IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022365
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 51/30 20230101AFI20230208BHJP
【FI】
H01L27/1159
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127046
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 竜善
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FR07
5F083GA01
5F083GA09
5F083GA11
5F083GA21
5F083GA27
5F083JA02
5F083JA35
5F083JA37
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA53
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
5F083LA01
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA21
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083NA01
5F083NA03
5F083PR07
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性向上および小型化を実現する。
【解決手段】半導体装置は、平面視において第1方向Xに延在する複数のワード線と、平面視において第1方向Xに直交する第2方向Yに延在する複数のビット線と、第1方向Xおよび第2方向Yに行列状に配置された複数のメモリセルと、を備える。そして、メモリセルは、ゲート絶縁膜GIと、下層電極LEと、強誘電体膜FEと、上層電極UEと、一対の半導体領域と、を含み、平面視において、下層電極LEの第1方向Xにおける第1幅W1は、上層電極UEの第1方向Xにおける第2幅W2よりも大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する半導体基板と、
前記主面上に設けられ、平面視において第1方向に延在する複数のワード線と、
前記主面上に設けられ、平面視において前記第1方向と直交する第2方向に延在する複数のビット線と、
前記第1方向および前記第2方向に行列状に配置された複数のメモリセルと、
を備え、
前記複数のメモリセルに含まれるメモリセルは、
前記主面上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた下層電極と、
前記下層電極上に設けられた強誘電体膜と、
前記強誘電体膜上に設けられた上層電極と、
前記第2方向において、前記下層電極を挟むように設けられた一対の半導体領域と、
を含み、
前記上層電極は、前記複数のワード線に含まれる1本のワード線に接続されており、
平面視において、前記下層電極の前記第1方向における第1幅は、前記上層電極の前記第1方向における第2幅よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記1本のワード線に接続され、隣接する前記メモリセルにおいて、前記下層電極は互いに分離されており、さらに、前記上層電極は、互いに分離されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記下層電極と前記ゲート絶縁膜との第1接触面積(SI)と、前記上層電極と前記強誘電体膜との第2接触面積(SF)との面積比(SI/SF)は1よりも大きい、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記上層電極は、前記強誘電体膜上に設けられた第1上層電極と、前記第1上層電極上に設けられた第2上層電極との積層構造である、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
平面視において、前記下層電極の前記第2方向における第1長さは、前記上層電極の前記第2方向における第2長さと等しい、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
平面視において、前記下層電極の前記第2方向における第1長さは、前記上層電極の前記第2方向における第2長さよりも大きい、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記上層電極は、前記強誘電体膜上に設けられた第1上層電極と、前記第1上層電極上に設けられた第2上層電極との積層構造である、半導体装置。
【請求項8】
半導体基板の主面上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられた下層電極と、前記下層電極上に設けられた強誘電体膜と、前記強誘電体膜上に設けられた上層電極と、平面視において、前記下層電極を挟むように配置された一対の半導体領域と、を備えるメモリセルを含む半導体装置であって、
(a)半導体基板の主面上に第1絶縁膜、第1金属膜、第2絶縁膜および導体膜を順に形成する工程、
(b)前記導体膜、前記第2絶縁膜および前記第1金属膜をパターニングし、前記主面の第1方向に延在し、前記第1方向に直交する第2方向において第1長さを有する第1構造体を形成する工程、
(c)前記第1構造体をパターニングして、前記第1方向において、第1幅を有する第2構造体を形成する工程、
(d)前記第2構造体に含まれる前記導体膜にエッチング処理を施し、前記第1方向において、前記第1幅よりも小さい第2幅を有する前記導体膜を形成する工程、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記第1絶縁膜で形成され、前記下層電極は、前記第1金属膜で形成され、前記強誘電体膜は、前記第2絶縁膜で形成され、前記上層電極は、前記導体膜で形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記導体膜は、前記第2絶縁膜上に形成された第2金属膜と、前記第2金属膜上に形成された多結晶シリコン膜との積層膜であって、
