(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022325
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】信号処理装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/487 20060101AFI20230207BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20230207BHJP
【FI】
G01S7/487
G01S17/86
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197760
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2018162079の分割
【原出願日】2018-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏
(57)【要約】
【課題】レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる信号処理装置を提供する。
【解決手段】光を照射する発光部2及び対象物にて反射された光の戻り光を受光する受光部3を備えるライダ1の受光部3の受光信号を処理するマッチドフィルタ6であって、受光信号のSN比向上処理を行うフィルタ6fと、光を照射する物体100に関する情報を取得し、取得した対象物に関する情報に基づいて基準信号を生成してフィルタ6fへ出力する変更部6gと、を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する照射部及び対象物にて反射された前記光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の前記受光部の出力信号を処理する信号処理装置であって、
前記出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理部と、
前記光を照射する対象物に関する情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記対象物に関する情報に基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の前記特性のうち一の前記特性に変更する変更部と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の受光部の出力信号を処理する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検出空間にレーザ光のパルスを照射し、その反射光のレベルに基づいて、被検出空間内の対象物を検出するレーザレーダ装置(LiDAR;Light Detection and Rangingとも呼ばれる)が知られている。このようなレーザレーダ装置には、SN比(信
号対雑音比)の向上等を目的として、受光部の出力信号に対してフィルタリングを行ってノイズ低減を行うものが存在する。例えば、特許文献1には、レーザレーダ装置において、受光部の出力信号に対してマッチドフィルタを用いる点が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されているマッチドフィルタを用いる場合、マッチドフィルタに供するインパルス応答を既知として予め用意しておき、用意したインパルス応答を用いて受光部の出力信号のフィルタリングを行うが、レーザレーダ装置ごとの個体差や経年変化、温度等の環境変化などに対応できず、結果としてレーザレーダ装置の出力精度が低下するという問題が生じる。
【0004】
このような問題に対処するため、特許文献2では、射出光を反射する反射体を備え、反射体によって反射された戻り光をAPDが受光したときのAPDの出力信号に基づいて、マッチドフィルタによって利用される基準受信パルスを推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-225318号公報
【特許文献2】特開2018-9831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、実際に光を照射する対象物の特性を考慮せずに基準受信パルス(基準信号ともいう)を推定しているので、対象物の形状や照射角度等によっては基準信号が精度良く推定できず、レーザレーダ装置の出力精度が低下するという問題への対策としては不十分である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された前記光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の前記受光部の出力信号を処理する信号処理装置であって、前記出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理部と、前記光を照射する対象物に関する情報を取得する第1取得部と、前記第1取得部が取得した前記対象物に関する情報に基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の前記特性のうち一の前記特性に変更する変更部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された前記光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の前記受光部の出力信号を処理する信号処理装置であって、前記出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理部と、前記光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかを取得する第1取得部と