(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022488
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】法面砕石敷設構造および法面保護構造
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20230208BHJP
E02B 3/14 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
E02D29/02 302
E02B3/14 301
E02D29/02 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127385
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000126447
【氏名又は名称】アスザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正徳
【テーマコード(参考)】
2D048
2D118
【Fターム(参考)】
2D048AA15
2D048AA83
2D118BA03
2D118DA01
2D118HA02
2D118HB06
(57)【要約】
【課題】急勾配の法面であっても、法面上に均一な層厚さで砕石を敷設することを可能にした法面砕石敷設構造および法面保護構造を提供すること。
【解決手段】法面Nの法長方向に複数の区分ブロック10が配設されてなる区分ブロック列17が、法長方向に対して法面Nと同一平面内で直交する方向に所要間隔で複数配設された区分ブロック列群18と、区分ブロック列17の上面のそれぞれに掛け渡された土木シート60と、法面N、区分ブロック列群18および土木シート60により囲まれた部分に砕石70が充填された法面砕石敷設構造100と、法面砕石敷設構造100の区分ブロック列17の上に土木シート60を介して脚部112を載置し、法尻位置に配設された基礎40を起点として配設された法面保護ブロック110と法面砕石敷設構造100との間に生コンクリート120を充填してなる法面保護構造200である。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の法長方向に複数の区分ブロックが配設されてなる区分ブロック列が、前記法長方向に対して前記法面と同一平面内で直交する方向に所要間隔をあけて複数配設された区分ブロック列群と、
前記区分ブロック列の上面のそれぞれに掛け渡して配設された被覆体と、
前記法面、前記区分ブロック列群および前記被覆体により囲まれた部分に砕石が充填されていることを特徴とする法面砕石敷設構造。
【請求項2】
前記区分ブロックは、区分ブロック用アンカーピンにより前記法面に固定されており、
前記被覆体は、被覆体用アンカーピンにより前記法面に固定されていることを特徴とする請求項1記載の法面砕石敷設構造。
【請求項3】
前記区分ブロックは、直方体状に形成されていると共に、前記上面の法長方向両端部には、隣接する前記区分ブロックどうしを連結する連結具を配設するための連結具取付用凹部および前記区分ブロック用アンカーピンの挿通孔が形成されており、
前記連結具取付用凹部には、前記連結具を固定するための連結具取付用締結具が埋設されていて、
前記区分ブロックの前記上面の法長方向中間部分には前記被覆体用アンカーピンの取付用凹部が幅方向にわたって形成されていることを特徴とする請求項2記載の法面砕石敷設構造。
【請求項4】
前記区分ブロックは、前記砕石が充填されている部分における透水性よりも高い透水性を有するポーラスコンクリート製であることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の法面砕石敷設構造。
【請求項5】
法面の法尻側に配設された基礎と、
前記法面の法長方向に複数の区分ブロックが配設されてなる区分ブロック列が、前記法長方向に対して前記法面と同一平面内で直交する方向に所要間隔をあけて複数配設された区分ブロック列群と、
前記区分ブロック列の上面のそれぞれに掛け渡して配設された被覆体と、
前記法面、前記区分ブロック列群および前記被覆体により囲まれた部分に砕石が充填されており、
前記区分ブロック列が配設されている位置は、前記基礎を起点として配設される法面保護ブロックの脚部の位置に位置合わせされており、前記区分ブロック列の上面に前記被覆体を介して前記法面保護ブロックの脚部が載置されていることを特徴とする法面保護構造。
【請求項6】
前記区分ブロックは、区分ブロック用アンカーピンにより前記法面に固定されており、
前記被覆体は、被覆体用アンカーピンにより前記法面に固定されていることを特徴とする請求項5記載の法面保護構造。
【請求項7】
前記区分ブロックは、直方体状に形成されていると共に、前記上面の法長方向両端部には、隣接する前記区分ブロックどうしを連結する連結具を配設するための連結具取付用凹部および前記区分ブロック用アンカーピンの挿通孔が形成されており、
