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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022400
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20230208BHJP
   G08C 19/02 20060101ALI20230208BHJP
   G01F 1/84 20060101ALI20230208BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G01F1/00 Y
G08C19/02 A
G01F1/84
H04B3/54
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127259
(22)【出願日】2021-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000103574
【氏名又は名称】株式会社オーバル
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 健二
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
2F073
5K046
【Fターム(参考)】
2F030CA10
2F030CE07
2F030CE09
2F035JA02
2F073GG01
2F073HH08
5K046AA03
5K046BA02
5K046BB05
5K046BB06
5K046PS02
5K046PS06
5K046PS11
5K046PS31
(57)【要約】
【課題】 2線式の価値である2線ケーブルが使用できることおよび、4~20mA出力が得られることは確保しつつ、性能を犠牲にせず高いパフォーマンスを出せる2線式センサ用の信号処理装置を提供する。
【解決手段】 センサ10とセンサが検出した信号を変換する信号変換器100を有する信号処理装置300であって、センサの外部ケーブル接続部20には、一対の半導体式パルス用の出力信号端子120,130および一対の電源端子140,150が備えられ、一対の出力信号端子の一方が所定の抵抗160を介して電源端子の+側に結線されるとともに信号端子の他方と前記電源端子の-側が短絡されてセンサの電源端子より消費される電流にパルス出力回路が消費する電流が重畳された重畳電源線210,220を形成し、センサと信号変換器とは、重畳電源線によって結ばれ、信号変換器が、重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号304のみを抽出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと該センサが検出した信号を変換する信号変換器を有する信号処理装置であって、
前記センサの外部ケーブル接続部には、一対の半導体式パルス用の出力信号端子および一対の電源端子が備えられ、
前記一対の出力信号端子の一方が所定の抵抗を介して前記電源端子の+側に結線されるとともに前記信号端子の他方と前記電源端子の-側が短絡されてセンサの電源端子より消費される電流にパルス出力回路が消費する電流が重畳された重畳電源線を形成し、
前記センサと前記信号変換器とは、前記重畳電源線によって結ばれ、
前記信号変換器が、前記重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出する、ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記信号変換器には、所定の電流検出抵抗と、周波数フィルタまたはコンパレータあるいは該周波数フィルタと該コンパレータの両方が備えられており、前記重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出する、ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記電流検出抵抗、前記周波数フィルタまたはコンパレータあるいは周波数フィルタとコンパレータの両方により前記重畳電流波形からパルス信号のみを抽出するパルス信号抽出フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号を所定の電流信号に変換する周波数/電流変換器をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記センサは3線式もしくは4線式の流量計であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号のパルス数および周波数情報をもとに積算流量値および瞬時流量値を演算し、あらかじめ備えた表示器により積算流量値および瞬時流量値あるいは流量状態による異常警報を表示することを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号の周波数が所定の周波数閾値を上回った、または下回った場合に警報出力を発信することを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
