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特開2023-22383二酸化炭素固定化方法及び二酸化炭素が固定化された材料を用いた骨材及びコンクリート
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  • 特開-二酸化炭素固定化方法及び二酸化炭素が固定化された材料を用いた骨材及びコンクリート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022383
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定化方法及び二酸化炭素が固定化された材料を用いた骨材及びコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
C04B40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127228
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】717001145
【氏名又は名称】株式会社HPC沖縄
(72)【発明者】
【氏名】阿波根 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】今本 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西薗 博美
(72)【発明者】
【氏名】多田 修二
(72)【発明者】
【氏名】細矢 仁
(72)【発明者】
【氏名】深澤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】有賀 俊二
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】 二酸化炭素の固定化組成物の表面に、二酸化炭素を固定化し、貯留することを可能とする二酸化炭素固定化方法を提供し、その方法により二酸化炭素が固定化された骨材やコンクリート材料を用いてコンクリートを製造することにより、炭酸化養生設備を必要とせず、大きさや形状などのデザインの制限のない二酸化炭素の固定化が可能なコンクリートの製造が実現でき、セメント製造過程で排出されるCO2量を相殺することが可能となる二酸化炭素が固定化されたコンクリートを提供することを課題とする。
【解決手段】 高濃度炭酸ガス流路中に、二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化剤を付着させた固定化組成物を配置し、該固定化組成物の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することを特徴とする二酸化炭素固定化方法及びその二酸化炭素の固定化組成物を用いたコンクリートとするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度炭酸ガス流路中に、二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化剤を付着させた固定化組成物を配置し、該固定化組成物の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することを特徴とする二酸化炭素固定化方法。
【請求項2】
前記の二酸化炭素固定化剤がダイカルシウムシリケートγ相(γ- 2CaO・SiO2)であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項3】
前記の二酸化炭素固定化剤が製鋼スラグであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項4】
前記の固定化組成物が貝殻であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項5】
前記の固定化組成物がコンクリート用骨材であることを特徴とするから請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項6】
高濃度炭酸ガス流路中に、コンクリート用再生骨材からなる二酸化炭素の固定化組成物を配置し、該再生骨材の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することを特徴とする二酸化炭素固定化方法。
【請求項7】
前記の固定化組成物の攪拌手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項8】
