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特開2023-22777繊維強化樹脂材料及びその製造方法並びに繊維強化樹脂構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022777
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂材料及びその製造方法並びに繊維強化樹脂構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20230208BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20230208BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
B32B5/28 A
B29B15/08
B29K105:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127846
(22)【出願日】2021-08-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第23回化学工学会学生発表会において発表した事項のウェブサイトの掲載 ウェブサイトの掲載日:令和3年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 徹也
(72)【発明者】
【氏名】吉良 亘平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵介
(72)【発明者】
【氏名】野村 理明
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AC08
4F072AD04
4F072AD44
4F072AD53
4F072AG02
4F072AG17
4F072AH42
4F072AH49
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL06
4F072AL07
4F072AL11
4F072AL17
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK48A
4F100AK48B
4F100AK48C
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA26
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB32
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JK04
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK07C
4F100JK08
(57)【要約】
【課題】より割れ難い繊維強化樹脂材料及びその製造方法並びに繊維強化樹脂構造体を提供する。
【解決手段】本繊維強化樹脂材料1は、第1の繊維強化樹脂層11と、第1層11より高延性且つ低弾性である第2の繊維強化樹脂層12と、第2層12より高延性且つ低弾性である第3の繊維強化樹脂層13と、を備え、第1層、第2層及び第3層がこの順に積層一体化されている本繊維強化樹脂構造体は、本繊維強化樹脂材料からなる。本製造方法は、連続繊維Wをシート状にしたシート状物と、第1の熱可塑性樹脂、第2の熱可塑性樹脂又は第3の熱可塑性樹脂となる樹脂シートと、を第1層、第2層及び第3層がこの順に積層された積層構造が得られるように積層する工程と、得られた積層物を積層方向へ加熱圧縮する工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の繊維強化樹脂層と、
前記第1の繊維強化樹脂層より高延性且つ低弾性である第2の繊維強化樹脂層と、
前記第2の繊維強化樹脂層より高延性且つ低弾性である第3の繊維強化樹脂層と、を備え、
前記第1の繊維強化樹脂層、前記第2の繊維強化樹脂層、及び、前記第3の繊維強化樹脂層が、この順に積層一体化されていることを特徴とする繊維強化樹脂材料。
【請求項2】
前記第1の繊維強化樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、
前記第2の繊維強化樹脂層は、第2の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、
前記第3の繊維強化樹脂層は、第3の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、
前記第1の熱可塑性樹脂、前記第2の熱可塑性樹脂及び前記第3の熱可塑性樹脂が、互いに異なる3種の熱可塑性樹脂である請求項1に記載の繊維強化樹脂材料。
【請求項3】
前記第1の熱可塑性樹脂、前記第2の熱可塑性樹脂及び前記第3の熱可塑性樹脂は、各々、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、及び、これらの複合樹脂から選択される請求項2に記載の繊維強化樹脂材料。
【請求項4】
前記連続繊維は、いずれも、表面に付着された粒子を有し、
前記粒子は、前記熱可塑性樹脂A、前記熱可塑性樹脂B、及び、前記複合樹脂のうちのいずれかからなる請求項3に記載の繊維強化樹脂材料。
【請求項5】
前記第1の繊維強化樹脂層、前記第2の繊維強化樹脂層、及び、前記第3の繊維強化樹脂層の繊維含有率が異なる請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の繊維強化樹脂材料。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の繊維強化樹脂材料からなることを特徴とする繊維強化樹脂構造体。
【請求項7】
請求項2乃至4のうちのいずれかに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法であって、
前記連続繊維をシート状にしたシート状物と、前記第1の熱可塑性樹脂、前記第2の熱可塑性樹脂又は前記第3の熱可塑性樹脂となる各樹脂シートと、を前記第1の繊維強化樹脂層、前記第2の繊維強化樹脂層、及び、前記第3の繊維強化樹脂層が、この順に積層された積層構造が得られるように積層する積層工程と、
前記積層工程を経て得られた積層物を積層方向へ加熱圧縮する熱圧工程と、を備えることを特徴とする繊維強化樹脂材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂材料及びその製造方法並びに繊維強化樹脂構造体に関する。更に詳しくは、熱可塑性樹脂を利用した繊維強化樹脂材料及びその製造方法並びに繊維強化樹脂構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化プラスチック等と称される複合材料が知られる。一般に、繊維強化プラスチックは、ガラス繊維不織布等の繊維集合体をコア材とし、このコア材をマトリックス材である樹脂(マトリックス樹脂)で被覆後、硬化して得られる。この際、マトリックス樹脂には、熱硬化性樹脂が多く採用される。未硬化状態における流動性に優れた樹脂が多く、コア材内部へ含浸させ易いという観点から選択される。しかしながら、熱硬化性樹脂は、硬化されると脆性が大きくなり、割れ易いという欠点を有することになる。このため、より割れ難い繊維強化樹脂材料及び繊維強化樹脂構造体が求められる。このような観点から、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を採用することが期待されている。
【0003】
これらの観点からは、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂として下記特許文献1~2が知られている。また、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とした繊維強化材料として下記特許文献3が知られている。更に、強化繊維とマトリックス樹脂との親和性を向上させる技術として下記特許文献4~5が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-147646号公報
【特許文献2】国際公開2018-021569号パンフレット
【特許文献3】特開2018-123284号公報
【特許文献4】特開2017-82060号公報
【特許文献5】国際公開2017-150702号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及び相容化剤を溶融混錬してなる熱可塑性樹脂組成物において、ポリアミド樹脂として、所定の植物由来ポリアミド樹脂を採用することで優れた耐衝撃性を発揮できることを開示している。
上記特許文献2は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及び相容化剤を溶融混錬してなる熱可塑性樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂としてMnが350,000以上であるもの、ポリアミド樹脂として主鎖中の隣り合ったアミド結合同士に挟まれた炭化水素基の直鎖炭素数が5以下である構造を有するもの、を採用することにより、優れた耐衝撃性を発揮できることを開示している。
