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2023-22393光硬化型コーティング剤組成物及びその硬化層を有する積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022393
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】光硬化型コーティング剤組成物及びその硬化層を有する積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/16 20060101AFI20230208BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230208BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230208BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230208BHJP
   C08J 7/048 20200101ALI20230208BHJP
   C09C 1/30 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
C09D175/16
C09D4/02
C09D7/62
C08F290/06
C08J7/048 CER
C08J7/048 CEZ
C09C1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127248
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優介
【テーマコード(参考)】
4F006
4J037
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F006AA02
4F006AB43
4F006AB76
4F006BA02
4F006BA05
4F006CA05
4F006EA03
4J037AA18
4J037CC16
4J037FF17
4J038DG031
4J038DG271
4J038FA161
4J038FA281
4J038GA01
4J038HA446
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA08
4J038NA11
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC08
4J127BB041
4J127BB043
4J127BB052
4J127BB081
4J127BB083
4J127BB092
4J127BB221
4J127BB222
4J127BB223
4J127BC052
4J127BC122
4J127BD011
4J127BD013
4J127BD422
4J127BE212
4J127BE21Y
4J127BE242
4J127BE24Y
4J127BF642
4J127BF64Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127BG311
4J127BG31Y
4J127BG361
4J127BG363
4J127BG36Y
4J127CB282
4J127CB341
4J127CC291
4J127CC292
4J127FA07
(57)【要約】
【課題】膜厚が薄くても透湿度が十分に低く、耐摩耗性も良好な光硬化型のコーティング剤組成物及びその硬化層を有する積層体を提供する。
【解決手段】イソシアヌル酸骨格を有する2~8官能(メタ)アクリレートと、表面処理ナノシリカと、光重合開始剤と、を含み、前記(メタ)アクリレートがヘキサメチレンジイソシアネート三量体とOH基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート及び/又はイソシアヌル酸EO変性(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする光硬化型コーティング剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアヌル酸骨格を有する2~8官能(メタ)アクリレート(A)と、表面処理ナノシリカ(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(A)がヘキサメチレンジイソシアネート三量体とOH基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート(a1)及び/又はイソシアヌル酸EO変性(メタ)アクリレート(a2)を含むことを特徴とする光硬化型コーティング剤組成物。
【請求項2】
前記(B)の配合量が前記(A)100重量部に対し100~800重量部であることを特徴とする請求項1記載の光硬化型コーティング剤組成物。
【請求項3】
前記(B)が平均一次粒子径1~30nmの表面処理ナノシリカ(b1)、及び平均一次粒子径35~100nmの表面処理ナノシリカ(b2)を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の光硬化型コーティング剤組成物。
【請求項4】
前記(A)が2~5官能であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の光硬化型コーティング剤組成物。
【請求項5】
プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に、請求項1~4いずれか記載の光硬化型コーティング剤の硬化層を有する積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線等の光照射により硬化する、水蒸気バリア性に非常に優れた低透湿の光硬化型コーティング剤組成物及びその硬化層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂は短時間で硬化が可能な特性を生かし、フィルムや成形物へのコーティング剤、電子部品や電気接点のシール剤などの産業資材から、接着剤やジェルネイルなどの身近な製品まで幅広く利用されている。これらの中で特にコーティング剤としては、液晶パネル部材へのハードコート剤が良く知られており、最近では用途も多様化し、環境変化に対する安定性など耐久性への要求が厳しくなってきている。
【0003】
液晶パネル部材の一つである偏光板の表面保護には、吸湿しやすいセルロースエステル系フィルムが用いられることが多いが、特許文献1には偏光板の表面フィルムを低透湿性にすることで、液晶表示装置の環境変化に起因する表示画面の劣化を抑制できることが記載されている。そのため、低透湿化する方法として例えば、3個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、2種類の脂環式エポキシ化合物と、ラジカル重合開始剤と、カチオン重合開始剤からなる低透湿性ハードコート層を有するフィルムが提案されている(特許文献2)。
【0004】
こうした樹脂を使用することで、セルロースエステル系フィルムを使用した場合でも低透湿化が可能となってきているが、透湿性を低減するためにはハードコート層を厚くする必要があり、可撓性や反りなどで問題となる場合があった。そのため、ハードコート層厚が薄くても耐スチールウール性が良好で、低透湿化が可能なハードコート樹脂が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-256747号公報
【特許文献2】特開2016-194566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、膜厚が薄くても透湿度が十分に低く、耐摩耗性も良好な光硬化型のコーティング剤組成物及びその硬化層を有する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対応するため請求項1記載の発明は、イソシアヌル酸骨格を有する2~8官能(メタ)アクリレート(A)と、表面処理ナノシリカ(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(A)がヘキサメチレンジイソシアネート三量体とOH基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート(a1)及び/又はイソシアヌル酸EO変性(メタ)アクリレート(a2)を含むことを特徴とする光硬化型コーティング剤組成物を提供する。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記(B)の配合量が前記(A)100重量部に対し100~800重量部であることを特徴とする請求項1記載の光硬化型コーティング剤組成物を提供する。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記(B)が平均一次粒子径1~30nmの表面処理ナノシリカ(b1)、及び平均一次粒子径35~100nmの表面処理ナノシリカ(b2)を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の光硬化型コーティング剤組成物を提供する。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記(A)が2~5官能であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の光硬化型コーティング剤組成物を提供する。
【0011】
また請求項5記載の発明は、プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に、請求項1~4いずれか記載の光硬化型コーティング剤の硬化層を有する積層体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、紫外線等の光照射に対し良好な硬化性を有し、膜厚が薄くても透湿度が十分に低く、耐摩耗性も良好であるため、トリアセチルセルロースフィルムなどに用いる光硬化型コーティング剤組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物の構成は、イソシアヌル酸骨格を有する2~8官能(メタ)アクリレート(A)と、ナノシリカ(B)と、光重合開始剤(C)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含するものとする。
【0015】
本発明で使用するイソシアヌル酸骨格を有する2~8官能(メタ)アクリレート(A)は、硬化皮膜を構成する主要樹脂で、少なくともヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIという)三量体とOH基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート(以下ウレアクという)(a1)及び/又はイソシアヌル酸EO変性(メタ)アクリレート(a2)を含む。
【0016】
前記(a1)はHDIの三量体(イソシアヌレート)骨格を有するため耐擦傷性に優れ、また脂肪族であることで耐候性及び水蒸気バリア性が良好な特性を有する。HDIと反応させるOH基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中では2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下2HEA)が好ましいが、官能基数が8以下となる範囲であれば、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETAという)などと組み合わせても良い。
