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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022453
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20230208BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20230208BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230208BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230208BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L97/02
C08L1/02
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127337
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 萌
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥 一雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 了輔
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB01X
4J002AB02X
4J002AB043
4J002AB04X
4J002AH003
4J002AH00X
4J002BB054
4J002BB12W
4J002BB154
4J002BB15W
4J002BB213
4J002BP014
4J002BP02W
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002FA096
4J002FD016
4J002FD01X
4J002GA00
4J002GC00
4J002GG01
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】 バイオマス材料を含みながら、臭気を改善し、かつ成形性が改良されたポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン樹脂(A)を35質量%~69質量%、相溶化剤(B)を1質量%~5質量%、バイオマスフィラー(C)をMc質量%、無機フィラー(D)をMd質量%で構成され、バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)の合計(Mc+Md)が30~60質量%、かつ、Mc≧Md>0を満たすことを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(A)を35質量%~69質量%、相溶化剤(B)を1質量%~5質量%、バイオマスフィラー(C)をMc質量%、無機フィラー(D)をMd質量%で構成され、バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)の合計(Mc+Md)が30~60質量%、かつ、Mc≧Md>0を満たすことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂(A)が、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
バイオマスフィラー(C)が、木、パルプ、セルロースファイバー、竹、サトウキビ(バガス)、もみ殻、米(でんぷん)からなる群より選択される少なくとも一種の植物由来フィラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
無機フィラー(D)が、タルク、炭酸カルシウム、シラスバルーン、パーライト、水酸化アルミニウム、マイカからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
バイオマスフィラー(C)の平均粒子径が5~300μmであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
無機フィラー(D)の比表面積(BET法)が5m/g以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
ポリプロピレン樹脂(A)、相溶化剤(B)、バイオマスフィラー(C)、無機フィラー(D)の合計100質量%からなる100質量部に対し、更に、熱可塑性エラストマー(E)1~50質量部を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる押出成形品、射出成形品、熱成形品、またはブロー成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス材料及び無機フィラーを含むポリプロピレン樹脂組成物、及びそのポリプロピレン樹脂組成物からなる押出成形品、射出成形品、熱成形品、また、ブロー成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、軽量かつ比較的高強度、高耐熱性であり、成形加工も容易であるなど優れた性質を持つため、日用品や自動車部材など幅広い製品分野において、世界中で活用されている。近年、環境問題の対策として、プラスチック使用量の削減が求められている。その一環として、非可食で非枯渇資源であり、大気中のCO2を吸着、固定化し得る、木粉をはじめとするバイオマス材料を活用しポリプロピレンに複合化する材料が多方面で提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ポリプロピレンとバイオマス材料を複合化したポリプロピレン樹脂組成物を各種成形品に成形加工する際には、加工温度が180~200℃に達する。このような温度帯では、バイオマス材料が熱分解し、焼け臭気が発生する。プラスチック使用量を削減するため、バイオマス材料の充填率を高めると、さらに臭気は悪化してしまう。さらに、ポリプロピレンにバイオマス材料を高充填させると、流動性が低下し、特に押出成形や熱成形においては、成形性が悪化してしまう。