上記特許文献3は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及び相容化剤を溶融混錬してなる熱可塑性樹脂組成物をマトリックス樹脂として採用することにより、割れ難い繊維強化材料及び構造体が得られることを開示している。
上記特許文献4及び5は、炭素繊維強化プラスチックにおいて、表面に熱可塑性樹脂粒子を吸着した炭素繊維を採用することにより、熱可塑性樹脂との界面接着性を向上できることを開示している。
【0006】
上記特許文献3の技術により、割れ難い繊維強化材料及び構造体は得られるものの、更に優れた強度特性を有する材料が求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、従来に比べて、より割れ難い繊維強化樹脂材料及びその製造方法並びに繊維強化樹脂構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は以下に示される。
[1]本発明の繊維強化樹脂材料は、第1の繊維強化樹脂層と、
前記第1の繊維強化樹脂層より高延性且つ低弾性である第2の繊維強化樹脂層と、
前記第2の繊維強化樹脂層より高延性且つ低弾性である第3の繊維強化樹脂層と、を備え、
前記第1の繊維強化樹脂層、前記第2の繊維強化樹脂層、及び、前記第3の繊維強化樹脂層が、この順に積層一体化されていることを要旨とする。
[2]本発明の繊維強化樹脂材料では、前記第1の繊維強化樹脂層は、第1の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、
前記第2の繊維強化樹脂層は、第2の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、
前記第3の繊維強化樹脂層は、第3の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、
前記第1の熱可塑性樹脂、前記第2の熱可塑性樹脂及び前記第3の熱可塑性樹脂が、互いに異なる3種の熱可塑性樹脂にすることができる。
[3]本発明の繊維強化樹脂材料では、前記第1の熱可塑性樹脂、前記第2の熱可塑性樹脂及び前記第3の熱可塑性樹脂は、各々、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、及び、これらの複合樹脂から選択することができる。
[4]本発明の繊維強化樹脂材料では、前記連続繊維は、いずれも、表面に付着された粒子を有し、
前記粒子は、前記熱可塑性樹脂A、前記熱可塑性樹脂B、及び、前記複合樹脂のうちのいずれかからなるものとすることができる。
[5]本発明の繊維強化樹脂材料では、前記第1の繊維強化樹脂層、前記第2の繊維強化樹脂層、及び、前記第3の繊維強化樹脂層の繊維含有率が異なるものとすることができる。
[6]本発明の繊維強化樹脂構造体は、本発明の繊維強化樹脂材料からなることを要旨とする。
[7]本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、前記連続繊維をシート状にしたシート状物と、前記第1の熱可塑性樹脂、前記第2の熱可塑性樹脂又は前記第3の熱可塑性樹脂となる各樹脂シートと、を前記第1の繊維強化樹脂層、前記第2の繊維強化樹脂層、及び、前記第3の繊維強化樹脂層が、この順に積層された積層構造が得られるように積層する積層工程と、
前記積層工程を経て得られた積層物を積層方向へ加熱圧縮する熱圧工程と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維強化樹脂材料及び繊維強化樹脂構造体によれば、従来に比べて、より優れた割れ難さを得ることができる。とりわけ、破断に至るまでに吸収できるエネルギー量を大きくすることができる。
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法によれば、従来に比べて、より優れた割れ難さを有する繊維強化樹脂材料及び繊維強化樹脂構造体を得ることができる。とりわけ、破断に至るまでに吸収できるエネルギー量が大きい繊維強化樹脂材料及び繊維強化樹脂構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】繊維強化樹脂材料の一例を説明する説明図である。
図2】繊維強化樹脂材料の製造方法の一例を部分的に説明する説明図である。
図3】繊維強化樹脂材料の製造方法の一例を部分的に説明する説明図である。
図4】繊維強化樹脂材料の製造方法の一例を部分的に説明する説明図である。
図5】繊維強化樹脂材料の製造方法の一例を部分的に説明する説明図である。
図6】連続繊維の一例を示す説明図である。
図7】繊維強化樹脂材料の他例を説明する説明図である。
図8】繊維強化樹脂材料の他例を説明する説明図である。
図9】繊維強化樹脂材料の他例を説明する説明図である。
図10】他例の繊維強化樹脂材料の製造方法を説明する説明図である。
図11】種々の繊維強化樹脂材料による応力-歪曲線を示した多重チャートである。
図12】実験例1の試験片の破断箇所近傍を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は、例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
[1]繊維強化樹脂材料
本発明の繊維強化樹脂材料(1)は、第1の繊維強化樹脂層(11)と、
前記第1の繊維強化樹脂層(11)より高延性且つ低弾性である第2の繊維強化樹脂層(12)と、
前記第2の繊維強化樹脂層(12)より高延性且つ低弾性である第3の繊維強化樹脂層(13)と、を備え、
前記第1の繊維強化樹脂層(11)、前記第2の繊維強化樹脂層(12)、及び、前記第3の繊維強化樹脂層(13)が、この順に積層一体化されていることを特徴とする(図1参照)。
【0012】
[1-1]繊維強化樹脂層
上述した第1の繊維強化樹脂層11(以下、単に「第1層」ともいう)、第2の繊維強化樹脂層12(以下、単に「第2層」ともいう)、第3の繊維強化樹脂層13(以下、単に「第3層」ともいう)は、いずれも、繊維強化樹脂層10である(図1参照)。
繊維強化樹脂層10は、強化繊維Wと、強化繊維同士を結着する結着樹脂Sと、を含んだ層である(図1部分拡大図参照)。
そして、第2層12は、第1層11より高延性且つ低弾性であり、第3層13は、第2層12より高延性且つ低弾性である。この第1層、第2層及び第3層の差異は、通常、強化繊維Wの含有量(含有率)や、結着樹脂Sの違いにより形成される。
【0013】
[1-2]強化繊維
強化繊維W図1及び図6参照)は、非連続繊維であってもよく、連続繊維であってもよく、これらの併用であってもよい。本発明では、連続繊維のみ、又は、連続繊維を主体(繊維全体の50質量%以上100質量%未満)であることが好ましい。連続繊維を用いることにより、繊維強化樹脂層10の機械強度を向上させることができる。
【0014】
強化繊維Wの繊維長は限定されないが、例えば、15mm以上とすることができる。繊維長が15mm以上であることにより、強化繊維同士の交差を増大させることができるため、後述する繊維集合物の強度を高めることができる。更に、繊維長は50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、500mm以上が更に好ましい。最大繊維長は限定されないが、例えば、本繊維強化樹脂材料からなる構造体では、その一端から他端まで一連に連続された繊維を含むことができる。この場合、最大繊維長は、例えば、1×10mm以下とすることができる。
【0015】
即ち、強化繊維Wは、非連続繊維であってもよく、連続繊維であってもよく、これらの併用であってもよいが、本発明では、連続繊維のみ、又は、連続繊維を主体(繊維全体の50質量%以上100質量%)であることが好ましい。連続繊維を用いることにより、繊維強化樹脂層10の機械強度を向上させることができる。
従って、非連続繊維は、15mm未満に細断された繊維(短繊維等)とすることができる。対して、連続繊維は、15mm以上に細断された繊維(長繊維等)、50mm以上に細断された繊維(長繊維等)、100mm以上に細断された繊維(長繊維等)、500mm以上に細断された繊維(長繊維等)、更には、実質的に細断されていない繊維などとすることができる。
【0016】
強化繊維Wを構成する材料は限定されず、無機材料を用いてもよく、有機材料を用いてもよく、これらを併用してもよい。
無機繊維としては、炭素繊維、活性炭繊維、ガラス繊維、セラミック繊維(ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミナ等)、金属繊維、ボロン繊維などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
有機繊維としては、天然繊維、合成繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、合成繊維としては、合成樹脂を繊維形状に賦形した繊維が挙げられる。このような合成樹脂製繊維としては、ポリアミド樹脂繊維(脂肪族ポリアミド(ナイロン繊維など)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維、商品名「ケブラー」など)等)、ポリエステル樹脂繊維(脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維など)等)、ポリオレフィン樹脂繊維(高分子量ポリオレフィン(商品名「ダイニーマ」など)等)、ポリベンズアゾール樹脂繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(商品名「ザイロン」など)等)が挙げられる。
