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  • 特開-測定装置及び測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022609
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
G01M11/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127583
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 聡
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086KK05
(57)【要約】
【課題】BGSの強度変動に起因するBFSの算出精度の低下を抑制する。
【解決手段】測定装置は、光ファイバ内で発生したレイリー散乱光の強度を検出する検出部と、光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルを測定するスペクトラムアナライザと、検出部の検出結果及びスペクトラムアナライザの測定結果に基づいて、ブリルアン散乱光のスペクトルのピークの周波数シフト量を算出する算出部と、を備え、算出部による算出は、レイリー散乱光の強度に基づいて、ブリルアン散乱光のスペクトルにおけるスロープでの強度測定値を補正することと、補正後の強度測定値に基づく強度変動値から周波数シフト量を算出することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ内で発生したレイリー散乱光の強度を検出する検出部と、
前記光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルを測定するスペクトラムアナライザと、
前記検出部の検出結果及び前記スペクトラムアナライザの測定結果に基づいて、前記ブリルアン散乱光のスペクトルのピークの周波数シフト量を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部による前記算出は、
前記レイリー散乱光の強度に基づいて、前記ブリルアン散乱光のスペクトルにおけるスロープでの強度測定値を補正することと、
補正後の強度測定値に基づく強度変動値から前記周波数シフト量を算出することと、
を含む、
測定装置。
【請求項2】
前記算出部による前記補正は、前記強度測定値を、前記レイリー散乱光の強度に応じた補正値で減算又は除算することを含む、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記レイリー散乱光の強度が大きくなるにつれて、前記補正値が大きくなる、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記スペクトラムアナライザは、1つの測定周波数での強度測定値を測定し、
前記算出部は、前記1つの測定周波数での前記強度変動値から前記周波数シフト量を算出する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
光ファイバ内で発生したレイリー散乱光の強度を検出することと、
前記光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルを測定することと、
前記検出の結果及び前記測定の結果に基づいて、前記ブリルアン散乱光のスペクトルのピークの周波数シフト量を算出することと、
を含み、
前記算出することは、
前記レイリー散乱光の強度に基づいて、前記ブリルアン散乱光のスペクトルにおけるスロープでの強度測定値を補正することと、
補正後の強度測定値に基づく強度変動値から前記周波数シフト量を算出することと、
を含む、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルのピーク周波数の周波数シフト量を算出することで、光ファイバの特性を測定する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。このスペクトルはBGS(Brillouin Gain Spectrum)と称され、周波数シフト量はBFS(Brillouin Frequency Shift)と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-48065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BGSのスロープでの強度変動値だけからBFSを算出する手法として、BFSスロープ検出法がある。スロープを含むBGS(すなわちBGS全体)の強度が変動することも少なくない。この強度変動がノイズとなり、BFSの算出精度が低下する。
【0005】