高濃度炭酸ガス流路中の固定化組成物の入口側と出口側に二酸化炭素センサーを設置したことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項9】
高濃度炭酸ガス流路中の固定化組成物の出口側にpHセンサーを設置したことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項10】
前記の高濃度炭酸ガスは、火力発電所の排ガスであり、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法により二酸化炭素が表面に固定された材料を用いたことを特徴とするカーボンネガティブ骨材。
【請求項11】
前記の請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法により二酸化炭素が表面に固定された材料を用いたことを特徴とするコンクリート。
【請求項12】
前記の請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法により二酸化炭素が表面に固定された材料を用いたことを特徴とするプレストレストコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の固定化方法に関し、特に高濃度炭酸ガス流路中に配置した固定化組成物の表面に二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化方法及びその固定化組成物を材料として用いたコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)の排出量を低減することは、地球温暖化対策の緊急の課題となっており、日本政府は、地球温暖化対策推進本部で、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とすることを目標に掲げています。
【0003】
コンクリートの原材料として使用されているセメントの製造には、1トン製造するに当たり758KgのCO2を排出するとされ、CO2排出量の大きい材料であるとされている。
【0004】
これは、セメントの生産過程で、燃焼エネルギーを得るために化石燃料を多量に使用することに加え、石灰石の脱炭酸反応(CaCO3→CaO+CO2)が生じることによるとされている。
【0005】
コンクリート製品を製造するに際して発生するCO2のトータル量を低減するためには、特殊な混和剤を多量に配合させることにより、セメント使用量を削減する、あるいは、炭酸化養生により、二酸化炭素をコンクリートに固定化させることが有効であるとして種々の研究が進められている。
【0006】
例えば、特許文献1では、セメントに置き換える材料として、γ-C2S(γ-2CaO・SiO2;γビーライトとも呼ばれる)を混和剤として配合したコンクリートを強制的に炭酸化養生させることにより、表層部を緻密化した耐久性の高いコンクリート製品を作る技術が開示されている。
【0007】
γ-C2Sは水和反応せずに直接二酸化炭素と反応してCaCO3とSiO2を生成する。これらの生成物がセメントマトリクス中の空隙を埋め、コンクリート製品表層部の耐久性を飛躍的に向上させるのである。この場合、炭酸化養生でコンクリートに吸収されたCO2の分だけコンクリート製品を作る上では、トータルCO2排出量は削減されたことになる。
【0008】
また、特許文献2では、炭酸化養生するために用いる炭酸ガス供給源として火力発電所を利用した炭酸化養生設備、炭酸化コンクリート製造方法および炭酸ガス固定化方法が開示されている。
【0009】
CO2を吸収し、固定化する性質を有する材料としては、γ-C2Sの他に、製鋼スラグが知られている。製鋼スラグには未反応のCaO(フリーライム)が含まれており、これがCO2に起因する炭酸イオンと反応してCaCO3を生成する。特許文献3には、粒状の製鋼スラグを山積みしてCO2ガスに曝し、炭酸化反応で生成したCaCO3をバインダーとして団結させ塊状化する石材の製造方法が記載されている。特許文献4には、ケイ酸カルシウム水和物を含む主原料粉体(軽量気泡コンクリートの粉体など)、製鋼スラグ粉体、水の混合物を加圧成形した後、炭酸化させる建材の製造方法が記載されている。
【0010】
また、特許文献5では、養生過程で多量のCO2を吸収することにより、CO2排出量を大幅に低減したプレキャストコンクリート及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006-182583号公報
【特許文献2】特許第4822373号公報
【特許文献3】特開平11-71160号公報
【特許文献4】特開2005-281087号公報
