A、MCL1、MEDAG、MFAP1、MIF-AS1、MIOS、MKKS、MMGT1、MRFAP1、MROH5、MRPL20、MRPL33、MYD88、NDN、NDRG1、NDUFV2、NKAP、NOLC1、NT5C3B、NT5E、OAS1、OAT、OAZ2、ODF3L2、OLFML1、OLFML2B、OSBP、OSTC、OTUD1、OXCT1、PAIP2、PARL、PARP9、PATL1、PCED1A、PDE1A、PEAR1、PELO、PFKL、PFKM、PGAM1、PGK1、PGM1、PIGH、PLEKHJ1、POGK、POLD2、POLR2B、POLR3F、PPA2、PPAP2B、PPAPDC2、PPL、PPP2CB、PPP2R2A、PQLC2L、PRC1、PRDM4、PSMA2、PSMA5、PSMD10、PSME4、PTGS1、PTP4A1、PTTG2、RAB31、RAB32、RAB9BP1、RABEP1、RAC1、RASL11B、RCN1、RHOA、RIOK1、RNASEL、RNF121、RNF146、RNLS、RPA2、RPL15、RPL21P44、RPP38、RTCB、SEC22C、SEC23IP、SENP2、SEP15、SERP2、SERTAD4、SETX、SFRP1、SFT2D1、SGCE、SIAE、SLBP、SLC25A12、SLC25A25、SLC30A9、SLC35B1、SLC44A1、SLC9A3R1、SMAD7、SMIM19、SNAPC5、SNHG3、SNORD116-19、SNORD96A、SNX19、SRRD、SRSF2、STARD7、STK16、STOM、STOML2、SUCLA2、SUCLG1、SYNGR4、SYT11、TASP1、TCP1、TFRC、TGFBR2、TIMM17A、TIMMDC1、TINF2、TMCO1、TMEM173、TMEM203、TMEM230、TMEM50A、TMEM50B、TMEM60、TMX2、TNC、TNS3、TOMM22、TOR1A、TOR3A、TP53I3、TPBG、TPI1、TRIB1、TRIL、TUBB3、TUG1、TUSC3、UBE2C、UBE2E3、UBE2L3、UGCG、UNC119、UQCRFS1、USP18、USP24、USP34、VAMP7、VDAC3、VIM-AS1、VOPP1、WARS、WDR36、WDR48、WDR61、WDYHV1、WLS、WRB、XPNPEP1、XRCC6BP1、YIPF6、ZFP91、ZMAT2、ZNF157、ZNF281、ZNF384、ZNF426、ZNF564、ZNF696、ZNF75D、ZSCAN32
【0402】
配列番号1処置に対して下方調節された遺伝子
ABLIM1、ACTR2、ADAM20、AHSA2、ALDH1L2、AMN、APC、APOLD1、ARGLU1、ARPC5、ASAP1-IT1、ATXN2、ATXN3、AURKAPS1、BCL2L11、BCLAF1、BRD1、BTG3、C14orf169、C1QTNF5、C20orf141、C20orf96、C5orf28、C6orf203、CACNA2D1、CCDC102B、CCDC125、CCDC6、CCNG1、CCNL1、CD46、CEACAM19、CENPC、CHML、CIRBP、CN2、COL1A1、COL4A1、CRYBG3、CWC22、DDX3X、DEND4B、DHRS3、DIAPH2、DLG1、DNAJB4、DNAJC3、DOCK6、DPEP3、DSE、DST、DYNLT3、DZIP3、EDIL3、EGLN1、EIF4G3、ELF2、ELP2、EPC1、FAM111A、FAM177A1、FBXO32、FERMT2、FGF7、FNIP1、FOSL2、FOXN2、FRYL、GABPB1-AS1、GABRE、GLS、GOLGA6L4、GOLGA8R、GOLIM4、GPATCH11、GPR135、GTF2H5、HCG11、HCG18、HIF1A、HNRNPA1、HOOK3、HOXC6、HSP90AA1、HSP90AA2P、HSPA1B、HSPA4、HSPH1、HTT、IGF2R、ITGB3、JMJD4、KCNMB2-AS1、KCTD3、KDM2A、KIAA1143、KIZ、KRAS、KRT8P12、LCE1D、LINC01506、LOX、LPGAT1、LPP、LRP12、LRRC3C、MACF1、MAMDC2、MAP1B、MAP2K3、MAP3K10、MATR3、MBNL1、MBTPS2、MDM2、MDM4、MED15、METTL15、MGC24103、MUSTN1、MYH3、MYH8、MYLPF、MYO6、MZF1、NAB1、NADK、NADK2、NBEAL1、NCKAP5、ND6、NEK7、NKTR、NR2C1、NRN1、OFD1、PAPOLA、PAWR、PAXBP1、PBRM1、PCDHGA2、PDE1C、PDZD8、PEAK1、PFDN2、PGBD2、PHF1、PJA2、PLOD3、POLR2J2、PPME1、PPP1R14A、PPP1R16B、PPP1R2、PPP1R3B、PRO2852、PRPF40A、PRUNE2、PTPN11、PUM2、PXK、RAB12、RAB2A、RBM10、RCN2、REEP3、REST、RHOBTB3、RHOQ、RIOK3、RNF19B、RNF215、RNPC3、ROBO1、ROCK1、RPL26L1、SAMD14、SDPR、SEPT7P2、SERP1、SFSWAP、SGIP1、SH3KBP1、SKI、SLC35A5、SLC46A3、SLC7A5、SMARCC1、SMARCC2、SMN1、SNAR-H、SNORA16A、SNORD89、SOX6、SPHAR、SREK1、SRSF11、STT3B、STX2、TAB2、TFPI、THBS1、THOC2、TINAGL1、TMA16、TMEM106C、TMEM26-AS1、TNFAIP8、TOB1、TTC28、TXLNG、UBE2D1、UBE2Q2P1、UBL3、UCHL5、UPF2、UPF3A、USP15、USP33、UTRN、UVSSA、WHAMMP1、WNT3、YBX3、YWHAZ、ZBTB2、ZFC3H1、ZMYND11、ZNF22、ZNF37A、ZNF429、ZNF525、ZNF532、ZNF626、ZRANB2、ZSWIM8
【0403】
(実施例20)
プロテオミクス
方法
LC/MS/MSを使用して、タンパク質レベルを得た。タンパク質カウントに関する統計学的解析は、存在度が過小なタンパク質および存在度が過大なタンパク質をもたらした。0.379を超える、絶対タンパク質レベル倍数変化値だけを保持した。これらのタンパク質全てについて、マイクロアレイ解析により、関連する転写物倍数変化を提示する。
【0404】
質量分析は、MSBioworksにより実施された。超音波処理により、細胞ペレットを、100μLの修飾RIPA緩衝液中で溶解させた。定量化は、Qubit蛍光法を使用して実施した。各試料20μgずつを、MOPS緩衝液を使用する、4~12%ビス-トリス-勾配ゲル上で分離した。ゲルを、クーマシーで染色し、各レーンを、20の等サイズのセグメントへと切り出した。
【0405】
ゲル小片は、以下のプロトコールにより、ロボット(ProGest、DigiLab)を使用して加工した:
・25mMの重炭酸アンモニウムに続き、アセトニトリルで洗浄した。
・60℃、10mMのジチオトレイトールで還元した後、RTにおいて、50mMのヨードアセトアミドによるアルキル化を行った。
・トリプシン(Promega)により、37℃で、4時間にわたり消化した。
・ギ酸でクエンチし、さらに加工せずに、上清を直接解析した。
【0406】
消化物は、ThermoFisher Q Exactiveにインターフェース接続された、Waters NanoAcquity HPLCシステムを伴うナノLC/MS/MSにより解析した。ペプチドを、捕捉カラムにロードし、350nL/分で、75μmの解析カラム上で溶出させた。両カラムには、Luna CI 8樹脂(Phenomenex)を充填した。30分間の勾配を利用した(試料1例当たり、のべ10時間)。質量分析計は、データ依存モードで作動させ、MSおよびMS/MSを、それぞれ、70,000FWHMおよび17,500FWHMの分解能で、Orbitrapにより実施した。15の最も存在量が多いイオンを、MS/MSのために選択した。データは、以下のパラメータにより、Mascotのローカルコピーを使用して検索した:
酵素:トリプシン;データベース:Swissprot Human(一般的な夾雑配列を付加したフォワードおよびリバース);固定修飾:カルバミドメチル(C);可変修飾:酸化(M)、アセチル(タンパク質N末端)、Pyro-Glu(N末端Q)、脱アミド化(NQ);質量値:モノアイソトピック