前記(d)工程は、
(d1)前記第2構造体に含まれる前記多結晶シリコン膜にエッチング処理を施し、前記第1方向において、前記第1幅よりも小さい前記第2幅に加工する工程、および
(d2)前記(d1)工程の後に、前記多結晶シリコン膜と重なるように前記第2金属膜を前記第2幅に加工する工程、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)と(c)との間に、さらに、
(e)前記第1構造体の側壁上にオフセットスペーサを形成する工程、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記オフセットスペーサは、窒化珪素膜からなる、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
半導体基板の主面上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられた下層電極と、前記下層電極上に設けられた強誘電体膜と、前記強誘電体膜上に設けられた上層電極と、平面視において、前記下層電極を挟むように配置された一対の半導体領域と、を含むメモリセルを備える半導体装置であって、
(a)半導体基板の主面上に第1絶縁膜、第1金属膜、第2絶縁膜および導体膜を順に形成する工程、
(b)前記導体膜をパターニングし、前記主面の第1方向に延在し、前記第1方向に直交する第2方向において第1長さを有する第1構造体を形成する工程、
(c)前記第1構造体の側壁上に第1オフセットスペーサを形成する工程、
(d)前記第1構造体および前記第1オフセットスペーサをマスクに、前記第2絶縁膜、および前記第1金属膜をパターニングし、前記第2方向において前記第1長さよりも大きい第2長さを有する第2構造体を形成する工程、
(e)前記第2構造体をパターニングして、前記第1方向において、第1幅を有する第3構造体を形成する工程、
(f)前記第3構造体に含まれる前記導体膜にエッチング処理を施し、前記第1方向において、前記第1幅よりも小さい第2幅を有する前記導体膜を形成する工程、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は、前記第1絶縁膜で形成され、前記下層電極は、前記第1金属膜で形成され、前記強誘電体膜は、前記第2絶縁膜で形成され、前記上層電極は、前記導体膜で形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記導体膜は、前記第2絶縁膜上に形成された第2金属膜と、前記第2金属膜上に形成された多結晶シリコン膜との積層膜であって、
前記(f)工程は、
(f1)前記第3構造体に含まれる前記多結晶シリコン膜にエッチング処理を施し、前記第1方向において、前記第1幅よりも小さい前記第2幅に加工する工程、および
(f2)前記(f1)工程の後に、前記多結晶シリコン膜と重なるように前記第2金属膜を前記第2幅に加工する工程、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)と(e)との間に、さらに、
(g)前記第2構造体の側壁上に第2オフセットスペーサを形成する工程、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2オフセットスペーサは、窒化珪素膜からなる、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、強誘電体膜を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低電圧で動作する記憶素子として、強誘電体膜を有する強誘電体メモリが知られている。強誘電体メモリでは、強誘電体膜の分極方向に応じて、書込み状態および消去状態が決定される。強誘電体メモリは、分極方向に対応する高閾値および低閾値を持つが、両閾値の幅をメモリウインドウと呼ぶ。メモリウインドウを広くすることで読出し時の動作安定性が向上する。
【0003】
特許文献1および非特許文献1には、強誘電体メモリを構成するMFMIS(Metal-Ferroelectric-Metal-Insulator-Semiconductor)構造のトランジスタ(以下、MISFETと呼ぶ場合もある)が開示されている。図25に示すように、非特許文献1のトランジスタは、半導体基板SUB上に順に設けられたゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FEおよび上層電極UEからなる積層構造体と、この積層構造体の両側に位置し、半導体基板内に設けられた一対の半導体領域SRとを備える。そして、下層電極LEがゲート絶縁膜GIと重なる面積SIと、上層電極UEが強誘電体膜FEと重なる面積SFとの面積比(SI/SF)を1より大きくすることで、所望のメモリウインドウを得るための動作電圧(書込み時、消去時にトランジスタの各部に印加する電圧)を低減できることが開示されている。つまり、トランジスタのチャネル長方向LCHにおいて、下層電極LEおよびゲート絶縁膜GIの長さを、上層電極UEの長さよりも大きくすることで、面積比(SI/SF)>1としている。
【0004】
特許文献1には、チャネル長方向LCHにおいて面積比(SI/SF)>1としたMFMIS構造のトランジスタを製造する自己整合プロセスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6828160号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第79回応用物理学会秋季学術講演会予稿集(2018名古屋国際会議場)20p-141-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下に本願発明者の検討結果を示す。
【0008】
MISFETを高速動作させるためには、MISFETの相互コンダクタンス(g)を大きくする必要がある。相互コンダクタンス(g)は、MISFETのチャネル幅(W)/チャネル長(L)の比(W/L)の関数であるため、相互コンダクタンス(g)を向上させるためには、チャネル長(L)を出来るだけ小さくすることが有効である。チャネル長(L)を小さくすると、所望の相互コンダクタンス(g)を得るためのチャネル幅(W)も小さくでき、MISFETの小型化も実現できる。
