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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022781
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】実装構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20230208BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20230208BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20230208BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
H05K3/28 G
H05K3/28 B
H01L21/56 Z
H01L23/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127852
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520206988
【氏名又は名称】豊光社テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】志保 浩司
(72)【発明者】
【氏名】内山 克博
(72)【発明者】
【氏名】光田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】安 克彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀之
【テーマコード(参考)】
4K022
4M109
5E314
5F061
【Fターム(参考)】
4K022AA13
4K022AA18
4K022AA24
4K022AA42
4K022BA14
4K022CA22
4K022DA01
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA26
4M109EA03
4M109EA08
4M109EA15
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB11
4M109EC09
4M109ED10
4M109EE03
5E314AA24
5E314AA31
5E314AA32
5E314BB06
5E314CC15
5E314FF01
5E314GG26
5F061AA01
5F061BA04
5F061CA26
5F061CB03
5F061CB07
5F061FA06
(57)【要約】
【課題】樹脂シートとの密着性が高い金属めっき層を備え、封止性能が高められた実装構造体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態は、基板と、上記基板上に実装された電子部品と、上記電子部品を覆うように配置され、上記基板及び上記電子部品と密着した樹脂シートと、上記樹脂シートの外面に化合物αを介して積層された金属めっき層とを備え、上記化合物αが、上記樹脂シートと反応して結合することが可能な第1官能基と、上記金属めっき層と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する、実装構造体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に実装された電子部品と、
上記電子部品を覆うように配置され、上記基板及び上記電子部品と密着した樹脂シートと、
上記樹脂シートの外面に化合物αを介して積層された金属めっき層と
を備え、
上記化合物αが、上記樹脂シートと反応して結合することが可能な第1官能基と、上記金属めっき層と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する、実装構造体。
【請求項2】
上記金属めっき層がニッケルを含む、請求項1に記載の実装構造体。
【請求項3】
上記樹脂シートがビスマレイミド樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載の実装構造体。
【請求項4】
上記電子部品が表面弾性波フィルタである、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の実装構造体。
【請求項5】
上記電子部品がフリップチップ実装されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項6】
上記化合物αが芳香環を有し、
上記第1官能基が、上記芳香環に直接結合したアジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項7】
上記芳香環がベンゼン環である、請求項6に記載の実装構造体。
【請求項8】
上記第2官能基が、シラノール基又はアルコキシシリル基である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項9】
上記化合物αが、
下記式(1)又は(2)で表される化合物α1、及び
上記化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
の少なくとも一方である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の実装構造体。
【化1】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Yは、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。Rは、炭素数1から6のアルキル基である。Zは、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R、X、Y及びZが、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のRの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。
上記式(2)中、複数のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR、R及びRのうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【化2】
上記式(3a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
【請求項10】
基板上に電子部品を実装する工程、
上記電子部品を覆うように樹脂シートを配置した状態で、上記樹脂シートを上記基板及び上記電子部品と密着させる工程、
上記樹脂シートの外面に化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程、及び
上記表面処理剤が塗布された樹脂シートの外面に、めっき処理により金属めっき層を形成する工程
を備え、
上記化合物αが、上記樹脂シートと反応して結合することが可能な第1官能基と、上記金属めっき層と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する、実装構造体の製造方法。
【請求項11】
上記表面処理剤を塗布する工程の後に、上記化合物αに対する紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程をさらに備える、請求項10に記載の実装構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に複数の電子部品を高密度に実装する方法として、フリップチップ実装(フェイスダウン実装等とも称される。)が知られている。フリップチップ実装とは、電子部品の電極(配線)を基板上の電極(配線)と向かい合わせて配置し、電極間をバンプにより介して接続する実装方法である。
【0003】
フリップチップ実装においては、電極部の腐食防止等のために、基板と電子部品との間の空隙部に樹脂を充填して電極部を封止することが一般的である。しかし、上記空隙部に樹脂を充填するには手間とコストがかかる。また、例えば電子部品が表面弾性波(SAW)フィルタの場合には、空隙部に樹脂を充填するとフィルタとしての特性が変化してしまうなど、そもそも空隙部を樹脂で充填することができない電子部品も存在する。このような中、基板上にフリップチップ実装した電子部品を樹脂シートで被覆することにより、樹脂を充填せずに空隙部を残したまま封止する方法が検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-010942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上に実装された電子部品を樹脂シートで被覆する場合、放熱性等の要請から、用いられる樹脂シートの厚さには限界がある。そのため、樹脂シートのみによる封止では、水分、酸素等の透過抑制性能(封止性能)が十分ではない。そこで、樹脂シートの表面に金属めっきを施し、封止性能を高めることが考えられる。しかし、樹脂シートの表面に金属めっきを施した場合、金属めっき層の密着性が低く、期待する効果が得られない。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、樹脂シートとの密着性が高い金属めっき層を備え、封止性能が高められた実装構造体、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、基板と、上記基板上に実装された電子部品と、上記電子部品を覆うように配置され、上記基板及び上記電子部品と密着した樹脂シートと、上記樹脂シートの外面に化合物αを介して積層された金属めっき層とを備え、上記化合物αが、上記樹脂シートと反応して結合することが可能な第1官能基と、上記金属めっき層と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する、実装構造体である。