本発明は、BGSの強度変動に起因するBFSの算出精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る測定装置は、光ファイバ内で発生したレイリー散乱光の強度を検出する検出部と、光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルを測定するスペクトラムアナライザと、検出部の検出結果及びスペクトラムアナライザの測定結果に基づいて、ブリルアン散乱光のスペクトルのピークの周波数シフト量を算出する算出部と、を備え、算出部による算出は、レイリー散乱光の強度に基づいて、ブリルアン散乱光のスペクトルにおけるスロープでの強度測定値を補正することと、補正後の強度測定値に基づく強度変動値から周波数シフト量を算出することと、を含む。
【0007】
一側面に係る測定方法は、光ファイバ内で発生したレイリー散乱光の強度を検出することと、光ファイバ内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルを測定することと、検出の結果及び測定の結果に基づいて、ブリルアン散乱光のスペクトルのピークの周波数シフト量を算出することと、を含み、算出することは、レイリー散乱光の強度に基づいて、ブリルアン散乱光のスペクトルにおけるスロープでの強度測定値を補正することと、補正後の強度測定値に基づく強度変動値から周波数シフト量を算出することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、BGSの強度変動に起因するBFSの算出精度の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る測定装置の概略構成の例を示す図である。
図2】スロープ検出法の例を示す図である。
図3】BGSの強度変動によるBFSの算出精度の低下の例を示す図である。
図4】補正の例を示す図である。
図5】測定装置において実行される処理(測定方法)の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る測定装置の概略構成の例を示す図である。測定装置100は、光ファイバFUTの特性を測定する。以下では、測定方法として、BOCDR(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)法を例に挙げて説明する。
【0012】
測定装置100は、周波数変調された光を生成し、光ファイバFUTに送出する(入射させる)。周波数変調された光の生成及び光ファイバFUTへの入射に関する要素として、測定装置100は、光源1と、変調器2と、カプラ3と、遅延器4と、サーキュレータ5と、端子6とを含む。
【0013】
光源1は、光を出力する。光源1は、例えばLD(Laser Diode)を含んで構成される。変調器2は、光源1が出力する光に対して周波数変調を行うFM変調器である。周波数変調された後の光を、変調光LFMと称し図示する。
【0014】
カプラ3は、光源1からの変調光LFMを2つに分岐させる。分岐した2つの光のうち、一方の光を、引き続き変調光LFMとして図示する。他方の光を、参照光LREFと称し図示する。変調光LFMは、遅延器4に送られる。参照光LREFは、後述のミキサ10に送られる。
【0015】
遅延器4は、変調光LFMに遅延を与える。遅延器4は、例えば所望の遅延を与える長さを有する光ファイバ(遅延光ファイバ)を含んで構成される。遅延が与えられることにより、変調周波数の掃引によっても位置変化しない0次相関ピークが光ファイバFUTの外部に位置するようになる。
【0016】
サーキュレータ5は、遅延器4を通った変調光LFMを、端子6に導く。端子6には、光ファイバFUTの一端部が光学的に接続される。変調光LFMは、端子6から光ファイバFUTに送出される。
【0017】
端子6から光ファイバFUTに送出された変調光LFMは、光ファイバFUT内の各位置で散乱されるとともに、光ファイバFUTを往復して端子27に戻る。端子6に戻った光を、戻り光Lと称し図示する。戻り光Lは、ブリルアン散乱光及びレイリー散乱光を含む。戻り光Lは、サーキュレータ5を介して後述のカプラ7に送られる。
【0018】
測定装置100は、戻り光Lに含まれるブリルアン散乱光及びレイリー散乱光に基づいて、光ファイバFUTの特性を測定する。特性測定に関するに関する要素として、測定装置100は、カプラ7と、フィルタ8と、検出部9と、ミキサ10と、スペクトラムアナライザ11と、算出部12とを含む。
【0019】
カプラ7は、サーキュレータ5からの戻り光Lを2つに分岐させ、フィルタ8及びミキサ10それぞれに送る。分岐の比率は1:1でもよいし他の比率でもよい。
【0020】
フィルタ8は、カプラ7からの戻り光LSに含まれるブリルアン散乱光及びレイリー散乱光のうち、ブリルアン散乱光をカットし、レイリー散乱光だけを通過させる。フィルタ8を通過したレイリー散乱光を、レイリー散乱光Lと称し図示する。レイリー散乱光Lは、検出部9に送られる。
【0021】
検出部9は、光ファイバFUT内で発生したレイリー散乱光、より具体的にはフィルタ8を通過したレイリー散乱光Lの強度を検出する。検出部9は、例えばフォトダイオード(PD:Photo Diode)を含んで構成される。
【0022】
