(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022804
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】発色太陽モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20230208BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045384
(22)【出願日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】110128530
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】111102620
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517348215
【氏名又は名称】海力雅集成股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 庭輝
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151JA02
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA09
5F151JA27
5F251AA02
5F251AA03
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
5F251JA09
5F251JA27
(57)【要約】
【課題】発色太陽モジュールを提供する。
【解決手段】封止層に少なくとも1つの太陽電池が埋め込まれ、該封止層の上に透光板が配置され、該透光板は石英を含有する単一のコーティングを有し、該透光板は該コーティングで該封止層に結合されることで、該コーティングのデザインにより所望のカラーライトが反射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1の表面と第2の表面を有する封止層と、
該封止層に埋設された少なくとも1つの太陽電池と、
石英を含有する単一のコーティングを有する透光板と、
を備え、
該透光板は該コーティングで該封止層の第1の表面に結合されることを特徴とする発色太陽モジュール。
【請求項2】
該コーティングは、アルカリ金属族、アルカリ土類族、ボロン族元素の酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩及びケイ酸塩の一種または複数種からなる不純物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【請求項3】
該コーティングの厚さは0.1~50ミクロンであることを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【請求項4】
該透光板の屈折率は、該透光板と該少なくとも1つの太陽電池との間に形成された該封止層の屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【請求項5】
該コーティングは、全面厚さが均一の構造またはエリア毎に厚さが異なる構造であることを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【請求項6】
該少なくとも1つの太陽電池は、シリコン結晶太陽電池シートまたは薄膜太陽電池シートであることを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【請求項7】
該封止層の第2の表面にはカバープレートが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【請求項8】
該コーティングの本質の色は、無色かつ透明であることを特徴とする請求項1に記載の発色太陽モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽モジュールに関し、特にビルディング統合太陽光発電システム(Building Integrated Photovoltaic(BIPV))に用いられる発色太陽モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化がますます進んでいる中、世界各国はエネルギー消費量を減らすための省エネルギー化と炭素の削減をより重視している。現在のところ、建物のエネルギー消費量は総エネルギー消費量の40%以上を占めているため、気候変動と地球温暖化との緩和については、建物のエネルギー消費量を削減することが特に重要となっている。
【0003】
