(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022686
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230208BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H05H1/46 L
C23C16/505
H01L21/31 C
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127696
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大輔
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB01
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD40
2G084DD55
2G084DD65
2G084DD68
2G084FF22
2G084FF32
4K030FA03
4K030FA04
4K030KA12
4K030KA30
5F004BB13
5F004BB18
5F004BD01
5F004BD04
5F004BD05
5F045AA08
5F045AA19
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EH02
5F045EH04
5F045EH08
5F045EH11
5F045EH12
(57)【要約】
【課題】直線状のアンテナ部を利用しつつ、容量結合プラズマの生成を低減する。
【解決手段】真空容器の内部に設けられた直線状のアンテナ部(3)は、高周波電流が流れるアンテナ導体(31)と、アンテナ導体(31)の少なくとも一部の周囲に設けられたファラデーシールド(33)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を内部に収容する真空容器と、
前記真空容器の内部に設けられ、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるための直線状のアンテナ部と、を備え、
該アンテナ部は、
高周波電流が流れるアンテナ導体と、
該アンテナ導体の少なくとも一部の周囲に設けられたファラデーシールドと、を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ファラデーシールドは、前記アンテナ導体と前記真空容器との距離が近い位置に設けられている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ファラデーシールドは、
前記アンテナ導体の周囲に設けられ、互いに離間している複数のリング部と、
隣り合うリング部どうしを接続する接続部と、を備える請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
或るリング部の両側からそれぞれ接続する2つの接続部は、前記或るリング部との接続位置が異なる、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記2つの接続部の接続位置は、前記リング部の中心に対し互いに対称である、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記リング部の幅は15mm以下である、請求項3から5の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記アンテナ部は、前記アンテナ導体と前記ファラデーシールドとの間に設けられた第1絶縁物をさらに備える、請求項1から6の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記アンテナ部は、前記ファラデーシールドの周囲を覆う第2絶縁物をさらに備える、請求項1から7の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて被処理物を処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナに高周波電流を流すことによりプラズマを生成させ、該プラズマを用いて基板等の被処理物に処理を施すプラズマ処理装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のスパッタリング装置は、プラズマを用いてターゲットをスパッタリングして基板に成膜するものである。上記スパッタリング装置では、真空排気され且つガスが導入される真空容器内にて、上記基板および上記ターゲットが保持され、上記基板の表面に沿って配列された複数の直線状のアンテナによって上記プラズマが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直線状アンテナを利用する場合、誘導結合プラズマ(ICP(Inductively Coupled Plasma))と、容量結合プラズマ(CCP(Capacitively Coupled Plasma))とが生成される。