【0008】
本発明の他の一形態は、基板上に電子部品を実装する工程、上記電子部品を覆うように樹脂シートを配置した状態で、上記樹脂シートを上記基板及び上記電子部品と密着させる工程、上記樹脂シートの外面に化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程、及び上記表面処理剤が塗布された樹脂シートの外面に、めっき処理により金属めっき層を形成する工程を備え、上記化合物αが、上記樹脂シートと反応して結合することが可能な第1官能基と、上記金属めっき層と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する、実装構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態によれば、樹脂シートとの密着性が高い金属めっき層を備え、封止性能が高められた実装構造体、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る実装構造体を示す模式的断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る実装構造体の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実装構造体>
図1に示す本発明の一実施形態に係る実装構造体10は、基板11と、基板11上に実装された電子部品12と、電子部品12を覆うように配置され、基板11及び電子部品12と密着した樹脂シート13と、樹脂シート13の外面に化合物αを介して積層された金属めっき層14とを備える。樹脂シート13と金属めっき層14との間には、化合物αが介在し、この層間には、化合物αを含む中間層15が存在する。中間層15は、基板11の表面にまで積層されていてもよい。中間層15は、連続的な層として存在していてもよく、断続的な層として存在していてもよい。中間層15は、通常、非常に薄い層であるため、光学顕微鏡等によって層であることが確認できなくてもよく、樹脂シート13と金属めっき層14との間に、化合物αが存在することが確認できればよい。中間層15は、化合物αに由来する層であってもよい。金属めっき層14も、直接又は化合物αを介して基板11の表面にまで積層されていてよい。
【0012】
樹脂シートに対して化合物αを介さずに直接金属めっき層を設けた場合、上述のように金属めっき層の樹脂シートに対する密着性が低い。これは、樹脂シートの薄さから、樹脂シートが金属めっき層の内部応力を十分に緩和することができず、樹脂シートと金属めっき層とが特に強固に結合していないと剥離等が生じ易くなるためと考えられる。これに対し、本発明の一実施形態に係る実装構造体10においては、樹脂シート13と金属めっき層14との間に、所定の2種の官能基を有する化合物αが介在し、化合物αを介して樹脂シート13と金属めっき層14とが強固に結合していると考えられる。このため、当該実装構造体10においては、樹脂シート13と金属めっき層14との密着性が高く、封止性能が高められている。なお、化合物αの一部又は全部は、樹脂シート13及び金属めっき層14の少なくとも一方を構成する物質と反応し、化学結合した状態で層間に存在してよい。ここで化学結合とは、共有結合、イオン結合、分子間力による結合等を意味し、好ましくは共有結合又はイオン結合を意味する。
【0013】
(基板)
基板11は、板状の絶縁性基材16と、絶縁性基材16の表面に形成された配線パターン17とを有する配線基板である。絶縁性基材16は、例えば、シリコン基材、セラミック(アルミナ、マグネシア、炭化珪素等)基材、樹脂(ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フッ素系樹脂等)、ガラス基材等を用いることができる。絶縁性基材16として、複数種の材料から形成された基材を用いることもできる。配線パターン17は、通常、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属から形成された金属配線が好適に採用される。
【0014】
(電子部品)
電子部品12は、基板11の一方の面側(図1における上面側)に配置されている。基板11に実装される電子部品12としては特に限定されず、弾性表面波(SAW)フィルタ、水晶振動子、圧電振動子、フォトカプラ、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory、消去プログラム可能読取り専用メモリ)、CCD(Charge Coupled Device、荷電結合素子)、半導体レーザ、発光ダイオード、トランジスタ等が挙げられる。これらの中でも、電子部品12がSAWフィルタである場合、上述のように、特性上、基板11と電子部品12との間の空隙に樹脂を充填することができない。このため、本発明は、電子部品12がSAWフィルタである形態に好適に適用することができる。なお、電子部品12がSAWフィルタである場合、電子部品12における基板11と対向する側の面(図1における下面)には、通常、くし歯型電極パターンを有するトランスデューサ部(図示しない)が設けられる。
【0015】
図1の形態において、電子部品12は、基板11上にフリップチップ実装されている。すなわち、電子部品12(チップ)には、一方の面(図1における下面)に配線パターン18が形成されており、基板11上の配線パターン17と、電子部品12上の配線パターン18とが対向して配置されている。基板11上の配線パターン17(電極)と、電子部品12上の配線パターン18(電極)とは、バンプ19を介して電気的に接続されている。バンプ19は、例えば金、銀、銅、各種はんだ、導電性樹脂等の導電性材料から形成されている。
【0016】
なお、本発明の他の実施形態において、電子部品は、フリップチップ実装以外の実装形式により基板に実装されていてよい。また、基板には複数又は複数種の電子部品が実装されていてよい。
【0017】
(樹脂シート13)
樹脂シート13は、電子部品12を覆うように、基板11上に配置されている。また、樹脂シート13は、基板11及び電子部品12と密着している。例えば図1における基板11の上面の一部及び電子部品12の上面は、樹脂シート13と密着している。電子部品12の側面は、樹脂シート13と密着していてもよく、していなくてもよい。電子部品12は、基板11上において樹脂シート13により封止された状態となっている。
【0018】
樹脂シート13を構成する樹脂としては特に限定されないが、基板11及び電子部品12との良好な密着性等の観点からは、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等の硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂及びビスマレイミド樹脂がより好ましく、ビスマレイミド樹脂がさらに好ましい。ビスマレイミド樹脂を含む樹脂シート13は、強度、密着性、高温耐性、低吸湿性及び酸化安定性に優れ、さらに化合物αを介した金属めっき層14との密着性にも優れる。ビスマレイミド樹脂は、ビスマレイミドの単独重合体であってもよく、ビスマレイミドと他の単量体との共重合体(例えば、ビスマレイミドトリアジン樹脂等)であってもよい。
【0019】
樹脂シート13を構成する樹脂には、熱可塑性樹脂を用いてもよい。また、樹脂シート13を構成する樹脂としては、上記した絶縁性基材16を構成する各種樹脂等も挙げられる。
【0020】
樹脂シート13における樹脂の含有量の下限としては、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%又は95質量%がさらに好ましい。この含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0021】
樹脂シート13は、1種又は2種以上の樹脂を含有することができる。また、樹脂シート13には、必要に応じて、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0022】
樹脂シート13としては、接着剤が塗布された樹脂シート等を用いることもできる。
【0023】
樹脂シート13の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。樹脂シート13の平均厚さを上記上限以下とすることで、放熱性等を高めることができる。但し、一般的に樹脂シート13がより薄い場合、樹脂シート13が変形し易いこと、金属めっき層14の内部応力の緩和効果が小さいことなどにより、金属めっき層14の密着性が低下する傾向にある。そのため、樹脂シート13の平均厚さが上記上限以下である場合に、化合物αを介することにより金属めっき層14の密着性が高まるという改善効果が顕著に奏される。一方、樹脂シート13の平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましく、3μmがさらに好ましく、5μm又は10μmがよりさらに好ましい。樹脂シート13の平均厚さを上記下限以上とすることで、封止性能をより高めることなどができる。なお、本明細書において「平均厚さ」とは、任意の10ヶ所で測定した厚さの平均値を意味する。
