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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022796
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】動物用敷料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021145789
(22)【出願日】2021-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】500228090
【氏名又は名称】三光株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正明
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA01
2B101GB05
2B101GB06
2B101GB08
(57)【要約】
【課題】おが粉と紙を混合し、吸水性及びクッション性に優れた動物用敷料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程と、前記紙破砕工程で破砕した紙とおが粉を湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程で混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程と、前記圧搾脱水工程で圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程と、前記解砕工程で解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする動物用敷料の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の木粉からなるおが粉と、部分的または全体的に繊維化した複数の細かい紙を有してなり、前記おが粉に紙繊維が絡み付き、かつ、前記おが粉の間に挟まった前記紙によって前記おが粉の間に空間が形成されていることを特徴とする動物用敷料。
【請求項2】
前記紙の重量は、全重量に対して0重量%を超え、60重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の動物用敷料。
【請求項3】
多数の木粉からなるおが粉と、部分的または全体的に繊維化した複数の細かい紙と、綿屑とを有し、前記おが粉に紙繊維および前記綿屑が絡み付き、かつ、前記おが粉の間に挟まった前記紙によって前記おが粉の間に空間が形成されていることを特徴とする動物用敷料。
【請求項4】
前記紙と前記綿屑の重量の合計は、全重量に対して0重量%を超え、50重量%以下、且つ前記綿屑の重量は全重量に対して0重量%を超え、4重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の動物用敷料。
【請求項5】
紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程と、前記紙破砕工程で破砕した紙とおが粉を湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程で混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程と、前記圧搾脱水工程で圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程と、前記解砕工程で解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする動物用敷料の製造方法。
【請求項6】
前記紙の重量は、全重量に対して0重量%を超え、60重量%以下であることを特徴とする請求項5に記載の動物用敷料の製造方法。
【請求項7】
紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程と、前記紙破砕工程で破砕した紙とおが粉と綿屑を湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程で混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程と、前記圧搾脱水工程で圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程と、前記解砕工程で解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする動物用敷料の製造方法。
【請求項8】
