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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022688
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】ガス遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/985 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
H01H33/985
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127698
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】須貝 元樹
【テーマコード(参考)】
5G001
【Fターム(参考)】
5G001AA13
5G001BB03
5G001CC04
5G001DD07
5G001DD08
5G001EE08
5G001GG17
(57)【要約】
【課題】可動接触子の摺動摩擦力の増大を防止・抑制し得るガス遮断器を提供する。
【解決手段】ガス遮断器(1)は、固定接触子(13)と、可動接触子(17)と、熱パッファ室となる昇圧室(R)と、内部に可動接触子(17)が挿通され、可動接触子(17)の直線運動をガイドする導電性の円筒状ガイド(18)と、を備え、円筒状ガイド(18)は、固定接触子(13)側の端部側に位置する小径部(18a)と、小径部(18a)よりも内径が大きい大径部(18b)とを有し、可動接触子(17)は、小径部(18a)にてガイドされる細軸部(17c)と、細軸部(17c)よりも外径が大きく大径部(18b)にてガイドされる太軸部(17d)と、を有し、大径部(18b)の内周面と太軸部(17d)の外周面とが摺動接触して可動接触子(17)と円筒状ガイド(18)とが導通する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触子と、
直線運動することで前記固定接触子と離接する棒状の可動接触子と、
前記固定接触子が内部に位置し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じるアークによって膨張したガスを蓄圧する熱パッファ室と、
筒状をなし、内部に前記可動接触子が挿通され、前記可動接触子の直線運動をガイドする導電性のガイド筒と、を備え、
前記ガイド筒は、前記固定接触子側の端部側に位置する第1内径部と、該第1内径部よりも内径が大きい第2内径部とを有し、
前記可動接触子は、前記第1内径部にてガイドされる第1軸部と、該第1軸部よりも外径が大きく前記第2内径部にてガイドされる第2軸部とを有し、
前記第2内径部の内周面と前記第2軸部の外周面とが摺動接触して前記可動接触子と前記ガイド筒とが導通することを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記第2軸部、又は前記第2内径部における前記第1内径部との境界近傍に、前記第2内径部の内周面と前記第2軸部とで区画される空間への気体の流通を可能にする通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記第1内径部と前記第1軸部との隙間は、前記第2内径部と前記第2軸部との隙間よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記第1内径部の内周面にピストンリングが設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記第2内径部の内周面又は前記第2軸部の外周面に溝が形成され、該溝に摺動接触子が取り付けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のガス遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統における故障電流を遮断するために用いられ、接触子間に発生したアークにガスを吹き付けて遮断する熱パッファ消弧方式のガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前述したガス遮断器として、例えば、特許文献1に開示されたガス遮断器が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたガス遮断器においては、上部電極に設けられた昇圧室内に固定接触子が配置されている。可動接触子は、昇圧室下部に位置するノズルを通して昇圧室内に入り込み、固定接触子と接触する。可動接触子は、下部電極の中央に設けられた開口に挿通されており、該開口の内周に摺動接触子が設けられている。可動接触子は、摺動接触子と摺動接触するように配置されている。
【0004】
電流(故障電流)遮断時、可動接触子が下方へ移動する。移動に伴い、可動接触子の先端がノズルから外れると、昇圧室内に蓄圧されていた高温のガスがノズルから昇圧室外部へ放出される。放出されるガスはアークに対して吹き付けられ、熱パッファ効果によるアーク消弧作用が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-25819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示されたガス遮断器では、ノズルから放出されたガスは可動接触子に向かって吹き付けられるため、可動接触子の表面に、アークで発生した分解生成物やアーク熱により焼き付いたグリスが付着する。これら付着物が可動接触子に付着すると、可動接触子と摺動接触子との間の摺動摩擦力が増大する恐れがある。