ミキサ10は、カプラ3からの参照光LREFと、カプラ7からの戻り光Lとを混合し、電気信号に変換(O-E変換)する。周波数変調された参照光LREF及び戻り光LSの位相差が2πの整数倍となる条件で、それぞれの光の位相が揃って互いに強め合う。変調周波数に応じた光ファイバFUT内の位置(相関ピーク位置)からの戻り光Lに対応する電気信号が、選択的に受信される。電気信号は、GHz帯域のRF信号である。
【0023】
スペクトラムアナライザ11は、光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光のスペクトルを測定する。具体的に、スペクトラムアナライザ11は、ミキサ10によって選択的に受信された電気信号に基づいて、戻り光Lに含まれるブリルアン散乱光のスペクトルを測定する。スペクトラムアナライザ11は、電気スペクトラムアナライザ(ESA:Electrical Spectrum Analyzer)である。上述の相関ピーク位置、すなわち光ファイバFUT内の測定位置からの戻り光Lの伝搬時間(戻り時間)に基づき、スペクトラムアナライザ11に入力される電気信号が時間的に選別される。光ファイバFUT内の測定位置で発生したブリルアン散乱光のスペクトルが測定される。このスペクトルが、BGSである。なお、本開示におけるスペクトル測定は、1つの周波数だけでの強度測定(ゼロスパンでの測定)を含む意味である。
【0024】
算出部12は、検出部9の検出結果すなわちレイリー散乱光Lの強度と、スペクトラムアナライザ11の測定結果すなわちBGSとに基づいて、BGSにおいて強度が最大となるピーク周波数の周波数シフト量を算出する。この周波数シフト量が、BFSである。BFSの算出には、BFSスロープ検出法が用いられ、これについては後に改めて説明する。算出されたBFSから、測定位置における光ファイバFUTの歪みや温度等が求められる。このようにして、光ファイバFUTの特性が測定される。
【0025】
測定装置100は、制御部13を含む。制御部13は、測定装置100の各要素を制御することによって測定装置100の全体制御を行う。制御は、図示しない制御信号等を用いて行われる。いくつかの制御の例について述べる。
【0026】
例えば、制御部13は、変調器2を制御することによって、変調光LFMの変調周波数を設定する。上述のように、変調周波数に応じて、光ファイバFUT内の測定位置が変化する。より具体的に、制御部31は、変調周波数を掃引する。変調周波数の掃引により、光ファイバFUTの長手方向における複数の異なる位置それぞれでの光ファイバFUTの特性(分布特性)が測定される。制御部31は、変調器22を制御することにより、変調周波数の掃引速度、掃引範囲等を設定してもよい。
【0027】
制御部13は、図示しない操作盤やディスプレイを制御することによって、測定装置100の操作に関する情報をユーザに表示したり、ユーザ操作を受け付けたりしてよい。例えば、制御部13は、算出部12の算出結果、より具体的には光ファイバFUTの特性の測定結果を操作表示部に表示させる。なお、上述の操作盤やディスプレイは、測定装置100内に設けられてもよいし、測定装置100と図示しないネットワーク等を介して通信可能に接続された外部の装置内に設けられてもよい。
【0028】
再び算出部12について説明する。算出部12は、BFSスロープ検出法を用いてBFSを算出する。BFSスロープ検出法は、BGSのスロープにおけるいくつかの箇所(例えば1~2箇所程度)の強度変動値だけに基づいてBFSを算出する手法であり、スロープアシスト法等とも称される。
【0029】
BGS全体を測定しようとすると、多くの箇所での測定が必要になる。例えば周波数範囲が9.9GHz~11.9GHzであり周波数ステップが1MHzの場合には、必要な測定箇所の数が2001にもなる。測定箇所の多さは、高速測定の観点からはデメリットとなり得る。BFSスロープ検出法を用いることにより、必要な測定箇所の数を大幅に低減し、測定を高速化することができる。
【0030】
図2は、スロープ検出法の例を示す図である。グラフの横軸は周波数を表し、縦軸は強度を表す。グラフ線C1及びグラフ線C2は、例えば異なる時刻において観測され得る、ピーク周波数の異なる2つのBGSを示す。BFSは、グラフ線C1のBGSのピーク周波数を基準としたときの、グラフ線C2のBGSのピーク周波数のシフト量として図示される。
【0031】
グラフ線C1のBGSを基準とした場合、グラフ線C2のBGSのピーク周波数が高周波数側にシフトしている。この例では、スペクトラムアナライザ11の測定周波数は下りスロープにおける1つの周波数だけであり、測定周波数fmeasとして図示される。グラフ線C2のBGSにおける測定周波数fmeasでの強度が、強度測定値Pmeasとして測定される。
【0032】
図2から理解されるように、BFSの分だけ、グラフ線C2のBGSが、基準となるグラフ線C1のBGSから離れる。測定周波数fmeasでのグラフ線C1のBGSの強度とグラフ線C2のBGSの強度(すなわち強度測定値Pmeas)との間に差が生じる。この強度差が、BFSスロープ検出法における強度変動値であり、強度変動値ΔPとして図示される。
【0033】
強度変動値ΔPは、BFS(の大きさ等)に応じて変化する。強度変動値ΔPとBFSとの間に一定の関係が存在する。算出部12は、強度変動値ΔPから、BFSを算出する。算出には、例えば、強度変動値ΔPをBFSに換算するための換算係数が用いられる。その場合、算出部12は、強度変動値ΔPに換算係数を乗算することで、BFSを算出する。