【0017】
また、強化繊維Wは、より高い引張強さを有する繊維であることが好ましく、例えば、JIS L1015による引張強さにおいて7cN/dtex以上(通常50cN/dtex)を有する繊維が好ましい。
更に、繊維の形態は限定されず、スパンヤーンであってもよく、フィラメントヤーンであってもよく、これらを併用してもよい。更に、モノフィラメントを用いてもよく、マルチフィラメントを用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0018】
本繊維強化樹脂材料は、上述のなかでも特に、強化繊維Wとして炭素繊維の利用によりとりわけ優れた性能を発揮できる。
炭素繊維の種類は限定されず、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、強化繊維Wとして炭素繊維を選択し、更に、炭素繊維を束ねて利用する場合、炭素繊維束(トウ)を構成する炭素繊維の本数は限定されず、例えば、1000本以上とすることができる。この本数は、更に、1000本以上50000本以下とすることができ、更に1500本以上40000本以下とすることができ、更に2000本以上30000本以下とすることができる。
炭素繊維の太さは限定されないが、例えば、平均直径を1000nm以上30000nm以下、更には1000nm以上10000nm以下とすることができる。
尚、炭素繊維の表面には、サイジング剤が付着されていてもよいが、後述する粒子(熱可塑性樹脂粒子)の付着性を向上させるという観点からは、サイジング剤は付着されていないことが好ましい。炭素繊維の表面にサイジング剤が付着されている場合、サイジング除去剤(例えば、アセトン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等)を用いて除去することが好ましい。
【0019】
[1-3]付着された粒子
強化繊維Wは、繊維W11の表面に付着された粒子W12を有することができる(図6参照)。繊維表面に付着された粒子W12を有する場合には、強化繊維W同士の間へ結着樹脂Sを入り込みやすくすることができるため、繊維強化樹脂材料の機械強度を向上させることができる。とりわけ、粒子W12として、結着樹脂Sを構成する樹脂分との親和性を有する材料からなる粒子W12を用いた場合、強化繊維Wと結着樹脂Sとの接着を強固でき、これらの異材料間における破壊起点を低減できる。なかでも、結着樹脂Sが熱可塑性樹脂である場合、その作用をより顕著に得ることができる。即ち、熱可塑性樹脂は、硬化性樹脂に比べて優れた伸度を有するため、結着樹脂Sとして熱可塑性樹脂を利用すると、繊維強化樹脂材料へ靭性を与えることができると考えられる。その一方で、伸度に優れた熱可塑性樹脂を結着樹脂Sを利用すると、強化繊維Wよりも高い伸度を有することになる場合があるが、上述の粒子W12を有することにより、強化繊維Wと結着樹脂Sとの間における界面離間をより効果的に低減できるため、熱可塑性樹脂の利用による高伸度性な性質をより高度に活用できる。
【0020】
強化繊維Wに付着された粒子W12を構成する材料は限定されないが、前述の通り、結着樹脂Sと共に、熱可塑性樹脂である場合に、優れた効果を得ることができる。従って、粒子を構成する材料は、結着樹脂Sと共に、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、後述する結着樹脂Sを構成する樹脂として例示される各種の熱可塑性樹脂を利用できる。
更に、結着樹脂Sと粒子W12を構成する材料とはより高い親和性を有することが好ましいという観点から、粒子W12を構成する熱可塑性樹脂と、結着樹脂Sを構成する熱可塑性樹脂とは、同種の熱可塑性樹脂であるか、又は、成分樹脂として同種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。同種の熱可塑性樹脂である場合としては、ポリアミド同士である場合、ポリオレフィン同士である場合、ポリエステル同士である場合等が挙げられる。また、成分樹脂として同種の樹脂を含む場合としては、結着樹脂Sがポリオレフィンとポリアミドとこれらに対する相容化剤との溶融混錬物である場合に、粒子を構成する熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン及び/又はポリアミドを含む場合等が挙げられる。
【0021】
強化繊維Wに対する粒子W12の付着はどのような方法を用いてもよいが、例えば、強化繊維Wが電気導電性の繊維、特に炭素繊維である場合には、特開2017-82060号公報の開示及び国際公開2017-150702号パンフレットの開示を用いて行うことができる。即ち、例えば、(1)粒子、非イオン性界面活性剤、電解質及び水を含有するコロイド溶液、又は、(2)粒子、ラジカル重合開始剤、及び水を含有するコロイド溶液に、強化繊維Wを浸漬しつつ、強化繊維Wを正極又は負極として電圧を印加して電気泳動を行うことにより、強化繊維Wに粒子W12を付着させることができる。
【0022】
粒子W12の大きさは限定されないが、平均粒径として、例えば、0.02μm以上0.5μm以下とすることができる。更に、強化繊維Wへの吸着性向上の観点から、0.02μm以上5μm以下とすることができ、0.02μm以上1μm以下とすることができ、0.02μm以上0.5μm以下とすることができる。
そして、粒子W12は、例えば、強化繊維表面の30~100面積%、更には60~99面積%に付着させることができる。
尚、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡観察で測定できる。より具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて拡大した静止画像内において、強化繊維Wに付着している任意の20個の粒子の最大径を実測し、その平均値を当該平均粒径とすることができる。
【0023】
[1-4]繊維集合物
繊維強化樹脂層10内における強化繊維Wの状態は限定されないが、通常、集合された繊維集合物(繊維集合層)として含まれる。
強化繊維Wが非連続繊維である場合の繊維集合物としては、非連続繊維が堆積された不織布が挙げられる。
強化繊維Wが連続繊維である場合の繊維集合物としては、連続繊維を引き揃えた状態の繊維集合物、連続繊維を束ねたトウを引き揃えた状態の繊維集合物、連続繊維を製織した繊維集合物(連続繊維を用いた織物)、連続繊維を束ねたトウを製織した繊維集合物(トウを用いた織物)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
尚、繊維集合物は、連続繊維を用いた繊維集合物であっても、連続繊維以外に、非連続繊維を含むことができる。非連続繊維を含む場合のその含有量限定されないが、例えば、繊維集合物を構成する繊維全体を100質量%とした場合に、50質量%未満が好ましく、25質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0025】
繊維集合物は、単層で用いられてもよいが、複層で用いることができる。繊維集合物が層状である場合、その層厚は限定されないが、例えば、0.01μm以上5000μm以下とすることができ、0.1μm以上1000μm以下とすることができ、1μm以上500μm以下とすることができ、5μm以上250μm以下とすることができる。繊維集合物の目付は限定されないが、例えば、0.1g/m以上100000g/m以下とすることができる。
尚、繊維集合物の層厚は、走査型電子顕微鏡観察で測定できる。より具体的には、繊維強化樹脂材料の積層方向の断面を拡大した静止画像内において、任意の10ヶ所の厚さを実測し、その平均値を当該層厚とすることができる。
【0026】
[1-5]結着樹脂
結着樹脂Sは、強化繊維同士を結着する樹脂(マトリックス樹脂)である。結着樹脂Sは、硬化性樹脂(熱、エネルギー線等による硬化)であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、これらの併用であってもよいが、これらのなかでは熱可塑性樹脂が好ましい。また、結着樹脂Sは、樹脂分のみからなってもよいが、樹脂分以外にフィラー等の他成分(非樹脂分等)を含有できる(この場合、結着樹脂組成物ということができる)。尚、他成分については後述する。
【0027】
熱可塑性樹脂の種類は限定されず、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フッ素含有熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、更には、これらの熱可塑性樹脂の2種以上を含む樹脂アロイ(複合樹脂)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