、前記取得部が取得した前記距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかに基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の前記特性のうち一の前記特性に変更する変更部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項8に記載の発明は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された前記光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の前記受光部の出力信号を処理する信号処理装置で実行される信号処理方法あって、前記出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理工程と、前記光を照射する対象物に関する情報を取得する第1取得工程と、前記第1取得工程で取得された前記対象物に関する情報に基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の前記特性のうち一の前記特性に変更する変更工程と、を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の信号処理方法をコンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の信号処理プログラムを格納したことを特徴としている。
【0013】
請求項11に記載の発明は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された前記光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の前記受光部の出力信号を処理する信号処理装置で実行される信号処理方法あって、前記出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理工程と、前記光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかを取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかに基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の前記特性に変更する変更工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の信号処理方法をコンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0015】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の信号処理プログラムを格納したことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施例にかかる信号処理装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたマッチドフィルタの詳細構成図である。
【
図6】
図1に示されたライダの動作のフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施例にかかる信号処理装置の概略構成図である。
【
図8】
図7に示されたマッチドフィルタとローパスフィルタの詳細構成図である。
【
図10】本発明の第3の実施例にかかる信号処理装置の概略構成図である。
【
図11】
図10に示されたマッチドフィルタの詳細構成図である。
【
図12】
図10に示されたライダの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる信号処理装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる信号処理装置は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の受光部の出力信号を処理する信号処理装置であって、その出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理部と、光を照射する対象物に関する情報を取得する第1取得部と、第1取得部が取得した対象物に関する情報に基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の特性のうち一の特性に変更する変更部と、を備えている。このようにすることにより、対象物に関する情報により、光を照射する対象物に応じた特性の信号処理部に変更することができる。したがって、光を照射する対象物の特性を考慮した結果を得ることができ、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の他の実施形態にかかる信号処理装置は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の受光部の出力信号を処理する信号処理装置であって、その出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理部と、光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかを取得する第1取得部と、第1取得部が取得した距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかに基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の特性のうち一の特性に変更する変更部と、を備えている。このようにすることにより、光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかにより、光を照射する条件に応じた特性の信号処理部に変更することができる。したがって、光を照射する対象物等の特性を考慮した結果を得ることができ、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる。