【0024】
(金属めっき層)
金属めっき層14は、樹脂シート13の外面に化合物αを介して積層されている。金属めっき層14は、めっき処理により形成された金属層である。金属めっき層14は、金属めっき被膜であってよい。金属めっき層14は、無電解めっきによって形成されていてもよく、電解めっきによって形成されていてもよい。金属めっき層14は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。金属めっき層14における金属の含有量の下限は、90質量%が好ましく、99質量%がより好ましい。金属めっき層14における金属の含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0025】
金属めっき層14に含まれる金属としては、めっき処理により層を形成することが可能である各種金属を用いることができる。金属めっき層14に含まれる金属の具体例としては、銅、ニッケル、銀等が挙げられ、ニッケルが好ましい。金属めっき層14がニッケルを含む場合、金属めっき層14の密着性がより高まる。金属めっき層14は、ニッケルめっき層であってよい。
【0026】
金属めっき層14の平均厚さの下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。金属めっき層14の平均厚さを上記下限以上とすることで、封止性能等を高めることができる。一方、金属めっき層14の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。金属めっき層14の平均厚さを上記上限以下とすることで、金属めっき層14の内部応力を低減し、密着性を高めることなどができる。
【0027】
(化合物α、中間層)
以下、樹脂シート13と金属めっき層14との間に介在する化合物αについて説明する。実装構造体10において、化合物αは、樹脂シート13と金属めっき層14との間を接合している。換言すれば、化合物αは、中間層15を形成している。中間層15には、化合物α以外の成分が含まれていてもよい。化合物αは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
なお、図1の形態とは異なり、基板11と樹脂シート13との間にも化合物αが介在していてもよい。あるいは、基板11と樹脂シート13との間に化合物αが介在するよう、基板11の表面(図1における基板11の上面)に、化合物αを含む層を設けてもよい。このような場合、基板11に対する樹脂シート13の密着性が高まり、当該実装構造体10の封止性能をより高めることができる。さらに、樹脂シート13の内面にも化合物αを含む層が設けられていてもよい。このような場合、基板11及び電子部品12に対する樹脂シート13の密着性を高めることができる。
【0029】
化合物αは、2つの物質の接合体(結合体)を界面分子結合により形成させるための材料であると考えられる。界面分子結合は、2つの物質の界面に、ある化合物を介在させ、化学反応により各物質と上記化合物とをそれぞれ化学結合させて上記2つの物質を結合させること、又はその結果生じる結合を意味する。
【0030】
化合物αは、樹脂シート13と反応して結合することが可能な第1官能基と、金属めっき層14と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する。
【0031】
第1官能基は、樹脂と反応して結合する基であることが好ましい。第1官能基としては、アミノ基、ヒドラジノ基、ヒドロキシ基、チオール基、オキシラニル基、オキセタニル基、カルボキシ基、アジリジニル基、アジド基、アジドスルホニル基、ジアゾメチル基等が挙げられ、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基(以下、「アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基」をアジド基等とも称する。)が好ましい。アジド基等は、化学反応により、主に、樹脂等の有機物と「-N-C-タイプ」等の化学結合を形成することができる。第1官能基がアジド基等である場合、樹脂シート13とより強固な結合が可能となる。
【0032】
化合物αは、芳香環を有することが好ましい。さらには、化合物αは芳香環を有し、第1官能基が、この芳香環に直接結合したアジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基であることがより好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭素環、及びチオフェン環、フラン環、トリアジン環等の芳香族複素環等が挙げられる。芳香環としては、これらの中でも、芳香族炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。アジド基等がベンゼン環に直接結合している場合、そうでない場合と比べて、紫外線照射又は加熱により、アジド基等から窒素分子(N)が脱離する反応の反応速度が大きくなる。従って、ベンゼン環にアジド基等が直接結合した化合物αを用いることで、比較的低温度及び短時間の加熱処理で且つ紫外線照射を行わなくても、良好な密着性が発現される。このためこのような化合物αを用いることで、効率的な処理が可能となる。また、ベンゼン環にアジド基等が直接結合した化合物αを用いることで、樹脂シート13の劣化が生じ難い長波長の紫外線を照射した場合でも、良好な密着性が発現される。
【0033】
第2官能基は、金属と反応して結合する基であることが好ましい。第2官能基としては、アミノ基、チオール基、カテコール基、カルボキシ基、ホスホン酸基、シラノール基、アルコキシシリル基等が挙げられ、シラノール基又はアルコキシシリル基が好ましい。シラノール基及びアルコキシシリル基は、化学反応により、主に、金属等の無機物Mと「-Si-O-M-タイプ」の化学結合を形成することができる。第2官能基がこれらの基である場合、金属めっき層14とより強固な結合が可能となる。
【0034】
アルコキシシリル基とは、ケイ素原子にアルコキシ基(オキシ炭化水素基)が結合した基をいう。アルコキシ基とは、酸素原子に炭化水素基が結合した基をいい、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ビニルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基の数は、1、2又は3であってよく、3が好ましい。アルコキシシリル基においては、ケイ素原子にアルコキシ基以外の基が結合していてもよく、このような基としては、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、水素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基がより好ましい。アルコキシシリル基の例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリベンジルオキシシリル基などが挙げられる。また、通常、アルコキシシリル基が加水分解することで、シラノール基が生じる。
【0035】
化合物αの好適な一形態としては、
下記式(1)又は(2)で表される化合物α1、及び
化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2
が挙げられる。化合物αが、化合物α1及び化合物α2のうちの少なくとも一方である場合、比較的低温度及び短時間の加熱処理で且つ紫外線照射を行わなくても、良好な密着性が発現される。このためこれらの化合物を用いることで、効率的な処理が可能となる。
【0036】
(化合物α1)
化合物α1は、下記式(1)又は(2)で表される化合物である。すなわち、化合物α1は、第1官能基としてベンゼン環に直接結合したアジド基等を有し、第2官能基としてシラノール基又はアルコキシシリル基を有する化合物αの一例である。
【0037】
【化1】
【0038】
式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。Yは、単結合、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、-NHR-で表される基、又は下記式(3a)若しくは(3b)で表される基である。Rは、炭素数1から6のアルキル基である。Zは、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。mは、1から3の整数である。R、X、Y及びZが、それぞれ複数の場合、これらはそれぞれ独立して上記定義を満たす。但し、1又は複数のRの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。
【0039】
式(2)中、複数のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、炭素数1から12のアルコキシ基、又はヒドロキシ基であり、複数のR、R及びRのうちの少なくとも1つは、炭素数1から12のアルコキシ基である。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基である。Xは、アジド基、アジドスルホニル基、又はジアゾメチル基である。複数のZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の末端若しくは炭素-炭素結合間に-NH-、-O-、-S-及び-S(O)-のうちの1つ以上の基を含む基である。
