(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022429
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】マルハナバチを利用した植物栽培システム及び植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230208BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20230208BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127303
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】520251405
【氏名又は名称】株式会社ハンモ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 茂治
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022DA08
2B327ND01
2B327NE01
2B327TA04
2B327TA09
2B327TA23
2B327TA28
2B327UB03
2B327UB05
(57)【要約】
【課題】植物の適正な育成環境を維持しつつ、効率的に授粉させることを可能とする植物栽培システム及び植物栽培方法を提供する。
【解決手段】マルハナバチを利用した植物栽培システムであって、植物を栽培可能な栽培棚と、植物を育成するための育成用光源と、マルハナバチを栽培棚の植物に誘導するための送粉誘導用光源とを備え、送粉誘導用光源は、栽培棚の植物に向かって紫外線を照射するように配置されている。栽培棚は、複数配置され、送粉誘導用光源は、複数の前記栽培棚の間にそれぞれ配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルハナバチを利用した植物栽培システムであって、
植物を栽培可能な栽培棚と、
植物を育成するための育成用光源と、
マルハナバチを前記栽培棚の植物に誘導するための送粉誘導用光源と
を備え、
前記送粉誘導用光源は、前記栽培棚の植物に向かって紫外線を照射するように配置されている
ことを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
前記栽培棚は、複数配置され、
前記送粉誘導用光源は、複数の前記栽培棚の間にそれぞれ配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記送粉誘導用光源は、複数の前記栽培棚の間の通路に沿って複数配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記栽培棚は、植物を栽培可能な栽培ベッドを備え、
前記栽培ベッドは、上方に向けて開口する収容部と、前記収容部の少なくとも一方の側壁から幅方向外側かつ鉛直方向下方に向けて傾斜する傾斜部とを有し、
前記複数の栽培棚は、前記栽培ベッドの前記傾斜部が対向するように配置されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記送粉誘導用光源は、植物工場の天井部に設置される
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記送粉誘導用光源は、波長340nm~400nmの紫外線を照射可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記送粉誘導用光源は、蛍光灯である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【請求項8】
植物工場内においてマルハナバチを利用して植物を栽培する植物栽培方法であって、
植物を育成するための育成用光源から、栽培棚の植物に向かって育成用光を照射し、
マルハナバチを植物に誘導するための送粉誘導用光源から、前記栽培棚の植物に向かって紫外線を照射する
ことを特徴とする植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルハナバチを利用した植物栽培システム及び植物栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物工場等での植物の栽培において、植物工場内の病害菌やカビの繁殖を防止するために、太陽光に含まれる紫外線を遮蔽する農業用フィルムが用いられている(例えば、特許文献1)。また、植物工場において、花粉を媒介して授粉を行わせるために、ミツバチを利用する方法が用いられている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-205847号公報