【0019】
また、光を照射する対象物を含む方向の画像を撮像する撮像部からその画像を取得する第2取得部を更に備え、第1取得部は、光を照射する対象物に関する情報をその画像に基づいて取得してもよい。このようにすることにより、カメラ等の撮像部で撮像した画像から対象物の特性等を抽出することができる。したがって、光を照射する対象物に応じた特性により信号処理部の特性を変更することができる。
【0020】
また、対象物を含む地図情報を取得する第3取得部を更に備え、第1取得部は、対象物に関する情報を地図情報に基づいて取得してもよい。このようにすることにより、地図情報から対象物の特性等を抽出することができる。したがって、光を照射する対象物に応じた特性により信号処理部の特性を変更することができる。
【0021】
また、複数の基準信号の波形情報が格納された格納部を備え、複数のノイズ低減処理部は、格納部に格納された基準信号の波形情報に基づいてノイズ低減処理を行ってもよい。このようにすることにより、予め格納されている波形情報に基づいてノイズ低減処理ができるため、基準信号を生成する回路等が不要となり、処理負荷の低減や回路規模の削減を図ることができる。
【0022】
また、基準信号は、照射部が照射する照射光に基づいて、それぞれ異なる加工を施されて生成されていてもよい。このようにすることにより、照射光の信号特性が変化しても、それに応じた基準信号を生成することができる。
【0023】
また、基準信号は、それぞれ特性の異なるローパスフィルタにより生成されていてもよい。このようにすることにより、簡便なローパスフィルタにより複数の基準信号を生成することができる。
【0024】
また、本発明の一実施形態にかかる信号処理方法は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の受光部の出力信号を処理する信号処理装置で実行される信号処理方法であって、その出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理工程と、光を照射する対象物に関する情報を取得する第1取得工程と、第1取得工程で取得された対象物に関する情報に基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の特性のうち一の特性に変更する変更工程と、を含んでいる。このようにすることにより、対象物に関する情報により、光を照射する対象物に応じた特性の信号処理工程に変更することができる。したがって、光を照射する対象物の特性を考慮した結果を得ることができ、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる。
【0025】
また、本発明の一実施形態にかかる信号処理プログラムは、上述した信号処理方法を、コンピュータにより実行させている。このようにすることにより、対象物に関する情報により、コンピュータを用いて、光を照射する対象物に応じた特性のノイズ低減処理部を選択することができる。したがって、光を照射する対象物の特性を考慮した結果を選択することができ、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる。
【0026】
また、上述した信号処理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【0027】
また、本発明の他の実施形態にかかる信号処理方法は、光を照射する照射部及び対象物にて反射された光の戻り光を受光する受光部を備える光学機器の受光部の出力信号を処理する信号処理装置で実行される信号処理方法であって、その出力信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う信号処理工程と、光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかを取得する第1取得工程と、第1取得工程で取得された距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかに基づいてそれぞれ異なる基準信号に基づく複数の特性のうち一の特性に変更する変更工程と、を含んでいる。このようにすることにより、光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかにより、光を照射する条件に応じた特性の信号処理部に変更することができる。したがって、光を照射する対象物等の特性を考慮した結果を得ることができ、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる。
【0028】
また、本発明の一実施形態にかかる信号処理プログラムは、上述した信号処理方法を、コンピュータにより実行させている。このようにすることにより、光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかにより、コンピュータを用いて、光を照射する距離に関する情報及び角度に関する情報の少なくともいずれかにより、光を照射する条件に応じた特性の信号処理部に変更することができる。したがって、光を照射する対象物等の特性を考慮した結果を得ることができ、レーザレーダ装置の出力精度の低下を抑えることができる。
【0029】
また、上述した信号処理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0030】
本発明の第1の実施例にかかる信号処理装置を