建物のエネルギー消費量を削減する課題にあたって、多くの先進国は、例えば近ゼロエネルギービル(Near Zero Energy Building)(以下、NEZEBという)またはゼロエネルギービル(Zero Energy Building)(以下、ZEBという)などの政策目標を提案している。その中で、ビルディング統合太陽光発電システムの応用は、近ゼロエネルギー建築の目標を達成するための重要な方法となる。
【0004】
しかしながら、高層ビル(例えば4階建て以上)の建物は、エネルギーの需要が高く、屋上の限られた面積に太陽光発電パネルを設けるだけでは近ゼロエネルギー消費またはゼロエネルギー消費を達成することができない。従って、上記のエネルギー需要の不足を補うために、建物の壁面をソーラーウォールとして統合する必要がある。また、カラービルディング統合太陽光発電システム(Color BIPV)は、近ゼロエネルギー消費建物の目標を達成するのみならず、従来の太陽エネルギーでは実現できない建物の外壁の美観性を付与することができる。
【0005】
太陽パネルを建物の外壁に結合する際に建物の美化効果を持たせるようにするための解決策として、太陽パネルにカラーパターンを備わせることにより、カラフルな太陽エネルギー統合建物を形成する。こうすることにより、近ゼロエネルギー消費建物の目標を達成することができ、従来の太陽パネルが建物の外壁に美観性を付与できないという欠点を補うことができる。
【0006】
現在よく使用されているカラー太陽モジュールの発色技術は、電池セル(CELL)発色、カバープレートガラス(内面または外面)における有色顔料または釉薬による発色、封止ゴム材料(ポリビニルブチヤール(PVB))またはエチレン-酢酸ビニルコポリマー(Ethylene-Vinyl Acetate(EVA))発色、及びカバープレートガラス(内面)に光学干渉多層フィルムが蒸着されてなるものの4つの技術があり、これらにより発色効果を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許第I409962号
【特許文献2】欧州公開特許第2154727A2号
【特許文献3】米国公開特許第2010037948A1号
【特許文献4】台湾特許第I631718号
【特許文献5】リトアニア公開特許第2897795T号
【特許文献6】中国特許第104736338B号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただし、現在のカラービルディング統合太陽光発電システム(Color BIPV)は、美観性、製造コスト及び光電変換率の3つが共存できない課題に直面しているため、普及化することができない。例えば、既存のカラー太陽モジュール発色の量産技術には、下記の課題がある。
【0009】
従来技術1:ポリシリコン太陽エネルギーチップに主に使用されている太陽電池チップ発色は、例えば台湾特許第409962号(特許文献1)、欧州公開特許第2154727A2号(特許文献2)または米国公開特許第2010037948A1号(特許文献3)等に記載されているように、製造が簡単で製造コストが低い従来の太陽モジュール製造工程を採用している。しかしながら、この技術は、ポリシリコン太陽電池シートの仕様にのみ適用することができ、その発電効率は単結晶シリコン太陽電池シートよりも低く、また色変化も制限されているため、製造された太陽モジュールが格子状レイアウトの態様に制限され、美観性のニーズを満たすことができない。
【0010】
従来技術2:カラー太陽モジュールの前カバープレートとして採用する有色ガラスは、製造が簡単で製造コストが低いが、有色ガラスでは強化作業後でも構造強度が不十分な課題があり、また、透過率が低いため、光電変換効率が悪く、美観性も良くない。
【0011】
従来技術3:太陽モジュールの封止ゴム材を発色させ、例えばEVAまたはPVB材料に発色の目的のために塗装し、建築分野の発色接着剤とガラスとの結合という成熟技術が採用されているため、製造が容易で製造コストが低いが、着色型封止ゴム材の透過率が低いため、光電変換効率が悪く、美観性も良くない。
【0012】
従来技術4:台湾特許第I631718号(特許文献4)に記載のように、太陽モジュールの前カバープレート(ガラス)の外側または内側に釉薬または顔料が塗布され、色変化の選択性が高く、様々なグラフィックを配置することができ、美観性を高めることができるが、釉薬によって形成された色層または色斑の密度が高い場合は、色層または色斑の色からなる波長の光を反射するほか、その他の波長の光が太陽モジュールに入ることを遮断するため、太陽モジュールの変換効率に影響する。
【0013】
