(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022748
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】落下予防設備及び支柱
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20230208BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B66C23/88 Z
E04G21/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127785
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】坂井 桂次
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205AC01
3F205AC05
3F205CA01
3F205KA10
(57)【要約】
【課題】親綱に加わる急激な張力を緩和し、支柱が破損等することを抑制できる落下予防設備、及び親綱に加わる張力を緩和することができる支柱を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、安全帯を介して作業者と接続される親綱と、この親綱を張るための支柱とを備え、上記作業者の落下を予防するためにブーム又はジブに仮設される落下予防設備であって、上記親綱に張力が加わると上記支柱の少なくとも一部が弾性変形する。本発明の他の一態様は、作業者の落下を予防するために安全帯を介して作業者と接続される親綱を張設する落下予防設備用の支柱であって、上記親綱に張力が加わると少なくとも一部が弾性変形する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全帯を介して作業者と接続される親綱と、この親綱を張るための支柱とを備え、上記作業者の落下を予防するためにブーム又はジブに仮設される落下予防設備であって、
上記親綱に張力が加わると上記支柱の少なくとも一部が弾性変形する落下予防設備。
【請求項2】
上記支柱が、弾性変形する量を規制するストッパを有する請求項1に記載の落下予防設備。
【請求項3】
上記支柱が、
上記ブーム又はジブに立設される下側部材と、
この下側部材の上部に配され、上記親綱を支持する上側部材と、
上記下側部材及び上記上側部材を連結する弾性変形可能な連結部材と
を有する請求項1又は請求項2に記載の落下予防設備。
【請求項4】
上記下側部材よりも上方に突出している下側突出部分を有する下側ストッパと、
上記上側部材よりも下方に突出し、上記下側突出部分と対向している上側突出部分を有する上側ストッパと
を含み、
上記連結部材の未弾性変形状態において上記下側突出部分及び上記上側突出部分が離間し、
上記連結部材の弾性変形状態において、上記下側突出部分及び上記上側突出部分が当接することで上記支柱の弾性変形する量を規制する請求項3に記載の落下予防設備。
【請求項5】
作業者の落下を予防するために安全帯を介して作業者と接続される親綱を張設する落下予防設備用の支柱であって、
上記親綱に張力が加わると少なくとも一部が弾性変形する支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は落下予防設備及び支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械として、旋回体にブーム、ジブ等を備えるクレーン等が知られている。大型のラッフィングジブクレーン、タワークレーン等では、ブーム、ジブは複数の分割体で構成されていることがある。上記複数の分割体は、建設が行われる現場でブーム、ジブに組み立てられ、建設が終了すると上記現場で分解される。
【0003】
ブーム、ジブの組立作業及び分解作業では、作業者がブーム、ジブ又はこれらの分割体(以下「ブーム等」という)の上で作業をすることがある。作業者がブーム等から落下することを予防するための落下予防設備が作業時に上記ブーム等に仮設されることがある。
【0004】
