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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022630
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】重錘
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20230208BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B66C23/88 Q
B66C15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127612
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】山上 貴頌
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA05
3F204FA02
3F204FB03
3F204FB18
3F204FD02
3F204FE03
3F205AA07
3F205AC01
3F205CA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、吊り荷ロープに対する着脱が容易な重錘を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る重錘は、建設機械の起伏部材から垂下される吊り荷ロープの過巻を検出するために上記吊り荷ロープが挿通される重錘であって、上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部と、上記一対の筒状部に連結される連結部とを備え、上記一対の筒状部に上記吊り荷ロープを挿抜するためのスリットがそれぞれ形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の起伏部材から垂下される吊り荷ロープの過巻を検出するために上記吊り荷ロープが挿通される重錘であって、
上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部と、
上記一対の筒状部に連結される連結部と
を備え、
上記一対の筒状部に上記吊り荷ロープを挿抜するためのスリットがそれぞれ形成されている重錘。
【請求項2】
上記連結部が、棒状、板状、紐状又は鎖状である請求項1に記載の重錘。
【請求項3】
上記連結部が、少なくとも上記一対の筒状部のいずれかと着脱可能に設けられている請求項1又は請求項2に記載の重錘。
【請求項4】
上記連結部が、上記一対の筒状部に設けられている一対の上記スリット同士の間に配置されている請求項3に記載の重錘。
【請求項5】
一対の上記スリットの中心線同士が一致していない請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の重錘。
【請求項6】
一対の上記スリットの中心線同士が非平行である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の重錘。
【請求項7】
上記一対のスリットが、上下方向に対して傾斜する傾斜部を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の重錘。
【請求項8】
上記一対のスリットに設けられている一対の上記傾斜部同士の傾斜方向が逆である請求項7に記載の重錘。
【請求項9】
上記一対の筒状部のうち、上側に位置する筒状部の内径が下側に位置する筒状部の内径よりも大きい請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の重錘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重錘に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン等の建設機械では、ジブ等の起伏部材から垂下される吊り荷ロープの過巻を検出するために重錘が用いられている。この重錘は、起伏部材に配置されたリミットスイッチに取り付けられたワイヤロープ等によって吊り下げられている。この重錘は、筒状であり、吊り荷ロープが通過する挿通穴を有する。この重錘は、吊り荷ロープを巻き上げると、この吊り荷ロープに吊り下げられているフックが下方から接触し、このフックと共に持ち上げられる。その結果、リミットスイッチに加わる力が減少し、吊り荷ロープの過巻を検出することができる(特開2013-18616号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-18616号公報
【特許文献2】特開2019-172385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている重錘は、ワイヤロープに吊り下げられた状態で、挿通穴の一端側から吊り荷ロープが挿入される。そのため、特許文献1に記載されている重錘によると、吊り荷ロープを挿通穴に通過させたうえで、この吊り荷ロープにフックを取り付けることを要する。
