(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022462
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】孔開き積層シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06C 23/04 20060101AFI20230208BHJP
B26F 1/10 20060101ALI20230208BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230208BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20230208BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20230208BHJP
D06B 19/00 20060101ALI20230208BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20230208BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230208BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
D06C23/04 B
B26F1/10
B26D3/00 601C
B26F3/00 E
B26D7/08 A
D06B19/00 Z
B32B3/24
B32B5/26
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127355
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】509254269
【氏名又は名称】株式会社マルヤテキスタイル
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】八木 晴美
(72)【発明者】
【氏名】小西 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 厚三
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 秀規
(72)【発明者】
【氏名】三村 由幸
(72)【発明者】
【氏名】野尻 泰央
【テーマコード(参考)】
3B154
3C060
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】孔開き積層シートであり、模様を有するものを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る孔開き積層シートは、表面の第1の布と裏面の第2の布との間に少なくとも1層の樹脂シートを介在させて、前記第1の布と前記第2の布と前記樹脂シートを貼着した原積層シートを加工した孔開き積層シートである。この孔開き積層シートは、前記第1の布から前記第2の布までを貫通する複数の超音波パンチング孔PHを有し、前記複数の超音波パンチング孔PHの分布密度により前記原積層シートの表面と裏面の少なくとも一方に厚みの薄厚により形成された模様を有している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の第1の布と裏面の第2の布との間に少なくとも1層の樹脂シートを介在させて、前記第1の布と前記第2の布と前記樹脂シートを貼着した原積層シートを加工した孔開き積層シートであって、前記第1の布から前記第2の布までを貫通する複数の超音波パンチング孔を有し、前記複数の超音波パンチング孔の分布密度により前記原積層シートの表面と裏面の少なくとも一方に厚みの薄厚により形成された模様を有したことを特徴とする孔開き積層シート。
【請求項2】
前記樹脂シートは、ウレタンフォームシートであることを特徴とする請求項1に記載の孔開き積層シート。
【請求項3】
前記第1の布は、織物、編物、不織布、合成皮革、天然皮革のいずれかであり、前記第2の布は、不織布、織物、編物のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の孔開き積層シート。
【請求項4】
前記樹脂シートの厚みが3mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の孔開き積層シート。
【請求項5】
超音波パンチング孔を有するパンチング孔領域と超音波パンチング孔が無い非パンチング領域との高さまたは厚みが異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の孔開き積層シート。
【請求項6】
