(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000228
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100926
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 翼
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 祐太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄太
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB38
3D203CA53
3D203CB26
3D203DA68
(57)【要約】
【課題】カウル部内に侵入した水の少なくとも一部を簡易な構造で意図した箇所へ導くことができる車両前部構造を提供する。
【解決手段】車両前部構造を有する車両前部1は、カウル部4とカウルトップガーニッシュ5と補強部材6と支持部材7とを含む。支持部材7は、補強部材6に固定される固定部71と、カウルトップガーニッシュ5に連結される連結部72と、延伸部73とを有する。カウルトップガーニッシュ5には、連結部72との連結用の連結具54が挿通される連結具用孔51dが開口される。連結部72は、自身の車両幅方向の一方の縁部において車両下方に突出し且つ車両上方から視た平面視で補強部材6と重ならない位置に位置する導水フランジ部72b(導水用のフランジ部)を有して構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上方に開口する開口部を有しフロントガラスの下部に沿って配置されるカウル部と、前記開口部を覆うカウルトップガーニッシュと、を備える車両前部構造であって、
前記カウル部内において車両前後方向に延伸し前記カウル部を補強する補強部材と、
前記補強部材に固定される固定部、前記カウルトップガーニッシュに連結される連結部及び前記固定部から前記連結部まで延伸した延伸部を有し、前記カウルトップガーニッシュを下方から支持する支持部材と、
を含み、
前記カウルトップガーニッシュには、前記連結部との連結用の連結具が挿通される連結具用孔が開口されており、
前記連結部は、自身の車両幅方向の一方の縁部において車両下方に突出し且つ車両上方から視た平面視で前記補強部材と重ならない位置に位置する導水用のフランジ部を有して構成されたことを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記連結部の前記フランジ部は、前記延伸部における車両幅方向について前記フランジ部側の縁部よりも外方に突出し、前記延伸部との境界位置において途切れるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記延伸部は、車両幅方向について前記フランジ部側に傾くように斜めに延伸しており、
前記フランジ部における前記延伸部側の端部は、前記延伸部における車両幅方向について前記フランジ部側の縁部よりも外方に突出した角部として形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記カウルトップガーニッシュには、前記フロントガラスを拭うワイパーを回転させるピポット軸部が挿通される軸部用孔が開口されており、
前記軸部用孔の下方には、前記ピポット軸部を囲むように形成された水受け部が設けられており、
前記フランジ部は、車両上方から視た平面視で前記水受け部の領域内に位置することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記カウルトップガーニッシュの下面における前記連結具用孔の周囲の部分には、前記連結部に当接し且つ下方に突出した座面部が形成されており、
前記連結部は、前記座面部における車両幅方向の幅よりも大きな幅を有しており、
前記座面部は、その前記フランジ部側の縁部を前記フランジ部側に寄せた状態で、前記連結部に当接していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウル部とカウルトップガーニッシュを備えた車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両前部構造において、カウル部(カウルボックスとも言う)は車両上方に開口する開口部を有しフロントガラスの下部に沿って配置されており、カウル部の開口部はカウルトップガーニッシュ(カウルグリルとも言う)により覆われている。そして、カウル部内には、フロントガラスを拭うワイパーを駆動するためのモータやリンク類等を備えたワイパー駆動部が配置されている。