【0004】
このため、ウッドデッキ材などの厚みが厚く、後加工で表面状態などを調整できる製品等に用途が限られているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-80832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、ポリプロピレンに、バイオマス材料を比較的多く配合しながら、上記問題点を解決し、臭気の改善と、成形性が改良されたポリプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)を35質量%~69質量%、相溶化剤を(B)1質量%~5質量%、バイオマスフィラー(C)をMc質量%、無機フィラーをMd質量%で構成され、バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)の合計(Mc+Md)が30~60質量%、かつ、Mc≧Md>0を満たすことを特徴とする。
【0008】
ポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であるとよい。
【0009】
バイオマスフィラー(C)は、木、パルプ、竹、サトウキビ(バガス)、もみ殻、米(でんぷん)からなる群より選択される少なくとも一種の植物由来フィラーであるとよい。
【0010】
無機フィラー(D)は、タルク、炭酸カルシウム、シラスバルーン、パーライト、水酸化アルミニウム、マイカからなる群より選択される少なくとも一種であるとよい。
【0011】
バイオマスフィラー(C)の平均粒子径は、5~300μmであるとよい。
【0012】
無機フィラー(D)の比表面積(BET法)が5m/g以上であるとよい。
【0013】
ポリプロピレン樹脂(A)、相溶化剤(B)、バイオマスフィラー(C)、無機フィラー(D)の合計100質量%からなる100質量部に対し、更に、熱可塑性エラストマー(E)1~50質量部を含むことが好ましい。
【0014】
さらに、押出成形品、射出成形品、熱成形品、またはブロー成形品は、上述したポリプロピレン樹脂組成物からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、高いバイオ比率を保持しつつ、成形性、臭気、物性を改善可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリプロピレン樹脂(A)
ポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンランダムブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダムブロック共重合体からなる群より選ばれる一種または二種以上のポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
【0017】
ポリプロピレン樹脂(A)は、チーグラーナッタ触媒により重合されるもの、メタロセン触媒により重合されるもの、ポストメタロセン触媒により重合されるもの等を挙げることができる。チーグラーナッタ触媒としては、チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須とする固体成分、有機アルミニウム、および必要に応じて用いられる電子供与体を含んでなる触媒などが挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物、助触媒、および必要に応じて用いられる有機金属化合物や担体を含んでなる触媒などが挙げられる。ポストメタロセン触媒としては、周期表第4族金属のビスアミド化合物、周期表第8~10族金属のビスイミノ化合物、周期表第4~10族金属のサリチルアルジミナト化合物などの有機金属化合物、助触媒、および必要に応じて用いられる有機金属化合物や担体を含んでなる触媒などが挙げられる。ポリプロピレン樹脂(A)は、市販品を利用することができ、例えば、日本ポリプロ(株)社製ノバテックPPシリーズなどが利用できる。
【0018】
ポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレンを単段重合又は二段以上の多段重合で単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとα-オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合して得られるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単段重合又は二段以上の多段重合で単独重合してプロピレン単独重合体を得る重合工程(1)とプロピレンとα-オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合してプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を得る共重合工程(2-1)または二種以上のα-オレフィンを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合してα-オレフィン間ランダム共重合体を得る共重合工程(2-2)を含む重合で得られるプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体、プロピレンとα-オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合して得られるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を得る共重合工程(1)とプロピレンとα-オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合してプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を得る共重合工程(2-1)または二種以上のα-オレフィンを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合してα-オレフィン間ランダム共重合体を得る共重合工程(2-2)を含む重合で得られるプロピレン・α-オレフィンランダムブロック共重合体などを挙げることができる。また、ポリプロピレン樹脂(A)としては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0019】
α-オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4~18のα-オレフィンである。具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等を挙げることができる。また、α-オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0020】
ポリプロピレン樹脂(A)は、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1~150g/10分、より好ましくは1~100g/10分、さらに好ましくは3~50g/10分である。MFRが上記範囲内であると、シートを押出成形する際に、押出機への負荷が抑えられ、成形性が向上し、好ましい。ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kg荷重で測定される値である。ポリプロピレン樹脂(A)のMFRは、重合時の水素濃度等を制御することにより調整することができる。
【0021】
さらにポリプロピレン樹脂(A)において、ポリプロピレンを電子線架橋したもの、パーオキサイド等を用いて架橋したもの、もしくは重合で長鎖分岐を導入したもの、分子量分布を広くしたものなど、いわゆる高溶融張力ポリプロピレンを配合させることが好ましい。これらの高溶融張力ポリプロピレンは、シート押し出しの際のシートの垂れ下がりを抑制し、さらに2次成型時のシートの垂れ下がりを抑制し、延伸時の均一な伸びに寄与するため、加工性がよい。高溶融張力ポリプロピレンは次式であらわされる溶融張力(MT)を有することが好ましい。溶融張力(MT、単位:cN)は、
好ましくは、log(MT)>-0.9×log(MFR)+0.5、
およびlog(MT)<1.40(MT<25)を満たし、
より好ましくは、log(MT)>-0.9×log(MFR)+0.6、
およびlog(MT)<1.04(MT<11)を満たし、
さらに好ましくは、log(MT)>-0.9×log(MFR)+0.7、
およびlog(MT)<0.85(MT<7)を満たす。これらの材料の一例としては、日本ポリプロ社のWAYMAX,ボレアリス社のDaployなどがあげられる。
【0022】
ここで、溶融張力(MT)は、キャピログラフを使用して測定される値である。樹脂を温度230℃に加熱した直径9.6mmのシリンダーに入れて溶融し、押し込み速度20mm/分で、溶融樹脂を直径2.0mm、長さ40mmのオリフィスから押し出す。押し出される樹脂を、速度4.0m/分で引き取る時にプーリーに検出される張力(単位:cN)を測定し、これを溶融張力(MT)とする。
【0023】
相溶化剤(B)
ポリプロピレン樹脂組成物は、相溶化剤(B)を含む。好ましく使用される相溶化剤としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された熱可塑性樹脂、並びに不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたセルロース系材料、リグノセルロース系材料、でんぷん系材料などが挙げられる。さらに、油変性アルキッド樹脂又はそれらの誘導体、加工でんぷん又はそれらの誘導体を用いることもできる。
【0024】
飽和カルボン酸としては、無水コハク酸、コハク酸、無水フタル酸、フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水アジピン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、ソルビン酸、アクリル酸等が挙げられる。飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体としては、飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等を使用することができる。