従来技術5:カラーライト反射を生成するための多層フィルム干渉(Multi-Layer Interference)は、プラズマスパッタリング(Plasma Sputtering)技術によってガラス上に金属酸化膜または金属膜を蒸着させて光学的干渉効果を形成しカラーライトを反射させることにより、太陽モジュール発色の効果を達成することができる。例えばリトアニア公開特許第2897795T号(特許文献5)または中国特許第104736338B号(特許文献6)に記載のように、発色効果の達成のために特定の有色光のみを太陽モジュールから反射させ、その他の入射光は、依然として太陽モジュール内の太陽電池チップによって吸収されるため、変換効率は従来技術1~従来技術4よりも高い。しかしながら、この方法において、多層膜蒸着工程は大型の真空スパッタリング機を使用する必要があり、従来技術1~従来技術4よりも機器コストや製造コストがはるかに高く、しかも、単一の太陽モジュールには一つの色しか使用できず、その上に模様を設計することもできず、美観性は大きく制限されている。
【0014】
上記のように、前記5つの従来のカラー太陽モジュールの生産技術及びその他現在のカラービルディング統合太陽光発電システム(Color BIPV)は、いずれも美観性、高光電変換効率、低製造コスト等のニーズを同時に満たすことができない。
【0015】
従って、美観性、高光電変換効率、低製造コスト等のニーズを同時に満足できる太陽モジュールの技術を提供することは、現在解決すべき重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題に鑑み、本発明に係る発色太陽モジュール(Colord Solar Module)は、対向する第1の表面と第2の表面を有する封止層と、該封止層に埋設された少なくとも1つの太陽電池と、石英を含有する単一のコーティングを有する透光板と、を備え、該透光板は該コーティングで該封止層の第1の表面に結合される。
【0017】
前記発色太陽モジュールにおいて、該コーティングは、アルカリ金属族、アルカリ土類族、ボロン族元素の酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩及びケイ酸塩の一種または複数種からなる不純物をさらに含む。
【0018】
前記発色太陽モジュールにおいて、該コーティングの厚さは0.1~50ミクロンである。
【0019】
前記発色太陽モジュールにおいて、該コーティングの屈折率は前記透光板の屈折率および前記封止層の屈折率のいずれよりも大きい。
【0020】
前記発色太陽モジュールにおいて、該コーティングの屈折率は前記透光板の屈折率および前記封止層の屈折率のいずれよりも小さい。
【0021】
前記発色太陽モジュールにおいて、該透光板の屈折率は、該透光板と該少なくとも1つの太陽電池との間に形成された該封止層の屈折率よりも大きい。
【0022】
前記発色太陽モジュールにおいて、該コーティングは、全面厚さが均一の構造またはエリア毎に厚さが異なる構造である。
【0023】
前記発色太陽モジュールにおいて、該少なくとも1つの太陽電池は、シリコン結晶太陽電池シートまたは薄膜太陽電池シートである。
【0024】
前記発色太陽モジュールにおいて、該封止層の第2の表面にはカバープレートが配置されている。
【0025】
前記発色太陽モジュールにおいて、該コーティングの本質の色は、無色かつ透明である。
【発明の効果】
【0026】
上記のように、本発明に係る発色太陽モジュールは、主に透光板が石英を含有する単一のコーティングを有して、入射光に破壊的干渉効果(Destructive interference effect)を生じさせ、対応するカラーライトを反射することにより、異なる色または模様を生成する効果を奏するため、従来の技術と比較すると、本発明をカラービルディング統合太陽光発電システム(Color BIPV)へ適用する場合は、美観性、高光電変換効率、低製造コスト等のニーズを同時に満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明に係る発色太陽モジュールの第1の実施例の断面側面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る発色太陽モジュールの第2の実施例の断面側面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る発色太陽モジュールの第3の実施例の断面側面模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る発色太陽モジュールの第4の実施例の断面側面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第1の実施例の模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第1の実施例の模式図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第1の実施例の模式図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第1の実施例の模式図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る発色太陽モジュールにおける透光前カバープレート、石英コーティング及び封止層の屈折模式図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第2の実施例の模式図である。