【0003】
前記車両前部構造の一例として、特許文献1に記載された自動車の前部構造が知られている。この特許文献1に記載された前部構造では、ワイパーを回転させるワイパーピポット(以下、ピポット軸部とも言う)の挿通のためのピポッド開口部がカウルグリルに開口され、ワイパーピポットを支持するピポットホルダーには、ピポッド開口部からカウルボックス内に侵入した雨水等を受ける防水キャップが設けられている。これにより、ピポッド開口部から侵入した雨水等についての、ワイパー駆動部のリンク類等への被水が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カウルトップガーニッシュは一般的に車両幅方向に長い樹脂製の部材であるため、その中央部等を下方から支持することが望ましい場合がある。この場合、カウルトップガーニッシュを下方から支持する部材が必要となり、その部材と樹脂製のカウルトップガーニッシュとの連結(締結)のために、カウルトップガーニッシュに連結具用孔を開口せざるを得ない場合がある。その結果、雨水等はカウルトップガーニッシュの前記連結具用孔を通じてもカウル部内に侵入し得ることになり、連結具用孔から侵入した雨水等についても、カウル部内の部材への被水を効果的に抑制するための工夫が求められ得る。
【0006】
そこで、本発明は、カウルトップガーニッシュの連結具用孔からカウル部内に侵入した雨水等の少なくとも一部を簡易な構造でカウル部内における意図した箇所へ導くことができる車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の一態様によると、車両上方に開口する開口部を有しフロントガラスの下部に沿って配置されるカウル部と、前記開口部を覆うカウルトップガーニッシュと、を備える車両前部構造が提供される。この車両前部構造は、前記カウル部内において車両前後方向に延伸し前記カウル部を補強する補強部材と、前記補強部材に固定される固定部、前記カウルトップガーニッシュに連結される連結部及び前記固定部から前記連結部まで延伸した延伸部を有し、前記カウルトップガーニッシュを下方から支持する支持部材と、を含む。前記カウルトップガーニッシュには、前記連結部との連結用の連結具が挿通される連結具用孔が開口されている。そして、前記連結部は、自身の車両幅方向の一方の縁部において車両下方に突出し且つ車両上方から視た平面視で前記補強部材と重ならない位置に位置する導水用のフランジ部を有して構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様による前記車両前部構造では、カウル部を補強する補強部材がカウル部内において車両前後方向に延伸しており、カウル部の開口部を覆うカウルトップガーニッシュは、補強部材に固定される固定部、カウルトップガーニッシュに連結される連結部及び固定部から連結部まで延伸した延伸部を有する支持部材によって、下方から支持されている。これにより、車両幅方向に長い部材であるカウルトップガーニッシュが支持部材により確実に下方から支持される。そして、この車両前部構造におけるカウルトップガーニッシュには、連結部との連結用の連結具が挿通される連結具用孔が開口されているため、この連結具用孔を通じて雨水等がカウル部内に侵入し得ることになる。これに対し、前記車両前部構造では、連結部は、自身の車両幅方向の一方の縁部において車両下方に突出し且つ車両上方から視た平面視で補強部材と重ならない位置に位置する導水用のフランジ部を有して構成されている。このため、カウルトップガーニッシュの連結具用孔を通じてカウル部内に侵入した雨水等の少なくとも一部は、フランジ部を経由して落下するようになり、補強部材を避けた位置に落水される。そして、フランジ部の位置を適宜に設定するだけで、連結具用孔を通じてカウル部内に侵入した雨水等の少なくとも一部がフランジ部を経由してカウル部内における意図した箇所(狙った位置)に導かれることになる。その結果、連結具用孔から侵入した雨水等について、補強部材への被水だけではなく、当該補強部材の周辺に配置され得るワイパー駆動部の部材への被水も簡易な構造により効果的に抑制されるようになる。
【0009】