【0007】
本発明の一態様は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、可動接触子の摺動摩擦力の増大を防止・抑制し得るガス遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るガス遮断器は、固定接触子と、直線運動することで前記固定接触子と離接する棒状の可動接触子と、前記固定接触子が内部に位置し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じるアークによって膨張したガスを蓄圧する熱パッファ室と、筒状をなし、内部に前記可動接触子が挿通され、前記可動接触子の直線運動をガイドする導電性のガイド筒と、を備え、前記ガイド筒は、前記固定接触子側の端部側に位置する第1内径部と、該第1内径部よりも内径が大きい第2内径部とを有し、前記可動接触子は、前記第1内径部にてガイドされる第1軸部と、該第1軸部よりも外径が大きく前記第2内径部にてガイドされる第2軸部とを有し、前記第2内径部の内周面と前記第2軸部の外周面とが摺動接触して前記可動接触子と前記ガイド筒とが導通することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、熱パッファ効果による消弧作用をもたらす高温のガス流に直接曝露されることのない第2内径部は、アークによる分解生成物等の付着物が付着し難い。したがって、この部分において、可動接触子を摺動させて可動接触子とガイド筒とを導通させることで、可動接触子の摺動摩擦力の増大を防止・抑制することができる。また、ガイド筒を設けることで、可動接触子の直線運動が安定させることができる。
【0010】
本発明の一態様に係るガス遮断器は、さらに、前記第2軸部、又は前記第2内径部における前記第1内径部との境界近傍に、前記第2内径部の内周面と前記第2軸部とで区画される空間への気体の流通を可能にする通気孔が設けられている構成としてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ガイド筒の内周面と可動接触子の第2軸部とで囲まれた空間への気体の流通を可能とし、可動接触子の動作時の負荷を回避できる。
【0012】
本発明の一態様に係るガス遮断器は、さらに、前記第1内径部と前記第1軸部との隙間は、前記第2内径部と前記第2軸部との隙間よりも大きい構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、可動接触子の第1軸部に付着する上述した分解生成物等にて、可動接触子の摺動摩擦力が増大することを防止・抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様に係るガス遮断器は、さらに、前記第1内径部の内周面にピストンリングが設けられている構成としてもよい。
【0015】
上記構成よれば、第1内径部と第1軸部との摺動性が良好になるだけでなく、分解生成物等を含んだ高温のガスがガイド筒の内部へ入り込むことを効果的に防ぐことができる。これにより、可動接触子の摺動摩擦力の増大をより一層効果的に防ぐことができる。
【0016】
本発明の一態様に係るガス遮断器は、さらに、前記第2内径部の内周面又は前記第2軸部の外周面に溝が形成され、該溝に摺動接触子が取り付けられている構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、第2内径部の内周面と第2軸部の外周面との摺動接触を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、可動接触子の摺動摩擦力の増大を防止・抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態のガス遮断器の構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。
図2図1に示す領域B1の拡大図である。
図3】第1実施形態におけるガス遮断器の構成を示す断面図であり、電流遮断中の状態を示す。
図4】第1実施形態のガス遮断器の構成を示す断面図であり、開極状態を示す。
図5】第2実施形態のガス遮断器の構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。
図6】第2実施形態の変形例のガス遮断器の構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。
図7】第1実施形態の変形例のガス遮断器の構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態のガス遮断器は、例えば、電力系統における故障電流を遮断するために用いられ、接触子間に発生したアークにガスを吹き付けて遮断する熱パッファ消弧方式のガス遮断器である。ガス遮断機は、絶縁開閉装置(GIS)に使用するのに適しており、消弧性ガスが封入された容器内に収納される。
【0021】
(1.ガス遮断器の構成)