前記連結具取付用凹部には、前記連結具を固定するための連結具取付用締結具が埋設されていて、
前記区分ブロックの前記上面の法長方向中間部分には前記被覆体用アンカーピンの取付用凹部が幅方向にわたって形成されていることを特徴とする請求項6記載の法面保護構造。
【請求項8】
前記区分ブロックは、前記砕石が充填されている部分における透水性よりも高い透水性を有するポーラスコンクリート製であることを特徴とする請求項5~7のうちのいずれか一項に記載の法面保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面砕石敷設構造および法面保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
張ブロック工法等に代表される法面保護構造を構築する際には、法面を整形した上で、法面上に砕石が敷設される。このような法面砕石敷設構造および法面保護構造は、特許文献1(特開平7-138969号公報)や特許文献2(特許第5449295号公報)に開示されているように公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-138969号公報
【特許文献2】特許第5449295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示されている構成においては、法面の勾配が緩やかであるため、法面上に砕石の敷設を適切に行うことができる。しかしながら、法面の勾配が1割5分以上の急勾配になると、法面上に敷設した砕石は重力の作用により均一な層厚さを維持することができないといった課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明においては、急勾配の法面であっても、法面上に均一な層厚さで砕石を敷設することを可能にした法面砕石敷設構造および法面保護構造の提供を目的としている。
【0006】
すなわち本発明は、法面の法長方向に複数の区分ブロックが配設されてなる区分ブロック列が、前記法長方向に対して前記法面と同一平面内で直交する方向に所要間隔をあけて複数配設された区分ブロック列群と、前記区分ブロック列の上面のそれぞれに掛け渡して配設された被覆体と、前記法面、前記区分ブロック列群および前記被覆体により囲まれた部分に砕石が充填されていることを特徴とする法面砕石敷設構造である。
【0007】
これにより、急勾配の法面であっても、法面上に均一な層厚さで砕石を敷設することが可能になる。
【0008】
また、前記区分ブロックは、区分ブロック用アンカーピンにより前記法面に固定されており、前記被覆体は、被覆体用アンカーピンにより前記法面に固定されていることが好ましい。
【0009】
また、前記区分ブロックは、直方体状に形成されていると共に、前記上面の法長方向両端部には、隣接する前記区分ブロックどうしを連結する連結具を配設するための連結具取付用凹部および前記区分ブロック用アンカーピンの挿通孔が形成されており、前記連結具取付用凹部には、前記連結具を固定するための連結具取付用締結具が埋設されていて、前記区分ブロックの前記上面の法長方向中間部分には前記被覆体用アンカーピンの取付用凹部が幅方向にわたって形成されていることがさらに好ましい。
【0010】
これらにより、急勾配であってもより安定した状態で法面上に均一な層厚さで砕石を敷設することが可能になる。
【0011】
また、前記区分ブロックは、前記砕石が充填されている部分における透水性よりも高い透水性を有するポーラスコンクリート製であることが好ましい。
【0012】
これにより、砕石敷設範囲に砕石以外の区分ブロックが入っていても、透水性を低下させることがなく、砕石層としての機能低下を防止することができる。
【0013】
また、法面の法尻側に配設された基礎と、前記法面の法長方向に複数の区分ブロックが配設されてなる区分ブロック列が、前記法長方向に対して前記法面と同一平面内で直交する方向に所要間隔をあけて複数配設された区分ブロック列群と、前記区分ブロック列の上面のそれぞれに掛け渡して配設された被覆体と、前記法面、前記区分ブロック列群および前記被覆体により囲まれた部分に砕石が充填されており、前記区分ブロック列が配設されている位置は、前記基礎を起点として配設される法面保護ブロックの脚部の位置に位置合わせされており、前記区分ブロック列の上面に前記被覆体を介して前記法面保護ブロックの脚部が載置されていることを特徴とする法面保護構造の発明もある。
【0014】
これにより、急勾配の法面であっても、法面上に均一な層厚さで砕石が敷設された法面保護構造を構築することが可能になる。
【0015】
また、前記区分ブロックは、区分ブロック用アンカーピンにより前記法面に固定されており、前記被覆体は、被覆体用アンカーピンにより前記法面に固定されていることが好ましい。
【0016】