前記パンチング孔領域には、超音波パンチング孔が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられており、非パンチング領域では幅3mm以上の帯状領域に超音波パンチング孔が無いことを特徴とする請求項5に記載の孔開き積層シート。
【請求項7】
表面の第1の布と裏面の第2の布との間に少なくとも1層の樹脂シートを介在させて、前記第1の布と前記第2の布と前記樹脂シートを貼着した原積層シートを加工して孔開き積層シートを製造する孔開き積層シートの製造方法であって、孔開き積層シートに形成される複数の超音波パンチング孔の夫々に対応した複数の凸部を有する金型を、前記原積層シートの表面または裏面に当接させ、超音波振動を伝達する超音波ホーンを、前記金型の表面に対向する位置に設け、前記原積層シートを前記金型と前記超音波ホーンによって移動可能に挟んだ状態として、前記超音波ホーンから前記金型の凸部へ向けて超音波振動を伝達させ、超音波ホーンと前記金型の界面に生ずる摩擦熱により前記原積層シートを溶断させながら、前記原積層シートを前記金型と前記超音波ホーン間を移動させて孔開き積層シートを製造することを特徴とする孔開き積層シートの製造方法。
【請求項8】
前記金型は、前記孔開き積層シートにおける、超音波パンチング孔を有するパンチング孔領域の前記超音波パンチング孔の夫々に対応して凸部が形成されており、超音波パンチング孔が無い非パンチング領域に対応する無凸部エリアには凸部が形成されていないことを特徴とする請求項7に記載の孔開き積層シートの製造方法。
【請求項9】
前記金型は、前記パンチング孔領域に対応する部位では、凸部が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられており、前記非パンチング領域に対応する部位では、幅3mm以上の帯状領域に凸部が形成されていないことを特徴とする請求項8に記載の孔開き積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、孔開き積層シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパンチング加工は、生地の所要位置にポンチを配置し、それに大きな圧力をかけ、打ち抜くという手法が採用されていた。従来のパンチング加工は、繊維質がからんでいる不織布や合成皮革、天然皮革などに限定して適用されていた。
【0003】
しかしながら、現在シート材の主流となっている織物や編物は、従来のパンチング加工が施されると加工孔断面からほつれてしまい、強度低下をきたし実用性能がない。
表地・ウレタンフォーム・裏地で構成される積層シートなどを自動車の椅子の表面素材に用いて、通気性を良くして冷暖房の消費エネルギーを低減し、自動車の燃費向上効果を狙うことも考えられている。このような厚物の積層シート材は加工時の抵抗が大きく、加工できない(所謂薄物しか打ち抜けない)。このように、パンチング加工は所謂薄物にしか適用できないので、平面的な柄(模様)に限定され、凹凸感のある意匠性の高い柄を有する素材を自動車の椅子に適用して通気性の向上により燃費の低減を図るなどができないものである。
【0004】
特許文献1には、シート部材の製造方法が開示されている。この製造方法は、基部が突き刺しピン支持体12に支持され、穿設台に対向して配設された突き刺しピンを用いる。この突き刺しピンを、穿設台に供給されたシート部材の表面から突き刺して、シート部材に微細孔を穿設する。また、この方法では、ライナー部材上に積層されて穿設台に供給されたシート部材の表面に、突き刺しピンの周囲に嵌め込まれた弾性部材を当接させてシート部材を穿設台に固定し、突き刺しピンユニットを下降させシート部材に突き刺しピンを貫通させて、シート部材に微細孔を穿設する。更に、この方法では、微細孔の周縁に形成されたバリをライナー部材の表面に食い込ませ、シート部材とライナー部材とを積層一体化し、突き刺しピンユニットを上昇させてシート部材から突き刺しピンを抜き、弾性部材によって穿設台に固定していたシート部材を穿設台から解放した後、ライナー部材を分離する。
【0005】
また、特許文献2には、回転周面に凹凸模様を形成した回転受けロールを用いて、積層シート材に立体的な凹凸模様を形成することを特徴とする積層シート材の製造方法が開示されている。具体的には、上記回転受けロールと、この回転受けロールに対向して配設された超音波デバイスのホーンとの間に形成された間隙に、厚肉の第1シート材とこの第1シート材よりも薄肉の第2シート材とを積層するようにしてシート材を供給して、前記間隙の近傍に設けた押圧部材によって、前記シート材が前記間隙に供給される直前に回転受けロール側に押圧して、回転受けロールの凹凸模様を転写し、前記回転受けロールの凸部に接触した部分のみを超音波デバイスによって摩擦熱を発生させて軟化させて部分的に超音波接合して積層シート材とする。このとき、接合部においてのみ積層シート材を薄肉化し、非接合部においては積層シート材を接合せず厚肉状態に維持して、積層シート材に立体的な凹凸模様を形成する。