前記紙と前記綿屑の重量の合計は、全重量に対して0重量%を超え、50重量%以下、且つ前記綿屑の重量は全重量に対して0重量%を超え、4重量%以下であることを特徴とする請求項7に記載の動物用敷料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おが粉に繊維状の紙を混合した動物用敷料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜を飼育する家畜舎等においては、家畜の安楽性や糞尿処理のために吸水性を有する敷料が使われている。また、EU各国では、動物福祉の理想的な状態を定義する枠組みとして、5つの自由が尊重され、その第2に「不快からの自由‐すみかと快適な休息場所を含む適切な環境を与えること」が存在する。このような目的を有する敷料は、もともと稲わら、もみ殻、麦わら、乾牧草等の農産物系の敷料が使用されていたが、現在では製材工場から発生するおが屑のほかパルプ材(間伐材)等を直接加工して作られるおが粉が主に使用されるようになってきた。
【0003】
ところが近年、我が国日本においては全国的に電力固定価格買取制度(FIT)による大規模な木質バイオマス発電が行われるようになり、原料となるパルプ材の競合等によるおが粉の供給不足及び価格の高騰が問題になってきている。
【0004】
このため種々おが粉の代替品が検討されており、「おが粉の代替となる敷料の事例集(平成28年3月公益社団法人 中央畜産会)」には、もみ殻、キノコ廃菌床、バーク等を使用した敷料の事例紹介が記載されている。
さらに下記特許文献1(特開2000‐60336号公報)には、板紙や貼合紙を破砕機によって不定形状に破砕し、且つ周縁をパルプ繊維を引きちぎったように毛羽立たせて糞尿に対する吸水性、断熱性、殺菌性に優れた家畜用の紙製敷料が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2(特開2009‐148304号公報)には。コーヒー抽出粕におが屑、木材チップ、籾殻、麦わら、稲わら、砂、戻し堆肥、裁断紙、パルプスラッジを混合した家畜飼育用敷料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000‐60336号公報
【特許文献2】特開2009‐148304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の紙製敷料は、比較的吸水性が高く、特に繊維状にすることでより高い吸水性が得られるが、破砕しただけの紙繊維は一旦濡れると潰れて床にへばりついてしまう。また紙製敷料は濡れることで、製紙過程で添加される填料等が溶け出し、床面がべとべとするため、通常おが粉と任意に混合して使用される。しかしながら一般的におが粉と紙製敷料の供給元は異なるため、畜産農家がこれらを均等に混合して敷設することは難しい。特に繊維状にした紙製敷料とおが粉は混ざりにくいため、敷設時および動物等の移動による撹拌により分離し易く、敷設ムラができてしまい環境悪化が進むとともに紙製敷料の吸水性を十分活かした使用ができない問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の家畜飼育用敷料は、コーヒー抽出粕をおが屑、木材チップ、もみ殻、麦わら、砂、戻し堆肥、裁断紙、パルプスラッジと混合して敷料としているが、コーヒー抽出粕は消臭目的で混合されており、その性状から吸水性の向上および増量材としては寄与せず、おが粉の供給不足の解消としての代替品にはならない。
また、裁断紙は上記特許文献1と同様な問題がある。またパルプスラッジは、製紙過程で発生するパルプの粕であり、様々な薬剤が付着しており、特に中和に使用される硫酸等により場合によっては硫化水素等の有害ガスが発生する可能性があり、動物にとって危険な状態となるリスクがある。
【0009】
さらにまたおが屑、木質チップ、もみ殻、麦わら、砂、戻し堆肥はすでに以前から使用されており、おが粉の供給不足の解消にはならない。なお、おが粉は扱いやすく、保水性、吸湿性に優れている。具体的には、イ.保水性、吸水性、均一性が高い、ロ.乾燥しており、軽くて取扱い性がよい、ハ.入手し易く、臭気も吸収し易い、などのメリットがある。
【0010】
そこで本発明者らはこれまで利用を検討されてきた素材についてその特徴を鋭意検討した結果、おが粉と紙の特性を十分活かした使用方法を検討し、部分的または全体的に繊維状に破砕した紙とおが粉を混合することで環境等に優れた敷料が得られることに想到し、本発明に至ったものである。