信号処理装置に関し、詳しくは2線式センサ用の信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサはその用途に応じて様々な出力を備えている。例えば、コリオリ流量計は、チューブの捩れを検出するアナログ信号を検出して、その信号を電流として送出する(特許文献1参照)。
【0003】
センサからの信号を送出する方式には、一般的に2本の電線のみでセンサへの電源供給とセンサからの信号出力を兼用する「2線式センサ」と電源系統と信号系統が分離された「3線以上の電線で構成されるセンサ」がある。「2線式センサ」は、工業用途において既に一般化した汎用技術であり、流量計以外にも圧力伝送器や温度伝送器などで製品化されている。「2線式」は、機器への直流電源供給を行う電源線を流れる電流、すなわち機器の消費電流を、機器の計測値に応じて計装用アナログ出力に相当する4~20mAの信号に制御するものである(特許文献2参照)。
【0004】
また、センサの電子回路への電源供給と信号線を分離する「3線以上の電線で構成されるセンサ」は、受け側の回路はシンプルとすることができるが、「2線式センサ」と比較して、配線工数(配線コスト)が多くなるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4952820号
【特許文献2】特許第3139502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機器自体が素で消費する電流は、アナログ出力電流よりも低く、基本的には4mA以下でなければならない。したがって、特許文献1で開示された技術は、この設計的制約のため、2線式を実現できる機器は、基本的に4mAの消費電流で動作できる低消費の計測器に限定される。
【0007】
さらに、2線式を実現できる場合においても、特許文献1にて開示されたコリオリ流量計のような比較的大きな電流を消費する流量計においては、消費電流を抑制して2線式を実現することとなり、2線式ではないコリオリ流量計に比べ性能が犠牲になる傾向となる。
【0008】
また、特許文献2にて開示された一般的な2線式の場合、得られる信号は4~20mA信号=瞬時値であるため、流量計においてはリアルタイムでの積算流量情報が得られないという課題もあった。しかしながら、前記したように、2線式センサは3線式やさらに線を多くしたセンサと比べて配線工数が大幅に削減されることで、装置全体のトータルコスト低減や装置の早期立ち上げを実現できる。
【0009】
流量計の場合は、長い歴史を持つ外部電源不要な機械式(ギア式やタービン式)でかつ接点パルス出力を有し、積算流量に相当するパルス信号だけを2線ケーブルで伝送することができるものがある。この2線式(機械式)流量計では、リアルタイムの積算情報を得ることができる反面、外部電源が不要な機械式に限定されるため、多機能で使い勝手がよく基本的にメンテナンスフリーな最新の電子式流量計に置き換えることができないという課題もあった。
【0010】
そこで、本発明はこれらの実情に鑑みてなされたものであり、2線式の価値である2線ケーブルが使用できること(電源供給と信号伝送を兼用。コスト抑制)および、4~20mA出力が得られること(汎用的な計装用信号が得られる)」は確保しつつ、性能を犠牲にせず高いパフォーマンスを出せる2線式センサ用の信号処理装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の技術手段は、センサと該センサが検出した信号を変換する信号変換器を有する信号処理装置であって、前記センサの外部ケーブル接続部には、一対の半導体式パルス用の出力信号端子および一対の電源端子が備えられ、前記一対の出力信号端子の一方が所定の抵抗を介して前記電源端子の+側に結線されるとともに前記信号端子の他方と前記電源端子の-側(0V)が短絡されてセンサの電源端子より消費される電流にパルス出力回路が消費する電流が重畳された重畳電源線を形成し、前記センサと前記信号変換器とは、前記重畳電源線によって結ばれ、前記信号変換器が、前記重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出する、ことを特徴としたものである。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第2の技術手段は、前記信号変換器には、所定の電流検出抵抗と、周波数フィルタまたはコンパレータあるいは該周波数フィルタと該コンパレータの両方が備えられており、前記重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出する、ことを特徴としたものである。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第3の技術手段は、前記電流検出抵抗、前記周波数フィルタまたはコンパレータあるいは周波数フィルタとコンパレータの両方により前記重畳電流波形からパルス信号のみを抽出するパルス信号抽出フィルタをさらに備えることを特徴としたものである。