【0040】
【化2】
【0041】
式(3a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
【0042】
、R、R及びRで表される炭素数1から12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
、R、R及びRで表される炭素数1から12のアルコキシ基としては、上記したアルコキシ基等が挙げられる。
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
及びRで表される1価の有機基としては、1価の炭化水素基、アルコキシ基、-Y-Z-Si-R (Y、Z及びRは、式(1)中のY、Z及びRとそれぞれ同義である。)で表される基、-COO-N-(-Z-SiR(Z、R、R及びRは、式(2)中のZ、R、R及びRとそれぞれ同義である。)、後述する式(14)で表される基等が挙げられる。
で表される炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0043】
式(1)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
としては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。Xは、Y等を含む基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
としては、アミド基が好ましく、*-CONH-(*は、ベンゼン環との結合部位を示す。)で表されるアミド基がより好ましい。
としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
mは、3が好ましい。
【0044】
式(2)で表される化合物の好適な形態は以下の通りである。
、R及びRとしては、炭素数1から12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1から6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1から3のアルコキシ基がさらに好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、アジド基及びアジドスルホニル基が好ましい。Xは、-COO-N-(-Z-SiRで表される基に対してパラ位又はメタ位に結合していることが好ましい。
としては、炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、炭素数2から6のアルキレン基がより好ましい。
【0045】
化合物α1は、下記式(11)、(12)又は(13)で表される化合物であってもよい。
【0046】
【化3】
【0047】
式(11)~(14)中、X10、X11及びX12は、それぞれ独立して、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基である。E11及びE12は、それぞれ独立して、カルボニル基、メチレン基又は炭素数2から12のアルキレン基である。Y11、Y12、Y13及びY14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、又は-J13-Si(OA103-k(R10で表される基である。J11、J12及びJ13は、それぞれ独立して、メチレン基、炭素数2から12のアルキレン基、又は炭素数2から12のアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子(-O-)を含む基である。Y15は、-R15又は-OA15で表される基である。Y16は、-R16又は-OA16で表される基である。A10、A15及びA16は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基、ベンジル基又は水素原子である。R10、R15及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基又はベンジル基である。kは、0から2の整数である。Q10は、水素原子又は式(4)で表される有機基である。式(11)及び(12)において、Y11とY12との少なくとも一方は、酸素原子を含む。式(13)において、Y15とY16との少なくとも一方は酸素原子を含む。式(13)において、ベンゼン環に結合している基X11及びX12は、それぞれ独立して、パラ位又はメタ位に結合している。
【0048】
(化合物α1の合成方法)
化合物α1の合成方法は特に限定されないが、例えば、アルコキシシリル基と、アルコキシシリル基以外の反応性基aとを有するシランカップリング剤Aと、上記反応性基aと結合反応可能な反応性基bと、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物Bとを公知の方法により反応させることにより得ることができる。反応性基aと反応性基bとの組み合わせとしては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基等と、カルボキシ基との組み合わせなどが挙げられる。
【0049】
シランカップリング剤Aとしては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン、ビス(3-アミノプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
化合物Bとしては、アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸、3-(4-アジドフェニル)プロピオン酸、これらのカルボン酸の塩化物、アジドアニリン、アジドフェノール等が挙げられる。
【0051】
(化合物α2)
化合物α2においては、通常、未反応のアルコキシシリル基が残存している。すなわち、化合物α2も、第1官能基としてベンゼン環に直接結合したアジド基等を有し、第2官能基としてシラノール基又はアルコキシシリル基を有する化合物αの一例である。
【0052】
化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α2は、化合物α1に由来する構造単位Aを有する。化合物α2は、構造が化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物と同一であれば、他の合成方法により得られたものであってもよい。化合物α2は、シルセスキオキサン化合物であることが好ましい。化合物α2は、アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基の少なくとも一方を有することが好ましく、ヒドロキシシリル基を有することがより好ましい。
【0053】
構造単位Aとしては、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。下記式(4)で表される構造単位は、mが3である式(1)で表される化合物α1に由来する構造単位である。
【0054】
【化4】
【0055】
式(4)中、R、R、X、Y及びZは、式(1)中のR、R、X、Y及びZとそれぞれ同義である。aは、0から2の整数である。
【0056】
式(4)中のR、R、X、Y及びZの具体例は、式(1)中のR、R、X、Y及びZの具体例と同様である。式(4)中のRは、反応性等の観点からはヒドロキシ基又はアルコキシ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。aは、1が好ましい。
【0057】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Aの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0058】
化合物α2は、アミノ基(-NH)を含む構造単位Bを有することが好ましい。化合物α2が構造単位Bを有する場合、化合物α2の水溶性が向上するなどの利点がある。構造単位Bを与える加水分解性シラン化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
化合物α2における全構造単位に対する構造単位Bの含有量の下限は、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限は、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0060】
化合物α2は、構造単位A及び構造単位B以外の構造単位Cを有していてもよい。構造単位Cを与える加水分解性シラン化合物としては、下記式(C)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【化5】
【0062】
式(C)中、Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数2から10のアルケニル基、炭素数6から15のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数2から6のアシル基、又は炭素数6から15のアリール基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。xは0から3の整数を表す。また、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。