そこで本発明の目的は、おが粉の利用を減少させつつ、環境性に優れるとともに吸水性がおが粉100%と同等レベル以上の動物用敷料及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様の動物用敷料は、多数の木粉からなるおが粉と、部分的または全体的に繊維化した複数の細かい紙を有してなり、前記おが粉に紙繊維が絡み付き、かつ、前記おが粉の間に挟まった前記紙によって前記おが粉の間に空間が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様の動物用敷料は、第1の態様の動物用敷料であって、前記紙の重量は、全重量に対して0重量%を超え、60重量%以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様の動物用敷料は、多数の木粉からなるおが粉と、部分的または全体的に繊維化した複数の細かい紙と、綿屑とを有し、前記おが粉に紙繊維および前記綿屑が絡み付き、かつ、前記おが粉の間に挟まった前記紙によって前記おが粉の間に空間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の態様の動物用敷料は、第3の態様の動物用敷料であって、前記紙と前記綿屑の重量の合計は、全重量に対して0重量%を超え、50重量%以下、且つ前記綿屑の重量は全重量に対して0重量%を超え、4重量%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の態様の動物用敷料の製造方法は、紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程と、前記紙破砕工程で破砕した紙とおが粉を湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程で混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程と、前記圧搾脱水工程で圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程と、前記解砕工程で解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の態様の動物用敷料の製造方法は、第5の態様の動物用敷料の製造方法であって、前記紙の重量は、全重量に対して0重量%を超え、60重量%以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の態様の動物用敷料の製造方法は、紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程と、前記紙破砕工程で破砕した紙とおが粉と綿屑を湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程で混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程と、前記圧搾脱水工程で圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程と、前記解砕工程で解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の第8の態様の動物用敷料の製造方法は、第7の態様の動物用敷料であって、前記紙と前記綿屑の重量の合計は、全重量に対して0重量%を超え、50重量%以下、且つ前記綿屑の重量は全重量に対して0重量%を超え、4重量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様の動物用敷料によれば、紙の繊維がおが粉に絡み付きおが粉と紙が絡みついた状態になることで動物の移動等でおが粉と紙が分離することがないため、敷設時および動物の移動に際してムラになることがなく、おが粉の使用を減少させつつ、動物の飼育環境が悪化するリスクを低下させることができる。しかも、吸水性は、おが粉100%と同等レベル以上となる。
【0020】
本発明の第3の態様の動物用敷料によれば、紙の繊維と綿屑がおが粉に絡み付き、おが粉と紙と綿屑が絡みついた状態になることで動物の移動等でおが粉と紙と綿屑が分離することが減少するため、敷設時および動物の移動に際してムラになることが少なくなり、おが粉の使用を減少させつつ動物の飼育環境が悪化するリスクを低下させることができる。
しかも、吸水性は、おが粉100%と同等レベル以上となる。
【0021】
本発明の第5の態様の動物用敷料の製造方法によれば、敷設および動物の移動に際してムラになることが少なくなり、おが粉の使用を減少させつつ、動物の飼育環境が悪化するリスクを低下させることができ、しかも吸水性は、おが粉と同等レベル以上となる動物用敷料が得られる。
【0022】
本発明の第7の態様の動物用敷料の製造方法によれば、おが粉の使用を減少させつつ、動物の飼育環境が悪化するリスクを低減させることができ、しかも吸水性は、おが粉と同等レベル以上となる動物用敷料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係る動物用敷料の製造方法の工程ブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る動物用敷料の模式図である。
図3図2に示す模式図の基になった、本発明の実施形態1に係る実際の動物用敷料の写真である。