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第4の技術手段は、前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号を所定の電流信号に変換する周波数/電流変換器をさらに備えることを特徴としたものである。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第5の技術手段は、前記センサは3線式もしくは4線式の流量計であることを特徴としたものである。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の第6の技術手段は、前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号のパルス数および周波数情報をもとに積算流量値および瞬時流量値を演算し、あらかじめ備えた表示器により積算流量値および瞬時流量値あるいは流量状態による異常警報を表示することを特徴としたものである。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の第7の技術手段は、前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号の周波数が所定の周波数閾値を上回った、または下回った場合に警報出力を発信することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高性能、かつ、オープンコレクタパルス出力を有する3線式(または4線式)のセンサにおいて、電源+線とオープンコレクタの+を所定の抵抗で接続することにより、電源線には流量計の本来の消費電流(急峻な変化はしない)にオープンコレクタパルスの消費電流(1Hz~数kH程度のパルス信号)を重畳させる。そして、上位側機器とのインターフェイスとなる信号変換器においては、所定の周波数フィルタにより、消費電流波形から、パルス信号のみを抽出するができる。さらに、パルス信号を周波数/電流(F/I)変換を行うことで、4~20mAの出力を行い、かつ、パルス出力も行うことができる。
【0019】
また、本発明によれば、3線以上の電線で構成されるセンサの利点を活かしつつ、配線コストを抑えた2線式の流量計(例えば、面積式、差圧式など)で構成された既設の計装システムを提供できる。すなわち本発明に係る信号処理装置を用いれば、既設の2線ケーブルと既設の上位受信機器は変更せずに、流量計だけを2線式ではない高性能なコリオリ流量計に更新することも可能となる。
【0020】
例えば、外部電源不要な機械式で、かつ、接点パルス出力(積算流量に相当)機能を有する2線式流量計は、従来、外部電源供給を必須とするコリオリ流量計に置き換えることは不可能であった。しかしながら、本発明に係る信号処理装置ではパルス出力も得られるため、既設の2線ケーブルと既設の上位受信機器は変更せずに、流量計だけを2線式ではない高性能なコリオリ流量計に更新することも可能となる。
【0021】
このように、本発明は、2線式の価値である2線ケーブルが使用できること(電源供給と信号伝送を兼用できることからコスト抑制できる)および、4~20mA出力が得られること(汎用的な計装用信号を得ることができる)は確保しつつ、性能を犠牲にせず高いパフォーマンスを出せる2線式センサ用の信号処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態における電源に重畳して信号伝送を行う場合のブロック図である。
図2】従来技術における3線式センサの信号伝送を行う場合のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態におけるセンサ/電源/信号変換を含む信号処理装置の全体構成を説明するブロック図である。
図4】本発明の一実施形態における既設された2線式センサから置き換え例(その1)である。
図5】本発明の一実施形態における既設された2線式センサから置き換え例(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の信号処理装置の好適な一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態における電源に重畳して信号伝送を行う場合のブロック図である。図2は、従来技術における3線式センサの信号伝送を行う場合のブロック図である。図3は、本発明の一実施形態におけるセンサ/電源/信号変換を含む信号処理装置の全体構成を説明するブロック図である。
【0024】
まず、従来の2線式センサの回路においては自身を駆動する電源の供給と信号線を共用しているため、信号としては最も単純で取り扱いやすい接点ON/OFF信号と比較した場合、本来電流が流れない状態であるべきOFFの状態でも回路駆動電流が流れることとなる。
【0025】
また、なるべく抵抗ゼロ、残留電圧ゼロとなってほしいONの状態でも回路駆動が可能なだけの残留電圧を確保する必要があった。すなわち、センサにつなげる負荷や並列直列などの複数センサのつなげ方に対し、制限事項が色々と発生している。