【0063】
及びRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が挙げられる。Rで表されるアルケニル基の具体例としては、ビニル基、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。R及びRで表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。Rで表される反応性基を有する有機基としては、イソシアネート基、イソシアヌレート構造とアルコキシシリル基とを有する基等が挙げられる。Rで表される反応性基を有する有機基の炭素数としては、1以上40以下が好ましい。Rで表されるアシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。
【0064】
式(C)において、x=0の場合は4官能性シラン、x=1の場合は3官能性シラン、x=2の場合は2官能性シラン、x=3の場合は1官能性シランである。
【0065】
式(C)で表される加水分解性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、p-メトキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸などの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn-ブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0066】
また、式(C)で表される加水分解性シラン化合物には、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を5個以上有する化合物も含まれる。
【0067】
加水分解性シラン化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
化合物α2の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくはGPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1,000以上100,000以下、さらに好ましくは2,000以上50,000以下である。
【0069】
(化合物α2の合成方法)
化合物α2は、(i)化合物α1を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得る方法、(ii)加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であって、構造単位Bを有する化合物に対して、「アミノ基と結合反応可能な反応性基と、ベンゼン環と、アジド基、アジドスルホニル基及びジアゾメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物X」(アジド安息香酸、アジドスルホニル安息香酸、ジアゾメチル安息香酸等)を反応させて得る方法などが挙げられる。上記(ii)においては、構造単位B中のアミノ基が化合物Xと反応することにより、構造単位Aが形成される。
【0070】
化合物α2を得るための加水分解縮合には、一般的な方法を用いることができる。例えば、加水分解性シラン化合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、30から150℃で0.5から100時間程度加熱撹拌する。なお、撹拌中、必要に応じて、蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)及び縮合副生物(水)等の留去を行ってもよい。
【0071】
必要に応じて添加される触媒に特に制限はないが、酸触媒及び塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸又はその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の添加量は、加水分解性シラン化合物100質量部に対して0.01から10質量部が好ましい。
【0072】
化合物α2を含む溶液の貯蔵安定性の観点から、加水分解縮合後の溶液には触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法としては特に制限は無いが、好ましくは水洗浄又はイオン交換樹脂の処理が挙げられる。水洗浄とは、溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーターで濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
【0073】
加水分解縮合の反応に用いる溶媒は特に制限はないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物が用いられる。アルコール性水酸基を有する化合物は特に制限されないが、好ましくは大気圧下の沸点が110から250℃である化合物である。
【0074】
アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
また、溶媒としては、アルコール性水酸基を有する化合物と共にその他の溶媒を用いてもよい。その他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、アセト酢酸エチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル類、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0076】
化合物α1及び化合物α2としては、より具体的には下記式(15)、(16)、(17)、(18a)、(18b)、(18c)又は(19)で表される化合物を挙げることができる。式(15)、(16)、(17)、(18a)、(18b)又は(18c)で表される化合物は、化合物α1の具体例である。式(19)で表される化合物は、化合物α2の具体例である。式(15)、(16)及び(17)中、Etはエチル基を表す。
【0077】
【化6】
【0078】
【化7】
【0079】
式(19)で表される化合物は、式(19)中に示された3種類の構造単位が、それぞれl個、m個、n個結合して構成されるシルセスキオキサン化合物であり、Xはアジド基であり、lは0以上の任意の整数、mは1以上の任意の整数、nは0以上の任意の整数である。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は-O-である。Rは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数2以上10以下のアルケニル基、炭素数6以上15以下のアリール基、又は反応性基を有する有機基であり、複数のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体及び置換体のどちらでもよく、特性に応じて選択できる。式(19)で表される化合物(「IMB-4KP」)は、例えば、l:m:n=1:1:0の場合には水溶性である。一般に、この化合物は、比l/(m+n)の値が0に近い場合(例えば、0.2未満又は0.1未満)を除いて水溶性である。すなわち、比l/(m+n)の値の下限は、水溶性の観点から、0.2が好ましく、0.5がより好ましく、1がさらに好ましい。比l/(m+n)の値の上限は、5が好ましく、2がより好ましい。
【0080】
化合物αの他の形態としては、
下記式(5)で表される化合物α3、及び
化合物α3を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物α4
が挙げられる。
【0081】
(化合物α3)
化合物α3は、下記式(5)で表される化合物である。
【0082】
【化8】
【0083】
式(5)中、X21は、第1官能基である。X22は、第1官能基又は-N(R21で表される基である。複数のR21は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上24以下の炭化水素基、又は-R22-Si(OR233-p(R24で表される基である。R22は、メチレン基又は炭素数2以上12以下のアルキレン基である。R23は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基である。R24は、炭素数1以上4以下のアルキル基である。pは、0以上2以下の整数である。但し、式(5)で表される化合物が有する複数のR21のうちの少なくとも一つは、-R22-Si(OR233-p(R24で表される基である。
【0084】
21又はX22で表される第1官能基としては、アミノ基、チオール基、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基が好ましく、アジド基、アジドスルホニル基又はジアゾメチル基がより好ましく、アジド基がさらに好ましい。
【0085】
22は、第1官能基であることが好ましい。
【0086】
化合物α3としては、例えば(株)いおう化学研究所製のn-TES、P-TES、A-TES等を用いることができる。
【0087】
化合物α3の具体例としては、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアジド-6-(4-トリエトキシシリルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン、6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、2,4-ジアミノ-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0088】