【0005】
従って、特許文献1に記載されている重錘によると、吊り荷ロープにフックを取り付ける前に吊り荷ロープを重錘に挿入しておくことを要すると共に、重錘の着脱の都度、吊り荷ロープとフックとを着脱することが必要となり、重錘の着脱作業性が悪い。
【0006】
なお、特許文献2には、軸方向に横断するロープ通過許容空間を有する部分筒状の重錘本体と、この重錘本体のロープ通過許容空間を塞ぐように重錘本体に着脱可能に装着される着脱部材と、重錘本体に着脱部材を締結する締結具とを有する重錘が記載されている。特許文献2に記載されている重錘によると、ロープ通過許容空間を通して重錘の内外にロープを挿抜することが可能である。但し、この構成によると、ロープ許容空間からの意図しないロープの抜け出しを防止するために、ロープ許容空間を着脱部材で塞ぎ、さらに締結具を用いて着脱部材を重錘本体に締結することを要する。そのため、特許文献2に記載されている重錘もロープに対する着脱作業性の観点で改良の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、吊り荷ロープに対する着脱が容易な重錘を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る重錘は、建設機械の起伏部材から垂下される吊り荷ロープの過巻を検出するために上記吊り荷ロープが挿通される重錘であって、上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部と、上記一対の筒状部に連結される連結部とを備え、上記一対の筒状部に上記吊り荷ロープを挿抜するためのスリットがそれぞれ形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る重錘は、吊り荷ロープに対する着脱が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重錘が取り付けられた建設機械を示す模式的側面図である。
図2図2は、図1の建設機械の起伏部材、並びにこの起伏部材から吊り下げられるフック及び重錘を示す模式的部分拡大図である。
図3図3は、図1の建設機械を前方から見た重錘の取り付け状態を示す模式的部分拡大図である。
図4図4は、図1の重錘の模式的斜視図である。
図5図5は、図4の重錘の模式的正面図である。
図6図6は、図4の重錘とは異なる形態に係る重錘を示す模式的斜視図である。
図7図7は、図6の重錘の着脱型連結部を取り外した状態を示す模式的斜視図である。
図8図8は、図4及び図6の重錘とは異なる形態に係る重錘を示す模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本発明の一態様に係る重錘は、建設機械の起伏部材から垂下される吊り荷ロープの過巻を検出するために上記吊り荷ロープが挿通される重錘であって、上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部と、上記一対の筒状部に連結される連結部とを備え、上記一対の筒状部に上記吊り荷ロープを挿抜するためのスリットがそれぞれ形成されている。
【0013】
当該重錘は、上記スリットを通して上記吊り荷ロープを上記筒状部の内外に挿抜することができる。そのため、当該重錘は、吊り荷ロープに対する着脱が容易である。また、当該重錘は、上下方向に間隔をもって配置される上記一対の筒状部を備えているので、上記吊り荷ロープが当該重錘から意図せず抜け出ることを抑制しやすい。
【0014】
上記連結部が、棒状、板状、紐状又は鎖状であるとよい。このように、上記連結部が、棒状、板状、紐状又は鎖状であることによって、上記一対の筒状部を上下方向に間隔を空けた状態で容易に配置しやすい。
【0015】
上記連結部が、少なくとも上記一対の筒状部のいずれかと着脱可能に設けられているとよい。このように、上記連結部が、少なくとも上記一対の筒状部のいずれかと着脱可能に設けられていることによって、例えば上記一対の筒状部に設けられているスリットに上記吊り荷ロープを挿入した後に、上記連結部を上記筒状部に連結することができる。この構成によると、当該重錘の上記吊り荷ロープに対する着脱容易化が図りやすくなる。
【0016】
上記連結部が、上記一対の筒状部に設けられている一対の上記スリット同士の間に配置されているとよい。このように、上記連結部が、上記一対の筒状部に設けられている一対の上記スリット同士の間に配置されていることによって、上記一対の筒状部からの上記吊り荷ロープの意図しない抜け出しを容易かつ確実に抑制することができる。
【0017】
上記一対のスリットの中心線同士が一致していないとよい。このように、上記一対のスリットの中心線同士が一致していないことによって、上記一対の筒状部からの上記吊り荷ロープの意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。
【0018】