このような落下予防設備として、ブームの上面に平行に設けられる索体(親綱)と、この索体が架け渡される複数の棒体(支柱)とを備える安全柵が公知である(特開2017-043458号公報)。上記複数の棒体は、倒立可能にブームに配設されているため、容易に上記安全柵を組み立てることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、上記索体は、手摺りとして作業者の転落を予防すると共に、親綱として安全帯と呼ばれるロープ等で上記作業者と連結されているため、仮に作業者が上記ブームから落下した場合に、地面、床等に衝突することが抑制される。つまり、落下した作業者は、上記安全帯を介して上記索体と上記棒体とで支持されることにより、上記地面等に衝突することから保護されることが期待されている。
【0007】
作業者の落下において、上記索体、及びこれから伝搬される上記棒体には、上記作業者の落下で生じる急激な衝撃を受け、この衝撃が上記棒体を破損するおそれがある。つまり、上記棒体の上端に上記索体が接続されているため、上記棒体の高さ(長さ)のモーメント力が上記棒体の基端部(上記ブームへの装着部)に作用し、より大きな衝撃となって上記索体に瞬間的な張力が働き、上記棒体に剛性力を超えた力が作用して上記棒体を破損等するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の発明者は、作業者の落下等による急激な衝撃を緩和することを鋭意検討し、本発明を完成した。本発明は、親綱に加わる急激な張力を緩和し、支柱が破損等することを抑制できる落下予防設備、及び親綱に加わる張力を緩和することができる支柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、安全帯を介して作業者と接続される親綱と、この親綱を張るための支柱とを備え、上記作業者の落下を予防するためにブーム又はジブに仮設される落下予防設備であって、上記親綱に張力が加わると上記支柱の少なくとも一部が弾性変形する。
【0010】
当該落下予防設備は、親綱を支持する支柱の一部が弾性変形することで、仮に上記親綱に急激に張力が発生したとしてもその急激な張力を緩和し、上記支柱等が破損等することを抑制できる。
【0011】
本発明の他の一態様は、作業者の落下を予防するために安全帯を介して作業者と接続される親綱を張設する落下予防設備用の支柱であって、上記親綱に張力が加わると少なくとも一部が弾性変形する。
【0012】
当該支柱は、一部が弾性変形するため、上記親綱に加わる急激な張力を緩和でき、破損等することを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の落下予防設備は、親綱に加わる急激な張力を緩和し、支柱が破損等することを抑制できる。また、本発明の支柱は、親綱に加わる急激な張力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の落下予防設備を用いて組み立てられるブームを有するラッフィングジブクレーンを示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の落下予防設備が仮設された中間ブームを示す模式的側面図である。
【
図3】
図3は、
図2の落下予防設備の支柱を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一態様は、安全帯を介して作業者と接続される親綱と、この親綱を張るための支柱とを備え、上記作業者の落下を予防するためにブーム又はジブに仮設される落下予防設備であって、上記親綱に張力が加わると上記支柱の少なくとも一部が弾性変形する。
【0016】
当該落下予防設備は、親綱を支持する支柱の一部が弾性変形することで、例えば、作業者の落下による衝撃等、上記親綱に加わる急激な張力を緩和することができるため、上記支柱が破損等することを抑制できる。
【0017】
上記支柱が弾性変形する量を規制するストッパを有するとよい。このようにすることで、上記支柱が変形しすぎることを抑制できるので、上記支柱の破損等を効果的に抑制できる。
【0018】
上記支柱が、上記ブーム又はジブに立設される下側部材と、この下側部材の上部に配され、上記親綱を支持する上側部材と、上記下側部材及び上記上側部材を連結する弾性変形可能な連結部材とを有するとよい。このようにすることで、弾性変形する連結部材が上記親綱に加わる張力を緩和することができる。
【0019】