このようにして、カウルトップガーニッシュの連結具用孔からカウル部内に侵入した雨水等の少なくとも一部を簡易な構造でカウル部内における意図した箇所へ導くことができる車両前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両前部構造が適用される車両前部を車両前側斜め上方から視た斜視図である。
【
図3】前記車両前部のカウル部内における補強部材及び支持部材を含む要部を車両上方から視た部分拡大図である。
【
図5】前記補強部材及び支持部材を車両前方から視た正面図である。
【
図6】前記補強部材及び支持部材を車両幅方向の側方から視た側面図である。
【
図8】
図7に示すC方向から視た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1~
図4は、本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示すものである。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向で車両前方を示し、矢印O方向は車両幅方向で車両外方を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上方を示している。また、
図4では、後述するワイパー8及びピポット軸部92は取り外されている。
【0012】
図1~
図4に示すように、本発明の実施形態に係る車両前部構造が適用される車両前部1には、車両上下方向に回動可能なフロントフード(図示省略)により開閉されるエンジンルームEが設けられており、このエンジンルームEの車両後方には、車室Rが設けられている。エンジンルームEと車室Rはダッシュパネル2によって仕切られている。このダッシュパネル2は、エンジンルームEの車両幅方向の全体に亘って延在している。そして、本実施形態では、フロントガラス3がダッシュパネル2の上端部に沿うように配置されている。
【0013】
本実施形態の車両前部1は、カウル部4と、カウルトップガーニッシュ5と、補強部材6と、支持部材7と、を備えている。カウル部4、補強部材6及び支持部材7は金属製薄板材からなり、カウルトップガーニッシュ5は樹脂部材からなる。
【0014】
カウル部4は、車両上方に開口する開口部4aを有しフロントガラス3の下部に沿って配置される。カウル部4は、車両上方に開口した概ね凹状の断面(換言すると溝断面構造)を有して車両幅方向に延伸している。本実施形態では、カウル部4の一部は、ダッシュパネル2の一部を用いて構成されている。具体的には、カウル部4は、ダッシュパネル2の上端部を含む部分からなるフロントガラス支持部41と、フロントガラス支持部41の車両前方に配置されるカウルトップ42とにより構成されている。
【0015】
詳しくは、フロントガラス支持部41は、フロントガラス3の車室R側の面における下部に沿うように形成される支持壁41aと、支持壁41aの下端に連続し且つ車室R側に膨らむように形成された膨出部41bと、を有する。支持壁41aの下端側の部分は車両上下方向に延びており、フロントガラス3の下端よりも下方に突出している。膨出部41bの下端側の部分は車両前方に向かうほど開口部4aから離れるように傾斜する前下がりの傾斜部41b1として形成されている。そして、傾斜部41b1の下端に連続するように、ダッシュパネル2の残りの部分が概ね車両下方に向かって延伸するように形成されている。また、カウルトップ42は、例えば、カウル部4の底壁をなす底壁部42aと、底壁部42aの前端から概ね前上がりの傾斜部42bとを有する。そして、カウル部4の前縁部42c(換言すると、カウルトップ42の傾斜部42bの上端部)は、フロントガラス支持部41の支持壁41aの下端よりも車両下方に位置するとともに、カウル部4の開口部4aの車両前側の開口縁を構成している。
【0016】
カウル部4内には、フロントガラス3を拭う左右一対のワイパー8,8を駆動するためのワイパー駆動部9(
図3等参照)が配置されている。ワイパー駆動部9は、全体として車両幅方向に長いユニットとして構成されており、その車両幅方向の各端部をなすワイパー固定部9aがカウル部4内において車体側の部分にボルト10を介して固定されている。ワイパー駆動部9は、車両幅方向について運転席側に寄せて配置されており、運転席と反対側の端部が概ね車両幅方向の中央部の近辺に位置している。
図2及び
図3では、ワイパー駆動部9における運転席と反対側の端部を含む部分が示されている。本実施形態では、ワイパー駆動部9の運転席と反対側のワイパー固定部9aは、車両における車両幅方向の中心線X(中央部)を超えて車両幅方向の運転席と反対側の領域に位置している。