上記一対のスリットの中心線同士が非平行であるとよい。このように、上記一対のスリットの中心線同士が非平行であることによって、上記一対の筒状部からの上記吊り荷ロープの意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。
【0019】
上記一対のスリットが、上下方向に対して傾斜する傾斜部を有するとよい。このように、上記一対のスリットが、上下方向に対して傾斜する傾斜部を有することによって、上記一対の筒状部からの上記吊り荷ロープの意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。
【0020】
上記一対のスリットに設けられている一対の上記傾斜部同士の傾斜方向が逆であるとよい。このように、上記一対のスリットに設けられている一対の上記傾斜部同士の傾斜方向が逆であることによって、上記一対の筒状部からの上記吊り荷ロープの意図しない抜け出しをより容易に抑制することができる。
【0021】
上記一対の筒状部のうち、上側に位置する筒状部の内径が下側に位置する筒状部の内径よりも大きいとよい。このように、上記一対の筒状部のうち、上側に位置する筒状部の内径が下側に位置する筒状部の内径よりも大きいことによって、当該重錘と上記吊り荷ロープとの接触を抑制しつつ、上記吊り荷ロープの過巻を容易に検出することができる。
【0022】
なお、本発明において、「上下方向」とは、建設機械に配置された使用状態における鉛直方向を意味する。「棒状」とは、細長い形状を意味し、長手方向に直線状に延びる形状の他、湾曲又は折曲した形状を含む。「板状」とは、長さ及び幅に対して厚さが小さい形状を意味する。「一対のスリットの中心線同士が非平行である」とは、一対のスリットの中心線同士のなす角度が5°以上であることを意味する。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0024】
[第一実施形態]
<建設機械>
図1及び図2に示すように、建設機械1は、下部走行体2と、下部走行体2上に水平回転可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に起伏可能に取り付けられる起伏部材4とを備える。本実施形態において、建設機械1はクレーンである。起伏部材4は、上部旋回体3に起伏可能に取り付けられるブーム4aと、ブーム4aの先端部に起伏可能に連結されるジブ4bと、ジブ4bの先端部に設けられるシーブ4cとを有する。また、建設機械1は、起伏部材4から垂下される吊り荷ロープ5と、起伏部材4に固定されるリミットスイッチ6と、リミットスイッチ6に接続されて起伏部材4から垂下される紐状部7と、紐状部7によって吊り下げられる重錘10と、吊り荷ロープ5に吊り下げられるフック8とを備える。図3に示すように、紐状部7は、起伏部材4の左右両側から垂下されている。紐状部7としては、例えばワイヤロープ、チェーン、リンク等が挙げられる。建設機械1は、吊り荷ロープ5が巻き上げられると、重錘10に下方からフック8が接触し、リミットスイッチ6に加わる力が減少することで、吊り荷ロープ5の過巻を検出可能に構成されている。なお、本明細書において、「前」、「後」、「左右」とは、吊り荷ロープが垂下される起伏部材(例えばジブ又はブーム)の先端側を前側、基端側を後側とした場合の「前」、「後」及び「左右」を意味する。
【0025】
<重錘>
重錘10は、起伏部材4から垂下される吊り荷ロープ5の過巻を検出するために吊り荷ロープ5が挿通されている。図2から図5に示すように、当該重錘10は、上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部11、12(以下、上側に配置される筒状部を「第1筒状部11」といい、第1筒状部11の下側に配置される筒状部を「第2筒状部12」ともいう。)と、一対の筒状部11、12に連結される連結部13とを備える。一対の筒状部11、12同士は、複数の連結部13によって接続されている。また、当該重錘10は、第1筒状部11に連結され、紐状部7に接続される一対の取付部14を備える。当該重錘10は、一対の筒状部11、12、複数の連結部13及び一対の取付部14からなる。一対の筒状部11、12には、吊り荷ロープ5を挿抜するためのスリット11a、12aがそれぞれ形成されている(以下、第1筒状部11に形成されているスリットを「第1スリット11a」といい、第2筒状部12に形成されているスリットを「第2スリット12a」ともいう。)。
【0026】
(筒状部)
筒状部11、12は、上下方向に貫通し、吊り荷ロープ5が挿通される挿通孔を有する。一対の筒状部11、12は、それぞれ吊り荷ロープ5と間隔を空けて吊り荷ロープ5の周囲を取り囲むように設けられている。筒状部11、12の中心軸方向長さ、厚さ(径方向の肉厚)等は特に限定されるものではない。つまり、筒状部11、12は、中心軸方向に細長い形状であってもよく、中心軸方向長さが小さいリング状又は盤状等であってもよい。筒状部11、12の中心軸方向と垂直な断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば円環状、多角環状等が挙げられ、円環状が好ましい。筒状部11、12の内径及び外径は、その中心軸方向に亘って均一であることが好ましい。
【0027】