【0009】
図25に示す従来技術の場合、面積比(SI/SF)>1としてメモリセルの信頼性を向上するために、チャネル長方向LCHにおいて、下層電極LEの長さを上層電極UEの長さよりも大きくしている。しかしながら、上層電極UEのチャネル長方向LCHの寸法を、トランジスタの製造プロセスにおける最小加工寸法よりも小さくすることは困難であり、最小加工寸法以上となる。そして、面積比(SI/SF)>1とするためには、下層電極LEのチャネル長方向の寸法は、上層電極UEのチャネル長方向LCHの寸法よりもさらに大きくする必要がある。つまり、トランジスタのチャネル長(L)の拡大に伴い、所望の相互コンダクタンス(g)を確保するためにチャネル幅(W)の拡大が必須となる。その結果、平面視におけるトランジスタのサイズが拡大するというデメリットが生じる。
【0010】
強誘電体メモリを有する半導体装置において、メモリセルを構成するMFMIS構造のMISFETの信頼性向上および小型化、言い換えると、半導体装置の信頼性向上および小型化が求められている。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、
次のとおりである。
【0013】
一実施の形態における半導体装置は、主面を有する半導体基板と、主面上に設けられ、平面視において第1方向に延在する複数のワード線と、主面上に設けられ、平面視において、第1方向に直交する第2方向に延在する複数のビット線と、第1方向および第2方向に行列状に配置された複数のメモリセルと、を備える。そして、メモリセルは、主面上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた下層電極と、下層電極上に設けられた強誘電体膜と、強誘電体膜上に設けられた上層電極と、第2方向において、下層電極を挟むように設けられた一対の半導体領域と、を含み、平面視において、下層電極の第1方向における第1幅は、上層電極の第1方向における第2幅よりも大きい。
【発明の効果】
【0014】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性向上および小型化を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態の半導体装置の要部の等価回路図である。
図2】本実施の形態の半導体装置の要部の平面図である。
図3図2のX1-X1’およびY1-Y1’における断面図である。
図4】本実施の形態の半導体装置の要部の構成を示す平面図および断面図である。
図5】書込み動作、消去動作および読出し動作のそれぞれにおいて、本実施の形態の半導体装置の各部位に印加される電圧を示す表である。
図6】本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図9図8に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図10図9に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図11図10に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図12図11に示す本実施の形態の半導体装置の製造工程に対応する平面図である。
図13図11に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図14図13に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図15図14に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図16図15に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図17図16に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図18図17に続く本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図19】変形例1の半導体装置の要部の構成を示す断面図である。
図20】変形例2の半導体装置の要部の構成を示す平面図および断面図である。
図21】変形例2の半導体装置の要部の構成を示す断面図である。
図22】変形例2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図23図22に続く変形例2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図24】変形例3の半導体装置の要部の構成を示す断面図である。
図25】従来技術であるトランジスタの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0017】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0018】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0019】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。また、例えば、「AとBの長さ(または幅)が等しい」と言った場合、製造プロセスの影響などで若干の誤差が生じたとしても、意図的に等しくしている場合は「等しい」に含まれる。
【0020】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0021】
(実施の形態)
本実施の形態の半導体装置は、メモリセルアレイに行列状に配置された複数のメモリセルを有し、メモリセルは強誘電体膜を有するMFMIS構造のMISFETで構成されている。
【0022】
<半導体装置>