上記下側部材よりも上方に突出している下側突出部分を有する下側ストッパと、上記上側部材よりも下方に突出し、上記下側突出部分と対向している上側突出部分を有する上側ストッパとを含み、上記連結部材の未弾性変形状態において上記下側突出部分及び上記上側突出部分が離間し、上記連結部材の弾性変形状態において、上記下側突出部分及び上記上側突出部分が当接することで上記支柱の弾性変形する量を規制するとよい。このようにすることで、上記支柱が破損等することをさらに効果的に抑制できる。
【0020】
本発明の他の一態様は、作業者の落下を予防するために安全帯を介して作業者と接続される親綱を張設する落下予防設備用の支柱であって、上記親綱に張力が加わると少なくとも一部が弾性変形する。
【0021】
当該支柱は、一部が弾性変形するため、上記親綱に加わる張力を緩和することができ、破損等することを抑制できる。
【0022】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、図面は、本発明の説明用の図であり、各構成(各部材)の形状、縮尺等は、実際のものと異なることがある。
【0023】
[クレーン]
本発明の落下予防設備は、クレーンのブーム、ジブ等に仮設される。具体的には、上記ブーム、ジブ等の組立作業、分解作業などに用いられる。上記クレーンは、例えば
図1に示すような、ブーム2及びジブ3と、上部旋回体4と、この上部旋回体4を旋回可能に支持する下部走行体5とを主に備えるラッフィングジブクレーン1(以下、「クレーン1」という)である。
【0024】
下部走行体5は、走行装置として一対のクローラ等を有し、任意の方向に走行してクレーン1を移動可能にする。上部旋回体4は、下部走行体5上に旋回可能に搭載され、操縦者用キャビン、ブーム2を俯仰させるブーム用ウインチ、ジブ3を俯仰させるジブ用ウインチ、ジブ3の先端から垂下される吊荷用ケーブルを送出及び巻上げる巻上げウインチ等を有する。なお、「俯仰する」とは、ブーム2及びジブ3が、起立状態と倒伏状態との間で揺動することを意味する。
【0025】
〔ブーム〕
ブーム2は、その基端が上部旋回体4に連結され、上部旋回体4の回転面に対して垂直方向に俯仰する。ブーム2は、先端側でジブ3と連結され、テーパー状を呈している上部ブーム21と、長手方向中央に配される中間ブーム22と、上部旋回体4と連結され、テーパー状を呈している下部ブーム23とを有する。中間ブームは、長手方向に複数に分割可能に構成されるものであってもよい。
【0026】
上部ブーム21、下部ブーム23及び中間ブーム22は、概略四角筒状に形成され、ラチス構造を有する。ラチス構造は、長手方向に垂直な断面視で仮想方形の頂点に位置するように配置した四本のブーム主桁(支柱又は主柱)と、隣接する上記ブーム主桁間を接続して上記ブーム主桁を底辺とする複数の三角形、四角形等を形成するよう配置される複数のブーム補桁(ラチス又は斜材)とを有する。上部ブーム21及び下部ブーム23は、上記複数のブーム補桁に換えて板状の補強部材としてもよい。上部ブーム21、下部ブーム23及び中間ブーム22は、ブーム主桁の端部同士を接続することによって1本のブーム2に組み立てられる。
【0027】
〔ジブ〕
ジブ3は、その基端がブーム2の先端に連結される。ジブ3は、ブーム2と同様に、上部旋回体4の回転面に対して垂直に俯仰可能であり、先端で吊荷用ケーブル6を垂下する。ジブ3は、ブーム2と連結される下部ジブ31と、長手方向中央の直胴部を構成する中間ジブ32と、先端側の上部ジブ33とを有する。下部ジブ31及び上部ジブ33は、テーパー状を呈してしている。
【0028】
下部ジブ31、中間ジブ32及び上部ジブ33は、ブーム2と同様に、概略四角筒状に形成され、ラチス構造を有する。ラチス構造は、長手方向に垂直な断面視で仮想方形の頂点に位置するように配置した4本のジブ主桁と、隣接する上記ジブ主桁間を接続してジブ主桁を底辺とする複数の三角形、四角形等を形成するよう配置される複数のジブ補桁とを有する。下部ジブ31及び上部ジブ33は、上記複数のジブ補桁に換えて板状の補強部材としてもよい。下部ジブ31、中間ジブ32及び上部ジブ33は、ジブ主桁の端部同士を接続することによって、1本のジブ3に組み立てられる。
【0029】
〔落下予防設備〕
本発明の落下予防設備は、ブーム2又はジブ3の組立作業及び分解作業に用いられる。一例として、