図4】紙混合量と吸水量の関係を示したグラフである。
図5】本発明の実施形態2に係る動物用敷料の製造方法の工程ブロック図である。
図6】紙および綿屑の混合量に対する吸水量の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る動物用敷料及びその製造方法について説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための動物用敷料およびその製造方法を複数例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0025】
[実施形態1]
以下、図1を参照して本発明の実施形態1に係る動物用敷料の製造方法を説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る動物用敷料の製造方法の工程ブロック図である。
【0026】
本発明の実施形態1に係る動物用敷料の製造方法は、紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程S11と、破砕した紙と多数の木粉からなるおが粉を湿式混合する湿式混合工程S12と、混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程S13と、圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程S14と、解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程S15を有している。
【0027】
以下、この製造方法を詳述し、さらにその作用を明らかにする。
紙破砕工程S11:
この工程では、紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する。なお、紙を繊維状にすることでこの工程以降の工程で紙繊維がおが粉に絡み付き、おが粉と紙が絡まりあった塊ができる。このおが粉と紙の絡みついた塊の効果は後述する。
【0028】
湿式混合工程S12:
この工程では、紙破砕工程S11で部分的または全体的に繊維状に破砕され細かく分断された紙と多数の木粉からなるおが粉を水中で混合する。紙繊維とおが粉は水中で均一に混合されるとともに、紙繊維がおが粉に絡み付く。おが粉は木の繊維が部分的にささくれているため、おが粉の表面に紙繊維が引っ掛かり、絡みつく。なお、乾式で混合しても均質でかつ強固な絡みつきは得られないが、水中で混合することで均質でかつ強固な絡みつきが得られる。なお、この工程は水中でなくても湿潤な状態で行ってもよい。この場合均質性はやや落ちるが比較的強固な絡みつきが得られる。
【0029】
圧搾脱水工程S13:
この工程では、湿式混合した混合物を圧搾脱水する。おが粉に絡み付いた紙の繊維は圧搾することでおが粉との絡みつきが強くなる。また、乾燥工程S15で乾燥する際に紙繊維が収縮してより絡みつきが強固になる。なお、おが粉並びに紙及び紙繊維は比較的柔らかいため、おが粉と紙繊維が強固に絡み付いても全体としては比較的柔らかく柔軟性のある敷料となる。
【0030】
解砕工程S14:
この工程では、圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する。解砕すると比較的絡みつきが弱い部分が分離して適度な大きさの多数の塊状になる。
【0031】
乾燥工程S15:
この工程では、解砕した塊状物を乾燥する。乾燥する際、おが粉に絡み付いた紙繊維は収縮し、おが粉に固着することで適度な強度を持ち、おが粉の間に挟まった紙によっておが粉の間に空間が形成された塊状ものが多数存在する動物用敷料になる。
【0032】
以下、図2を参照して本発明の実施形態1に係る動物用敷料を説明する。図2は、本発明の実施形態1に係る動物用敷料の模式図である。なお、図3は、実物の写真図であり、図2図3の中の拡大写真(図3C)に相当する部分の模式図である。
【0033】
本発明の実施形態1に係る動物用敷料は、おが粉11と部分的または全体が繊維化した紙12を有しており、おが粉に紙繊維が絡み付いている。このため、動物の移動等でおが粉と紙が分離することが減少するため、敷設時および動物の移動に際してムラになることが少なくなり、おが粉の使用を減少させつつ動物の飼育環境が悪化するリスクを低下させることができる。
【0034】
さらに、この実施形態1に係る動物用敷料は、おが粉と紙繊維を含んだ塊を多数有するものになっている。この各塊の表面ははみ出したおが粉や絡みつきに寄与しない紙繊維によって不定形になっており、転がりにくいうえ、はみ出したおが粉や紙繊維が近接する敷料(他の塊)に引っかかってずれにくいため、敷設時や動物の移動によってずれてムラになりにくい。このため環境悪化が進むのを一層防止できる。
【0035】