【特許文献2】特開2013-226132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の農業用フィルムを用いて紫外線を遮蔽した環境下では、送粉昆虫の活動に必要な紫外線が不足するため、送粉昆虫が飛翔しないおそれがある。また、特許文献2のような方法では、紫外線を遮蔽した環境下において、ミツバチの授粉活動を可能とするために、植物に近紫外線を照射する光源が設けられているが、このような近紫外線を照射する光源は、特定の植物において、育成しにくいおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、植物の適正な育成環境を維持しつつ、効率的に授粉させることを可能とする植物栽培システム及び植物栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明に係る植物栽培システムは、マルハナバチを利用した植物栽培システムであって、植物を栽培可能な栽培棚と、植物を育成するための育成用光源と、マルハナバチを前記栽培棚の植物に誘導するための送粉誘導用光源とを備え、前記送粉誘導用光源は、前記栽培棚の植物に向かって紫外線を照射するように配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記栽培棚は、複数配置され、前記送粉誘導用光源は、複数の前記栽培棚の間にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0008】
この場合において、前記送粉誘導用光源は、複数の前記栽培棚の間の通路に沿って複数配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記栽培棚は、植物を栽培可能な栽培ベッドを備え、前記栽培ベッドは、上方に向けて開口する収容部と、前記収容部の少なくとも一方の側壁から幅方向外側かつ鉛直方向下方に向けて傾斜する傾斜部とを有し、前記複数の栽培棚は、前記栽培ベッドの前記傾斜部が対向するように配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記送粉誘導用光源は、植物工場の天井部に設置されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記送粉誘導用光源は、波長340nm~400nmの紫外線を照射可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記送粉誘導用光源は、蛍光灯であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る植物栽培方法は、植物工場内においてマルハナバチを利用して植物を栽培する植物栽培方法であって、植物を育成するための育成用光源から、栽培棚の植物に向かって育成用光を照射し、マルハナバチを植物に誘導するための送粉誘導用光源から、前記栽培棚の植物に向かって紫外線を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物の適正な育成環境を維持しつつ、効率的に授粉させることを可能とする植物栽培システム及び植物栽培方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る植物栽培システムを概略的に示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る栽培棚及び送粉誘導用光源の配置図である。
【
図3】本実施形態に係る植物栽培システムを概略的に示す正面図である。
【
図4】本実施形態に係る植物栽培システムを概略的に示す側面図である。
【
図5】栽培ベッドの断面を概略的に示す断面図である。
【
図6】栽培ベッドの断面を概略的に示す断面図である。
【
図7】栽培棚の栽培ベッドを概略的に示す側面図である。
【
図8】マルハナバチの飛翔経路の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る植物栽培装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0017】