(化合物α4)
化合物α4は、化合物α3を含む加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物である。化合物α4は、化合物α1に替えて化合物α3が用いられていること以外は化合物α2と同様の加水分解縮合物である。
【0089】
中間層15には、化合物α以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、化合物αを合成したときの未反応物、副反応生成物等が挙げられる。但し、中間層15における化合物αの含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。このように、中間層15における化合物αの含有割合が高いことで、層間の接合性(結合性)をより高めることができる。
【0090】
上述のように、中間層15は、通常、非常に薄い層であり、化合物αが存在すれば、十分な密着性の向上効果が確認できる。従って中間層15の平均厚さの下限は特に限定されず、1nmであってもよく、10nmであってもよく、50nmであってもよく、100nmであってもよい。一方、中間層15の一層の平均厚さの上限は、例えば10μmであってもよく、1μmであってもよく、100nmであってもよく、50nmであってもよく、10nmであってもよい。
【0091】
実装構造体10は、SAWフィルタ、水晶振動子、圧電振動子、フォトカプラ、EPROM、CCD、半導体レーザ、発光ダイオード、トランジスタ等の各種電子部品12が実装された部品として、各種電気機器等に用いることができる。
【0092】
<実装構造体の製造方法>
本発明の一実施形態に係る実装構造体の製造方法は、
基板上に電子部品を実装する工程(実装工程)、
上記電子部品を覆うように樹脂シートを配置した状態で、上記樹脂シートを上記基板及び上記電子部品と密着させる工程(密着工程)、
上記樹脂シートの外面に化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程(表面処理剤塗布工程)、及び
上記表面処理剤が塗布された樹脂シートの外面に、めっき処理により金属めっき層を形成する工程(金属めっき層形成工程)
を備える。
【0093】
当該製造方法において、表面処理剤に含まれる化合物αは、樹脂シートと反応して結合することが可能な第1官能基と、金属めっき層と反応して結合することが可能な第2官能基とを有する。化合物αの具体例及び好適例は、本発明の一実施形態に係る実装構造体において説明した通りである。当該製造方法によれば、樹脂シートとの密着性が高い金属めっき層を備え、封止性能が高められた実装構造体を製造することができる。また、当該製造方法は、基板と電子部品との間に樹脂を充填することで封止する方法等に比べて、簡便に電子部品を封止することができる。
【0094】
なお、本明細書において「塗布する」とは、液体を対象の物体に「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことをいい、刷毛等により塗ることの他、滴下、スプレー、スピンコート、ロール、インクジェット等の印刷、浸漬等の方法により「付着させる」又は「接触状態で存在させる」ことを含む。
【0095】
当該製造方法は、表面処理剤塗布工程の後に、塗布された化合物αに対する紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程(UV照射・加熱工程)をさらに備えることが好ましい。以下、本発明の一実施形態に係る実装構造体の製造方法について、図2のフロー図を参照に順に詳説する。
【0096】
図2のフロー図で示す実装構造体の製造方法は、実装工程S1、密着工程S2、表面処理剤塗布工程S3、UV照射・加熱工程S4、及び金属めっき層形成工程S5をこの順に備える。
【0097】
表面処理剤塗布工程S3及びUV照射・加熱工程S4の組み合わせは、繰り返し複数回行ってもよい。このようにすることで、十分な量の化合物αを、樹脂シート外面に設けることができる。
【0098】
化合物αを含む表面処理剤の塗布は、表面処理剤塗布工程S3とは別に、密着工程S2の前の基板表面に対して行ってもよい。このようにすることで、基板と樹脂シートとの間の密着性を高めることができる。また、表面処理剤塗布工程S3は、密着工程S2の前に行ってもよい。すなわち、樹脂シートに表面処理剤を塗布した後、樹脂シートを密着工程に供してもよい。
【0099】
(実装工程)
実装工程S1は、基板上に電子部品を実装する工程である。実装工程S1は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、フリップチップ実装の場合、基板上の配線パターン(電極)と、電子部品上の配線パターン(電極)とが対向するように、電子部品を基板上に配置し、バンプ等を介して両配線パターン間を電気的に接続する。なお、フリップチップ実装以外の実装形式の場合も、従来公知の各種方法を採用することができる。
【0100】
(密着工程)
密着工程2は、電子部品を覆うように樹脂シートを配置した状態で、樹脂シートを基板及び電子部品と密着させる工程である。電子部品を樹脂シートで覆った際、樹脂シートの周縁部分は基板の表面と接した状態となっている。このように電子部品を樹脂シートで覆い、樹脂シートを基板及び電子部品と密着させることで、電子部品が封止された状態となる。
【0101】
基板及び電子部品への樹脂シートの密着は、例えば樹脂シートが熱硬化性又は活性エネルギー線硬化性の樹脂シートである場合、樹脂シートを押圧した状態で加熱又は活性エネルギー線照射することにより行うことができる。また、接着剤が塗布された樹脂シートを用いる場合、接着剤が塗布された面が基板及び電子部品と接触するように樹脂シートを配置し、樹脂シートを押圧することなどで、樹脂シートを基板及び電子部品へ密着させることができる。
【0102】
(表面処理剤塗布工程)
表面処理剤塗布工程S3は、樹脂シートの外面に化合物αを含む表面処理剤を塗布する工程である。この際、表面処理剤は、樹脂シートの外面以外の領域(例えば、基板の表面等)にまで塗布されてもよい。
【0103】
また、表面処理剤塗布工程S3の前に、脱脂洗浄工程及び前処理工程を設けてもよい。脱脂洗浄工程は、例えば、溶剤等を用いて樹脂シートの外面を洗浄する工程である。例えば、樹脂シートをアセトン、エタノール等の溶剤に浸漬して超音波洗浄し、乾燥させることにより行うことができる。脱脂洗浄工程は、密着工程S2の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0104】
前処理工程は、樹脂シートの外面に対して前処理を行う工程である。前処理としては、樹脂シートに対して酸素プラズマ、大気プラズマ等のプラズマで処理するプラズマ処理、樹脂シートの外面にコロナ放電照射を行うコロナ放電処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、シランカップリング剤等のカップリング剤を混入した燃焼ガスの燃焼炎にさらすイトロ処理、例えば樹脂シートがフッ素樹脂を含む場合の樹脂シートをアルカリ金属溶液に浸漬して脱フッ素化を行う脱フッ素化処理等が挙げられる。各前処理を施した樹脂シートに対して、シリコンクリーナ、酸クリーナ等の洗浄溶剤に浸漬して超音波洗浄することが好ましい。前処理工程は、密着工程S2の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0105】
化合物αを含む表面処理剤は、通常、化合物αと溶媒とを含む溶液である。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セルソルブ、カルビトール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、フタル酸メチル等のエステル、テトラヒドロフラン(THF)、エチルブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエーテル、水等を用いることができる。また、加水分解縮合に用いられる溶媒として例示した溶媒も用いることができる。これらの中でも、アルコール、エーテル及び水が好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0106】
表面処理剤(化合物αを含む溶液)における化合物αの濃度としては、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。化合物αの濃度を上記範囲とすることで、適度な厚さの化合物αの層(図1における中間層15)を効果的に形成することなどができるため、層間の結合性(接着性)を高めることができる。
【0107】
表面処理剤は、化合物α及び溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、化合物αを合成したときの未反応物、副反応生成物、界面活性剤等を挙げることができる。但し、当該表面処理剤における全固形分(溶媒以外の全成分)に対する化合物αの含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。当該表面処理剤における全固形分に対する化合物αの含有量は100質量%であってもよい。
【0108】