【0025】
また、相溶化剤(B)として、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された熱可塑性樹脂、並びに不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたセルロース系材料、リグノセルロース系材料、でんぷん系材料などを使用することができる。不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された熱可塑性樹脂に用いる変性前の熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を著しく損なうものでなければ特に限定はなく、具体的には、低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体などを挙げることができる。このうち、ポリプロピレン樹脂(A)と同一のものであることが好ましい。
【0026】
相溶化剤(B)は、熱可塑性樹脂又はセルロース系材料、リグノセルロース系材料、でんぷん系材料などの母材と、不飽和カルボン酸又はその誘導体と、ラジカル発生剤とを溶媒の存在下又は不存在下に加熱混合することにより得られる。不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、0.1~15質量%が好ましく、特に1~10質量%が好ましい。本発明で使用される相溶化剤(B)としては、臭気が無く、酸性度が小さい不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した熱可塑性樹脂、並びに不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性したセルロース系材料、リグノセルロース系材料、でんぷん系材料などが好ましい。
【0027】
上記相溶化剤(B)の含有量は、ポリプロピレン樹脂組成物中1~5質量%である。1質量%未満では、相溶化剤の効果が現れず、5質量%を超えると、上記ポリプロピレン樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。相溶化剤(B)は、ポリプロピレン樹脂組成物中、好ましくは1.5~4.5質量%、より好ましくは2~4質量%含有するとよい。
【0028】
バイオマスフィラー(C)
バイオマスフィラー(C)は、動植物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであり、好ましくは植物由来の有機性資源で化石資源を除いたものである。植物由来の有機性資源で化石資源を除いたものとしては、リグノセルロース系材料、セルロース系材料、でんぷん系材料などを挙げることができる。
【0029】
リグノセルロース系材料としては、リグノセルロース系繊維、リグノセルロース系粉末が挙げられる。具体的には、木材パルプ、リファイナー・グラフト・パルプ(RGP)、製紙パルプ、古紙、粉砕処理した木片、木粉、果実殻粉等を挙げることができる。木粉の具体例としては、例えば、松、モミ、ポプラ、竹、バガス、オイルパーム樹幹等の粉砕物や鋸屑、カンナ屑などがあり、果実殻粉としては、クルミ、ピーナッツ、ヤシ等の果実の粉砕物がある。
【0030】
セルロース系材料としては、木材パルプをアルカリ処理し、機械的に細断したアルファ繊維フロックや綿実から得られるコットンリンター、コットンフロック、人絹を細断した人絹フロック、セルロースファイバー等を挙げることができる。
【0031】
これらリグノセルロース系材料、セルロース系材料の形状には、特に制限はなく、繊維状、粉末状のものが使用できる。
【0032】
リグノセルロース系材料またはセルロース系材料は、リグノセルロース系材料又はセルロース系材料の水酸基に、多塩基酸無水物が付加されてなるエステル化リグノセルロース系材料又はエステル化セルロース系材料、リグノセルロース系材料又はセルロース系材料の水酸基に、多塩基酸無水物とモノエポキシ化合物とが付加されてなるオリゴエステル化リグノセルロース系材料又はオリゴエステル化セルロース系材料、およびリグノセルロース系材料又はセルロース系材料の水酸基に、多塩基酸無水物と多価アルコールとが付加されてなるオリゴエステル化リグノセルロース系材料又はオリゴエステル化セルロース系材料であってもよい。
【0033】
多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ジクロロマレイン酸、無水イタコン酸、無水テトラブロモフタル酸、無水ヘット酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸、等が挙げられるが,特に工業的に有利で安価な無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましい。
【0034】
モノエポキシ化合物としては、分子中に1個のエポキシ基を含む化合物であればよく、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテール、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0035】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ピナコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール400等が挙げられる。
【0036】