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、本実施例にかかる信号処理装置を備える光学機器としてのライダの機能構成図である。ライダ1は、発光部2と、受光部3と、光学系4と、ADコンバータ(ADC)5と、マッチドフィルタ6と、制御部8と、を備えている。ライダ1は、光パルス(以下、照射光という)を照射し、対象物としての外部の物体100により反射された光パルス(以下、戻り光という)を受光することにより、物体100に関する情報を生成するレーザレーダ装置であり、LiDARとも称される。
【0031】
発光部2は、制御部8からのトリガ信号等に応じて光パルスを出力する。発光部2は、レーザダイオード(LD)と、LDを駆動するドライバ回路等を備えている。
【0032】
受光部3は、物体100からの戻り光の強度に比例した電圧信号(受光信号)を出力する。一般的に、フォトダイオードなどの光検出素子は電流出力であるため、受信部はこの電流を電圧に変換(I/V変換)して出力する。受光部3は、光検出素子としてAPD(アバランシェフォトダイオード)と、上述したI/V変換回路等を備えている。
【0033】
光学系4は、発光部2から入力される光パルスを照射光として照射方向を変えながら照射するとともに、この照射光が空間中の物体100に出会って反射あるいは散乱されることにより戻ってきた戻り光を受光部3に導く。光学系4は、回転ミラー、コリメータレンズ、集光レンズ等の光学部材を備えている。即ち、発光部2と光学系4とで、照射方向を変えながら光を照射する照射部として機能し、受光部3と光学系4とで、物体100(対象物)にて反射された光の戻り光を受光する受光部として機能する。なお、本実施例では、照射方向を変えながら光を照射するライダで説明するが、照射方向を変えないフラッシュライダ等であってもよい。
【0034】
ADコンバータ5は、受光部3から出力されたアナログ信号(受光信号)をデジタル信号に変換する周知の回路である。
【0035】
マッチドフィルタ6は、送受信するパルスの波形と同じ波形の信号に対して通過率を1とする通過特性をもつ周知のフィルタであり整合フィルタとも呼ばれる。マッチドフィルタ6は、ADコンバータ5の出力(受光信号)に対して、予め定めた基準信号を所定のインパルス応答として畳み込んで、フィルタリングを行うことで受光信号のSN比向上処理を行う。このSN比向上処理とは、例えばSN比が最大になるような処理を示す。つまり、マッチドフィルタ6が本実施例に係る信号処理装置を構成する。
【0036】
また、本実施例では、マッチドフィルタ6は、後述するようにそれぞれ異なる基準信号に基づく特性に応じた複数のフィルタを備えている。また、マッチドフィルタ6では、前記した複数のフィルタの出力のうち、最もSN比が良い出力をマッチドフィルタ6の出力として制御部8へ出力する。
【0037】
制御部8は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有するマイクロコンピュータもしくは専用のハードウェアで構成され、ライダ1の全体制御を司る。制御部8は、発光部2に対して光パルス出力を指示するトリガ信号を送出する。また、制御部8は、トリガ信号の送出タイミングとマッチドフィルタ6からの出力信号のタイミングとに基づいてライダ1から物体100までの距離を算出する。
【0038】
次に、上述した構成のマッチドフィルタ6の詳細について
図2を参照して説明する。マッチドフィルタ6は、上述したように複数のフィルタを備えている。これらのフィルタ6a~6dは、それぞれが上述した整合フィルタである。
図2では、4つのフィルタ6a~6dを備える例を示しているが、4つに限らないのは言うまでもない。
【0039】
フィルタ6a~6dは、入力される信号は同じ受光信号である。これらのフィルタ6a~6dは、それぞれ異なる基準信号をインパルス応答として畳み込む。つまり、フィルタ6a~6dは、それぞれ異なる基準信号に基づく特性を予めそれぞれ有している。なお、フィルタ6a~6dは、それぞれ専用のハードウェアから構成されるに限らず、それぞれ汎用の演算装置等のハードウェアと制御用のソフトウェアにより構成されていてもよい。つまり、フィルタ6a~6dは信号処理部として機能する。
【0040】
なお、
図2に示した構成では、フィルタ6a~6dは、それぞれ異なる基準信号に基づく特性をそれぞれ有していたが、
図3に示したように、基準信号の波形をフィルタの外部のメモリ等に格納しておいてもよい。
図3では、メモリ9a~9dにそれぞれ異なる基準信号の波形情報を格納して、フィルタ6a~6dがそれぞれ波形情報を読み出してフィルタ処理をしている。
【0041】
図4に、基準信号の例を示す。図の左側は、理想的な基準信号を示し、例えば発光部2の出力した照射光が外光の影響を受けない環境に置かれた反射特性既知の反射体より反射された戻り光を受光部3が受光した際のADコンバータ5の出力信号である。そして、その理想的な基準信号に対して例えばガウシアンフィルタ等によりフィルタリングして生成した基準信号が右側に示されている。
図3に示した基準信号は、上から順に標準偏差σが所定の実数a(a×1)のガウシアンフィルタ、標準偏差σが所定の実数a×16のガウシアンフィルタ、標準偏差σが所定の実数a×64のガウシアンフィルタ、標準偏差σが所定の実数a×128のガウシアンフィルタとなっている。なお、基準信号は、ガウシアンフィルタに限らず他のフィルタリングにより生成してもよい。
【0042】
なお、基準信号を生成する関数としては、
図4に示したような対称な分布を示すものに限らず、例えば
図5に示したような非対称な分布を示すものであってもよい。
【0043】
また、
図2に示したように、マッチドフィルタ6は、選択部6eを更に備えている。選択部6eは、フィルタ6a~6dによるフィルタリング結果のうち、最もSN比が良い結果をマッチドフィルタ6の出力として選択する。SN比は、例えばフィルタ6a~6dの入力信号である受光信号と各々のフィルタ6a~6dの出力信号に基づいて算出すればよい。即ち、選択部6eは、複数のフィルタ6a~6d(複数の特性によるSN比向上処理)により処理された結果に基づいて、一のフィルタ(一の特性によるSN比向上処理)の出力信号を選択して出力する。