該容量結合プラズマが生成される場合、プラズマ電位によりイオンが加速されるので、高エネルギーの粒子が上記被処理物の表面に到達する可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、直線状のアンテナ部を利用しつつ、容量結合プラズマの生成を低減できるプラズマ処理装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置は、被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部に設けられ、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるための直線状のアンテナ部と、を備え、該アンテナ部は、高周波電流が流れるアンテナ導体と、該アンテナ導体の少なくとも一部の周囲に設けられたファラデーシールドと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、直線状のアンテナ部を利用しつつ、容量結合プラズマの生成を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】上記プラズマ処理装置におけるアンテナ部の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係るプラズマ処理装置におけるアンテナ部の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態に係るプラズマ処理装置におけるアンテナ部の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0011】
(プラズマ処理装置の構成)
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置1の構成を模式的に示す断面図である。プラズマ処理装置1は、プラズマPを用いて基板Sにプラズマ処理を施す装置である。ここで、プラズマ処理装置1による基板Sに施す処理の例としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマスパッタリング法による膜形成、エッチング、アッシングなどが挙げられる。なお、プラズマ処理装置1は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、プラズマスパッタリング法によって膜形成を行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0012】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、真空容器2、アンテナ部3、および高周波電源4を備えている。
【0013】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、電気的に接地されている。真空容器2内には、被処理物である基板Sが収容されている。真空容器2の内部は、真空排気装置6によって真空排気され、基板Sに施す処理内容に応じたガスGがガス導入口21を介して導入される。ガスGは、プラズマ処理装置1において一般的に用いられる種類のガスであればよく、具体的な成分は特に限定されない。
【0014】
真空容器2の内部には、基板Sを保持する基板ホルダ8が設けられている。基板ホルダ8には、基板Sを加熱するヒータが設けられていてもよく、バイアス電圧が印加されるようになっていてもよい。プラズマ処理装置1がプラズマスパッタリング装置である場合、真空容器2内にはターゲットがさらに配置される。
【0015】
アンテナ部3は、プラズマ生成用のアンテナ導体31と、該アンテナ導体31を覆うアンテナカバー32(第1絶縁物)とを備えている。アンテナ部3は、直線状であり、真空容器2内において基板Sに対向するように設けられている。具体的には、アンテナ部3は、真空容器2内における基板Sの上方に、基板Sの表面に沿うように(例えば、基板Sの表面と実質的に平行に)配置されている。真空容器2内に配置するアンテナ部3は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0016】
アンテナ導体31は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス、等により形成されている。アンテナ導体31は直線状である。また、アンテナ導体31は筒状であってもよい。この場合、アンテナ導体31内の中空部に冷却水等の冷媒を流すことにより、アンテナ導体31を冷却することができる。なお、アンテナ導体31は、上記の形状に限定されず、例えば、中空部を有しない中実の形状であってもよい。
【0017】