一対の筒状部11、12同士のサイズは、同じであってもよく異なっていてもよい。一対の筒状部11、12同士のサイズが異なっている場合、例えば第1筒状部11の内径を第2筒状部12の内径よりも大きくしてもよい。第2筒状部12は、吊り荷ロープ5の過巻時にフック8に接触する必要があるため、その内径は比較的小さい値に制限される。これに対し、第1筒状部11は、フック8に接触することが予定されていないため、当該重錘10の重心がずれた場合等であっても吊り荷ロープ5との意図しない接触を抑制できるように、第2筒状部12よりも内径を大きくすることが好ましい。この観点において、当該重錘10は、第1筒状部11の内径を第2筒状部12の内径よりも大きくすることで、当該重錘10と吊り荷ロープ5との接触を抑制し、吊り荷ロープ5の損傷や当該重錘10の摩耗を抑制することができると共に、吊り荷ロープ5の過巻を容易に検出することができる。
【0028】
一対の筒状部11、12は、それぞれ中心軸が上下方向に延びるように、互いに平行に配置されることが好ましい。
【0029】
スリット11a、12aは、筒状部11、12を中心軸方向に横断している。一対のスリット11a、12aの中心線同士は一致していないことが好ましい。この構成によると、一対の筒状部11、12からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。また、吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しをより確実に抑制する観点からは、図5に示すように、第1スリット11aをその形状に沿って第2筒状部12側に延長した第1仮想領域R1が第2スリット12aの第1筒状部11側の端部12bと交わっておらず、かつ第2スリット12aをその形状に沿って第1筒状部11側に延長した第2仮想領域R2が第1スリット11aの第2筒状部12側の端部11bと交わっていないことがより好ましい。
【0030】
一対のスリット11a、12aの中心線同士は非平行であることが好ましい。この構成によると、一対の筒状部11、12からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。
【0031】
図5に示すように、一対のスリット11a、12aは、上下方向に対して傾斜する傾斜部11c、12cを有する(以下、第1スリット11aに設けられている傾斜部を「第1傾斜部11c」といい、第2スリット12aに設けられている傾斜部を「第2傾斜部12c」ともいう。)。当該重錘10は、通常、吊り荷ロープ5が挿通した状態で、筒状部11、12の中心軸が上下方向と平行に配置される。そのため、一対のスリット11a、12aが、それぞれ傾斜部11c、12cを有していることで、吊り荷ロープ5と各スリット11a、12aとを非平行に保持することができる。その結果、一対の筒状部11、12からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。
【0032】
本実施形態において、スリット11a、12aは、傾斜部11c、12cからなる。スリット11a、12aが傾斜部11c、12cからなることで、スリット11a、12a全体を吊り荷ロープ5と非平行に保つことができ、一対の筒状部11、12からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを抑制しやすい。また、この構成によると、吊り荷ロープ5の挿入時に、スリット11a、12a毎に吊り荷ロープ5を挿入しやすい。
【0033】
傾斜部11c、12cは、直線状又は部分螺旋状に延びている。傾斜部11c、12cの上下方向に対する傾斜角度は、上下方向に沿って変化してもよく、一定であってもよい。傾斜部11c、12cは、筒状部11、12の中心軸が上下方向に配置され、かつ吊り荷ロープ5が上下方向に延びている状態で、吊り荷ロープ5が通過できないように傾斜している。
【0034】
一対の傾斜部11c、12c同士の傾斜方向は逆であることが好ましい。この構成によると、第1傾斜部11cに挿抜する際と第2傾斜部12cに挿抜する際とで吊り荷ロープ5の向きを変えることを要する。そのため、一対の筒状部11、12からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しをより容易に抑制することができる。
【0035】
スリット11a、12aの幅は、吊り荷ロープ5の径以上である。スリット11a、12aの幅は、上下方向に沿って均一であることが好ましい。
【0036】
スリット11a、12aの幅は、筒状部11、12の径方向(つまり筒状部11、12の厚さ方向)において均一であってもよい。一方、スリット11a、12aの幅は、筒状部11、12の径方向外側から内側に向けて漸減していてもよい。当該重錘10は、スリット11a、12aの幅が筒状部11、12の径方向外側から内側に向けて漸減することで、吊り荷ロープ5の筒状部11、12からの意図しない抜け出しを抑制しつつ、吊り荷ロープ5の筒状部11、12内への挿入の容易化を図ることができる。
【0037】
(連結部)