図1は、本実施の形態の半導体装置の要部(メモリセルアレイ)の等価回路図、図2は、本実施の形態の半導体装置の要部(メモリセルアレイ)の平面図、図3は、図2のX1-X1’およびY1-Y1’における断面図、図4は、本実施の形態の半導体装置の要部の構成を示す平面図および断面図、図5は、書込み動作、消去動作および読出し動作のそれぞれにおいて、本実施の形態の半導体装置の各部位に印加される電圧を示す表である。なお、図2では、活性領域ACT、素子分離膜STI、半導体領域SR、下層電極LE、上層電極UE、ソース線SL、ワード線WL、パッド層PD、ビット線BLならびにプラグ電極PLG1およびPLG2を示し、それ以外の要素は省略している。また、図3では、X1-X1’における断面図をX断面図、Y1-Y1’における断面図をY断面図としている。
【0023】
図3に示すように、メモリセルMCは、半導体基板SUBの主面SUBa上に形成されたゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上に設けられた下層電極LEと、下層電極LE上に設けられた強誘電体膜FEと、強誘電体膜FE上に設けられた上層電極UEと、半導体基板SUB内に設けられた一対の半導体領域SRとを備える。なお、上層電極UEは、強誘電体膜FE上に設けられた上層電極UE1と、上層電極UE1上に設けられた上層電極UE2との積層構造となっている。メモリセルMCはMISFETであり、電気的には、上層電極UEがゲート、一対の半導体領域SRがソース、ドレインとして機能する。
【0024】
図1に示すように、複数のメモリセルMCは行列状に配置され、メモリセルアレイを構成している。各メモリセルMCは、ワード線WL、ビット線BL、ソース線SLおよびp型ウェル領域PWに接続されている。メモリセルMCのゲートはワード線に、ドレインはビット線に、ソースはソース線に接続されている。図3に示すように、メモリセルMCは半導体基板SUBに設けられたp型ウェル領域PW内に配置されており、p型ウェル領域PWには所望の電位が供給される。
【0025】
図2に示すように、半導体基板SUBには活性領域ACTを規定する素子分離膜STIが設けられている。素子分離膜STIは、X方向に所定の幅を有してY方向に延在している。複数の素子分離膜STIは、X方向において、所定の間隔で配置されている。そして、X方向において、2つの素子分離膜STIで挟まれた領域が活性領域ACTとなる。ここで、X方向およびY方向は互いに直交する方向である。
【0026】
X方向に延在する下層電極LEは、活性領域ACTを横切り、その両端は活性領域ACTを挟む2つの素子分離膜STI上に位置している。下層電極LE上には図3に示す強誘電体膜FEを介して上層電極UEが配置され、上層電極UEはプラグ電極PLG1を介してX方向に延在するワード線WLに接続されている。Y方向において、下層電極LEの両側には一対の半導体領域SRが配置されており、一方の半導体領域SRは、プラグ電極PLG1を介してX方向に延在するソース線SLに接続され、他方の半導体領域SRは、プラグ電極PLG1、パッド層PDおよびプラグ電極PLG2を介して、Y方向に延在するビット線BLに接続されている。
【0027】
次に、図4を用いて、下層電極LEと上層電極UEとの関係を説明する。図4の平面図に示すように、強誘電体膜FE、下層電極LEおよびゲート絶縁膜GIは、Y方向の長さL1、X方向の幅W1を有する長方形であり、3者の長辺および短辺は互いに重なっている。また、強誘電体膜FEおよび下層電極LEの長辺および短辺は互いに重なっており、ゲート絶縁膜GIの長辺および短辺は下層電極LEの長辺および短辺よりも長くてもよい。上層電極UE(上層電極UE1およびUE2)は、Y方向の長さL2、X方向の幅W2を有する長方形である。ここで、長さL2は長さL1と等しく(L2=L1)、幅W1は幅W2よりも大きい(W1>W2)。つまり、平面図に示すように、X方向では下層電極LEの幅W1は上層電極UEの幅W2よりも大きく、Y方向では下層電極LEの長さL1は上層電極UEの長さL2と等しい。このような構成とすることで、面積比(SI/SF)>1とすることができる。ここで、面積SFは強誘電体膜FEと上層電極UEとの接触面積、面積SIは下層電極LEとゲート絶縁膜GIとの接触面積である。面積比(SI/SF)>1とすることで、所望のメモリウインドウを得るための動作電圧(書込み時、消去時にトランジスタの各部に印加する電圧)を低減でき、メモリウインドウを拡大できるため、メモリセルMCの読出し動作の信頼性が向上する。また、Y方向においては、面積比(SI/SF)を増加するための構成とはなっておらず、上層電極UEの長さL2と下層電極LEの長さL1とを等しくしている。これは、図2および図3に示すメモリセルMCを構成するMISFET(トランジスタ)のゲート長を低減しメモリセルMCのサイズを低減するためである。前述のとおり、MISFETのゲート長を低減することで、所望の相互コンダクタンス(g)を得るために必要なゲート幅を低減できる。つまり、下層電極LEのY方向の長さL1を低減することで、下層電極LEのX方向の幅W1を低減でき、メモリセルMCを構成するMISFETのサイズ(専有面積)を低減できる。
【0028】
図3に示すように、メモリセルMCは、半導体基板SUBの主面SUBa上に形成されたゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上に設けられた下層電極LEと、下層電極LE上に設けられた強誘電体膜FEと、強誘電体膜FE上に設けられた上層電極UEと、半導体基板SUB内に設けられた一対の半導体領域SRとを備える。一対の半導体領域SRとは、下層電極LEを挟むようにその両側に配置された2つの半導体領域SRである。上層電極UEは、強誘電体膜FE上に設けられた上層電極UE1と、上層電極UE1上に設けられた上層電極UE2との積層構造である。
【0029】
半導体領域SRは、n型の低濃度半導体領域NMとn型の高濃度半導体領域NHとで構成されている。複数のメモリセルMCは、p型の半導体基板SUBにn型ウェル領域DNWを介して設けられたp型ウェル領域PW内に形成されている。n型ウェル領域DNWは、p型ウェル領域PWをp型の半導体基板SUBから分離するための領域であり、p型ウェル領域PWを内包している。
【0030】