【0026】
また、センサの素の消費電流は制御電流以下(通常4mA以下)としなければならない制約も生じるため、大きな電流を消費するセンサにおいては、2線式を実現できない、もしくは性能を犠牲にして消費電流を下げなければならない傾向となる。
【0027】
次に図2に示す従来技術である3線式において、信号線は、通常オープンコレクタになっていてセンサ電源とは別の電源でも可能となることから、従来の2線式と比べて制限事項を少なくすることができる。しかしながら、図2に示すように3線ケーブルによる配線が必要となり、配線工数が増加していた。
【0028】
詳しくは後述するが、図1の本発明に係る実施形態に係る回路はセンサからの出力については、図2の3線式と同様に、センサ510の外部ケーブル接続部520から一対の半導体式パルス用の信号端子620,630と一対の電源端子640,650を備えるものとしている。なお、端子については、機械的接点でもオープンコレクタのいずれでも良い。なお、図2において外部ケーブル接続部610は模式的に描いており、実態は上記端子が含まれていて、それぞれの参照番号を付した変換器600内の電線に結線されている。
【0029】
このように外部ケーブル接続部520を介して、センサ510の出力は変換器600に送出される。図2の従来技術である3線式においては、変換器600からは、オープンコレクタの信号線620を独立したケーブルとしている。
【0030】
変換器600と電源/信号処理装置800とは、電源線710,730と、オープンコレクタ720によって結線されている。信号を受け取った電源/信号処理装置800は、これらの信号を、例えば、アナログ出力802、パルス出力804に複合処理する。
【0031】
一方、本発明の一実施形態に係る図1の変換器100では、一対の出力信号端子の一方であるオープンコレクタとなっている出力信号端子120が、所定の抵抗160を介して、+側の電源端子150に結線される。さらに他方の信号端子130と-0側の電源端子140とを短絡している。
【0032】
係る回路構成によって、一対の電源端子140,150に接続されたそれぞれのケーブル210,220は、センサの電源端子より消費される電流にパルス出力回路が消費する電流が重畳された重畳電源線210,220となる。
【0033】
変換器100と電源/信号処理装置300とは、2本の重畳電源線210,220とによって結線されている。信号を受け取った電源/信号処理装置300は、これらの信号をアナログ出力302、パルス出力304等に処理する。
【0034】
次に図3も併せて参照して、電源/信号処理装置300について詳しく説明する。センサ10から出力された信号は、外部ケーブル接続部20、変換器100を介して、重畳電源線210,220によって、電源/信号処理装置300へ送出される。
【0035】
電源/信号処理装置300は、所定の電流検出抵抗310と、周波数フィルタまたはコンパレータあるいは周波数フィルタとコンパレータの両方が備える構成とすることができる。図3に示す実施形態では、波形フィルタ330として、周波数フィルタまたはコンパレータのいずれか、もしくはその両方を表している。また、重畳電源線210,220は、センサへの電源供給ための電源320と結線している。
【0036】
波形フィルタ330の前後での波形は例えば、波形312、波形332に示すように波形フィルタ330により適宜フィイルタリングされる。
【0037】
波形フィルタ330の出力は、演算・制御部340に送出されるものと、そのままパルス出力304とするものとしている。パルス出力304は、計測システムの上位機器へ出力して、種々の処理・分析を行うことができる。
【0038】
本実施形態における演算・制御部340は、例えば、周波数/電流(F/I)変換342によって4~20mAの電流出力302を出力したり、警報制御344によってセンサ10のアラート情報等の警報出力306を出力したり、表示器制御346によって流量表示器350に流量を表示させることができる。
【0039】
すなわち、この構成によれば、重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出することで種々の出力に変換することができる。
【0040】
このように、本発明に係る一実施形態は、高性能、かつ、オープンコレクタパルス出力を有する3線式(または4線式)のセンサの構成を維持しつつ、電源+線とオープンコレクタの+を所定の抵抗で接続する。
【0041】
こうすることで、急峻な変化はしない消費電流にオープンコレクタのパルスの消費電流が重畳する。そして電源/信号処理装置300は、周波数フィルタやコンパレータを備えることで、消費電流波形から、パルス信号のみを抽出する。さらに、パルス信号を周波数/電流(F/I)変換を行うことで、4~20mAの出力を行い、かつ、パルス出力も行うことができる。
【0042】
本発明は、2線式の価値である2線ケーブルが使用できること(電源供給と信号伝送を兼用。コスト抑制)および、4~20mA出力が得られること(汎用的な計装用信号が得られる)」は確保しつつ、性能を犠牲にせず高いパフォーマンスを出せる2線式センサ用の信号処理装置を提供することができる。