【特許文献5】特開2011-168436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、コンクリート養生過程で二酸化炭素をコンクリートに固定化すること(炭酸化養生)で、コンクリートに吸収されたCO2の分だけコンクリート製品を作る上では、トータルCO2排出量は削減されたことになるが、特許文献1に示されるようなγ-C2Sを配合した従来の高耐久性コンクリートは、表層部に緻密な炭酸化層を形成することを狙ったものであり、その炭酸化に消費されるCO2量はセメント製造時に出るCO2量を相殺するほど多くはなく、CO2排出量削減の観点からは大きな効果は期待できない。
【0013】
特許文献2に示される炭酸ガス固定化方法は、火力発電所から排出される廃炭酸ガスを炭酸化養生の炭酸ガス供給源として有効活用するものであり、炭酸化コンクリートの製造と共に火力発電所の炭酸ガスの排出量を削減しようとするものである。
そして、この発明では内部が遮蔽空間とされた炭酸化養生槽が設けられた炭酸化養生設備が必要であり、該炭酸化養生槽内に被養生体を収容して炭酸化養生する必要がある。
すなわち、炭酸化養生できる被養生体は、炭酸化養生槽の大きさや形状に制限されてしまうこととなる。
【0014】
特許文献3に示される製鋼スラグ粒子のブロックは、ポーラス状であるため海藻類の成育促進に有効な製鋼スラグ中の成分が溶出しやすく、海中の藻場や魚礁として好適に利用できるという。しかし、複雑形状の製品を作ることが難しいことからコンクリート製品の代替として種々の用途に広く適用できるものではない。また、消波ブロックとして使用する場合、ポーラス状であることから一般的なコンクリート製消波ブロックと比べ消波性能や耐摩耗性に劣る。
【0015】
特許文献4の製鋼スラグ粉体を用いた建材は、すでに水和反応を終えている粉体(例えばALC粉体)を主原料とするものであり、基本的に炭酸硬化反応のみによって強度を確保している。未反応部分が残らないように炭酸硬化反応を起こさせる必要があることから(特許文献4の段落0027)、板状体など薄い肉厚のものが適用対象となる。また所定形状を得るうえで加圧成形する必要がある。
【0016】
このように、特許文献3、4に開示の技術は、製鋼スラグの炭酸化反応を利用しているものの、基本的にセメント成分による水硬性を利用したものではない。
【0017】
特許文献5は、セメントとγ-C2Sと製鋼スラグを配合したコンクリート混練物を型枠に打設したのち脱型後にコンクリート固化体を炭酸化養生することで、表面だけでなく内部に炭酸化領域を形成させ、養生過程で多量のCO2を吸収することにより、セメント製造過程で排出されるCO2量の全部または大部分を相殺することが可能なCO2吸収プレキャストコンクリートを提供しようというものである。
しかしながら、この技術においても、炭酸化養生設備が必要となり、炭酸化養生槽の大きさや形状に制限されるとともに、炭酸化濃度管理も必要となる。
【0018】
本発明は、高濃度炭酸ガス流路中に、配置した二酸化炭素の固定化組成物の表面に、二酸化炭素を固定化し、貯留することを可能とする二酸化炭素固定化方法を提供し、その方法により二酸化炭素が固定化されたコンクリート材料を用いて骨材及びコンクリートを製造することにより、炭酸化養生設備を必要とせず、大きさや形状などのデザインの制限のない二酸化炭素の固定化が可能なコンクリートの製造が実現でき、セメント製造過程で排出されるCO2量を相殺することが可能となる二酸化炭素が固定化されたコンクリートを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、高濃度炭酸ガス流路中に、二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化剤を付着させた固定化組成物を配置し、該固定化組成物の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することを特徴とする二酸化炭素固定化方法である。
【0020】
該高濃度炭酸ガス流路は、二酸化炭素が5%以上含まれている流路であり、流路中に二酸化炭素固定化剤を付着させた固定化組成物を配置できるものであればいずれの流路でもよい。
【0021】
例えば、高濃度炭酸ガスを配管内にを強制的に流通させ、その一部に固定化組成物をセットし、高濃度炭酸ガスが該固定化組成物に強制的に接触させて二酸化炭素を表面に固定化するものでも良い。
【0022】
該固定化組成物のセット方法は、取り替え可能なカセット式としても良い。高濃度炭酸ガス流路は、ガスの循環式や固定化組成物を多段に設けてもよい。
【0023】