【0006】
また、特許文献3には、積層シートが開示されている。この積層シートは、中間に位置する接着シートと、表裏に位置する不織布が積層一体化されてなる、少なくとも三層の積層シートである。そして、前記積層シートがエンボス凹凸部を有しており、該エンボス凹凸部でのみ重ねシートが嵌合されて接合されている。
【0007】
また、特許文献4には、超音波パンチング加工により奇麗な孔を開けることが可能な超音波パンチング加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-19028号公報
【特許文献2】特開2015-93391号公報
【特許文献3】特開2018-89833号公報
【特許文献4】特開2020-19073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態では、孔開き積層シートであり、模様を有するものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る孔開き積層シートは、表面の第1の布と裏面の第2の布との間に少なくとも1層の樹脂シートを介在させて、前記第1の布と前記第2の布と前記樹脂シートを貼着した原積層シートを加工した孔開き積層シートであって、前記第1の布から前記第2の布までを貫通する複数の超音波パンチング孔を有し、前記複数の超音波パンチング孔の分布密度により前記原積層シートの表面と裏面の少なくとも一方に厚みの薄厚により形成された模様を有したことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る孔開き積層シートでは、前記樹脂シートは、ウレタンフォームシートであることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る孔開き積層シートでは、前記第1の布は、織物、編物、不織布、合成皮革、天然皮革のいずれかであり、前記第2の布は、不織布、織物、編物のいずれかであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る孔開き積層シートでは、前記樹脂シートの厚みが3mm以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る孔開き積層シートでは、超音波パンチング孔を有するパンチング孔領域と超音波パンチング孔が無い非パンチング領域との高さまたは厚みが異なることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る孔開き積層シートでは、前記パンチング孔領域には、超音波パンチング孔が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられており、非パンチング領域では幅3mm以上の帯状領域に超音波パンチング孔が無いことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る孔開き積層シートの製造方法は、表面の第1の布と裏面の第2の布との間に少なくとも1層の樹脂シートを介在させて、前記第1の布と前記第2の布と前記樹脂シートを貼着した原積層シートを加工して孔開き積層シートを製造する孔開き積層シートの製造方法であって、孔開き積層シートに形成される複数の超音波パンチング孔の夫々に対応した複数の凸部を有する金型を、前記原積層シートの表面または裏面に当接させ、超音波振動を伝達する超音波ホーンを、前記金型の表面に対向する位置に設け、前記原積層シートを前記金型と前記超音波ホーンによって移動可能に挟んだ状態として、前記超音波ホーンから前記金型の凸部へ向けて超音波振動を伝達させ、超音波ホーンと前記金型の界面に生ずる摩擦熱により前記原積層シートを溶断させながら、前記原積層シートを前記金型と前記超音波ホーン間を移動させて孔開き積層シートを製造することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る孔開き積層シートの製造方法では、前記金型は、前記孔開き積層シートにおける、超音波パンチング孔を有するパンチング孔領域の前記超音波パンチング孔の夫々に対応して凸部が形成されており、超音波パンチング孔が無い非パンチング領域に対応する無凸部エリアには凸部が形成されていないことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る孔開き積層シートの製造方法では、前記金型は、前記パンチング孔領域に対応する部位では、凸部が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられており、前記非パンチング領域に対応する部位では、幅3mm以上の帯状領域に凸部が無いことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る孔開き積層シートの製造に用いられる原積層シートの側面図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置の全体構成図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる金型の配列を示す平面図。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる金型の一例の斜視図。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる金型における凸部の一例の斜視図。