本実施形態に係る植物栽培システム1は、
図1~
図4に示すように、植物3を栽培可能な栽培棚10と、植物3を育成するための育成用光源20と、マルハナバチを栽培棚10の植物3に誘導するための送粉誘導用光源30とを備えている。なお、栽培対象とする植物3は、例えば、イチゴ、トマト、ミニトマト、メロン、スイカ等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、種々の植物を栽培対象とすることが可能である。また、栽培方法としては、例えば土壌栽培、水耕栽培等の栽培方法が例示されるが、これらに限定されるものではなく、種々の栽培方法を使用することが可能である。
【0018】
植物工場100内には、マルハナバチの巣箱5(
図2参照)が設けられ、栽培される植物3に適した温度に調整されている。マルハナバチによる受粉時には、例えば、18~25℃に調整される。マルハナバチの種類は、例えば、セイヨウオオマルハナバチ、クロマルハナバチ等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、種々のマルハナバチを利用することが可能である。マルハナバチの数は、1つの植物工場100に、数十~数百匹程度が好ましい。
【0019】
[栽培棚]
栽培棚10は、
図3及び
図4に示すように、植物3を栽培可能に構成されている。具体的には、各栽培棚10は、長方形状に形成された天面部10aと、天面部10aから下方に向けて延びる複数の脚部10bとを有するテーブル状に形成されている。栽培棚10は、
図3及び
図4に示すように、栽培棚10の高さ方向(
図3及び
図4中のZ方向)に複数段設けられている。栽培棚10の各段には、植物3を栽培可能な栽培ベッド12が載置されている。なお、本実施形態において、各段の高さは、同一であるが、これに限定されず、段毎に高さが異なっても良い。
【0020】
栽培棚10は、
図2に示すように、植物工場100内に所定の間隔を空けて複数配置されている。具体的には、本実施形態に係る栽培棚10は、栽培棚10の奥行方向(
図2中のY方向)に沿って所定の間隔を空けて3台、栽培棚10の長手方向(
図2中のX方向)に沿って2台毎に間隔を空けて4台の計12台が植物工場100内に配置されている。このように、栽培棚10が所定の間隔を空けて配置されることで、複数の栽培棚10の間に通路11が形成されている。また、植物工場100の周壁と栽培棚10の間にも通路11が形成されている。通路11は、マルハナバチが飛翔、帰巣できる十分な幅を有しており、かつ、後述する送粉誘導用光源30から照射される光が、最下段に配置された植物3に届く十分な幅を有している。なお、栽培棚10の数は、図示の例に限定されず、植物工場100の規模等に応じて任意に変更可能である。
【0021】
栽培ベッド12は、
図5に示すように、植物3を栽培可能に構成されている。具体的には、栽培ベッド12は、上面が開放された断面略コの字状の収容部14と、該収容部14の一方の側壁14cから幅方向外側かつ鉛直方向下方に向けて傾斜する傾斜部16と、他方側の側壁14bの鉛直方向に沿う垂直壁部18と備えている。なお、本実施形態において、栽培ベッド12は、傾斜部16及び垂直壁部18を備えているが、これに限定されず、幅方向両端に傾斜部16が形成されていても良い。
【0022】
栽培ベッド12は、
図3及び
図4に示すように、栽培棚10の高さ方向(
図3及び
図4中のZ方向)に複数段設けられる共に、栽培棚10の奥行方向(
図4中のY方向)にも複数列設けられている。本実施形態に係る栽培ベッド12は、
図4に示すように、各栽培棚10において、栽培棚10の高さ方向に4段、奥行方向に2列の計8台が載置されている。なお、栽培ベッド12の数は、図示の例に限定されず、任意に変更可能である。
【0023】
栽培ベッド12は、金属製の板材をロールフォーミングにより成形することで形成されている。ここで、ロールフォーミングとは、複数組の成型ロールによって平らな素材を目的の断面形状に成型する板金加工方法である。本実施形態に係る栽培ベッド12は、このようなロールフォーミングにより成形されることにより、長手方向に沿って繋ぎ目なく連続する大型の栽培ベッド12を構成することができ、これにより、水の液漏れ等のおそれが極めて低いという利点を有する。なお、栽培ベッド12は、本実施形態では、長手方向の長さが例えば3m~18m程度であり、短手方向の長さが例えば60cm程度の長尺な形状を有しているが、これに限定されず、長手方向及び短手方向の長さは任意に設定可能である。
【0024】
