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特開2023-22536遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022536
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/10 20060101AFI20230208BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230208BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G08B25/10 A
G05B23/02 Z
E02F9/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127459
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391029347
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川田 淳
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】片山 三郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 惣也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将路
(72)【発明者】
【氏名】荻野 裕昭
【テーマコード(参考)】
3C223
5C087
【Fターム(参考)】
3C223AA15
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223GG01
3C223HH15
3C223HH24
5C087AA10
5C087AA16
5C087DD03
5C087DD41
5C087EE15
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG10
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】遠隔にて工事現場の安全管理を行うことができ、必要に応じて迅速に遠隔から工事現場に対してアラート発報することのできる、遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法を提供する。
【解決手段】遠隔安全管理システム70は、各種のセンサ15と、信号回路を介してセンサ15と電気的に接続される警報機20とを備える建設機械10と、信号回路に電気的に接続され、センサ15にて取得されたアラート信号を取得する発信機30と、発信機30から送信されるアラート信号を受信し、受信したアラート信号に対応したアラート内容情報信号を送信するサーバ装置50と、アラート内容情報信号を受信して、アラート内容情報を表示する管理端末60とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種のセンサと、信号回路を介して該センサと電気的に接続される警報機とを備える、建設機械と、
前記信号回路に電気的に接続され、前記センサにて取得されたアラート信号を取得する、発信機と、
前記発信機から送信されるアラート信号を受信し、受信した該アラート信号に対応した、アラート内容情報信号を送信する、サーバ装置と、
前記アラート内容情報信号を受信して、アラート内容情報を表示する、管理端末と、を有することを特徴とする、遠隔安全管理システム。
【請求項2】
前記発信機にはIDが付与され、該IDが付与された状態の前記アラート信号が前記サーバ装置に送信されるようになっており、
前記サーバ装置では、受信した前記アラート信号の前記IDに基づいて該アラート信号を送信した前記発信機を特定することを特徴とする、請求項1に記載の遠隔安全管理システム。
【請求項3】
前記アラート内容情報が警報レベル情報であり、
前記警報機が、複数種の警報レベルに応じた前記信号回路を介して前記センサに対して電気的に接続されており、
それぞれの前記警報レベルの前記信号回路に対して、固有の前記IDが付与された前記発信機が電気的に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の遠隔安全管理システム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、
複数種の前記アラート信号のそれぞれの前記アラート内容情報が、該アラート信号に固有の前記IDに紐付けられている、アラート信号内容データベースを格納する、格納部と、
前記発信機から受信した前記アラート信号の前記IDに基づいて、前記アラート信号内容データベースから前記アラート内容情報を特定する、特定部と、
前記発信機から送信される前記アラート信号の受信と、前記管理端末に対する前記アラート内容情報信号の送信を実行する、通信部とを有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の遠隔安全管理システム。
【請求項5】
建設機械の備える、各種のセンサと警報機とを電気的に接続する信号回路に対して、電気的に接続している発信機からサーバ装置に対してアラート信号を送信する、A工程と、
前記サーバ装置にて受信した前記アラート信号に対応する、アラート内容情報信号を管理端末に送信する、B工程と、