また、おが粉の間に挟まった紙や紙繊維によっておが粉の間に適度な空間ができるため、この空間に水分を蓄えることができるうえ、おが粉はこの塊の中に紙繊維によって固定されているためおが粉同士がばらけることがなく、吸水した水分の放出量を抑えられる。
【0036】
一方、おが粉だけの場合、平面同士で重なりあうため、保水できる空間が比較的狭く、保水量が少ないうえ、動物等の移動によっておが粉がばらけると保水していた水分を放出してしまう。
また一方、紙だけの場合、水に濡れると潰れてしまいほとんど吸水しないが、おが粉と部分的または全体が繊維化した紙を適度に混合することで吸水性に優れ、且つ潰れにくい敷料が得られる。
【0037】
さらにまた紙に古紙を使用しても良いが、シュレッダー紙等の紙の繊維が短い古紙を使用する場合は紙の混合量を多めにした方が良い。
【0038】
<紙混合量と吸水性に関する実験[実験例1~11]>
本発明の実施形態1の製造方法で動物用敷料を作製し吸水性を確認した。
まず、紙を破砕機で部分的に繊維状に破砕したのち、紙の混合量をおが粉と紙の合計重量である全重量に対して0重量%から100重量%まで10重量%刻みにおが粉と水中で混合、撹拌したのち、圧搾脱水、解砕、乾燥を行い、試料を作製した。
【0039】
次に底面に不織布を貼った内径30mmの円筒に試料を30mmの高さまで詰めて試料の重量を測定した。その後、上から水を流して十分吸水させたのち、上から試料を押さえて潰したのち、重量を測定し、最初の試料重量に対する吸水量を算出した。その結果を表1および図4に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1および図4に示した結果から、以下のことが判明した。
本発明の実施形態1と同様な製造方法で製作した動物用敷料は、おが粉に部分的に繊維化した紙を全重量に対して10重量%混合することで圧縮後の吸水率が約15%向上し、その後30重量%で最も吸水率(吸水倍率)が高く、約26%向上し。30重量%を超えると徐々に減少し、50重量%では約15%の向上になり、60重量%ではおが粉単独と同等になり、さらに増加するにつれて徐々に減少した。しかし、減少した吸水率といえども、おが粉100重量%と同等レベルと言える。
【0042】
繊維化した紙を混合すると紙自体の吸水性とおが粉の間に挟まれた紙により保水空間ができるため吸水量が増加するが、30重量%を超えるとその保水空間が潰れやすくなり一旦吸水した水分が潰れる際に放出されるものと思われる。
【0043】
したがって、吸水率だけで考えると、紙の混合量は全重量に対して0重量%を超え、60重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上、50重量%以下にすることでおが粉以上の吸水率(吸水倍率)がえられることが確認できた。なお、より好ましくは20重量%以上、40重量%以下にすることでおが粉不足の解消をしつつ、吸水率を高め環境をかなり高めることにより質する。
【0044】
[実施形態2]
以下、図5を参照して本発明の実施形態2に係る動物用敷料の製造方法を説明する。図5は、本発明の実施形態2に係る動物用敷料の製造方法の工程ブロック図である。
【0045】
本発明の実施形態2に係る動物用敷料の製造方法は、紙を部分的または全体的に繊維状に破砕する紙破砕工程S21と、破砕した紙とおが粉と綿屑を湿式混合する湿式混合工程S22と、混合した混合物を圧搾脱水する圧搾脱水工程S23と、圧搾脱水した圧搾脱水塊を解砕する解砕工程S24と、解砕した解砕物を乾燥する乾燥工程S25を有している。
【0046】
この製造方法において、上記S21~S25の各工程のうち、S21およびS23~S25の各工程は、実施形態1の製造方法のS11およびS13~S15の各工程と同一である。そこで同一の工程は、重複説明を避けて、相違する工程のみを説明する。
【0047】
湿式混合工程S22:
この工程では、紙破砕工程S21で部分的または全体的に繊維状に破砕され細かく分断された紙と多数の木粉からなるおが粉と綿屑を水中で混合する。紙繊維と綿屑とおが粉は水中で均一に混合されるとともに、紙繊維および綿屑がおが粉に絡み付く。おが粉は木の繊維が部分的にささくれているため、おが粉の表面に紙繊維および綿屑が引っ掛かり、絡みつく。なお、乾式で混合しても均質でかつ強固な絡みつきは得られないが、水中で混合することで均質でかつ強固な絡みつきが得られる。
【0048】
以下、本発明の実施形態2に係る動物用敷料を説明する。
本発明の実施形態2に係る動物用敷料は、おが粉に紙繊維および綿屑が絡み付き、また同時に別のおが粉にも絡みつくことで、おが粉と紙と綿屑の塊が多数存在するものになっている。この効果は実施形態1の動物用敷料と同じであるが、綿屑を混合することで綿屑がおが粉と紙繊維に絡み付いてより強固な塊の敷料になる。但し、綿の繊維は細く、柔らかいため、強固ではあるが自由度が高く、弾力性に優れた敷料になるうえ、敷料の内部空間も広くなるため、吸水性もより高くなる。
特にシュレッダー紙のような繊維の短い紙を使用する場合はおが粉と紙繊維の絡みつきを補強するためより有効である。
