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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022552
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】鉄道車両の枕梁構造及び鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/10 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
B61D17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127484
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 宗太
(72)【発明者】
【氏名】中村 英之
(72)【発明者】
【氏名】金保 忠正
(57)【要約】
【課題】車体の組立性向上に寄与するとともに枕梁と台枠の間に所定の空間を確保しながら軽量かつ剛性の高い鉄道車両の枕梁構造及びこのような枕梁構造を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄道車両の構体の床を構成する台枠に備えられる枕梁の枕梁構造であって、前記枕梁は、前記構体の幅方向が押し出し方向となる多層構造の複数の形材を接合して形成され、前記複数の形材は、上側に突出する上部突出部を有し前記構体の幅方向中央に前記上部突出部の層の一部を切り欠いた領域を備える第1の形材と、前記上部突出部を有さない第2の形材とを含み、前記構体の幅方向両端部において前記枕梁の前記第2の形材上に配置される締結用部材を備え、前記締結用部材の締結面を介して前記枕梁を側梁に締結する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の構体の床を構成する台枠に備えられる枕梁の枕梁構造であって、
前記枕梁は、前記構体の幅方向が押し出し方向となる多層構造の複数の形材を接合して形成され、
前記複数の形材は、上側に突出する上部突出部を有し前記構体の幅方向中央に前記上部突出部の層の一部を切り欠いた領域を備える第1の形材と、前記上部突出部を有さない第2の形材とを含み、
前記構体の幅方向両端部において前記枕梁の前記第2の形材上に配置される締結用部材を備え、
前記締結用部材の締結面を介して前記枕梁を側梁に締結することを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の枕梁構造において、
前記上部突出部の上面と、前記締結用部材の上面の高さ方向の位置は略同じであることを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の枕梁構造において、
前記第2の形材は、前後方向の両側面に配置され、前記構体の幅方向の中央の側面の一部を切り欠いていることを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の枕梁構造において、
前記締結用部材の端部に薄板部を有することを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の枕梁構造において、
前記枕梁は、前記構体の幅方向両端部で前後方向中央部に、前記枕梁の締結時の滑りの発生を防止又は低減する板状の部材を備えることを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の枕梁構造において、
前記形材の上面に補強を設けることを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の枕梁構造において、
前記上部突出部が略台形形状の断面を有することを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の枕梁構造において、
前記形材は、前記鉄道車両の構体を構成する形材と同一断面形状を有する形材を機械加工することによって形成されることを特徴とする鉄道車両の枕梁構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の枕梁構造を備える台枠構造を有し、前記台枠構造で床を構成する鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の枕梁構造及び鉄道車両に関し、特に、台枠構造を備える鉄道車両の枕梁構造及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両構体(以下、構体と記す)は、床面をなす台枠と、台枠の幅方向の両端部に配置される側構体と、台枠の長手方向の両端部に配置される妻構体と、側構体と妻構体の上部に配置される屋根構体とから構成される6面体の構造物である。
【0003】