受信した前記アラート内容情報信号に基づいて、前記管理端末にてアラート内容情報を表示する、C工程とを有することを特徴とする、遠隔安全管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場においては、重機やトラックといった複数種の車両が頻繁に稼働し、車両同士の接触災害や車両と作業員との接触災害が課題としてあり、さらには、クレーン等の過負荷による転倒や吊荷の落下等の災害も課題としてある。
工事現場におけるアラートシステムには、各種建設機械そのものに装備されているもの(例えばバックホウの人検知システムやクレーンの吊荷負荷三色灯など)の他、各種センサやIoT(Internet of Things)機器等の計測機器から送信される送信データに基づいてアラートを発報する技術など、様々なものが存在しているが、いずれも工事現場にいる工事関係者への直接的なアラート発報が主である。そのため、例えば建設機械等が錯綜する工事現場において、騒音や視界不良な環境等によってアラート発報が掻き消され、接触災害等の危険が迫っている作業員や建設機械のオペレータ、吊荷の過負荷によって転倒の危険が迫っている建設機械のオペレータ等に対して、アラート発報が十分に伝達されない場合も往々にしてある。
【0003】
以上より、工事現場から僅かに離れた場所にある工事現場の管理棟や、工事現場から遠く離れた場所にある、例えば本支店の関係部署や安全管理部署等においても、工事現場におけるアラート発報が伝達され、遠隔にて工事現場内の安全管理(安全監視)を実行できるシステムと方法が望まれている。
例えば、遠隔における工事現場内の安全管理により、危険に気づいていない作業員や建設機械のオペレータ等に対して、速やかにアラート発報を通報することが可能になり、工事現場における施工安全性が飛躍的に高まる。
【0004】
ここで、特許文献1には、バリケードを築くことや誘導員をおくことなく、重機の動作中に、重機やその一部が危険ゾーンに入ることを防止する、重機の作業域監視システムである危険監視システムが提案されている。より具体的には、この危険監視システムは、移動物体及び移動物体近傍を撮像して映像信号を出力する撮像装置と、撮像装置からの映像信号を入力して映像信号の1フレーム毎に移動物体と背景を分離するとともに背景を複数のゾーンに分割し、かつ、移動物体の輪郭の少なくとも一部が所定のゾーンに位置した際に特定ゾーン侵入信号を出力する画像処理装置とを備えている。この画像処理装置は、特定ゾーンを設定する特定ゾーン設定器と、画像処理装置からの特定ゾーン侵入信号を受けて警報信号を出力する警報信号発生装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-175992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の危険監視システムは、撮像装置が移動物体等を撮像して映像信号を出力し、画像処理装置がこの映像信号から移動物体と背景を分離し、背景が複数に分割された所定のゾーンに移動物体が位置した際に特定ゾーン侵入信号を出力するといった、極めて複雑なシステムであり、解析結果が出るまでに時間を要することが想定されることから、遠隔において工事現場の安全管理を行っている管理者等から、必要に応じて迅速に工事現場に対してアラート発報することは難しい。
【0007】
本発明は、遠隔にて工事現場の安全管理を行うことができ、必要に応じて迅速に遠隔から工事現場に対してアラート発報することのできる、遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による遠隔安全管理システムの一態様は、
各種のセンサと、信号回路を介して該センサと電気的に接続される警報機とを備える、建設機械と、
前記信号回路に電気的に接続され、前記センサにて取得されたアラート信号を取得する、発信機と、
前記発信機から送信されるアラート信号を受信し、受信した該アラート信号に対応した、アラート内容情報信号を送信する、サーバ装置と、
前記アラート内容情報信号を受信して、アラート内容情報を表示する、管理端末と、を有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、建設機械の備えている、信号回路を介して電気的に接続されるセンサ及び警報機の当該信号回路に発信機が電気的に接続され、発信機から送信されるアラート信号を受信したサーバ装置から管理端末に対して、アラート信号に対応したアラート内容情報信号が送信され、管理端末にてアラート内容情報信号に基づくアラート内容情報が表示されることにより、管理端末では、工事現場における様々な建設機械の危険度を特定することができ、遠隔にいる管理者等から工事現場(にいる工事関係者)に対して、必要に応じて迅速にアラート発報することが可能になる。
サーバ装置は、複数の管理端末がデータの送受信を同時に実行できるクラウドサーバ装置であってよく、複数の管理端末には、工事現場の管理棟にある管理用コンピュータ、工事現場にいる例えば複数の工事管理者が携帯するスマートフォンやタブレット、本支店にある関係部署や工事安全管理部署等にあるコンピュータ等が含まれてよい。
建設機械には、クレーンやショベル、削岩機、トンネル削孔機等の各種重機や、トンネル内を走行する門型クレーン、各種資機材を搬送するトラック、さらには一般車両等が含まれる。