【
図5A】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる
図5(b)に示した金型における凸部の正面図及び断面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る孔開き積層シートの一例の平面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る孔開き積層シートの一例の平面図。
【
図8】
図7に示した孔開き積層シートのI-I線断面図。
【
図9】本発明の実施形態に係る孔開き積層シートの一例の要部を拡大して示した平面図。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる
図5(a)に示した金型に形成されている凸部の正面図及び断面図。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる金型に形成されている凸部におけるいくつかの例の正面図。
【
図12】発明の第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置に用いられる金型における超音波ホーンの一例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る孔開き積層シート及び孔開き積層シートの製造方法の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、本発明は、以下に説明する構成に限定することを意図するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない限り各構成を適宜変更可能である。また、各図において、孔開き積層シートの超音波パンチング孔の孔径などは、実際の孔開き積層シートにおけるサイズ関係を厳密に再現したものではなく、説明を判り易くするため適宜誇張して記載したものである。
図1に、本発明の実施形態に係る孔開き積層シートを作製する前の原積層シート100を示す。
【0021】
原積層シート100は、表面の第1の布である表地101と、裏面の第2の布である裏地102と、表地101と裏地102との間に挟まれて介在する樹脂シート103とにより構成される。樹脂シート103は少なくとも1層(1枚)である。従って、樹脂シート103は2層(2枚)以上であっても良い。表地101と裏地102と樹脂シート103とは熱接着や接着剤等により相互に貼着されて一体化された状態である。
【0022】
上記第1の布である表地101は、織物、編物、不織布、合成皮革、天然皮革のいずれかを採用することができる。合成皮革は、ポリウレタン合成皮革、PVCレザーを含み、天然皮革は床革を含むものとすることができる。表地101は、染料または顔料により着色されたものであってもよい。染料および顔料の種類は限定されない。
【0023】
表地101を構成する繊維素材は、特に限定されないが、耐久性の観点から、熱可塑性繊維が好ましい。熱可塑性繊維としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維等を挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、物性、特に、強度、耐摩耗性、耐熱性に優れるという理由により、合成繊維がより好ましく、ポリエステルが更に好ましい。繊維素材は、熱可塑性繊維を主な構成としたものが好ましいが、その物性に影響を及ぼさない範囲内で、熱可塑性繊維以外の繊維、例えば、天然繊維、再生繊維等の繊維を混紡、混繊、交撚、交織、交編等の手法により組み合わせたものであっても構わない。
【0024】
また、上記第2の布である裏地102は、特に限定されないが、織物、編物のいずれかを採用することができる。裏地102を構成する繊維素材は、特に限定はないが、合成繊維が好ましく、ナイロンまたはポリエステルがより好ましい。
【0025】
上記樹脂シート103は、特に限定はないが、ウレタンフォームシート(軟質ポリウレタンフォーム)を採用することができる。上記樹脂シート103の厚みは、3mm以上とすることができる。
【0026】