エステル化を行なわせる一般的な方法としては、リグノセルロース系材料又はセルロース系材料の存在下で前記多塩基酸無水物(もしくは前記多塩基酸無水物と前記モノエポキシ化合物、もしくは前記多塩基酸無水物と前記多価アルコール)を混合し60~150℃の温度で0.5~8時間反応させるとよい。
【0037】
リグノセルロース系材料又はセルロース系材料中の水酸基に前記多塩基酸無水物と前記モノエポキシ化合物を交互に付加エステル化させる反応の場合は、無触媒下でも充分に進行するが、反応を促進させるために炭酸ナトリウム、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、ビリジン等の塩基性触媒を用いてもよい。また、付加エステル化触媒を使用してもよい。
【0038】
そして、前記多塩基酸無水物及び前記モノエポキシ化合物のオリゴマーの分子量は、利用のしやすさ、効果の点から、液状を示しうる20~1000程度(重合度は5以下が好ましく、1のものも含む)であることが好ましい。
【0039】
また、前記多塩基酸無水物と前記モノエポキシ化合物の配合量は次の通りである。まず、前記多塩基酸無水物は、乾燥したリグノセルロース系材料又はセルロース系材料100質量部に対して、好ましくは5~120質量部、より好ましくは10~100質量部使用する。そして、前記モノエポキシ化合物は、使用する前記多塩基酸無水物の無水酸基1当量に対しエポキシ基0.5~2.0当量にするのが好ましい。これは、前記多塩基酸無水物を、乾燥したリグノセルロース系材料又はセルロース系材料100質量部に対し120質量部以下使用することにより、リグノセルロース系材料又はセルロース系材料の含量を維持して、熱圧成形時にしみ出するのを抑制するため好ましく、また、5質量部以上使用することにより熱圧流動性を確保し、更に、均一な成形品が得られ易くするので好ましい。
【0040】
リグノセルロース系材料又はセルロース系材料の水酸基に前記多塩基酸無水物と前記多価アルコールを交互に付加エステル化させる反応の場合は、前述したモノエポキシ化合物を前記多価アルコールに替えて行なえばよい。
【0041】
でんぷん系材料の具体例としては、例えば、米、小麦、とうもろこし、サトウキビ、馬鈴薯、甘藷、タピオカ、コーンでんぷん、馬鈴薯でんぷん、芋でんぷん、タピオカでんぷん及びそれらの軽度アセチル化物などを広く用いることができる。でんぷんを含有する農作物であれば、これらに限定されることはなく用いることができる。またこれらでんぷん系材料は、備蓄される時の一般的な状態そのままであったり、洗浄したり、外皮等のでんぷんを含まない部分を取り除いたり、適当な大きさに切断したりするなどの簡単な前処理を施す程度で用いることができる。でんぷん系材料は、通常、顆粒状で得られるが、これらをそのまま用いることができる。
【0042】
また、原料として用いられるでんぷん系材料は、このような簡単な前処理を施した後、下記の要領でα化処理が行われるとさらに好ましい。つまり、でんぷん系材料を構成するでんぷんは、当初において結晶構造(β構造)を有しているが、適当な量の水分の存在下で70℃以上の温度環境におくと、このβ構造が崩れて非晶構造(α構造)に変化する。このように、生のでんぷんが水分を含んで加熱されることにより、β構造からα構造に変化することを糊化するという。この糊化した系材料のα構造を示すでんぷん粒は、当初の被加熱状態(生状態)のβ構造であった場合と比較して、熱流動するポリプロピレン樹脂中ででんぷんの分子レベルで解れて微細に均一に分散しやすい状態になる。
【0043】
このような、β構造を有するでんぷんをα構造にする具体的な処理としては、水に浸漬させて煮沸させたり、水蒸気で蒸して行ったりするような、一般に食用に供する際に行う熱処理を加える方法が挙げられる。
【0044】
ところで、α構造の非晶状態を有するでんぷんは、水分を含んだまま低温に放置されると、時間経過とともに、もとのβ構造の結晶状態に戻る現象(老化という)が観測されることが一般に知られている。一方、α構造の非晶状態を有するでんぷんから水分を取り除けば、その後、低温で長期間放置してもでんぷんはα構造を維持したままβ構造に可逆転移しない(老化しない)ことが知られている。
【0045】
そこで、本発明の原料として用いられるでんぷん系材料は、でんぷんの構造がα構造(非晶構造)であるもので、水分を含んだ状態、及び、水分を含まない(脱水された)状態の両方をも含むこととする。いずれにしても、ポリプロピレン樹脂に配合されるでんぷん系材料のでんぷん構造がα構造(非晶構造)であれば、後記する混練処理の際、ポリプロピレン樹脂のマトリックスの中ででんぷんの分子鎖がほぐれて、微細化して分散されやすくなる。これは、でんぷん構造がβ構造(結晶構造)である非加熱のでんぷん系材料を配合した場合には得られない効果である。
【0046】
ところで、脱水されたα構造のでんぷん系材料を得る方法は、具体的には、水分の存在下で加熱して糊化させた後、そのまま真空装置により雰囲気を減圧することによる。このような、脱水されたα構造のでんぷん系材料を使用することにすれば、老化しにくいのででんぷん系材料を単体で長期保存することが可能になり、ポリプロピレン樹脂組成物の製造期間短縮や製造コスト削減に寄与することとなる。
【0047】
なお、前記した、β構造を有するでんぷんをα構造にする際に用いられる水には、トレハロースが溶解されていることとする。このことの効果は、例えば、でんぷん系材料として米を適用した場合にあっては、トレハロース水溶液が生米に含浸することにより、米の脂質成分の分解をトレハロースが抑える作用が得られ、製造された米を用いたポリプロピレン樹脂組成物の経時的な劣化が抑制されることである。この理由は、トレハロースが、米成分をコーティングして、酸化分解から脂肪酸を護る作用を有するためといわれている。