センサには、クレーン等の吊荷時の負荷を検知する荷重センサや、車両に搭載されるカメラ等の人検知センサ、車両構成要素であるエンジンや各種アクチュエータ等の破損に起因する発火等を検知する温度センサ、周囲に接触したことを検知する圧力センサ等、様々なセンサが含まれる。
警報機には、アラート発報音を発するブザーや、アラート発報光を発するバックライトや三色灯等が含まれる。
【0010】
また、「アラート信号」には、危険な状態でないことを示す安全状態信号(グリーン信号)、危険が迫っている状態であることを示す注意信号(イエロー信号)、危険な状態であることを示す危険信号(レッド信号)などが含まれる。
また、アラート内容情報信号に基づく「アラート内容情報」は、建設機械の種類と、アラート信号元であるセンサの種類に応じた情報であり、上記するように、エンジンや各種アクチュエータ等の破損に起因する発火等がアラート内容である場合は、温度センサにより検知された温度に応じて、温度が閾値以下であって異常なし、発火の可能性があって温度が注意閾値に達している、温度が危険閾値を超えて発火による爆発の危険があり、至急の消火もしくは退避等、危険の程度に応じた情報がアラート内容情報となる。
建設機械の種類やセンサに応じてアラート内容情報も変化し、例えば、クレーンの吊荷荷重超過に関するアラート内容や、重機の移動の際の周囲への接触に関するアラート内容等、その内容は多岐に亘る。
【0011】
また、本発明による遠隔安全管理システムの他の態様において、
前記発信機にはIDが付与され、該IDが付与された状態の前記アラート信号が前記サーバ装置に送信されるようになっており、
前記サーバ装置では、受信した前記アラート信号の前記IDに基づいて該アラート信号を送信した前記発信機を特定することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、発信機に付与されたID(identification)に基づいてサーバ装置が受信したアラート信号に対応する発信機を特定することができるため、この発信機に対応した特定の工事現場における特定の建設機械に関するアラート内容情報を、正確かつ臨機に遠隔にて特定することができる。
【0013】
また、本発明による遠隔安全管理システムの他の態様において、
前記アラート内容情報が警報レベル情報であり、
前記警報機が、複数種の警報レベルに応じた前記信号回路を介して前記センサに対して電気的に接続されており、
それぞれの前記警報レベルの前記信号回路に対して、固有の前記IDが付与された前記発信機が電気的に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、複数種の警報レベルに応じた警報機とセンサとの間の信号回路に対して、固有のIDが付与された発信機が電気的に接続され、発信機から発進されるアラート信号に基づいてサーバ装置から管理端末に送信されるアラート内容情報が警報レベル情報であることにより、特定の工事現場における特定の建設機械の危険度の程度を、正確かつ臨機に遠隔にて特定することができる。
例えば、警報機が三色灯である場合は、警報レベルに応じて点灯する緑灯、黄灯、赤灯のそれぞれに対応した信号回路が、建設機械に搭載されるセンサに通じており、それぞれの信号回路に対して計三基の発信機が電気的に接続されている形態を一例として挙げることができる。緑灯、黄灯、赤灯に対応した各発信機のIDにより、特定の工事現場における特定の建設機械の、特定の危険種(吊荷荷重超過による転倒、発火、周囲との接触等)の程度(安全、注意、危険等)が正確に判定される。
【0015】
また、本発明による遠隔安全管理システムの他の態様において、
前記サーバ装置は、
複数種の前記アラート信号のそれぞれの前記アラート内容情報が、該アラート信号に固有の前記IDに紐付けられている、アラート信号内容データベースを格納する、格納部と、
前記発信機から受信した前記アラート信号の前記IDに基づいて、前記アラート信号内容データベースから前記アラート内容情報を特定する、特定部と、
前記発信機から送信される前記アラート信号の受信と、前記管理端末に対する前記アラート内容情報信号の送信を実行する、通信部とを有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、サーバ装置において、アラート信号に基づくアラート内容情報が、アラート信号に固有のIDに紐付けられた状態でアラート信号内容データベースとして格納され、アラート信号内容データベースから特定されたアラート内容情報が、アラート内容情報信号として管理端末に送信されることにより、アラート内容情報の特定に要する時間が極めて短くてよく、従って、発信機によるアラート信号の送信から管理端末によるアラート内容情報の表示及び確認までの時間が短くなり、遠隔にある管理棟等から工事現場への迅速なアラート発報が可能になる。
【0017】
また、本発明による遠隔安全管理方法の一態様は、
建設機械の備える、各種のセンサと警報機とを電気的に接続する信号回路に対して、電気的に接続している発信機からサーバ装置に対してアラート信号を送信する、A工程と、
前記サーバ装置にて受信した前記アラート信号に対応する、アラート内容情報信号を管理端末に送信する、B工程と、