図2に、第1の実施形態に係る孔開き積層シートの製造装置の全体構成図を示す。この第1の実施形態では、原積層シート100の幅より短い長さの金型11を用いる。この金型11の長さは、例えば20cmであり、原積層シート100の幅は例えば150cmのものを用いる。これらの長さは一例に過ぎず、他の長さでも良いことは勿論である。
【0027】
孔開き積層シートの製造装置は、金型11と超音波ホーン12との間を原積層シート100及び回収用樹脂シート22を通過させパンチング加工を行うパンチング加工部10を備える。超音波ホーン12には、超音波ホーン12を振動させて超音波ホーン12から超音波振動を発生させるための振動子13が接続されて設けられている。振動子13には、所定周波数の高周波電力を振動子13へ送る超音波発振器14が接続されている。上記の回収用樹脂シート22の樹脂は、後述するが、原積層シート100において超音波振動によって孔となる部位が溶融して抜かれた抜片を付着して回収するための樹脂シートであり、OPPフィルム(ポリプロピレンフィルム)等とすることができる。
【0028】
上記金型11は、
図3に示されるように、横方向に複数並べて配置されている。また、縦方向に複数列並べて配置されている。複数列並べて配置する場合、金型11がジグザクになるように配置される。ここで、横方向は、原積層シート100の幅方向に一致する。縦方向は、原積層シート100の搬送方向に一致する。ジグザグに配置された金型11は、端部において僅かに重なっており、原積層シート100に形成される孔模様が連続するように構成されている。各金型11には、軸16が貫通されている。また、各金型11を挟むように配置された長尺の駆動軸17は、図示しないモータにより回転される。駆動軸17と、各金型11の両端部の軸16、16には歯車が設けられ、チェーン18、18により連結されて駆動される。19は、軸16の軸受を示しており、例えば図示しない本体に固定されている。
【0029】
上記各金型11には、金型11とほぼ同程度の長さ(例えば、(金型11の長さ)+1cm)を有する超音波ホーン12がそれぞれ対応付けられて金型11の下方に設けられている。従って、原積層シート100の幅方向に、上記金型11と上記超音波ホーン12の組が、複数組並べて配置されて設けられている。また、上記金型11と上記超音波ホーン12の組が、上記原積層シート100が搬送される方向にジグザグに配列されて設けられている。
【0030】
金型11は
図4に示されるように円筒状であり、円筒を横長にした状態で使用される。原積層シート100に開けられる孔に対応する凸部15が金型11の表面に形成されたものである。本実施形態では、金型11の凸部15を含む表面へ向けて伝達した超音波振動によって、上記金型11の凸部15の部位に対応する原積層シート100の部位を孔として溶融して抜く(溶断する)ように上記超音波ホーン12を駆動する駆動源を備える。この駆動源は、
図2の振動子13及び超音波発振器14によって構成される。
【0031】
凸部15は、先端部が細い略棒状であり、
図5(a)に示されるように、金型11のベース面11aから突出した円盤状の基台部15bの上に、先端に向かって細くなる円錐台形状や角錐台形状に形成された先端部15aを有する。或いは、凸部15は、
図5(b)に示されるように、金型11のベース面11aから突出したやや薄い直方体形状の基台部15bの上に、径や太さが異なる角柱(または円柱)の先端部15aが複数段重ねられた形状であっても良い。先端部15aの頭部の大きさは、超音波パンチング孔PHの大きさにより適宜選択されるが、
図4に示される金型11においては、径が1mmである。
【0032】
更に、
図5(b)に示した凸部15の先端部15aにおいては、先端部15aを正面から見たときに
図5A(a)に示すように四角枠状に凹部15hが形成され、この凹部15hの断面形状は
図5A(b)に示すように四角形状であっても良い。
【0033】
本実施形態の完成した孔開き積層シート21Aは、
図6に示すようである。即ち、超音波パンチング孔(この
図6では、黒点により示す。)を有するパンチング孔領域RAが、超音波パンチング孔が無い非パンチング領域RBにより囲まれた模様を有するシートとなっている。
図6において実際には孔開き積層シート21Aに存在しない
図6の破線を用いて説明すると、パンチング孔領域RAは破線により描かれる六角形の内部の領域を指し、非パンチング領域RBは、上記六角形の外部の領域であって
図6では帯状の白い部分を指す。従って、本実施形態の完成した孔開き積層シート21Aでは、この複数の六角形が平面に一定の規則で繰り返されて点在して形成された模様を有するシートとなっている。なお、パンチング領域RAの形状は、六角形に限定されず、例えば多角形、円形、星形、ハート形等の各種の模様とすることができる。
【0034】
図7は、
図6の孔開き積層シート21Aの一部を拡大した図である、超音波パンチング孔PHが、パンチング孔領域RAに設けられているが、非パンチング領域RBには超音波パンチング孔PHが設けられない。
図7のI-I線断面図である