本実施形態のガス遮断器1の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、本実施形態におけるガス遮断器1の構成を示す断面図である。説明の便宜上、ガス遮断器1は上下方向に配置され、後述する可動接触子17は上下方向に移動するものとして説明する。
【0022】
図1に示すように、ガス遮断器1は、消弧性ガス(以下、単にガスと称する)Gが封入されている図示しないケース内に設置されており、ガス遮断器1の周囲にはガスGが存在している。ガスGは、例えば、SF、Dry Air、N、CO、O、CF、フルオロニトリル、フルオロケトンおよびそれらの混合ガスである。
【0023】
ガス遮断器1は、上部導体11、下部導体12、固定接触子13、駆動コイル14、アークランナ15、絶縁ノズル16、可動接触子17、円筒状ガイド(ガイド筒)18、摺動接触子19、ピストンリング20、および操作ロッド21等を備えている。
【0024】
上部導体11および下部導体12は、上下方向に離間して配置されている。上部導体11および下部導体12はそれぞれ、図示しない支持部材にて支持されており絶縁されている。
【0025】
絶縁ノズル16は、上部導体11の下面側に取り付けられている。絶縁ノズル16は、下面が内側に向かってすり鉢状に窪んだカップ状の部材である。すり鉢状の底部となる絶縁ノズル16の下面中央は開口されて貫通口16aとなっている。上部導体11と絶縁ノズル16とで囲まれた空間が昇圧室Rであり、熱パッファ室である。昇圧室Rには、ガスGが充填されており、昇圧室Rは、固定接触子13と可動接触子17との間に生じるアークA(図3参照)によって膨張したガスを蓄圧する。
【0026】
固定接触子13、駆動コイル14、およびアークランナ15は、昇圧室R内部に配置されている。固定接触子13は、上部導体11の下面に設けられた筒状の接触子である。固定接触子13は、上部導体11と一体、あるいは上部導体11に支持されると共に上部導体11と電気的に接続されている。
【0027】
可動接触子17は、固定接触子13の下方に配置されている棒状の接触子であり、固定接触子13に対して離接可能に設けられている。可動接触子17は、円筒状ガイド18の内部に挿通(収納)されている。可動接触子17は、円筒状ガイド18に沿ってその軸方向である上下方向に直線運動することで、固定接触子13に対して離接する。
【0028】
可動接触子17は、上方へ駆動されると、先端17a側が昇圧室R内部に入り込み、固定接触子13内部に挿入されて固定接触子13と接触する。また、可動接触子17は、下方へ駆動されると、先端17a側が固定接触子13の内部から引き出され、固定接触子13と非接触となる。可動接触子17における先端17aとは反対の後端17b側には操作ロッド21が取り付けられている。
【0029】
円筒状ガイド18は、筒状をなし、内部に可動接触子17が挿通され、可動接触子17の直線運動をガイドする。円筒状ガイド18は、導電性を有し、下部導体12に支持されると共に下部導体12と電気的に接続されている。可動接触子17は、後端17b側において、円筒状ガイド18の内周面と摺動接触する。本実施形態では、摺動接触子19が設けられており、該摺動接触子19を介して円筒状ガイド18の内周面と可動接触子17とが摺動接触する。可動接触子17は、導電性の円筒状ガイド18および摺動接触子19を介して、下部導体12と電気的に接続されている。
【0030】
(2.可動接触子17および円筒状ガイド18)
ここで、図2を用いて、可動接触子17および円筒状ガイド18について、より詳細に説明する。図2は、図1に示す領域B1の拡大図である。図2に示すように、円筒状ガイド18は、内径が軸方向において異なっており、小径部(第1内径部)18aと、該小径部18aよりも内径が大きい大径部(第2内径部)18bと、を有している。小径部18aは、固定接触子13側の端部側となる上部に位置している。
【0031】
このような形状の円筒状ガイド18に対応して、可動接触子17においても、外径が軸方向において異なっており、細軸部(第1軸部)17cと、該細軸部17cよりも外径が大きい(第2軸部)17dと、を有している。
【0032】
円筒状ガイド18の小径部18aと可動接触子17の細軸部17cとが対応しており、可動接触子17の移動時、細軸部17cが小径部18aにガイドされる。同様に、円筒状ガイド18の大径部18bと可動接触子17の太軸部17dとが対応しており、可動接触子17の移動時、太軸部17dが大径部18bにガイドされる。太軸部17dの外周面には、環状の溝17eが形成されており、該溝17eに摺動接触子19が取り付けられている。
【0033】
太軸部17dと大径部18bとの隙間(すきま)は、小径部18aと細軸部17cとの隙間よりも小さく設定されている。換言すると、小径部18aと細軸部17cの隙間は、太軸部17dと大径部18bとの隙間よりも大きく設定されている。
【0034】
つまり、太軸部17dと大径部18bとの嵌め合いは、確りとした嵌め合いとなっている。これは、太軸部17dの外周面に位置する摺動接触子19と大径部18bの内周面とを確実に摺動させるためである。これに対し、細軸部17cと小径部18aとの嵌め合いは、太軸部17dと大径部18bとの嵌め合いに比べて緩い嵌め合い(隙間の大きい嵌め合い)となっている。摺動接点としての機能を有していないため、細軸部17cと小径部18aとの嵌め合いは、細軸部17cの移動をガイドする程度の嵌め合いであればよい。
【0035】