【0034】
一方で、強度変動値ΔPは、BGS全体の強度が変動することによっても変化する。このBGSの強度変動値は、ノイズとして強度変動値ΔPに現れ、SN比(Signal to Noise Ratio)を低下させる。その結果、強度変動値ΔPに基づくBFSの算出精度が低下する。
【0035】
図3は、BGSの強度変動によるBFSの算出精度の低下の例を示す図である。図3のBFSは、先に説明した図2のBFSよりも小さい。一方で、図3においては、グラフ線C2のBGS(のスロープを含む全体)の強度が変動している。この例では強度が大きくなっており、結果として、図3の強度測定値Pmeasは、先に説明した図2の強度測定値Pmeasと同じである。図3の強度変動値ΔPは、先に説明した図2の強度変動値ΔPと同じである。
【0036】
図3の強度変動値ΔPをそのまま用いてBFSを算出すると、図2のBFSと同じ大きさになり、本来の値から離れてしまう(この例では本来の値よりも大きくなる)。BGSの強度変動の方向が逆であったり、測定周波数fmeasが下りスロープではなく上りスロープでの周波数であったりする場合も同様に、算出されるBFSが本来の値から離れる。このように、BGSの強度変動によって、BFSの算出精度が低下する。
【0037】
図1に戻り、本実施形態では、算出部12は、検出部9によって検出されたレイリー散乱光Lの強度に基づいて、強度測定値Pmeasを補正する。レイリー散乱光Lの強度は、ブリルアン散乱光の強度と一緒に変動する。算出部12は、強度測定値Pmeasを、レイリー散乱光の強度に応じた値(補正値)で補正する。例えば、算出部12は、強度測定値Pmeasを、補正値で減算又は除算する。この場合、レイリー散乱光Lの強度が大きくなるにつれて、補正値は大きくなる。レイリー散乱光Lの強度が小さくなるにつれて、補正値は小さくなる。
【0038】
下記の式(1)は、補正式の一例である。式(1)において、Pは、レイリー散乱光Lの強度を示す。kは、Pの係数であり、例えばカプラ7の分岐比率等に応じて設定される。kPが上述の補正値に相当する。式(1)中の各項のスケールはdBであり、従って、強度測定値Pmeasは補正値kPで減算される。なお、スケールが真数の場合には、強度測定値Pmeasは補正値kPで除算される。
【数1】
【0039】
図4は、補正の例を示す図である。上述の式(1)に基づいて、強度測定値Pmeasが補正される。この例では、補正後の強度測定値Pmeasは、補正前の強度測定値Pmeasよりも小さくなる。強度変動値ΔPも小さくなる。算出部12は、補正後の強度測定値Pmeasに基づく強度変動値ΔPから、BFSを算出する。こうして算出されるBFSは、図2のBFSよりも小さくなり、本来の値に近づく。すなわち、上述の強度測定値Pmeasの補正により、BFSの算出精度が向上する。
【0040】
なお、レイリー散乱光Lの強度は、ブリルアン散乱光の強度よりもかなり大きく(例えば数十dBも大きい)、強度検出に適している。レイリー散乱光Lの強度を利用することで、強度変動の的確な補正が行い易くなる。
【0041】
以上で説明した測定装置100によれば、BGS全体の強度変動に応じて、BGSのスロープの強度、より特定的には測定周波数fmeasでの強度測定値Pmeasが補正される。補正後の強度測定値Pmeasに基づく強度変動値ΔPから、BFSが算出される。これにより、BGSの強度変動に起因するBFSの算出精度の低下を抑制することができる。
【0042】
測定周波数fmeasは1つだけでよく、その場合、1つの周波数での強度変動値ΔPからBFSが算出される。例えば、上りスロープ及び下りスロープそれぞれの強度の差分を利用して強度変動の影響を打ち消す差動検出手法では、2つ以上の測定周波数での強度測定が必要になる。測定装置100によれば、差動検出手法よりも測定周波数の数を減らし(最小化し)、測定を高速化することもできる。
【0043】
これまで説明した図1に示される測定装置100の構成は、一例に過ぎない。例えば、いくつかの要素の間には、図示しない増幅器、フィルタ等が設けられてよい。ブリルアン散乱光をカットするフィルタ8が無い構成も可能である。先に述べたように、レイリー散乱光Lの強度がブリルアン散乱光の強度よりもかなり大きいので、ブリルアン散乱光が検出部9に入射したとしても、検出部9によるレイリー散乱光Lの検出への影響が小さいからである。
【0044】
図5は、測定装置において実行される処理(測定方法)の例を示すフローチャートである。前提として、変調光LFMの光ファイバFUTへの送出により、戻り光Lが得られているものとする。各処理の詳細はこれまで説明したとおりであるので、詳細な説明は適宜省略する。
【0045】
ステップS1において、レイリー散乱光が検出される。検出部9は、戻り光Lに含まれるレイリー散乱光Lの強度を検出する。
【0046】
ステップS2において、BGSが測定される。スペクトラムアナライザ11は、戻り光Lに含まれるブリルアン散乱光のスペクトルを測定する。測定周波数fmeasでの強度測定値Pmeasが測定される。
【0047】