アンテナ導体31の一方の端部31aは、真空容器2の一方の側壁2aに設けられた壁面開口部22を貫通しており、アンテナ導体31の他方の端部31bは、真空容器2の側壁2aに対向する他方の側壁2bに設けられた壁面開口部22を貫通している。各壁面開口部22には絶縁物(例えば絶縁フランジ)23が設けられており、アンテナ導体31の端部31a、31bは、それぞれOリング等を用いて絶縁物23を気密に貫通しており、絶縁物23を介して真空容器2により支持されている。これにより、アンテナ導体31は、真空容器2から電気的に絶縁された状態で支持されている。なお、絶縁物23の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英等であるが、これらに限定されない。
【0018】
アンテナカバー32は、アンテナ導体31を保護する絶縁物である。本実施形態のアンテナカバー32は、アンテナ導体31を覆う直線状の管体であり、アンテナ導体31と同軸上に設けられている。アンテナカバー32の両端部は、絶縁物23またはアンテナ導体31により支持される。アンテナカバー32の材質は、例えば、石英、アルミナ、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等の絶縁物であるが、これらに限定されない。なお、アンテナカバー32は、アンテナ導体31の表面に形成され被覆された絶縁物であってもよい。
【0019】
高周波電源4は、アンテナ導体31に高周波電力を供給するためのものである。高周波電源4がアンテナ導体31に印加する高周波電圧の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0020】
高周波電源4はインピーダンス可変器41を介してアンテナ導体31の一方の端部31aに接続されている。アンテナ導体31の他方の端部31bは、電気的に接地されているが、別のインピーダンス可変器41を介して別のアンテナ導体31に接続されていてもよい。
【0021】
上記構成のプラズマ処理装置1において、高周波電源4からインピーダンス可変器41を介してアンテナ導体31に高周波電力が供給されることにより、アンテナ導体31に高周波電流が流れる。これにより、真空容器2内にプラズマPが生成される。生成されたプラズマPは、基板Sあるいはターゲットの近傍まで拡散し、当該プラズマPによって上述した処理が施される。
【0022】
(ファラデーシールドの構成)
図2は、アンテナ部3の構成を概略的に示す斜視図である。
図2の上段は、アンテナ部3を上方から見た図であり、
図2の下段は、アンテナ部3を側方から見た図である。
図3は、
図2のA-A線における矢視断面図である。なお、
図2では、インピーダンス可変器41を省略している。
【0023】
図2および
図3に示すように、本実施形態のアンテナ部3は、ファラデーシールド33(以下、「シールド33」と略称する。)33をさらに備えている。シールド33は、アンテナカバー32の外面に設けられており、電気的に接地されている。なお、シールド33は、大地に直接接地されてもよいし、高周波電源4のGND(ground)に接続されてもよい。
【0024】
シールド33は、材質が銅、ステンレス、アルミ等の導電性の金属であり、蒸着、メッキ、薄板の貼り付け等によって形成される。なお、シールド33の膜厚は、電流が流れる程度の膜厚であればよく、10nm~5mmであることが望ましい。
【0025】
シールド33は、複数のリング部331と複数の接続部332とを備えている。複数のリング部331は、アンテナ導体31の軸に対し垂直な平面上に配置され、かつ、互いに離間して配置されている。複数の接続部332は、隣り合うリング部331を接続するものである。
図2および
図3の例では、複数の接続部332は、アンテナカバー32の上部および下部に交互に配置されている。すなわち、複数のリング部331のそれぞれは、両側から2つの接続部332が接続されており、この2つの接続部332の接続位置は、リング部331の中心に対し互いに対称となっている。隣り合うリング部331と、該隣り合うリング部331を接続する接続部332とによってスリット部333が形成される。
【0026】
上記構成のアンテナ部3において、アンテナ導体31に高周波電流が流れると、アンテナ導体31の周囲に高周波電場および高周波磁場が発生する。このとき、シールド33の内部では、上記高周波電場により荷電粒子の移動が惹起され、これにより、上記高周波電場がシールド33によって低減される。その結果、容量結合プラズマの生成を低減できる。
【0027】
一方、アンテナ導体31に高周波電流が流れると、シールド33ではアンテナ導体31と平行な方向に誘導起電力が発生する。該誘導起電力により、接続部332では誘導電流が発生するが、スリット部333では誘導電流が発生しない。従って、本実施形態のシールド33は、アンテナ導体31の全周囲を覆うシールドに比べて、上記誘導電流が小さくなる。その結果、上記高周波磁場はシールド33による低減が少なくなり、誘導結合プラズマPの発生を維持できる。
【0028】