図2に、中間ブーム22に装着された落下予防設備10を示す。落下予防設備10は、中間ブーム22の上面に装着される。なお、「上面」とは、地面、床面等に対して長手方向が略平行になるように載置された中間ブーム22の上記地面等に接する側の面と反対側の一対の主桁221で構成される面を意味する。
【0030】
具体的には、落下予防設備10は、中間ブーム22の上面と平行に設けられ、安全帯(不図示)を介して作業者と接続される親綱11と、この親綱11を支持する支柱12とを備える。親綱11は、ワイヤロープ、チェーン等の紐状部材であり、支柱12は、親綱11を中間ブーム22の上面から所定の高さで離間するように支持する柱状部材である。支柱12は、下端が中間ブーム22の主桁221に外嵌するU字ボルト13で固定され、上端が親綱11の一端を係止する。本実施形態では、支柱12は、中間ブーム22の長手方向の両端部に近接して配置されている。一対の支柱12は、中間ブーム22の上面を構成する一対の主桁221のうちの一方に設けてもよいし、一対の主桁221それぞれに設けてもよい。支柱12は、中間ブーム22の補桁に固定されてもよい。
【0031】
<支柱>
本実施形態の支柱12は、
図3及び
図4に示すように、中間ブーム22に配される下側部材121と、この下側部材121の上部に配される上側部材122と、下側部材121及び上側部材122を連結し、弾性変形可能な連結部材123とを有する。また、支柱12は、支柱12が弾性変形する量を規制するストッパ124を有する。
【0032】
(下側部材)
下側部材121は、下側支柱1211と、この下側支柱1211の下部に設けられる装着部1212とを有する。装着部1212は、ベースプレート1212aと、保持部分1212bとを含む。ベースプレート1212aは、略板状であり、一方の面の一部が、支柱12が装着される主桁221に当接し、U字ボルト13の端部が挿通するための貫通孔(不図示)を有する。この貫通孔を挿通したU字ボルト13の端部は、ナット14で固定される。保持部分1212bは、一対の略板状の部材であり、ベースプレート1212aの他方の面に垂直に配され、下側支柱1211を保持する。下側支柱1211は、その長手方向がベースプレート1212aの面に対して略垂直になるように保持部分1212bで保持される。下側支柱1211は、断面が略円形、略矩形などの柱状又は筒状の部材であり、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等で形成される。
【0033】
(上側部材)
上側部材122は、上側支柱1221と、この上側支柱1221の上部に設けられる係止部分1222とを有する。係止部材1222は、上端に主桁221と略平行になるように形成された溝1222aと、この溝1222a内に配され、平面視で軸方向が主桁221の長手方向と略直交する軸1222bとを含む。軸1222bは、親綱11の端部を係止する。親綱11の端部は、結束することで軸1222bに係止してもよいし、親綱11の端部にフックを設けて、このフックを軸1222bに係止してもよい。親綱11は、一対の支柱12間で、所定の張力が付与されるように架けられることが好ましい。上側支柱1221は、後述する連結部材123を介して下側支柱1211に支持される。上側支柱1221は、下側支柱1211と同一の形状、材質で形成される。下側支柱1211の曲げ剛性と、上側支柱1221の曲げ剛性とは略同一である。上側支柱1221及び下側支柱1211は、異なる形状、材質で形成されてもよい。
【0034】
(連結部材)
連結部材123は、下側部材121及び上側部材122を連結する。連結部材123は、弾性変形可能な略板状の部材である。連結部材123の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、鉄、ステンレス等で形成される。具体的には、略板状の連結部材123は、その表面及び裏面が、主桁221の長手方向と直交するように設けられる。換言すれば、略板状の連結部材123の厚み方向と、主桁221の長手方向とは、略平行である。主桁221の長手方向における連結部材123の曲げ剛性は、下側支柱1211及び上側支柱1221の曲げ剛性より相対的に低い。連結部材123は、上側部材122を支持するのに必要な静剛性を有する。
【0035】