本実施形態では、小径部18aの内周面にピストンリング20が取り付けられている。ピストンリング20は、小径部18aの内周面に形成された環状の溝17fに嵌め込まれている。本実施形態では、上下方向の2箇所にピストンリング20が嵌め込まれている。また、本実施形態では、太軸部17dに、軸方向に貫通する通気孔25が形成されている。通気孔25は、大径部18bの内周面と太軸部17dとで区画される空間Sへの気体、つまりガスGの流通を可能にする。
【0036】
(3.ガス遮断器の動作)
本実施形態のガス遮断器1の動作について、図1図2、および図3図4を用いて説明する。図3図4は、図1と同様、本実施形態におけるガス遮断器1の構成を示す断面図である。但し、図1は閉極状態を示し、図3は電流遮断中の状態、図4は開極状態を示す。閉極状態とは、可動接触子17が上方の閉極位置にあり、上部導体11と下部導体12とが導通している状態である。開極状態とは、可動接触子17が下方の開極位置にあり、上部導体11と下部導体12とが導通していない状態である。電流遮断中の状態とは、可動接触子17が閉極位置と開極位置の途中にあり、アークAが発生している状態である。
【0037】
図1に示すように、可動接触子17を上方に駆動すると、可動接触子17の先端17a側が、絶縁ノズル16の貫通口16aを通って昇圧室Rの内部に入り込み、固定接触子13の内部に挿入されて固定接触子13と接触する。これにより、閉極状態となり、上部導体11と下部導体12とが、固定接触子13、可動接触子17、摺動接触子19、および円筒状ガイド18を介して導通する。
【0038】
図1の閉極状態から、可動接触子17を急速に下方に移動させて可動接触子17を固定接触子13から引き離すと、図3に示すように、固定接触子13と可動接触子17との間にアークAが発生する。
【0039】
アークAは、固定接触子13から駆動コイル14に設けられたアークランナ15に移る。すると、駆動コイル14に電流が流れ、アークAが磁気駆動される。これにより、アークAは、ガス雰囲気中を高速回転運動し、相対的にガスGがアークAに吹き付けられることとなり、磁気駆動効果によるアークAの消弧作用が発生する。
【0040】
また、アークAは、昇圧室R内を高速回転運動することで、周囲のガスGを熱により膨張させる。昇圧室Rは、絶縁ノズル16の貫通口16aが可動接触子17により封鎖されているので、膨張したガスGは昇圧室R内に蓄圧される。蓄圧された高温のガスGは、可動接触子17の先端17a側の端部が絶縁ノズル16の貫通口16aから外れると共に、高温ガス流G1となって、昇圧室Rから貫通口16aを通って外部へ噴出される。高温ガス流G1はアークAに対して吹き付けられるので、熱パッファ効果によるアークの消弧作用が発生する。
【0041】
図4に示すように、可動接触子17が下方に駆動された閉極状態では、可動接触子17が固定接触子13から十分に離れ、上部導体11と下部導体12とが非導通となる。
【0042】
また、図1に示す閉極状態から可動接触子17を下方に移動させる動作において、円筒状ガイド18の内周面と可動接触子17の太軸部17dとで囲まれた空間Sは、ピストン構造になるため、負荷がかかる。上記構成においては、太軸部17dに通気孔25を設けているので、通気孔25を介して空間S内に外部からガスGが引き込まれ、ピストン構造による負荷を回避できる。また、可動接触子17を上方に移動させる動作においては、通気孔25を介して空間S内のガスGを外部に放出して、上記負荷を回避できる。
【0043】
(4.効果)
熱パッファ効果による消弧作用をもたらす高温ガス流G1には、アークで発生した分解生成物が含まれている。図3に示したように、このような高温ガス流G1は可動接触子17に向かって吹き付けられるため、可動接触子17における円筒状ガイド18から突出している部分の表面には分解生成物が付着する。また、この部分には、アーク熱により焼き付いたグリスも付着する。さらに、分解生成物を含んだ高温のガスGが円筒状ガイド18の内部に浸入すると、円筒状ガイド18の内周面にも分解生成物が付着する。
【0044】
そして、このような付着物(分解生成物や焼き付いたグリス)が、摺動接触子19が摺動する円筒状ガイド18の内周面に付着すると、摺動接触子19と可動接触子17との摺動摩擦力、つまり、可動接触子17と円筒状ガイド18との間の摺動摩擦力が増大する。摺動摩擦力が増大すると、可動接触子17が適切な速度で動作できなくなり、大電流遮断前後で動作特性が変化してしまう。
【0045】
1)そこで、ガス遮断器1においては、上述したように、円筒状ガイド18において固定接触子13側の端部側を小径部18a、その反対側を大径部18bとし、可動接触子17において小径部18aにてガイドされる細軸部17cと、大径部18bにてガイドされる太軸部17dとし、太軸部17dに摺動接触子19を配置している。このような構成とすることで、以下の作用効果を奏する。
【0046】
・大径部18bの内周面は、高温ガス流G1に直接曝露されることのない部分である。そのため、大径部18bの内周面に上記付着物は付着し難い。したがって、この部分に摺動接触子19を配置することで、可動接触子17と円筒状ガイド18との間の摺動摩擦力の増大をより効果的に防ぐことができる。
【0047】
・大径部18bの内周面の面積は小径部18aの内周面に面積に比べて広い。ここで言う「内周面の面積」とは内周の軸方向断面積ではなく、内側の壁面の面積である。そのため、小径部18aと細軸部17cとの隙間から大径部18b内に高温のガスGが侵入したとしても、大径部18bの内周面の面積が広いため、大径部18bの内周面に付着する範囲は全内周面のわずかな部分に留まる。したがって、問題にならない。