また、前記区分ブロックは、直方体状に形成されていると共に、前記上面の法長方向両端部には、隣接する前記区分ブロックどうしを連結する連結具を配設するための連結具取付用凹部および前記区分ブロック用アンカーピンの挿通孔が形成されており、前記連結具取付用凹部には、前記連結具を固定するための連結具取付用締結具が埋設されていて、前記区分ブロックの前記上面の法長方向中間部分には前記被覆体用アンカーピンの取付用凹部が幅方向にわたって形成されていることがより好ましい。
【0017】
これらにより、急勾配であってもより安定した状態で法面上に均一な層厚さで砕石が敷設された法面保護構造を構築することが可能になる。
【0018】
また、前記区分ブロックは、前記砕石が充填されている部分における透水性よりも高い透水性を有するポーラスコンクリート製であることが好ましい。
【0019】
これにより、砕石敷設範囲に砕石以外の材料により形成された区分ブロックが入っていても、透水性を低下させることがなく、砕石層としての機能低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明における法面砕石敷設構造および法面保護構造の構成によれば、急勾配の法面であっても、法面上に均一な層厚さで砕石を敷設することを可能にした法面砕石敷設構造および法面保護構造を構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態で用いる区分ブロックの平面図、A-A断面図、B-B断面図と、被覆体用アンカーピンおよび区分ブロック用アンカーピンの正面図である。
【
図2】本実施形態における法面保護ブロックの施工手順の一例を示す側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明における法面砕石敷設構造100およびこれを用いた法面保護構造200の具体的な構成について図面を参照しながら説明を行う。
【0023】
図1は、法面Nの法長方向に配設される区分ブロックの平面図、A-A断面図、B-B断面図と、区分ブロック用アンカーピン20および被覆体用アンカーピン30の正面図である。区分ブロック10は、後述する砕石70の層における透水性よりも透水性が高いポーラスコンクリート製の直方体状をなし、上面の法長方向両端部(
図1の上下方向両端部)には連結具取付用凹部12が配設されている。連結具取付用凹部12には、隣接する区分ブロック10どうしを連結するための連結具50を固定する連結具取付用締結具としての雌ねじ部13が埋設されていると共に、区分ブロック用アンカーピン20を挿通させるための挿通孔14が穿設されている。また、区分ブロック10の法長方向中間部分には、被覆体用アンカーピン30を取り付けるための取付用凹部16が2箇所に配設されている。取付用凹部16は、区分ブロック10の幅方向を横断するように配設されていると共に底部側における内幅寸法が徐々に狭くなっている。
【0024】
図1に示すように、区分ブロック用アンカーピン20は、直線状のアンカーピンに形成されている。被覆体用アンカーピン30は正面視逆U字状に形成されている。被覆体用アンカーピン30の内幅寸法は区分ブロック10を幅寸法と等しく形成されており、高さ寸法は区分ブロック10の高さ寸法よりも高く形成されている。被覆体用アンカーピン30は、区分ブロック10を挟み込む配置で取付用凹部16に取り付けられ、先端部所要長さ範囲が法面Nに差し込まれる。被覆体用アンカーピン30の外径寸法は、取付用凹部16の深さ寸法よりも小径寸法に形成されている。
【0025】
次に本実施形態における法面砕石敷設構造100およびこれを用いた法面保護構造200について、
図2~
図13を参照しながら施工手順と共に説明する。まず、作業者は、
図2に示すように、法面Nを整形した後に法尻側の所定位置へ法面保護ブロック110用の基礎40を敷設する。次に作業者は、
図3および
図4に示すように、法面Nの法長方向に沿って区分ブロック10を長手方向に複数個敷設する。隣り合う区分ブロック10は、連結具取付用凹部12に連結板52および連結ボルト54からなる連結具50を配設し、雌ねじ部13に連結ボルト54を螺着することにより連結される。また、作業者は、最も法尻側の区分ブロック10の挿通孔14に区分ブロック用アンカーピン20を挿通させ、区分ブロック用アンカーピン20の先端部所要長さ部分を法面Nに差し込むことで
図5に示すように、最も法尻側の区分ブロック10を法面Nに固定する。
【0026】
このようにして法面Nの法長方向に沿って固定された複数個の区分ブロック10により区分ブロック列17が形成され、法面Nの同一平面内において法長方向に直交する方向に所要間隔をあけて複数の区分ブロック列17を配設することで区分ブロック列群18が構築される。なお、本実施形態においては、法面保護ブロック110の幅方向(図面の奥行方向)における脚部112の配設位置に位置合わせした状態で区分ブロック列17が配設されている。
【0027】
次に作業者は、
図6および
図7に示すように、区分ブロック列群18を構成するそれぞれの区分ブロック列17に掛け渡すようにして被覆体としての土木シート60を敷設する。