ペプチド質量許容差:10ppm;断片質量許容差:0.02Da;最大誤切断:2
検証、フィルタリング、および試料1例当たりの非冗長リストの作成のために、Mascot DATファイルを、Scafoldソフトウェアへと送った。データは、フィルタリングされた1%のタンパク質およびペプチドレベルfalse discovery rate(FDR)であり、タンパク質1つ当たり、少なくとも2つの固有のペプチドを要求した。次いで、上方調節および下方調節されたタンパク質を推定した。
【0407】
質量分析
消化物は、ThermoFisher Q Exactiveへとインターフェース接続された、Waters NanoAcquity HPLCシステムを伴うナノLC/MS/MSにより解析した。ペプチドを、捕捉カラムにロードし、350nL/分で、75μmの解析カラム上で溶出させたが、いずれのカラムにも、Luna CI 8樹脂(Phenomenex)を充填した。30分間の勾配を利用した(試料1例当たり、のべ10時間)。質量分析計は、データ依存モードで作動させ、MSおよびMS/MSを、それぞれ、70,000FWHMおよび17,500FWHMの分解能で、Orbitrapにより実施した。15の最も存在量が多いイオンを、MS/MSのために選択した。
【0408】
(実施例21)
目的の特異的遺伝子についてのQPCRおよびそれらの倍数変化
実験手順
定量的PCRは、標的mRNA発現を、B2Mハウスキーピング遺伝子の発現と比べて定量化する、TaqManプローブベースの方法を使用して実施した。プライマー/プローブと、Taqman(登録商標)Gene Expression Master Mix(ABI Biosystems, CA, USA)とを含有するマスターミックスを、1μlのcDNA鋳型へと添加した。10μlの最終容量を、96ウェルLightcyclerプレート(Sarstedt, Numbrecht, Germany)のウェルへと、二連でピペッティングし、リアルタイムPCRは、Roche Lightcycler 96(Roche Diagnostics, Basal, Switzerland)リアルタイムサーマルサイクラー上で実施した。各ウェルの閾値サイクル(Ct)は、測定器ソフトウェアを使用して計算した。データ解析は、プレート上に組み入れたB2Mハウスキーピング遺伝子により正規化された生データでのΔΔCt法に基づいた。結果は、対照に対する倍数変化として表す。
【0409】
QPCR結果(処置の方法は、同じままであり、配列番号1の濃度も、0.5ug/mlのままである)
【0410】
【0411】
(実施例22)
肥満および糖尿病のマウスモデルにおける、合成ペプチド(配列番号1)の、血中グルコース管理に対する効果の探索
実験手順
動物記載:
・種:KK.Cg-Ay/J(KKAYマウス)
・供給元:Jackson Laboratories
・週齢:12週齢
・性別:雄
・無作為化:ベースライン空腹時血糖に基づく
【0412】
飼育および給餌:
・馴致:5日間以上
・飼育:マウスは、12時間明暗周期で飼育される
:サイズに応じて、ケージ1つ当たりのマウス4匹以下とする
:有換気のケージラックシステム
・飼料:標準的な齧歯動物食および水(不断供給(ad libitum))
【0413】
デザイン:
・投与経路:皮下注射
・投与容量:10mL/kg
・用量レベル:被験薬:100μM/kg、メトホルミン:250mg/kg
・群1つ当たりの数:10
・動物の合計数:30
【0414】
【0415】
KKAYマウスにおける経口耐糖能試験
OGTTでは、30分前に、ベースライングルコースおよびインスリンについて、マウスから採血した(ベースライン)。この直後に、被験薬投与を行った。30分間後、すなわち、0分において、全てのマウスに、強制経口投与を介して、グルコース溶液(2g/kg)を投与した。グルコース追加投与の後、血中グルコースレベルを、下記のスケジュールに従い測定した。
【0416】
【0417】
結果を、
図18から20に例示する。
図18は、配列番号1のペプチドによる、5日間にわたる処置の後における、KKAYマウスの空腹時血中グルコースを例示する。