【0043】
通常の4~20mA出力の2線式センサについては、20mAまでで駆動させ、センサ駆動(演算・制御含む)に使用できる電流とすれば、4mAまでの間で処理する事となる。しかしながら、本発明に係る一実施形態では、駆動電流が4mAを超え、本来は2線式を構成できない高性能且つ汎用性の高いセンサを用いて2線伝送システムを構築することができる。
【0044】
例えば、3線以上の電線で構成されるセンサの一つである高性能コリオリ流量計では、公称消費電流が約400mAのものがある。この公称消費電流が大きな高性能コリオリ流量計を従来の2線式に対応させる、ずなわち、このセンサを4mAで駆動させるためには、使用するエネルギーを約1/100まで減らす構成とする必要がある。一般的に消費電流を減らすためによく行われる方策は、・デジタル的な処理の分解能を落とす(精度を下げる)、・計算頻度を減らす(応答性を悪くする)などであるが、これらは基本的に性能を下げる処置となる。一方、本発明は、性能を落とさずに従来(今現在も販売している)の3線以上の電線で構成される高性能コリオリ流量計を2線システムに適用することを可能とする。
【0045】
さらに、一般的にコリオリ流量計などのアナログメータであれば、通常動作時の消費電流変化は、緩やかであり急峻な変化はしない。そのため、本発明のように、周波数フィルタを用い、パルス信号を分離・復元することは、一般的な技術で比較的容易に実現が可能である。このように、本発明において、一旦重畳した信号を分離複合した後であっても、複合された信号の品質が劣化する可能性は少ない。
【0046】
次に、2線式センサが既設されている場合に、本発明を適用して3線以上の電線で構成されるセンサに置き換える例について図4、5を参照して説明する。
【0047】
図4を参照すると、(A)に示すように、例えばギア式などの2線式流量計512が既に設置されている場合であっても、(B)に示す4線式の高性能コリオリ流量計12へ容易に置き換えることができる。
【0048】
図4(A)では、ギア式などの2線式流量計512から2線ケーブル910,920を介して上位システム900へパルス信号930を出力する従来、一般的な手段である。一方、図4(B)では、図示しない変換器100を備えた高性能コリオリ流量計12を2線式流量計512に置き換える。そして、図4(A)の2線ケーブル910,920は、重畳電源線210,220として利用する。
【0049】
重畳電源線210,220からの信号(電源)は本実施形態に係る電源/信号処理装置300に送出される。電源/信号処理装置300は、パルス出力304(電流出力302,警報出力306等も可能)に変換され、既設の上位システム900に出力される。このように既設の2線ケーブル910,920(重畳電源線210,220)及び上位システム900はそのままに、高性能コリオリ流量計12へ置き換えることができる。
【0050】
次に、図5(A)では、面積式、差圧式などの2線式流量計514から2線ケーブル910,920を介して上位システム900へ4~20mAの電流信号940を出力する従来、一般的な手段である。一方、図5(B)では、図示しない変換器100を備えた高性能コリオリ流量計12を2線式流量計514に置き換える。そして、図5(A)の2線ケーブル910,920は、重畳電源線210,220として利用する。
【0051】
重畳電源線210,220からの信号(電源)は本実施形態に係る電源/信号処理装置300に送出される。電源/信号処理装置300は、電流出力302(パルス出力304,警報出力306等も可能)に変換され、既設の上位システム900に出力される。このように既設の2線ケーブル910,920(重畳電源線210,220)及び上位システム900はそのままに、高性能コリオリ流量計12へ置き換えることができる。
【0052】
このように、本発明では、従来の2線式伝送(4~20mA出力やパルス出力=センサから上位側へ一方通行の信号伝送)が持つ課題の解決を行うものである。すなわち、本発明は、既設の配線を利用して、2線式の価値である2線ケーブルが使用できること(電源供給と信号伝送を兼用。コスト抑制)および、4~20mA出力が得られること(汎用的な計装用信号が得られる)」は確保しつつ、性能を犠牲にせず高いパフォーマンスを出せる2線式センサ用の信号処理装置を提供する。
【0053】
本発明は、センサより出力されるオープンコレクタパルス信号を電流信号に変換し電源線に重畳することで2線による情報伝送を行うが、伝送された信号は電源/信号処理装置300により、汎用的な計装用信号(4~20mA電流信号やパルス信)に復元されるため、PLCなどの汎用的な上位機器に対して既設の配線を利用して情報を取り込むことも可能としている。なお、本発明に係るいくつかの実施形態について説明したが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
10,12,510,512,514・・・センサ
20,520・・・外部ケーブル接続部
100,600・・・変換器
120,130,620,630・・・出力信号端子
140,150,640,650・・・電源端子
160・・・抵抗
210,220・・・重畳電源線