【0017】
カウル部4内のワイパー駆動部9は、車幅方向に延伸するロッド状のステー91と、ステー91の中央部に固定される駆動源としての電動モータ(図示省略)と、ステー91の両端部にそれぞれ設けられ対応するワイパー8を回転させるピポット軸部92と、前記電動モータの動力を対応するピポット軸部92に伝達するリンク機構93と、を有する。なお、
図3では、ステー91の運転席と反対側の端部や、運転席と反対側のピポット軸部92や、運転席と反対側のリンク機構93の一部が示されている。
【0018】
カウルトップガーニッシュ5は、カウル部4の開口部4aを覆う部材である。本実施形態では、カウルトップガーニッシュ5は、フロントガラス3の下部に沿い且つ概ね前方に延伸した上壁部51と、上壁部51の前端からカウルトップ42の前縁部42cまで延在する前壁部52と、を有する。
【0019】
詳しくは、上壁部51の後縁部には、フロントガラス3の下端部を受容する受容部51a(
図2参照)が形成されており、上壁部51における車両幅方向の中央部分及び運転席側部分には、ワイパー8の回転運動を許容するように凹んだ凹部51b(
図1,
図3及び
図4参照)がそれぞれ形成されている。凹部51bは、ワイパー8の回動運動を許容する概ね三角錐状の領域を形成し、車両下方に突出している。前壁部52は、カウル部4のカウルトップ42の傾斜部42bと概ね平行になるように傾斜している。そして、カウルトップガーニッシュ5の前壁部52の下端部における車両幅方向に間隔をあけた複数の箇所には、取付用孔(図示省略)が開口されている。そして、各取付用孔に挿通された樹脂製の取付具53(
図4参照)がカウル部4の前縁部42cに開口された孔(図示省略)に差し込まれてカウル部4に係止されることによって、カウルトップガーニッシュ5がカウル部4の前縁部42cに取り付けられる。
【0020】
そして、カウルトップガーニッシュ5には、ピポット軸部92が挿通される軸部用孔51c(
図4参照)が開口されている。詳しくは、各凹部51bにおけるフロントガラス3側の壁面部はフロントガラス3と概ね平行になるように傾斜しており、この壁面部における凹部51bの頂部(底部)近傍に、軸部用孔51cが開口されている。ピポット軸部92の先端部は、軸部用孔51cを通じてカウルトップガーニッシュ5の上壁部51より車両上方に突出しており、この先端部にワイパー8の基端部が取り付けられる。
【0021】
本実施形態では、軸部用孔51cの下方には、ピポット軸部92を囲むように形成された水受け部94が設けられている。水受け部94は、例えば、樹脂部材からなり、ピポット軸部92を保持するようにピポット軸部92の周囲に設けられた樹脂製のピポットホルダー95の基端部と一体に成形されている。水受け部94は、カウルトップガーニッシュ5の軸部用孔51cとピポット軸部92との間の隙間を通じてカウル部4内に侵入した雨水等を受け入れ、受け入れた水をピポット軸部92の下方のカウル部4内の所定の位置に向けて落水させるように構成されている。
【0022】
具体的には、水受け部94は、ピポットホルダー95の基部の周囲において、ステー91の端部及びリンク機構93の一部を上方から覆うように、全体として湾曲した形状に形成されている。そして、水受け部94は、ピポット軸部92の基端部に対して上側の上受け部94aと、前記基端部に対して下側の下受け部94bと、を有する。水受け部94における上縁部及び車両前後方向の両縁部には、止水壁94cがそれぞれ上方に突出するように形成され、水受け部94における下縁部は下方に開放されている。これにより、カウルトップガーニッシュ5の軸部用孔51cから侵入した雨水等についての、ワイパー駆動部9の部材への被水が防止されるようになっている。
【0023】
補強部材6は、カウル部4内において車両前後方向に延伸しカウル部4を補強する部材である。補強部材6は、例えば、カウル部4内における車両幅方向の概ね中央部の近辺において、フロントガラス支持部41(支持壁41aの下端側の部分)とカウルトップ42(底壁部42a)との間に(換言すると、ダッシュパネル2の上端側の部分とカウルトップ42との間に)架設されている。本実施形態では、補強部材6は、車両幅方向の中心線Xの近傍で且つ運転席と反対側の領域に位置している。
【0024】
補強部材6は、車両後方に向かうほどカウルトップガーニッシュ5に近づくように傾斜した姿勢で配置された補強本体部61を有している。補強本体部61の後端部は支持壁41aに接合され、補強本体部61の前端部は底壁部42aに接合されている。また、補強部材6の後端側(上端側)の部分に、ワイパー駆動部9の運転席と反対側のワイパー固定部9aがボルト10を介して固定されている。