【0048】
このような効果は、米に限定されることなく一般的なでんぷん系材料においても発揮されるといえ、またそのような作用を有するものとして、前記したトレハロース以外に、塩、ショ糖、酸化防止剤、たんぱく質分解促進剤、セルロース分解促進剤等が挙げられる。なお、これらのものを水に添加してα構造にしたでんぷん系材料を配合することにより、製造されたポリプロピレン樹脂組成物の特有の臭気、焦げ、色付を防止する効果も得られる。
【0049】
さて、これまで原料として配合されるでんぷん系材料として、すでにα化処理が施されたものを用いることについて説明してきたが、後記する製造方法により、β構造を有するでんぷん系材料が水分を含むものである場合も用いることができる。
【0050】
具体的には、生米を水に所定時間だけ浸漬させ、水切りを行ってから、混練機に、ポリプロピレン樹脂と共に投入し、ポリプロピレン樹脂の熱流動温度で混練する。この熱流動温度(通常は100~170℃)は、生米のでんぷん構造をβ構造からα構造に転移させるのに充分な温度であるため、混練の過程において生米はα化処理されることになる。このように、生米がα構造に変化した後に関しては、既に前記したように、でんぷんの分子鎖がほぐれて、微細化してポリプロピレン樹脂のマトリックス中に分散していく。
【0051】
ここで、β構造の生米が加熱されてα化構造になるのには、水分含有量が17質量%以上であることが望まれ、このためには水への浸漬時間を5分以上にすることが好ましい。また、例えば馬鈴薯のような、自身ででんぷんをα構造にするのに充分な水分を含む、でんぷん系材料に関しては、米のように水に浸漬させる処理は必要なくそのまま混練機に投入することができる。
【0052】
バイオマスフィラー(C)は、木、パルプ、セルロースファイバー、竹、サトウキビ(バガス)、もみ殻、米(でんぷん)からなる群より選択される一種または二種以上の植物由来フィラーであることが好ましい。
【0053】
バイオマスフィラー(C)は、平均粒子径が、好ましくは5~300μm、より好ましくは10~200μmである。上記範囲内であると、混練時に平均粒子径が小さいことによる二次凝集が起こりにくく、物性や成形性が低下することを抑えられる。また、上記範囲内であると、平均粒子径が大きいことによる押出成形や熱成形の際の穴あきの発生を抑えられる。
【0054】
ここで、平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置を用いて測定される値であり、体積蓄積分布の積算値が50%となる値をいう。測定装置としては、例えば、堀場製作所製LA-920型が挙げられる。
【0055】
(D)無機フィラー
無機フィラー(D)は、通常ポリプロピレン樹脂に使用されている無機フィラーであり、タルク、炭酸カルシウム、シラスバルーン、パーライト、水酸化アルミニウム、マイカなどを挙げることができる。上記無機フィラー(D)は、上記ポリプロピレン樹脂組成物を製造する際に発生する、バイオマスフィラー(C)由来の焼け臭気を低減することができ、さらに、ポリプロピレン樹脂の使用を大幅に削減しつつ、成形性を保持することが可能である。さらに、無機フィラーを通常ポリプロピレン樹脂に使用する場合と同様に、物性を向上させることができる。
【0056】
無機フィラー(D)は、タルク、炭酸カルシウム、シラスバルーン、パーライト、水酸化アルミニウム、マイカからなる群より選択される一種または二種以上の無機フィラーであることが好ましい。
【0057】
無機フィラー(D)は、比表面積(BET法)が、好ましくは5m/g以上、より好ましくは5~30m/gである。比表面積が上記範囲内であると、バイオマスフィラー(C)由来の焼け臭気を吸着し抑制する効果が大きい。
【0058】
ここで、BET法に求められる比表面積は、自動ガス吸着量測定装置を用いた、窒素吸着測定より算出される値である。
【0059】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)35質量~69質量%、相溶化剤(B)1質量%~5質量%、バイオマスフィラー(C)をMc質量%、無機フィラー(D)をMd質量%含有し、バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)の合計(Mc+Md)が30~60質量%、かつ、Mc≧Md>0を満たすように構成される。好ましくは、ポリプロピレン樹脂(A)43質量%~68質量%、相溶化剤(B)2質量%~4質量%、かつ、バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)の合計(Mc+Md)が30~55質量%で構成される。
【0060】
ポリプロピレン樹脂(A)が35質量%未満では複合材の流動性が極端に低下し、成型加工ができなくなる。また、69質量%を超えると本発明の特徴であるバイオ化率が低減し、さらに物性の向上効果が発現しずらくなる。相溶化剤(B)が1質量%未満ではポリプロピレン樹脂(A)とバイオマスフィラー(C)との親和性が低下し、バイオマスフィラー(C)の凝集等が発生しやすくなり、また物性の低下にもつながる。また、5質量%を超えると相溶化剤(B)が有する着色、臭気、焼けやすさなどの欠点が顕著になり、また相溶化剤(B)自体の物性は一般的にポリプロピレン樹脂(A)よりも悪いため、その影響が顕著になる。また、相溶化剤(B)は一般的に流動性が高いため、押出シートの成型性、熱成型性の悪化も引き起こす。
【0061】
バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)の合計(Mc+Md)が30質量%未満では、プラスチック使用量削減の観点から、効果は期待できず、60質量%を超えると、成形性や流動性が悪化する。
【0062】
無機フィラー(D)の含有量Mdは、バイオマスフィラー(C)の含有量Mcと、Mc≧Md>0の関係式を満たす。好ましくは、5×Md≧Mc≧1.2×Md>0の関係式を満たす。上記範囲内であると、混練時のせん断発熱が抑えられ、バイオマスフィラーの焼けによる臭気がより低減でき、また、ポリプロピレン樹脂組成物の成形品の外観をより向上させることができる。なお、上述した関係式からも明らかなように、バイオマスフィラー(C)の含有量Mcおよび無機フィラー(D)の含有量Mdは、いずれも0より大きい。
【0063】
(E)熱可塑性エラストマー
ポリプロピレン樹脂組成物には、任意であるが、熱可塑性エラストマー(E)を含んでいてもよい。熱可塑性エラストマー(E)としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等を挙げることができる。これらを単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体等のエチレン・α-オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレン共重合体(CEBC)等の水添ポリマー系エラストマー等を挙げることができる。なかでもエチレン・プロピレン共重合体エラストマー、エチレン・ブテン共重合体エラストマー、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマーが好ましい。
【0065】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体エラストマー(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体エラストマー(SBBS)、部分水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体エラストマー、部分水添スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン共重合体エラストマー等を挙げることができる。
【0066】
熱可塑性エラストマー(E)は、190℃、2.16kg荷重で測定されるMFRが好ましくは0.1~10g/10分である。熱可塑性エラストマー(E)のMFRが、0.1g/10分以上であると、シートを押出成形する際に、押出機への負荷が抑えられ生産性が向上する。また、MFRが10g/10分以下であると、シートの溶融張力を高く保つことができ、押出成形や熱成形する際に成形体が自重で垂れることがないため好ましい。
【0067】
熱可塑性エラストマー(E)の添加量は、(A)~(D)の合計100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、3~30質量部がより好ましく、5~15質量部がさらに好ましい。添加量が上記範囲内であると、物性バランスが向上する。
【0068】
ポリプロピレン樹脂組成物には、任意成分として、必要に応じて、各種添加剤、例えば造核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、界面活性剤、着色剤、抗菌・防黴剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、導電剤、防腐剤、芳香剤、消臭剤、防虫剤などを配合することができる。これらの任意成分は、2種以上を併用してもよい。
【0069】
プロピレン樹脂組成物の調製方法としては、パウダー状もしくはペレット状のポリプロピレン樹脂(A)、相溶化剤(B)、バイオマスフィラー(C)、無機フィラー(D)および必要に応じて用いるその他の配合剤をドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合する方法を挙げることができる。また、状況に応じて、ゲレーション法などによりあらかじめバイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)とポリプロピレン樹脂(A)および相溶化剤(B)を固着せしめてもよい。また、これらを単軸、もしくは2軸押出機などにより混錬しておく、または高濃度のフィラー含有量として混錬しておきマスターバッチとし、成形時に必要濃度に希釈してもよい。
【0070】
ポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(A)、相溶化剤(B)、バイオマスフィラー(C)および無機フィラー(D)、またはポリプロピレン樹脂(A)、相溶化剤(B)、バイオマスフィラー(C)、無機フィラー(D)および熱可塑性エラストマー(E)と、必要に応じて配合される任意の成分を、混合または単軸押出機、二軸押出機などにより加熱混練して製造することができる。加熱混練の樹脂温度は、好ましくは100℃~300℃の範囲で、混練の負荷、樹脂組成物の色目や臭気などを考慮して適宜定めることができる。
【0071】
ポリプロピレン樹脂組成物は、加圧成形、フィルム成形、真空成形、押出成形、射出成形等の手段により、適宜、所望の形状に成形して各種成形品を製造することができる。この際の成形温度は、100℃~300℃の範囲で、混練の負荷、樹脂組成物の色目や臭気などを考慮して適宜定めることができる。
【0072】