表面処理剤を樹脂シートの外面に塗布する方法としては、従来公知のコーティング方法、例えば、スプレーコート方式、ディップコート方式、インクジェット方式等が挙げられる。表面処理剤を塗布したときの塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の下限としては、例えば100nmが好ましく、1μmがより好ましく、3μmがさらに好ましい。一方、この塗膜の厚さ(ウェット厚さ)の上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。ディップコート方式の際の浸漬時間としては、例えば3秒以上60秒以下が好ましい。
【0109】
(UV照射・加熱工程)
UV照射・加熱工程S4は、樹脂シートの外面に塗布された化合物α(化合物αを含む表面処理剤)に対して、紫外線照射及び加熱の少なくとも一方の処理を行う工程である。この紫外線照射は、例えば230nm以上300nmの波長領域を含む紫外線を照射することが好ましい。また、加熱温度の下限としては、例えば80℃が好ましく、90℃がより好ましい。加熱温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。加熱時間の下限としては、1分が好ましく、3分がより好ましい。また、加熱時間の上限としては、60分が好ましく、30分がより好ましく、20分又は10分がさらに好ましい。
【0110】
UV照射・加熱工程S4は、生産効率等の点から、加熱処理のみを行うことが好ましい場合がある。上述のように、化合物αとして化合物α1及び化合物α2の少なくとも一方を用いた場合、UV照射・加熱工程4は、UV照射を行わず、比較的短時間低温度(例えば10分100℃)の加熱処理であっても、化合物αによる金属めっき層の良好な密着性が発現される。
【0111】
また、UV照射・加熱工程S4の前に、塗布された表面処理剤を乾燥させる工程を別途設けてもよいし、このUV照射・加熱工程S4において、塗布された表面処理剤を乾燥させてもよい。なお、紫外線照射と加熱とを併用してもよい。紫外線照射と加熱とを併用する場合、いずれか一方を先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0112】
(金属めっき層形成工程)
金属めっき層形成工程S5は、表面処理剤が塗布され、化合物αが設けられた樹脂シートの外面に、めっき処理により金属めっき層を形成する工程である。
【0113】
金属めっき方法は、特に限定されず、従来の無電解めっき、電解めっき等の湿式めっきにより行うことができる。めっき処理の前に、表面処理剤が塗布された樹脂シートの外面にめっき触媒を付着させてもよい。また、所定領域のみに金属めっき層が形成されるように、金属めっき層を形成させない領域をマスクした状態でめっき処理を行ってもよい。
【0114】
例えば、無電解めっきにより銅をめっきする場合、めっき液としては、硫酸銅と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものを用いることが好ましい。電解めっきにより銅をめっきする場合、めっき液として硫酸銅と、硫酸と、水性媒体とを含有するものを用いることが好ましい。無電解めっき及び電解めっきの順に双方を行ってもよい。また、所望する金属めっき層の厚さになるように、めっき処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することが好ましい。
【0115】
めっき処理の後、めっき応力を低減させるため、アニール処理等を施してもよい。すなわち、当該製造方法は、金属めっき層形成工程後に、アニール処理をする工程をさらに備えていてもよい。アニール処理における加熱温度としては、例えば70℃以上150℃以下が好ましい。また、アニール処理における加熱時間としては、10分以上2時間以下が好ましい。但し、電子部品に与える影響を抑えるため、アニール処理を行わないことが好ましい場合もある。
【0116】
<その他の実施形態>
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0117】
例えば、本発明の実装構造体は、上述のように、フリップチップ実装以外の実装形式によって電子部品が実装されていてもよく、樹脂シートの外面以外の部分にまで金属めっき層が積層されていてもよい。また、本発明の実装形態は、上記した製造方法以外の方法により製造してもよい。
【実施例0118】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0119】
以下の合成物の同定には、(株)島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計IRTracer-100、日本電子(株)製の核磁気共鳴スペクトル装置 NMR spectrometer Z、及び(株)島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2020 NXを用いた。
【0120】
[合成例]各種化合物αの合成
(1)上記式(19)で表される化合物(IMB-4KP)の合成
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)をTHF(テトラヒドロフラン)に溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物である原料オリゴマー(米国Gelest)とTEA(トリエチルアミン)とをTHFに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物を精製して目的物を得た。この目的物が、式(19)で表されるシルセスキオキサン化合物(IMB-4KP)であった。スペクトルから、生成物においては、式(19)におけるlとmとnとの比が、l:m:n=1:1:0であることを確認した。
【0121】
(2)4-アジド安息香酸クロリドの合成(原料物質の製造)
【化9】
【0122】
塩化メチレン(CHCl)30mLとDMF(N,N-ジメチルホルムアミドCNO)0.3mLとの混合溶媒に、4-アジド安息香酸(NCOOH)2.6gを溶解させた。窒素ガスの雰囲気下、撹拌しながら、塩化メチレン20mLに溶かした塩化チオニル(SOCl)7.3gを、室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、塩化メチレンを含む低沸点物を留去し、4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)を含む黄色油状物を得た。この油状物は、更に精製することなく、直接に次の反応に供した。
【0123】
(3)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドの合成(IMB-4K)の合成
【化10】
【0124】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF(テトラヒドロフラン)15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン3.6g、及びTEA(トリエチルアミン)2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率66%(2.4g)で淡黄色オイルを得た。
IR、NMR及びQCMSの各分析から、生成物が、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0125】
(4)N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3K)の合成
【化11】
【0126】
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、3-トリエトキシシリルプロピルアミン(HN(CHSi(OC)3.6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%(2.2g)で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0127】
(5)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミド(IMB-4KB)の合成
【化12】
【0128】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CHSi(OC)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率61%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0129】
(6)N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミド(IMB-3KB)の合成
【化13】
【0130】
3-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)1.8gをTHF15mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(HN((CHSi(OC)6g、及びTEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率62%で淡黄色オイルを得た。スペクトル等から、生成物は、N,N-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-3-アジドベンズアミドであることを確認した。