高濃度炭酸ガスは、二酸化炭素の濃度が5%以上であるガスであればいずれでも良く、炭酸ガスボンベからの供給の他、二酸化炭素が含まれる排ガス等が使用できる。例えば、火力発電所、バイオマス発電所、各種工場からの排ガスなどでも良い。
【0024】
該バイオマス発電所の排ガスは、動植物などから生まれた生物資源である「バイオマス」を燃料として燃やしたり、ガス化させることで発電するバイオマス発電所から排出される排ガスである。
【0025】
二酸化炭素を吸収したバイオマスによる排ガスであり、該カーボンネガティブ骨材を使用すると、通常の炭酸化養生による製品よりも、固定化される二酸化炭素の量が大きいコンクリート製品とすることができる。
【0026】
該二酸化炭素固定化剤は、CO2を吸収し、固定化する性質を有する材料であればいずれでも良い。例えば、ダイカルシウムシリケートγ相(γ- 2CaO・SiO2):γ-C2S、製鋼スラグ等でも良い。
【0027】
該固定化組成物は、高濃度炭酸ガス流路に配置でき、二酸化炭素固定化剤を表面に付着できるものであればいずれでも良い。例えば、金属材、樹脂材、石材、コンクリート材、木材、貝殻、燃焼灰、産業副産物(クリンカ等)などでも良い。形状は、表面積を多くできる形状が好ましく、例えば、破砕材、ポーラス材、複雑な形状に加工したもの、表面に粗く加工したもの等でも良い。網や籠に収納してカセット式としても良い。
【0028】
請求項2では、前記の二酸化炭素固定化剤がダイカルシウムシリケートγ相(γ- 2CaO・SiO2)であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0029】
2CaO・SiO2(珪酸二カルシウム)には、α型、α’型、β型、γ型などが知られる。このうち、常温で安定なのはβ型とγ型である。β型はポルトランドセメントの成分の1つとして知られ、弱いながらも水硬性を有する。一方、γ型は水硬性を持たないものの、炭酸化活性が高く、セメント混和剤としての有用性が近年見出されている。
【0030】
ダイカルシウムシリケートγ相(γ-2CaO・SiO2)は、セメントコンクリートの中性化を抑制する混和剤として、また、強制炭酸化養生と組み合わせて使うことによって、高耐久コンクリートを作ることもできるとされている。
【0031】
また、カルシウムカーバイドからアセチレンを発生させた後に副生する水酸化カルシウムを利用してγ-2CaO・SiO2を製造し、原料に起因するCO2排出量を削減し、大幅なCO2削減が可能となるγ-2CaO・SiO2を用いても良い。
【0032】
使用量は、固定化組成物の表面を十分に付着させることができる量であれば良い。付着方法は、ドブ付け、塗布、吹きつけ、攪拌などでも良い。
【0033】
請求項3では、前記の二酸化炭素固定化剤が製鋼スラグであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0034】
該製鋼スラグは、高炉スラグ骨材と電気炉酸化スラグ骨材があり、それぞれに粗骨材と細骨材がある。粗骨材は、高炉または電気炉から取り出された溶融スラグを徐冷し、粒度調整した骨材であり、細骨材は、取り出された溶融スラグを水や空気などで急冷し、粒度調整してつくられた骨材である。いずれの製鋼スラグを用いても良い。
【0035】
使用量は、固定化組成物の表面を十分に付着させることができる量であれば良い。付着方法は、ドブ付け、塗布、吹きつけ、攪拌などでも良い。
【0036】
請求項4では、前記の固定化組成物が貝殻であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0037】
該貝殻は、貝(軟体動物や腕足動物など)が外套膜の外面に分泌する硬組織で、代表的な生体鉱物のひとつである。
【0038】
この貝殻をそのまま使用しても良く、破砕してもよい。また、表面を粗くする加工を施しても良い。網や籠などに収納して取り替え可能なカセット式としても良い。
【0039】
請求項5では、前記の固定化組成物がコンクリート用骨材であることを特徴とするから請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0040】
該コンクリート用骨材は、コンクリートの製造に使用される材料骨材であり、粒の大きさにより細骨材と粗骨材に(コンクリート用骨材では5mmふるいを通るか否かで区分するが、実用上は10mmふるいをすべて通り5mmふるいを重量で810%以上通るものを細骨材、5mmふるいに重量で810%以上とどまるものを粗骨材としている)、産状ならびに製法によって天然に産するものをほとんど加工せずにそのまま用いる天然骨材と、岩石や粘土あるいは産業副産物を加工した人工骨材に、また比重の大小により軽量骨材、普通骨材、重量骨材などがある。いずれを使用しても良い。
【0041】