上述のうち、ポリアミド(以下、単に「PA」と略記することがある)の種類は限定されないが、例えば、PA6、PA66、PA11、PA610、PA612、PA614、PA12、PA6T、PA6I、PA9T、PAM5T、PA1010、PA1012、PA10T、PAMXD6、PA6T/66、PA6T/6I、PA6T/6I/66、PA6T/2M-5T、PA9T/2M-8T等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、本繊維強化樹脂材料では、汎用性、耐衝撃性、加工性等の観点からは、上述の各ポリアミドのなかでも、PA6、PA66等を選択できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、環境性(カーボンニュートラル)及び持続可能性の観点からは、上述の各ポリアミドのなかでも、植物由来ポリアミド(植物由来の単量体を用いたポリアミド)を選択できる。植物由来ポリアミドとしては、PA11、PA610、PA612、PA614、PA1010、PA1012、PA10T等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリアミドの分子量は限定されず、例えば、5,000以上100,000以下とすることができ、7,500以上50,000以下が好ましく、10,000以上50,000以下がより好ましい。尚、この分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0030】
上述のうち、ポリオレフィン(以下、単に「PO」と略記することがある)の種類は限定されず、POには、オレフィンの単独重合体(ホモポリマー)及び/又はオレフィンの共重合体(コポリマー)が含まれる。また、POを構成するオレフィンは限定されず、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これら重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記のうち、ポリエチレンには、エチレン単独重合体、及び、エチレンと他のオレフィンとの共重合体が含まれる。このうち、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられる(但し、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する)。
また、ポリプロピレンには、プロピレン単独重合体、及び、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が含まれる。このうち、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体を構成する、他のオレフィンとしては、前述の各種オレフィン(但し、プロピレンを除く)が挙げられる。また、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。尚、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する。
【0032】
尚、ここでいうPOは、PAに対して親和性を有さないPOであり、且つ、PAに対して反応し得る反応性基を有さないPOである。この点において、PA及びPOに対する相容化剤と異なる。
また、POの分子量は限定されず、例えば、10000以上700000以下とすることができ、100000以上600000以下とすることができ、200000以上550000以下とすることができる。
この分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、ポリオレフィンとしてホモポリマーを用いる場合、重量平均分子量の値は、各々数平均分子量の値へ読み換えることができる。
【0033】
上述のうち、ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。上述のうち、アクリル樹脂としては、例えば、PMMA、ABS、AS等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。上述のうち、フッ素含有熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
上述のうち、2種以上の熱可塑性樹脂を含んだ樹脂アロイは限定されず、どのような熱可塑性樹脂の組合せであってもよいが、耐衝撃性、伸度、加工性の観点から、ポリアミドとポリオレフィンとを含んだ複合樹脂(熱可塑性樹脂)を選択できる。ポリアミドとポリオレフィンとを含んだ複合樹脂は、(1)特開2013-147646号公報に開示された複合樹脂、(2)国際公開2018-021569号パンフレットに開示された複合樹脂、(3)特開2018-123284号公報に開示された複合樹脂を用いることができる。
より詳しくは、上記(1)特開2013-147646号公報に開示された複合樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び相容化剤を溶融混練してなり、ポリアミド樹脂は、PA11、PA610、PA614、PA1010及びPA10Tのうちの少なくとも一種の植物由来ポリアミド樹脂であり、相容化剤は、酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーであり、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及び相容化剤の合計100質量%に対して、ポリアミド樹脂の含有量が1質量%以上80質量%以下であり、ポリオレフィン樹脂の含有量が5質量%以上75質量%以下であり、相容化剤の含有量が1質量%以上30質量%以下である熱可塑性樹脂である。
また、上記(2)国際公開2018-021569号パンフレットに開示された複合樹脂は、ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有する変性エラストマー(即ち、相容化剤)と、を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、ポリオレフィン樹脂は、数平均分子量が350000以上であり、ポリアミド樹脂は、主鎖中の隣り合ったアミド結合同士に挟まれた炭化水素基の直鎖炭素数が5以下である構造を有する熱可塑性樹脂である。
更に、上記(3)特開2018-123284号公報に開示された複合樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及び、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有する変性エラストマー(相容化剤)を配合してなる熱可塑性樹脂である。
【0035】
これらの複合樹脂で用いるポリアミドとしては、前述したポリアミドを利用できる。また、これらの複合樹脂で用いるポリオレフィンとしては、前述したポリオレフィンを利用できる。更に、これらの複合樹脂で用いる相容化剤としては、下記に示す相容化剤を利用できる。
【0036】
相容化剤は、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有した変性エラストマーである。この変性エラストマーは、更に、ポリアミドに対しては、上述の反応性基を利用して親和性を示すと同時に、別途、ポリオレフィンに対しても親和性を示すエラストマーであることが好ましい。即ち、変性エラストマーは、ポリアミドに対する反応性基を有し、ポリオレフィン及びポリアミドの双方に対して相容性を有する相容化剤であることが好ましい。
尚、変性エラストマーは、複合樹脂内において、未反応の変性エラストマーとして含まれてもよく、ポリアミドとの反応物として含まれてもよく、これらの両方の形態で含まれてもよい。
【0037】
相容化剤が有する反応性基としては、酸無水物基(-CO-O-OC-)、カルボキシル基(-COOH)、エポキシ基{-CO(2つの炭素原子と1つの酸素原子とからなる三員環構造)}、オキサゾリン基(-CNO)及びイソシアネート基(-NCO)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
反応性基は、変性前のエラストマー(未変性エラストマー)に対して、変性により導入することができる。具体的には、エラストマーの酸変性物、エラストマーのエポキシ変性物、及び、エラストマーのオキサゾリン変性物等が挙げられる。これらのなかでも、エラストマーの酸変性物が好ましく、更には、酸無水物又はカルボン酸によるエラストマーの変性物であることがより好ましい。
変性エラストマーは、分子の側鎖又は末端に、酸無水物基又はカルボキシル基を有することが特に好ましい。酸変性量は特に限定されず、例えば、1分子の変性エラストマーに含まれる酸無水物基又はカルボキシル基の数は、1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上50以下、更に好ましくは3以上30以下、特に好ましくは5以上20以下である。
これらの変性エラストマーは、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
変性前のエラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等が挙げられる。ポリレフィンに対する相容性の観点から、特に、オレフィン系エラストマーが好ましい。