また、本実施形態では、リング部331における2つの上記接続位置が異なっている。これにより、リング部331において上記接続位置どうしの間の部分が、誘導電流の経路となる。当該経路は、アンテナ導体31の電流経路に対して直交するため、当該経路の電気抵抗が実効的に大きくなる。従って、上記誘導電流が小さくなるので、上記高周波磁場はシールド33による低減がさらに少なくなり、その結果、誘導結合プラズマPの発生を確実に維持できる。また、シールド33におけるオーミック加熱を低減することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、リング部331における2つの上記接続位置がリング部331の中心に対し互いに対称となっている。これにより、上記電気抵抗が実効的に最大となる。従って、上記誘導電流が最小となるので、上記高周波磁場はシールド33による低減が最小となり、その結果、誘導結合プラズマPの発生をさらに確実に維持できる。また、シールド33におけるオーミック加熱をさらに低減することができる。
【0030】
(付記事項)
なお、本実施形態では、複数の接続部332は、アンテナカバー32の上部および下部に配置されているが、アンテナカバー32の両側部に配置されてもよい。また、リング部331における2つの上記接続位置は、異なっていればよく、リング部331の中心に対し非対称であってもよい。
【0031】
また、シールド33は、アンテナカバー32の内部に配置されてもよい。すなわち、シールド33は、アンテナ導体31の周囲であって、アンテナ導体31と導通しない任意の位置に配置することができる。
【0032】
〔実施形態2〕
本発明の別の実施形態について、
図4を参照して説明する。本実施形態のプラズマ処理装置1は、
図1~
図3に示すプラズマ処理装置1に比べて、アンテナ部3の構成が異なり、その他の構成は同様である。
【0033】
図4は、アンテナ部3の構成を概略的に示す斜視図であり、アンテナ部3を上方から見た図である。本実施形態のアンテナ部3は、
図2および
図3に示すアンテナ部3に比べて、シールドカバー34(第2絶縁物)をさらに備える点が異なり、その他の構成は同様である。
【0034】
シールドカバー34は、シールド33を保護する絶縁物である。本実施形態のシールドカバー34は、シールド33を覆う直線状の管体であり、アンテナ導体31と同軸上に設けられている。シールドカバー34の両端部は、絶縁物23またはアンテナカバー32により支持される。シールドカバー34の材質は、アンテナカバー32として使用可能な材質と同様である。なお、シールドカバー34は、アンテナカバー32およびシールド33の表面に形成され被覆された絶縁物であってもよい。
【0035】
上記の構成によると、シールドカバー34によってシールド33が覆われている。これにより、シールド33のスリット部333に金属粒子が付着し金属膜が形成されて、隣り合うリング部331が接続部332以外で導通することを防止することができる。
【0036】
(付記事項)
なお、本実施形態では、シールド33は、アンテナカバー32の外面に形成されているが、シールドカバー34の内面に形成されてもよいし、シールドカバー34の内部に形成されてもよい。
【0037】
〔実施形態3〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図5を参照して説明する。本実施形態のプラズマ処理装置1は、
図1~
図4に示すプラズマ処理装置1に比べて、アンテナ部3の構成が異なり、その他の構成は同様である。
【0038】
図5は、アンテナ部3の構成を概略的に示す斜視図であり、アンテナ部3を上方から見た図である。本実施形態のアンテナ部3は、
図4に示すアンテナ部3に比べて、アンテナ部3の中央部にてシールド33およびシールドカバー34が省略されている点が異なり、その他の構成は同様である。すなわち、本実施形態では、シールド33およびシールドカバー34は、アンテナ部3の両端部に設けられている。このように、シールド33およびシールドカバー34は、アンテナ導体31の一部の周囲い設けられてもよい。
【0039】
ところで、真空容器2は接地されており、アンテナ導体31には高周波電圧が印加される。このことから、アンテナ導体31と真空容器2との距離が近い領域が、その他の領域に比べて電場の強度が大きくなる傾向にある。
【0040】
これに対し、本実施形態によれば、アンテナ導体31と真空容器2との距離が近いアンテナ部3の両端部にシールド33が設けられている。これにより、アンテナ導体31と真空容器2との距離が近い領域における電場の強度を低減することができる。その結果、容量結合プラズマの生成を効果的に低減することができ、誘導結合プラズマPの分布を改善することができる。
【0041】
〔実施例〕
図1~
図3に示すプラズマ処理装置1について、シールド33の寸法を種々に変更した実施例について説明する。ここで、シールド33のスリットピッチは、
図2にてSPで表される長さであり、シールド33のスリット幅は、
図2にてSWで表される長さである。また、本実施例のシールド33は、材質がSUS316であり、厚さが10μmであり、スリット幅SWが0.5mm未満であった。