上層電極UE(上層電極UE2)の上面にはシリサイド層SCが形成されており、上層電極UE(上層電極UE2)は、シリサイド層SCに接触するプラグ電極PLG1を介してワード線WLに接続されている。また、一対の半導体領域SRの上面にもシリサイド層SCが形成されており、一方の半導体領域SRは、シリサイド層SCに接触するプラグ電極PLG1を介してソース線SLに接続されている。他方の半導体領域SRは、シリサイド層SCに接触するプラグ電極PLG1と、プラグ電極PLG1上に設けられたパッド層PDと、パッド層PDに接触するプラグ電極PLG2を介してビット線BLに接続されている。図3のY断面図に示すように、ゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FEおよび上層電極UEからなる積層構造体の側壁上にはオフセットスペーサОS1およびОS2ならびに側壁絶縁膜SW1が設けられている。また、図3のX断面図に示すように、ゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FEおよび上層電極UEからなる積層構造体の側壁上にはオフセットスペーサОS2ならびに側壁絶縁膜SW1が設けられており、隣接する上層電極UE間のスペースは側壁絶縁膜SW1で埋められている。さらに、メモリセルMCを構成するMISFETを覆うように層間絶縁膜IL1が設けられており、層間絶縁膜IL1には複数のプラグ電極PLG1が埋め込まれている。層間絶縁膜IL1上には、層間絶縁膜IL2、IL3およびIL4が順に積層されている。層間絶縁膜IL2には第1層目の配線層であるワード線WL、ソース線SLおよびパッド層PDが埋め込まれ、層間絶縁膜IL3には複数のプラグ電極PLG2が埋め込まれ、層間絶縁膜IL4には第2層目の配線層であるビット線BLが埋め込まれている。
【0031】
図3のX断面図に示すように、下層電極LEおよび上層電極UEは、メモリセルMC毎に独立している。隣接するメモリセルMCの下層電極LEは、X方向において、素子分離膜STI上で分離されている。また、隣接するメモリセルMCの上層電極UEも、X方向において、互いに分離されており、各メモリセルMCの上層電極UEはプラグ電極PLG1を介してワード線WLに接続されている。このように、隣接するメモリセルMCにおいて、下層電極LE(または下層電極LEおよび上層電極UE)を分離したことで、隣接するメモリセルMC間の電気的干渉を抑制できる。
【0032】
次に、図3に示す各要素について説明する。半導体基板SUBは、例えば、シリコン単結晶基板であり、その比抵抗は、例えば、1Ω・cm以上かつ10Ω・cm以下である。素子分離膜STIは、例えば、酸化シリコン膜であるが、薄膜の窒化シリコン膜と厚膜の酸化シリコン膜との積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜GIは、例えば、酸化シリコン膜および酸化ハフニウム膜を有する積層膜である。酸化ハフニウム膜は、酸化シリコン膜上に形成されており、ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば、1nm以上かつ3nm以下である。
【0033】
下層電極LEおよび上層電極UE1は、例えば、窒化チタン、窒化タンタルまたはタングステン等の金属膜とするのが好ましい。下層電極LEおよび上層電極UE1の膜厚は、例えば、1nm~5nmとする。強誘電体膜FEは、電界(電場)を印加されると、誘電分極が生じ、その後、電界の印加をやめても、分極状態が維持される特性を有する。強誘電体膜FEの結晶構造は、主として直方晶系であり、これにより、強誘電体の特性が得られる。強誘電体膜FEの材料は、例えば、窒化シリコンよりも高い誘電率を有し、例えば、ハフニウム(Hf)および酸素(О)を含む酸化ハフニウム膜である。強誘電体膜FEは、さらに、ジルコニウム(Zr)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ランタン(La)またはイッテルビウム(Yb)を含んでいてもよい。
【0034】
上層電極UE2は、例えば、リン(P)またはホウ素(B)等の不純物を含有する多結晶シリコン膜である。シリサイド層SCは、例えば、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、プラチナシリサイド、またはニッケルプラチナシリサイドである。
【0035】
オフセットスペーサОS1および側壁絶縁膜SW1は、例えば、窒化シリコン膜、オフセットスペーサОS2は、例えば、酸化シリコン膜である。層間絶縁膜IL1~IL4は、例えば、酸化シリコン膜であるが、窒化シリコン膜と、窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜との積層構造としてもよい。プラグ電極PLG1は、例えば、タングステンである。ワード線WL、ソース線SL、パッド層PDおよびビット線BLは、例えば、銅配線であり、主材料である銅(Cu)と、銅の拡散を抑制するバリア層(例えば、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)等)との積層膜で構成されている。なお、プラグ電極PLG2は、銅(Cu)とバリア層との積層膜で構成されており、ビット線BLとプラグ電極PLG2とは、デュアルダマシン法を用いて形成した一体構造となっている。
【0036】
<メモリセルMCの動作>
図1および図5を用いてメモリセルMCの動作を説明する。「書込み」「消去」「読出し」の動作時にメモリセルMCの各部位に図5に示す電圧を印加する。書込み動作時には、ワード線WLに-2~-5Vを、p型ウェル領域PW、ビット線BLおよびソース線SLに0Vを印加し、強誘電体膜FEの分極方向を第1分極状態とする。第1分極状態では、分極方向は、下層電極LEから上層電極UEに向かう方向であり、メモリセルMCのMISFETの閾値(Vth)は高閾値となる。消去動作時には、ワード線WLに2~5Vを、p型ウェル領域PW、ビット線BLおよびソース線SLに0Vを印加し、強誘電体膜FEの分極方向を第2分極状態とする。第2分極状態では、分極方向は、上層電極UEから下層電極LEに向かう方向であり、メモリセルMCのMISFETの閾値(Vth)は低閾値となる。読出し動作時には、ワード線WLに0~1Vを、ビット線BLに1V以下を、p型ウェル領域PWおよびソース線SLに0Vを印加してドレイン電流を測定することで、書込み状態または消去状態を検出する。
【0037】
<本実施の形態の半導体装置の特徴>