台枠は、台枠の幅方向の両端部にその長手方向に沿って備えられる側梁と、側梁の長手方向の両端部同士を接続する端梁と、構体の長手方向端部から所定距離の位置に端梁に沿って備えられる枕梁と、端梁と枕梁とを構体に接続するための構体長手方向に沿って配置される中梁とから構成される。
【0004】
枕梁の下面に構体上下方向に沿って備えられる中心ピンは、台車を構成する台車枠に接続される。車両の加速および減速の際、中心ピンを介して台車から枕梁に車両前後方向の荷重が伝達される。
【0005】
一方、鉄道車両の組立性向上の観点から、床下に取り付けられる配線やダクトの取付を容易化することが求められる。取付を容易化する上では、台車に枕梁を取り付けた状態で、台枠と枕梁の間に一定の空間を設けて構体に組み付けることが有効である。このような枕梁を搭載した台車構造として、特許文献1、2では、側梁とのみ、ボルト締結する枕梁を備えた台車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2500231号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2540592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉄道車両の台枠構造において、枕梁を側梁のみに接続する構造の場合、台車から中心ピンを介して枕梁に伝達されるモーメント荷重により、枕梁には捩り変形が生じる。また、走行時の上下振動によって台車から空気ばねを介して伝達される垂直荷重により、枕梁には曲げ変形が生じる。
【0008】
特許文献1、2に記載の枕梁を備えた台車構造では、枕梁構造が、車両構体の幅方向に沿って一様な断面のリブと面板から構成される。この構成であると、枕梁の重量が増大する蓋然性が高く、枕梁と台枠との間の空間の大きさが制約される場合がある。また、専用のリブと面板から構成される構造であるためコストも高くなる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、車体の組立性向上に寄与するとともに枕梁と台枠の間に所定の空間を確保しながら軽量かつ剛性の高い鉄道車両の枕梁構造及びこのような枕梁構造を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、代表的な本発明の鉄道車両の枕梁構造の一つは、鉄道車両の構体の床を構成する台枠に備えられる枕梁の枕梁構造であって、前記枕梁は、前記構体の幅方向が押し出し方向となる多層構造の複数の形材を接合して形成され、前記複数の形材は、上側に突出する上部突出部を有し前記構体の幅方向中央に前記上部突出部の層の一部を切り欠いた領域を備える第1の形材と、前記上部突出部を有さない第2の形材とを含み、前記構体の幅方向両端部において前記枕梁の前記第2の形材上に配置される締結用部材を備え、前記締結用部材の締結面を介して前記枕梁を側梁に締結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄道車両の枕梁構造及び鉄道車両において、車体の組立性向上に寄与するとともに枕梁と台枠の間に所定の空間を確保しながら軽量かつ剛性の高い枕梁構造とすることができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施例1の鉄道車両の側面図である。
図2図2は、本発明の実施例1の車両構体の下面斜視図である。
図3図3は、本発明の実施例1の枕梁の上面側外観を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施例1の枕梁の下面側外観を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施例1の枕梁の形材の接合を示す切断した拡大斜視図である。
図6図6は、図1のA-A断面を示す図である。
図7図7は、本発明の実施例1の枕梁で使用する加工前の形材の斜視図である。
図8図8は、本発明の実施例1の枕梁で使用する加工前の形材の長手方向に直角な平面で切断した断面図である。
図9図9は、本発明の実施例1の枕梁で使用する形材の接続状態を説明するための図である。
図10図10は、本発明の実施例1の枕梁で使用する形材の接続状態を締結用部材及び滑り防止用部材を含めて示した図である。
図11図11は、本発明の実施例1の枕梁における各形材の接合前の状態を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の実施例2の枕梁の構成を示す切断した拡大斜視図である。
図13図13は、本発明の実施例3の枕梁で使用する加工前の形材の長手方向に直角な平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明を実施するための形態を図1~13を用いて説明する。最初に、各図における各方向を定義する。構体1を備える鉄道車両の進行方向あるいは長手方向(前後方向)をX方向、構体1を備える鉄道車両の幅方向(左右方向)をY方向、構体1を備える鉄道車両の高さ方向(上下方向)をZ方向とする。以下、単に、X方向、Y方向、Z方向と記す場合がある。