受信した前記アラート内容情報信号に基づいて、前記管理端末にてアラート内容情報を表示する、C工程とを有することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、建設機械の備えている、信号回路を介して電気的に接続されるセンサ及び警報機の当該信号回路に発信機を電気的に接続し、発信機から送信されるアラート信号を受信したサーバ装置から管理端末に対して、アラート信号に対応したアラート内容情報信号を送信し、管理端末にてアラート内容情報信号に基づくアラート内容情報を表示することにより、管理端末では、工事現場における様々な建設機械の危険度を特定することができ、遠隔にいる管理者等から工事現場に対して、必要に応じて迅速にアラート発報することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法によれば、遠隔にて工事現場の安全管理を行うことができ、必要に応じて迅速に遠隔から工事現場に対してアラート発報することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る遠隔安全管理システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】センサと、複数種の警報レベルに応じた警報機とを接続するそれぞれの信号回路に対して発信機が接続されている、回路図の一例を示す図である。
図3】サーバ装置と管理端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】サーバ装置の機能構成の一例を示す図である。
図5A】管理端末の表示画面に表示される、アラート内容情報の一例を示す図である。
図5B】管理端末の表示画面に表示される、アラート内容情報の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係る遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0022】
[実施形態に係る遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る遠隔安全管理システムと遠隔安全管理方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る遠隔安全管理システムの全体構成の一例を示す図であり、図2は、センサと、複数種の警報レベルに応じた警報機とを接続するそれぞれの信号回路に対して発信機が接続されている、回路図の一例を示す図である。
【0023】
以下、建設機械としてクレーンを取り上げ、クレーンの吊荷荷重を計測対象とし、吊荷荷重の負荷の程度に応じたアラート信号に基づいて遠隔安全管理を行う例を説明するが、建設機械には、クレーン以外にも、様々な重機やトラック、一般車両が含まれ、計測対象には、吊荷荷重以外にも、建設機械の温度、周囲に存在する人や他の建設機械、周囲との接触の際に受ける圧力等、様々な計測対象が含まれる。
【0024】
図示する遠隔安全管理システム70は、クレーン10(建設機械の一例)と、クレーン10に搭載されている発信機30から送信されるアラート信号を、ネットワーク40を介して受信するサーバ装置50と、サーバ装置50から送信されるアラート信号に対応したアラート内容情報信号を、ネットワーク40を介して受信する管理端末60とを有する。ここで、図示例のサーバ装置50は、クラウドサーバ装置である。また、管理端末60は複数あってよく、複数の管理端末60には、工事現場の管理棟にある管理用コンピュータ(管理端末60A)、工事現場にいる例えば複数の工事管理者が携帯するスマートフォンやタブレット、本支店にある関係部署や工事安全管理部署等にあるコンピュータ(管理端末60B)等が含まれてよい。
【0025】
また、図示を省略するが、工事現場の各所に監視カメラが装備され、監視カメラによる撮像データもネットワーク40を介してサーバ装置50に送信され、サーバ装置50を介して管理端末60に送信され、アラート信号と撮像データの双方が管理端末60に表示されてもよい。
【0026】
クローラ式のクレーン10は、旋回体12と、旋回体12を旋回自在に支持しながら走行する走行体11とを備え、旋回体12は、オペレータキャビンと、吊荷作業を実行する作業装置を備えている。作業装置には、ブーム13と、起伏ロープ14aと、吊りロープ14bと、フック14cと、不図示の吊用ウインチ等が含まれる。
【0027】
ブーム13は、旋回体12の前部に起伏自在に取り付けられ、ブーム13の先端から吊りロープ14bを介して吊荷を吊るためのフック14cが吊り下げられている。吊用ウインチは旋回体12の上方に搭載されており、吊りロープ14bの巻き取りや繰り出しを行うことによりフック14cの巻き上げや巻き下げを行う。
【0028】
ブーム13の先端には、ブーム長を延長する不図示のジブを設けることもでき、ブーム13は、旋回体12に対する角度を変更することにより旋回体12に対して起伏する。ジブが設けられていない場合は、ブーム13の角度を設定することにより、旋回体12を中心としたフック14cの回転半径であるクレーン10の作業半径が設定される。ジブが設けられている場合は、ブーム13の角度を設定した上でジブの角度を設定することにより、クレーン10の作業半径が決定される。
【0029】
すなわち、クレーン10の作業半径とは、ブーム13やジブの傾きによって決定される値であり、吊荷荷重(クレーン10に対する負荷)が一定であれば、作業半径が大きいほど吊荷荷重によって生じるモーメントは大きくなり、クレーン10の転倒や、ブーム13及びジブの損傷に繋がり得る。そこで、作業半径とクレーン10の姿勢(ブーム13やジブの長さとそれらの組み合わせ)等により、クレーン10が吊下げることのできる吊荷荷重の上限である定格総荷重が決定される。
【0030】