燃焼灰骨材でも良い。例えば、石炭燃焼灰骨材(クリンカ)やバイオマス燃焼灰骨材などが使用できる。
【0042】
請求項6では、高濃度炭酸ガス流路中に、コンクリート用再生骨材を配置し、該再生骨材の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することを特徴とする二酸化炭素固定化方法である。
【0043】
該コンクリート用再生骨材は、建築物などの解体時に発生したコンクリート解体材を加工し、再びコンクリート用の骨材として再利用できるようにした骨材のことである。
【0044】
加工手段は、主にクラッシャーなどの機械を使った破砕だが、アスファルト・コンクリートの場合は熱を加えて骨材化する熱解砕という手段がとられる。
【0045】
再生骨材は、元になるコンクリート解体材の状態や加工方法により、再生骨材の品質は「H」「M」「L」の3段階がある。モルタルやセメントペーストが多く残っている「L」が良い。
【0046】
モルタルやセメントペーストが残っていると、粒度調整による破砕により、新しい表面が暴露され、セメント水和物と炭酸化反応を起こし中性化現象が発生する。この反応により二酸化炭素が再生骨材に取り込まれ、炭酸カルシウムとなり、二酸化炭素の固定化となる。
【0047】
請求項7では、前記の固定化組成物の攪拌手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0048】
該攪拌手段は、前記の固定化組成物を攪拌できるものであればいずれでも良い。攪拌により、固定化組成物の表面において、二酸化炭素が固定化されていない、又は不十分な部分を露出させ、固定化効率を高めることができる。
【0049】
例えば、高濃度炭酸ガス流路中に回転ドラムを設け、そのドラム内に前記の固定化組成物を収容して攪拌しても良い。また、粒状又は粉状の固定化組成物を収容した容器の下部側又は側面に高濃度炭酸ガスの噴出口を設け、噴出攪拌させても良い。、
【0050】
請求項8では、高濃度炭酸ガス流路の固定化組成物の入口側と出口側に二酸化炭素センサーを設置したことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0051】
該二酸化炭素センサーは、二酸化炭素を測定できるものであればいずれでも良い。フェノールフタレイン溶液の変色確認でも良い。
【0052】
請求項9では、高濃度炭酸ガス流路の固定化組成物の出口側にpHセンサーを設置したことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法である。
【0053】
該pHセンサーは、pHを測定できるものであればいずれでも良い。リトマス試験紙などでも良い。
【0054】
請求項10では、高濃度炭酸ガスは、火力発電所の排ガスであり、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法により二酸化炭素が表面に固定された材料を用いたことを特徴とするカーボンネガティブ骨材である。
【0055】
請求項11では、前記の請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法により二酸化炭素が表面に固定された材料を用いたことを特徴とするコンクリートである。
【0056】
該二酸化炭素が表面に固定された材料は、コンクリート用骨材として使用できるものであればいずれでも良い。例えば、天然骨材(岩石、粘土、貝殻等)、人工骨材(再生骨材等)、産業副産物骨材(燃焼焼灰骨材、クリンカ等)などが使用できる。
【0057】
請求項12では、前記の請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の二酸化炭素固定化方法により二酸化炭素が表面に固定された材料9用いたことを特徴とするプレストレストコンクリートである。
【0058】
該二酸化炭素が表面に固定された材料は、プレストレストコンクリート用骨材として使用できるものであればいずれでも良い。
【発明の効果】
【0059】
本発明は以下の効果を奏する。
1)高濃度炭酸ガスを用いて、固定化組成物の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することのできる二酸化炭素固定化方法を実現できる。
【0060】
2)二酸化炭素固定化剤がダイカルシウムシリケートγ相(γ- 2CaO・SiO2)とすることにより、二酸化炭素のトータル固定化率を高められ、固定化組成物の表面を緻密化できる。
【0061】
3)二酸化炭素固定化剤が製鋼スラグとすることにより、二酸化炭素のトータル固定化率を高められ、固定化組成物の表面を緻密化できる。
【0062】