【0044】
図2に示した構成のマッチドフィルタ6は、フィルタ6aでは、受光信号に対して基準信号に基づくフィルタリングを施して選択部6eへ出力する。フィルタ6b~6dも同様にしてフィルタリングを施して選択部6eへ出力する。そして、選択部6eでは、入力されたフィルタリング結果のうち、SN比の最も良い結果をマッチドフィルタ6の出力として制御部8へ出力する。
【0045】
従来のマッチドフィルタは、基準信号は1種類で全ての受光信号のフィルタリング処理に用いられていたが、ライダ1から光パルスが照射される対象物の特性や照射角度等によっては、戻り光(受光信号)の波形が発光信号とは異なる波形となる場合がある。従来のマッチドフィルタは、受光信号と発光信号が同じ波形であるという前提で設計されているため、上述したような対象物の特性や照射角度等による受光信号の波形の変形が発生すると、ライダ1の出力精度の低下を引き起こすこととなる。
【0046】
そこで、本実施例のように、それぞれ異なる基準信号によって受光信号にフィルタリングを施すことで、より適切な受光信号によるフィルタリングを施すことができる。そして、SN比が最も良い結果を選択することで、より適切な受光信号によるフィルタリング結果をマッチドフィルタ6の結果として出力することができる。
【0047】
ここで、マッチドフィルタ6の構成としては、
図2や
図3に示したように複数のフィルタ6a~6dを有する構成に限らず、1つのフィルタ等の信号処理部を時分割で利用するようにしてもよい。例えば、最初にフィルタ6aの設定による演算を行い、2番目にフィルタ6bの設定による演算を行い、3番目にフィルタ6cの設定による演算を行い、最後にフィルタ6dの設定による演算を行うといった方法でもよい。即ち、信号処理部は、複数の特性を順次変更して順次SN比向上処理を行ってもよい。このようにすると、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサで動作するプログラムとしてマッチドフィルタ6を構成することができる。
【0048】
さらには、複数のフィルタと時分割動作とを組み合わせてもよい。例えば、
図2に示したようにフィルタが4つの場合に、2つのハードウェアを用意し、それらを時分割で動作させるようにしてもよい。
【0049】
次に、上述した構成のライダ1における動作について
図6のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS11において、制御部8は、発光部2に対してトリガ信号を出力する。トリガ信号が入力された発光部2は光パルスを照射する。
【0050】
次に、ステップS12において、マッチドフィルタ6は、上述した基準信号に基づいてステップS11で照射された光パルスの戻り光の受光信号に対してフィルタ処理(フィルタリング)を施す。このステップでは、複数の基準信号を用いて複数のフィルタ処理が施される。
【0051】
次に、ステップS13において、選択部6eは、ステップS12でフィルタ処理が施された結果のうちSN比が最も良い結果を選択して制御部8へ出力する。
【0052】
次に、ステップS14において、制御部8は、ステップS11でトリガ信号を出力してからステップS13の結果が入力されるまでの時間に基づいて物体100までの距離を算出する。このようにして、一つの光パルスに対応する物体100上の一点までの距離が算出される。
【0053】
即ち、ステップS12が信号処理工程、ステップS13が選択工程として機能し、本発明の一実施例にかかる信号処理方法を構成する。また、これらの工程を上述したようなDSP等で動作するプログラムとして構成することで信号処理プログラムとすることができる。また、この信号処理プログラムは、DSP等が読み書きするメモリ等に記憶させるに限らず、光ディスクやメモリーカード等の記憶媒体に記憶させてもよい。
【0054】
本実施例によれば、照射方向を変えながら光を照射する発光部2及び物体100にて反射された光の戻り光を受光する受光部3を備えるライダ1の受光部3の受光信号を処理するマッチドフィルタ6であって、受光信号に対して所定の基準信号に基づく特性によりSN比向上処理を行う複数のフィルタ6a~6dと、複数のフィルタ6a~6dによりフィルタ処理された結果に基づいて、フィルタ6a~6dの出力信号のいずれかを選択して出力する選択部6eと、を備えている。このようにすることにより、複数のフィルタ6a~6dの結果のうち最善の結果を選択することができるため、物体100の特性を考慮した結果を得ることができ、ライダ1の出力精度の低下を抑えることができる。
【0055】
また、選択部6eは、複数のフィルタ6a~6dによりフィルタ処理された結果得られるSN比に基づいて、最も良いフィルタの出力信号を選択している。このようにすることにより、SN比の良い結果を選択することができるため、ライダ1の出力精度の低下を抑えることができる。
なお、ローパスフィルタ7a~7dも、それぞれ専用のハードウェアから構成されるに限らず、それぞれ汎用の演算装置等のハードウェアと制御用のソフトウェアによりにより構成されていてもよい。
このように、フィルタ6a~6dは、ローパスフィルタ7a~7dによりそれぞれ異なる基準信号に基づく特性を有するものとなっている。したがって、マッチドフィルタ6とローパスフィルタ7は、本実施例にかかる出力信号のSN比向上処理を行う信号処理部50として機能する。
本実施例によれば、基準信号は、それぞれ特性の異なるローパスフィルタによりそれぞれ異なる加工を施されて生成されている。このようにすることにより、簡便な構成のローパスフィルタにより複数の基準信号を生成することができる。
また、発光信号に基づいてローパスフィルタ7で基準信号が生成されているので、照射光の信号特性が変化して基準信号と乖離が発生しても、変化に対応した基準信号を生成することができる。そのため、結果的にライダ1の出力精度の低下を抑えることができる。