図示するクレーン10では、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重に対する負荷状態(安全状態)を三段階に分け、現状の安全状態をクレーン10に搭載した三色灯20(警報機の一例)を介してアラート発報するように構成されている。
【0031】
一例として、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重の70%未満の負荷状態を安全状態とし、三色灯20を構成する緑灯23(図2参照)を点灯させる。一方、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重の70%~100%の負荷状態を注意状態とし、三色灯20を構成する黄灯22(図2参照)を点灯させる。一方、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重の100%超の負荷状態や、不図示のアウトリガ未張り出し状態のいずれか一方を危険状態とし、三色灯20を構成する赤灯21(図2参照)を点灯させる。
【0032】
クレーン10には、三色灯20を構成する赤灯21、黄灯22、及び緑灯23に対応する発信機30A,30B,30Cが搭載されており、警報レベルに応じて点灯した警報灯に対応する発信機30から固有のアラート信号がサーバ装置50に送信されるようになっている。
【0033】
ここで、図2を参照して、各警報灯と吊荷荷重センサ15,及び各発信機30との電気的な接続構成を説明する。
【0034】
旋回体12には、吊荷荷重センサ15(センサの一例)と荷重制御部16が内蔵され、相互に電気的に接続されている。荷重制御部16は、吊荷荷重センサ15から送信される計測荷重データと、その際の作業半径データとに基づき、当該作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重を特定する。ここで、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重は、一覧テーブルデータとして不図示の格納部に格納されていて、受信した計測荷重データとその際の作業半径データとに基づき、荷重制御部16が一覧テーブルデータを参照して定格総荷重を特定してもよいし、荷重制御部16が受信した計測荷重データとその際の作業半径データから定格総荷重を直接算定してもよい。
【0035】
荷重制御部16では、特定された定格総荷重と、計測荷重データ(クレーン10に負荷される吊荷荷重データ)とを比較し、定格総荷重の何%の負荷がクレーン10に作用しているかを特定する。
【0036】
荷重制御部16にはスイッチユニット17が電気的に接続されており、スイッチユニット17と三色灯20を構成する赤灯21、黄灯22、及び緑灯23には、それぞれに固有の赤灯回路18A(信号回路の一例),黄灯回路18B(信号回路の他の例),及び緑灯回路18C(信号回路のさらに他の例)が電気的に接続されている。三色灯20はさらに、電源19に接続されている。
【0037】
スイッチユニット17には、赤灯スイッチ17A,黄灯スイッチ17B,及び緑灯スイッチ17Cが含まれており、各スイッチの接点が対応する回路の端部に設けられている。
【0038】
荷重制御部16は、クレーン10の負荷状態(定格総荷重の何%の負荷状態であるか)を特定し、特定された負荷状態に対応するスイッチをON制御し、スイッチがON制御された回路に通じる警報灯を点灯させる。
【0039】
ここで、赤灯回路18A,黄灯回路18B,及び緑灯回路18Cにはそれぞれ、対応する発信機30A,30B,30Cが電気的に接続されている。
【0040】
各発信機30A,30B,30Cには、それぞれに固有のIDが付与されており、従って、IDが付与された状態のアラート信号が各発信機30からサーバ装置50に送信されるようになっている。より詳細には、特定のクレーン10に搭載されている、三色灯20を構成する赤灯21、黄灯22、及び緑灯23に対応した発信機30A,30B,30CにIDが付与されている。以下で詳説するように、サーバ装置50では、受信したアラート信号のIDに基づいて対応する発信機30を特定し、発信機30に対応するアラート内容情報信号(クレーン10の負荷状態を示す信号で、サーバ装置50が受信したアラート信号そのものであってもよい)を管理端末60に送信する。
【0041】
次に、図3を参照して、サーバ装置50と管理端末60のハードウェア構成の一例を説明するとともに、図4を参照して、サーバ装置50の機能構成の一例を説明する。
【0042】
図3に示すように、サーバ装置50と管理端末60はいずれも、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の情報処理装置(コンピュータ)により構成される。
【0043】
サーバ装置50と管理端末60を構成するコンピュータは、接続バス56により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)51、主記憶装置52、補助記憶装置53、入出力IF(interface)54、及び通信IF55を備えている。主記憶装置52と補助記憶装置53は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0044】