オレフィン系エラストマーとしては、炭素数が3~8のα-オレフィンに由来する構造単位を含むα-オレフィン系共重合体であることが好ましく、エチレン・α-オレフィン共重合体、α-オレフィン共重合体、α-オレフィン・非共役ジエン共重合体、又は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体とすることができる。これらのうち、エチレン・α-オレフィン共重合体、α-オレフィン共重合体、及びエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体が特に好ましい。
【0039】
尚、非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、5,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、7-メチルオクタ-1,6-ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の脂環式ジエン化合物等が挙げられる。
【0040】
具体的なオレフィンエラストマーとしては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。これらのうち、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体及びエチレン・1-オクテン共重合体が好ましい。
【0041】
また、スチレン系エラストマー(即ち、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマー)としては、芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等のアルキルスチレン;p-メトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
また、共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0042】
具体的なスチレン系エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン/プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0043】
酸変性用の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等が挙げられる。これらのうち、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水イタコン酸が好ましい。
また、カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0044】
複合樹脂における相容化剤としては、上述の各種変性エラストマーのなかでも、酸無水物変性されたエラストマーが好ましく、特に無水マレイン酸変性されたエラストマーが好ましく、更には、炭素数が3~8のα-オレフィンに由来する構造単位を含むα-オレフィン系共重合体の酸変性物が好ましい。具体的には、エチレン若しくはプロピレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体を骨格としたオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、より具体的には、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・1-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・1-ヘキセン共重合体及び無水マレイン酸変性エチレン・1-オクテン共重合体等の、無水マレイン酸により変性されたエラストマーが好ましい。具体的には、三井化学株式会社製のα-オレフィンコポリマー「タフマーシリーズ」(商品名)やダウケミカル社製の「AMPLIFYシリーズ」(商品名)等を用いることができる。
【0045】
変性エラストマーの分子量は特に限定されないが、例えば、10000以上500000以下とすることができ、20000以上500000以下が好ましく、30000以上300000以下がより好ましい。
尚、変性エラストマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0046】
結着樹脂Sは、上述した熱可塑性樹脂以外にも、必要に応じて他成分を含有できる。他成分としては、各種添加剤が挙げられる。即ち、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
造核剤及び補強フィラーとしては、タルク、シリカ、クレー、モンモリロナイト、カオリン等のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;アルミニウム、鉄、銀、銅等の金属;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;硫酸バリウム等の硫化物;木炭、竹炭等の炭化物;チタン酸カリウム、チタン酸バリウム等のチタン化物;セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等のセルロース類;フラーレン等のカーボン類等が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、有機ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
熱安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物等が挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物(窒素含有リン酸塩化合物、リン酸エステル等)、窒素系化合物(グアニジン、トリアジン、メラミン又はこれらの誘導体等)、無機化合物(金属水酸化物等)、ホウ素系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系化合物、赤リン系化合物等が挙げられる。
難燃助剤としては、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。
【0049】
[1-6]第1層、第2層及び第3層
第1層11と、第2層12と、第3層13と、は以下の特定の相関をする。即ち、第2層12は、第1層11より高延性且つ低弾性であり、第3層13は、第2層12より高延性且つ低弾性であるという相関である。
この相関を有して、第1層11と、第2層12と、第3層13と、がこの順に積層一体化された繊維強化樹脂材料では、この構成を有さない繊維強化樹脂材料と比較して、優れた割れ難さを得ることができる。とりわけ、破断に至るまでに吸収できるエネルギー量を大きくすることができる。
【0050】
特に上記構成を有する繊維強化樹脂材料において、第1層側から第3層側へ向かって衝撃入力した場合には、顕著に優れた割れ難さを得ることができる。その理由は、例えば、以下の通りに考えることができる。一般に、繊維強化樹脂材料は、高強度化(高弾性率化)するにつれ、破壊歪は小さくなるトレードオフを有する。即ち、高強度な繊維強化樹脂材料では、変形を生じ難いため、衝撃入力されても、歪は小さいまま遷移し、強度の限界に達すると、繊維強化樹脂材料自体が割れることになる。
【0051】
対して、本発明の繊維強化樹脂材料では、高強度でありながら、大きな破壊歪を有することができる。そのため、衝撃入力されると、各繊維樹脂強化層が個別に有する強度まで耐えるとともに、その限界に至ると、各繊維樹脂強化層が個別に破壊されることになる。具体的には、最も高い強度を有する第1層が破壊されることになるが、他層は、第1層よりも高い延性を有するため、破壊されない。このため、繊維強化樹脂材料全体としては、一気に破壊されず、割れることがない。
【0052】
更に、第1層は破壊されても、他層と積層一体化されているために、第2層との層間破壊は抑制されることになるため、第1層内の応力集中点が移動し、第1槽内で複数の破壊を生じることになる。一方で、第2層~第3層は、第1層よりも高い延性を有するため、靭性として機能し、歪むことができる。このために、繊維強化樹脂材料全体が一気に割れることがなく、各層内での破断が進行しつつ、第3層側へ向かって次第に破壊を進行させることができるため、各層では破壊は進行しつつも、歪みを伴って衝撃を受け止めることができると考えられる。即ち、結果として、本繊維強化樹脂材料は、高強度でありながら、従来に比べて高い破壊歪を有することができ、上述のトレードオフを抑制した材料とすることができる。
【0053】
上述のような相関、即ち、第2層が第1層より高延性且つ低弾性であり、尚且つ、第3層が第2層より高延性且つ低弾性である相関は、どのように形成してもよいが、結着樹脂Sの違い、及び/又は、強化繊維Wの含有量(含有率)の違いにより形成することができる。具体的には、第1層11が、第1の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、第2層12が、第2の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含み、第3層13が第3の熱可塑性樹脂と連続繊維とを含む場合に、第1の熱可塑性樹脂、第2の熱可塑性樹脂及び第3の熱可塑性樹脂を、互いに異なる3種の熱可塑性樹脂にすることにより達成できる。即ち、第2の熱可塑性樹脂(以下、単に「第2樹脂」ともいう)として、第1の熱可塑性樹脂(以下、単に「第1樹脂」ともいう)よりも高延性(高伸度)な熱可塑性樹脂を選択し、更に、第3の熱可塑性樹脂(以下、単に「第3樹脂」ともいう)として、第2樹脂よりも高延性(高伸度)な熱可塑性樹脂を選択することで実現できる。