栽培ベッド12に用いられる金属としては、例えば、ガルバリウム鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、鉄等が例示され、特にガルバリウム鋼、ステンレス鋼が好適であるが、これに限定されるものではない。また、栽培ベッド12には、金属障害の発生を防ぐために、腐食防止等の種々の公知のコーティング処理等が施されることが好ましい。
【0025】
収容部14は、
図5に示すように、長手方向に沿って延びる長尺状の底面14aと、該底面14aの長手方向に沿って延びる両側縁全域から上方に向けて延びる左右一対の側壁14b,14cとを有する断面略コの字状に形成されている。本実施形態において、収容部14は、1つ配置されている。
【0026】
底面14aには、
図5に示すように、下方に向けて凹む凹部15aが設けられている。凹部15aは、収容部14内にポット4を載置した際に、ポット4の下面と凹部15aとの間に空間が形成されるように構成されている。このように、凹部15aが設けられることで、水はけを良くすることができるという利点がある。
【0027】
一対の側壁14b,14cは、
図5に示すように、底面14aの側縁全域から上方に向けて延びている。本実施形態において、一方側(傾斜部16側)の側壁14cの高さと、他方側の側壁14b(垂直壁部18側)の高さは、略同位置である。ここで、収容部14の側壁14b,14cの高さとは、載置面から収容部14の側壁14b,14cまでの高さ方向の高さをいう。なお、一方側(傾斜部16側)の側壁14cの高さと、他方側の側壁14b(垂直壁部18側)の高さは、略同位置であるが、これに限定されず、一方側(傾斜部16側)の側壁14cの高さは、他方側の側壁14b(垂直壁部18側)の高さより高く形成されても良い。
【0028】
垂直壁部18は、
図5に示すように、他方側の側壁14bの鉛直方向に沿って延びている。具体的には、垂直壁部18の上端部は、各収容部14の他方側の側壁14bと連結部17を介して連結されている。なお、これに限定されず、他方側の側壁14bの上端部と垂直壁部18の上端部とが、直接連結されていても良い。本実施形態において、栽培ベッド12は、
図6に示すように、各栽培棚10において垂直壁部18同士が接するように栽培ベッド12を左右対称に配置されている。このような垂直壁部18を有することにより、必要に応じて簡単にスケールアップを図ることができるという利点を有する。
【0029】
傾斜部16は、
図5に示すように、収容部14の少なくとも一方の側壁14cから幅方向外側かつ鉛直方向下方に向けて傾斜するよう構成されている。具体的には、傾斜部16の上端部は、各収容部14の一方側の側壁14cと連結部17を介して連結されている。なお、これに限定されず、一方側の側壁14cの上端部と傾斜部16の上端部とが、直接連結されていても良い。本実施形態において、複数の栽培棚10は、
図7に示すように、栽培ベッド12の傾斜部16が対向するように配置されている。具体的には、複数の栽培棚10の間にある通路11を挟んで傾斜部16が向かい合うように配置されている。
【0030】
本実施形態において、傾斜部16の高さは、収容部14の側壁14b,14cの高さと略同位置である。ここで、傾斜部16の高さとは、載置面から傾斜部16の上端部までの高さ方向における直線距離をいう。また、傾斜部16は、長手方向の全域に亘って平滑な面であることが好ましいが、上方に向かって凸となる湾曲面や、下方に向かって凹となる湾曲面等の種々の構成を採用可能である。
【0031】
傾斜部16の傾斜角度θ(
図5参照)は、0°以上90°未満の範囲内において任意に設定することが可能であり、例えば、5°~60°の範囲内であることが好ましく、10°~45°の範囲内であることが更に好ましい。ここで、傾斜部16の傾斜角度θとは、栽培ベッド12を水平面上に載置させた状態における、水平方向に対する傾斜部16の傾斜角度θをいう。このような傾斜角度θとすることで、植物3の茎や実が真下に垂れ下がること防ぎ、植物3の茎や実を支えることが可能となると共に、使用者が収穫し易いという利点がある。
【0032】
傾斜部16は、その表面(収穫対象となる植物3との対向面)に、収穫対象となる植物3が映える色(例えば反対色)の着色が施されていることが好ましく、例えば、収穫対象となる植物3が赤系色(イチゴ等)である場合には、その反対色である緑系色の着色や、白系色の着色が施されていることが好ましい。このような着色が施されることにより、収穫対象となる植物3を視覚的に認識しやすくなり、また、例えば自動収穫ロボット等によるカメラを用いた自動収穫に際し、収穫対象となる植物3の識別精度を高めることが可能となるという利点を有する。