なお、上述のステップS1及びステップS2の処理の順番は逆でもよいし。それらの処理は、同時に(並列に)実行されてもよい。
【0048】
ステップS3において、強度測定値が補正される。算出部12は、先のステップS1で検出されたレイリー散乱光Lの強度に基づいて、先のステップS2で測定された強度測定値Pmeasを補正する。
【0049】
ステップS4において、BFSが算出される。算出部12は、先のステップS3で補正した後の強度測定値Pmeasに基づく強度変動値ΔPから、BFSを算出する。
【0050】
例えば以上のようにして、BFSが算出される。算出されたBFSから光ファイバFUTの特性が測定され、測定結果が表示等される。
【0051】
以上、開示される技術の一実施形態について説明したが、開示される技術は上記実施形態に限定されない。
【0052】
上記実施形態では、測定周波数fmeasが1つの周波数である場合を例に挙げて説明した。ただし、測定周波数fmeasは、2つ以上の異なる周波数であってもよい。また、上記実施形態では、測定周波数fmeasが下りスロープでの周波数である場合を例に挙げて説明した。ただし、測定周波数fmeasは、上りスロープでの周波数であってもよい。
【0053】
時間ゲート法が用いられてもよい。この場合には、変調光LFMがパルス状に整形され、ポンプ光として光ファイバFUTに送出される。二重変調が用いられてもよい。一方の変調周波数が他方の変調周波数の整数倍となるように、光源1の光が二重変調される。低い変調周波数に対応する相関ピークと、高い変調周波数に対応する相関ピークとが光ファイバFUT内で重なる地点が、選択的に測定される。
【0054】
BOCDR以外の手法が用いられてもよい。他の手法の例は、BOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)である。光ファイバFUTの両端から光を入射させた場合でも、レイリー散乱光及びブリルアン散乱光が生じるので、これまで説明したようにBFSを算出することができる。
【0055】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、測定装置である。図1図5を参照して説明したように、測定装置100は、検出部9と、スペクトラムアナライザ11と、算出部12と、を備える。検出部9は、光ファイバFUT内で発生したレイリー散乱光Lの強度を検出する。光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光のスペクトル(BGS)を測定する。算出部12は、検出部9の検出結果及びスペクトラムアナライザ11の測定結果に基づいて、BGSのピークの周波数シフト量(BFS)を算出する。算出部12による算出は、レイリー散乱光Lの強度に基づいて、BGSにおけるスロープでの強度測定値Pmeasを補正すること(ステップS3)と、補正後の強度測定値Pmeasに基づく強度変動値ΔPからBFSを算出すること(ステップS4)と、を含む。
【0056】
上記の測定装置100によれば、レイリー散乱光Lの強度に基づいて、BGSにおけるスロープでの強度測定値Pmeasが補正される。補正後の強度測定値Pmeasに基づく強度変動値ΔPから、BFSが算出される。従って、BGSの強度変動に起因するBFSの算出精度の低下を抑制することができる。
【0057】
算出部12による上述の補正は、強度測定値Pmeasを、レイリー散乱光Lの強度に応じた補正値で減算又は除算することを含んでよい。この場合、レイリー散乱光Lの強度が大きくなるにつれて、補正値が大きくなってよい。例えばこのような補正値を用いて強度測定値Pmeasを補正することができる。
【0058】
スペクトラムアナライザ11は、1つの測定周波数fmeasでの強度測定値Pmeasを測定し、算出部12は、その1つの測定周波数fmeasでの強度変動値ΔPからBFSを算出してよい。これにより、測定周波数の数を最小化し、測定を高速化することができる。
【0059】
図5等を参照して説明した測定方法も、開示される技術の1つである。測定方法は、光ファイバFUT内で発生したレイリー散乱光の強度を検出すること(ステップS1)と、光ファイバFUT内で発生したブリルアン散乱光のスペクトル(BGS)を測定すること(ステップS2)と、検出の結果及び測定の結果に基づいて、BGSのピークの周波数シフト量(BFS)を算出すること(ステップS4)と、を含む。算出することは、レイリー散乱光Lの強度に基づいて、BGSにおけるスロープでの強度測定値Pmeasを補正すること(ステップS3)と、補正後の強度測定値Pmeasに基づく強度変動値ΔPからBFSを算出すること(ステップS4)と、を含む。この測定方法によっても、これまで説明したように、BGSの強度変動に起因するBFSの算出精度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 測定装置
1 光源
2 変調器
3 カプラ
4 遅延器
5 サーキュレータ
6 端子
7 カプラ
8 フィルタ
9 検出部
10 ミキサ
11 スペクトラムアナライザ
12 算出部
13 制御部
FUT 光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5