【0015】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1の鉄道車両の側面図である。図2は、本発明の実施例1の車両構体の下面側斜視図である。
【0016】
鉄道車両100は、構体1と、構体1の下側で構体1を支持する台車2を備えている。
【0017】
構体1は、床面をなす台枠10と、台枠10の幅方向の両端部に配置される側構体30と、台枠の長手方向の両端部に配置される妻構体40と、側構体30と妻構体40の上部に配置される屋根構体50とから構成される6面体の構造物である。
【0018】
台枠10は、床構体5と、側梁11と、端梁12と、枕梁13とを備えている。床構体5は、鉄道車両100の床面を形成する。側梁11は、台枠10の幅方向(Y方向)の両端部に長手方向(X方向)に沿って備えられる。端梁12は、側梁11の長手方向(X方向)の両端部同士を接続する。枕梁13は、構体1の長手方向(X方向)端部から所定距離の位置に台枠10の幅方向(Y方向)に沿って備えられる。
【0019】
台車2は、枕梁13の下側に備えられ、水平面内でZ方向に沿う中心ピン14周りに台枠10に対して旋回可能に備えられる。台車2は、台車枠3と、台車枠3に対して回転可能に保持される車軸の両端部に固定される車輪6とを備えている。台車2は、X方向中央付近のY方向両側に設けられた空気ばね4を介して台枠10を支持している。
【0020】
枕梁13の下面に構体1の上下方向に沿って備えられる中心ピン14は、台車枠3に接続される。車両の加速および減速の際、中心ピン14を介して台車2から枕梁13に車両前後方向の荷重が伝達される。
【0021】
図3は、本発明の実施例1の枕梁の上面側外観を示す斜視図である。枕梁13は、4つの形材15A、15B、15C、15DをX方向に並べて接合して形成される構造である。これらの形材は押出形材であり、内部に中空部を有している。押出方向がY方向となっている。さらに、枕梁13は、締結用部材22と滑り防止用部材23を備えている。
【0022】
X方向中央の形材15B、15Cは、両端の形材15A、15Dの上面よりも上側に突出する上部突出部25をY方向に沿って形成している。上部突出部25のXZ平面での断面平面での断面形状は上側が短い辺の台形形状である。上部突出部25のY方向の中央部に、上部突出部25の一部の領域を下側に切り欠いた中央切欠き部26が形成されている。切り欠いた部分の上面は段差21を介して上部突出部25の上面よりも低く形成されており、両端の形材15A、15Dの上面と同じかそれに近い高さになっている。両端の形材15A、15Dは、上部突出部25のような突出部は設けられていない。形材15A、15DのX方向両端部は、側面全体についてY方向の両端部以外の部分、特にY方向の中央部を切り欠いた側面切欠き部27を有している。
【0023】
締結用部材22は、枕梁13のY方向両端の両端に配置して、接合などにより固定する。具体的には、形材15Aと形材15Dのそれぞれにおいて、形材15Aと形材15DのY方向端部のそれぞれの上面に配置する。締結用部材22のXZ平面での断面形状は、上下逆の台形形状であり、長い辺が上側に位置する。このため、締結用部材22は、形材15A、15Dの上部突出部25のXZ平面での断面形状に対して、入れ子のような断面形状で配置される。締結用部材22の上面のZ方向の位置は、形材15Bと形材15Cの上部突出部25の上面の位置と略同じである。また、締結用部材22の上面のX方向両端には、薄板部22aを設けてある。薄板部22aのX方向端部は、形材15Aと形材15Dの上部突出部25の上面のX方向の外側端部と接合などにより接続される。これにより、締結用部材22のX方向の側面においては、上面で薄板部22aを介して上部突出部25と固定されている。ここで、薄板部22aはある程度の弾性変形が可能な部材を適用できる。
【0024】
締結用部材22を設けることにより、上面側に枕梁13との締結面が構成される。この締結面を介してボルト等によって枕梁13は側梁11に対して固定される。また、締結用部材22の端部に薄板部22aを設けることで、締結用部材22の端部近傍にて側梁11に生じる応力集中を低減することが可能となる。
【0025】
滑り防止用部材23は、枕梁13のY方向両端のX方向中央部に配置して、接合などにより固定する。具体的には、形材15Bと形材15Cの上部突出部25のZ方向の上面位置において、これらの上面を接続するように設けられる。これにより締結面を多くできる。滑り防止用部材23の上面は、他の部分(例えば、上部突出部25の上面や締結用部材22の締結面)よりも摩擦係数の高い部材を適用するとよい。滑り防止用部材23のY方向の幅は、形材15Bと形材15CのY方向端部より、滑り防止に適した所定の幅分だけ設けられる。例えば、締結用部材22はY方向の幅と略同じとしてもよい。滑り防止用部材23は、枕梁13を側梁11に固定する際に、締結面の摩擦が大きくなるため、枕梁13と側梁11とのボルト等による締結時の滑りの発生を防止又は低減することが可能となる。