ポリプロピレン樹脂組成物は、各種のフィルム・シート材料、ディスポーザブル成形加工品(例えば、容器、パイプ、角材、棒材、人工木材、トレー、コンクリート・パネル、発泡体等)、家具、建材、自動車用内装材・外装材、家電製品の筐体・ハウジング、土木建築資材、農業・酪農業・水産業用資材、リクリエーション用資材、スポーツ用資材等の素材として有効に用いることができる。
【0073】
またポリプロピレン樹脂組成物は、電気絶縁材料、工業用部品材料、建築用材料等の分野にも好適に利用され、中でも住宅部材、建築材料、家電製品の原料として好適に利用される。具体例としては、トレー、食器類、スピーカー、バスユニット床パン、桶、便座、キャビネット、ステレオキャビネット、巾木、ドアー材、カウンター材、窓枠、遮音板、棚板、土木角材、柱、構造材、厨房部材、床、バス、下地板、ピアノオルガンの親板、建具天井材等を挙げることができる。
【0074】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物によれば、剛性等の物性を維持しながら、化石燃料から製造されるポリプロピレン樹脂の使用量を低減し、結果材料としての二酸化炭素排出量を低減させることができる。
【実施例0075】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
1.評価方法
(1)ペレット臭気
ペレットを100g秤量し、500mlガラス製容器に封入後、80℃で3時間保持した後に、ガラス製容器の蓋を開封し、内部のペレットの臭気を官能的に評価した。臭気の強弱判定は、5人のパネラーによる評価を行い、下記判定基準による点数付けを行い、5人の判定値の平均値を結果とした。
1:はげしくにおう、我慢ができないほど
2:かなりきつく匂う。どういったにおいかは明確にわかる
3:どういった匂いかははっきりとわかるが、苦痛ではない
4:じっくりかぐとどういったにおいかはわかる
5:ほぼにおいがわからない。かすかに匂う程度
【0077】
(2)押出シート成形品および熱成形品の成形性
ペレットをスクリュー口径40mmの押出機に投入し、樹脂温度190℃にてT型ダイスより押出し、表面温度が60℃の鏡面仕上げの金属製キャストロ-ルにて挟み、冷却固化させながら1.0m/分の速度で連続的に引き取り、幅400mm、厚さ0.8mmのポリプロピレン樹脂組成物のシートを得た。押出シート成形の成形性を、次の通りに判定した。
○:シート成形良好。外観等も美観
△:シート成形できるが、表面あれ等の外観不良が確認できる
×:シート成形不可(形状にできない)
【0078】
次に、得られたシートを、40cm×40cmにカットし、多目的熱成形機(株式会社浅野研究所製)を用いて、上下のヒーター(出力80%)でシートの両面を加熱した後、上部の内径が10.8cm、深さ8cmのカップ状の深絞り金型を用いて、真空圧空成形により容器を熱成形した。加熱時間は、18~32秒の範囲で2秒毎の8水準とした。
【0079】
熱成形品の成形性は、(i)熱成形可能な加熱時間範囲の広さ、(ii)容器の外観によって評価した。成形性の判定は次の通りである。
(i)熱成形可能な加熱時間範囲の広さ
◎:容器形状を再現できる(容器形状に賦形できる)加熱時間が3水準以上
○:容器形状を再現できる加熱時間が2水準
△:容器形状を再現できる加熱時間が1水準
×:すべての加熱時間において容器形状を再現できない
(ii)容器の外観(目視)
○:表面に凹凸や模様等は確認できない
△:表面に凹凸や模様等がかすかに確認できる
×:表面に凹凸や模様等が明確に確認できる
【0080】
(3)曲げ弾性率
ペレットを樹脂温度200℃にてJIS K7171に記載の形状に射出成形したテストピース状の試験片を用い、JIS K7171に準拠し、試験温度23℃にて曲げ弾性率を測定した。
【0081】
2.原材料
評価に用いた原材料は以下のとおり。また原材料の物性値等を表1にまとめた。
-ポリプロピレン樹脂(A-1):プロピレン・エチレンブロック共重合体、日本ポリプロ社製ウェイマックス(登録商標)EX4000、MFR6.0g/10分、溶融張力4cN
-相溶化剤(B-1):酸変性低分子量ポリプロピレン、三洋化成社製ユーメックス(登録商標)1001、酸価(JIS K 0070)26mgKOH/g、分子量Mw45000
-バイオマスフィラー(C-1):カジノ社製木粉(100メッシュ)、平均粒径150μm
-無機フィラー(D-1):タルク、日本タルク社製PC25RC、比表面積(BET法)7m/g、平均粒径5.7μm
-無機フィラー(D-2):炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製MSK―PO、比表面積(BET法)10m/g、平均粒径0.15μm
-熱可塑性エラストマー(E-1):三井化学社製タフマー(登録商標)A0550S、MFR1.0g/10分、密度0.860g/cm
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例1~5、比較例1~7)
表1に示す8種類のポリプロピレン樹脂組成物(実施例1~5、比較例1~7)を秤量し、リボンブレンダーにより均一に攪拌混合した。得られた混合物をスクリュー口径15mmの二軸押出機に投入し、樹脂温度190℃で混練し、ストランド状に押出し水冷してペレタイズして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0084】
得られたポリプロピレン樹脂組成物のペレットの臭気、押出シート成形及び熱成形品の成形性、射出成形品の曲げ弾性率を上述した方法で評価した。評価結果を表1にまとめた。