【0025】
図5は補強部材6及び支持部材7を車両前方から視た正面図であり、
図6は補強部材6及び支持部材7を車両幅方向の側方から視た側面図である。
図7は
図4におけるB-B線断面図である。
図5及び
図6では車両前部1における補強部材6及び支持部材7以外の部材については図示を省略されている。
【0026】
図5及び
図6に示すように、支持部材7は、補強部材6に固定される固定部71、カウルトップガーニッシュ5に連結される連結部72及び固定部71から連結部72まで延伸した延伸部73を有し、カウルトップガーニッシュ5を下方から支持する部材である。これにより、車両幅方向に長い部材であるカウルトップガーニッシュ5が支持部材7により確実に下方から支持される。
【0027】
支持部材7は、補強部材6(補強本体部61)の上面における長手方向の概ね中央部に接合されており、当該中央部から上方に延伸している。支持部材7は、金属製薄板材からなり、固定部71、連結部72及び延伸部73がプレス成形等により一体成形されている。
【0028】
固定部71は、支持部材7における補強部材6に固定される部分をなしている。固定部71は、ここでは、補強部材6にスポット溶接等により接合されることにより補強部材6に固定されている。
【0029】
連結部72は、支持部材7におけるカウルトップガーニッシュ5に連結される部分をなしている。具体的には、支持部材7(つまり、連結部72)は、カウルトップガーニッシュ5の中心線X側の凹部51bにおける車両幅方向の中央部に対応する部分の裏面(下面)に連結されている。そして、金属製の連結部72と樹脂製のカウルトップガーニッシュ5との連結は、樹脂製のクリップからなる連結具54(
図2,
図4参照)によりなされている。この連結具54は、
図7に示すように、円板状に形成された頭部54aと、頭部54aの裏面から突出した棒状のクリップ軸部54bと、クリップ軸部54bの先端側の部分に設けられ、弾性変形可能に先細りの形状に形成された連結(係止)用の連結爪部54cとを有する。
【0030】
延伸部73は、前述したように、固定部71から連結部72まで延伸した部分である。なお、支持部材7の各部(固定部71、連結部72、延伸部73)の形状については、後に詳しく説明する。
【0031】
カウルトップガーニッシュ5には、支持部材7の連結部72との連結用の連結具54が挿通される連結具用孔51d(
図7参照)が開口されている。具体的には、中心線X側の凹部51bにおけるフロントガラス3側の壁面部に、連結具用孔51dが開口されている。詳しくは、車両幅方向についての位置関係では、連結具用孔51dは、中心線X側のピポット軸部92と補強部材6の補強本体部61との間に(換言すると、運転席と反対側の軸部用孔51cと運転席と反対側のワイパー固定部9aの端部との間に)配置されている。そして、支持部材7の連結部72にも、連結具54が挿通される挿通孔72aが開口されている。カウルトップガーニッシュ5の連結具用孔51dに挿通された連結具54が支持部材7の連結部72の挿通孔72aに差し込まれた状態で、連結具54の連結爪部54cが連結部72に係止されることによって、カウルトップガーニッシュ5と支持部材7との連結(締結)がなされる。
【0032】
ここで、カウルトップガーニッシュ5と支持部材7との連結のために、カウルトップガーニッシュ5に連結具用孔51dが開口されているため、雨水等は軸部用孔51cだけでなく連結具用孔51dを通じてもカウル部4内に侵入し得ることになる。この連結具用孔51dを通じた雨水等の侵入に対し、車両前部1では、以下のように種々の工夫がなされている。
【0033】
まず、車両前部1において、支持部材7の連結部72は、自身の車両幅方向の一方の縁部において車両下方に突出し且つ車両上方から視た平面視で補強部材6と重ならない位置に位置する導水用のフランジ部72b(以下では、導水フランジ部72bと言う)を有して構成されており、連結具用孔51dを通じて侵入した水の少なくとも一部が導水フランジ部72bを経由して落下するようになっている。
【0034】
具体的には、支持部材7の固定部71は、平面視で概ね台形状に形成され、台形底辺部を車両後方に向けた姿勢で配置されている。具体的には、固定部71は、その一方の台形斜辺部が車両幅方向に平行になる姿勢で、補強部材6に接合されている。
【0035】