複数の連結部13は、一対の筒状部11、12の周方向に等角度間隔で配置されている。この構成によると、一対の筒状部11、12の姿勢を安定させやすい。より詳しくは、一対の筒状部11、12をそれぞれ中心軸が上下方向と平行になるように配置しやすい。
【0038】
連結部13の具体的な形状としては、特に限定されるものではないが、例えば棒状、板状、紐状、鎖状等が挙げられる(図1から図5では、棒状を図示している。)。これらの構成によると、一対の筒状部11、12を上下方向に間隔を空けた状態で容易に配置しやすい。なお、当該重錘10は、全ての連結部13が同一の形状である必要はなく、例えば棒状の連結部と鎖状の連結部とが併用されていてもよい。
【0039】
連結部13は、少なくとも一対の筒状部11、12のいずれかと着脱可能に設けられていてもよい。この構成によると、例えば一対のスリット11a、12aに吊り荷ロープ5を挿入した後に、連結部13を筒状部11、12に連結することができる。そのため、当該重錘10の吊り荷ロープ5に対する着脱容易化が図りやすくなる。
【0040】
(取付部)
取付部14は、例えば第1筒状部11の外周面から第1筒状部11の径方向外側に突出している。取付部14は、紐状部7と接続される係止孔14aを有する。なお、取付部14の具体的形状は、特に限定されるものではなく、例えば第1筒状部11の外周面から第1筒状部11の径方向外側に突出する突出部と、この突出部に接続されるシャックル等からなる係止部とを有し、この係止部によって紐状部7と接続可能に構成されていてもよい。一対の取付部14は、当該重錘10の重心を挟んで対向する位置に配置されていることが好ましい。
【0041】
<利点>
当該重錘10は、スリット11a、12aを通して吊り荷ロープ5を筒状部11、12の内外に挿抜することができる。そのため、当該重錘10は、吊り荷ロープ5に対する着脱が容易である。また、当該重錘10は、上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部11、12を備えているので、吊り荷ロープ5が当該重錘10から意図せず抜け出ることを抑制しやすい。
【0042】
当該重錘10は、従来の重錘が備えるような着脱部材(スリットを塞ぐための部材)を有しないので、この着脱部材の落下のおそれがない。そのため、当該重錘10は、着脱部材の落下のトラブルを回避できる。
【0043】
[第二実施形態]
<重錘>
図6及び図7の重錘20は、図4及び図5の重錘10に代えて、図1の建設機械1に用いられる。当該重錘20は、上下方向に間隔をもって配置される一対の筒状部21、22(上側に配置される「第1筒状部21」及び下側に配置される「第2筒状部22」)と、一対の筒状部21、22に連結される連結部23とを備える。一対の筒状部21、22同士は、複数の連結部23によって接続されている。また、当該重錘20は、第1筒状部21に連結され、紐状部7(図1から図3参照)に接続される一対の取付部14を備える。当該重錘20は、一対の筒状部21、22、複数の連結部23及び一対の取付部14からなる。一対の筒状部21、22には、吊り荷ロープ5を挿抜するためのスリット21a、22a(第1筒状部21に設けられる「第1スリット21a」及び第2筒状部22に設けられる「第2スリット22a」)が形成されている。取付部14の構成としては、図3及び図4の取付部14と同様とすることができるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
(筒状部)
一対の筒状部21、22は、複数の連結部23のうち、少なくとも1つの連結部と着脱可能に設けられている(以下、着脱可能な連結部を「着脱型連結部23a」ともいう。)。そのため、一対の筒状部21、22は、着脱型連結部23aと着脱可能に接続される第1接続部21d、22dを有する。第1接続部21d、22dは、例えばリング片である。第1筒状部21は、第1接続部21dを有すること以外、図3及び図4の第1筒状部11と同様の構成とすることができる。また、第2筒状部22は、第1接続部22dを有すること以外、図3及び図4の第2筒状部12と同様の構成とすることができる。なお、当該重錘20は、後述のように着脱型連結部23aによって一対の筒状部21、22からの吊り荷ロープ5の抜け出しが確実に抑制される。そのため、一対のスリット21a、22a同士は、吊り荷ロープ5を挿抜しやすいように中心線同士が一致していてもよい。
【0045】
(連結部)
複数の連結部23の具体的な構成は、着脱型連結部23aを有すること以外、図3及び図4の複数の連結部13と同様とすることができる(なお、図6及び図7では、連結部23が鎖状である構成を図示している。)。着脱型連結部23aの両端部には、第1接続部21d、22dと着脱可能に接続される第2接続部23bが設けられている。第2接続部23bは、例えば外れ止め機構を有するフックである。
【0046】
複数の連結部23は、一対のスリット21a、22aに対して吊り荷ロープ5を挿抜する際に、吊り荷ロープ5の通路を遮断するように配置されている。
【0047】