連結部材123と、下側部材121及び上側部材122との接続方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、下側部材121の上端及び上側部材122の下端に連結部材123の厚みと略同一の溝を形成し、この溝に連結部材123を嵌合し、接着、溶接などで固定する方法が挙げられる。或いは、連結部材123が、下側部材121及び上側部材122に対して、ボルト及びナット等の締結具で締結されてもよい。このようにすることで、支柱12を組立及び分解可能にすることができ、連結部材123を交換可能にすることができる。
【0036】
下側部材121の高さ(長さ)は、支柱12の全高(全長)の1/2以上であることが好ましい。換言すれば、連結部材123の配置される高さが、支柱12の全高の1/2以上であることが好ましい。下側部材121の高さが上記下限に満たないと、相対的に上側支柱1221の長さが長くなり上側部材122の重量が増大して連結部材123の静剛性を増大することが必要になる結果、連結部材123の曲げ剛性を下側支柱1211及び上側支柱1221の曲げ剛性より相対的に低くすることが困難になるおそれがある。なお、「下側部材121の高さ」とは、ベースプレート1212aの上記一方の面から下側支柱1211の上端までの長さを意味する。また、「支柱12の全高」とは、ベースプレート1212aの上記一方の面から係止部分1222の上端までの長さを意味する。
【0037】
主桁221の長手方向における連結部材123の曲げ剛性が、下側支柱1211及び上側支柱1221の曲げ剛性より低いため、親綱11に張力が加わると連結部材123が変形する。連結部材123は、材料降伏に達するまでは、弾性変形する。すなわち、支柱12が連結部材を有することで、上記材料降伏に達するまでは、上側支柱1221は上記長手方向に揺動することができる。中間ブーム22上から作業者が落下する等して、上記安全帯を介して親綱11に張力が加わると、この親綱11の端部を係止している支柱12の上側部材122は、連結部材123が弾性変形することで、内側(上記長手方向における親綱11が支持されている側)に倒れる。このようにして、支柱12は、親綱11に加わる張力を緩和することができる。
【0038】
(ストッパ)
本実施形態の支柱12は、連結部材123が弾性変形する量を規制するストッパ124を有する。ストッパ124は、下側ストッパ124aと、上側ストッパ124bとを含む。本実施形態では、下側ストッパ124a及び上側ストッパ124bは、断面が略矩形の柱状部材である。下側ストッパ124a及び上側ストッパ124bは、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等で形成される。下側ストッパ124a及び上側ストッパ124bの断面は、略矩形に限定されるものではなく、略円形などであってもよい。
【0039】
下側ストッパ124aは、下側部材121よりも上方に突出している下側突出部分を有する。具体的には、下側ストッパ124aは、下側部材121の上部で、上記内側の側面に配される。下側ストッパ124aは、その長手方向が下側部材121の長手方向と略平行に配される。下側ストッパ124aは、下側突出部分として、上端が下側部材121の上端よりも上方に突出している。
【0040】
上側ストッパ124bは、上側部材122の下端よりも下方に突出し、上記下側突出部分と対向している上側突出部分を有する。具体的には、上側ストッパ124bは、上側部材122の下部で、上記内側の側面に配される。上側ストッパ124bは、その長手方向が上側部材122の長手方向と略平行に配され。上側ストッパ124bは、上側突出部分として、下端が上側部材122の下端より下方に突出し、下側ストッパ124aの上端(上記下側突出部分)と対向している。
【0041】
下側ストッパ124aの上端と、上側ストッパ124bの下端とは、連結部材123の未弾性変形状態において離間している。すなわち、下側ストッパ124aの上端と、上側ストッパ124bの下端とは、親綱11に張力が加わらない状態において離間している。親綱11に張力が加わると、支柱12の上側部材122が、連結部材123が弾性変形することで上記内側に倒れる。この連結部材123の弾性変形状態において、上記下側突出部分及び上記上側突出部分が当接する。すなわち、支柱12の上記内側に設けられている下側ストッパ124aの上端と上側ストッパ124bの下端とが当接する。このため、連結部材123の弾性変形する量が規制される。換言すれば、上側部材122は、ストッパ124によって、所定の角度を超えて倒れることができない。連結部材123が材料降伏に達する前に下側ストッパ124aの上端と上側ストッパ124bの下端とが当接するようにすることで、連結部材123が材料降伏を超えて変形することが抑制できる。また、ストッパ124は、下側ストッパ124aの上端と上側ストッパ124bの下端とが当接することで、支柱12の一部となるため、支柱12としての剛性を向上できる。