連結部72は、カウルトップガーニッシュ5の凹部51bにおけるフロントガラス3側の傾斜した壁面部の裏面(具体的には、後述の座面部51e)に当接する平坦な面を有し、当該平坦な面を前記壁面部の裏面に当接させた状態で連結具54を介してカウルトップガーニッシュ5に連結されている。また、連結部72の前記平坦な面は、補強部材6の補強本体部61の上面と平行に延伸している。そして、連結部72の前記平坦な面は、カウルトップガーニッシュ5に当接した状態で、前下がりの姿勢をとっている。
【0036】
延伸部73は、固定部71における車両前後方向の一方の端部から連続して車両上方に延伸する下部延伸片73a及び連結部72における車両前後方向の他方の端部から連続し連結部72を延長するように延伸する上部延伸片73bを有するとともに、下部延伸片73aと上部延伸片73bとの接続部分73cで車両前後方向に屈曲している。
【0037】
本実施形態では、延伸部73は、固定部71における車両前後方向の後端部から連結部72における車両前後方向の前端部まで延在している。具体的には、下部延伸片73aは、固定部71の後端部(台形底辺部)から連続して概ね上方に延伸し、上部延伸片73bは連結部72の前端部から連続して連結部72と概ね平行に延伸している。延伸部73は、例えば、その上端側の部分が車両後方に向かって折れ曲がるように屈曲している。つまり、本実施形態では、延伸部73は、上部延伸片73bが車両後方に向かうように、接続部分73cを起点として折れ曲がっている。下部延伸片73a及び上部延伸片73bにおける接続部分73c側の部分は滑らかに湾曲している。そして、支持部材7は、車両幅方向の側面視で、全体として偏平な概ねS字形状(換言すると、偏平な概ねZ字形状)に形成される。
【0038】
延伸部73は、固定部71側から連結部72側ほどその幅が狭い、先細りの形状に概ね形成されている。
【0039】
本実施形態では、支持部材7の延伸部73は、車両幅方向について連結部72の導水フランジ部72b側に傾くように斜めに延伸している。換言すると、
図5に示すように、車両前方から視た正面視で、延伸部73の幅方向の中心を通る中心線X1が上方に向かうほど補強部材6(補強本体部61)の幅方向の中心を通る中心線X2から運転席側(本実施形態では車両の中心線X側、
図5では左側)に遠ざかるように、延伸部73が斜めに延伸している。支持部材7は、延伸部73を斜めに延伸させることにより、その上端部に位置する連結部72に形成された導水フランジ部72bを車両上方から視た平面視で補強部材6と重ならない位置に位置させている。
【0040】
延伸部73における車両幅方向について導水フランジ部72bと反対側の縁部には、車両下方に突出した補強用のフランジ部73c(以下では、補強フランジ部73dと言う)が形成されている。具体的には、補強フランジ部73dは、
図5では延伸部73における右端側の縁部の全体に亘って形成され、延伸部73における左端側の縁部には形成されていない。補強フランジ部73dは、延伸部73の中心線X1と同様に、補強部材6(補強本体部61)の中心線X2に対して斜めに傾斜している。車両前方から視た正面視で、下部延伸片73aにおける左端側の縁部は補強部材6の中心線X2と概ね平行に延伸し、上部延伸片73bにおける左端側の縁部は補強フランジ部73dと概ね平行に延伸している(換言すると、中心線X2に対して傾斜している)。
【0041】
本実施形態では、導水フランジ部72bは、連結部72における車両幅方向について、運転席と反対側の縁部(換言すると、車両の中心線X側の縁部、若しくは、車両幅方向の内側の縁部、
図5では左側の縁部)に形成されている。つまり、本実施形態では、連結部72の車両幅方向の前記一方の縁部とは、連結部72における車両幅方向について運転席と反対側の縁部である。軸部用孔51cや連結具用孔51dとの位置関係では、導水フランジ部72bは、運転席と反対側の軸部用孔51c(換言すると、中心線X側のピポット軸部92)と連結具用孔51dとの間に配置されている。
【0042】
連結部72における車両幅方向の前記一方の縁部(つまり、導水フランジ部72b)は、車両前後方向については、車両前後方向と平行に直線的に延伸している。そして、本実施形態では、連結部72の車両幅方向の他方の縁部には、車両下方に突出し且つ延伸部73の補強フランジ部73dと連続して延伸した補強用のフランジ部72c(以下では、補強フランジ部72cと言う)が形成されている。補強フランジ部72cは、延伸部73の補強フランジ部73dに連続し、補強部材6の中心線X2に対して斜めに傾斜している。