【0048】
・可動接触子17の細軸部17c、特に、円筒状ガイド18から突き出る部分の表面には、付着物が付着する。しかしながら、小径部18aと細軸部17cとの嵌め合いは、細軸部17cの上下方向の移動(軸方向の移動)をガイドする程度の嵌め合いであればよい。したがって、小径部18aと細軸部17cとの隙間は、摺動接触子19が位置する大径部18bと太軸部17dとの隙間に比べて大きくできる。そのため、細軸部17cに付着した付着物にて、摺動摩擦力の増大が問題になることはない。
【0049】
2)また、ガス遮断器1においては、小径部18aの内周面にピストンリング20を取り付けている。ピストンリング20を設けることで、小径部18aと細軸部17cとの摺動性が良好になるだけでなく、分解生成物を含んだ高温のガスGが円筒状ガイド18の内部へ入り込むことを効果的に防ぐことができる。これにより、可動接触子17と円筒状ガイド18との間の摺動摩擦力の増大をより一層効果的に防ぐことができる。
【0050】
3)円筒状ガイド18の内周面と、可動接触子17の太軸部17dとで囲まれた空間Sは、ピストン構造になるため可動接触子17の動作時に負荷となりうる。しかしながら、が、ガス遮断器1においては、太軸部17dに通気孔25を設けているので、このような負荷を回避できる。
【0051】
4)円筒状ガイド18が設けられているので、円筒状ガイド18が設けられていない構成に比べて可動接触子17の直線運動が安定する。これにより、可動接触子17を、ずれることなく摺動軸線上を摺動させることができる。
【0052】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施の形態について図5図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施形態において説明すること以外の構成は、前記実施形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
前記実施形態1のガス遮断器1において、摺動接触子19は可動接触子17の太軸部17dの外周面に取り付けられていた。これに対し、本実施形態のガス遮断器1Aにおいて摺動接触子19は、円筒状ガイド18の大径部18bの内周面に取り付けられている。この点が、ガス遮断器1と異なる。
【0054】
図5は、本実施形態におけるガス遮断器1Aの構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。図5に示すように、ガス遮断器1Aにおいては、円筒状ガイド18の大径部18bの内周面に、環状の溝18cが形成されており、該溝18cに摺動接触子19が取り付けられている。溝18cは、軸方向に沿って複数形成されており、図5の例では、溝18cは4つ形成され、合計4個の摺動接触子19が配置されている。可動接触子17の上下方向の移動に際し、太軸部17dは軸方向に配置された複数の摺動接触子19の何れかと常に接触する。
【0055】
また、図6は、本実施形態の変形例のガス遮断器1Bの構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。図6に示すように、ガス遮断器1Bにおいては、可動接触子17の太軸部17dが軸方向に長い太軸部17d’となっている。摺動接触子19は、円筒状ガイド18の大径部18bの内周面における、太軸部17d’が最も下方位置(開極状態の位置)においても、最も上方位置(閉極状態の位置)においても太軸部17d’と接触する位置に設けられている。可動接触子17の上下方向の移動に際し、太軸部17d’は摺動接触子19と常に接触する。
【0056】
<変形例>
上述したガス遮断器1、1A、1Bにおいては、通気孔25を太軸部17d、17d’に設けていたが、図7に示すように、円筒状ガイド18の大径部18bにおける小径部18aとの境界近傍に設けてもよい。大径部18bに設ける場合、閉極状態で太軸部17dの上面よりも上に位置する部分に設ければよい。図7は、第1実施形態の変形例のガス遮断器1Cの構成を示す断面図であり、閉極状態を示す。
【0057】
また、ガス遮断器1、1A、1Bにおいては、太軸部17dの外周面または大径部18bの内周面に、溝17e,18cを形成して摺動接触子19を取り付けている。しかしながら、太軸部17dの外周面または大径部18bの内周面に、摺動接触子19として機能する形状を加工してもよい。また、前述したように、別部材からなる摺動接触子19を用いることなく、太軸部17dの外周面と大径部18bの内周面とが摺動し合う構成であってもよい。
【0058】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B ガス遮断器
11 上部導体
12 下部導体
13 固定接触子
17 可動接触子
17c 細軸部(第1軸部)
17d、17d’ 太軸部(第2軸部)
18 円筒状ガイド(ガイド筒)
18a 小径部(第1内径部)
18b 大径部(第2内径部)
17e、18c 該溝
19 摺動接触子
20 ピストンリング
25 通気孔
A アーク
G 消弧性ガス
G1 高温ガス流
R 昇圧室(熱パッファ室)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7