図8に示されるように、超音波パンチング孔PHの部分において、表地101と樹脂シート103と裏地102とが、厚み方向に圧縮されて溶着しているため、パンチング孔領域RAは表地101の厚みと裏地102の厚みと潰された樹脂シート103の僅かな厚みである。一方、非パンチング領域RBには超音波パンチング孔PHが無いために、樹脂シート103が潰されることなく、樹脂シート103の元の厚みがそのまま残る。従って、孔開き積層シート21Aは、複数の超音波パンチング孔PHの分布密度により上記積層シートの表面と裏面の少なくとも一方に上記積層シートの厚みの薄厚により形成された模様を有することになる。即ち、孔開き積層シート21Aは、超音波パンチング孔PHを有するパンチング孔領域RAと超音波パンチング孔PHが無い非パンチング領域RBとの高さまたは厚みが異なる。この構成により、本実施形態の孔開き積層シート21Aが立体感や凹凸感を有することになり、意匠的に優れたシートを得ることが可能となる。
【0035】
孔開き積層シート21Aにおける、複数の超音波パンチング孔PHの分布密度について説明する。
図9には、孔開き積層シート21Aの要部平面図が示されている。本実施形態では、
図4に示される金型11を用いており、金型11の先端部15aの頭部の大きさは、径が1mmであり、超音波パンチング孔の孔径が概ね1mmである。この実施形態の同一のパンチング孔領域RAに形成された超音波パンチング孔PH1と超音波パンチング孔PH2との間隔(横間隔)は、4mmであり、また、超音波パンチング孔PH1(またはPH2)と超音波パンチング孔PH3との間隔は、4mmである。ここで、上記の孔PH1と孔PH2との間隔は、孔PH1の中心から孔PH2の中心までの間隔である。
超音波パンチング孔PH1の中心と超音波パンチング孔PH2の中心と超音波パンチング孔PH3の中心とを結ぶ線分により正三角形が形成される。本実施形態において超音波パンチング孔の縦間隔とは、例えば超音波パンチング孔PH3から、超音波パンチング孔PH1と超音波パンチング孔PH2を結ぶ線分までの距離を指す。別言すれば、縦間隔は上記正三角形の頂点PH3から、上記正三角形の底辺PH1-PH2に向けて引いた垂線の長さ(正三角形の高さ)であり、横間隔は上記正三角形の底辺の長さである。本実施形態では、縦間隔は、概ね4mm(2×√3mm)である。
なお、孔開き積層シートのパンチング孔領域RAにおける超音波パンチング孔については、超音波パンチング孔の縦間隔と横間隔は特に限定されないが、超音波パンチング孔が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられてことが好ましく、4mm以上5mm以下に設定することがより好ましい。上記超音波パンチング孔の縦間隔(寸法)と横間隔(寸法)は一例に過ぎず、他の値を採用することができ、超音波パンチング孔の孔径や意匠を考慮して適宜設定することが可能である。また、超音波パンチング孔の孔径についても、「概ね1mm」という寸法は、一例に過ぎない。
【0036】
本実施形態の非パンチング領域RBでは、幅7mm以上の帯状領域(非パンチング領域RB)に超音波パンチング孔PHが無い構成を採用した。即ち、
図9の例では、非パンチング領域RBの幅wが概ね7mmであり、この幅wを挟む2つの超音波パンチング孔(例えばPH3)の端と超音波パンチング孔(例えばPH4)の端との間隔は7mmより僅かに長く設定した。
なお、孔開き積層シートの非パンチング孔領域では、帯状領域の幅は、特に限定されないが、3mm以上に設定することが好ましく、7mm以上に設定することがより好ましい。上記非パンチング領域の幅については、他の値を採用することができ、超音波パンチング孔の孔径や意匠を考慮して適宜設定することが可能である。
【0037】
以上のような孔開き積層シート21Aを製造するための金型11は、
図4に示すように、上記孔開き積層シート21Aにおける、超音波パンチング孔PHを有するパンチング孔領域RAの上記超音波パンチング孔PHに対応して凸部15が形成されている。また、この金型11は、超音波パンチング孔PHが無い非パンチング領域RBに対応する無凸部エリアNTには凸部15が形成されていない。
【0038】
また本実施形態では、上記金型11は、上記パンチング孔領域RAの超音波パンチング孔PHに対応して、凸部15が縦横に概ね4mmの間隔(凸部15の先端部15aの中心から縦方向または横方向に隣接する凸部15の先端部15aの中心までの距離)の分布密度で設けられており、非パンチング領域RBに対応する幅7mmの帯状領域(無凸部エリアNT)に凸部15が無い構成としている。上記縦横の「縦」は、金型11の回転方向(原積層シート100の搬送方向)であり、上記縦横の「横」は、金型11の長さ方向(原積層シート100の幅方向)である。