【0043】
本実施形態では、導水フランジ部72bは、延伸部73における車両幅方向について導水フランジ部72b側の縁部(つまり、
図5では延伸部73の左側の縁部)よりも外方に突出し、延伸部73との境界位置において途切れるように形成されている。つまり、導水フランジ部72bは、延伸部73の上部延伸片73bとは連続していない。また、
図5に示すように、支持部材7を車両前方から視た平面視で、導水フランジ部72bの端面は延伸部73(上部延伸片73b)の左端面に対して交差する方向に延伸している。
【0044】
本実施形態では、導水フランジ部72bにおける延伸部73側の端部(下端部/車両前方の端部)は、延伸部73における車両幅方向について導水フランジ部72b側の縁部よりも外方(
図5では左方)に突出した角部72b1として形成されている。したがって、導水フランジ部72bと延伸部73(上部延伸片73b)との境界位置において、段差が形成されている。
【0045】
本実施形態では、導水フランジ部72bは、車両上方から視た平面視で水受け部94の領域内に位置している(
図3参照)。具体的には、導水フランジ部72bは、車両上方から視た平面視で運転席と反対側の水受け部94の領域内に位置している。そして、車両上下方向の位置関係では、補強部材6と導水フランジ部72bとの間に、水受け部94の一部(詳しくは、後述する張り出し部94d)が配置されている。
【0046】
具体的には、水受け部94における車両幅方向について導水フランジ部72b側(
図3では右側)の部分は、導水フランジ部72b側に張り出している(延長されている)。導水フランジ部72bは、車両上方から視た平面視で水受け部94の張り出し部94d内の領域に位置している。また、張り出し部94dは、カウルトップガーニッシュ5の下面(裏面)における連結具用孔51dの周囲の部分と相対しており、補強部材6の補強本体部61の上面及び連結部72の上面と平行な底面を有している。そして、導水フランジ部72bの先端は、車両側方視で、張り出し部94dにおける車両幅方向について導水フランジ部72b側の止水壁94cの先端に近接するように配置されている。
【0047】
図8は
図4に示すC方向から視た要部拡大図である。本実施形態では、カウルトップガーニッシュ5の下面における連結具用孔51dの周囲の部分には、
図7及び
図8に示すように、連結部72に当接し且つ下方に突出した座面部51eが形成されている。
【0048】
本実施形態では、連結部72は、座面部51eにおける車両幅方向の幅よりも大きな幅を有している(
図8参照)。そして、座面部51eは、その導水フランジ部72b側の縁部の一部が導水フランジ部72bの基端部に重なる状態で、連結部72に当接している。
【0049】
次に、本実施形態における車両前部構造が適用された車両前部1において、連結具用孔51dを通じてカウル部4内に侵入した雨水が導水経路の一例について、
図8を参照して説明する。なお、軸部用孔51cを通じてカウル部4内に侵入した雨水は、水受け部94に受け入れられ、その後、水受け部94の下縁部から下方に落下する。
【0050】
雨水等の水が、カウルトップガーニッシュ5の連結具用孔51dと連結具54のクリップ軸部54bとの間の隙間に侵入する場合がある。この隙間に侵入した水は、連結具用孔51dの周囲の座面部51eと連結部72の前記平坦な面との間に侵入する。座面部51eと連結部72の前記平坦な面との間に侵入した水は、その後、座面部51eの外周に向かって、概ね周方向の全方向に滲み出すように流れ始める。そして、導水フランジ部72b側に向かって滲み出した水の一部が導水フランジ部72bの基端部に到達すると、導水フランジ部72bの基端部に到達した水は導水フランジ部72bの側面に沿って重力によって下方に導かれる(図中、太線矢印参照)。このように導水フランジ部72bに沿った水の導水が一旦生じると、座面部51eと連結部72の前記平坦な面との間の領域では、導水フランジ部72b側へ向かう流れが支配的となり、水は導水フランジ部72b側に優先的に流れるようになる。そして、例えば、導水フランジ部72b側に流れた水の大半は、導水フランジ部72bの側面に沿って下方に流れ、その後、角部72b1において効果的に水切りされ、水受け部94の張り出し部94dに受け入れられる。張り出し部94dに受け入れられた水は、水受け部94の下縁部に向かって導かれ、その後、水受け部94の下方に落下する。これにより、補強部材6やワイパー駆動部9の部材への被水が効果的に抑制されるようになる。
【0051】