【0033】
[育成用光源]
育成用光源20は、
図3及び
図4に示すように、植物3を育成するための育成光を照射するように構成されている。具体的には、育成用光源20は、栽培棚10の天面部10aの下部側に設けられ、下段の栽培ベッド12を照らすよう構成されている。育成用光源20は、それよりも上部に配置された栽培ベッド12の下面との間に空間が形成されるよう該下面から離間して配置されることが好ましい。また、育成用光源20は、それよりも下部に配置された植物3の上面との間に空間が形成されるよう該上面から離間して配置されることが好ましい。
【0034】
育成用光源20は、植物3の育成に必要な育成光を照射可能な構成であれば良く、例えば直線状に複数のLEDを並べたLED照明灯や直管状蛍光灯等の種々の公知の照明装置を用いることが可能である。育成用光源20の波長は、任意に設定することが可能であり、例えば、波長380~780nmの育成光を照射するように構成されている。また、育成用光源20の紫外線照度は、任意に設定することが可能である。これにより、植物3に与えるストレスを軽減でき、効率的に育成することが可能であるという利点を有する。なお、育成用光源20は、植物3の高さに合わせて、栽培棚10の各段の上面から吊り下げて設置されても良い。育成用光源20は、点灯と消灯を切り替え可能に構成され、点灯や消灯時間を調整することが好ましい。
【0035】
[送粉誘導用光源]
送粉誘導用光源30は、
図3及び
図4に示すように、マルハナバチを栽培棚10の植物3に誘導するための紫外線を照射するように構成されている。具体的には、送粉誘導用光源30は、波長340nm~400nmの紫外線を照射可能に構成されている。本実施形態において、送粉誘導用光源30は、直管状の蛍光灯であり、直線状に複数並べられている。なお、送粉誘導用光源30の波長は、波長340nm~400nmの範囲であれば、任意に設定することが可能である。また、送粉誘導用光源30は、蛍光灯であるが、これに限定されず、例えば、紫外線を発するLEDでも良いし、有機EL等、紫外線を照射する照明であれば、他の照明装置でもよく、異なる種類の光源を併用して用いてもよい。
【0036】
送粉誘導用光源30は、
図3及び
図4に示すように、栽培棚10の植物3に向かって紫外線を照射するように配置されている。本実施形態において、送粉誘導用光源30は、植物工場100の天井部に設置されている。この場合において、送粉誘導用光源30は、室内灯として使用することができる。なお、送粉誘導用光源30は、天井部に設置された既存の室内灯のうち一部を送粉誘導用光源30としても良い。
【0037】
送粉誘導用光源30は、
図2に示すように、複数の栽培棚10の間の通路11に沿って複数配置されている。具体的には、複数配置された送粉誘導用光源30は、各送粉誘導用光源30の近くに位置する栽培棚10の植物3に向かって紫外線を照射するよう配置されている。本実施形態に係る送粉誘導用光源30は、栽培棚10の長手方向(
図2中のX方向)に沿って所定の間隔を空けて4台、栽培棚10の奥行方向(
図2中のY方向)に沿って所定の間隔を空けて4台の計16台が植物工場100内に配置されている。
【0038】
以上説明したとおり、本実施形態に係る植物栽培システム1は、植物3を栽培可能な栽培棚10と、植物3を育成するための育成用光源20と、マルハナバチを栽培棚10の植物3に誘導するための送粉誘導用光源30とを備え、送粉誘導用光源30は、栽培棚10の植物3に向かって紫外線を照射するように配置されている。
【0039】
このような本実施形態に係る植物栽培システム1によれば、紫外線を照射することで、マルハナバチを巣箱5から飛翔させ、通路11を介して植物3に誘導することができる(
図8参照)。植物3に訪花したマルハナバチは、花粉を媒介し、植物3を授粉させることができる。また、送粉誘導用光源30の紫外線を植物3に向かって照射するだけで良いので、特殊な設備を必要とせず、設備投資のコストを削減できる。さらに、送粉誘導用光源30とは別に、育成用光源20が設けられているため、植物3の適切な育成が可能である。これにより、植物3の適正な育成環境を維持しつつ、マルハナバチを用いて効率的に授粉させることができる。
【0040】
また、栽培棚10は、複数配置され、送粉誘導用光源30は、複数の栽培棚10の間にそれぞれ配置されていることにより、より多くの植物3に紫外線を照射可能となるため、効率的に授粉させることができると共に、効率的に植物3の栽培を行うことができる。