【
図12】
図12は、本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第2の実施例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
下記において特定の具体的な実施形態により本発明の技術内容を説明する。本明細書に記載の内容により、この技術分野に精通した者なら簡単に本発明の利点や効果が理解できる。しかしながら、本発明は、その他の異なる具体的な実施形態によって施行や応用することが可能である。
【0029】
図1は本発明に係る発色太陽モジュール1の第1の実施例の断面側面模式図である。
図1に示すように、発色太陽モジュール1は結晶系シリコンダブルガラス(Crystalline Silicon Double Glass)の形式であり、封止層15と、封止層15内に埋設された少なくとも1つの太陽電池16(以下、互いに直列に接続された複数の太陽電池16を例にする)と、封止層15に結合された透光板12と、を備え、透光板12にはコーティング14が形成されており、コーティング14を介して封止層15に結合される。
【0030】
封止層15は、密封フィルム(Encapsulation Film)であり、対向する第1の表面15aと第2の表面15bとを有し、第2の表面15bの上にはカバープレート17が配置され、カバープレート17の上には太陽電池16に電気的に接続され給電を行うジャンクションボックス(Junction Box)18が配置されている。
【0031】
この実施例において、封止層15は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)またはポリビニルブチヤール(PVB)からなり、カバープレート17は、発色太陽モジュール1の支持効果を強化可能な透光ガラス板である。
【0032】
太陽電池16は、対向する受光面と非受光面を有しており、受光面が封止層15の第1の表面15aに面するようにしている。
【0033】
透光板12は、ガラス材質を含み、前プレートまたは積層板(Laminated Plate)として用いられ、その内側表面、即ち封止層に接触するガラス表面上にコーティング14が形成されている。
【0034】
コーティング14は石英を含有し、封止層15の第1の表面15aを被覆している。
【0035】
この実施例において、コーティング14は、アルカリ金属族、アルカリ土類族、ボロン族、若しくは前記の2つまたは3つが混合された不純物と石英とが混合されてなり、コーティング14は、不純物混合された(Impurity Mixed)本質無色の単層石英コーティング(Single Layer Quartz Coating)構造であり、その厚さtが0.1ミクロン~50ミクロンであり、その屈折率は、透光板12(ガラスの屈折率は1.55であり、太陽ウルトラクリアガラス(Solar Ultra-Clear Glass)の屈折率は約1.51~1.52である)の屈折率、封止層15(EVAの屈折率は約1.49~1.50であり、PVBの屈折率は約1.48~1.49である)の屈折率のいずれよりも大きい。
または、コーティング14の屈折率は、透光板12の屈折率および封止層15の屈折率のいずれよりも小さい。透光板12の屈折率は、封止層15の、透光板12と少なくとも1つの太陽電池16との間にある部分(
図1に示す破線と第1の表面15aとの間の部分)の屈折率よりも大きい。
【0036】
図2は本発明に係る発色太陽モジュール1の第2の実施例の断面側面模式図である。この実施例は、太陽モジュールの態様で第1の実施例と異なっており、以下、同一部分の説明を省略する。
【0037】
図2に示すように、発色太陽モジュール1は、結晶系シリコンガラスバックシート(Crystalline Silicon Glass/Back-Sheet)の態様であり、そのカバープレート17は、バックシート(Back Sheet)構造であるため、透光板12、封止層15及びカバープレート17を支持するためのアルミフレーム19(Aluminum Frame)を配置することができ、接着剤190により、透光板12、封止層15及びカバープレート17が固着される。