上記のように、本実施形態の孔開き積層シートにおいては、超音波パンチング孔が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられており、非パンチング領域では幅3mm以上の帯状領域に超音波パンチング孔が無いように構成されているので、これに合わせて実施形態の金型では、上記パンチング孔領域に対応して、凸部15が縦横に4mm以上8mm以下の間隔の分布密度で設けられており、非パンチング領域に対応する部位では幅3mm以上の帯状領域に凸部が形成されていない構成とする。即ち、金型の凸部の位置は、孔開き積層シートにおいて、超音波パンチング孔の縦横の間隔と、超音波パンチング孔が無い非パンチング領域における帯状領域の寸法に合わせて設けられる。
孔開き積層シート21Aの幅方向は、上記金型11の長さ方向に一致する。孔開き積層シート21Aの長さ方向(搬送方向)は、上記金型11の回転に追従する。超音波パンチング孔の横間隔の方向は、孔開き積層シート21Aの幅方向に一致する。超音波パンチング孔の縦間隔の方向は、孔開き積層シート21Aの長さ方向(搬送方向)に一致する。
【0039】
また、
図5(a)に示した凸部15の先端部15aにおいては、先端部15aを正面から見たときに
図10(a)に示すように凹部は無く平坦面に形成され、この凸部15の断面形状は
図10(b)に示すように円錐台の断面図と同様に構成することができる。また、
図5(a)に示した凸部15の先端部15aにおいては、先端部15aを正面から見たときに
図10(c)に示すように円環状に凹部15hが形成され、この凹部15hの断面形状は
図10(d)に示すように逆さの円錐形状であっても良い。
【0040】
また、先端部15aの形状は、先端部15aを正面から見た
図11(a)~(e)に示されるように、円形、正方形、三角形、長方形、ひし形などの所望の任意の形状とすることができる。勿論、ハート形や四葉のクローバー形状など、輪郭が曲線により構成される形状であっても良い。孔模様は、上記の形状の孔を原積層シート100上に、上下左右に一定のピッチで或いは適度に異なるピッチの部分を設け、或いは所望の傾きを有する斜め方向に延びるいくつかの直線状に所定間隔で配置するなどして形成したものとすることができる。勿論、模様に限定はない。
【0041】
また、凹部15hの中央における孔部の深さや先端部の長さ(高さ)は、孔模様を形成する原積層シート100の厚みや超音波パンチング孔PHの大きさなどにより適切なものが選択される。なお、1つの孔部の大きさ(径など)は、概ね0.8mm以上であることが望ましいものであった。また、隣接する超音波パンチング孔PHの縦横の間隔に相当する2つの凸部15の距離は、4mm以上8mm以下、好ましくは4mm以上5mm以下である。
【0042】
超音波ホーン12は、
図12に示されるように直方体のベース部31と、その上側に連続して形成された直方体の先端部32とを備える。ベース部31から先端部32側へ向けて表面側から裏面に透過したスリット33が形成され、超音波によるたて振動の発生を誘起している。
【0043】
上記構成によって超音波振動による孔模様の孔が溶融されて打ち抜かれ、孔模様の孔が一つ一つ綺麗に確実に形成され、打ち抜きを確実に行うことができる。この場合において、開けられた孔の周面が超音波振動により一度溶融されて固定され、的確に孔模様が形成された状態の加工されたシートを得ることが可能となる。
【0044】
図2に示されるように、上記の金型11と超音波ホーン12とを挟んで、一方の側には、超音波パンチング加工される前の原積層シート100が巻回された原反ローラ35が設けられる。また、上記原反ローラ35の下方であって超音波ホーン12に近い位置には、上記原積層シート100の孔が抜かれた抜片を付着して回収するための回収用樹脂シート22が巻回された樹脂シートローラ42が設けられる。
【0045】
回収用樹脂シート22は、原積層シート100が金型11と超音波ホーン12との間へ到る搬送路の搬送ローラ48が設けられている位置において、原積層シート100の下に重ねられて金型11と超音波ホーン12との間へ送られる。原積層シート100は金型11と超音波ホーン12との間において超音波パンチング加工されて、この間を送り出される。超音波パンチング加工されて送り出されたとき、原積層シート100は孔開き積層シート21Aとなる。この孔開き積層シート21Aと回収用樹脂シート22とは押えローラ43、44に挟まれて前方へ更に搬送される。
【0046】
押えローラ43、44の搬送方向の前方には、分離ローラ45U、45Dが設けられている。押えローラ43、44から搬送された回収用樹脂シート22と孔開き積層シート21Aとは、分離ローラ45U、45Dにより分離される。即ち、孔開き積層シート21Aと回収用樹脂シート22とは、分離ローラ45U、45Dに到る前に2枚に分けられ、上方に重ねられた孔開き積層シート21Aは分離ローラ45Uに接するようにして前方へ送られ、製品巻取ローラ46へ到る。また、下方に重ねられた回収用樹脂シート22は分離ローラ45Dの一部を周回するようにしてローラ52、53を介して回収シートローラ47によって巻き取られる。ローラ52、53の上側には、ローラ52、53の回転を阻害しない状態に、点検などのときに使用される足場板51が設けられている。上記において、押えローラ43、44よりも搬送方向の前方側に設けられた構成要素は、上記回収用樹脂シート22と上記孔開き積層シート21Aを分離する抜片回収搬送機構40を構成する。