また、座面部51eと連結部72の前記平坦な面との間の領域において導水フランジ部72b側に向かって流れた水の一部は、座面部51eの外周に沿って下方に流れ、その後、延伸部73における車両幅方向について導水フランジ部72b側の縁部(トリムライン)に沿って下方に流れ得る。しかし、このような水の流れが生じたとしても、水を延伸部73の導水フランジ部72b側の縁部に沿って流れるように導水することによって、ワイパー駆動部9の部材への被水が防止される。
【0052】
本実施形態による車両前部構造では、支持部材7の連結部72は、自身の車両幅方向の一方の縁部において車両下方に突出し且つ車両上方から視た平面視で補強部材6と重ならない位置に位置する導水フランジ部72bを有して構成されている。このため、連結具用孔51dを通じてカウル部4内に侵入した雨水等の少なくとも一部は、導水フランジ部72bを経由して落下するようになり、補強部材6を避けた位置に落水される。そして、導水フランジ部72bの位置を適宜に設定するだけで、連結具用孔51dを通じてカウル部4内に侵入した雨水等の少なくとも一部が導水フランジ部72bを経由してカウル部4内における意図した箇所(狙った位置)に導かれることになる。その結果、連結具用孔51dから侵入した雨水等について、補強部材6への被水だけではなく、補強部材6の周辺に配置され得るワイパー駆動部9の部材への被水も簡易な構造により効果的に抑制されるようになる。
【0053】
このようにして、カウルトップガーニッシュ5の連結具用孔51dからカウル部4内に侵入した雨水等の少なくとも一部を簡易な構造でカウル部4内における意図した箇所へ導くことができる車両前部構造を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態では、導水フランジ部72bは、延伸部73における車両幅方向について導水フランジ部72b側の縁部よりも外方に突出し、延伸部73との境界位置において途切れるように形成されている。これにより、導水フランジ部72bに沿って流れた水の水切りが確実になされる。また、本実施形態では、導水フランジ部72bにおける延伸部73側の端部は延伸部73における車両幅方向について導水フランジ部72b側の縁部よりも外方に突出した角部72b1として形成されている。これにより、前記水切りがより確実になされ、カウル部4内に侵入した水がより確実に意図した箇所に導かれる。
【0055】
本実施形態では、導水フランジ部72bは、車両上方から視た平面視で水受け部94の領域内に位置している。これにより、ワイパー駆動部9の部材への被水がより確実に抑制又は防止される。
【0056】
本実施形態では、座面部51eは、その導水フランジ部72b側の縁部を導水フランジ部72b側に寄せた状態で、連結部72に当接している。これにより、導水フランジ部72bに沿った水の流れが容易に生じるようになる。
【0057】
なお、導水フランジ部72bは車両上方から視た平面視で水受け部94の領域内に位置していなくてもよい。この場合であっても、導水フランジ部72bによって導水した水を、水受け部94を経由せずに、カウル部4内における意図した箇所に直接的に落水させることができる。
【0058】
また、カウルトップガーニッシュ5の座面部51eは下方に突出させることが好ましいが、座面部51eは突出していなくてもよい。本実施形態では、座面部51eは、その導水フランジ部72b側の縁部の一部が導水フランジ部72bの基端部に重なる状態で、連結部72に当接しているが、これに限らない。座面部51eは、その導水フランジ部72b側の縁部を導水フランジ部72b側に寄せた状態で、連結部72に当接していれば、導水フランジ部72bに沿った水の流れが生じるようになる。
【0059】
また、連結部72における車両幅方向の他方の縁部や延伸部73における車両幅方向の他方の縁部に、補強フランジ部(72c、73d)が形成されなくてもよい。そして、延伸部73は固定部71における車両前後方向の前端部から連結部72における車両前後方向の後端部まで延在するように形成されてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
3…フロントガラス、
4…カウル部、
4a…開口部、
5…カウルトップガーニッシュ、
51c…軸部用孔、
51d…連結具用孔、
51e…座面部、
54…連結具、
6…補強部材、
7…支持部材、
71…固定部、
72…連結部、
72b…導水フランジ部(フランジ部)
72b1…角部、
73…延伸部、
8…ワイパー、
92…ピポット軸部、
94…水受け部