【0038】
図3は本発明に係る発色太陽モジュール1の第3の実施例の断面側面模式図である。この実施例は、太陽モジュールの態様で第2の実施例と異なっており、以下、同一部分の説明を省略する。
【0039】
図3に示すように、発色太陽モジュール1は、標準型薄膜ダブルガラス(Standard Thin Film Double)の態様であり、その太陽電池16は薄膜型であり、ガラス基板形式のカバープレート17に結合され、フレーム19が透光板12とカバープレート17との間に架設されている。
【0040】
図4は本発明に係る発色太陽モジュール1の第4の実施例の断面側面模式図である。この実施例は、太陽モジュールの態様で第3の実施例と異なっているため、以下、同一部分の説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、発色太陽モジュール1はフル埋め込み型薄膜(Fully Embedded Thin Film)の態様であり、その太陽電池16は薄膜型であり、太陽電池16は封止層15に埋設された基板160に結合され、カバープレート17は透光ガラス板である。
【0042】
図5~
図8は本発明に係る発色太陽モジュールの製造方法の第1の実施例の模式図である。
【0043】
まず、石英、及び少なくとも本質が無色または白色の不純物化合物を粉末に研磨して均一的に混合する。その粉末中の85%以上の粒子の径は、1ミクロンよりも小さい(通常0.1ミクロン~1ミクロン)。そのうち、白色鉱物粉末によってコーティング14の透明度は少し低下するが、発色とはならないため、コーティング14は本質が無色かつ透明の状態となっている。石英に良く使われる不純物化合物の種類は下記の表1に記載の通りである。
【表1】
【0044】
石英の成分は二酸化シリコンであり、主に、コーティング14において主にその他の不純物化合物材料を支持や固定し、溶融され冷却された後、ガラス表面に固着するためのものとして機能している。
【0045】
混合された不純物化合物種類は、アルカリ金属族、アルカリ土類族、ボロン族、または前記アルカリ金属族、アルカリ土類族、ボロン族が比例に応じて混合されてなる材質であってもよい。
【0046】
アルカリ金属族(CAS IA)の酸化物または炭酸塩は、石英粉末の溶剤として、石英粉末の融点を大幅に低下させる。
【0047】
アルカリ土類族(CAS IIA)の酸化物または炭酸塩は、コーティング14の屈折率を大幅に高めるものとして機能している。そのうち、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムの酸化物と炭酸塩は、さらに、コーティング14を安定させ、コーティング14の強度を高める効果がある。
【0048】
アルカリ金属族(CAS IA)、アルカリ土類族(CAS IIA)のアルミノケイ酸塩は、コーティング14の屈折率を効果的に高めるものとして機能している。
【0049】
酸化ボロン及び硼砂は、石英融点を大幅に低下させる溶剤として使用可能であるほか、コーティング14を安定且つ強化させる効果がある。
【0050】
ここで注意すべき点は、コーティング14に必要な屈折率及び融点に基づいて、石英粉末と上記の化合物粉末不純物を適切な比例に応じて均一に混合することができる。従って、コーティング14の石英と不純物の材質混合方法については何ら限定されるものではない。
【0051】
次に、
図5に示すように、不純物混合された石英粉末を液体塗料11として作成する。
【0052】
この実施例において、不純物混合された石英粉末に溶剤が混合された場合、2種の溶剤、例えば40重量%以下のアルコール水溶液、または極性を有するDEF(N,N-ジエチルホルムアミド、C5H11NO)溶剤を採用することができる。例えば、不純物混合された石英粉末とアルコール水溶液とをアルコール溶剤重量%が40%を超えないように均一に混合させるとともに、溶液固体含有量の重量%が35%以下であるように制御する。
【0053】
次に、
図5に示すように、液体塗料11を貯蔵槽20に入れ、液体塗料11を透光板12の表面に塗布することにより表層流体13を形成する。
【0054】
この実施例において、液体塗料11の塗布方法は、超音波高圧機器2により液体塗料11を透光板12の表面に被覆するようにスプレイ(Spraying)する。例えば、超音波高圧機器2は、超音波高圧ノズル(Ultrasonic High-Pressure Nozzle)21と、貯蔵槽20と超音波高圧ノズル21とに連通する通路22と、超音波高圧ノズル21に連通する気体注入口23と、超音波高圧ノズル21に対応して配置された超音波ニードルバルブ部材24とを含む。
【0055】