図4に示すように、X方向において、上層電極UEの幅W2に対して下層電極LEの幅W1を増加して面積比(SI/SF)>1を達成したことで、所望のメモリウインドウを得るための動作電圧(書込み時、消去時にトランジスタの各部に印加する電圧)を低減でき、半導体装置の低消費電力化を実現できる。また、所望の動作電圧に対して得られるメモリウインドウを広くできるため、半導体装置の信頼性を向上できる。
【0038】
図2図4に示すように、X方向においてのみ、面積比(SI/SF)>1を達成する構成とし、Y方向では、下層電極LEの長さL1と上層電極UEの長さL2を等しくしたことで、メモリセルMCを構成するMSFETのチャネル長(L)を低減でき、それに伴い、所望の相互コンダクタンス(g)を得るためのチャネル幅(W)を低減できる。従って、メモリセルMCのサイズ(メモリセルMCの専有面積)を低減でき、半導体装置を小型化できる。
【0039】
また、図2および図3に示すように、X方向において、メモリセルMC毎に下層電極LE(または下層電極LEおよび上層電極UE)を独立にしたことで、隣接するメモリセルMC間の電気的干渉を抑制できる。例えば、ワード線WLに接続された隣接するメモリセルMCにおいて、一方が「第1分極状態」、他方が「第2分極状態」となっている場合、両者の下層電極LEは異なる電位となっている。仮に、隣接するメモリセルMCの下層電極LEが繋がっていた場合、一方のメモリセルMCの下層電極LEの電位は、他方のメモリセルMCの下層電極LEの電位に影響を受けることとなるため、メモリセルMCのデータ保持特性(データ保持時間)が悪化する。本実施の形態の半導体装置では、下層電極LE(または下層電極LEおよび上層電極UE)を分離したことで、メモリセルMCのデータ保持特性を向上でき、半導体装置の信頼性が向上する。
【0040】
図3に示すように、上層電極UEは、強誘電体膜FE上に設けられた金属膜からなる上層電極UE1と、その上の設けられた多結晶シリコン膜からなる上層電極UE2とで構成されている。強誘電体膜FEと多結晶シリコン膜からなる上層電極UE2との間に、金属膜からなる上層電極UE1が介在しているため、多結晶シリコン膜からなる上層電極UE2が空乏化して、「書込み」時または「消去」時に強誘電体膜FEにかかる電圧が減少するという不具合が生じるのを防止できる。
【0041】
<半導体装置の製造方法>
図6図11および図13図18は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図であり、図12は、図11に示す本実施の形態の半導体装置の製造工程に対応する平面図である。
【0042】
図6に示すように、p型の半導体基板SUBを準備する。半導体基板SUBの主面SUBa側には、p型ウェル領域PWが設けられている。そして、深さ方向においてp型ウェル領域PWの下には、p型ウェル領域PWを半導体基板SUBから分離するためにn型ウェル領域DNWが設けられている。さらに、半導体基板SUBには、その主面SUBaから所望の深さを有する素子分離膜STIが選択的の形成されており、素子分離膜STIに挟まれた領域が活性領域ACTとなっている。
【0043】
次に、図7に示すように、半導体基板SUBの主面SUBa上に、順に、絶縁膜ZF1、金属膜ML1、絶縁膜ZF2、金属膜ML2および多結晶シリコン膜(導体膜)PSを堆積する。絶縁膜ZF1、金属膜ML1、絶縁膜ZF2、金属膜ML2および多結晶シリコン膜(導体膜)を加工(パターニング)することで、それぞれ、図3で説明したゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FE、上層電極UE1および上層電極UE2を形成する。パターニングとは、例えば、フォトリソグラフィ工程とエッチング工程によって、被加工膜を所望のパターンに加工することである。
【0044】
次に、図8に示すように、フォトレジスト層PR1を用いて、Y方向において、多結晶シリコン膜PS、金属膜ML2、絶縁膜ZF2、金属膜ML1および絶縁膜ZF1をパターニングする。そして、Y方向において長さL1を有し、X方向に延在する第1構造体(第1積層構造体)を形成する。Y方向において、第1構造体は、半導体基板SUBの主面SUBa側から順に、ゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FE、上層電極UE1および上層電極UE2を含む。次に、フォトレジスト層PR1を除去する。
【0045】
次に、図9に示すように、第1構造体の側壁上にオフセットスペーサОS1を形成する。図示していないが、Y断面図において、上層電極UE2を覆うように絶縁膜を堆積し、この絶縁膜に異方性ドライエッチングを施すことで、第1構造体の側壁上にオフセットスペーサОS1を選択的に形成する。次に、Y断面図において、半導体基板SUB内に第1構造体を挟むようにn型の低濃度半導体領域NMを形成する。
【0046】
次に、図10に示すように、前述の第1構造体をパターニングして、X方向において幅W1を有する第2構造体(第2積層構造体)を形成する。第2構造体は、半導体基板SUBの主面SUBa側から順に、ゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FE、金属膜ML2およびポリシリコン膜PSを含む。X方向において、第2構造体は、図6に示す活性領域ACT上に延在し、その端部は、その活性領域ACTを規定する素子分離膜STI上で終端している。
【0047】
次に、図11および図12に示すように、X方向において、ポリシリコン膜PSを細線化して上層電極UE2を形成する。図11および図12に示すように、フォトレジスト層PR2には、X方向において、素子分離膜STIの上部に空間が存在している。この空間からエッチングガスを供給して、ポリシリコン膜PSの側壁に等方性エッチングを施して、ポリシリコン膜PSを細線化し、上層電極UE2を形成する。X方向において、幅W1を有するポリシリコン膜PSは、細線化処理によって、幅W2に低減された上層電極UE2となる。フォトリソグラフィ工程を用いることなく、幅W2の上層電極UE2を形成することで、製造コストを低減できる。
【0048】
また、図11および図12に示すように、Y方向において、第1構造体の側壁はオフセットスペーサОS1で覆われているため、活性領域ACTにおいて半導体基板SUBの主面SUBaがエッチングされるのを防止することができる。オフセットスペーサОS1を設けていない場合、等方性エッチング工程で、ポリシリコン膜PSが細線化されるにつれ、第1構造体とフォトレジスト層PR2との界面を介して、エッチングガスにより半導体基板SUBの主面SUBaがエッチングされる危険性がある。例えば、図12のA部(1つのメモリセルMCにのみ表示)でこの問題が発生しやすい。次に、フォトレジスト層PR2を除去する。