【0017】
前記(a1)はHDIのイソシアネート基と、OH基の官能基モル比を調整して反応することで得ることができる。具体的にはイソシアネート基:OH基=1:1.5~1:8が好ましく、1:2~1:6が更に好ましい。反応は常法に従って実施でき、例えばHDIとOH基を有する(メタ)アクリレートを50~90℃の条件下に置き、触媒としてジブチル錫ジラウレートなどの錫系化合部を用いて反応させる方法が挙げられる。反応は無溶剤下でも有機溶剤下のどちらでもよく、溶媒としては例えばメチルエチルケトン、酢酸エチルなどを使用することができる。
【0018】
前記(a2)は例えば下記式(1)で示され、(a1)と同様にイソシアヌル酸骨格を有することで耐擦傷性に優れ、またアルキル基の置換基を有することで耐候性及び水蒸気バリア性が良好な特性を有する。市販品ではアロニックスM‐313(商品名:東亞合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート混合物、ジアクリレートの比率が30~40重量%)、同M‐315(商品名:東亞合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート混合物、ジアクリレートの比率が3~13重量%)などが挙げられる。
【化1】
・・・・・(1)
R=“(CHOCOCH=CH”又は”(CHOH“
【0019】
前記(A)の配合量としては、固形分全量に対し8~40重量%が好ましく、10~35重量%が更に好ましい。8重量%以上とすることで十分な硬化性と水蒸気バリア性を確保でき、40重量%以下とすることで十分な耐スチールウール性を確保することができる。また(A)における(a1)及び/又は(a2)の配合比率は50重量%以上が好ましく、80重量%以上が更に好ましく、90重量%以上が特に好ましい。50重量%以上とすることで、十分な低透湿性と耐擦傷性が優れた皮膜を形成できる。
【0020】
本発明で使用するナノシリカ(B)は、耐摩耗性と水蒸気バリア性を向上させる目的で配合する。平均粒子径は0.5~300nmが好ましく、1~150nmが更に好ましく、3~100nmが特に好ましい。(B)は単一の平均粒子径を有するものを用いても良いが、平均粒子径が異なる複数種類のナノシリカを配合することで、皮膜内にシリカを高充填することが可能となる。例えば平均粒子径が小さいナノシリカ(b1)として1~30nmと、平均粒子径が大きいナノシリカ(b2)として35~100nmの2種類を組合せることで、水蒸気バリア性をより向上させることが可能となる。
【0021】
前記(B)は(A)への分散性が良好な表面処理がされており、例えばアクリロイル基被覆、アルコシキ被覆、エポキシ基被覆等が挙げられる。これらの中では、バインダーである(A)のアクリロイル基との反応性が良好で強固に結合し、硬化後に塗膜表面からの脱落が抑制される点でアクリロイル基被覆であることが好ましい。
【0022】
前記(b1)の平均粒子径は1~30nmが好ましく、3~25nmが更に好ましく、5~20nmが特に好ましい。また(b2)の平均粒子径は35~100nmが好ましく、35~70nmが更に好ましく、40~60nmが特に好ましい。なお平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0023】
前記(B)の配合量は、(A)100重量部に対し100~800重量部が好ましく、150~700重量部であることが更に好ましく、220~650重量部であることが特に好ましい。100重量部以上とすることで十分な耐摩耗性を確保でき、800重量部以下とすることで十分な皮膜の水蒸気バリア性を確保することができる。
【0024】
前記(B)における(b1)と(b2)の配合比は、(b1):(b2)=1:1~1:2が好ましく、1:1.3~1:1.8が更に好ましく、1:1.5~1:1.7が特に好ましい。この配合比内とすることで、硬化皮膜内をシリカで高充填することが可能となり、水蒸気バリア性を効果的に向上させることができる。
【0025】
本発明に使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad127、184、2959(商品名:IGM Resins社製)などがある。前記(C)のラジカル重合樹脂性分100重量部に対する配合は2~12重量部が好ましく、3~10重量部が更に好ましい。
【0027】
前記に加えて、組成物の粘度調整及び基材との密着性改善のため、反応希釈剤として(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。例えばブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
更に加えて本発明の封止用樹脂組成物は、性能を損なわない範囲で、必要に応じ酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、消泡剤剤、シランカップリング剤、着色剤、有機粒子等の添加剤を含有してもよい。
【0029】
本発明のコーティング剤組成物は、基材への塗工性を向上させるため、溶剤にて固形分が10~70%に希釈される。溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEKという)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMという),ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(以下MCH)等の炭化水素系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では溶解性の観点で、PGM及びMEKが好ましい。