【0026】
図4は、本発明の実施例1の枕梁の下面側外観を示す斜視図である。図4図3に対して上下をひっくり返した状態の図である。
【0027】
X方向中央の形材15B、15Cは、下面側にY方向両側に受け部28を備えている。受け部28はY方向両端から所定の程度の範囲において、上側に切り欠いて形成されている。受け部28の切欠きはY方向においては、中央切欠き部26と重ならないようにして強度を保っている。この受け部28は空気ばね4を受けることができ、切り欠いた分だけZ方向の厚みを減らすことが可能となる。
【0028】
図5は、本発明の実施例1の枕梁の形材の接合を示す切断した拡大斜視図である。図5は、説明のため枕梁13の長手方向(Y方向)中央部のX-Z平面で切断した図を示す。
【0029】
形材15Aと形材15B、形材15Bと形材15C、形材15Cと形材15Dは、それぞれ溶接部16で接合される。これらの接合は、それぞれの形材の面板同士を突き合わせて、Y方向に沿って溶接される。
【0030】
図6は、図1のA-A断面を示す図である。図6に示すように枕梁13は、台車2と台枠10の間に設置される。
【0031】
空間24は、床構体5と枕梁13との間に設けられる空間である。枕梁13に上述した中央切欠き部26を形成することにより、空間24を広げることが可能となる。この空間24は、配管・ダクト・センサ類・防振材など、様々な部材や部品を配置するスペースとして活用することが可能となる。また、強度とのバランスを考慮しながら段差21の大きさを調整することにより、種々の大きさの空間24とすることが可能である。
【0032】
枕梁13の締結用部材22は、側梁11を枕梁13に対してボルト等で固定する部分である。締結用部材22は、構体1のY方向両端部付近に位置しており、Y方向両端の側梁11とそれぞれ固定する。枕梁13の受け部28は、台車2の空気ばね4の上側を受ける。
【0033】
ここで、台車2から垂直荷重が空気ばね4を介して枕梁13に伝達される。このとき、枕梁13は、側梁11と空気ばね4との間で、曲げ応力がかかり、曲げ変形が生じるが、形材15A~15Dの曲げ剛性によってこれらを低減することが可能となる。さらに、台車2から中心ピン14を介して枕梁13にモーメント荷重が伝達され、捩り変形が生じるが、形材15の捩り剛性によって低減することが可能となる。
【0034】
図7は、本発明の実施例1の枕梁で使用する加工前の形材の斜視図である。図8は、本発明の実施例1の枕梁で使用する加工前の形材の長手方向に直角な平面で切断した断面図である。
【0035】
上述した形材15A、15B、15C、15Dは、機械加工等による加工前は、同じ断面形状の形材15を使用することができる。形材15はY方向を長手方向として、図8に示される断面形状を維持して形成される。形材15は構体1の幅方向(Y方向)に沿って押し出した多層構造のアルミ形材を適用する。
【0036】
図8に示すように、形材15は、上側から第1面板15a、第2面板15b、第3面板15cの3つの面板がZ方向に平行に並んで形成されている三層構造である。第2面板15bと第3面板15cのX方向の長さは同じであり、第1面板15aのX方向の長さは、第2面板15bと第3面板15cよりも短く形成されている。また、第1面板15aと第2面板15bのZ方向の間隔は、第2面板15bと第3面板15cの間隔よりも大きい。
【0037】
第1面板15aと第2面板15bの間は、X方向外側の両側の外側リブ15dと、X方向内側の2つの内側リブ15eにより接続されている。外側リブ15d及び内側リブ15eは第2面板15bから第1面板15aに行くに従いX方向外側が狭まる方向へ傾斜している。これにより第1面板15aと第2面板15bの間は全体として断面が台形の形状となる。断面が台形の形状であると、機械加工等による加工はしやすいものとなる。
【0038】
第2面板15bと第3面板15cの間は、X方向外側の両側の外側リブ15fと、X方向内側の2つの内側リブ15gとにより接続されている。外側リブ15f及び内側リブ15gは第2面板15b及び第3面板15cに対して垂直に形成されている。これにより第2面板15bと第3面板15cの間は全体として断面が矩形の形状となる。
【0039】
図9は、本発明の実施例1の枕梁で使用する形材の接続状態を説明するための図である。
【0040】
図9に示すように、同じ断面形状の形材15を使用して加工して接合することで、枕梁13を形成できる。形材15B、15Cに対して形材15A、15Dは、形材15の上下の向きを逆にして接続する。形材15B、15Cの部分では接続範囲Pよりも上側に形材15が突出するようにして、形材15A、15Dでは、接続範囲Pよりも下側に突出する部分は削除する加工を行う。すなわち、形材15A、15Dに相当する形材15の第1面板15a、外側リブ15d、内側リブ15eを切り欠いて形成される。