【0049】
次に、図13に示すように、上層電極UE2から露出した領域の金属膜ML2をエッチングし、上層電極UE2で覆われた領域に上層電極UE1を形成する。つまり、上層電極UE1は、X方向において、上層電極UE2と等しく幅W2を有する。
【0050】
次に、半導体基板SUBの主面SUBa上に酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜を堆積し、この積層膜に異方性ドライエッチングを施して、図14に示すオフセットスペーサОS2および側壁絶縁膜SW1を形成する。ここで、図12に示すように、Y方向において上層電極UE2を挟むオフセットスペーサOS1の間隔(長さL1)は、Y方向において、隣接する上層電極UE2の側壁上に形成されたオフセットスペーサOS1の間隔GPに比べて十分に狭い。従って、積層膜の膜厚dを(L1)/2<d<GP/2とすることで、X方向においては、隣り合う2つの上層電極UE2の間の空間を積層膜で埋め、Y方向においては、隣り合う2つの上層電極UE2の間で半導体基板SUBの主面SUBaを露出させることができる。X方向において、隣り合う2つの上層電極UE2の間の空間を積層膜で埋めることで、半導体装置の製造歩留まりを向上できる。X方向において、隣り合う2つの上層電極UE2の間の積層膜に「す」と呼ばれる空洞ができると、製造歩留まりを低下させる要因となるからである。
【0051】
次に、図15に示すように、Y方向において、第1構造体の側壁上に形成された側壁絶縁膜SW1に挟まれた領域の半導体基板SUBにn型の高濃度半導体領域NHを形成する。そして、低濃度半導体領域NMと高濃度半導体領域NHとで半導体領域SRが形成される。
【0052】
次に、図16に示すように、上層電極UE2および高濃度半導体領域NHの表面にシリサイド層SCを形成する。
【0053】
次に、図17に示すように、複数のプラグ電極PLG1を含む層間絶縁膜IL1を形成する。プラグ電極PLG1は、上層電極UE2または高濃度半導体領域NHの表面に形成されたシリサイド層SCに接続している。
【0054】
次に、図18に示すように、層間絶縁膜IL1およびプラグ電極PLG1上に、複数の配線を含む層間絶縁膜IL2を形成する。複数の配線には、ワード線WL、ソース線SLおよびパッド層PDが含まれる。
【0055】
次に、図3に示すように、複数の配線を含む層間絶縁膜IL2上に、複数のプラグ電極PLG2を含む層間絶縁膜IL3を形成し、さらに、その上に、配線を含む層間絶縁膜IL4を形成する。この配線は、ビット線BLを含む。
【0056】
上記の工程を経て、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0057】
なお、図8のY断面図において、絶縁膜ZF1のパターニングは必須ではなく、多結晶シリコン膜PS、金属膜ML2、絶縁膜ZF2および金属膜ML1をパターニングして第1構造体とすることもできる。また、図10においても、絶縁膜ZF1のパターニングは必須ではなく、多結晶シリコン膜PS、金属膜ML2、絶縁膜ZF2および金属膜ML1をパターニングして第2構造体とすることもできる。その場合、第1構造体および第2構造体は、半導体基板SUBの主面SUBa側から順に、下層電極LE、強誘電体膜FE、上層電極UE1および上層電極UE2を含む。
【0058】
また、図10および図11において、1回のパターニングと等方性エッチングにより、X方向において、下層電極LEの幅W1および上層電極UEの幅W2を規定したが、幅W1を有する下層電極LEと幅W2を有する上層電極UEとを、それぞれ別のパターニング(計2回のパターニング)を用いて形成してもよい。
【0059】
<本実施の形態の半導体装置の製造方法の特徴>
絶縁膜ZF1、金属膜ML1、絶縁膜ZF2、金属膜ML2および多結晶シリコン膜PSからなる積層膜を、パターニングして、Y方向において長さL1を有し、X方向に延在する第1構造体を形成する。次に、X方向において、第1構造体をパターニングして、X方向における幅W1を有する第2構造体を形成し、次に、X方向において、幅W1よりも小さい幅W2を有する金属膜ML2および多結晶シリコン膜PSを形成する。これらの工程により、図3に示すゲート絶縁膜GI、下層電極LE、強誘電体膜FEならびに上層電極UE1およびUE2を形成することで、メモリセルMCの面積比(SI/SF)>1を実現し、かつ、セルサイズを低減できる。従って、半導体装置の高信頼性および小型化を実現できる。
【0060】
図10および図11で説明したように、1回のパターニングと等方性エッチングにより、X方向において、下層電極LEの幅W1および上層電極UEの幅W2を規定するため、両者を2回のパターニングで形成する場合に比べ、フォトリソグラフィ工程で使用するフォトマスクの枚数を低減することができる。
【0061】
図11および図12で説明したように、多結晶シリコン膜PSを細線化する工程で、第1構造体の側壁上に窒化シリコン膜からなるオフセットスペーサОS1が形成されているので、半導体基板SUBの主面SUBaがエッチングされて削れるのを防止でき、半導体装置の不良を低減できる。
【0062】
また、図14で説明したように、X方向において、隣り合う2つの上層電極UE2の間の空間に「す」ができないように、側壁絶縁膜SW1で埋め込むことで、半導体装置の製造歩留まりを向上することができる。
【0063】
<変形例1>
変形例1は、上記実施の形態の変形例であるため、上記実施の形態と異なる点を説明する。図19は、変形例1の半導体装置の要部の構成を示す断面図である。変形例1の半導体装置では、メモリセルMCを構成する上層電極UEが上層電極UE2で構成されており、上層電極UE1を含んでいない。メモリセルMCは、半導体基板SUBの主面SUBa上に形成されたゲート絶縁膜GIと、ゲート絶縁膜GI上に設けられた下層電極LEと、下層電極LE上に設けられた強誘電体膜FEと、強誘電体膜FE上に設けられた上層電極UE2と、半導体基板SUB内に設けられた一対の半導体領域SRとを備える。上層電極UE2は強誘電体膜FE上に設けられ、強誘電体膜FEに接触している。