【0054】
更に、この際、第1樹脂、第2樹脂及び第3樹脂は、各々、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、及び、これらの複合樹脂から選択される熱可塑性樹脂とすることによって、第1層、第2層及び第3層の各層の接合性を高く維持することができる。このため、各層の層間における破壊を抑制して、積極的な応力集中点の移動を生じさせることができる。
この際、例えば、(1)第1樹脂として熱可塑性樹脂Aを用い、第2樹脂として複合樹脂を用い、第3樹脂として熱可塑性樹脂Bを用いることができる。
更に、例えば、(2)第1樹脂として熱可塑性樹脂Aを用い、第2樹脂として第1の複合樹脂を用い、第3樹脂として第2の複合樹脂を用いることができる。この場合、第1の複合樹脂と、第2の複合樹脂とは、熱可塑性樹脂AとBとの配合割合が各々異なった樹脂とすることができる。
更に、例えば、(3)第1樹脂として第1の複合樹脂を用い、第2樹脂として第2の複合樹脂を用い、第3樹脂として第3の複合樹脂を用いることができる。この場合、第1の複合樹脂と、第2の複合樹脂と、第3の複合樹脂は、熱可塑性樹脂AとBとの配合割合が各々異なった樹脂とすることができる。
【0055】
更に具体的には、上述の熱可塑性樹脂Aとしてポリアミドを選択し、上述の熱可塑性樹脂Bとしてポリオレフィンを選択することができる。これにより、ポリアミドの割合が多い熱可塑性樹脂ほど、低延性且つ高弾性な繊維強化樹脂層を形成することができる。一方で、ポリオレフィンの割合が多い熱可塑性樹脂ほど、高延性且つ低弾性な繊維強化樹脂層を形成することができる。従って、ポリアミドとポリオレフィンとの配合比を変えて用いることにより、3種類の異なる延性と弾性とを有しながら、互いに、親和性を有して、接合力に優れた異なる3層の繊維強化樹脂層を形成することができる。また、前述の通り、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの相容性を向上させるために、相容化剤を用いることができる。
【0056】
更に具体的には、熱可塑性樹脂Aとして植物由来ポリアミドを選択し、熱可塑性樹脂Bとしてポリオレフィン(更には、ポリプロピレン)を選択した場合、複合樹脂としては、植物由来ポリアミドと相容化剤(特に酸変性オレフィン系エラストマー)との溶融混錬物と、ポリオレフィンとの複合樹脂であって、ポリオレフィンを母相とした相構造を有する複合樹脂を選択することができる。この複合樹脂では、植物由来ポリアミドとポリオレフィンと相容化剤との合計を100質量%とした場合に、植物由来ポリアミドを10質量%以上40質量%以下(更には15質量%以上35質量%以下)、ポリオレフィンを40質量%以上75質量%以下(更には45質量%以上70質量%以下)、相容化剤を5質量%以上35質量%以下(更には10質量%以上30質量%以下)で用いることができる。
【0057】
熱可塑性樹脂Aとしてポリアミド6を選択し、熱可塑性樹脂Bとしてポリオレフィン(更には、ポリプロピレン)を選択した場合、複合樹脂としては、ポリアミド6と相容化剤(特に酸変性オレフィン系エラストマー)との溶融混錬物と、数平均分子量が350000以上(更には450000以上)のポリオレフィンとの複合樹脂を選択することができる。この複合樹脂では、ポリアミド6とポリオレフィンと相容化剤との合計を100質量%とした場合に、ポリアミド6を15質量%以上65質量%以下(更には35質量%以上55質量%以下)、ポリオレフィンを15質量%以上65質量%以下(更には20質量%以上45質量%以下)、相容化剤を5質量%以上35質量%以下(更には10質量%以上30質量%以下)で用いることができる。
【0058】
同様に、熱可塑性樹脂Aとしてポリアミド(植物由来ポリアミド又はポリアミド6等)を選択し、熱可塑性樹脂Bとしてポリオレフィン(更には、ポリプロピレン)を選択した場合、ポリアミドと相容化剤(特に酸変性オレフィン系エラストマー)との溶融混錬物と、ポリオレフィンとの複合樹脂であって、ポリアミドを母相とした相とポリオレフィンを母相とした相との両方が存在する共連続相構造を有する複合樹脂を選択することができる。この複合樹脂では、ポリアミドとポリオレフィンと相容化剤との合計を100質量%とした場合に、ポリアミドを15質量%以上70質量%以下(更には35質量%以上65質量%以下)、ポリオレフィンを15質量%以上65質量%以下(更には20質量%以上50質量%以下)、相容化剤を5質量%以上35質量%以下(更には7質量%以上30質量%以下)で用いることができる。
【0059】
そして、前述の通り、強化繊維Wが、表面に付着された粒子W12を有する場合、粒子W12を構成する材料として、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、及び、複合樹脂のうちのいずれかの熱可塑性樹脂を選択することが好ましい。
【0060】
具体的には、(1)第1樹脂として熱可塑性樹脂Aを用い、第2樹脂として複合樹脂を用い、第3樹脂として熱可塑性樹脂Bを用いる場合、第1層をなす連続繊維に付着される粒子には、熱可塑性樹脂A又は複合樹脂を用いることができる。同様に、第2層をなす連続繊維に付着される粒子には、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B又は複合樹脂を用いることができる。同様に、第3層をなす連続繊維に付着される粒子には、熱可塑性樹脂B又は複合樹脂を用いることができる。
【0061】
また、(2)第1樹脂として熱可塑性樹脂Aを用い、第2樹脂として第1の複合樹脂を用い、第3樹脂として第2の複合樹脂を用いる場合、第1層をなす連続繊維に付着される粒子には、熱可塑性樹脂A又は複合樹脂を用いることができる。同様に、第2層をなす連続繊維に付着される粒子には、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B又は複合樹脂を用いることができる。同様に、第3層をなす連続繊維に付着される粒子にも、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B又は複合樹脂を用いることができる。
更に、(3)第1樹脂~第3樹脂までのすべてに互いに異なる複合樹脂を用いる場合、第1層~第3層の各層をなす連続繊維に付着される粒子には、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B又は複合樹脂を用いることができる。
【0062】
また、第2層が第1層より高延性且つ低弾性であり、尚且つ、第3層が第2層より高延性且つ低弾性である相関は、強化繊維Wの繊維含有率が異なる第1層、第2層及び第3層を用いて形成できる。具体的には、繊維含有率が高い層は、繊維含有率が低い層に比べて低延性且つ高弾性となる。従って、第1層、第2層、第3層の順に、繊維含有率が低くなるように配置することにより、第2層が第1層より高延性且つ低弾性であり、尚且つ、第3層が第2層より高延性且つ低弾性である相関を得ることができる。
【0063】
更に、結着樹脂Sの違い、及び、強化繊維Wの含有量の違い、の両方の違いを利用して、第2層が第1層より高延性且つ低弾性であり、尚且つ、第3層が第2層より高延性且つ低弾性である相関を得てもよい。
【0064】
第1層、第2層及び第3層は、どのように積層一体化されていてもよいが、通常、第1層に含まれる結着樹脂と、第2層に含まれる結着樹脂と、が接合することによって、第1層と第2層とが積層一体化される。同様に、第2層に含まれる結着樹脂と、第3層に含まれる結着樹脂と、が接合することによって、第2層と第3層とが積層一体化される。これにより、全体として3層が積層一体化されることとなる。
【0065】
第1層、第2層及び第3層の各繊維強化樹脂層の厚さは限定されず、第1層、第2層及び第3層の各層は、互いに同じ厚さであってもよいし、異なっていてもよい。これらの層は、例えば、0.01μm以上5000μm以下とすることができ、0.1μm以上1000μm以下とすることができ、1μm以上500μm以下とすることができ、5μm以上250μm以下とすることができる。また、繊維強化樹脂層の目付は限定されないが、例えば、0.1g/m以上100000g/m以下とすることができる。
尚、繊維強化樹脂層の層厚は、走査型電子顕微鏡観察で測定できる。より具体的には、繊維強化樹脂材料の積層方向の断面を拡大した静止画像内において、任意の10ヶ所の厚さを実測し、その平均値を当該層厚とすることができる。
【0066】