4)固定化組成物が貝殻とすることにより、海水中生物の二酸化炭素を取り込んでいるためトータルの二酸化炭素の固定化率を高められる。
【0063】
5)固定化組成物がコンクリート用骨材とすることにより、二酸化炭素を取り込んでいる骨材を実現できる。
【0064】
6)濃度炭酸ガスを用いて、コンクリート用再生骨材の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留することのできる二酸化炭素固定化方法を実現できる。
【0065】
7)固定化組成物の攪拌手段が設けられていることにより、固定化組成物への二酸化炭素の固定化率を高めることができる。
【0066】
8)高濃度炭酸ガス流路中の固定化組成物の入口側と出口側に二酸化炭素センサーを設置したことにより、二酸化炭素固定化量をコントロールできる。
【0067】
9)高濃度炭酸ガス流路中の固定化組成物の出口側にpHセンサーを設置したことにより、固定化組成物としてのコンクリート用再生骨材の二酸化炭素固定化量をコントロールできる。
【0068】
10)高濃度炭酸ガスをバイオマス発電所の排ガスとすることにより、カーボンネガティブ骨材を実現できる。
【0069】
11)二酸化炭素が表面に固定された材料を用いてコンクリートを製造することにより、二酸化炭素を取り込み、かつ自由にデザインが可能なコンクリートを実現できる。
【0070】
12)二酸化炭素が表面に固定された材料を用いてコンクリートを製造することにより、二酸化炭素を取り込み、かつ自由にデザイン可能なプレストレストコンクリートを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明による二酸化炭素固定化方法を示す図である。
図2】本発明による炭酸化処理設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の一つの実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0073】
図1は、本発明による二酸化炭素固定化方法を示す図である。
【0074】
本実施例の二酸化炭素の固定化方法は、二酸化炭素の供給源G1から高濃度の炭酸ガス2の供給を受け、その高濃度炭酸ガス2を用いて、二酸化炭素固定化組成物3の表面に二酸化炭素を固定化し、貯留するものである。
【0075】
該二酸化炭素固定化組成物3は、ホタテ貝の貝殻を使用し、表面に二酸化炭素固定化剤として、ダイカルシウムシリケートγ相(γ- 2CaO・SiO2)を付着させた。
【0076】
ダイカルシウムシリケートγ相(γ- 2CaO・SiO2)を付着させたホタテ貝殻を円筒状の固定化組成物フィルターF1、F2内に収納した。
【0077】
高濃度炭酸ガス2は、炭酸ガス濃度を10%に調整した。
【0078】
本実施例の二酸化炭素固定化装置1は、図1に示すように、高濃度炭酸ガス供給源(予め二酸化炭素濃度が10%に調整されたガスボンベ等)G1と、直列に二段に設けられた固定化組成物フィルターF1、F2と、各固定化組成物フィルターを冷却するための冷却ファンC1、C2と、各固定化組成物フィルターF1、F2の入口側配管と出口側配管に二酸化炭素量を測定するCO2計N1、N2、N3と、固定化組成物フィルターF1、F2をバイパスするバイパスラインR1が設けられ、各配管には、電磁バルブB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7が設けられている。
【0079】
固定化組成物フィルターF1、F2は、円筒状であり、中央の固定化組成物の収容部分が1分間に1回転する回転攪拌手段K1が設けられている。
【0080】
本二酸化炭素固定化装置1は、以下のように作動させる。
【0081】
1)高濃度炭酸ガス供給源G1から10%炭酸ガス2が固定化組成物フィルターF1内に流入され、続いて、固定化組成物フィルターF2に流入し、排出される。
【0082】
2)固定化組成物フィルターF1、F2の回転攪拌手段K1を作動し、回転させて内部の二酸化炭素固定化剤を付着させたホタテ貝殻を攪拌し、二酸化炭素の固定化率を高める。
【0083】
3)冷却ファンC1、C2を作動させ、固定化組成物フィルターF1、F2を固定化組成物フィルター内のホタテ貝殻による固定化組成物を冷却し、二酸化炭素の固定化効率を高める。
【0084】
4)固定化組成物フィルターF1、F2の入口側と出口側に設けられたCO2計N1、N2、N3で二酸化炭素量を測定し、二酸化炭素の固定化量を測定する。
【0085】
5)固定化組成物フィルターF1の入口側CO2計N1と出口側CO2計N2を比較し、二酸化炭素の固定化率が1%以内となった時点で、固定化組成物フィルターF1の入口側と出口側の電子バルブB1、B2を閉じ、電磁バルブB5、B6を開き、バイパスラインR1に切り替え、固定化組成物フィルターF1を取り外す。