【0030】
本発明のコーティング剤組成物が塗布される基材としては有機プラスチックフィルムが挙げられ、例えばポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム(以下TACフィルム)、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、シクロオレフィン(コ)ポリマーフィルム等を例示することができるが、特にTACフィルムに用いることで、その特性を十分引き出すことができる。
【0031】
本発明のコーティング剤組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などを利用できる。塗布膜厚についての限定はないが、硬化後の膜厚として0.5μm~30μmが例示できる。
【0032】
本発明のコーティング剤組成物を塗布した後は60~120℃で乾燥し、紫外線照射機を用いて硬化させる。紫外線を照射する場合の光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあげられ、硬化条件としては50mW/cm~3000mW/cmの照射強度で、積算光量として50~2,000mJ/cmが例示される。また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
【0033】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。また表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は重量部を示す。
【実施例0034】
実施例1
(A)としてをウレアク1(HDIの三量体と2HEAの反応物、3官能)を、(b1)としてPGM-AC-2140Y(商品名:日産化学社製、平均粒子径10~15nmのアクリル修飾ナノシリカ、PGM分散、固形分47重量%)を、(b2)としてPGM-AC-4130Y(商品名:日産化学社製、平均粒子径40~50nmのアクリル修飾ナノシリカ、PGM分散、固形分32重量%)を、(C)としてOmnirad2959(商品名:iGM Resins社製)を表1記載の配合で撹拌容器に入れ、固形分が40重量%の割合になるように、PGMを用いて希釈し均一に溶解するまで撹拌脱泡し、実施例1の光硬化型コーティング剤組成物を調製した。
【0035】
実施例2~7
実施例1で用いた材料の他、(A)としてウレアク2(HDIの三量体とPETA及び2HEAの反応物、5官能)及びM-315(商品名:東亞合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート混合物)を表1記載の配合で撹拌容器に入れ、固形分が40重量%の割合になるようにPGMを用いて希釈し均一に溶解するまで撹拌脱泡し、実施例2~7の光硬化型コーティング剤組成物を調製した。
【0036】
比較例1~4
実施例で用いた材料の他、オリゴマーとしてウレアク3(HDIの三量体とPETAの反応物、9官能)及びウレアク4(HDIとPETAの反応物、6官能)及びウレアク5(イソホロンジイソシアネートの三量体とPETAの反応物、9官能)を、表面未処理シリカとしてPGM-ST(商品名:日産化学社製、平均粒子径10~15nm、PGM分散、固形分30%)及びIPA-ST-L(商品名:日産化学社製、平均粒子径40~50nm、IPA分散、固形分30%)を表1記載の配合で撹拌容器に入れ、固形分が40重量%の割合になるようにPGMを用いて希釈し均一に溶解するまで撹拌脱泡し、比較例1~4の光硬化型コーティング剤組成物を調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
評価項目及び評価方法
【0039】
評価シートの作製
上記で得られたコーティング剤組成物を、TG40UL(商品名:富士フィルム社製、厚み40μm)に硬化後の膜厚が2μmとなるようにバーコーターで塗布し、80℃×60秒で乾燥後、アイグラフィックス社製の高圧水銀UV照射装置4kWアイグランテージ(ECS-4011GX)インバータタイプを用い、出力60mW/cm、積算光量150mJ/cmの条件で硬化させた。
【0040】
透湿度:塩化カルシウム30gの入った透湿カップ(安田精機社製)の上に、上記で作成した評価シートを用い、塗工面を上にして載せてゴムパッキン及び蓋を取り付け、40℃、相対湿度90%の条件で24時間試験前後の質量を測定し、質量差を塗膜表面積(半径30mmの円形)で割ることにより、透湿度を算出した。透湿度が360g/m・24hr以下を◎、360超~500g/m・24hr以下を○、500g/m・24hr超を×とした。
【0041】
塗工性:上記評価シート作成した際、微細な欠点や塗りムラが有っても明らかなハジキが無い場合を○、明らかなハジキ及び欠点がある場合を×とした。
【0042】
耐摩耗性:スチールウール#0000の上に500g(接触面積25mmφ)の荷重を載せて、10往復させ、目視による観察で傷が付かないものを○、傷が付くものを×とした。
【0043】
評価結果
評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例の各コーティング組成物は、透湿度、塗工性、耐摩耗性のいずれの評価においても良好な結果を得た。
【0046】
一方、表面未処理シリカを用いた比較例1は透湿性と耐摩耗性が劣り、9官能のウレアクを用いた比較例2及び4、三量体ではないHDIを用いたウレアクの比較例3は透湿性が劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。