また、各繊維強化樹脂層は、どのように形成されてもよいが、後述する実施例に示すように、複数層の繊維集合物の層間に、結着樹脂となる樹脂シートを貫挿した積層物(或は、結着樹脂となる複数層の樹脂シートの層間に、複数層の繊維集合物を貫挿した積層物)を、加熱・加圧することにより、結着樹脂を繊維集合物に含浸させて得ることができる。この場合、樹脂シートを構成する結着樹脂の全量が、繊維集合物内に含浸された場合には、強化繊維Wと結着樹脂Sとは万遍なく存在した繊維強化樹脂層となる。一方で、繊維集合物内に、樹脂シートを構成する結着樹脂が十分に含浸されてなお、樹脂シートを構成する結着樹脂が余剰となる場合がある。この場合、各繊維強化樹脂層は、結着樹脂のみからなる樹脂層と、結着樹脂が繊維集合物に含浸された繊維質層と、が交互に配置された繊維強化樹脂層となる。これらは、本発明では、いずれも繊維強化樹脂層である。
【0067】
尚、上述のように、結着樹脂のみからなる樹脂層と、結着樹脂が繊維集合物に含浸された繊維質層と、が交互に配置された繊維強化樹脂層である場合、樹脂層の層厚は小さい方が好ましい。樹脂層の層厚が小さい方が、繊維強化樹脂材料全体としての繊維含有率は大きくなり、機械特性が向上されるからである。このような観点から、樹脂層は、5000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2000μm以下とすることができ、0.2μm以上500μm以下とすることができ、0.3μm以上250μm以下とすることができ、0.4μm以上190μm以下とすることができる。
尚、樹脂層の層厚は、走査型電子顕微鏡観察で測定できる。より具体的には、繊維強化樹脂材料の積層方向の断面を拡大した静止画像内において、任意の10ヶ所の厚さを実測し、その平均値を当該層厚とすることができる。
【0068】
本繊維強化樹脂材料内における繊維強化樹脂層の層数は限定されないが、例えば、2層以上100000層以下とすることができ、3層以上10000層以下とすることができ、4層以上1000層以下とすることができ、5層以上100層以下とすることができる。
【0069】
尚、本繊維強化樹脂材料において、第1層より第2層が高延性且つ低弾性であること、及び、第2層より第3層が高延性且つ低弾性であること、は各層を取り出すか、或は、再現したうえで、オートグラフを用いて、同じ荷重付加速度で三点曲げ試験を行い、試験片の破断時における弾性率と破壊歪とを各2層間で比較することにより得ることができる。
【0070】
本繊維強化樹脂材料の使用態様は限定されず、例えば、第1層側(相対的に低延性且つ高弾性な側)及び第3層側(高延性且つ低弾性な側)のうちのいずれの側を衝撃入力サイドとして利用してもよい。これらのうちでは、第1層側を衝撃入力サイドとして利用することが好ましい。この場合、第3層側を衝撃入力サイドとして利用する場合と比較して、飛躍的に高い機械特性を発揮させることができる。とりわけ、顕著に曲げ応力を得ることができる。具体的には、第1層側を衝撃入力サイドとして利用した場合の曲げ応力は、第3層側を衝撃入力サイドとして利用した場合の曲げ応力に対して、120%以上(更に130%以上300%以下、更に150%以上250%以下)向上させることが可能である。
【0071】
[2]繊維強化樹脂材料の製造方法
前述した繊維強化樹脂材料1は、どのように製造してもよいが、積層工程と熱圧工程とを備える方法により製造することができる。
このうち、積層工程は、繊維集合物となる連続繊維のシート状物と、結着樹脂(第1の熱可塑性樹脂、第2の熱可塑性樹脂又は第3の熱可塑性樹脂)となる樹脂シートと、を積層構造が得られるように積層する工程である(図2図5参照)。
また、熱圧工程は、積層工程を経て得られた積層物を積層方向へ加熱圧縮する工程である(図2図5参照)。
【0072】
上記「シート状物(W)」は、繊維集合物となるシート状のものであって、連続繊維Wをシート状に集合したものである。連続繊維Wについては前述の通りであり、実質的には、繊維強化樹脂材料となる前後において変化されない。また、シート状物Wにおいて、連続繊維Wは、どのように集合されていてもよい。即ち、例えば、連続繊維Wは引き揃えられることによって集合されていてもよいし、織布のように製織されて集合されていてもよいし、編布のように製編されて集合されていてもよいし、不織布のように製織されずに集合されていてもよい。また、シート状物Wは、連続繊維Wが層状に配置された連続繊維層の1層のみからなってよいし、2層以上の連続繊維層から構成されてもよい。
上記「樹脂シート(S)」は、結着樹脂Sが含まれたシート状のものである。この樹脂シートSを構成する熱可塑性樹脂については前述の通りであり、実質的には、繊維強化樹脂材料1となる前後において変化されない。
【0073】
積層工程において、シート状物Wと樹脂シートSとは、目的とする積層構造が得られるように積層すればよい。但し、この積層時には、目的とする積層構造が1回の熱圧工程によって得られるよう積層してもよいが、2回以上の熱圧工程を介して得られるよう積層することもできる。即ち、例えば、第1層となる積層物(図2参照)と、第2層となる積層物(図3参照)と、第3層となる積層物(図4参照)と、を別々に形成したうえで、得られた積層物を更に積層(図5参照)したうえで、加熱圧縮により目的とする繊維強化樹脂材料を得ることもできる。即ち、このように分割積層しながら、最終的に一体化させて繊維強化樹脂材料を得ることができる。
また、各積層時には、熱圧工程以前にシート同士が離間されないように、シート同士を接着する接着剤等を介在させてもよいし、介在させなくてもよい。
【0074】
また、熱圧工程で付与する加熱温度及び加圧圧力は限定されず、用いる熱可塑性樹脂の種類により適宜の範囲にすることができる。例えば、粒子としてポリアミドを選択し、結着樹脂として、前述した複合樹脂とポリアミドとを選択する場合、加熱温度は、140℃以上270℃以下とすることができ、160℃以上260℃以下とすることができ、180℃以上250℃以下とすることができる。また、加圧圧力は、0MPaを超えて9.81MPa以下とすることができ、0MPaを超えて9.0MPa以下とすることができ、0MPaを超えて7.0MPa以下とすることができる。
また、1枚の繊維強化樹脂材料を得るに際して、複数回の熱圧工程を課す場合には、各々工程における加熱温度及び加圧圧力は、同じであってもよく異なってもよい。
【0075】
[3]繊維強化樹脂構造体
本発明の繊維強化樹脂構造体は、前述した繊維強化樹脂材料からなる。この繊維強化樹脂構造体は、繊維強化樹脂成形体といい換えることができる。
本繊維強化樹脂構造体の用途は特に限定されないが、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の外装材、内装材、構造材(ボディシェル、車体、航空機用胴体)及び衝撃吸収材等として用いることができる。これらのうち自動車用品としては、自動車用外装材、自動車用内装材、自動車用構造材、自動車用衝撃吸収材、エンジンルーム内部品等が挙げられる。
【0076】
具体的には、バンパー、スポイラー、カウリング、フロントグリル、ガーニッシュ、ボンネット、トランクリッド、カウルルーバー、フェンダーパネル、ロッカーモール、ドアパネル、ルーフパネル、インストルメントパネル、センタークラスター、ドアトリム、クオータートリム、ルーフライニング、ピラーガーニッシュ、デッキトリム、トノボード、パッケージトレイ、ダッシュボード、コンソールボックス、キッキングプレート、スイッチベース、シートバックボード、シートフレーム、アームレスト、サンバイザ、インテークマニホールド、エンジンヘッドカバー、エンジンアンダーカバー、オイルフィルターハウジング、車載用電子部品(ECU、TVモニター等)のハウジング、エアフィルターボックス、ラッシュボックス等のエネルギー吸収体、フロントエンドモジュール等のボディシェル構成部品などが挙げられる。
【0077】
更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材等が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥等)の表装材、構造材、更には、ユニットバス、浄化槽などとすることができる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等として用いることもできる。また、家電製品(薄型TV、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、携帯電話、携帯ゲーム機、ノート型パソコン等)の筐体及び構造体などの成形体とすることもできる。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]使用材料について
(1-1)シート状物W(PA6粒子付着)
連続繊維Wとして粒子W12(PA6粒子)が付着された炭素繊維を用いた。基炭素繊維W11として東邦テナックス社製の品名「HTS40」(24K)を用いた。この基炭素繊維の表面のサイジング材を除去した後、下記に示すコロイド液に浸漬して30秒間、30Vで電気泳動を行い、PA6粒子が、基炭素繊維表面の約30~100面積%に付着された連続繊維Wのシート状物Wを得た。
コロイド液:PA6粒子(平均粒径12μm)750mg、水75g、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム・SDS)400mg、塩化カリウム50mgを含んだ液体。
【0079】
(1-2)PA6を用いた樹脂シートS(SPA6
樹脂シート:PA6(東レ株式会社製、品名「CM1001」)ペレットを熱プレスにより厚さ70~110μmに成形したシート。
尚、PA6は、熱可塑性樹脂Bであるポリアミド樹脂に対応する。