【0086】
5)取り外した固定化組成物フィルターF1内から、二酸化炭素が固定化されたホタテ貝殻を捕りだし、新しい二酸化炭素固定化剤を付着させたホタテ貝殻を収容し、再度二酸化炭素固定化装置1にセットし、電磁バルブを操作し、バイパスラインR1を閉じ、固定化組成物フィルターF1に高濃度炭酸ガス2を流入させる。
【0087】
6)同様に、固定化組成物フィルターF2においても、入口側CO2計N2と出口側CO2計N3を比較し、二酸化炭素の固定化率が1%以内となった時点で、電磁バルブB3、B4、B6、B7を操作し、バイパスラインR2に切り替え、固定化組成物フィルターF2を取り外し、内部のホタテ貝殻による固定化組成物3を交換する。
【0088】
7)このように固定化組成物フィルターF1、F2を順次交換しながら二酸化炭素固定化装置1を連続稼働させることができる。
【0089】
尚、本実施例では、固定化組成物3としてホタテ貝殻を使用したが、コンクリート骨材など他の固定化組成物を使用しても同様に、連続的に二酸化炭素を固定化できる。
【0090】
また、固定化組成物フィルターは、多段式であり、複数段設けることにより、高濃度炭酸ガスの濃度が高い場合にも対応可能である。
【0091】
本二酸化炭素固定化装置1では、ホタテ貝殻による固定化組成物を100Kgに対して、高濃度炭酸ガス(10%)を1m3/分の流量で処理した。二酸化炭素固定化量は、20Kg/日となった。
【0092】
図2は、本発明による炭酸化処理設備を示す図である。
【0093】
本実施例では、火力発電所の排ガスを用いて、固定化処理組成物(貝殻、骨材、再生骨材)の表面に二酸化炭素を固定化するための多段式フィルターシステムを複数ライン設けた炭酸化処理設備である。
【0094】
本実施例の炭酸化処理設備S1は、火力発電所からの排ガスを貯留する排ガスタンクHT1と、ポンプP1と、炭酸化処理ラインTR1と、排ガス調整設備HT2と、再処理ラインRR1が設けられている。
【0095】
該炭酸化処理ラインTR1は、貝殻による固定化組成物フィルターが複数段設けられた貝殻フィルターラインSR1と、骨材による固定化組成物フィルターが複数段設けられた骨材フィルターラインKR1と、再生骨材による固定化組成物フィルターが複数段設けられた再生骨材フィルターラインLR1とが並列に設けられている。
【0096】
各フィルターラインSR1、KR1、RR1は、多段式に複数の固定化組成物フィルターが設けられている。
【0097】
また、並列に設けられたどのフィルターラインを使用しても良く、各ラインが直列となるようなラインや、順番を変更できるラインを設けても良い。
【0098】
各ラインの固定化組成物フィルターの交換は、適時バイパスラインを設け、個々に交換しても良く、各ライン全体で交換するものでも良い。冷却ファンや温度計を設けても良い。
【0099】
各固定化組成物フィルターの入り口側と出口側にCO2計を配置しても良い。
【0100】
該排ガス調整設備HT2は、炭酸化処理ラインTR1からの排出ガス中の二酸化炭素以外のガス成分を除去して排気し、残った二酸化炭素の濃度を高めて、再処理ラインSR1から炭酸化処理ラインTR1に戻すものである。
【0101】
排ガスタンクHT1にガス成分の分析計を設け、火力発電所からの排ガスの成分により、最適な炭酸化処理のフィルターラインを自動選択するようにしても良い。
【0102】
以上説明したように、本発明による二酸化炭素固定化方法により、二酸化炭素を種々の固定化組成物に固定化することにより、この固定化組成物を用いて骨材及びコンクリートを製造することにより、炭酸化養生設備を必要とせず、大きさや形状などのデザインの制限のない二酸化炭素の固定化が可能なコンクリートの製造が実現できる。
【0103】
さらに、セメント製造過程で排出されるCO2量を相殺することが可能となる二酸化炭素が固定化されたコンクリートを実現できる。
【符号の説明】
【0104】
1 二酸化炭素固定化装置
2 高濃度炭酸ガス
3 二酸化炭素の固定化組成物
G1 高濃度炭酸ガス供給源
F1、F2 固定化組成物フィルター
C1、C2 冷却ファン
N1、N2,N3 CO2
R1、R2 バイパスライン
B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7 電磁バルブ
K1 回転攪拌手段
S1 炭酸化処理設備
HT1 排ガスタンク
P1 ポンプ
TR1 炭酸化処理ライン
HT2 排ガス調整設備
RR1 再処理ライン
SR1 貝殻フィルターライン
KR1 骨材フィルターライン
LR1 再生骨材フィルターライン
図1
図2