CPU51は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU51は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU51は、コンピュータからなるサーバ装置50や管理端末60の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU51は、例えば、補助記憶装置53に記憶されたプログラムを主記憶装置52の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0045】
主記憶装置52は、CPU51が実行するコンピュータプログラムや、CPU51が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置52は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置53は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置53には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF55を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。サーバ装置50に対する外部装置等には、発信機30や管理端末60が含まれ、管理端末60に対する外部装置等には、サーバ装置50の他に、工事現場におけるクレーン10のオペレータや工事管理者等の携帯するスマートフォンやタブレット等が含まれる。
【0046】
補助記憶装置53は、例えば、主記憶装置52を補助する記憶領域として使用され、CPU51が実行するコンピュータプログラムや、CPU51が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置53は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置53として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0047】
入出力IF54は、サーバ装置50や管理端末60に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF54には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。サーバ装置50と管理端末60はいずれも、入出力IF54を介して、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0048】
また、入出力IF54には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。管理端末60では、例えば、特定の工事現場におけるクレーン10(特定の建設機械)の特定のアラート内容情報(図示例では、吊荷荷重の負荷状態)等を表示するようになっている。
【0049】
通信IF55は、サーバ装置50が接続するネットワーク40とのインターフェイスである。通信IF55は、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等、様々なネットワーク40を介して、発信機30からIDが付与されたアラート信号を受信し、同様にネットワーク40を介して、アラート信号に対応したアラート内容情報信号を管理端末60に送信する。
【0050】
また、通信IF55はLPWA無線通信モジュールであってもよく、LPWAの主な通信方式(通信プロトコル)には、Sigfox、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)、NB-IoT等がある。ここで、LoRaWANは、920MHz帯のISMバンドを使用し、13dBm以下の低い出力でも遠距離通信を可能とする、LoRa変調を採用した通信方式である。上記するように、様々な通信プロトコルがある中で、例えばライセンスを必要とせず、携帯電話通信の波が届き難い山岳地帯でもトンネル坑内(工事現場の一例)に自営の基地局を設置することができ、低コストの通信システムを構築可能なプライベートLoRaを適用するのが好ましい。
【0051】
通信IF55は、管理端末60が接続するネットワーク40を介して、サーバ装置50からアラート内容情報信号を受信し、工事現場におけるクレーン10のオペレータや工事管理者等の携帯するスマートフォンやタブレット等に対して遠隔アラート発報信号を送信する。
【0052】
図4に示すように、サーバ装置50は、CPU51によるプログラムの実行により、少なくとも、通信部510、特定部520、表示部530,及び格納部540の各種機能を提供する。ここで、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0053】
通信部510では、各発信機30から発信された、固有のIDが付与されているアラート信号が随時受信され、格納部540に随時格納される。
【0054】
格納部540には、複数種のアラート信号(図示例では、発信機30A,30B,30Cからのアラート信号)のそれぞれのアラート内容情報が、アラート信号に固有のIDに紐付けられている、アラート信号内容データベースが格納される。
【0055】