図19は、ペプチド配列番号1による、7日間にわたる処置の後における、KKAYマウスの空腹時血中グルコースを例示する。
図20は、配列番号1のペプチドによる、13日間にわたる処置の後における、KKAYマウスの体重を例示する。
【0418】
結論
配列番号1のペプチドによる処置は、7日間にわたる処置の後で、血糖を著明に低減した。配列番号1のペプチドによる処置は、多くの抗糖尿病処置のように、体重の増大を引き起こさなかった。配列番号1は、処置群における体重を、非処置群と比べて低減した。
【0419】
(実施例23)
抗酸化アッセイ(DPPHラジカル捕獲活性アッセイ)
Lin SY, Wang J, Zhao P, Pang Y, Ye HQ, Yuan Y, Liu JB and Jones G, Optimized antioxidant peptides fractions preparation and secondary structure analysis by MIR. Int J Biol Macromol 59: 151-157 (2013)に記載されている方法を使用して、DPPH試験を行った。
【0420】
DPPHラジカルを、0.1mMの最終濃度で、エタノール中に溶解させた。ペプチドおよびアスコルビン酸(陽性対照)を、脱塩水中に溶解させて、被験濃度を得た。
96ウェル-プレート内で、試料を、以下の通りに調製した:0.1mMのDPPH溶液100μL、ペプチド溶液100μL、およびエタノール100μLを、ウェルごとに混合した。
アスコルビン酸は、以下の通りに調製した:0.1mMのDPPH溶液100μL、アスコルビン酸100μL、およびエタノール100μLを、ウェルごとに混合した。
ブランクは、以下の通りに調製した:0.1mMのDPPH溶液100μL、エタノール200μLを、ウェルごとに混合した。
3つのウェルを、被験状態ごとに使用した。
【0421】
プレートを、暗所内、25℃で、30分間にわたりインキュベートした。次いで、プレートリーダーを使用して、517nmにおける吸光度を測定した。
【0422】
DPPHラジカル捕獲活性(%)は、以下:
DPPHラジカル捕獲活性(%)
=[1-(試料における吸光度/ブランクにおける吸光度)]×100
の通りに計算した。
【0423】
データは、DPPHラジカル捕獲活性の平均値の百分率±標準偏差として提示した。
【0424】
(実施例24)
炎症応答アッセイ
TNFαは、リポ多糖(LPS)などの内毒素による刺激に応答して、マクロファージにより分泌される。TNFαは、全身性炎症に関与すると考えられ、TNFα産生の調節異常は、多くの疾患に関与すると考えられる。Biolegendアッセイとは、細胞培養物上清、血清、または血漿に由来するヒトTNFαの正確な定量化のためにデザインされたサンドイッチELISAキットである。
【0425】
THP-1単球を、96ウェルプレート内の、10%ウシ胎仔血清(FCS)、1%Pen/strep、1%L-グルタミン、100nMのPMAを含有するRPMI中、ウェル1つ当たりの細胞10,000個で播種し、実験の前に、72時間にわたり分化させた。分化の後、細胞を、100ng/ml、10ng/mlまたは1ng/mlの合成ペプチドのそれぞれと共に、24時間にわたりインキュベートした。処置の後、細胞を、10ng/mlのLPSで、5時間にわたり刺激し、BiolegendアッセイELISAキットを使用して、上清中のTNFαの数量を決定した。
【0426】
結果は、非処置対照に対する百分率として計算した。光学濃度読取値の増大は、細胞培養物上清へのTNFα放出数量の増大を指し示す。全ての実験は、3つのプレート上、二連(状態1つ当たり6つのウェル)で準備した。有意性は、スチューデントのt検定(*対照と比較してp<0.05、**対照と比較してp<0.01、***対照と比較してp<0.001)を使用して計算した。
均等物
【0427】
前出の記載は、本発明の、好ましい本実施形態について詳述している。これらの記載を検討した当業者は、その実施における、多数の改変および変動に想到することが予測される。これらの改変および変動は、付属の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。