【0064】
変形例1の半導体装置の製造方法は、上記実施の形態の半導体装置の製造方法において、金属膜ML2の堆積および加工の工程を省略したものである。
【0065】
変形例1によれば、上層電極UE1の膜厚分だけ層間絶縁膜IL1の膜厚を薄くできるため、プラグ電極PLG1を設けるために層間絶縁膜IL1に設ける開口のアスペクト比を低減でき、製造歩留まりを向上できる。
【0066】
<変形例2>
変形例2は、上記実施の形態に対する変形例であるため、上記実施の形態と異なる点を説明する。図20は、変形例2の半導体装置の要部の構成を示す平面図および断面図、図21は、変形例2の半導体装置の要部の構成を示す断面図、図22および図23は、変形例2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0067】
図20に示すように、変形例2の半導体装置では、強誘電体膜FEV、下層電極LEVおよびゲート絶縁膜GIVのY方向の長さL3は、上層電極UEのY方向の長さL2よりも大きい(L3>L2)。平面視において、上層電極UEおよび強誘電体FEVは、それぞれ、X方向に長辺、Y方向に短辺をもつ略長方形の形状を有する。そして、平面視において、上部電極UEは、強誘電体膜FEVに内包されており、上層電極UEの長辺は強誘電体膜FEVの長辺から離間距離Ld、上層電極UEの短辺は強誘電体膜FEVの短辺から離間距離Wdを有する。ここで、長辺どうしの離間距離Ldは短辺どうしの離間距離Wdよりも小さい(Ld<Wd)。上記実施の形態で説明したように、短辺どうしの離間距離Wdは、面積比(SIV/SF)>1を実現するためのものであり、比較的大きい値となる。一方、長辺どうしの離間距離Ldは、強誘電体膜FEVの長辺近傍を前述の第1分極状態または第2分極状態を保持する膜として作用させないために必要となる。従って、比較的小さい値で充分である。なお、略長方形には角部が90°ではなく、丸みをおびた形状の長方形も含まれる。
【0068】
図21のY断面図に示すように、上層電極UEの側壁上にはオフセットスペーサОS3が設けられており、ゲート絶縁膜GIV、下層電極LEV、強誘電体膜FEV、上層電極UEおよびオフセットスペーサОS3からなる構造体の側壁上にオフセットスペーサОS1およびОS2ならびに側壁絶縁膜SW1が設けられている。つまり、ゲート絶縁膜GIV、下層電極LEV、強誘電体膜FEV、上層電極UEおよびオフセットスペーサОS3からなる構造体は、上記実施の形態における第1構造体に対応している。
【0069】
変形例2の半導体装置の製造方法は、上記実施の形態の製造方法において図8を用いて説明した第1構造体の製造工程が異なる。図22および図23に示すように、変形例2では、多結晶シリコン膜PSおよび金属膜ML2を、Y方向において、長さL2を有するようにパターニングする。Y方向において、多結晶シリコン膜PSからなる上層電極UE2、金属膜ML2からなる上層電極UE1を形成する。次に、図23に示すように、上層電極UE1およびUE2の側壁上にオフセットスペーサОS3を形成し、上層電極UE1およびUE2ならびにオフセットスペーサОS3から露出した領域の絶縁膜ZF2、金属膜ML1および絶縁膜ZF1をエッチングし、Y方向において、長さL3を有する強誘電体膜FEV、下層電極LEVおよびゲート絶縁膜GIVを形成する。次に、上記実施の形態で説明した図9に示すオフセットスペーサОS1形成工程以降の工程を実施する。
【0070】
変形例2によれば、図20を用いて説明したように、上層電極UEの長辺は強誘電体膜FEVの長辺から離間距離Ld、上層電極UEの短辺は強誘電体膜FEVの短辺から離間距離Wdを有する。こうして、強誘電体膜FEVの長辺近傍および短辺近傍の強誘電体膜FEVを前述の第1分極状態または第2分極状態を保持する膜として作用させないので、強誘電体膜FEVの分極保持特性を向上できる。長辺および短辺の近傍の強誘電体膜FEVは、加工時にエッチングダメージを受けており、中央部に比べて分極保持特性が低いからである。
【0071】
<変形例3>
変形例3は、上記変形例2に対する変形例であるため、上記変形例2と異なる点を説明する。図24は、変形例3の半導体装置の要部の構成を示す断面図である。変形例1と同様に、メモリセルMCを構成する上層電極UEが上層電極UE2で構成されており、上層電極UE1を含んでいない。メモリセルMCは、半導体基板SUBの主面SUBa上に形成されたゲート絶縁膜GIVと、ゲート絶縁膜GIV上に設けられた下層電極LEVと、下層電極LEV上に設けられた強誘電体膜FEVと、強誘電体膜FEV上に設けられた上層電極UE2と、半導体基板SUB内に設けられた一対の半導体領域SRとを備える。上層電極UE2は強誘電体膜FEV上に設けられ、強誘電体膜FEVに接触している。
【0072】
変形例3の半導体装置の製造方法は、上記変形例2の半導体装置の製造方法において、金属膜ML2の堆積および加工の工程を省略したものである。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0074】
例えば、上記のとおり種々の変形例について説明したが、各変形例について説明した要旨に矛盾しない範囲内において、上記で説明した各変形例の一部分または全部を互いに組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
ACT 活性領域
BL ビット線
DNW n型ウェル領域
FE,FEV 強誘電体膜
GI,GIV ゲート絶縁膜
IL1,IL2,IL3,IL4 層間絶縁膜
LCH チャネル長方向
LE,LEV 下層電極
MC メモリセル
ML1,ML2 金属膜
NH 高濃度半導体領域
NM 低濃度半導体領域
ОS1,ОS2,ОS3 オフセットスペーサ
PD パッド層
PLG1,PLG2 プラグ電極
PR1,PR2,PR3 フォトレジスト層
PS 多結晶シリコン膜(導体膜)
PW p型ウェル領域
SB 半導体基板
SBa 主面
SC シリサイド層
SL ソース線
SR 半導体領域
STI 素子分離膜
SW1 側壁絶縁膜
UE,UE1,UE2 上層電極
WL ワード線
ZF1,ZF2 絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25