【0080】
(1-3)複合樹脂Aを用いた樹脂シートS(S
複合樹脂A:PPとPA11と相容化剤とのPP母相を有する複合樹脂(トヨタ紡織株式会社製)、具体的には、ポリプロピレン(重量平均分子量320000のホモポリマー)と、PA11(アルケマ社製、品名「リルサン BMN O」、重量平均分子量18000)と、相容化剤(無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体、三井化学株式会社製、品名「タフマー MH7020」)と、を質量割合55%:25%:20%で溶融混錬した複合樹脂(PA11及び相容化剤の溶融混錬物とPPとの溶融混錬物)。
樹脂シートS:複合樹脂Aを厚さ160μmに成形したシート
尚、PPは、熱可塑性樹脂Aであるポリオレフィン樹脂に対応し、PA11は、熱可塑性樹脂Bであるポリアミド樹脂に対応する。
【0081】
(1-4)複合樹脂Cを用いた樹脂シートS(S
複合樹脂C:PPとPA6と相容化剤とのPA母相を有する複合樹脂(トヨタ紡織株式会社製)、具体的には、ポリプロピレン(重量平均分子量520000のホモポリマー)と、PA6(重量平均分子量18000)と、相容化剤(無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体、三井化学株式会社製、品名「タフマー MH7020」)と、を質量割合10%:60%:30%で溶融混錬した複合樹脂(PA6及び相容化剤の溶融混錬物とPPとの溶融混錬物)。
樹脂シートS:複合樹脂Cを厚さ160μmに成形したシート
尚、PPは、熱可塑性樹脂Aであるポリオレフィン樹脂に対応し、PA6は、熱可塑性樹脂Bであるポリアミド樹脂に対応する。
【0082】
[2]繊維強化樹脂材料の作製
(2-1)実験例1:積層構造Tを有する繊維強化樹脂材料
図2の通り、4枚の樹脂シートS(SPA6)の層間に3枚のシート状物Wを介挿した積層物11"を形成し、この積層物11"に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、第1層11となる第1層用積層物11’を得た。
【0083】
同様に、図3の通り、4枚の樹脂シートS(S)の層間に3枚のシート状物Wを介挿した積層物12"を形成し、この積層物12"に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、第2層12となる第2層用積層物12’を得た。
【0084】
同様に、図4の通り、4枚の樹脂シートS(S)の層間に3枚のシート状物Wを介挿した積層物13"を形成し、この積層物13"に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、第3層13となる第3層用積層物13’を得た。
【0085】
その後、図5の通り、第1層用積層物11’、第2層用積層物12’及び第3層用積層物13’をこの順に積層した積層物1’を形成し、この積層物1’に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、実験例1として、第1層、第2層及び第3層がこの順に積層された積層構造T(衝撃入力側に第1層を有する)を有する繊維強化樹脂材料1(図1参照)を得た。
【0086】
尚、第1層11となる第1層用積層物11’と、第2層12となる第2層用積層物12’第3層13となる第3層用積層物13’と、を比較した場合、第2層12は、第1層11より高延性且つ低弾性であり、第3層は、第2層より高延性且つ低弾性である。
これは、樹脂シートSPA6をなす熱可塑性樹脂であるPA6と、樹脂シートSをなす熱可塑性樹脂である複合樹脂Cと、樹脂シートSをなす熱可塑性樹脂である複合樹脂Aと、を比較した場合、複合樹脂Cは、PA6より高延性且つ低弾性であり、複合樹脂Aは、複合樹脂Cより高延性且つ低弾性であることに起因する。
【0087】
即ち、各熱可塑性樹脂の性質は以下の通りである。
PA6:引張破断伸び35%、曲げ弾性率2800MPa
複合樹脂C:引張破断伸び257%、曲げ弾性率1088MPa
複合樹脂A:引張破断伸び310%、曲げ弾性率850MPa
尚、上記値のうち、引張破断伸びは、ISO527-1に準拠(ISO多目的試験片、引張速度50mm/分)して測定される。また、曲げ弾性率は、後述する[3](3-1)における3点曲げ試験と同様にして測定される。
【0088】
(2-2)実験例2:積層構造Tを有する繊維強化樹脂材料
上記(2-1)の積層構造Tを有する実験例1の繊維強化樹脂材料1の表裏を反転させて、実験例2として、第3層、第2層及び第1層がこの順に積層された積層構造T(衝撃入力側に第3層を有する)を有する繊維強化樹脂材料1(図7参照)を得た。
【0089】
(2-3)実験例3:積層構造Tを有する繊維強化樹脂材料
図10(a)の通り、6枚の樹脂シートS(SPA6)の層間に5枚のシート状物Wを介挿した積層物15"を形成し、この積層物15"に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、上層15となる上層用積層物15’を得た。
同様に、図10(b)の通り、6枚の樹脂シートS(S)の層間に3枚のシート状物Wを介挿した積層物16"を形成し、この積層物16"に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、下層16となる下層用積層物16’を得た。
その後、図10(c)の通り、上層用積層物15’及び下層用積層物16’をこの順に積層した積層物1’を形成し、この積層物1’に対して、温度230℃且つ圧力0.3~5.0MPaの条件で加熱及び加圧を行い、実験例3として、上層及び下層がこの順に積層された積層構造T(衝撃入力側に上層を有する)を有する繊維強化樹脂材料1(図8参照)を得た。
【0090】
(2-4)実験例4:積層構造Tを有する繊維強化樹脂材料
上記(2-3)の積層構造Tを有する実験例3の繊維強化樹脂材料1(図8参照)の表裏を反転させて、実験例4として、下層及び上層がこの順に積層された積層構造T(衝撃入力側に下層を有する)を有する繊維強化樹脂材料1(図9参照)を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
[3]評価について
(3-1)3点曲げ試験
JIS K7074に準じて、各実験例1~4において、各2つの試験片(幅12mm、厚さ2.4mm、長さ100mm)を用い、支点間距離80mm、曲げ速度5mm/分にて、各構造における上側(例えば、構造Tでは第1層11側)から荷重を掛けて、3点曲げ試験を行い、曲げ応力、曲げ弾性率及び歪を測定した。その結果を、2つの試験片による測定値の平均値として表1に示した。
【0093】
(3-2)応力-歪曲線
各実験例1~4の試験片(幅12mm、厚さ2.4mm、長さ100mm)を用い、オートグラフ(型式「AGS-X」、株式会社島津製作所製)に取り付け、支点間距離80mm、曲げ速度5mm/分にて、各構造における上側(例えば、構造Tでは第1層11側)から荷重を掛けて、3点曲げ試験を行うことによって、応力-歪曲線を得た。得られた応力-歪曲線を多重チャートして、図11に示した。
【0094】
(3-3)破断部位の観察
実験例1の試験片の破断部近傍を、デジタルマイクロスコープ(型式「KH-8700」、株式会社ハイロックス製)を用いて、50倍に拡大した画像を取得し、図12に示した。
【0095】
表1、図11及び図12の結果から、実験例2(構造T)及び実験例4(構造T)では、最大応力に達したあとに破断していることが分かる。これに対して、実験例1(構造T)及び実験例3(構造T)は、最大応力に達したあとも歪を大きくしながら、応力を維持していることが分かる。とりわけ、実験例1(構造T)では、歪みを大きくしながら、130~180MPa程の応力を維持できていることが分かる。このように歪ながら応力を維持することができる理由は定かではないものの、図12からは、第1層11(結着樹脂はPA6)はXにおいて破断に至っているものの、第1層11(結着樹脂はPA6)と第2層(結着樹脂は複合樹脂C)との界面における分離を生じていないことが確認される。即ち、PA6と複合樹脂Cとが熱可塑性樹脂Bとして共通しており、複合樹脂C内における含有割合が大きいために、上述の分離が防止されたものと考えられる。また、上述の分離を生じないために、第1層11は、X1に示す通り、破断後に積層方向へずれを生じることによって、結果的に、荷重点が移動されてものと考えることができる。これらの作用により、実験例1では、最大応力に達したあとも長く応力が上昇し続けるという現象を生じたものと考えられる。尚、この現象は、実施した全ての試験片において確認された事象である。
【0096】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここに掲げる開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【符号の説明】
【0097】
1;繊維強化樹脂材料、1’;繊維強化樹脂材料となる積層物、
10;繊維強化樹脂層、
11;第1の繊維強化樹脂層、
12;第2の繊維強化樹脂層、
13;第3の繊維強化樹脂層、
;結着樹脂、S;樹脂シート、
;強化繊維、W11;繊維、W12;粒子、W;シート状物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12