【0041】
さらに、送粉誘導用光源30は、複数の栽培棚10の間の通路11に沿って複数配置されていることにより、一つの送粉誘導用光源30で、通路11両側の栽培棚10の植物3に紫外線を照射することが可能となるので、より一層、効率的に授粉させることができる。
【0042】
さらにまた、栽培棚10は、植物3を栽培可能な栽培ベッド12を備え、栽培ベッド12は、上方に向けて開口する収容部14と、収容部14の少なくとも一方の側壁14cから幅方向外側かつ鉛直方向下方に向けて傾斜する傾斜部16とを有し、複数の栽培棚10は、栽培ベッド12の傾斜部16が対向するように配置されている。これにより、傾斜部16上にある植物3に紫外線を照射しやすくなるため、より多くの植物3に紫外線を照射することができるとともに、効率的に授粉させることができる。特に、イチゴを栽培する場合、傾斜部16近傍に花が垂れ下がるため、紫外線を照射しやすい。
【0043】
送粉誘導用光源30は、植物工場100の天井部に設置されることにより、天井部に設置されている既存の室内灯の配線をそのまま使用することができるので、設備投資にかかるコストを削減できる。また、室内灯としても使用することができる。
【0044】
送粉誘導用光源30は、波長340nm~400nmの紫外線を照射可能に構成されている。このような範囲の波長であれば、マルハナバチを飛翔及び訪花させることができる。
【0045】
送粉誘導用光源30は、蛍光灯であることにより、紫外線を照射するための特殊な照明装置を用いることを要しないため、設備投資にかかるコストを削減できる。
【0046】
複数配置された送粉誘導用光源30は、各送粉誘導用光源30の近くに位置する栽培棚10の植物3に向かって紫外線を照射するよう配置されていることにより、送粉誘導用光源30のそれぞれが、近くに位置する植物3に紫外線を照射するので、効率的に授粉させることができると共に、効率的に植物3の栽培を行うことができる。
【0047】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、送粉誘導用光源30は、植物工場100の天井部に設置されるものとして説明したが、これに限定されず、スタンドタイプの送粉誘導用光源を床部に載置しても良い。なお、送粉誘導用光源30は、熱による植物3への影響を防ぐ観点から、植物3と離間して配置されることが好ましい。
【0049】
また、上述した実施形態では、収容部14は、1つ配置されているものとして説明したが、これに限定されず、収容部14は、2つ以上配置されていても良い。例えば、収容部14が、2つ以上配置される場合、栽培ベッド12は、収容部14が幅方向に沿って2つ配置され、栽培ベッド12の幅方向両端部に傾斜部16をそれぞれ有しても良い。
【0050】
上述した実施形態では、栽培棚10は、複数配置され、送粉誘導用光源30は、複数の栽培棚10の間にそれぞれ配置されているものとして説明したが、これに限定されず、種々の構成を採用することが可能である。
【0051】
上述した実施形態では、送粉誘導用光源30は、複数の栽培棚10の間の通路11に沿って複数配置されているものとして説明したが、これに限定されず、種々の構成を採用することが可能である。
【0052】
上述した実施形態では、栽培棚10は、植物3を栽培可能な栽培ベッド12を備え、栽培ベッド12は、上方に向けて開口する収容部14と、収容部14の少なくとも一方の側壁14cから幅方向外側かつ鉛直方向下方に向けて傾斜する傾斜部16とを有し、複数の栽培棚10は、栽培ベッド12の傾斜部16が対向するように配置されているものとして説明したが、これに限定されず、種々の構成を採用することが可能である。
【0053】
上述した実施形態では、送粉誘導用光源30は、波長340nm~400nmの紫外線を照射可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、マルハナバチの活動に必要な紫外線を照射可能な光源であれば、種々の構成を採用することが可能である。
【0054】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1 :植物栽培システム
3 :植物
4 :ポット
5 :巣箱
10 :栽培棚
10a :天面部
10b :脚部
11 :通路
12 :栽培ベッド
14 :収容部
14a :底面
14b :側壁
14c :側壁
15a :凹部
16 :傾斜部
17 :連結部
18 :垂直壁部
20 :育成用光源
30 :送粉誘導用光源
100 :植物工場