【0049】
<紙および綿屑の混合量と吸水性に関する実験[実験例12~32]>
本発明の実施形態2の製造方法で製作した動物用敷料の吸水性を確認した。
まず紙を破砕機で部分的に繊維状に破砕したのち、破砕した紙と綿屑をおが粉に水中で混合、撹拌したのち、圧搾脱水、解砕、乾燥を行い、試料を作製した。
混合量は、紙と綿屑を合わせた重量を全重量に対して、0重量%から50重量%まで10重量%刻みに混合するとともに、それぞれ綿屑の混合量を全重量に対して0,1,2,4重量%に変えて試料を作製した。
【0050】
次に不織布を貼った内径30mmの円筒に試料を30mmの高さまで詰めて試料の重量を測定した。その後、上から水を流して十分吸水させたのち、上から試料を押さえて潰したのち、重量を測定し、最初の試料重量に対する吸水量を算出した。その結果を表2および図6に示した。
【0051】
【表2】
【0052】
表2および図6に示した結果から、以下のことが判明した。
紙と綿屑を合わせた混合量が10~40重量%では綿屑の混合量に関わらずおが粉単独よりも吸水倍率が向上し、且つ綿屑の混合量が増えるにしたがって吸水倍率がさらに向上することが判明した。また紙と綿屑を合わせた混合量が50重量%ではほぼおが粉単独の場合と同等の吸水倍率であった。なお、綿屑の混合量が4重量%を超えると、湿式混合時に混合装置に綿屑が絡まって製造に支障を来したため試験を中止したが、この試験結果からは、綿屑の割合を相当増やしても、おが粉単独に比べ、紙と綿屑を混合させる効果は生じると考えられる。
【0053】
したがって紙と綿屑を合わせた混合量は、全重量に対して、0重量%を超え、50重量%以下、好ましくは10重量%以上、40重量%以下、且つ綿屑の混合量は、0重量%を超え、4重量%以下、好ましくは2重量%以上、4重量%以下とすることで、おが粉単独以上の吸水性が得られることが確認できた。しかし、おが粉100%に比べ減少した吸水率といえども、おが粉100%とほぼ同じで同等レベルと言える。なお、より好ましくは、紙と綿屑を合わせた混合量が30重量%以上、40重量%以下、且つ綿屑の混合量は3重量%以上、4重量%以下とすることでおが粉不足の解消をしつつ、吸水率を高め、環境をかなり高めることにより質する。
【0054】
<実証実験>
本発明の実施形態2の製造方法で製作した動物用敷料で実証実験を行った。
まず、あらかじめ部分的に繊維状に破砕した段ボール紙18重量%、綿屑2重量%、牛糞から回収したのち水洗後乾燥したおが粉80重量%を水中で混合、撹拌したのち、圧搾脱水、解砕、乾燥を行い実施形態2の動物用敷料を作製した。
【0055】
作製した敷料を酪農牛舎に敷いて使用状況を確認した。敷設する際、床面を転がることなく、均すと適度に分かれてムラなく敷設することができた。また、乳牛が移動する際も乳牛に蹴られて転がることもなく、全体が干渉して大きくずれることもなく、且つ個々のつながりはあまり強くないことから乳牛が引っ掛かることもなかった。さらに、乳牛は敷料の上に横臥し、快適に休んでいた。また、排尿時には尿が床面を流れる途中で敷料に吸収され、尿溜まりができることもなかった。
【0056】
[その他の実施の形態]
上述の実施形態では、おが粉と紙を混合したものと、おが粉と紙と綿屑を混合したものの2例を示したが、本発明の敷料は、木材チップ、もみ殻、麦わら、稲わらなどを単独またはいずれか複数をおが粉の一部もしくは全部と置き替えることもできる。また、実施形態1や2の敷料に木材チップ、もみ殻、麦わら、稲わら、砂、戻し堆肥等の敷料を単独またはいずれか複数を混合してもよい。
【0057】
また、表1及や表2の例では、部分的に繊維化した紙を採用したが、紙は、全体的に繊維化したものとしても良い。紙は新しいものではなく、古紙でもよい。また、新聞用紙、コート紙、上質紙、マット紙、アートポスト紙、クラフト紙、マットポスト紙、ケント紙など、種々の新しい紙や印刷済みの紙でもよい。さらに、衛生用紙、包装用紙、書いたり、印刷したりして情報を伝えるための紙、板紙(段ボールや箱などになる厚い紙)、お菓子の箱などに使われる紙などでもよい。
【0058】
なお、製材時に発生するおが屑と間伐材等を破砕して製造するおが粉を区別する場合があるが、本発明においてはどちらも同等の効果を奏することから区別せずにおが粉という。また、おが粉を含んだ家畜糞から分離回収したおが粉も洗浄することで同等の効果が得られるうえ、よりおが粉の供給不足の解決に質するので、本発明の実施形態1及び2並びにその他の実施の形態において使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
11 おが粉
12 繊維化した紙
S11、S21 紙破砕工程
S12、S22 湿式混合工程
S13、S23 圧搾脱水工程
S14、S24 解砕工程
S15、S25 乾燥工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6