使用時には、超音波高圧機器2が通路22を通じて液体塗料11を導入し、気体注入口23を通じて窒素高圧補助気体を導入し、さらに超音波ニードルバルブ部材24により液体塗料11を超音波高圧ノズル21に送り込むことで、超音波高圧ノズル21により表層流体13を透光板12の表面に均一に吹き込む。その後、120℃の温度で乾燥させ、ガラス強化オーブン(Tempering Oven)内に搬入し、太陽ウルトラクリアガラスの軟化温度(約710℃。一般の建物ガラス軟化温度は約650℃~700℃であり、実際に必要な温度は使用されるガラスの軟化点に応じて決められる)よりも低い680℃以下の温度で加熱する。
図6に示すように、石英粉末が十分溶融された後、高温強化オーブンから移出され、冷空気噴出気流(Cool Air Jet)で冷却されることで、表層流体13が硬化され、コーティング14になって、ガラス表面に結合される。従って、製造工程において、塗料11は透光板12とともにベーキング可能であり、透光板12が熔解することはない。
【0056】
さらに、他の実施例において、超音波高圧機器2は、模様を有する太陽モジュールにも適用することができる。
図9に示すように、塗料11をスプレイする前に、透光板12にパターニングスプレイマスク(Spraying Mask)25が設置されることで、塗料11がスプレイされた後、透光板12の表面にパターニングスプレイマスク25に対応するパターニング表層流体13aが形成され、その後に形成されたコーティングは模様状、局所スプレイ状となる。さらに、
図9の破線に示すように、複数回スプレイすることにより、コーティングを異なる領域に異なる厚さ及び/または色を有するようにして、立体(3D)の模様を表現し、発色太陽モジュールの美観性を高めることができる。
【0057】
図7に示すように、コーティング14を被覆するように透光板12に封止材150(即ち封止層15の
図1に示す破線と第1の表面15aとの間の部分)を形成する。次に、複数の太陽電池16を封止材150に埋め込む。
【0058】
図8に示すように、カバープレート17により他の封止材を透光板12の封止材に圧着することで封止層15を形成する。その後、ジャンクションボックスを配置することで、発色太陽モジュール1を完成する。
【0059】
従って、本発明に係る発色太陽モジュール1は、コーティング14のデザインにより所要の光屈折経路を生成することができる。
図10に示すように、太陽光が透光板12に入射して太陽電池16に到達する前に、入射光線Lの入射経路は透光板12、コーティング14、および封止層15をその順に経過する。コーティング14の屈折率が透光板12の屈折率および封止層15の屈折率のいずれよりも大きいと、入射光線Lは光疏媒質(透光板12)を介して光密媒質(コーティング14)に入り、さらに光密媒質(コーティング14)を介して他の光疏媒質(封止層15)に入る。コーティング14の屈折率が透光板12の屈折率および封止層15の屈折率のいずれよりも小さいと、入射光線Lは光密媒質(透光板12)を介して光疏媒質(コーティング14)に入り、さらに光疏媒質(コーティング14)を介して他の光密媒質(封止層15)に入る。光密媒質の石英コーティング14の屈折率をnq、厚さをt、入射光のカラーライト波長をλとすると、2nqt=(i+1/2)λの光学干渉条件が満足される場合(そのうち、iは正整数、例えば1、2、3、・・・)、入射光線Lに破壊的干渉効果(Destructive interference effect)が生じるので、入射光線Lにおけるカラーライト波長λは、発色太陽モジュール1の透光板12から反射され、発色太陽モジュール1は反射されたカラーライトの色を呈し、発色効果(Coloring Effect)を奏することができる。
【0060】
例えば、緑色外観の発色太陽モジュール1を形成しようとする場合、波長532nmの緑光を例にする。コーティング14の屈折率は、不純物混合により、1.65に調整される。整数iを20、コーティング14の厚さtを約3.31ミクロンとすると、発色太陽モジュール1は太陽光下での外観が緑色となる。若しくは、コーティング14の屈折率は、不純物混合により、1.46に調整され、すなわち、コーティング14の屈折率は1.46であると、透光板12の屈折率(1.51~1.55)および封止層15の屈折率(1.48~1.50)のいずれよりも小さく、そして、整数iを20、コーティング14の厚さtを約4.63ミクロンとすると、発色太陽モジュール1が太陽光下である場合、透光板12は波長660nmの光を反射するため、発色太陽モジュール1の外観は赤色となる。
【0061】