着脱型連結部23aは、第1スリット21aと第2スリット22aとの間に配置されている。より具体的には、着脱型連結部23aは、少なくとも一方の筒状部21、22から取り外されることで吊り荷ロープ5を挿抜するための最短の通路を形成する位置に配置されている。この構成によると、スリット21a、22aに対して吊り荷ロープ5を挿抜する際には、図7に示すように、着脱型連結部23aを少なくとも一方の筒状部21、22から取り外しておくことを要する。そのため、一対の筒状部21、22内に吊り荷ロープ5が挿入された状態で一対の筒状部21、22に着脱型連結部23aを取り付けておくことで、一対の筒状部21、22からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを容易かつ確実に抑制することができる。なお、当該重錘20は、2以上の着脱型連結部23aが取り外されることで吊り荷ロープ5を挿抜するための通路を形成するよう構成されていてもよい。
【0048】
<利点>
当該重錘20は、着脱型連結部23aが、一対のスリット21a、22a同士の間に配置されているので、一対の筒状部21、22からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを容易かつ確実に抑制することができる。
【0049】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0050】
例えば、図8に示すように、当該重錘30は、筒状部31、32の中心軸と垂直な方向から見た正面視において、第1スリット31aの第2筒状部32側の端部31bと第2スリット32aの第1筒状部31側の端部32bとが、上下方向に対向していないことが好ましい。端部31b、32b同士が上下方向に対向していないことで、吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しを容易に抑制することができる。また、第1スリット31aの端部31bと第2スリット32aの端部32bとは、上下方向において、少なくとも部分的に重複していないことが好ましく、完全に重複していないことがより好ましい。
【0051】
また、図8に示すように、当該重錘30は、吊り荷ロープ5が挿通されている状態で、一対の筒状部31、32のスリット31a、32a以外の部分によって吊り荷ロープ5の全周を取り囲むように構成されることも好ましい。この構成は、特に、複数の連結部33が吊り荷ロープ5を挿抜する際に吊り荷ロープ5の通路を遮断するように配置されていない上記第一実施形態の構成において採用されることが好ましい。この構成によると、一対の筒状部31、32からの吊り荷ロープ5の意図しない抜け出しをより容易に抑制することができる。
【0052】
当該重錘は、上記一対の筒状部を上下方向に間隔をもって配置できる限り、単一の連結部のみを有する構成とすることも可能である。
【0053】
上記一対のスリットの形状や上記一対のスリット同士の配置は、上記実施形態に記載されている構成に限定されるものではない。例えば上記第二実施形態に記載されているように、複数の連結部33が吊り荷ロープ5を挿抜する際に吊り荷ロープ5の通路を遮断するように配置されている場合であれば、上記一対の吊り荷ロープ同士の形状や配置は限定されない。
【0054】
当該重錘は、上記一対のスリットのうちの一方のみが上下方向に対して傾斜する傾斜部を有していてもよい。また、上記傾斜部は、途中で傾斜方向が変化していてもよく、全体的に又は部分的に湾曲していてもよい。さらに、上記スリットが傾斜部を有する場合でも、このスリットは傾斜部のみから構成されていなくてもよい。例えば上記スリットは、上下方向に延びる直線部と、この直線部に接続される傾斜部とを有していてもよい。
【0055】
上記実施形態では、建設機械がクレーンである場合について説明した。但し、当該重錘は、吊り荷ロープの過巻を検出することが必要とされる種々の装置に用いることが可能である。
【0056】
上述のように、当該重錘は、スリットを塞ぐための着脱部材を有しなくても、上記吊り荷ロープの意図しない抜け出しを抑制することができる。但し、当該重錘は、着脱部材を有しない構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の一態様に係る重錘は、建設機械の組み立て容易化に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 建設機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 起伏部材
4a ブーム
4b ジブ
4c シーブ
5 吊り荷ロープ
6 リミットスイッチ
7 紐状部
8 フック
10、20、30 重錘
11、21、31 第1筒状部
11a、21a、31a 第1スリット
11b、31b 端部
11c 第1傾斜部
12、22、32 第2筒状部
12a、22a、32a 第2スリット
12b、32b 端部
12c 第2傾斜部
13、23、33 連結部
14 取付部
14a 係止孔
21d、22d 第1接続部
23a 着脱型連結部
23b 第2接続部
R1 第1仮想領域
R2 第2仮想領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8