【0042】
下側ストッパ124aの上端と上側ストッパ124bの下端との離間距離は、特に限定されるものではなく、連結部材123の形状及び材質、支柱12の全高、下側部材121の高さ等によって設定される。
【0043】
[利点]
当該落下予防設備1は、支柱12の連結部材123が弾性変形することで上側部材122が内側に倒れるため、親綱11に加わる張力を緩和することができ、破損等することを抑制できる。
【0044】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0045】
上述の実施形態では、中間ブームに当該落下予防設備を設けたもので説明したが、中間ブームに限定されるものではなく、当該落下予防設備は、上部ブーム、下部ブーム、上部ジブ、中間ジブ、下部ジブに設けてもよく、ストラットタワーなど他の部材に設けてもよい。また、当該落下予防設備が設けられる部材は、ラチス構造を有しないものであってもよい。
【0046】
さらに、当該落下予防設備は、建設機械以外のものに仮設されてもよく、当該支柱の用途も建設機械に限定されるものではない。
【0047】
当該支柱の下端の固定方法は、U字ボルトに限定されるものではなく、その他の公知の方法で固定してもよい。
【0048】
当該支柱の下側支柱及び上側支柱は、H形鋼、I形鋼、チャンネル鋼、アングル鋼などを用いてもよい。
【0049】
上述の実施形態では、一の連結部材が下側部材と上側部材との間に配設される構成で説明したが、上記下側部材と上記上側部材との間に二以上の連結部材を配設してもよいし、当該支柱の長手方向に複数の連結部材を配してもよい。また、連結部材は、鉄等で形成される略板状のもので説明したが、材質、形状は特に限定されるものではない。
【0050】
当該支柱は、下側支柱の曲げ剛性と、上側支柱の曲げ剛性とは略同一であるものとして説明したが、上記下側支柱の曲げ剛性が、上記上側支柱曲げ剛性よりも大きくてもよい。親綱に張力が加わる際に当該支柱が受けるモーメントは、当該支柱の下側になるほど大きくなるため、上記下側支柱の曲げ剛性を上記上側支柱の曲げ剛性よりも大きくすることで、当該支柱が破損等することをより抑制できる。
【0051】
下側支柱は、下側の横断面の面積が、上側の横断面の面積よりも大きくしてもよい。例えば、上記下側支柱は、横断面の面積が下方に行くにつれて漸増する部分を有してもよい。このようにすることで、下側支柱の曲げ剛性を上側支柱の曲げ剛性よりも大きくすることができる。
【0052】
上述の実施形態では、ストッパが、連結部材の弾性変形する量を規制するものとして説明したが、上記ストッパは、上記連結部材が弾性変形を超えて塑性変形する量を規制するものとしてもよい。この場合、上記連結部材は、下側支柱及び上側支柱に脱着可能に取り付けられ、容易に交換できることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る落下予防設備は、例えば、大型のラッフィングジブクレーン等の組立作業及び分解作業に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 クレーン(ラッフィングジブクレーン)
2 ブーム
21 上部ブーム
22 中間ブーム
221 主桁
23 下部ブーム
3 ジブ
31 下部ジブ
32 中間ジブ
33 上部ジブ
4 上部旋回体
5 下部走行体
6 吊荷用ケーブル
10 落下予防設備
11 親綱
12 支柱
121 下側部材
1211 下側支柱
1212 装着部
1212a ベースプレート
1212b 保持部分
122 上側部材
1221 上側支柱
1222 係止部分
1222a 溝
1222b 軸
123 連結部材
124 ストッパ
124a 下側ストッパ
124b 上側ストッパ
13 U字ボルト
14 ナット