300,800・・・電源/信号処理装置
302,802・・・アナログ出力
304,804,930・・・パルス出力
306・・・警報出力
312,332・・・波形
310・・・電流検出抵抗
320・・・電源
330・・・波形フィルタ
340・・・演算・制御部
342・・・周波数/電流(F/I)変換
344・・・警報制御
346・・・表示器制御
350・・・流量表示器
710,730・・・電源線
720・・・オープンコレクタ
900・・・上位システム
910,920・・・2線ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと該センサが検出した信号を変換する信号変換器を有する信号処理装置であって、
前記センサの外部ケーブル接続部には、一対の半導体式パルス用の出力信号端子および一対の電源端子が備えられ、
前記一対の出力信号端子の一方が所定の抵抗を介して前記電源端子の+側に結線されるとともに前記信号端子の他方と前記電源端子の-側が短絡されてセンサの電源端子より消費される電流にパルス出力回路が消費する電流が重畳された重畳電源線を形成し、
前記センサと前記信号変換器とは、前記重畳電源線によって結ばれ、
前記信号変換器には、所定の電流検出抵抗と、周波数フィルタまたはコンパレータあるいは該周波数フィルタと該コンパレータの両方が備えられており、前記重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出し、
前記電流検出抵抗、前記周波数フィルタまたはコンパレータあるいは周波数フィルタとコンパレータの両方により前記重畳電流波形からパルス信号のみを抽出するパルス信号抽出フィルタをさらに備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号を所定の電流信号に変換する周波数/電流変換器をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記センサは3線式もしくは4線式の流量計であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号のパルス数および周波数情報をもとに積算流量値および瞬時流量値を演算し、あらかじめ備えた表示器により積算流量値および瞬時流量値あるいは流量状態による異常警報を表示することを特徴とする請求項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号の周波数が所定の周波数閾値を上回った、または下回った場合に警報出力を発信することを特徴とする請求項に記載の信号処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の技術手段は、センサと該センサが検出した信号を変換する信号変換器を有する信号処理装置であって、前記センサの外部ケーブル接続部には、一対の半導体式パルス用の出力信号端子および一対の電源端子が備えられ、前記一対の出力信号端子の一方が所定の抵抗を介して前記電源端子の+側に結線されるとともに前記信号端子の他方と前記電源端子の-側(0V)が短絡されてセンサの電源端子より消費される電流にパルス出力回路が消費する電流が重畳された重畳電源線を形成し、前記センサと前記信号変換器とは、前記重畳電源線によって結ばれ、前記信号変換器には、所定の電流検出抵抗と、周波数フィルタまたはコンパレータあるいは該周波数フィルタと該コンパレータの両方が備えられており、前記重畳電源線を流れる重畳電流波形からパルス出力に相当する信号のみを抽出し、前記電流検出抵抗、前記周波数フィルタまたはコンパレータあるいは周波数フィルタとコンパレータの両方により前記重畳電流波形からパルス信号のみを抽出するパルス信号抽出フィルタをさらに備える、ことを特徴としたものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第の技術手段は、前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号を所定の電流信号に変換する周波数/電流変換器をさらに備えることを特徴としたものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第の技術手段は、前記センサは3線式もしくは4線式の流量計であることを特徴としたものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の第の技術手段は、前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号のパルス数および周波数情報をもとに積算流量値および瞬時流量値を演算し、あらかじめ備えた表示器により積算流量値および瞬時流量値あるいは流量状態による異常警報を表示することを特徴としたものである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の第の技術手段は、前記パルス信号抽出フィルタにより得られたパルス信号の周波数が所定の周波数閾値を上回った、または下回った場合に警報出力を発信することを特徴としたものである。