図6に示すように、土木シート60は最も法尻側に配設された区分ブロック10と基礎40の法面Nの側の起立面との間にも掛け渡されていて、基礎40の法面Nの側の起立面にもコンクリート釘等により固定されている。続けて作業者は、土木シート60の上面側からそれぞれの区分ブロック10の取付用凹部16の位置に被覆体用アンカーピン30をセットして法面Nに被覆体用アンカーピン30の先端部所要長さを差し込ませる。取付用凹部16の深さは被覆体用アンカーピン30の外形寸法よりも深いため、取付用凹部16の上面開口部から被覆体用アンカーピン30がはみ出すことはない。このようにして法面Nと、区分ブロック列群18と、土木シート60と、により囲まれた部分が砕石充填空間に形成されることになる。
【0028】
次に作業者は、
図8に示すように、砕石充填空間の法肩側の開口部から砕石70が裏込め材として投入される。砕石充填空間は法長方向両端部が開口面に形成されているが、法尻側の開口面の延長線上には基礎40が配設されているため、投入された砕石70は基礎40により堰き止められるので砕石70を充填することができる。また、砕石充填空間は、原地盤と基礎40と土木シート60とで囲まれた空間に連通しているので、この部分にも砕石70が充填されることになる。法面Nに平行な開口空間の上面は土木シート60により被覆されているので、砕石70の上面高さ位置は土木シート60により規制され、法面Nには均一な厚さで砕石70が敷設された法面砕石敷設構造100を構築することができる。
【0029】
次に作業者は、
図9および
図10に示すように、基礎40を起点として、法面砕石敷設構造100の上に法面保護ブロック110の敷設を行う。先述のように、法面保護ブロック110の脚部112の幅方向における配設位置は、区分ブロック列17の配設位置に位置合わせされているので、法面保護ブロック110は、土木シート60を介して区分ブロック列17の上に敷設される。これにより、きわめて安定させた状態で法面砕石敷設構造100の上に法面保護ブロック110の敷設を行うことができる。次に作業者は、
図11に示すように、法面砕石敷設構造100と法面保護ブロック110との間に生コンクリート120を充填し、法面砕石敷設構造100に法面保護ブロック110を固定させる。
【0030】
次に作業者は、
図12および
図13に示すように、法面Nの法長方向に沿って法面保護ブロック110の敷設および生コンクリート120の充填を繰り返し行うことで、法面Nの全体に法面保護ブロック110を敷設した法面保護構造200を構築することができる。
【0031】
本実施形態における法面砕石敷設構造100およびこれを用いた法面保護構造200によれば、急勾配の法面Nであっても砕石70を均一な厚さで敷設することができる。これにより、砕石70の上への法面保護ブロック110の配設や基礎コンクリート(図示はせず)の構築を容易に行うことができ、設計内容に即した構築物の施工を行うことができる点で好都合である。
【0032】
また、本実施形態においては、最も法尻側の位置における区分ブロック10のみが区分ブロック用アンカーピン20により法面Nに固定された形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。勾配等の法面Nの状況や載置する法面保護ブロック110の重量等に応じて、法尻側の所要範囲における区分ブロック10またはすべての区分ブロック10に対して区分ブロック用アンカーピン20による法面Nへの固定を行うこともできる。
【0033】
また、本実施形態においては、法面砕石敷設構造100の砕石70は法面保護ブロック110の裏込め材として用いる形態について説明しているが、砕石70は裏込め材に限定されるものではなく、基礎の一部として用いる等、裏込め材以外としての使用形態も想定している。
【0034】
また、本実施形態においては、法面保護ブロック110の脚部112の配設位置が区分ブロック列17の配設位置に位置合わせされている形態について例示しているが、この形態に限定されるものではない。法面保護ブロック110におけるすべての脚部112の配設位置が区分ブロック列17に対応している必要はなく、1つの法面保護ブロック110において少なくとも2つの脚部112が土木シート60を介して区分ブロック列17の上に載置されていればよい。
【0035】
さらには、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10:区分ブロック
12:連結具取付用凹部,13:雌ねじ部,14:挿通孔,16:取付用凹部,
17:区分ブロック列,18:区分ブロック列群
20:区分ブロック用アンカーピン
30:被覆体用アンカーピン
40:基礎
50:連結具
52:連結板,54:連結ボルト
60:土木シート(被覆体)
70:砕石
100:法面砕石敷設構造
110:法面保護ブロック
112:脚部
120:生コンクリート
200:法面保護構造
N:法面