【0041】
図3で説明した形材15B、15Cの上部突出部25は、形材15の第1面板15a、外側リブ15d、内側リブ15eが相当する。一方、中央切欠き部26は、形材15B、15Cに相当する形材15の第1面板15a、外側リブ15d、内側リブ15eを切り欠いて形成される。
【0042】
図4で説明した受け部28は、形材15B、15Cに相当する形材15の第3面板15c、外側リブ15f、内側リブ15gを切り欠いて形成される。なお、形材15A、15D側に位置する形材15B、15Cの外側リブ15fを切り欠かずに残して強度を上げてもよい。
【0043】
図3で説明した側面切欠き部27は、形材15A、15Dに相当する形材15を切り欠いて形成される。Y方向中央部においては、形材15B、15Cとの接続側の外側リブ15fとそれに近い第2面板15bと第3面板15cの部分以外の部分を切り欠いて形成される。
【0044】
形材15Aの第3面板15cと第2面板15bは、形材15Bの第2面板15bと第3面板15cとそれぞれ接合される。形材15Bの第2面板15bと第3面板15cは、形材15Cの第2面板15bと第3面板15cとそれぞれ接合される。形材15Cの第2面板15bと第3面板15cは、形材15Dの第3面板15cと第2面板15bとそれぞれ接合される。
【0045】
図10は、本発明の実施例1の枕梁で使用する形材の接続状態を締結用部材及び滑り防止用部材を含めて示した図である。
【0046】
締結用部材22は、形材15A及び形材15Dにおいて、上面となる第3面板15c上にそれぞれ配置されて固定される。このとき、締結用部材22の上面は形材15B及び形材15Cの上面となる第1面板15aと略同じ高さになる。締結用部材22の上面からX方向両端側に延びる薄板部22aは、形材15B及び形材15Cの第1面板15aの(形材15A側及び形材15D側)端部と接続される。
【0047】
滑り防止用部材23は、形材15B及び形材15Cの上面を接続するように設けられる。滑り防止用部材23は、形材15B及び形材15Cの第1面板15aの(形材15C側及び形材15B側)端部とそれぞれ接続される。
【0048】
図11は、本発明の実施例1の枕梁における各形材の接続前の状態を示す斜視図である。形材15A、15B、15C、15Dは、図7、8で示した形材15に機械加工を施しておく。形材15A、15B、15C、15Dの長手方向は、いずれも同じY方向である。
【0049】
形材15Bと形材15Cは、第1の形材として同じ形状に加工したものを使用できる。上述した中央切欠き部26や受け部28を形成するように削り加工等を行う。形材15Aと形材15Dは、第2の形材として同じ形状に加工したものを対称に配置して使用でき、側面切欠き部27を形成するように削り加工等を行う。
【0050】
そして、加工後の形材15A、15B、15C、15Dは、Y方向を同じ位置にそろえてX方向に並べて接合する。また、上述した締結用部材22と滑り防止用部材23も、形材15A、15B、15C、15Dの接合と同時又は後で接合することができる。
【0051】
(効果)
上記のように、枕梁13は、押出形材である形材15を使用することにより、軽量で剛性のある枕梁13とすることができる。とりわけアルミ形材として、軽量化と剛性の確保を図れる。また、複層の形材15であるので剛性の向上を図れる。そして、形材15を加工することにより、床構体5と枕梁13の間に空間24を確保して、配管・ダクト・センサ類・防振材など、様々な部材や部品を配置することが可能となる。このとき、段差21の大きさを調整することにより空間24の大きさを調整することができる。
【0052】
枕梁13は、同一断面形状の形材15を加工して、これらを組み合わせて接合することで、コストを抑え、軽量で剛性のある枕梁13とすることができる。そのとき、形材15の組み合わせ方を工夫することで、剛性の確保や空間を確保等、枕梁13の機能を高く維持することが可能となる。形材15は鉄道車両100の構体1の他の部分で使用する形材と共通化することで、部品点数を低減し車両の低コスト化が可能となる。
【0053】
枕梁13は、締結用部材22を用いることで、固定面の高さをそろえて、側梁11との確実な固定を可能とする。このとき、締結用部材22に薄板部22aを設けることで、応力集中を低減し、締結部の信頼性を向上することが可能となる。さらに、固定面の高さに滑り防止用部材23を配置することで、枕梁13と側梁11とのボルト締結面における滑りの発生を防止することが可能となる。
【0054】
また、枕梁13の形材15は、所定の接続範囲P(図10)を確保して、複数の面板で接合することで、形材15同士の確実な接合を可能とし、枕梁13全体の強度を高めることを可能とする。また、受け部28を設けることで、台枠10の位置を高くすることなく、空気ばね4の上下方向の高さを確保することができる。
【0055】
<実施例2>