従って、不純物混合された石英材からなるコーティング14は本質が無色であるが、コーティング14の厚さtがカラーライト波長λの整数倍プラス2分の1の波長に調整された場合、発色太陽モジュール1の透光板12は、破壊的干渉効果によりカラーライト光が反射されるため、発色効果を呈する。従って、単層の石英を含有するコーティング14によりその屈折率を制御しかつ異なるエリアに対応する厚さtを形成することにより、異なる色を放出したり模様を形成したりする効果を達成することができる。
【0062】
図11~
図12は、本発明に係る発色太陽モジュール1の製造方法の第2の実施例の模式図である。この実施例は、異なる混合液が採用される点で第1の実施例と異なっているため、以下、同一部分の説明を省略する。
【0063】
まず、不純物混合された石英粉末を極性DEF(N,N-ジエチルホルムアミド、C5H11NO)溶剤と混合することで、溶液状態塗料11aを形成し、この溶液中の石英含有量の重量%が40%以下となるように制御して、貯蔵槽30に入れる。
【0064】
次に、
図11に示すように、溶液状態塗料11aが均一に混合された後、供液ポンプ33により塗料11aをスリット塗布機(Slit Coater)3に注入するとともに、透光板12をプログラマブル速度制御可能な移動ステージ(Moving Stage)31に載置する。スリット塗布機3のスリットノズル(Slit Nozzle)34が透光板12の表面に対して約10~数10ミクロン(ガラスに接触せず)になるように近接する場合、スリットノズル34と移動ステージ31との相対的な移動により、塗料11aはパイプ32を経由してスリットノズル34から噴出され、透光板12に均一に塗布される。その後、ベーキングと冷却により、塗料11aがコーティング14として形成される。
【0065】
この実施例において、スリットノズル34と透光板12との間のピッチh及び相対移動速度(例えば
図12に示す移動ステージ31の移動方向F)により、表層流体13の厚さ、即ちコーティング14の厚さt(
図1)が制御される。従って、ピッチhが大きければ及び/または相対移動速度が遅ければ、コーティング14の厚さtが厚くなり、逆の場合は薄くなる。
【0066】
従って、この実施例の製造方法は、単色または大寸法の発色太陽モジュール1のスペックに適用するため、大面積塗布作業を高速に行うのみならず、塗料11aの浪費を削減することができ、製造コストの低下を達成することができる。これに対して、第1の実施例の製造方法はアルコールを溶剤とし、高圧ノズルで塗布するため、透光板12から容易に噴出され、浪費してしまうことがある。
【0067】
上記のように、本発明に係る発色太陽モジュール1は、主にコーティング14のデザインにより下記の技術的効果を奏することができる。
【0068】
第一:透光板12の内側に石英を含有する光学干渉のコーティング14が形成され、コーティング14の厚さtを制御することで光学干渉の効果を達成し、さらに対応するカラーライトを発色太陽モジュール1の外部環境に反射させることにより、発色効果を奏することができる。さらに、発色太陽モジュール1が発色する場合、一部のカラーライトが反射され、その他の光が依然としてコーティング14を通過可能であるため、発色太陽モジュール1は高光電変換効率を維持することができる。
【0069】
第二:単一コーティング14の厚さt及び/または屈折率の調整により、透光板12に複数の色を生成するのみならず、コーティング14の形成時に同時に模様を作成できるため、美観性が制限されることはなく、美観性が向上する。
【0070】
第三:本発明に係る発色太陽モジュール1は、大気環境に設置された超音波高圧機器2またはスリット塗布機3だけでコーティング14を生成できるため、真空スパッタリング機器等の大型真空機器を使用する必要がなく、製造コストの低下を達成することができる。
【0071】
上記実施例は本発明の原理及びその効果を例示的に説明するに過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、所属する技術分野において通常知識を有する者により本発明の主旨を逸脱しない範囲でそれらの実施態様に対して種々に修正や変更を施すことが可能である。従って、本発明の権利保護範囲は、後述の特許請求の範囲の通りである。
【符号の説明】
【0072】
1 発色太陽モジュール
2 超音波高圧機器
3 スリット塗布機
11 塗料
11a 塗料
12 透光板
13 表層流体
13a 表層流体
14 コーティング
15 封止層
15a 第1の表面
15b 第2の表面
16 太陽電池
17 カバープレート
18 ジャンクションボックス
19 フレーム
20 貯蔵槽
21 超音波高圧ノズル
22 通路
23 気体注入口
24 超音波ニードルバルブ部材
25 パターニングスプレイマスク
30 貯蔵槽
31 移動ステージ
32 パイプ
33 供液ポンプ
34 スリットノズル
150 封止材
160 基板
190 接着剤
F 移動方向
h ピッチ
L 入射光線
t 厚さ