ここで、アラート内容情報には、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重の70%未満の負荷状態であって安全な状態であるとした情報、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重の70%~100%の負荷状態であって注意すべき状態であるとした情報、作業半径に応じた吊荷荷重に関する定格総荷重100%超の負荷状態であり、もしくは、アウトリガ未張り出しである状態であって、危険な状態であるとした情報等が含まれる。
【0056】
アラート信号内容データベースには、IDが付与されている発信機からのアラート信号、このアラート信号に関するアラート内容情報が含まれる。例えば、図示例においては、固有のIDが付与されている発信機30Aは、特定の建設機械であるクレーン10に搭載されている三色灯20の赤灯21に通じており、定格総荷重100%超の負荷状態であって危険な状態である、といった内容がアラート信号内容データベースに含まれる。
【0057】
特定の一つの工事現場には、複数の建設機械が稼働していることから、アラート信号内容データベースには、各建設機械に搭載されている各種の発信機のIDが網羅され、各発信機からのアラート信号に関するアラート内容情報が付記される。
【0058】
特定部520では、発信機30から受信したアラート信号のIDに基づいて、アラート信号内容データベースからアラート内容情報を特定する。
【0059】
表示部530では、特定されたアラート内容情報を表示する。ここで、サーバ装置50の表示部530に表示されるアラート内容情報は、遠隔にいる管理者等が直接確認するものでないことから(管理者等は、自身の管理端末60の表示部にてアラート内容情報を確認する)、サーバ装置50は表示部530を備えていなくてもよい。
【0060】
通信部510では、特定部520にて特定されたアラート内容情報に関するアラート内容情報信号を管理端末60に送信する。ここで、管理端末60は、サーバ装置50へのアクセス権限を有する関連のコンピュータであり、アクセス権限が付与されている複数の管理端末60が各種データを共有することができる。
【0061】
図示を省略するが、各管理端末60は、少なくとも通信部と表示部を有している。通信部を介してサーバ装置50から送信される、アラート内容情報に関するアラート内容情報信号を受信する。
【0062】
受信されたアラート内容情報信号に基づくアラート内容情報が、管理端末60の表示部に表示される。ここで、図5A及び図5Bは、管理端末60の表示部610(表示画面)に表示される、アラート内容情報の一例を示す図である。
【0063】
図5Aに示すアラート内容情報は、複数種の建設機械(バックホウ1号機、2号機、3号機、クレーン1号機、2号機、3号機)がいずれも安全な状態であることを表示しており、その他、風速と雨量と騒音がいずれも閾値以下であって問題がないことを表示している。
【0064】
一方、図5Bに示すアラート内容情報では、バックホウ2号機が危険な状態であること、クレーン3号機が注意すべき状態であることを表示し、さらに、騒音が注意閾値を超えていることを表示している。
【0065】
工事現場から遠隔にある管理者等が図5Bに示す表示を確認した際に、工事現場に対して、バックホウ2号機が危険な状態であることを至急アラート発報し、クレーン3号機が注意すべき状態であること、騒音レベルが注意すべき状態であることをアラート発報する。
【0066】
実施形態に係る遠隔安全管理方法では、建設機械であるクレーン10の備える、吊荷荷重センサ15と三色灯20とを電気的に接続する信号回路18A,18B,18Cに対して、電気的に接続している発信機30A,30B,30Cからサーバ装置50に対してアラート信号を送信するA工程を有する。
【0067】
さらに、サーバ装置50にて受信したアラート信号に対応する、アラート内容情報信号を管理端末60に送信するB工程を有する。
【0068】
さらに、受信したアラート内容情報信号に基づいて、管理端末60にてアラート内容情報を表示するC工程を有する。管理端末60に表示されたアラート内容情報を確認した管理者等は、必要に応じて、工事現場の特定の建設機械のオペレータや工事管理者等に対して迅速に危険な状態であるとしたアラート発報を送信し、遠隔から工事現場における事故を防止することを可能にする。
【0069】
図示する遠隔安全管理システム70と遠隔安全管理方法によれば、遠隔にて工事現場の安全管理を行うことができ、必要に応じて迅速に遠隔から工事現場に対してアラート発報できることから、工事現場における施工安全性を飛躍的に高めることが可能になる。
【0070】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0071】
10:クレーン(建設機械)
11:走行体
12:旋回体
13:ブーム
14a:起伏ロープ
14b:吊りロープ
14c:フック
15:吊荷荷重センサ(センサ)
16:荷重制御部
17:スイッチユニット
17A:赤灯スイッチ
17B:黄灯スイッチ
17C:緑灯スイッチ
18A:赤灯回路(信号回路)
18B:黄灯回路(信号回路)
18C:緑灯回路(信号回路)
19:電源
20:警報機(三色灯)
21:赤灯
22:黄灯
23:緑灯
30:発信機
30A:赤灯発信機(発信機)
30B:黄灯発信機(発信機)
30C:緑灯発信機(発信機)
40:ネットワーク
50:サーバ装置
60,60A,60B:管理端末
70:遠隔安全管理システム
510:通信部
520:特定部
530:表示部
540:格納部
610:表示部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B