図12は、本発明の実施例2の枕梁の構成を示す切断した拡大斜視図である。図12は、説明のため枕梁13’の長手方向(Y方向)中央部のX-Z平面で切断した図を示す。実施例2では、実施例1と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。
【0056】
実施例2の枕梁13’は、実施例1の枕梁13に対して補強17を追加で設けた構成である。補強17は、形材15の上面に接合するなどして補強する板状部材である。例えば、形材15B、15Cの中央切欠き部26の上面において、リブ18(外側リブ15d、内側リブ15eを切り欠いた残りの部分)の間にY方向に沿って設けられる。このとき、補強17は、中央切欠き部26のY方向の長さもしくは、それより長い長さで補強される。
【0057】
実施例2は、実施例1の効果に加え、補強17を用いることにより、枕梁13’の曲げ剛性が増加し、曲げモーメントを受けた際の枕梁13’の曲げ変形を低減することが可能となる。特に、厚みが薄くなる中央切欠き部26付近を補強することによって、効果的に曲げ剛性を高めることができる。
【0058】
<実施例3>
図13は、本発明の実施例3の枕梁で使用する加工前の形材の長手方向に直角な平面で切断した断面図である。実施例3では、実施例1と異なる点について主に説明し、同一の箇所には同一の符号を付してあり、特に説明がない部分は同じ説明を省略している。
【0059】
実施例3では、形材15’は、実施例1の形材15よりも面板を下側に2枚(二層)増やした五層構造である。具体的には、第3面板15cの下側に、第3面板15cと平行で同じ大きさの第4面板15h及び第5面板15iを追加する。第3面板15cと第4面板15hの間は外側リブ15j及び内側リブ15kに接続される。第4面板15hと第5面板15iの間は外側リブ15m及び内側リブ15nに接続される。これらのリブは外側リブ15f、内側リブ15gと同様の形状である。また、第2面板15b、第3面板15c、第4面板15h、第5面板15iのそれぞれのz方向の間隔は同じである。
【0060】
図13の形材15’を、図9、10で示した実施例1の接続をする場合、第2面板15b、第3面板15c、第4面板15h、第5面板15iの4つの面板で接続して枕梁を形成できる。すなわち、形材15A、15B、15C、15Dは、4つの面板で、それぞれ接続される。この場合、形材15A、15Dの上下方向の向きは逆で適用できる。このため、接続範囲PのZ方向の長さを長くできる。
【0061】
実施例3は、実施例1の効果に加え、実施例1よりも接続範囲PのZ方向の長さを長くできると共に、接続する面板の数を増やすことができる。これにより、形材15’の曲げ剛性および捩り剛性が増加し、曲げモーメントおよび捩りモーメントを受けた際の枕梁の曲げ変形および捩り変形を低減することが可能となる。
【0062】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0063】
例えば、枕梁13、13’に、台車2に取り付けられるヨーダンパからの荷重を受ける部材を取り付ける構成とすることも可能である。
【0064】
また、実施例1の形材15Aと15Dは、形材15Cと15Dとは同じ物を使用せずに、もともと第2面板15bと第3面板15cを有する二重構造の形材を使用してもよい。この形材の場合、第1面板15a、外側リブ15d、内側リブ15eは存在しない。実施例3でも同様に、形材15Aと15Dは、もともと第2面板15b、第3面板15c、第4面板15h、第5面板15iを有する四重構造の形材を使用してもよい。
【0065】
また、枕梁に用いる形材の数は4つの例を示した。形材の数は、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上と、形材や枕梁の形状を考慮して変更して適用することもできる。
【0066】
また、各形材を接合する面板の数は、実施例1では2枚、実施例3では4枚の例を示した。しかし、接合する面板の数は、これに限らず、例えば、2枚以上、3枚以上、4枚以上と、数を増やして剛性を増すことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…構体、2…台車、3…台車枠、4…空気ばね、5…床構体、6…車輪、10…台枠、11…側梁、12…端梁、13、13’…枕梁、14…中心ピン、15、15’、15A、15B、15C、15D…形材、15a…第1面板、15b…第2面板、15c…第3面板、15d…外側リブ、15e…内側リブ、15f…外側リブ、15g…内側リブ、15h…第4面板、15i…第5面板、15j…外側リブ、15k…内側リブ、15m…外側リブ、15n…内側リブ、16…溶接部、17…補強、18…リブ、21…段差、22…締結用部材、22a…薄板部、23…滑り防止用部材、24…空間、25…上部突出部、26…中央切欠き部、27…側面切欠き部、28…受け部、30…側構体、40…妻構体、50…屋根構体、100…鉄道車両、P…接続範囲
図1
図2
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図13