【0042】
その結果、リング部331の幅(SP-SW)が15mm以下である場合、磁場強度の低減量が少なく、望ましいことが判明した。さらに、リング部331の幅が5mm以下である場合、磁場強度の低減量がさらに少なく、さらに望ましいことが判明した。なお、リング部331の幅の下限値は、製造能力、許容される電気抵抗値など、種々の条件によって決定される。
【0043】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るプラズマ処理装置は、被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部に設けられ、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるための直線状のアンテナ部と、を備え、該アンテナ部は、高周波電流が流れるアンテナ導体と、該アンテナ導体の少なくとも一部の周囲に設けられたファラデーシールドと、を備える構成である。
【0044】
上記の構成によると、アンテナ導体にて発生した電場は、ファラデーシールドによって遮蔽されるので、外部への伝播を低減できる。これにより、容量結合プラズマの生成を低減することができる。
【0045】
本発明の態様2に係るプラズマ処理装置は、上記態様1において、前記ファラデーシールドは、前記アンテナ導体と前記真空容器との距離が近い位置に設けられていてもよい。この場合、前記アンテナ導体と前記真空容器との距離が近い領域における電場の強度を低減することができる。その結果、容量結合プラズマの発生を効果的に低減することができる。
【0046】
本発明の態様3に係るプラズマ処理装置は、上記態様1・2において、前記ファラデーシールドは、前記アンテナ導体の周囲に設けられ、互いに離間している複数のリング部と、隣り合うリング部どうしを接続する接続部と、を備えてもよい。
【0047】
この場合、隣り合う2つリング部と、該2つのリング部を接続する接続部とによりスリット部が形成される。このとき、前記アンテナ導体に高周波電流が流れると、前記接続部では誘導電流が発生するが、前記スリット部では誘導電流が発生しない。従って、前記ファラデーシールドは、アンテナ導体の全周囲を覆うシールドに比べて、前記誘導電流が小さくなり、その結果、前記アンテナ導体により発生する高周波磁場は前記ファラデーシールドによる低減が少なくなり、誘導結合プラズマの発生を維持できる。
【0048】
本発明の態様4に係るプラズマ処理装置は、上記態様3において、或るリング部の両側からそれぞれ接続する2つの接続部は、前記或るリング部との接続位置が異なることが好ましい。この場合、前記或るリング部において前記接続位置どうしの間の部分が、前記誘導電流の経路となる。当該経路は、前記アンテナ導体の電流経路に対して直交するため、当該経路の電気抵抗が実効的に大きくなる。従って、前記アンテナ導体における高周波電流によって発生する誘導電流が小さくなり、その結果、前記高周波電流によって発生する高周波磁場は、前記ファラデーシールドによる低減がさらに少なくなる。
【0049】
本発明の態様5に係るプラズマ処理装置は、上記態様4において、前記2つの接続部の接続位置は、前記リング部の中心に対し互いに対称であることがさらに好ましい。この場合、前記電気抵抗が実効的に最大となる。従って、前記アンテナ導体における高周波電流によって発生する誘導電流が最小となり、その結果、前記高周波電流によって発生する高周波磁場は、前記ファラデーシールドによる低減が最小となる。
【0050】
本発明の態様6に係るプラズマ処理装置は、上記態様3~5において、前記リング部の幅は15mm以下であることが好ましい。この場合、高周波磁場の低下を抑えることができる。なお、前記リング部の幅の下限値は、製造能力、許容される電気抵抗値など、種々の条件によって決定される。
【0051】
本発明の態様7に係るプラズマ処理装置は、上記態様1~6において、前記アンテナ部は、前記アンテナ導体と前記ファラデーシールドとの間に設けられた第1絶縁物をさらに備えることが好ましい。この場合、前記アンテナ導体と前記ファラデーシールドとの導通を防止できる。
【0052】
本発明の態様8に係るプラズマ処理装置は、上記態様1~7において、前記アンテナ部は、前記ファラデーシールドの周囲を覆う第2絶縁物をさらに備えてもよい。この場合、前記ファラデーシールドに金属粒子が付着し金属膜が形成されて、前記ファラデーシールドを流れる電流の経路が短くなることを防止できる。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 プラズマ処理装置
2 真空容器
2a、2b 側壁
3 アンテナ部
4 高周波電源
6 真空排気装置
8 基板ホルダ
21 ガス導入口
22 壁面開口部
23 絶縁物
31 アンテナ導体
31a、31b 端部
32 アンテナカバー(第1絶縁物)
33 ファラデーシールド
34 シールドカバー(第2絶縁物)
41 インピーダンス可変器
331 リング部
332 接続部
333 スリット部