【0131】
(7)N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)の合成
【化14】
【0132】
4-アジド安息香酸クロリド(NCOCl)2.8gをTHF30mLに溶かした。窒素ガスの雰囲気下、ビス(3-アミノプロピル)ジエトキシシラン(2.3mL)と、TEA2.1gをTHF20mLに溶かし、撹拌しながら室温で滴下した。室温で一晩撹拌した。反応を完結させるためさらに2時間撹拌を続けた。反応終了後、THFを含む溶液を留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(溶離液:アセトン/ヘキサン=85/15)により精製し収率50%で淡黄色オイルを得た。スペクトルから、生成物は、N,N’-((ジエトキシシランジイル)ビス(3-プロピル-3,1-ジイル)ビス(4-アジドベンズアミド)であることを確認した。
【0133】
[実施例1]
合成例の(1)で得られた化合物(IMB-4KP)を、濃度が2.5質量%となるようにイソプロパノールに溶解し、表面処理剤Aを得た。
シリコン基板上に樹脂シートであるエポキシ樹脂シート(平均厚さ20μm)を熱硬化させることで密着させた。エポキシ樹脂シートを密着させたシリコン基板を表面処理剤Aに約20秒浸漬させた。その後、100℃で10分間の加熱処理を行った。その後、無電解ニッケルめっき処理により、シリコン基板に密着させたエポキシ樹脂シートの外面に、平均厚さ3μmの金属めっき層を形成し、積層体を得た。
【0134】
(評価)外観
得られた積層体について、樹脂シート上の金属めっき層の外観を観察し、以下の基準で評価した。
:曇り及び析出の不良がなく、外観が非常に良い(欠陥無し)
A :やや曇りがあるが、外観は良い
B :めっきの析出不良はないが、外観全体的に曇りが見られる
C :外観の一部又は全体にめっきの析出不良が見られる
【0135】
(評価)密着性
得られた積層体について、樹脂シート上の金属めっき層に対してクロスカット試験を行い、密着性を評価した。クロスカット試験は、JIS-K5600-5-6に記載のクロスカット法に準拠し、1mm幅、5×5マスでカットを入れて行い、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
:金属めっき層の剥離は全く生じなかった(100%密着)。
A :金属めっき層のごく一部が剥がれた(90%以上100%未満の密着)。
B :金属めっき層の一部が剥がれた(50%以上90%未満の密着)。
C :金属めっき層の半分以上が剥がれた(50%未満の密着)。
【0136】
[実施例2]
樹脂シートとしてBMI樹脂シート(平均厚さ50μm)を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0137】
[比較例1]
表面処理剤A(IMB-4KP)への浸漬及びその後の加熱処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0138】
[実施例3]
シリコン基板に対して樹脂シートを密着させる前に、シリコン基板を表面処理剤A(IMB-4KP)に約20秒浸漬させ、その後、100℃で10分間の加熱処理を行った。以下の処理は、実施例1と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0139】
[実施例4]
樹脂シートとして実施例2で用いたものと同じBMI樹脂シートを用いたこと以外は実施例3と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0140】
[実施例5]
合成例の(3)で得られた化合物(IMB-4K)を、濃度が2.5質量%となるようにイソプロパノールに溶解し、表面処理剤Bを得た。
表面処理剤A(IMB-4KP)に替えて表面処理剤B(IMB-4K)を用いたこと以外は実施例3と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0141】
[実施例6]
表面処理剤A(IMB-4KP)に替えて表面処理剤B(IMB-4K)を用いたこと以外は実施例4と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0142】
[実施例7]
平均厚さ6μmの金属めっき層を形成したこと以外は実施例6と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0143】
[実施例8]
表面処理剤B(IMB-4K)の塗布及びその後の加熱処理を行った後、再度表面処理剤B(IMB-4K)の塗布及びその後の加熱処理を行ったこと以外は実施例7と同様の手順で積層体を得て、外観及び密着性を評価した。すなわち、実施例8においては、表面処理剤の処理を2回実施した。評価結果を表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1に示されるように、所定の表面処理剤を用いることで、樹脂シート上に外観及び密着性に優れる金属めっき層を形成することができた。
【0146】
[参考例1-1~1-5]シクロオレフィンポリマー(COP)シートに対する金属めっき層の形成
【0147】
[参考例1-1]
COPシート(平均厚さ0.1mm)について、平均厚さ20μmの金属めっき層(銅めっき層)を形成し、密着性を試験した。まず、脱脂洗浄として、アセトンによる処理を行った。次いで、前処理として、酸素プラズマ処理(100mL/分、2分、200W)を施した。次いで、表面処理剤塗布として、IMB-4Kのエタノール溶液に30秒間浸漬した。次いで、UV照射・加熱として、試料にUV-LED照射器から被照射エネルギー200mJ/cmで紫外線を照射し、次いで、125℃で15分の加熱を行った。表面処理剤塗布とUV照射・加熱とは、2回反復して行った。その後、無電解めっき及び電解めっきを行い、平均厚さ20μmの銅めっき層を形成した。めっき後においては、110℃で60分のアニール処理を行い、積層体を得た。
【0148】
[参考例1-2~1-5]
表面処理剤塗布で用いる化合物αの種類、及びUV照射・加熱で加熱のみを行うのか(「H」と表す)、又は紫外線照射と加熱との両方を行うのか(「UV+H」と表す)、という点を表2に記載の通りとしたこと以外は参考例1-1と同様にして、参考例1-2~1-5を実施し、各積層体を得た。
【0149】
(評価)ピール強度
参考例1-1~1-5で得られた積層体について、金属めっき層のピール強度(剥離強度)を測定した。縦型電動計測スタンドMX2-500N((株)イマダ)にフォースゲージZTA-50Nを取り付け、90°剥離のピール強度試験機を構成した。剥離速度は50mm/分とした。各積層体について3つのサンプルを作製してそれぞれについて計測を行い、ピール強度の平均値を求めた。測定結果を表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
[参考例2-1、2-2]脱フッ素化PTFEフィルムに対する金属めっき層の形成
脱フッ素化PTFEフィルム(平均厚さ180μm:日東電工「900UL」)をエタノールに浸漬して、3分間の超音波洗浄をすることで、脱脂洗浄を行い、その後エアブロー乾燥を行った。
次いで、化合物αのエタノール溶液に30秒間浸漬させた。参考例2-1においては、化合物αとして、IMB-4Kを用いた。参考例2-2においては、化合物αとして、2,4-ジアジド-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン(IMB-P)を用いた。その後、表面処理剤が塗布された脱フッ素化PTFEフィルムに対して、100℃で10分間の加熱処理を行った。
次いで、以下の手順で金属めっき層(銅めっき層)を形成した。脱フッ素化PTFEフィルムをプレディップ液に浸漬させ、次いで、キャタリスト液(ローム&ハース電子材料株式会社「キャタポジット44」)に浸漬させた。次いで、脱フッ素化PTFEフィルムを1v/v%濃度の塩酸に浸漬させた後、無電解めっきを施し、平均厚さ0.1μmの無電解銅めっき膜を設けた。その後、110℃1時間のアニール処理を施した。その後、電解めっきを施し、無電解銅めっき膜とあわせて平均厚さ20μmの銅めっき層を形成した。以上により、参考例2-1及び2-2の各積層体を得た。
【0152】
[参考比較例2-1]
化合物αのエタノール溶液への浸漬及びその後の加熱処理を行わなかったこと以外は参考例2-1と同様にして、参考比較例2-1の積層体を得た。
【0153】
(評価)外観
参考例2-1、2-2の各積層体においては、金属めっき層の剥離も膨れも無く良好であった。参考比較例2-1の積層体においては、部分的に金属めっき層が剥離する部分があり、不良であった。
【0154】
(評価)ピール強度
参考例2-1~2-2の各積層体について、金属めっき層のピール強度(剥離強度)を参考例1-1等と同様の方法で測定した。各積層体について3つのサンプルを作製して各々計測を行い、ピール強度の最大値及び平均値を求めた。評価結果を表3に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
表2、3に示されるように、各種の化合物αを用いることで樹脂シートと金属めっき層との密着性を高めることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0157】
10 実装構造体
11 基板
12 電子部品
13 樹脂シート
14 金属めっき層
15 中間層
16 絶縁性基材
17 配線パターン
18 配線パターン
19 バンプ
図1
図2