【0047】
また、原反ローラ35と樹脂シートローラ42とから金型11と超音波ホーン12との間までの搬送路、金型11、超音波ホーン12、振動子13、超音波発振器14は、前述の通り、上記原積層シート100及び回収用樹脂シート22を上記金型11と上記超音波ホーン12との間を通過させて超音波照射によるパンチング加工を行うパンチング加工部10として機能する。
【0048】
以上の通りに構成された孔開き積層シートの製造装置では、原反ローラ35の原積層シート100と、樹脂シートローラ42に巻回された回収用樹脂シート22とを、搬送路を介して上記金型11と上記超音波ホーン12との間へ導き、この間を通過させて超音波振動伝達による超音波パンチング加工を行う。即ち、本実施形態に係る孔開き積層シートの製造方法は、表面の第1の布と裏面の第2の布との間に少なくとも1層の樹脂シートを介在させて、上記第1の布と上記第2の布と上記樹脂シートを貼着した原積層シート100を加工して孔開き積層シートを製造する孔開き積層シートの製造方法である。
【0049】
本実施形態に係る孔開き積層シートの製造方法は、孔開き積層シートに形成される複数の超音波パンチング孔に対応した複数の凸部15を有する金型である金型11を、上記原積層シート100の表面または裏面に当接させ、超音波振動を伝達する超音波ホーン12を、上記金型11の表面に対向する位置に設け、上記原積層シート100を上記金型11と上記超音波ホーン12によって移動可能に挟んだ状態として、上記超音波ホーン12から上記金型11の凸部へ向けて超音波振動を伝達させ、上記原積層シート100を上記金型11と上記超音波ホーン12間を移動させて孔開き積層シート21Aを製造する。
【0050】
上記の構成により、重ねられた原積層シート100と回収用樹脂シート22とは上記超音波パンチング加工のとき、金型11の凸部15に対応した原積層シート100の孔模様における孔となるべき部位が超音波振動による摩擦熱により溶融されて打ち抜かれると共に回収用樹脂シート22においても原積層シート100の孔模様における孔に対応する部位が超音波振動による摩擦熱により溶融する。このとき、原積層シート100が加工されたシートである孔開き積層シート21Aの孔から抜かれた抜片は重ねられた回収用樹脂シート22が超音波振動による摩擦熱を受けて溶融した直後の回収用樹脂シート22に融着し固化した状態となる。この状態で、回収用樹脂シート22と孔開き積層シート21Aとは、押えローラ43、44によって製品巻取ローラ46と回収シートローラ47の方向へ搬送され、分離ローラ45U、45Dへ導かれる過程で分離される。
【0051】
上記分離ローラ45U、45Dによる分離の後において、孔開き積層シート21Aの孔から抜かれた抜片は溶融し固化した回収用樹脂シート22に付着し或いは一体化したまま回収用樹脂シート22と共に搬送される。一方、孔開き積層シート21Aの孔から抜かれた抜片が回収用樹脂シート22に取り去られて無くなった孔開き積層シート21Aは製品巻取ローラ46によって巻き取られ、上記抜片が付着した回収用樹脂シート22は回収シートローラ47によって巻き取られる。
【0052】
従って、抜片が孔開き積層シート21Aにおける孔模様の孔に残ったままになったり、孔開き積層シート21Aの別部位に付着したゴミとなったりすることなく、的確に孔模様が形成された状態の孔開き積層シート21Aを得ることができる。孔開き積層シート21Aは、表地・ウレタンフォーム・裏地で構成される積層シートなどを上記の製造方法により加工してできるものであるから、自動車の椅子の表面素材に用いて、通気性を良くして冷暖房の消費エネルギーを低減し、自動車の燃費向上効果を狙うことも可能である。また、孔開き積層シート21Aは、凹凸感のある意匠性の高い柄(模様)を有する素材を輸送用車両(自動車、バス、航空機、電車等)の椅子に適用して通気性の向上を図る用途に極めて有効である。
【符号の説明】
【0053】
10 パンチング加工部 11 金型
11a ベース面 12 超音波ホーン
13 振動子 14 超音波発振器
15 凸部 16 軸
17 駆動軸 18 チェーン
21A 孔開き積層シート 22 回収用樹脂シート
31 ベース部 32 先端部
33 スリット 35 原反ローラ
40 抜片回収搬送機構 42 樹脂シートローラ
43、44 押えローラ 45D、45U 分離ローラ
46 製品巻取ローラ 47 回収シートローラ
48 搬送ローラ 52、53 ローラ
100 原積層シート 101 表地
102 裏地 103 樹脂シート
RA パンチング孔領域 RB 非パンチング領域
PH 超音波パンチング孔 NT 無凸部エリア